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第2世代Ryzen ThreadripperのTDP250Wな上位モデルに対応すべく、13フェーズの大容量VRM電源回路と、X470マザーボードで高評価を得たGPUクーラー開発で培った技術から転用した放熱フィン設計「Fins-Array technology」を採用したVRM電源クーラーを搭載するパーソナルワークステーション向けX399マザーボード「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」をレビューしていきます。
製品公式ページ:https://www.gigabyte.com/jp/Motherboard/X399-AORUS-XTREME-rev-10
マニュアル:http://download.gigabyte.asia/FileList/Manual/mb_manual_x399-aorus-xtreme_1001_j.pdf
GIGABYTE X399 AORUS XTREME E-ATXマザーボード
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GIGABYTE
Amazon.co.jp で詳細情報を見る<TSUKUMO><PCショップアーク><ドスパラ>
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【注意事項】
検証中のトラブルなども記事内で記載していますが、第2世代Ryzen Threadripper CPU自体が発売されたばかりなので、OSの問題なのか、マザボBIOSの問題なのか原因の切り分けが現状でできないものも少なくありません。今後ドライバやBIOSなどソフトウェアの更新でパフォーマンスや安定性が向上することは期待できると思うので、その辺りも念頭に置いて読んでもらえるとありがたいです。
同検証は18年9月下旬に行っておりGIGABYTE X399 AORUS XTREMEのBIOSはF4cを使用しています。最新BIOSでは修正されている不具合や追加されている機能もあると思うので、最新BIOSのリリースについては公式ページを各自でチェックしてください。
サポート:https://www.gigabyte.com/jp/Motherboard/X399-AORUS-XTREME-rev-10#support-dl-bios
【18年10月18日:初稿】
レビュー記事初稿を公開、BIOS:F4cで検証
GIGABYTE製のマザーボードについて
GIGABYTE製マザーボードについてはGIGABYTEの公式サポートページにおいてアカウント登録が必要ですが、意外なことに日本語による問い合わせに対応しています。問い合わせページのインターフェースの言語は英語なので英語で行けるところは英語で入力するほうがいいと思いますが、長文を書く必要がある問い合わせの本文では日本語で書いてもしっかり対応してもらえました。サポートページ:http://esupport.gigabyte.com/Login/Index?ReturnUrl=%2f
国内のマザーボードベンダー大手を見ると、ASUSとMSIが代理店に丸投げで直通の有人サポートなしに対して、GIGABYTEは日本語対応可能な有人サポートありというのはかなり好印象です。メーカー直通の日本語対応有人サポートが欲しい人はGIGABYTE製マザーボードの購入を検討する価値はあると思います。
GIGABYTEマザーボードでは多数の独自機能アプリが用意されており、統合ランチャーである「APP Center」をスタート地点に利用できます。なお独自アプリの一部は「APP Center」をインストールしてからでないとインストール・使用できないので注意してください。
オンラインであればAPP Centerから最新ドライバやソフトウェアをインストール可能です。「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」専用アプリは10近くありますが必要なものだけをスマホのアプリ感覚で簡単にインストールできるのでAPP Centerは非常に便利なクライアントソフトです。
「RGB Fusion」やファンコン統合インフォソフト「System Information Viewer」などユーザーにとって魅力的なアプリが多岐にわたって展開されていますが、各アプリの機能や使い方の概要は下の公式紹介ページにて日本語でわかりやすく解説されているので、GIGABYTE独自アプリを使いたい人は参考にしてください。
GIGABYTE独自アプリ解説:http://www.gigabyte.jp/MicroSite/369/images/app-center.html
GIGABYTE X399 AORUS XTREME レビュー目次
1.GIGABYTE X399 AORUS XTREMEの外観・付属品
2.GIGABYTE X399 AORUS XTREMEの基板上コンポーネント詳細
3.GIGABYTE X399 AORUS XTREMEへのパーツ組み込み(ギャラリー)
4.GIGABYTE X399 AORUS XTREMEの検証機材のセットアップ
5.GIGABYTE X399 AORUS XTREMEのBIOSについて
6.多機能かつ使いやすいファンコン機能「スマートFan 5」について
7.イルミネーション操作機能「GIGABYTE RGB Fusion」について
8.GIGABYTE X399 AORUS XTREMEのOC設定について
9.GIGABYTE X399 AORUS XTREMEの動作検証・OC耐性
10.GIGABYTE X399 AORUS XTREMEのレビューまとめ
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEの外観・付属品
まず最初にGIGABYTE X399 AORUS XTREMEの外観と付属品をチェックしていきます。GIGABYTE X399 AORUS XTREMEのパッケージはマザーボードの箱としては独特な上開き化粧箱になっていました。開閉しやすく高級感もあります。
パッケージを開くと上段にはマザーボード本体はスポンジクッションのスペーサーの中に収められていました。マザーボードを取り出すと2重底になっており下段には各種付属品が入っています。
なおここまで某A社のR〇Gシリーズと梱包はほぼ同じ形式でした、いいんだろうか?
付属品一覧は次のようになっています。
マニュアルやドライバCDなど必要なものが一通り揃っています。ドライバ類についてはそろそろUSBメモリに移行して欲しいところ。ファングッズとしてはステッカー、バッジが付属します。
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEの付属マニュアルは全編日本語の詳細なものが付属しました。同じ日本語マニュアルはサポートページで公開されているので事前に確認可能です。
マニュアル:http://download.gigabyte.asia/FileList/Manual/mb_manual_x399-aorus-xtreme_1001_j.pdf
組み立てに関連する付属品としては、SATAケーブル6本、WiFiアンテナ、M.2 SSD固定ネジセット、M.2ヒートシンク着脱用六角レンチ、RGB+W 5PIN汎用LEDテープ接続ケーブル×2、アドレッサブルLED変換ケーブル×2、SLI HBブリッジ、サーモセンサー2本、G-Connector、トルクスL字レンチとなっています。GIGABYTE X399 AORUS XTREMEは外部温度センサーに対応しているのでそれに接続できるサーモセンサーも付属しているところが特徴的です。
付属する6本のSATAケーブルについては一般的なビニール被膜タイプではなく、スリーブ化された高級感のあるSATAケーブルが6本付属しています。
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEにはGTX 10XXシリーズの広帯域SLI接続に対応した2スロットスペース型SLI HBブリッジが付属しています。(ただし18年9月発売のRTX 20シリーズからはNVLinkブリッジに変わるのでディスコンに)
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEには汎用LEDヘッダーとして、マザーボードメーカー各社が採用しているRGB 4PINではなく、白色LEDを搭載するRGBWに対応した5PIN LEDヘッダーが2基実装されており、それに対応した延長ケーブルが2本付属します。
PINアサイン自体はRGB 4PINにWの1PINが追加されただけなので、LED機器側の端子はWの1PINが分離可能な構造になっており、RGB 4PINのLED機器も問題なく使用可能です。
またGIGABYTE製マザーボード上に実装されたVD-G型アドレッサブルLEDヘッダーを、「ASUS ROG ADDRESSABLE LED STRIP-60CM」等でも採用されている3PINコネクタに変換するケーブルも2本付属します。
GIGABYTEの一部のマザーボードではフロントパネルコネクタのマザーボードへの装着を簡単にする独自パーツ「G-Connector」が付属します。
今回は検証用スイッチ&LEDで試してみましたが次のように「G-Connector」へ各種コネクタを装着します。あとはこのまま「G-Connector」をマザーボードのフロントパネルヘッダーに挿せばOKという非常に便利な独自機能です。
マザーボード全体像は次のようになっています。
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEはE-ATXフォームファクタのマザーボードで一般的なATXフォームファクタよりも横幅が30mm程大きい272mmとなっています。
マザーボード右下のチップセット用ヒートシンクの中央に配置されたメタリックグレーのヘアラインアルミニウム製プレートには同製品のブランドネーム「AORUS」を示す「Speed(素早さ)」「Power(力強さ)」「Accuracy(精密さ)」を表現したという”鷹(ファルコン)”をモチーフにしたロゴが描かれています。ブラックプレート部分には電子回路を模したパターンが描かれるなどこれまでのAORUSデザインも踏襲され、M.2 SSDヒートシンクも取り込んだ一体感のあるデザインです。
「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」のリアI/OカバーはCPUソケット左側に拡張されたVRM電源ヒートシンクに大きく覆い被さる形状です。メーカー公式ページによると、リアI/Oカバーの輪郭はAORUSブランドのモチーフである”鷹(ファルコン)”の飛行中の姿勢と優美さ再現しつつ、LEDイルミネーションゾーンは近未来的なスペースシップのフロントガラスをイメージしているとのこと。
