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第2世代RyzenをX470チップセット搭載AM4マザーボードと組み合わせることで利用可能な新機能「Precision Boost Overdrive」について解説します。第2世代Ryzenは第1世代よりも改良が加えられた冷却性能依存の自動OC機能「XFR 2.0 (Extended Frequency Range 2.0)」によるCPUコアの動作クロックアップに対応していますが、新機能「Precision Boost Overdrive」を使用することによって、自動OCによる動作クロックアップをさらに底上げして高速動作を実現できます。
DSC05304_DxO



Precision Boost 2やXFR 2について

第2世代Ryzenの新機能「Precision Boost Overdrive」について解説するにあたって、TDP内でコアクロックを上昇させてパフォーマンス向上を図る「Precision Boost」や、冷却性能に応じて(TDPを超えて)追加の自動OCが行われる「XFR (Extended Frequency Range)」など諸機能について予備知識として簡単に紹介しておきます。

まず「Precision Boost」や「XFR (Extended Frequency Range)」などRyzen CPUの高性能を支える諸機能はまとめて「SenseMI Technology(SenseMI)」と呼ばれています。SenseMIの概要は、『数百個に及ぶ電圧、電流、温度などの各種センサーをプロセッサ内に実装し、そのデータをリアルタイムに参照しながら、適応型の内部操作処理を行う』というものになっています。
つまりモニタリングしたデータをRyzen独自のインターコネクタ「Infinity Fabric」を介してフィードバックし、「Pure Power」や「Precision Boost」でパフォーマンス向上を図る、というループ制御をリアルタイムで行っています。
SenseMI Technology_Cotrol
「Pure Power」はパフォーマンスを維持しつつ消費電力を最小限に抑える機能です。下のグラフのように同じ性能を低消費電力で実現する機能になっています。
Pure Power
一方で「Precision Boost」はPure Powerと相互連携して動作しており、同じ電力内で最大のパフォーマンスを発揮できるように、25MHz単位でCPU動作クロックを上下させる機能になっています。
Precision Boost
さらに自動OC機能「XFR (Extended Frequency Range)」では、CPUの冷却が十分であれば(CPU温度が十分低ければ)、各CPUの定格動作として既定されている電力制限を超える電力で動作することを許容して、「Precision Boost」で上昇させられるコアクロックよりもさらに高い動作クロックで動作させる機能になっています。
XFR (Extended Frequency Range)
例えばRyzen 7 1800Xは定格では全コア同時3.6GHzが最大動作クロックですが、CPU温度が十分に低くXFRが機能すると最大で全コア3.7GHz動作となります。
Ryzen 7 1800X

第2世代Ryzenではこれらの機能のうち「Precision Boost」と「XFR (Extended Frequency Range)」が、「Precision Boost 2」と「XFR 2 (Extended Frequency Range 2)」にバージョンアップしています。
SenseMI Technology_Ryzen+
「Precision Boost 2」の特徴は、第1世代のPrecision Boostと違って、動作クロックの上昇が動作コア数に制限されなくなったことです。例えばRyzen 7 1800Xでは1~2コアの負荷では負荷のかかっているコアの動作クロックが4.0GHz以上に上がりましたが、たとえ電力制限内であっても全コアが動作すると動作クロックは定格の3.7GHzまで下がりました。一方「Precision Boost 2」が機能するRyzen 7 2700Xであれば電力制限内ならば全コアの同時負荷であっても定格に影響されず全コア4.0GHz以上で動作できます。
Precision Boost 2
「XFR 2 (Extended Frequency Range 2)」については「Precision Boost 2」に対応して、温度が十分に低ければさらに高い電力、高い動作クロックで動作させられるようになる強化版になっています。
XFR2 (Extended Frequency Range 2)



