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オーストリアのCPUクーラーメーカーNoctuaが贈るRyzen Threadripper対応としては初となる空冷CPUクーラー、Ryzen Threadripperの大型IHSと余すことなく接触する大型銅製ベースを採用し、150mmの異形大型ファンを搭載する高冷却性能な最上位モデル「NH-U14S TR4-SP3」をレビューしていきます。
Noctua製のRyzen Threadripper対応空冷CPUクーラーは「NH-U14S TR4-SP3」「NH-U12S TR4-SP3」「NH-U9 TR4-SP3」の3モデルがラインナップされていますが、「NH-U12S TR4-SP3」と「NH-U9 TR4-SP3」の2モデルについてはNoctuaの国内正規代理店Techace様の協力のもとサンプル機をお借りしています。今回はこれら全モデルについて一挙にレビューします。
・Noctua製Ryzen Threadripper対応空冷CPUクーラーのレビュー記事一覧へ
国内正規代理店「Techace」公式ページ
「NH-U14S TR4-SP3」:https://techace.jp/product_info.php/products_id/2985
「NH-U12S TR4-SP3」:https://techace.jp/product_info.php/products_id/2986
「NH-U9 TR4-SP3」:https://techace.jp/product_info.php/products_id/2987
「NH-U14S TR4-SP3」製品公式ページ:http://noctua.at/en/nh-u14s-tr4-sp3
マニュアル:http://noctua.at/media/blfa_files/manual/noctua_nh_u14s_tr4-sp3_manual_en.pdf
「NH-U12S TR4-SP3」製品公式ページ:http://noctua.at/en/nh-u12s-tr4-sp3
「NH-U9 TR4-SP3」製品公式ページ:http://noctua.at/en/nh-u9-tr4-sp3
なお最も大きい最上位モデル「Noctua NH-U14S TR4-SP3」は、ASUS ROG ZENITH EXTREMEと組み合わせた場合、CPUクーラーの使用は可能ですが最上段のPCI-EスロットはCPUクーラーと干渉して拡張ボードを設置できないので注意してください。
Noctua NH-U14S TR4-SP3 - 140mm [Noctua正規代理店]
Noctua NH-U12S TR4-SP3 - 120mm [Noctua正規代理店]
Noctua NH-U9 TR4-SP3 - 92mm [Noctua正規代理店]
Noctua
<TSUKUMO:U14S/U12S/U9><PCワンズ>
レビュー目次
1.Noctua NH-U14S TR4-SP3の梱包・付属品
2.Noctua NH-U14S TR4-SP3のヒートシンク
3.Noctua NH-U14S TR4-SP3の冷却ファン
4.Noctua NH-U14S TR4-SP3の外観
5.Noctua NH-U14S TR4-SP3の検証機材・セットアップ
6.Noctua NH-U14S TR4-SP3の各種クリアランス
7.Noctua NH-U14S TR4-SP3の冷却性能
8.Noctua NH-U14S TR4-SP3のレビューまとめ
補足.空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて
Noctua NH-U14S TR4-SP3の梱包・付属品
まずは「NH-U14S TR4-SP3」の外観や付属品をチェックしていきます。Noctua NH-U14S TR4-SP3は高級感のあるプリントがされた箱に入っておりパッケージの蓋は上開き型です。CPUクーラー本体と付属品は全て個別の箱に小分けされていました。
小分けパッケージの中には各種付属品が入っており、マニュアル、2基目の冷却ファンを装着するためのファンクリップ&防振ゴム、熱伝導グリス、ファンを低速で動作させるための降圧変換ケーブル「Low Noise Adapter」、エンブレムシール、L字型ヘックスドライバーとなっています。
続いてCPUクーラー本体をチェックしていきます。
CPUクーラー本体を保護する段ボールは簡単な組み立て式でした。
Noctua NH-U14S TR4-SP3はいかにも空冷CPUクーラーらしい外観で、直角的なデザインの大型アルミニウム製ヒートシンクが目立ちます。ニッケルメッキで防錆処理された独特の光沢も目を引くところです。加えてNoctua NH-U14S TR4-SP3は150mm径の異形大型ファンを搭載していることもありサイズ自体はミドルクラスのサイドフローCPUクーラーなのですが迫力があります。
ヒートシンクに冷却ファン等を装着した状態で重量を比較してみたところ、Noctua NH-U14S TR4-SP3の重量は1028g、Noctua NH-U12S TR4-SP3の重量は862g、Noctua NH-U9 TR4-SP3の重量は860gとなっておりやはりヒートシンクのサイズに比例して上位モデルほどCPUクーラーの重量も重くなっていきます。
とはいえ最上位モデルのNoctua NH-U14S TR4-SP3でも同社のフラッグシップ空冷CPUクーラーNoctua NH-D15の1285gに比べると軽量です。ちなみにNoctua NH-D15の右はCoolerMaster MasterAir Maker 8とIntel TS15Aです。
Noctua NH-U14S TR4-SP3のヒートシンク
続いてNoctua NH-U14S TR4-SP3のヒートシンクをチェックしていきます。Noctua NH-U14S TR4-SP3のヒートシンクの放熱フィンは一般的なアルミニウム製ですがニッケルメッキ表面処理がされており、見た目に美しいだけでなく、汚れにくく錆びにくいというメリットもあります。Noctuaらしい質実剛健な工業製品的な美しさを全面に押し出したデザインです。