GIGABYTE製X399マザーボードの初期モデルでは8フェーズのVRM電源が搭載されていましたが、X399 AORUS XTREMEはTDP250Wの第2世代Ryzen Threadripper WXシリーズに対応すべく、CPU用10フェーズ&SOC用3フェーズで計13フェーズの大容量VRM電源が実装されています。
13フェーズの大容量VRM電源にはIR3578 デジタルPWMおよびPowIRstage MOSFETが採用され、1フェーズ当たり最低で50Aの電力供給が可能です。VRM電源間の負荷が均一に分散するよう調停することによって一部のVRM電源へ集中した過負荷がかかりオーバーヒートが発生することを防ぎ、安定した電力供給を可能にしています。また高電流耐性・低発熱なサーバー級チョークコイルや超低ESR特性で長寿命のDurable Black固体コンデンサなどサーバークラスの高信頼性コンポーネントでVRM電源はデザインされています。
「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」のVRM電源クーラーには「Direct Touch Heatpie」、「High Thermal Conductivity Pad」、「Fin-Array Heatsink」、「Dual-Fan Design」、「NanoCarbon Back Plate」などが採用されており、GIGABYTEが開発してきた技術の粋を集めた設計です
当サイトのX470マザーボードレビューでも高評価だった設計ですが、「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」でも、グラフィックカード設計で培ったクーラー技術として100枚以上の放熱フィンプレートで構成される放熱用フィン設計「Fins-Array technology」を採用することにより、従来のアルミニウム塊型ヒートシンク形状に比べ放熱面積を300%増加させています。
加えてVRMからの発熱を速やかに拡散するヒートパイプのダイレクトタッチ構造や、従来のサーマルパッドよりも同じ時間に2.7倍の熱を伝達することが可能な5W/mK の高熱伝導率パッドが使用されています。
CPUソケット左のVRM電源クーラーヒートシンクに大きく覆い被さるリアI/Oカバーの内部にはVRM電源を冷やすために2基の30mm角小型ファンが内蔵されています。子の冷却ファンは「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」のVRM電源回路の中で1番目と2番目に熱くなるVRM電源フェーズのすぐ傍に配置された温度センサーによって検出される温度をコントロールソースとして制御されています。
VRM電源冷却ファンは「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」のSYS_FAN_2端子と接続されており、BIOSやOS上アプリから設定可能なファン制御機能Smart Fan 5に対応しています。
最大32コア64スレッドとなる第2世代Ryzen Threadripper CPUへ安定した大電力供給が行えるように「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」のEPS端子は8PIN×2が実装されています。EPS電源端子については電源容量800W以下の電源ユニットでは1つしか端子がない場合があるので、EPS端子が足りているか事前に注意して確認してください。
また「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」のマザーボード背面には重量の大きい大型のグラフィックボードやCPUクーラーの負荷による基板の曲がりなどを防止する金属製バックプレートが装着されています。
バックプレートの表面には熱放射性能を高めるナノカーボン表面加工が施されており、マザーボードのVRM電源部分の裏面とバックプレートはサーマルパッドを介して接触しているので、バックプレートが放熱板の役割を果たし、約10%高いVRM電源の冷却を実現します。
さらに「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」にはマザーボード一体型リアI/Oバックパネルも採用されています。PCケースにパネルを装着する作業は固くて装着し難かったり、忘れてしまうこともあるのでマザーボードに標準で統合されているのは嬉しい機能です。
リアI/Oに設置されたUSB端子のうちType-AとType-Cで計2基の赤色USB端子は最新のUSB3.1 Gen2規格に対応しています。そのほかのUSB端子についてはUSB3.0端子が8基設置されています。個人的に残念なポイントとしてはUSB3.0/3.1は無線マウスと電波干渉を起こすことがあるので少し離れた場所に追加でUSB2.0を設置して欲しかったです。
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEのネットワーク関連では低CPU負荷かつ高スループットで定評のあるIntel純正のLANコントローラーが採用された有線LAN端子が2基も搭載されています。さらに一般的な有線LANの10倍の速度を誇る10Gb/sに対応した「AQUANTIA 10Gb/s BASE-T イーサネット」である赤色の有線LAN端子も標準で実装されています。
加えてIntel製のワイヤレスモジュールも実装されています。接続規格としてはWi-Fi 802.11 a/b/g/n/ac、2.4/5GHzデュアルバンド、Bluetooth 4.2に対応しています。リアI/Oには無線モジュールのアンテナ端子が設置されており、付属のアンテナを接続できます。
重量計を使用して重さを測定してみたところ、ATXサイズX399マザーボードのGIGABYTE X399 AORUS Gaming 7は1359g、GIGABYTE X399 Designare EXが1802gに対して、GIGABYTE X399 AORUS XTREMEは2046gでした。E-ATXサイズで豪華な構成となっている分だけ重量もかなり大きくなっています。
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEの基板上コンポーネント詳細
続いて「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。Ryzen Threadripper用TR4ソケットはLOTESとFOXCONNの2社が製造しており、各社マザーボードで採用されていますが、「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」にはFOXCONN製ソケットが搭載されていました。TR4ソケットの一部にはかなり力を入れて押し付けないとソケットのネジが噛み合わないものがありますが、「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」のソケットはネジの噛み合わせに十分な遊びがあって簡単にネジを締めることができました。
システムメモリ用のDDR4メモリスロットはCPUソケット両側に8基のスロットが設置されています。
固定時のツメはマザーボード上側の片側ラッチとなっています。グラフィックカードのあるPCI-Eスロット側はラッチがないので干渉の心配もありません。
DDR4メモリスロットには外部ノイズEMIから保護して安定したメモリOC環境を実現し、またメモリモジュールの挿抜によるPCB基板の歪みや破損を防止する金属シールド「Ultra Durable Memory Armor」が実装されています。
グラフィックボードなどを設置するPCI-Eスロットは全7段で上から[x16、N/A、x16、x1、x16、N/A、x16]サイズのスロットが設置されています。実際のPCI-Eレーン帯域については1段目と5段目はPCI-E3.0x16、3段目と7段目はPCI-E3.0x8、4段目はPCIE3.0x1です。プライマリGPUは1段目のスロットなので大型のハイエンド空冷クーラーを使用する場合はグラフィックボードとCPUクーラーの干渉に注意が必要です。
グラフィックボード向けのx16スロットとしてプライマリは1段目、セカンダリは5段目に配置されており、現在主流な2スロット占有グラフィックボードやハイエンドGPUのオリファンモデルで採用の増えている3スロット占有グラフィックボードを使用しても下位グラフィックボードが上位グラフィックボードのエアフローを妨げないよう配慮されています。付属の2スロットスペース型SLI HBブリッジを使用すれば、NVIDIAの最新GPUであるGTX 1080 TiやGTX 1070 Tiを使用したマルチGPU SLI環境を構築可能です。
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEには最近のトレンドとしてx16サイズスロット全てにPCI-Eスロット補強用メタルアーマー「Ultra Durable PCIe Armor」とPCI-Eスロット左右端の固定を補強するGIGABYTE特許取得済「Double Locking Bracket」による2重の保護が施されています。1Kgを超える重量級グラボの重さに耐えるためのこれらの対策により垂直方向に3.2倍、水平方向に1.7倍と両方向の負荷に対する強度は大幅に向上しています。
マザーボード右端下側にはグラフィックボードなどPCI-Eスロットに設置した拡張カードへ安定した電力供給を行うための追加電源としてマザーボードと平行にPCIE補助電源6PINコネクタのオプション電源端子が用意されています。オプション扱いですがマルチGPU構成で組む場合は接続したほうがよさそうです。
SATAストレージ用の端子はマザーボード右下に6基搭載されています。SATA3_0~5はいずれもAMD X399チップセットのコントローラーによる接続で、RAID0/1/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。
高速NVMe接続規格に対応したM.2スロットは上から順にM2M_32G、M2P_32G、M2Q_32Gの計3基が設置されています。3つのM.2スロットはいずれもNVMeとSATAの両方に対応しており、NVMe接続はCPU直結のPCI-Eレーンを使用しています。排他利用もありません。
「AORUS M.2 Thermal Guard」というカバー型の放熱ヒートシンクが3つのM.2スロット全てに装着されており、 M.2 SSDのサーマルスロットリングを防いで性能を最大限引き出します。また上2つのM2スロットにはNVMe規格の高速通信を行うM.2端子を外部ノイズEMIから保護して安定した接続を実現するためメタルアーマーが装着されています。
次世代規格のUSB3.1に対応する内部ヘッダーがATX 24PIN端子の隣に設置されています。