Precision Boost Overdriveについて

以上の予備知識を踏まえて、第2世代Ryzenの新機能「Precision Boost Overdrive」とは一体どんな機能なのかというと、『「Precision Boost 2」および「XFR 2」による自動OC機能に設けられている電力制限等の上限を取り払って、さらに動作クロックを上昇させる機能』になっています。
precision-boost-overdrive
AMD公式の動画で紹介されているように、第2世代Ryzenには動作クロック、電圧、電力に関して安定動作可能なテーブルが用意されており、XFR2で最大まで自動OCしてもまだ余裕が残されています。「Precision Boost Overdrive」のその残された余力を最大限まで発揮する機能です。
AMD Ryzen Threadripper 2Gen_PBO table

「Precision Boost Overdrive」はAMD純正のRyzen CPUのオーバークロックツール「Ryzen Master」上で後日、解放予定の新機能となっており、5月上旬の時点ではまだ「Ryzen Master」で使用することができません。
AMD Ryzen Master_3

第2世代Ryzenに対応するX470マザーボードの一部では、BIOS上から「Precision Boost Overdrive」に関する設定が解放されており、ここから設定を行うことで「Precision Boost Overdrive」を使用することができます。
5月上旬の時点では「ASRock X470 Taichi」「ASUS ROG STRIX X470-F GAMING」「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO」「GIGABYTE X470 AORUS GAMING 7 WIFI」「MSI X470 GAMING M7 AC」など各社の上位マザーボードのBIOSメニュー上に設定項目の存在が確認できています。
Precision Boost Overdrive_BIOS_ASRockPrecision Boost Overdrive_BIOS_ASUS
Precision Boost Overdrive_BIOS_GIGABYTEPrecision Boost Overdrive_BIOS_MSI

「Precision Boost Overdrive」に関するBIOS設定は各社共通しており、大きな項目として電力制限を指定する「Precision Boost Overdrive」、最大電圧とその電圧を維持できる時間を指定するPrecision Boost Overdrive Scaler」の2つがあります。
Precision Boost Overdrive_BIOS_Setting

電力制限に関する「Precision Boost Overdrive」は基本的に有効、無効、手動設定が選択でき、手動設定では小項目として「PPT Limit」「TDC Limit」「EDC Limit」の3つがあります。
「PPT Limit」(おそらくPackage Power Target Limitの略)は、電力[W]単位の設定値となっており、Precision Boost Overdriveの有効時にCPU全体が消費可能な電力を指定しているようです。定格動作では141.75Wですが、「Precision Boost Overdrive」を有効にすると自動的に1000Wに上昇します。141.75Wというのは、XFR2で冷却性能に依存して消費できる最大電力を示しているのだと思います。

「TDC Limit」(Thermal Design Current Limitの略)は、電流[A]単位の設定値となっており、AMD公式のRyzen CPU OCマニュアルでは下のように表現されています。おそらくIntel CPUで言うところの長時間電力制限にあたる設定項目と思われ、定格では95A、「Precision Boost Overdrive」を有効にすると自動的に114Aに上昇します。
Thermal Design Current (TDC) is presented for the CPU and SOC power domains,
respectively, expressed as a % of motherboard capacity. This can best be
understood as sustained amperage vs. motherboard capacity for a thermallysignificant
workload.

「EDC Limit」(Electrical Design CurrentLimitの略)は、電流[A]単位の設定値となっており、AMD公式のRyzen CPU OCマニュアルでは下のように表現されています。おそらくIntel CPUで言うところの短時間電力制限にあたる設定項目と思われ、定格では140A、「Precision Boost Overdrive」を有効にすると自動的に168Aに上昇します。
Electrical Design Current (EDC) is presented for the CPU and SOC power
domains, expressed as a % of motherboard capacity. This can best be understood as
the peak amperage for a short period of time.