PCケースのサイドパネル側から見える放熱フィン上部にはメーカーロゴのNoctuaが刻印されています。
ヒートシンクの放熱フィンはベースコアを中心にして前後左右で対称な形状、ヒートパイプの配置も中心対称になっているのでヒートシンク本体には前後の別はありません。放熱フィンのフィンピッチは狭すぎず広すぎずなちょうどいい塩梅で低速から高速まで幅広い冷却ファン動作に対応可能なピッチが採用されていました。側面は放熱フィンの末端が折り曲げ加工によって平面化されており、フィンを手で持った時に指を切る心配もありません。
ニッケルメッキの施された銅製ベースコアからは同じくニッケルメッキ銅製のヒートパイプが左右へ6本ずつ計12本伸びています。
Noctua NH-U14S TR4-SP3のベースコアプレートはニッケルメッキの銅製でCPUクーラーヒートスプレッダとの接触面積を最大化するために鏡面化(平滑化)されています。
「Noctua NH-U14S TR4-SP3」には既存のCPUと比較して超大型なヒートスプレッダを搭載するRyzen Threadripperとピッタリサイズの大型銅製ベースプレートが搭載されています。
右はNoctuaのフラッグシップ空冷CPUクーラーNH-D15の銅製ベースですが、「Noctua NH-U14S TR4-SP3」のベースサイズと比較するとその大きさは一目瞭然です。
Ryzen Threadripperのヒートスプレッダとピッタリ一致しています。
CPUクーラーをマザーボードに固定するためのリテンションにはSocket TR4のために新たに開発された「SecuFirm2」という構造が採用されています。専用のリテンションブラケットにはスプリング付き六角スクリューが装着されており、付属のL字型六角ドライバーを使用して簡単かつ適切にCPUクーラーを装着可能となっています。
加えてリテンションブラケット自体もベースコアにネジ止めされているだけになっており、位置オフセット用のネジ穴が0/+3/+6mmの3か所用意されています。
リテンションブラケット装着位置をオフセットすることによってCPUクーラーのヒートシンクとマザーボードの最上段のPCI-Eスロットに装着された拡張カードが干渉するのを可能な限り回避できるようになっています。
なおベースサイズはCPUヒートスプレッダとほぼ同サイズとなっているので、オフセットを使用するとベースとヒートスプレッダの接触位置がずれて接触範囲も若干狭くなります。欲を言えばオフセット機能を採用するのであればオフセット範囲に合わせてベースサイズを長くして欲しかったところです。
またTR4 Socketのマウントネジ穴間隔の仕様上、CPUソケット上側のリテンションブラケットのネジは直上の放熱フィンと被っています。
CPUクーラーを設置する上で問題があるように見えますが、付属のL字型ヘックスドライバーは六角の先端がボールポイント(先端から数mm後ろが絞ってあるひょうたん状の形状)になっているので、斜め向きでもドライバーでネジを締めることができるため問題なくCPUクーラーを装着できます。
Noctua NH-U14S TR4-SP3の冷却ファン
Noctua NH-U14S TR4-SP3ではNF-A15 PWM Fanという独特な形状の大型冷却ファンが付属します。PWM速度調整対応4PIN冷却ファンとなっており、300~1200RPMの範囲内で速度調整が可能です。ベージュのファンフレームとブラウンのファンブレードというNoctuaらしいカラーリングです。『これぞNoctua!』という肯定的な意見もあれば、『ダサい、きたない』といった否定的な意見もある賛否両論なデザインですが、少なくともパッと見でNoctuaの存在を頭に刻み込むというブランド認知には一役買っていることは間違いありません。冷却ファンの軸を支えるフレームは細身の曲線になっておりエアフローを妨げない形状です。ファンフレーム四隅のブラウンの三角形パーツはゴム製でヒートシンクへファン回転の振動が伝わってケース全体で共振を起こすことを防止する役割を果たしています。
ファンブレードの筋やフレーム内側の窪みによって大型・大風量を維持しつつファンノイズを抑えています。
ファンの外寸は横150mm、縦140mmと独特な形状です。0時と6時部分のフレームが薄くなって、ここでもメモリヒートシンクとの干渉回避の配慮が加えられています。ネジ穴は120mmサイズの汎用ケースファンと同じ位置に配置されていました。
汎用の140mmファンとNF-A15 PWM Fanのフレーム内部を比較してみると、140mmファンよりも若干広くなっていることがわかります。
冷却ファンのヒートシンクへの固定方法はサイドフローCPUクーラーとしては一般的な針金のファンクリップを使用する方式です。
冷却ファンのネジ穴にファンクリップ左右端のU字部分を引っかけます。
あとはヒートシンクの溝にファンクリップ中央を引っかけるだけです。ファンクリップには中央に指をかけやすい凸形状があるので着脱も容易な構造になっています。
なおファンクリップ自体は25mm厚の120mmファンに合わせた寸法になっているものの、ネジ穴に引っ掛けるためのU字部分の幅が狭いので標準搭載のNF-A15 PWM Fan以外のケースファンを使う場合は注意が必要かもしれません。
2基目のファン用のファンクリップもCPUクーラーに付属するので「NF-A15 PWM Fan」を追加で購入すればプッシュプルのファンサンド構成も構築可能です。
なお追加ファンにはCPUクーラーに付属する厚手の防振ラバーパッドを装着してください。標準ラバーパッドのままだとファンが高速回転時のファンノイズが若干大きくなります。
「Noctua NF-A15 PWM Fan」は特殊形状の冷却ファンなので故障時にどうなるのか気になるところかもしれませんが、同製品はNoctuaから単品でも販売されているので保守部品の入手性についても心配ありません。市販の「Noctua NF-A15 PWM Fan」には標準でPWMファン2分岐ケーブルも付属します。