マザーボード下端にはUSB3.0内部ヘッダーとUSB2.0内部ヘッダーが2基ずつ設置されています。USB2.0内部ヘッダーは2基あるのでCorsairLinkやNZXT CAM対応製品などUSB2.0内部ヘッダーを使用する機器も増えていますが、GIGABYTE X399 AORUS XTREMEであればそれらの機器も問題なく使用可能です。部USB2.0が2基でも不足する場合はUSB2.0ヘッダー増設ハブ「NZXT INTERNAL USB HUB」がおすすめです。
「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」はパーソナルワークステーション向け製品ですが、ゲーミングブランドAORUSの名を冠するだけあって、GIGABYTE独自の高音質オンボードサウンド機能「AORUS AUDIO」も採用されています。SN比120dBで圧倒的なオーディオ再生能力を誇り、フロント/リアのマイク入力のSN比が110dB/114dBに改善された「ALC1220-VB 120dB SNR HD オーディオ」を搭載しています。自動でヘッドホンのインピーダンスを検出して最適な出力を可能にする「Smart Headphone Amp」機能などもあり、サウンドボードや外部DAC要らずな高音質オンボードサウンドが実現されています。
さらにヘッドホン用DAC&アンプには、最高125dBのSN比と-112dBのTHD+Nにより、スタジオ級の音質をヘッドフォンに確実に伝えることができ、またFLACやWAVなどの一般的なハイレゾおよびロスレス・オーディオフォーマットな音源に対応する「ESS SABRE ES9118 HiFi DAC」が採用されています。
マニュアルからの画像を使用しますが、冷却ファンや簡易水冷クーラーのポンプの接続用の端子はマザーボード上に計8か所(うち1基はVRM電源冷却ファンで使用済み)も設置されていました。これだけあればマルチファンラジエーターを複数積んだハイエンド水冷構成を組んでもマザーボードのファン端子で運用可能です。「PUMP」の添え字の付いたファン端子は最大24W(12V、2A)の出力にも対応しているので本格水冷向けのD5やDDCポンプの電源としても使用できます。
加えて本格水冷PCユーザーには嬉しい外部温度センサーの接続端子が2基設置されています。GIGABYTEのファンコントロール機能は外部センサーをソースにした水温依存のファンコントロールが可能なので水冷ユーザーにお勧めです。「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」のファンコン機能Smart Fan5では外部温度センサー2基に加えてマザーボード上備え付けの温度センサー7基で計9基の温度センサーから自由にソース温度を選択して8基のファン端子を制御できます。
マザーボード基板右下にはPOSTエラーのチェックができるDebug LED、またリアI/OにはOCerのみならず一般自作erにとっても組み立て中の動作確認に便利なスタートスイッチが実装されています。CMOSクリアのハードウェアスイッチも設置されているのでOC設定をミスっても簡単に初期化が可能です。ただしスタートスイッチとCMOSクリアが横に並んでいるのは誤押下の可能性を考えると避けたほうがいいレイアウトだと感じました。あと個人的な好みとしてはスタートスイッチはリアI/Oではなくオンボードに設置して欲しかったです。
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEにはGIGABYTE特許取得済みの「デュアルBIOS」機能が採用されており、OC設定によってメインBIOS(M_BIOS)のデータが破損してもバックアップBIOS(B_BIOS)によってメインBIOSの復旧や重要データのバックアップが可能になります。BIOSの切り替えはマザーボード下に設置されたスライドスイッチによって行います。BIOSの修復方法については下の記事を参考にしてください。
・GIGABYTEのDual BIOS対応マザーボードで破損したBIOSを修復する方法
マザーボード右下にはフロントパネルI/Oヘッダーがあります。同社独自パーツの「G-Connector」が付属するのであまり重要ではありませんが、基板上に色分けされたプリントのおかげで林立している各ヘッダーピンを視認しやすく、ピンアサインは基板上にヒントもプリントされているのでユーザービリティーに優れる設計です。
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEにはマザーボード右端のSATA端子の上側にTHB-C端子があるので、同社のThunderbolt3拡張ボード「GIGABYTE GC-ALPINE RIDGE」(レビュー)を使用することでThunderbolt3端子を増設可能かと期待したのですが、18年10月現在公開されている最新版BIOS:F4ではThunderbolt3に関するBIOS設定が用意されていないため、使用することはできませんでした。
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEへのパーツ組み込み
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEにDDR4メモリとCPUクーラーを設置してみました。内容的には写真のギャラリーだけになっています。DDR4メモリには「GIGABYTE AORUS RGB Memory」(レビュー)、CPUクーラーには「ENERMAX LIQTECH TR4 ELC-LTTR360-TBP2」(レビュー)を使用しています。
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEの検証機材
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEを使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。GIGABYTE X399 AORUS XTREME以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | AMD Ryzen Threadripper 2990WX 32コア64スレッド (レビュー) |
CPUクーラー | ENERMAX
LIQTECH TR4 ELC-LTTR360-TBP (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill FLARE X for AMD RYZEN TR F4-3200C14Q-32GFX DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) |
CPUベンチ用 ビデオカード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する18年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、Ryzen Threadripper&X399のようなエンスー環境のシステムストレージ用に一押しのSSDです。
・「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
レビュー記事後半ではRyzen Threadripper 2990WXを使用したオーバークロックも実践するので検証機材CPUクーラーにはAMD Ryzen ThreadripperのTR4 Socketに完全対応となる大型ベースプレートと360サイズラジエーター採用で最高クラスの冷却性能を誇る簡易水冷CPUクーラー「ENERMAX LIQTECH TR4 ELC-LTTR360-TBP」を使用しています。
ENERMAX LIQTECH TR4シリーズにはラジエーターサイズ別で240サイズ/280サイズ/360サイズの3モデルがラインナップされていますが、当サイトでは全モデルについて詳細なレビュー記事を公開中です。
・ENERMAX LIQTECH TR4シリーズのレビュー記事一覧へ
360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーター採用の簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファン「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。1基あたり4000円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
・「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
普段は熱伝導グリスを上のようにてきとうに塗っているのですが、Ryzen Threadripperはヒートスプレッダが大きいため、『最初に等間隔に9カ所小さめに熱伝導グリスを落として、さらにその間の4か所に少し大きめに熱伝導グリスを塗る』というNoctua式の塗り方が良い感じだったので今回はNoctua式を採用しました。
この塗り方をするとRyzen Threadripperの大型ヒートスプレッダでもCPUクーラーの圧着でヒートスプレッダ全体へ熱伝導グリスが綺麗に伸びます。ただしグリスをかなり大量に使うので注意。
以上で検証機材のセットアップが完了となります。
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEのBIOSについて
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEを使用した検証機の構築も完了したので動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。(OSから日付調整する前にスクショを取っている場合、日付がおかしいですが無視してください。また内容的に差異のないものは過去の同社製マザーボードのBIOSスクリーンショットを流用しています。)
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEのBIOSに最初にアクセスするとクラシックモードという従来通りの文字ベースBIOSメニューが表示されました。トップに表示されるシステムタブのシステム言語から日本語を選択可能です。
GIGABYTE製マザーボードのBIOSの翻訳は一部誤訳もあるものの比較的まともなので日本語UIとしては使いやすいのですが、フォントサイズの調整が微妙で見切れたりするところが玉に瑕です。トップメニューのタブは左右カーソルキーで簡単に移動できます。「左alt」キーを押すかマウスオーバーで右下にメニューとポップアップヒントが表示されています。