さらに「Precision Boost Overdrive」で限界まで自動OCが実行される際の、最大電圧やその電圧を維持できる時間を指定する設定項目として「Precision Boost Overdrive Scaler」があります。手動設定の場合は9段階でX2~X10の値を設定できますが、具体的に動作クロックにどのように影響するのかよくわかりません。
Precision Boost Overdrive_BIOS_Setting_2



Precision Boost Overdriveで動作クロックはどう変わるのか

第2世代Ryzenの新機能「Precision Boost Overdrive」の概要については紹介できたので、実際にX470マザーボードとRyzen 7 2700Xを組み合わせて、「Precision Boost Overdrive」が機能している時の動作クロックを確認してみました。

検証環境としては、以下のテーブルに表記した検証機材で構成されているベンチ機を使用しました。
テストベンチ機の構成
CPU AMD Ryzen 7 2700X
レビュー
CPUクーラー Corsair H150i PRO RGB
レビュー
マザーボード
・ASRock X470 Taichi (レビュー
・ASUS ROG STRIX X470-F GAMING (レビュー
・ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (レビュー)
・GIGABYTE X470 AORUS GAMING 7 WIFI (レビュー
・MSI X470 GAMING PRO CARBON (レビュー
メインメモリ G.Skill FLARE X
F4-3200C14D-16GFX
DDR4 8GB*2=16GB (レビュー
ビデオカード MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC
ファンレス (レビュー
システムストレージ
WD Blue 3D NAND SATA SSD 500GB
レビュー
OS Windows10 Home 64bit
電源ユニット Corsair HX1200i (レビュー


標準設定時のRyzen 7 2700Xの動作は組み合わせるマザーボードによるのですが、多くのX470マザーボードではXFR2は有効、「Precision Boost Overdrive」は無効となっており、CPUクーラーの冷却が十分であれば、全コア3.9~4.0GHz程度で動作します。
screenshot.1525573254

第2世代Ryzenはブーストクロックが25MHz単位で制御されるのですが、マザーボード別にCinebench中の動作クロックを確認してみたところ次のようになりました。多くのX470マザーボードでは基本的にはPBOは無効になっていますが、ASUS ROG STRIX X470-F GAMINGのように標準で有効になっている製品もあるようです。
今回検証に使用したRyzen 7 2700XはPBO無効では3975MHz~4000MHzで動作クロックが変動しますが、PBOを有効にすると4075MHz~4100MHzまで動作クロックが上昇しました。「Precision Boost Overdrive」を有効にすることで、標準設定よりも100MHz程度全コア同時動作クロックを上昇させることができるようです。
Ryzen 7 2700Xのマザーボード別動作クロック
マザーボード PBO無効 標準設定 PBO有効
ASRock X470 Taichi
(BIOS:1.30)
3925MHz
3925MHz 4025MHz
~4050MHz
ASUS ROG STRIX X470-F GAMING
(BIOS:4011)
3975MHz
~4000MHz
4050MHz
~4075MHz
4075MHz
~4100MHz
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO
(BIOS:0601)
3975MHz
~4000MHz
3975MHz
~4000MHz
4050MHz
GIGABYTE X470 AORUS GAMING 7 WIFI
(BIOS:F4e)
4000MHz 4000MHz 4075MHz
~4100MHz
MSI X470 GAMING PRO CARBON
(BIOS:200)
- 3975MHz -

「Precision Boost Overdrive」を有効にした場合と、「Precision Boost Overdrive」無効でXFR2によって最大まで自動OCされている場合とでCinebench中のシステム全体の消費電力を比較すると次のようになりました。コアクロック100MHzの上昇で消費電力は40Wくらい大きくなってしまうので、ワットパフォーマンス的に美味しくないためAMD公式も標準では封印した経緯があるのかもしれません。VRM電源への負荷も増えますし。
Precision Boost Overdrive_power

Ryzen 7 2700Xでは標準で上限近い動作になっているためPrecision Boost Overdriveの効果が微妙ですが、ポテンシャルに対して動作クロックが控えめな第2世代Ryzen ThreadripperにおいてはPrecision Boost Overdriveはかなり有用な機能になっています。
「AMD Ryzen Threadripper 2990WX」でPrecision Boost Overdriveを使用する場合の、設定値の目安や実際の動作についてはこちらの記事で解説しているので参考にしてください。
AMD Ryzen Threadripper 2990WXにPrecision Boost Overdriveを適用してみる
AMD Ryzen Threadripper 2990WX




以上、『第2世代Ryzenの新機能「Precision Boost Overdrive」を徹底解説』でした
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)



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