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Radeon RX Vega 11グラフィックスを内蔵するRyzen APU"Raven Ridge"こと「AMD Ryzen 5 2400G」の殻割りOCレビューを行います。「AMD Ryzen 5 2400G」の殻割りを行ってCPUダイとIHSの間のグリスを液体金属に塗り替えることで、CPU全コア4.0GHzやGPUコア1700MHzの安定動作を狙っていきたいと思います。
Ryzen 5 2400Gの殻割りクマメタル化について
まず最初に「Ryzen 5 2400G」の殻割りクマメタル化について紹介しておきます。今回のレビューに当たってIntel CoffeeLake-SなどLGA115X系で使用できるRockit 88やIntel Skylake-Xで使用できるRockit 99を発売している国内公式通販ROCKIT COOL JAPAN様からRyzen 2400G/2200G用殻割りツールのプロトタイプをお借りしました。というか殻割りツールの開発版があるので試してみませんか?とのご連絡があったので今回の殻割りOCレビューに踏み切ったというのが正しい順番だったりします。
Ryzen APUについては上位モデルの「AMD Ryzen 5 2400G」ですらRX 560に届かない程度のグラフィック性能だということがプレスの段階でわかっていたのでスルーする予定でしたが、今回の殻割り検証のため例のごとく新たにCPUを補充した次第です。
簡単に「AMD Ryzen 5 2400G」の内容品についても紹介しておきますと、パッケージを開くとCPU本体とCPUクーラーの入った箱がそれぞれ収められています。
同じAM4ソケットのCPUなので当然ですが、Ryzen 5 1600とRyzen 5 2400Gの外見はほぼ同じです。
付属のCPUクーラーはアルミベース&アルミフィンの簡素なCPUクーラー「Wraith STEALTH」です。定格ならそのままでも問題ないと思いますが、静音性を求めたり、OCでパフォーマンス向上を狙うのであれば、同程度のロープロファイルな全高でAM4マウントに対応した高性能CPUクーラーとして「Cryorig C7(レビュー)」なども発売されているのでそちらがおすすめです。
Ryzen 2400G/2200G用殻割りツールのプロトタイプについては、基本的にRockit 88やRockit 99と同じく、万力型の殻割りツールになっており、IHSを再装着するためのRelidフレームなども付属しました。
ツールの使い方や殻割り実演については省略します。
というのもあくまで開発中の”プロトタイプ”なので、正直な感想を言うとこのツールは殻割りツールとして実用レベルに達していません。実はこのツールを使用した殻割りには2つの「AMD Ryzen 5 2400G」を使用しており、最初の殻割り作業はツールのみを使用して割ろうとした結果、見事に散りました、ダイ周辺のチップが。公式も同プロトタイプでは安全に割るのが難しいことを把握しており、改良版を開発中のようです。
2つ目は無事殻割りに成功したのですが、殻割りツールは補助的な扱いでした。殻割りツールでチップを粉砕しない程度に軽くずらすことでPCB基板とIHSの間の隙間を増やし、メインには「オルファ(OLFA) 特専黒刃ロング02 BBLG50K」という0.2mm厚の極薄カッター刃を使用してIHSとPCB基板の間のシール材を削りました。
「AMD Ryzen 5 2400G」のシール材はIntel LGA 115X系CPUのシール材と比較して、柔らかい反面、粘度が高くなっており、IHS内部のチップとのクリアランスの都合上、IHSを大きくずらせないため、管理人の私見としては万力法による殻割りは不向きです。Intel LGA 115X系CPUでは固いシール材を適度に柔らかくするためドライヤーで暖めますが、「AMD Ryzen 5 2400G」では逆に冷凍庫で数時間冷やしてからツールで割ろうとしましたがそれでも簡単かつ安全に割るのは無理でした。
ただ「AMD Ryzen 5 2400G」のシール材はカッター刃で容易に削れる程度に柔らかく、加えて、IHSとPCB基板の間には0.2mmのカッター刃が簡単に通せる程度の隙間があるので、「AMD Ryzen 5 2400G」や「AMD Ryzen 3 2200G」の殻割りを行うのであれば、今のところカッター法による殻割りをおすすめします。
IHS外周からPCB基板上のチップまでの距離は3mmほどなのでカッターの上側に養生テープなどで、カッター刃を差し込んでも安全な長さを示すことでセーフティにできます。使用するカッター刃は「オルファ(OLFA) 特専黒刃ロング02 BBLG50K」がおすすめです。