一応、流行に合わせてグラフィカルUIのイージーモードも用意されており、右下メニューや「F2」キーでイージーモードを表示できます。パッと見の見栄えは良いのですが詳細設定ができないのでクラシックモードの利用がおすすめです。
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEのBIOSにおいて設定の保存とBIOSからの退出はトップメニュータブ最右端の「保存して終了(save and exit)」から行えます。特定のブートデバイスを指定してBIOSから退出するBoot Override機能もあります。
8月30日現在、公式サポートページでは最新BIOS「F4c」が配布されているので、BIOS上のアップデート機能を使用してBIOSバージョンをアップデートしました。
BIOSのアップデート方法は、まず下から最新のBIOSファイルをダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
サポート:https://www.gigabyte.com/jp/Motherboard/X399-AORUS-XTREME-rev-10#support-dl-bios
USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、「alt」キーかマウスオーバーでクラシックモード右下に表示される「Q-FLASH」を選択するか、「F8」キーのショートカットキーでQ-FLASHを起動します。
Update BIOSを選択し、接続したUSBメモリからアップデートファイルを選択します。
以降のアップデート手中については動画で撮影したので参考にしてください。
ブートとOSインストール周りについて紹介します。
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEのブート回りは下画像のようにトップメニュータブの「BIOSの機能(BIOS)」の中で非常に簡潔にまとめられており初心者でも迷うことはないと思います。OSのインストールも「起動オプション #1」に「UEFI 〇〇」というOSインストールメディアを設定して保存&退出でOKです。
GIGABYTEのBIOSではブートデバイスの指定が可能なので起動オプションで設定せずに、「保存して終了(save and exit)」のタブメニューから「UEFI 〇〇」というOSインストールメディアを選択してもOKです。
ちなみにWindows10の製品パッケージに付属するUSBメモリではUEFIで認識できないトラブルが発生することがあるようなのでそういうときはこちらの記事に従ってMS公式ツールを使用して適当なUSBメモリでOSインストールメディアを作成すると上手くいきます。
BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、GIGABYTE X399 AORUS XTREMEのBIOS機能で管理人が気になったものをいくつかチェックしていきます。
「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」はNVMe SSDによるRAIDアレイ構築に対応しています。
RAIDモードで使用するブータブルディスクの作成方法(Windows OSのインストール方法)について詳しくは下の記事でまとめているのでこちらを参照してください。記事中ではRAID0ストレージにインストールする例を紹介していますが、アレイ構築でシングルボリュームを選べば、SATA SSDのシングルボリュームへのOSインストールも同様の手順で行えます。
・Threadripper環境でNVMe RAIDにOSをインストールする方法
加えて「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」のBIOS:F2bでは1段目と5段目のPCI-E3.0x16レーンのPCI-Eスロットについて通常のx16モードに加えて、4つのPCI-E3.0x4に分割するx4x4x4x4モードを選択できます。BIOS設定値で[x4x4x4x4]の帯域を細分化する設定を選択することで「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」でも「ASUS HYPER M.2 X16 CARD」で複数のNVMe M.2 SSDが使用できます。
ASUS HYPER M.2 X16 CARDの基本的な仕様や使い方については予備知識ということで、わからない人はこちらの記事を先に参照してください。
・「ASUS HYPER M.2 X16 CARD」をレビュー
多機能かつ使いやすいファンコン機能「スマートFan 5」について
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEなどGIGABYTE製マザーボードに採用されるファンコントロール機能「スマートFan 5」が外部温度センサー対応など多機能かつ、ユーザービリティーにも優れたUIでかなり使いやすいので詳しくチェックしていきます。ちなみに「スマートFan 5」はWindows OS上の専用アプリからも設定が可能ですが、BIOSからも専用アプリと同様にフルコントロール可能なので、一度設定したら頻繁に弄るものでもありませんし、余計なものを入れるよりもBIOS上からの操作に慣れておく方がおすすめです。
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEのファンコントロール機能「スマートFan 5」には、「alt」キーでクラシックモード右下に表示される「スマートFan 5」を選択するか、「M.I.T.」タブの「スマートFan 5」を選択することでアクセスできます。
「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」のファンコントロール機能は下のスクリーンショットのようにグラフィカルUIによる設定のみで一部他社製品のようなコンソールで値を打ち込むようなメニューは存在しません。グラフィカルUIでマウスを使って簡単にできる機能なのですが、マウスレスでも全て設定可能となっており、ASUSやASRockのBIOSのような直打ちUIが好きな管理人でも使いやすいと感じる良いファンコンでした。
同ファンコントロール機能でユーザーが主に触る部分は下のスクリーンショットで囲った、「設定を行うファン端子」「速度設定プリセットの選択」「手動設定時のファンカーブ」「ファンカーブの温度ソース」「設定の適用」の5つになると思います。
左上「Monitor」と表示されたすぐ横にあるプルダウンメニューからはファンコン設定を行うファン端子を選択可能で、選択したファン端子について、その下に位置する各設定項目を変更できます。選択したファン端子について「〇〇ファン速度制御」の項目から、「通常」「静音」「フルスピード((定格)」の3つのプリセットに加えて、ユーザーが各自でファンカーブをカスタマイズできる「手動」の4種類を選択できます。
また選択しているファン端子の操作を行う温度ソースは「Fan Control Use Temperature input」から選択可能になっており、マザーボード備え付けの7つの温度センサーに加えて、増設可能な2つの温度センサーで計9個の温度センサーを温度ソースに指定できます。ただしCPUファンについてはCPU温度ソース固定となります。水温センサーを外部温度センサー端子に接続すれば水温ソースにしたラジエーターファンのファンコンにも対応可能なので水冷PC用のマザーボードとしても最適なファンコン機能です。
「〇〇ファン速度制御」の項目で「手動:を選択した場合はファンカーブのグラフにおいて、ファンストップ温度と、フルスピード温度に加えて、グラフ内で任意の4点についてファンカーブを設定できます。「Monitor」と「〇〇ファン速度制御」の項目間で上下カーソルキーを使うことで各ファンカーブ頂点を指定することができます。注目ポイントとしては「Shift」キーとカーソルキーの同時押しによってマウスレスでファンカーブの頂点を格子上で移動可能となっており、直打ち派の管理人も唸る非常に設定しやすいグラフィカルUIでした。
また「0」と書かれたファンカーブの頂点はファンストップ温度となっており、指定した温度ソースがファンストップ温度以下の場合、設定を行ったファン端子に接続されたファンを停止させる、所謂セミファンレス機能が使用できます。試しに止めてみました。
「Monitor」からは特定のファン端子を選択するので選択したファン端子1つだけについて設定を適用することも可能なのですが、設定の適用を行う「Apply to」のボタンをクリックするとマザーボードに設置されたファン端子が全て列挙され、ファン端子名の左にあるチェックボックスのチェックを入れるもしくは外すことで、現在設定を行っているファン端子と同じ設定を他のファン端子にも一斉に適用することが可能です。ファン設定の同期適用機能があるというのはユーザービリティーに優れ非常に好印象です。
その他にも急激な温度変化へファンコンが過敏に反応しないようファン速度変化に1~3秒の猶予を設ける「Temperature Interval」、ファン操作モードを「DC/PWM/自動検出」から設定する「〇〇ファン Control Mode」などのファンコン設定項目があります。ソース温度が一定以下の時にファンを停止させる「〇〇ファン Stop」機能も用意されており、ファン操作モードがPWMの場合でも手動設定時のセミファンレス機能を問題なく使用できました。(ASUSマザボではDCモードのみだった気がします。)
またマザーボードにブザーユニットが接続されている場合は、特定温度ソースが一定温度を超えた場合にエラーを知らせる「Temperature Warning」や接続されているファンに不具合が発生した(回転数の検出ができない)場合に警告を行う「〇〇ファン異常警告」といった設定も可能です。
欲を言えば数値直打ちのコンソール型UIもあると嬉しいとか個人的な要望はあるものの、マザーボードのファンコントロール機能としては同じく外部温度センサーソースに対応したASUSの「Q-Fan control」以上に多機能です。
「Smartファン5」はWindows OS上のインフォメーションソフト「System Information Viewer」に統合されており同アプリ上から、BIOSと同じくファンコントロールが可能です。(System Information Viewerの利用にはAPP Centerのインストールも必要になります。)
上で紹介したBIOS上のファンコントロール同様に、個別のファンについてファンカーブの設定、セミファンレス機能のON/OFF、ヒステリシス間隔の変更など詳細なファンコントロール設定が可能です。
上のメニューで左にあるケースアイコンをクリックするとPCケース内におけるファンの設置位置やファンコンのソース温度を設定するメニューが表示されます。