Noctua NF-A15 PWM Fan
Noctua (国内正規代理店Techace)
注意点として上で紹介するファン単品の「Noctua NF-A15 PWM Fan」は定格ファン速度が1200RPMで、CPUクーラー付属品の1500RPMよりも低い定格(最大)値になっています。
Noctuaによるとセカンドファンを増設する場合に一方のファン速度を落とすことによって静音性が高くなるので、市販品が1200RPMに設定されているのは間違いではないとのことです。
ただし定格ファン回転数が異なる以上、付属ファンが壊れてしまった時の保守部品として使用できないので(ファン速度が最大1200RPMで良ければ問題ないのですが)、定格1500RPMの互換品が必要な場合は、カラーリングがブラックになりますが「Noctua NF-A15 HS-PWM chromax.black.swap」を使用してください。
「Noctua NF-A15 HS-PWM chromax.black.swap」は定格ファン回転数が1500RPMで、カラーリング以外はCPUクーラー付属のNF-A15 PWMと同仕様となります。ただしPWMファン端子2分岐ケーブルが付属しないので、必要な場合は各自で用意してください。
Noctua NH-U14S TR4-SP3の外観
ヒートシンクと冷却ファンの個別チェックも済んだところで、ヒートシンクへ冷却ファンを組み込んで「Noctua NH-U14S TR4-SP3」の完成状態の外観や寸法をチェックしていきます。Noctua NH-U14S TR4-SP3はいかにも空冷CPUクーラーらしい外観で、直角的なデザインの大型アルミニウム製ヒートシンクが目立ちます。ニッケルメッキで防錆処理された独特の光沢も目を引くところです。加えてNoctua NH-U14S TR4-SP3は150mm径の異形大型ファンを搭載していることもありサイズ自体はミドルクラスのサイドフローCPUクーラーなのですが迫力があります。
アルミフィン1枚1枚にファンクリップ用の溝があるので、ファンを固定する高さはユーザー側で自由に設定可能です。高い位置にファンを固定すれば、当然その分だけCPUクーラーの高さが高くなります。
冷却ファンが標準位置に配置されている場合はヒートシンクの方が最高位置が高いので、「Noctua NH-U14S TR4-SP3」の全高は製品仕様通り165mmです。
Noctua NH-U14S TR4-SP3の検証機材・セットアップ
Noctua NH-U14S TR4-SP3を検証機材のベンチ機にセットアップします。ベンチ機のシステム構成は次のようになっています。テストベンチ機の構成 | ||
ベンチ機1 |
ベンチ機2 |
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OS | Windows10 64bit Home | |
CPU |
AMD Ryzen Threadripper 1950X 16コア32スレッド 定格3.6GHz (レビュー) |
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M/B | 【動作検証用】 ・ASRock Fatal1ty X399 Professional Gaming 【各種クリアランス検証用】 ・ASRock X399 Taichi(レビュー) ・ASUS ROG ZENITH EXTREME (レビュー) ・MSI X399 GAMING PRO CARBON AC (レビュー) ・GIGABYTE X399 AORUS Gaming 7 (レビュー) |
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メインメモリ | G.Skill Trident Z RGB F4-3866C18Q-32GTZR DDR4 8GB*4=32GB うち2枚使用 (レビュー) Kingston HyperX Fury HX424C15FB2K2/16 DDR4 8GB*2=16GB |
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グラフィックボード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
EVGA GTX 1080 SC2 (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung 850 PRO 256GB (レビュー) |
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電源ユニット |
Corsair RM650i (レビュー) |
Corsair HX1200i (レビュー) |
PCケース/ ベンチ板 |
STREACOM BC1 (レビュー) |
Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t (レビュー) |
検証機材メモリについて、「Noctua NH-9 TR4-SP3」では後ほど詳しく解説しますがメモリとCPUクーラーのクリアランスの関係で背の低いロープロファイルメモリの使用が推奨されるため、今回の検証ではCPUソケットに近い2スロットについては「Kingston HyperX Fury DDR4(型番:HX424C15FB2K2/16)」を使用するという変則的な構成になっています。
なお複数種のメモリが混ざっても動作自体は基本的に問題ありませんが、同じ種類を複数セット使うか最初から使用する枚数のセットを使用する方がおすすめです。
CPUクーラーの設置方法について、当サイトの評価基準となるチェックポイントは次の3つです。
- LGA115Xの場合、CPU固定バックプレートが単独でマザーボードに固定できるか
- マウントパーツ設置状態でCPUを交換できるか
- 空冷の場合、ネジ止めの場合はマザーボード側から固定できるか