御覧の通り「Ryzen 5 2400G」のCPUダイとヒートスプレッダ間の熱伝導にはグリスが使用されています。「Ryzen 5 2400G」にはかなり固めのグリスが使用されており、写真を見てもわかりますが、IHSとCPUダイは直接接触しておらず、ほぼ全体がグリスを介しているようです。
殻を割ったら標準で塗られているグリスとヒートスプレッダを固定していたゴム系接着剤を除去します。グリスはアルコール系ウェットティッシュで拭いて除去します。PCB基板側のシール材についてはチップがすぐ傍にあるため爪で削るのが難しくなっています。そのため殻割りに使用したカッター派を使ってカンナで削る感じで薄くします。CPUダイとIHSが接してもIHSの外周はPCB基板から浮くのでこの方法でシール材を削るだけで大丈夫です。
CPUダイの周辺に実装されたチップについては安全のため絶縁耐熱接着剤で養生します。接着剤を使用した養生については、シール材跡付近まで塗ると後々IHSを再固定する時に干渉したら厄介なので、CPUダイ周辺のだけでOKです。外周部分のチップが剥き出しの部分は後ほどIHSを再固定するためのシール材でまとめて覆ってしまうので。
これでCPUダイとヒートスプレッダを間に液体金属系グリスを塗るための下準備は完了です。殻割り後に塗布する液体金属グリスとしてはリキプロこと「Liquid PRO」が定番のグリスでしたが、比較レビュー記事以来、管理人はさらに冷えるクマメタルさんにあっさり宗旨替えしました。
・リキプロ越え!「Thermal Grizzly Conductonaut」を殻割りi7 7700Kでレビュー
今回も液体金属グリスにはクマメタルさんこと「Thermal Grizzly Conductonaut」を使用しています。導電性があるのでCPUクーラーとヒートスプレッダの間には怖くて使えませんが、ヒートスプレッダでほぼ密封してしまう殻割り後の熱伝導グリスとしては抜群に冷えるのでおすすめです。
CPUダイ本体とヒートスプレッダのダイに接触する部分にクマメタルを塗って、ゴム系シール材で再度ヒートスプレッダをCPUのPCB基板に装着します。
Ryzen 5 2400GではCPUダイとIHSが接していても、IHS外周はPCB基板から浮くのでシール材が足になるように厚めに塗る必要があります。上の写真ではかなり多めに塗ったつもりだったのですがIHSを再装着して押し付けてもシール材が外に伸びてこなかったのでシール材の量の塩梅は結構難しいです。あとIHS外周がPCB基板から浮く距離がIntel系CPUと比べて大きいので、シール材がしっかりと足として機能するように24時間以上の硬化時間を置くのをおすすめします。
以上で「AMD Ryzen 5 2400G」の殻割りクマメタル化は完了です。
殻割りクマメタル化したRyzen 5 2400Gの冷え具合やOC耐性について
ここからは本題の殻割りクマメタル化したAMD Ryzen 5 2400Gの冷え具合やOC耐性についてチェックしていきます。殻割りクマメタル化したRyzen 5 2400GのOC検証にはMini-ITXサイズAM4マザーボード「ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/ac」などで構成される検証機材を使用しました。テストベンチ機の構成 | |
CPU | AMD Ryzen 5 2400G 4コア8スレッド 3.7~4.0GHz |
CPUクーラー | Wraith Max (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill FLARE X F4-3200C14D-16GFX DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) |
マザーボード |
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/ac (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung 850 PRO 256GB (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
AM4マザーボードには以前当サイトで詳細レビューをお送りした「ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/ac」を再度メーカーからお借りしました。Intel製コントローラーを採用する有線LAN&無線LAN搭載で8フェーズVRM電源による高OC耐性など「AMD Ryzen 5 2400G」との組み合わせにおすすめなマザーボードです。