その他にも温度やファン回転数などのハードウェアモニタリングやモニタリング値によるアラーム機能、モニタリング値のログ機能なども用意されていました。
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEなどGIGABYTE製マザーボードに採用されるファンコントロール機能「Smartファン5」はおそらく一般ユーザーにとっては最も使いやすく機能の優れたファンコントロールだと思います。
イルミネーション操作機能「GIGABYTE RGB Fusion」について
「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」にはマザーボード備え付けLEDイルミネーションや4PIN RGB LEDテープやアドレス指定LEDテープに対応したイルミネーション操作機能「GIGABYTE RGB Fusion」が用意されています。「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」はマザーボード全体にアドレッサブルLEDイルミネーションが配置されており、従来のGIGABYTE製マザーボードのLEDイルミネーションのギラギラ感はなく、神々しい印象にまとまっています。「GIGABYTE AORUS RGB Memory」もぴったりとマッチするデザインです。
「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」に備え付けられたLEDイルミネーションはいずれもアドレッサブルLEDイルミネーションで、リアI/Oパネル、オンボードオーディオ、チップセットクーラー、マザーボード右端背面の4か所に設置されています。
マザーボードの右上と左下の2か所にRGBW対応5PINヘッダーが設置されています。付属の延長ケーブルを使用することで当サイトでもレビュー記事を公開している「SilverStone SST-LS02」や「SilverStone FG121 / FG141」などRGB対応汎用4PINのLED機器が接続可能です。出力は最大24W(12V, 2A)まで対応しており、最長2mのLEDテープを延長接続可能です。
RGBW対応5PINヘッダーとなりにはそれぞれアドレッサブルLEDテープに対応したVD-G型3PINヘッダーも実装されています。アドレッサブルLEDテープとしては国内で発売済みの「BitFenix Alchemy 3.0 Addressable RGB LED Strip」や「ASUS ROG ADDRESSABLE LED STRIP-60CM」が動作することが確認できています。
【注】以下、Windows OS上で使用できるライティング制御アプリ「RGB Fusion」について説明していきますが、18年8月下旬に公式ページで配布されているVer:B18.0629.1やAPPCenterから取得した最新バージョンを使用しても発光パターンが正常に適用されず、正常動作が確認できませんでした。
Advancedの個別制御はある程度、正常に動作しているようですが、 BasicのWaveのようなアドレッサブルな発光パターンが上手く適用され内容です。
一度「RGB Fusion」から発光パターンを変更してしまうと、今のところCMOSクリアを行う以外の方法で標準動作のオーロラライクなアドレッサブル発光パターンに戻すことができません。
あと「GIGABYTE AORUS RGB Memory」もAdvancedの周辺デバイスから検出されませんでした。
一応メーカーへは報告だけしておいたので今後のソフトウェアアップデートで修正されるとは思います。
GIGABYTEのLEDイルミネーション操作機能「RGB Fusion」はWindows OS上の同名アプリ「RGB Fusion」からライティングに関する各種設定が可能です。プリセットも豊富になり設定可能な範囲が広くなってRGB Fusionは使いやすくブラッシュアップされています。
ちなみにRGB Fusionの使用は統合ランチャーAPP Center経由の利用が推奨されていますが、アプリのインストール自体は単独でも可能になっており、インストールフォルダから実行ファイル「SelledV2.exe」を起動することで問題なく使用できました。
ウィンドウトップメニュータブの「Basic」を選択すると、LEDイルミネーション発光パターンとして「Static(固定発光)」「Pulse(ゆっくり明滅)」「Flash(点滅)」「Double Flash(2回点滅)」「Color Cycle(カラーサイクル)」「Random(ランダムに点滅)」「Wave」「Demo(Wave+Color Cycle)」の9つが選択可能です。「Static(固定発光)」「Pulse(ゆっくり明滅)」「Flash(点滅)」「Double Flash(2回点滅)」では右側に配置されている円形カラーパレットから自由に発光カラーを設定できます。
トップメニュータブの「Intelligent(各種ソースに同期)」ではCPU温度やCPU使用率などハードウェアモニタリングの数値に応じて発光カラーが変更する発光パターンです。状態に応じて3種類の発光カラーをアサインすることでLEDイルミネーションをインジケーターとして使用できます。
ウィンドウ左にあるアイコンの「Advanced」を選択するとより詳細なLEDイルミネーション設定が可能です。マザーボード上の備え付けのLEDイルミネーションもメモリスロットやPCI-Eスロットなど個別の場所ごとに発光カラーや発光パターンの設定が可能です。
また「Advanced」の「Peripheral Device LED」を選択するとグラフィックボードやDDR4メモリなどGIGABYTE RGB Fusionに対応する外部機器のLEDイルミネーションも一括で管理できます。対応機器としては当サイトでレビュー記事を公開している「GIGABYTE AORUS GTX 1080 Ti Xtreme Edition」のようなGIGABYTE製のAORUSブランドのグラフィックボードや、LEDイルミネーション搭載メモリでは同社製の「GIGABYTE AORUS RGB Memory」だけでなく、他社製品では「Corsair VENGEANCE RGB」、「Corsair VENGEANCE RGB PRO」、「Kingston HyperX Predator RGB」などです。
「GIGABYTE RGB Fusion」はデスクトップアプリだけでなくBIOS上のグラフィカルUIでLEDイルミネーションの調整を行えるのが特徴でしたが、「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」(BIOS:F4c)については、電源ON時と電源OFF(スリープなども)時にLEDイルミネーションを点灯させるかどうかのみがBIOS上で設定できました。
またPCと同じネットワーク上にあるスマートフォンからも専用アプリをインストールしてペアリング設定を行うことで、LEDイルミネーションのライティング制御が可能です。
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEのOC設定について
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEを使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
AMD Ryzen Threadripper CPUについては純正のOCツール「AMD Ryzen Masterユーティリティ」が用意されていますが、こちらの使い方については下の記事を参考にしてください。
・AMD Ryzen専用純正OCツール「AMD Ryzen Masterユーティリティ」の使い方
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEではオーバークロック関連の設定項目はトップメニュータブ「M.I.T.」の「高度な周波数設定」「高度なメモリ設定」「高度な電圧設定」に各種設定がまとめられています。ちなみに設定値を直接入力する項目でデフォルトの「Auto」に戻す場合は「a」キーを入力すればOKです。
CPUコアクロック(コア倍率)の変更について説明します。
コアクロックはコア数に対して各コアに最大動作クロック(BCLKに対する倍率)を指定できます。「コア0:コア1:コア2:コア3」を倍率として、例えば「45:43:43:42」のようにバラバラに指定した場合、4つのコアのうち1つに負荷が掛かる場合は4コアのうち1つが45倍動作、2つと3つの場合は43、4つの場合は42となります。そしてベースクロック(BCLK)は通常100MHzなので動作倍率40倍であればコアクロックは4.0GHzとなります。
AMD Ryzen Threadripper CPUについても定格では同様に、例えばRyzen Threadripper 2990WXでは冷却性能依存の自動OC機能「XFR」の影響で若干前後しますが、単コア負荷の場合は4.2GHz、全コア負荷の場合はTDPの範囲内で変動しますが軽いワークロードであれば全コア4.0GHzで動作し、動画のエンコードなど重いワークロードでは平均3.2GHz程度で動作します。
Ryzen ThreadripperのCPUコアクロックに関してBIOSから行う基本的なOC設定や専用ユーティリティ「Ryzen Master」によるOC設定では、単一の「P-State」を設定して固定コアクロックかつ固定電圧でOC設定としていますが、Ryzen CPUでは本来、複数の「P-State」が設定可能です。
アイドル時のP-State0、低負荷時のP-State1、高負荷時のP-State2のように負荷に応じてP-State(コアクロックと電圧の組み合わせ)という状態を遷移できます。例えばRyzen Threadripperの定格動作ではCPUごとにデフォルトで設定されたP-Stateに従って動作しているので可変コアクロックかつ可変電圧になっています。
固定最大コアクロック&固定電圧によるOCに比べて、複数のP-Stateを設定する方法は難易度が高いですが、一部のコアのみより高いクロックで動作させるなど細かい設定が可能になります。とはいえやはり複数のP-Stateを設定する方法は難易度が高い設定になるので、簡単な単一P-Stateで固定最大倍率&固定電圧のOCがおすすめです。
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEのコアクロックのOC設定方法はベースクロック(BCLK):100MHzに対する倍率指定となっており0.25倍単位でCPUコアクロックの倍率を設定できます。「CPU クロック倍率:40.00」と設定することでデフォルトのベースクロック100MHzの40倍で4.0GHzで動作します。上で説明したように現時点では全コア同時の最大クロックしか設定できません。