簡易水冷or水冷ブロックの場合、ハンドスクリューなどツールレス固定ができるか
上の3項目を全て満たす例として本格水冷用のCPU水冷ブロックですが「EK-Supremacy EVO」のマウンタ構造は「バックプレートをM/Bに固定可能」「完全ツールレス」「マウンタ設置状態でCPUの交換が可能」なので本格水冷・簡易水冷クーラーの水冷ブロック固定方式としてはベストだと思っています。水冷クーラーメーカーにはどんどん真似してもらいたい理想的な構造です。
一応テンプレなので管理人的に高評価なCPUクーラーマウントについて説明しましたが、「Noctua NH-U14S TR4-SP3」についてはCPUソケットがそのままマウントパーツになっており、別途マウントパーツを装着する必要はありません。CPUクーラー本体に装着されたリテンションのネジで固定するだけなので非常に簡単です。
「Noctua NH-U14S TR4-SP3」のCPUクーラー装着について特筆すべきことがあるとすれば、リテンションブリッジが0/+3/+6mmnの3段階オフセットに対応している点です。この構造によってCPUクーラーのヒートシンクとマザーボードの最上段のPCI-Eスロットに装着された拡張カードが干渉するのを可能な限り回避できるようになっています。
ただしベースサイズの幅はオフセットが考慮されていません。オフセットするとヒートスプレッダとピッタリサイズのCPUクーラーベースプレートの位置もズレてしまうので使用上問題がなければ、オフセットなし0の位置で使用するのが推奨です。
CPUクーラーをマザーボードに固定する準備はこれで完了したので熱伝導グリスをCPUのヒートスプレッダに塗布します。熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
Thermal Grizzly Kryonaut TG-K-001-RS(少量、1g)
Thermal Grizzly Kryonaut TG-K-015-RS(1.5ml)
Thermal Grizzly Kryonaut TG-K-030-RS(3.0ml)
親和産業
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
「Noctua NH-U14S TR4-SP3」については製品マニュアルで下の画像のように推奨の塗り方が紹介されています。まず最初に等間隔に9カ所小さめに熱伝導グリスを落として、さらにその間の4か所に少し大きめに熱伝導グリスを塗るという塗り方が推奨されています。
普段は熱伝導グリスを上のようにてきとうに塗っているのですが、推奨の塗り方が紹介されているので今回の検証ではマニュアルにならってみました。
この塗り方で後ほどCPUクーラーを着脱してみたところCPUのヒートスプレッダ全体へ熱伝導グリスが綺麗に伸びていました。
熱伝導グリスを塗ったらCPUクーラーヒートシンクを乗せて付属のL字型ヘックスドライバーでネジ止めすればヒートシンクの装着は完了です。
あとはファンクリップでヒートシンクに冷却ファンを装着したらNoctua NH-U14S TR4-SP3の設置完了です。
Noctua NH-U14S TR4-SP3の各種クリアランス
CPUクーラーの性能検証に入る前に、空冷CPUクーラーにはつきものである最上段PCI-EスロットやVRM電源ヒートシンクやヒートシンクを搭載したシステムメモリとのクリアランス問題についてNoctua NH-U14S TR4-SP3の事情をチェックしていきます。まず最初にAMD Ryzen Threadripperに対応するX399チップセット搭載TR4 Socketマザーボードと直接的に関係のある最上段PCI-Eスロットとのクリアランスについてチェックします。クリアランスの検証マザーボードとしては後ほど冷却性能の検証機材としても使用する「ASRock Fatal1ty X399 Professional Gaming」に加えて「ASRock X399 Taichi」「ASUS ROG ZENITH EXTREME」「MSI X399 GAMING PRO CARBON AC」「GIGABYTE X399 AORUS Gaming 7」のロンチマザーボード5機種についても確認しました。
ATXフォームファクタの「ASRock Fatal1ty X399 Professional Gaming」「ASRock X399 Taichi」「GIGABYTE X399 AORUS Gaming 7」「MSI X399 GAMING PRO CARBON AC」については、Noctua NH-U14S TR4-SP3はいずれのマザーボードでもオフセット0でVRMヒートシンクや最上段のPCI-Eスロットと干渉することなく正常に設置することができました。ただしグラフィックボードのバックプレートの厚さによっては+3mmのオフセットが必要になるかもしれません。
「ASRock Fatal1ty X399 Professional Gaming」「ASRock X399 Taichi」
「GIGABYTE X399 AORUS Gaming 7」
「MSI X399 GAMING PRO CARBON AC」
E-ATXフォームファクタの「ASUS ROG ZENITH EXTREME」については製品公式ページの互換性表記通り「Noctua NH-U14S TR4-SP3」は設置自体は可能であるものの、オフセットを最大の+6mmに調整しても最上段のPCI-Eスロットにヒートシンクが被ってしまいます。最上段のPCI-Eスロットを使用しないのであれば使用上の問題はありませんが、最上段のPCI-Eスロットは使用できないということは押さえておいてください。
「ASUS ROG ZENITH EXTREME」
比較的大型な空冷CPUクーラーの多くに言えることですが、CPUクーラーとグラフィックボードの隙間が狭いので、CPUクーラーの設置自体は問題ないのですが取り外しの際には少し困るかもしれません。取り外しのためには定規などを使用してPCI-Eスロットのグラフィックボード固定爪を解除する必要があります。