・「ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/ac」をレビュー
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
以上で検証機材のセットアップも完了です。
さて殻割りクマメタル化を行った「Ryzen 5 2400G」の冷え具合の比較を見ていきます。
殻割り前後のCPUの冷え具合を比較するため、「Ryzen 5 2400G」のOC設定については「全コア3.9GHz」、「コア電圧1.450V」、「メモリOC:XMP(3200MHz, 14-14-14-34-CR1)」、「SOC電圧オフセット:+105mV」と設定しました。なおASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acでG.Skill FLARE X F4-3200C14D-16GFXのXMPプロファイルを使用する場合、ProcODTの自動設定では動作が安定しない場合があるので53.3ohmなど各自に個体にあった値に固定設定をお勧めします。
OC後のストレステストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間8分、WQHD解像度、60FPS、容量4.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はRyzen 5 2400Gの場合30分ほどなので同じ動画のエンコードを2周実行しています。テスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
殻割りクマメタル化前後でのRyzen 5 2400GのCPU温度は次のようになっています。
CPUクーラー「Wraith Max」でファン回転数を2000RPMとしていますが、Ryzen 5 2400Gの殻割り前はCPU温度が開始数分でCPU温度が80度に達してしまうのに対して、Ryzen 5 2400Gに殻割りクマメタル化を行うことで終始60度以下に収まりました。平均温度で見ても殻割り前後で20度の温度差が出ています。
「Ryzen 5 2400G」の殻割りクマメタル化後に、さらに上と同じ条件でコアクロックの動作周波数のみ変更して全コア4.0GHzにOCすることができました。同個体では殻割り前に4.0GHzにOCするとCPU温度が上がり過ぎてBSODが避けられませんでしたが、殻割り後は4.0GHzでも「Wraith Max」の冷却でCPU温度は60度前後に収まって安定動作しました。
続いて「AMD Ryzen 5 2400G」に搭載されているRadeon RX Vega 11グラフィックスのGPUコアクロックをOCしてみました。
GIGABYTEやMSIのRyzen 5 2400G対応AM4マザーボードではBIOS上でGPUコアクロックおよびGPUコア電圧の設定項目があるのですが、「ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/ac」にはBIOS:4.60の時点ではまだGPUに関する設定項目が用意されておらず、Windows上で動作するAMD公式のRyzen CPUのオーバークロックソフト「Ryzen Master」を使用してOCを行います。「Ryzen Master」で設定を行う際にCPUコアクロックやCPU電圧など被る部分のチェックボックスを外せば、BIOS上のOC設定と併用が可能です。
GPUコア電圧を1.300V、SOC電圧を1.250Vに昇圧することでRadeon RX Vega 11グラフィックスのGPUコアクロックを1700MHzにOCできました。個体差はあるものの関連電圧を盛れば1700MHz程度でも動作しますが、長期の安定動作を狙うのであれば個人的には1600MHz程度に収めるのがおすすめです。
「Ryzen 5 2400G」でRadeon RX Vega 11グラフィックスのGPUコアクロックを1700MHz、システムとGPUで共通となるメモリクロックを3200MHzにOCすることで、3DMark FireStrikeのグラフィックスコアは4000を超えました。
以上、「AMD Ryzen 5 2400G」の殻割りOCレビューでした。
G.Skill F4-3200C14D-16GFX DDR4-3200 8GB×2 AMD Ryzen用メモリ
G.Skill
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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