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEにはBIOS:F2においてベースクロックの変更が可能な設定項目は用意されていませんでした。ベースクロックは100MHzで固定となります。
コアクロック倍率設定の下にある「高度なCPUコア設定」へアクセスするとAMD CPUのマルチスレッディング機能である「SMT:サイマルテイニアス マルチスレッディング(Simultaneous multithreading)」の有効・無効などCPUの動作に関する追加設定が可能です。手動OC時に無効化するといい「Core Performance Boost」や「AMD Cool&Quiet Function」等もここに配置されています。
第2世代Ryzen Threadripperで利用可能な新機能「Precision Boost Overdrive」については「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」ではBIOSから設定が可能です。設定項目へは「Peripheral(周辺機器) - AMD CBS - NBIO Common Options」へと下っていくと設定項目が標示され、「Precision Boost Overdrive」の機能の有効化や手動設定が行えます。
「AMD Ryzen Threadripper 2990WX」でPrecision Boost Overdriveを使用する場合、設定値の目安や実際の動作についてはこちらの記事で解説しているので参考にしてください。
・AMD Ryzen Threadripper 2990WXにPrecision Boost Overdriveを適用してみる
続いてコア電圧の調整を行います。
AMD Ryzen Threadripper CPUのオーバークロックで変更する電圧設定についてはRyzen CPUと同様に、CPUコアクロックに影響する「CPUコア電圧」と、メモリの動作周波数に影響する「SOC電圧」の2種類のみと非常に簡単化されています。
「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」では、高度な電圧設定で表示される「CPUコア電圧(CPU Vコア)」「SOC電圧(VCORE SOC)」「DRAM電圧」の3項目のみを設定します。
CPUコアクロックのOCに関連する電圧のOC設定としては、GIGABYTE X399 AORUS XTREMEではCPUコア電圧(BIOS上ではCPU Core voltageもしくはCPU Vコアと表記されています)の項目を変更します。GIGABYTE X399 AORUS XTREMEではマニュアルの設定値を指定して入力する固定モードのみが使用できます。AMD Ryzen CPUのコア電圧は0.00625V刻みでコア電圧の設定が可能です。
CPUコア電圧モードについて簡単に説明すると、オフセットモードやアダプティブモードはCPU負荷に比例して電圧が設定されており、低負荷時は電圧が下がるので省電力に優れるのですが、OCをする場合はマザーボードによって挙動に差があり安定する設定を見極めるのが難しいので、個人的にはオフセットやアダプティブは定格向け、OCには固定値適用の固定モードを推奨しています。
仮にOCでオフセットやアダプティブを使う場合も最初はコアクロックに対して安定する電圧を見極める必要があるので、まずは固定モードを使用します。
ちなみにマザーボードにより対応しているモードは異なりますが、CPUのオーバークロックに付随するコア電圧のモードの概略図は次のようになっています。
またコアクロックを高く設定する時に追加で変更するといい電圧設定項目としてCPUコア電圧の設定欄の下にある「CPU VRINロードラインキャリブレーション」が挙げられます。この設定を変更することでCPU負荷時の電圧降下を補正してOCを安定させることが可能です。補正を強くするほどOCの安定性は増しますがCPUやVRM電源部分の発熱も大きくなるので真ん中あたりを最初に使っておいて、ストレステストのCPU温度をチェックしながらモードを上げていくのがおすすめです。
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEでは「CPU VRINロードラインキャリブレーション」の設定方法が少し特殊で、デフォルトの設定値は「Auto」ですが、数字キーの1~6が「Standard」「Low」「Medium」「High」「Turbo」「Extreme」に割り当てられており、その他の入力を行うと「Auto」に戻ります。
またキーボードにテンキーがある場合は「+」「-」キーで設定内容を「Standard」~「Extreme」で変更できました。「Standard」の動作がよくわかりませんが、「Low」~「Extreme」は補正の強さをそのまま示しているので、MediumかHigh辺りから使っていけばいいと思います。
あと「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」では複数のP-State(Custom P-State)の個別設定も可能です。設定項目は若干わかりにくい場所に配置されており、トップメニュータブ「周辺機器」から「AMD CBS」「Zen Common Options」と下っていきます。
まず最初に「OC Mode」の項目を「Customized」に変更します。
「OC Mode」の項目を変更した後、「Custom Pstates / Throttling」の項目を開くと複数のP-State(Custom P-State)の個別設定画面が表示されます。
Custom P-Stateでは「P-State X FID」「P-State X DID」「P-State X VID」の3種の設定値を各P-State Xに対して設定します。いずれの設定値も16進数(0~9、A~F)による設定で例えば、3a(16進数)=3*16+10=58(10進数)となります。
各P-State Xに対するコアクロックの設定は次のようになります。
コアクロック = BCLK(ベースクロック)*FID / DID * 2
つまり「FID / DID * 2」がコアクロックOC一般に言うコア倍率になります。例えば上のスクリーンショットでは「FID:88」「DID:8」なので10進数に戻してコア倍率を計算すると、34.00となりBCLK:100MHzに乗じて3400MHz動作となります。「Custom P-States X」の下にある「Frequency(MHz)」の横のテキストボックスにも3400と表示されています。似たようなコア倍率に対して「Core FID」と「Core DID」の組み合わせが複数存在する可能性がありますが、この組み合わせによるOC安定性に関する違いまではわからないので、そのあたりは各自で詰めてみてください。
各P-State Xに対するコア電圧は「P-State X VID」によって決まっており、同様に16進数による設定値入力で、0~FFの範囲内で設定可能です。「P-State X VID」の設定値に対してコア電圧は次のようになります。
コア電圧 = 1.55000V - 0.00625 * VID
例えばVID:3a(16進数)=58(10進数)の場合はコア電圧は1.18750Vとなります。
以上のような流れで最大コアクロックをP-State 0として順番に下がるように設定していきます。
メモリのオーバークロックについても簡単に紹介だけしておきます。
メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。
一方でXMPによるメモリOCは上の手順によるOCをメーカー側がすでに行い動作確認をしているので、メーカーが動作確認を行ったOCプロファイルを適用するだけで簡単にメモリをオーバークロックできます。
なおAMD Ryzen Threadripper環境ではメモリのオーバークロックに伴って、コアクロックOC時のコア電圧の要求値が上がるので注意してください。一例としてRyzen Threadripper 1950Xで全コア4.0GHzのOCに関して、メモリ周波数2133MHzでは1.275Vで回った石でもメモリ周波数3200MHz以上にオーバークロックすると1.320V程度が安定動作に要求されました。
メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありませんが、「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」では正常にPOSTできないメモリOC設定でエラーが出た場合は数回再起動した後、自動で2133MHzのような緩い設定で起動してくれるのでメモリOCを安心して行えます。
メモリOCで有名なXMPプロファイルはIntelの策定した規格なのでAMD CPU&マザーボードの環境では非対応ですが、GIGABYTE X399 AORUS XTREMEではXMPプロファイルの項目が表示されており、おそらくXMPプロファイルから適当なOCプロファイルを自動生成してくれるので、Intelマザーボード環境同様にメモリに収録されたOCプロファイルからメモリのOCが可能です。
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEではメモリクロックの設定方法も少々独特で、1333MHz(13.33倍)から4400MHz(44.00倍)まで選択可能ですが、プルダウンメニューによる選択ではなく、メモリ周波数の直打ち(補正あり)か、テンキーの「+/-」キーによる設定値変更で選択する形式になっています。
メモリ設定の「DRAMタイミングモード」を「手動」に設定することでメモリタイミングの個別打ち込み設定も可能です。メモリタイミングを手動で設定する場合は基本的には「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS Read (tRCDrd)」、「RAS to CAS Write (tRCDwr)」、「RAS Precharge (tRP)」、「RAS Active Time (tRAS)」の主要な5タイミングと、加えて各種タイミングの下の方に配置されている「Command Rate:1 or 2」の6つ以外はAutoのままでいいと思います。
メモリタイミングの下の方にある「ProcODT」という設定値がAutoのままではPOSTがクリアできない場合があります。AutoでPOSTをクリアできない、もしくは起動後に安定しない場合は「ProcODT」を43.6~68.6の間で固定して安定するものを探してみてください
メモリ周波数を3200MHz以上にOCする場合は「GearDownMode」をEnabledに設定すると動作が安定するかもしれないので、Autoで上手くいかない場合は設定を変更してみてください。設定項目は「Peripheral(周辺機器) - AMD CBS - UMC Common Options -DDR4 Common Options - DRAM Controller Configuration」と下っていくと表示されます。