取り付けよりも取り外しで困るというのは大型空冷CPUクーラーのあるあるネタなので注意してください。取り外しの際はグラフィックボード固定爪の解除のためにプラスチックの定規など細くて固いものを事前に用意しておくことをお勧めします。
続いて空冷CPUクーラーではヒートシンク付きDDR4メモリとの干渉が起きやすいのでリファレンス機材としてKingstonから提供いただいた「Kingston HyperX Fury DDR4(型番:HX424C15FB2K2/16)」などを使用してCPUクーラーとメモリの干渉の有無をチェックしていきます。
またその他のメモリのクリアランス検証の機材として「Samsung B-Die バルクメモリ(レビュー)」「Corsair Dominator Platinum(レビュー)」「G.Skill Trident Z Red/RGB/Black(レビュー)」「G.Skill Flare X(レビュー)」「Kingston HyperX Savage(レビュー)」「Corsair VENGEANCE LPX(レビュー)」についてもCPUクーラーとの干渉の有無をチェックしています。
AMD Ryzen Threadripperに対応するX399 TR4 Socket環境はクアッドチャンネルで最大8枚のメモリ装着に対応しており、使用するメモリ数に対して通常は次のようなレイアウトが推奨されています。CPUクーラーとメモリの干渉が発生する可能性が高いのは4枚刺し、もしくは8枚刺しを行う場合のCPUソケットに最も近い位置にある左右2つづつの4スロットとなります。
最初にASRock、GIGABYTE、MSIのATXマザーボードからメモリクリアランスについてチェックしていきます。これらのマザーボードにおける「Noctua NH-U14S TR4-SP3」のメモリクリアランスについては4枚刺しの場合はCPUスロットに最も隣接するメモリスロットを使用しないので「Corsair Dominator Platinum」や「G.Skill Trident Z Red/RGB/Black」のようなかなり背の高いヒートシンクを備えたメモリであっても干渉の心配はありません。
「ASRock Fatal1ty X399 Professional Gaming」「ASRock X399 Taichi」
「GIGABYTE X399 AORUS Gaming 7」
「MSI X399 GAMING PRO CARBON AC」
一方で8枚刺しの場合はCPUクーラー標準の全高165mmの範囲で使用しようとすると、基本的にヒートシンクなしで高さ31mmのDDR4メモリを使用する必要があります。全高が仕様より多少オーバーする可能性はありますが、「Kingston HyperX Fury」や「Corsair VENGEANCE LPX」など比較的背の低いヒートシンクのロープロファイルOCメモリであれば8枚刺しでも違和感なく使用可能です。
冷却ファンの固定はファンクリップを使用しており高さ方向のオフセット幅にかなり余裕があるので、標準の全高を無視してファンを上側に装着すれば「Corsair Dominator Platinum」や「G.Skill Trident Z Red/RGB/Black」のようなかなり背の高いヒートシンクを備えたメモリであっても8枚刺しで装着自体は可能です。
ただしファンの気流面と放熱フィンの範囲が大きくずれるので8枚刺しの場合はあまり背の高いメモリとの組み合わせはお勧めできません。8枚刺しの場合は「Kingston HyperX Fury」や「Corsair VENGEANCE LPX」など比較的背の低いヒートシンクのロープロファイルOCメモリの使用を推奨します。
続いてE-ATXフォームファクタの「ASUS ROG ZENITH EXTREME」についてチェックしていきます。CPUクーラーヒートシンクと最上段のPCI-Eスロットが干渉してしまいましたが、メモリのクリアランスについてはメモリ8枚刺しでCPUソケットに最も近い位置のメモリスロットを使用しても問題ないスペースが左右とも十分に確保されていました。
「ASUS ROG ZENITH EXTREME」
ATXフォームファクタを採用する他社マザーボードでは「Corsair Dominator Platinum」や「G.Skill Trident Z Red/RGB/Black」のようなかなり背の高いヒートシンクを備えたメモリは非推奨となりましたが、「ASUS ROG ZENITH EXTREME」なら問題なく8枚刺しで使用可能となっています。
メモリクリアランスが十分ながら「Noctua NH-U14S TR4-SP3」では最上段のPCI-Eスロットが干渉してしまう「ASUS ROG ZENITH EXTREME」ですが、シングルGPU環境であれば最上段と同じくPCI-E3.0x16帯域の5段目のスロットにグラフィックボードを設置するという手もあります。簡単にチェックしてみましたが1段目と5段目でグラボの設置位置ではグラフィック性能には差は出ません。
「シングルGPU環境で5段目にグラボを設置」、「大型ヒートシンク搭載メモリ8枚刺し」、「どうしてもASUS ROG ZENITH EXTREMEを使いたい」など複数の条件に見合えば検討してみる価値はあると思います。
今回検証で使用した各DDR4メモリとNoctua NH-D15のクリアランスに関する互換性は次の表のようになりました。
Noctua NH-U14S TR4-SP3のメモリクリアランス互換表 | |||
メモリの高さ | 4枚刺し | 8枚刺し ZENITHは全て〇 |
|
ヒートシンクなし | 31mm | 〇:使用可能 | 〇:使用可能 |
Kingston HyperX Fury <販売ページ> |
34mm +3mm |
〇:使用可能 | △: 全高が+3mm |
Kingston HyperX Savage <販売ページ> |
34mm +3mm |
〇:使用可能 | △: 全高が+3mm |
Corsair VENGEANCE LPX <販売ページ> |