DDR4メモリの周波数OCを行う際は「DRAM CH AB/CD Voltage」からDRAM電圧を昇圧します。3000MHz以上にOCする場合は1.300~1.350V、3600MHz以上にOCする場合は1.370~1.400Vに上げる必要があります。メモリをOCする場合は最初から1.350V以上にDRAM電圧を盛っておくのがおすすめです。
加えてAMD Ryzen Threadripper CPUでメモリの動作クロックをOCする場合はDRAM電圧だけでなく「CPU SOC電圧(VDD SOC電圧)」も1.100V程度に盛ってやると動作が安定しやすいようです。
AMD Ryzen Threadripperにはメモリーアクセスモードとして「Distributed / Local」の2つのモードが用意されていますが、「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」では専用アプリ「AMD Ryzen Master」を使用せずBIOSからメモリーアクセスモードの変更を行うことが可能です。
メモリ設定画面の「メモリコントローラーの設定」(もしくは「周辺機器ーAMD CBSーDF Common Options」)にある「Memory interleaving」の項目がメモリーアクセスモードの設定に該当しています。「Memory interleaving」の設定値は次のようになっています。
Die : Distributed : UMAモード
Channel : Local : NUMAモード
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEのOC設定についてはテンキーの「+/-」キーで設定値の変更はできるものの、メモリ周波数やロードラインキャリブレーションの設定がプルダウンメニューでないところが不便なのでこの点についてはアップデートで修正して欲しいです。
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEの動作検証・OC耐性
BIOS周りの管理人的に気になるところの紹介はこのあたりにしてGIGABYTE X399 AORUS XTREMEを使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。まずはFast Bootとフルスクリーンロゴを無効(BIOS設定)にしてOSの起動時間を測定したところ、GIGABYTE X399 AORUS XTREMEの起動時間は32秒ほどした。多機能なエンスー向けマザーボードの起動時間としてはPOST時間が短くて良好な結果だと思います。
続いてGIGABYTE X399 AORUS XTREMEを使用した場合のCPUとメモリのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
Ryzen Threadripper 1950XのOC設定は「CPUクロック倍率:40」「CPUコア電圧:1.33125V」「CPU VRINロードラインキャリブレーション: High」としています。またメモリについてはG.Skill FLARE X F4-3200C14Q-32GFXのOCプロファイルで「メモリ周波数:3200MHz」「メモリ電圧:1.350V」「メモリタイミング:14-14-14-34-CR1」が適用されています。
上の設定を適用したところ問題なくOSを起動させることができました。
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEの環境(BIOS:F4c)ではG.Skill FLARE X F4-3200C14Q-32GFXのOCプロファイルによってメモリ周波数を3200MHzにOCしてメモリタイミング:14-14-14-34-CR1に詰めることができました。
なおG.Skill FLARE X F4-3200C14Q-32GFXは1950Xと初期X399マザーボードでは3466MHzの動作も確認できていましたが、2900WXとGIGABYTE X399 AORUS XTREME環境では起動はできるもののRum Testでしばらくするとエラーが出て安定動作は確認できませんでした。これについてはマザーボード側のOC耐性の問題ではなく、2990WXでコア数が倍増してメモリOCがシビアになっているのが原因ではないかと思います。
32コア64スレッド「AMD Ryzen Threadripper 2990WX」のコアクロック4.0GHz、メモリ周波数3200MHz、メモリタイミング14-14-14-34-CR1でCinebenchも問題なくクリアできました。
続いてこのOC設定を使用してストレステストを実行しました。
検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間8分、WQHD解像度、60FPS、容量4.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はThreadripper 2990WXの場合5分ほどなので同じ動画のエンコードを4つ並列して2周実行しています。テスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
ストレステスト中のCPU温度とCPU使用率のログは次のようになりました。マザーボードにGIGABYTE X399 AORUS XTREMEを使用して「AMD Ryzen Threadripper 2990WX」のコアクロック4.0GHz、メモリ周波数3200MHzにOCしてストレステストをクリアできました。CPUクーラーのファン回転数は1500RPMで固定しています。
スマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE Pro」(レビュー)を使用して「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」のVRM電源温度をチェックしていきます。
まずは同マザーボードにおいてAMD Ryzen Threadripper 2990WXをデフォルト設定で負荷をかけてからVRM電源温度を測定してみました。定格ではTDP250W制限下で動作するため動画のエンコードのような長期的な負荷に対しては実動平均で全コア3.2GHz程度での動作となります。
AMD Ryzen Threadripper 2990WXを使用すると定格動作でもEPS端子経由の消費電力は300W程度に達するので、簡易水冷CPUクーラーによる冷却でVRM電源周りに風が直接当たらない場合、第1世代Ryzen Threadripper向けにリリースされていた初期X399マザーボードではVRM電源温度が100度前後に達してしまい、スポットクーラーによる冷却が必須でした。
「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」はTDP250Wに達するAMD Ryzen Threadripper 2990WX向けに開発された最新X399マザーボードで従来製品よりもVRM電源回路やVRM電源クーラーが強化されているものの、VRM電源温度は90度後半に達しました。100度に迫ると壊れるというわけではありませんが、これくらいの高温になると定格運用でもスポットクーラーによる冷却がおすすめだと思います。
なおこの時、「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」のリアI/Oカバー内に搭載された2基の30mm冷却ファンについては7500~8000RPMで動作して、ノイズレベルを簡単に測定してみると45dB程度でした。ノイズレベルの数字に比べて体感では騒音は小さく感じたので、PCケースに入れれば特に気にならない程度だと思います。ただしこの冷却ファンは最大で10000RPM程度まで回転数が上がるので、CPUのOCでVRM電源温度が高くなり冷却ファンが9000RPM~10000RPM程度で動作すると流石にファンノイズが耳障りに感じると思います。
続いてRyzen Threadripper 2990WXを上記のBIOS設定でOCした時の負荷テスト中の温度をチェックしていきます。同マザーボードに限った話ではありませんが第2世代Ryzen Threadripperで手動設定OCやPrecision Boost Overdriveの適用を行う場合はスポットクーラーを使用してVRM電源部分の冷却推奨です。ちなみにGIGABYTE X399 AORUS XTREME環境でRyzen Threadripper 2990WXを全コア4.0GHz、メモリ3200MHzまでOCするとシステム全体の消費電力(ほぼCPUの消費電力)が550Wに達します。
Ryzen Threadripper 2990WXを全コア4.0GHzにOCして、スポットクーラーとして120mmファンを1500RPMで回して冷やしていますが、長時間の負荷をかけるとソフトウェアモニタリングでは100度前後、サーモグラフィーで最も高温になる部分を調べると120度を上回っていました。VRM電源温度の発熱によるCPUコアクロックの強制的な制限等は発生しませんでしたが、常用するには不安の残る温度です。
「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」ではスポットクーラーを使用したアクティブ冷却であってもCPU消費電力が500Wを大きく上回るような大幅なオーバークロックは難しく、このクラスのOCを実現するには一部のマザーボードを除いてVRM電源を含めた水冷化が必要になりそうです。
Ryzen Threadripper 2990WXのマニュアル設定オーバークロックやPrecision Boost Overdriveの適用を行うためにスポットクーラーを使用するのであれば、可変アルミニウム製ファンフレームでVRM電源を狙って設置が容易な「IN WIN MARS」がおすすめです。
・可変アルミフレーム搭載ファン「IN WIN MARS」をレビュー
「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」については「AMD Ryzen Threadripper 2990WX」のマニュアルOCは荷が重かったようなので、16コア32スレッドCPUという額面通りに素直に動いてくれるのでハイエンドデスクトップ向けCPUとして2990WXよりおすすめな「AMD Ryzen Threadripper 2990WX」を使用して、追加で簡単にOC検証を行いました。
AMD Ryzen Threadripper 2950Xの検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | AMD Ryzen Threadripper 2950X 16コア32スレッド |
メインメモリ | G.Skill Trident Z RGB F4-3200C14Q-32GTZRX DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) |
CPUクーラー &冷却ファン |
ENERMAX
LIQTECH TR4 ELC-LTTR360-TBP 360サイズ簡易水冷 (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
マザーボード |
GIGABYTE X399 AORUS XTREME |
CPUベンチ用 ビデオカード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
AMD Ryzen Threadripper 2950XのOC設定としては、Precision Boost Overdriveを有効化して『PPT = 400W、TDC(EDC) = 300A』に設定し、メモリはG.Skill Trident Z RGB F4-3200C14Q-32GTZRXのOCプロファイルを適用してメモリ周波数3200MHz&メモリタイミング14-14-14-34-CR1に設定しています。
このOC設定で2990WXと同様にストレステスト(3つ並列×2周のエンコード)を実行したところ、実動コアクロックは平均4.0GHz程度で安定動作しました。
またAMD Ryzen Threadripper 2950Xを使用したストレステスト終盤のVRM電源温度をサーモグラフィカメラで確認したところ、最も熱い部分でも90度前後に収まりました。AMD Ryzen Threadripper 2990WXは厳しい結果でしたが、AMD Ryzen Threadripper 2950XであればPBOによる全コア4.0GHz OCを行ってもパッシブ空冷(リアI/Oカバー内蔵VRM電源冷却ファンが標準動作)で運用できそうです。
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEのレビューまとめ
最後に「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- マザーボード全体を覆うLEDイルミネーションが非常に豪華
- CPU用10フェーズ&SOC用3フェーズで計13フェーズのVRM電源回路
- GPUクーラーから転用した放熱設計「Fins-Array technology」採用VRM電源クーラー
- 32コアRyzen TR 2990WX 4.0GHz、メモリクロック3200MHz OCで安定動作(VRM電源温度に注意)
- 16コアRyzen TR 2950X PBO 4.0GHz、メモリクロック3200MHz OCで安定動作
- 重量級グラボにも耐える2大独自機能「Ultra Durable PCIe Armor」と「Double Locking Bracket」
- 外部ノイズから保護することで安定したメモリOCを実現する「Ultra Durable Memory Armor」
- マザーボード一体型のプリマウントリアI/Oバックパネル
- 外部温度センサーに対応したファンコン「Smart fan 5」は多機能で使いやすい
- ハイエンドオーディオにも採用される「ESS SABRE DAC」搭載オンボードサウンド
- GIGABYTE独自のSSDヒートシンク「M.2 Thermal Guard」が付いたNVMe接続M.2スロットが3基
- スタート&CMOSクリアの動作検証に便利なスイッチをリアI/Oに搭載
- フロントパネルコネクタのマザーボードへの装着を簡単にする独自パーツ「G-Connector」
- AQUANTIA製10Gbイーサを標準搭載
- 2990WXの手動OC時はスポットクーラーの使用を強く推奨
CPU消費電力が500Wを超える大幅なOCはVRM電源部分が非常に高温になる - CMOSクリアスイッチがスタートスイッチと並んでいる
(個人的にはスタートスイッチはオンボードに設置が好き} - ベースクロックは100MHz固定でBCLKによるOCには非対応
「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」はGIGABYTE製マザーボードの中で最上位に位置する”AORUS XTREME”を冠した初の製品となっており、マザーボード上4か所に配置されたアドレッサブルLEDイルミネーション、放熱板の役割も果たすナノカーボン表面加工バックプレート、プリマウントI/Oシールド、Intel製デュアルギガビットイーサ&AQUANTIA製10Gbイーサ、13フェーズVRM電源、GPUクーラー技術を転用した放熱フィン設計「Fins-Array technology」を採用したVRM電源クーラーなどGIGBAYTEが持てる技術の粋を結集したウルトラハイエンドマザーボードに仕上がっています。
BIOSデザインについては好みの問題かと思いますが、GIGABYTE X470 AORUS GAMING 7 WIFIではカーソルキー操作を基本としたクラシカルなUIが採用されており管理人的に好みでした。ただグラフィカルUI好きにとっては物足りないかもしれません。
翻訳は一部誤訳があるものの比較的まともですが、日本語フォントの調整が微妙なのが玉に瑕です。あとOC設定でLLCやメモリ周波数などプルダウン選択形式が推奨されそうな項目で直打ちor+/-テンキーで設定変更なところは改善して欲しいです。
GIGABYTE X399 AORUS XTREMEを使用した検証機では32コア64スレッドのAMD Ryzen Threadripper 2990WXや16コア32スレッドのRyzen Threadripper 2950Xを全コア4.0GHzに、メモリ周波数も3200MHzにオーバークロックして負荷テストをクリアすることができました。
マザーボードのOC耐性については上述の通り2990WXで全コア4.0GHzへのオーバークロック、メモリ周波数3200MHzでメモリタイミング14-14-14-34-CR1という比較的シビアなタイミングを達成しているのでOC耐性についても十分に及第点をクリアしています。
CPUのオーバークロックを行う上でVRM電源回路はマザーボード依存のOC耐性として重要ファクターの1つですが、「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」は第2世代Ryzen ThreadripperのTDP250Wモデル向けに開発された13フェーズVRM電源やGPUクーラークラスの高性能VRM電源クーラーを搭載しているものの、CPU消費電力が500Wを上回るような大幅なOCに対してはVRM電源温度が120度を上回る結果になりました。
「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」は初期X399マザーボードに比べるとかなりVRM電源周りを強化しているのですが、それでもRyzen Threadripper 2990WXを4GHz近くまでOCするとVRM電源温度的に長期の安定運用は難しそうです。スポットクーラーによるアクティブ冷却を行うとしてもCPU消費電力が400W~500Wの間に収まる程度のOCに留めるのが無難だと思います。
またRyzen Threadripper 2990WXは定格運用ではTDP250Wの制限内で動作しますが、2990Wは第1世代最上位の1950Xを軽くOCした時と同程度のCPU消費電力になるので、第1世代と同時期にリリースされた初期型X399マザーボードでは2900WXの定格でもVRM電源は100度前後に達するため、スポットクーラーによる冷却が推奨されますが、「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」はそれらに比べると健闘はしているものの、それでも90度後半に達したのでRyzen Threadripper 2990WXを運用するのであればスポットクーラーを設置したいというのが正直なところです。
「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」はRyzen Threadripper 2990WX用マザーボードと考えるとVRM電源的に競合製品の「MSI MEG X399 CREATION」には及ばないというのが率直な評価になりますが、同社製X399マザーボード初期モデルのX399 AORUS Gaming 7と比較すると機能面・性能面ともに上位互換としてしっかりと成立しているので、Ryzen Threadripper 2950WXを使用してハイエンドデスクトップPCを構築しようと思っているユーザーにはおすすめなマザーボードだと思います。
以上、「GIGABYTE X399 AORUS XTREME」のレビューでした。
GIGABYTE X399 AORUS XTREME E-ATXマザーボード
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GIGABYTE
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<PCワンズ><パソコン工房><ソフマップ>
検証機材として使用している以下のパーツもおすすめです。
G.Skill Flare X F4-3200C14Q-32GFX Threadripper対応
G.Skill Trident Z RGB F4-3200C14Q-32GTZRX Threadripper対応
G.Skill
<PCショップアーク><PCワンズ><OCworks>
Ryzen Threadripperは従来のCPUに比べて非常に大きいヒートスプレッダが採用されているので、大型ベースコアを採用するThreadripper専用CPUクーラーもおすすめです。
Noctua NF-A12x25 PWM 120mmファン 定格2000RPM PWM対応
Noctua NF-A12x25 ULN 120mmファン 定格1200RPM PWM対応
Noctua
<米尼:PWM/FLX/ULN><TSUKUMO>
<PCショップアーク><オリオスペック>
Noctua NH-U14S TR4-SP3 - 140mm [Noctua正規代理店]
Noctua NH-U12S TR4-SP3 - 120mm [Noctua正規代理店]
Noctua NH-U9 TR4-SP3 - 92mm [Noctua正規代理店]
Noctua
<TSUKUMO:U14S/U12S/U9><PCワンズ>
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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