34mm +3mm |
〇:使用可能 | △: 全高が+3mm |
G.Skill Flare X <販売ページ> |
39mm +8mm |
〇:使用可能 | △:やや非推奨 全高が+8mm |
G.Skill Trident Z <販売ページ> |
43mm +12mm |
〇:使用可能 | △:やや非推奨 全高が+12mm |
Corsair Dominator Platinum <販売ページ> |
54mm +23mm |
〇:使用可能 | △:非推奨 全高が+23mm |
なお追加でファンを購入してデュアルファン構成にする場合、排気側のファンにファンノイズ抑制のため厚手の防振ラバーパッド―を使用する場合メモリクリアランスに若干問題が生じます。
下のように厚手のラバーパッドを使用して冷却ファンを装着するとASRock、GIGABYTE、MSIのATXサイズマザーボードの場合(左)、2スロット目に装着されたヒートシンク付きメモリと干渉します。またASUS ROG ZENITH EXTREMEの場合(右)、1スロット目に装着されたヒートシンク付きメモリと干渉します。
そのため厚手のラバーパッドを使用する場合は、ASRock、GIGABYTE、MSIのATXサイズマザーボードで4枚刺しやASUS ROG ZENITH EXTREMEで8枚刺しでも、ASRock、GIGABYTE、MSIのATXサイズマザーボードで8枚刺しする時同様にメモリクリアランスを考える必要が出てくるので注意してください。
標準のラバーパッドでデュアルファンにする場合はシングルファン同様のメモリクリアランスとなりますが、ファンノイズが大きくなります。
Noctua NH-U14S TR4-SP3の冷却性能
本題となるNoctua NH-U14S TR4-SP3についてチェックしていきます。検証システムをベンチ板に置いた状態で測定を行っているためCPUクーラーが水冷・空冷によらず基本的にCPUクーラーの理想的な性能をチェックすることになります。
比較対象として、同じくNoctua製のRyzen Threadripper対応空冷CPUクーラーである「NH-U12S TR4-SP3」と「NH-U9 TR4-SP3」、またRyzen Threadripper対応の280mmラジエーター搭載ハイエンド簡易水冷CPUクーラー「NZXT KRAKEN X62」についても同一環境で検証を行いました。
検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間8分、WQHD解像度、60FPS、容量4.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はThreadripper 1950Xの場合10分ほどなので同じ動画のエンコードを2つ並列して2周実行しています。テスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
まず最初にAMD Ryzen Threadripper 1950Xの定格動作時のストレステスト中の温度をチェックしていきます。
定格動作においてはCPUへフルに負荷をかけると180Wの消費電力制限がかかるため綺麗に2乗根的なグラフになっています。Noctua NH-U14S TR4-SP3のファン回転数を1000RPMに固定していますが、最大57.6度という良好な数字です。280サイズラジエーター搭載のNZXT KRAKEN X62(900RPMx2)と比較しても遜色ない抜群のパフォーマンスです。ベンチ板の理想的な環境での測定ですが、サーマルスロットリングの発生する68度まで10度程度のマージンがあるのでPCケースへ組み込んでも定格で安定動作が見込めると思います。
続いてCPUコアクロックを全コア3.8GHz, 1.200V, LLC:Level2に手動でオーバークロックした時のストレステスト中の温度をチェックしていきます。
Noctua NH-U14S TR4-SP3のファン回転数は定格検証時と同じく1000RPMに固定していますが、最大温度64.3度となり定格時同様に優秀な数字です。NZXT KRAKEN X62については今回はファン回転数を1200RPMに上げていますが、1000RPMのままのNoctua NH-U14S TR4-SP3より少し冷える程度に留まっています。1950Xの全コア3.8GHz OCでは消費電力も200Wを超えてくるので放熱容量よりもCPUヒートスプレッダと接するベースの熱交換性能が効いてくるようです。
続いてCPUコアクロックを全コア3.9GHz, 1.237V, LLC:Level2に手動でオーバークロックした時のストレステスト中の温度をチェックしていきます。
Noctua NH-U14S TR4-SP3のファン回転数は定格検証時と同じく1000RPMに固定していますが、最大温度67.5度となり定格時同様に優秀な数字です。傾向としては3.8GHz OC時にオフセットがかかった感じです。
さらにCPUコアクロックを全コア4.0GHz, 1.275V, LLC:Level2に手動でオーバークロックした時のストレステスト中の温度をチェックしていきます。
ちなみに全コア4.0GHzについては検証で使用している1950Xの個体ではコア電圧を1.275Vに設定した場合、CPU温度が70度を超えるとランダムにフリーズします。1.300Vくらいまで盛ると70度を超えても落ちないのですが1.275V時よりも温度が高くなるので80度を超えると安定動作するか怪しくなってきます。このように1950XのOCについては4.0GHzを超えてくるとコア温度とコア電圧の板挟み状態になるので、CPUクーラーによる冷却が非常に重要になってきます。
1950Xの4.0GHz OCについては1.275Vの低電圧設定を使用しているため、冷却性能の不足する「NH-U12S TR4-SP3」と「NH-U9 TR4-SP3」については上述の通りフリーズするため比較対象から外して、代わりに個別販売のNF-A15 PWM Fanを使用してデュアルファン構成にした「Noctua NH-U14S TR4-SP3」を比較対象として追加しました。
前置きが長くなりましたが、Ryzen Threadripper 1950Xを全コア4.0GHzにオーバークロックした時のストレステスト中の温度は次のようになりました。
今回はNoctua NH-U14S TR4-SP3のファン回転数を最大の1400RPMに固定していますが、シングルファンでNZXT KRAKEN X62(1200RPMx2)よりも冷えるという結果になりました。やはりベースの熱交換効率の影響が大きいように感じます。Noctua NH-U14S TR4-SP3をデュアルファンにするとNZXT KRAKEN X62を1500RPMで回した場合よりも僅差高い冷却性能となりました。
今回はベンチ板でCPUクーラーの冷却性能を検証しているため、補足で詳しく解説しているようにPCケースへ入れた時と違って理想的な冷却性能の比較となっています。PCケースに組み込んだ場合は冷却風の温度の関係で簡易水冷CPUクーラーが有利になる傾向にありますが、「Noctua NH-U14S TR4-SP3」もPCケースの吸排気が万全であればRyzen Threadripperのロンチ対応簡易水冷CPUクーラーを超える冷却性能が発揮できる可能性は十分にあると思います。
またサウンドレベルメーター(騒音計)を使用してファンノイズをCPUクーラー別で比較しました。騒音計の収音部分とノイズ発生部分との距離が15cm程度になる位置で測定を行っています。簡易水冷の場合はラジエーターとポンプ両方からの距離が15cm程度になるように設置しています。
電源OFF時の騒音値は33~35dBです。目安として40dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになり、45dB前後で煩く感じます。50dBを超えてくるとヘッドホンをしていても煩く感じます。同じ騒音値でも不快に感じたり感じなかったりと音の性質にもよるので注意してください。
Noctua NH-U14S TR4-SP3はファン回転数1000RPMであれば騒音値も36.0dB程度となり電源OFF時と大差ない騒音値でほぼ無音で動作させることができます。1200RPMで39.3dBとなりこれ以上回転数を上げると40dBを超えてくるのでファンノイズがはっきりと聞こえるようになります。とはいえ最大でも43dB以下を示しているので全レンジで静穏性に優れたCPUクーラーです。
別売りオプションパーツを使用したデュアルファン構成にすると900RPM以降はシングルファンよりもファンノイズが大きくなるもののそれでも最大で45dB程度なのでデュアルファン構成へアップグレードしても静穏性を維持して運用するのは難しくないと思います。
Noctua NH-U14S TR4-SP3のレビューまとめ
最後にNoctuaのRyzen Threadripper対応ハイエンド空冷CPUクーラー「Noctua NH-U14S TR4-SP3」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- Noctua空冷らしい無骨なデザインでニッケルメッキのヒートシンクが美しい
- 140mm+径の大型冷却ファンをゆっくり回せるので静音性が高い
- ファン固定位置はクリップで上下に動かせるので大型ヒートシンク付きメモリも使用可能
- 16コア1950Xの定格はもちろん4.0GHz OCでも運用可能な冷却性能
- 別売りファン使用のデュアルファン構成でさらに冷却性能UPも狙える
- 良くも悪くもNoctuaらしいベージュ&ブラウンの冷却ファンのカラーリング
- 冷却ファンの形状が特殊なので汎用品は使いまわせない
(装着はできるかもしれませんがファン径が標準よりも小さくなるので非推奨) - 大型グラフィックボードと組み合わせた場合に取り付けは問題ないが取り外しが難しい
冷却性能の検証結果からもわかるように「Noctua NH-U14S TR4-SP3」はAMDの最新エンスー向けCPUで16コア32スレッドの最上位モデル「AMD Ryzen Threadripper 1950X」でも静音性を保ったままで十分に冷却できる性能があります。ファン回転数1000RPM程度でも十分な冷却性能を発揮できるので静音性にも優れたCPUクーラーです。
Noctua製Ryzen Threadripper対応空冷CPUクーラー3モデル中で最大サイズの「Noctua NH-U14S TR4-SP3」であれば空冷CPUクーラーながら1950Xのオーバークロックにも対応可能な冷却性能があります。ただし簡易水冷CPUクーラーに比べてPCケース組み込みでベンチ板計測時より冷却性能が下がりやすい傾向があるのでオーバークロックを行う場合はケース内の吸排気に注意が必要です。
ニッケルメッキで表面処理された大型のアルミ放熱フィンを搭載するヒートシンクは工業製品的な美しさがあるものの、Noctuaを代表するベージュ&ブラウンのカラーリングの冷却ファンはかなりユニークなのでNoctua NH-U14S TR4-SP3は総じて人を選ぶデザインだと思います。
またNoctua NH-U14S TR4-SP3に限った話ではありませんが比較的大型な空冷CPUクーラーでは取り付けは比較的簡単ですが大型グラフィックボードと組み合わせた場合に取り外しに難儀するのでその点は事前に押さえておいてください。取り外しの際はグラフィックボード固定爪の解除のために定規など細くて固いものが必要になります。
以上、「Noctua NH-U14S TR4-SP3」のレビューでした。
Noctua NH-U14S TR4-SP3 - 140mm [Noctua正規代理店]
Noctua NH-U12S TR4-SP3 - 120mm [Noctua正規代理店]
Noctua NH-U9 TR4-SP3 - 92mm [Noctua正規代理店]
Noctua
<TSUKUMO:U14S/U12S/U9><PCワンズ>
Noctua NH-U14S TR4-SP3のメモリクリアランス互換表 | |||
メモリの高さ | 4枚刺し | 8枚刺し ZENITHは全て〇 |
|
ヒートシンクなし | 31mm | 〇:使用可能 | 〇:使用可能 |
Kingston HyperX Fury <販売ページ> |
34mm +3mm |
〇:使用可能 | △: 全高が+3mm |
Kingston HyperX Savage <販売ページ> |
34mm +3mm |
〇:使用可能 | △: 全高が+3mm |
Corsair VENGEANCE LPX <販売ページ> |
34mm +3mm |
〇:使用可能 | △: 全高が+3mm |
G.Skill Flare X <販売ページ> |
39mm +8mm |
〇:使用可能 | △:やや非推奨 全高が+8mm |
G.Skill Trident Z <販売ページ> |
43mm +12mm |
〇:使用可能 | △:やや非推奨 全高が+12mm |
Corsair Dominator Platinum <販売ページ> |
54mm +23mm |
〇:使用可能 | △:非推奨 全高が+23mm |
・Noctua製Ryzen Threadripper対応空冷CPUクーラーのレビュー記事一覧へ
補足:空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて
動作検証に移る前に「空冷クーラー」と「水冷クーラー」の2種類ついて同じところと違うところ、また原理的に考えた冷却性能の比較を簡単に補足しておきます。まず大前提として当たり前ですが空冷クーラーも水冷クーラーも”最終的にCPUの発熱は空気に放出されます”。自作PCにおける空冷と水冷の違いは、どこの空気を使ってCPUクーラーの放熱フィンから空気への熱交換(放熱)を行うかです。
例えば次の画像のようなサイドフロー型の空冷CPUクーラーの場合、ケースフロントなどから吸気された空気はケース内を通り、CPUクーラーの放熱フィンでCPUから熱を放熱されます。CPUから放熱された暖かい空気はリアファンやトップファンから排気されますが、一部はケース内に残留する可能性があります。そのため「フロントから吸気されてケース内を経由してきた冷たい空気」と「一度CPUクーラーを通った暖かい空気」が混ざるため次第に冷却効率が下がることが予想されます。
一方で水冷(簡易水冷)CPUクーラーの場合は次のように、PCケース外から直接吸気を行う、もしくはPCケース外へ直接排気を行うことができます。水冷クーラーの場合、空気への放熱を行うラジエーターはPCケースという壁でイン・アウトが遮断されているため、PCケース内の空冷クーラーで起こるような一度放熱された空気が循環して冷却効率を下げるという現象が起きません。これが自作PCで水冷クーラーを使用するメリットです。
もちろん空冷でもケースファンを適切に設置すれば、一度熱せられた空気の循環が避けられる理想的な状態に近づきます。しかしその分ファンノイズが増えます。なので原理的にはPCケース壁で単純に熱交換部分のインアウトを遮断できる水冷クーラーのほうがよく冷えて静音になります。
ただし上の議論は最終的な放熱部分である「冷却に使用する空気」のみに着目して空冷と水冷を比較しています。つまり出口だけの議論なので、CPUヒートスプレッダからCPUクーラーベース部分への熱移動の効率、すなわち入口部分の性能が低ければあまり意味がありません。CPUクーラーの総合的な性能はベース部分の熱交換効率、放熱フィンやラジエーターの熱交換効率などいくつかのパラメータの組み合わせなので必ずしも水冷が空冷よりも冷えるわけではないことに注意してください。
また下の2つの画像では簡易水冷クーラーを吸気にした場合と排気にした場合で、ラジエーターに流入する空気を示す矢印の色を変えています。
まず前提として「部屋の体積はPCケースの体積よりも十分大きいのでPCで消費される程度の電力(1000W以下程度)では室温は変化せず一定」です。上の画像でPCケースへの吸気がケースフロントである場合、PCケース内には熱源が多数存在するためラジエーターに達するまでに空気は温められます。とすると空気の温度は「室温空気≦PCケース内空気」です。どんなに理想的なエアフローが存在したとしてもPCケース内を経由してラジエーターに達する空気は室温空気よりも低い温度にはなりえません。ラジエーターでの熱交換効率を左右するのは「空気とクーラントの温度差」と「ラジエーターを通過する空気の量」の2つなので「室温空気≦PCケース内空気」である以上、水冷クーラーにおいて「冷える排気」は存在しますが、「吸気よりも冷える排気」というものは存在しません。
吸気にすると熱風がPCケース内に入って壊れるとかのたまう人がたまにいますが、排気なしのケース密封で吸気にするようなそもそも馬鹿げた構成でもなければ起こりえないことなので無視してOKです。もし壊れるなら内排気空冷オリファングラボが真っ先に壊れます。
水冷クーラーを使用する場合、排気構成にしたほうがPCケース内からの見栄えがいいため、メーカーも排気構成のイメージサンプルを使用することが多い(おそらく)ですが、純粋な冷却パフォーマンスを考えれば排気よりも吸気のほうが性能が高いことは原理的に自明です。
見栄えを重視して排気にするのは全く問題ありませんし、そういう意図のもとで作られたカッコいい見せる自作PCは管理人も好むところです。しかしながらエアフローが云々とか吸気による故障を理由に「吸気よりも排気のほうが冷えるし安全」と主張するのは非常に恥ずかしいことなのでやめましょう。
最後に本題の空冷クーラーと水冷クーラーの違いについてまとめると、「水冷クーラーと空冷クーラーの理想的な性能を比べた場合どちらのほうが性能が高いかは製品次第ですが、水冷クーラーは熱交換部分をケース外に近い場所に配置できるので、吸気の簡易水冷クーラーは空冷クーラーに比べて理想的な性能を発揮しやすいという特徴があります。」
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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