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PCIE4.0x4接続により連続読み出し5150MB/sに達する、M.2 2230サイズでASUS ROG AllyやSteam DeckのSSD換装にも使用可能なNVMe M.2 SSD「WD_BLACK SN770M NVMe SSD 1TB / 2TB」をレビューします。
製品公式ページ:https://www.westerndigital.com/products/internal-drives/wd-black-sn770m-nvme-ssd
目次
1.WD_BLACK SN770M NVMe SSDについて
2.WD_BLACK SN770M 1TB / 2TBの外観
3.WD_BLACK SN770M 1TB / 2TBの検証機材と基本仕様
4.WD_BLACK SN770M 1TB / 2TBのベンチマーク比較
5.WD_BLACK SN770M 1TB / 2TBの連続書き込みについて
6.WD_BLACK SN770M 1TB / 2TBの消費電力と温度
7.WD_BLACK SN770M 2TBでROG AllyのSSDを換装してみる
8.WD_BLACK SN770M 1TB / 2TBのレビューまとめ
【機材協力:WD 国内正規代理店 株式会社ケミック】
WD_BLACK SN770M NVMe SSDについて
「WD_BLACK SN770M NVMe SSD」は、メモリコントローラーにPCIE4.0x4帯域のNVMe接続に対応するWDインハウス製コントローラー、メモリチップにSanDisk製のTLC型 112層3D NANDが採用された、NVMe(PCIE4.0x4)接続でM.2 2230フォームファクタのM.2 SSDです。「WD_BLACK SN770M NVMe SSD」はM.2 SSDとして一般的な2280サイズではなく、長さ30mmの2230サイズとなっており、Surface Pro 9/8、ASUS ROG AllyやSteam DeckのSSD換装に対応します。(注:SSD換装後の製品保証の継続はPC次第です)
「WD_BLACK SN770M NVMe SSD」にはSSD容量として500GB(型番:WDBDNH5000ABK-WRSN)、1TB(型番:WDBDNH0010BBK-WRSN)、2TB(型番:WDBDNH0020BBK-WRSN)の3モデルがラインナップされています。
「WD_BLACK SN770M NVMe SSD」のアクセススピードは容量によって若干異なりますが、最大でシーケンシャル読出5,150MB/s、シーケンシャル書込4,900MB/s、ランダム読出740,000IOPS、ランダム書込800,000IOPSの超高速アクセスを実現しています。
「WD_BLACK SN770M NVMe SSD」のMTTF(平均故障時間)は180万時間、書込耐性は500GBが300TBW、1TBが600TBW、2TBが1200TBWとなっており、メーカーによる製品保証期間は5年間です。
WD_BLACK SN770M NVMe SSD スペック一覧 |
|||
容量 | 512GB WDBDNH5000ABK-WRSN |
1TB WDBDNH0010BBK-WRSN |
2TB WDBDNH0020BBK-WRSN |
インターフェース |
M.2, NVMe (PCIE4.0x4) |
||
コントローラー |
WDインハウス製コントローラー | ||
メモリー | SanDisk製 TLC型 112層3D NAND |
||
DRAMキャッシュ | - | ||
連続読出 | 5,000MB/s | 5,150MB/s | |
連続書込 | 4,000MB/s | 4,900MB/s | 4,800MB/s |
4Kランダム読出 | 460,000 IOPS | 740,000 IOPS | 650,000 IOPS |
4Kランダム書込 | 800,000 IOPS | 800,000 IOPS | 800,000 IOPS |
消費電力 | - | ||
動作温度範囲 | - | ||
MTTF | 180万時間 | ||
耐久性評価 | 300TBW | 600TBW | 1200TBW |
保証期間 | メーカー5年 |
WD_BLACK SN770M NVMe SSDの外観
まず最初に「WD_BLACK SN770M NVMe SSD」の外観や付属品について簡単にチェックしておきます。WD_BLACK SN770M NVMe SSDのパッケージは、近年のWD_BLACK製品と同じく、マットブラックを基調にオレンジのアクセントカラーで洒落なデザインです。
紙製のパッケージを開くとSSD本体はプラスチックのスペーサーに収められていました。
「WD_BLACK SN770M NVMe SSD」のSSD本体の外観は次のようになっています。基板はM.2 2230サイズ、M-Key型のM.2 SSDです。PCB基板は黒色です。
「WD_BLACK SN770M NVMe SSD」の裏面については最大容量の2TBモデルも含めて素子の実装はなく、いずれも片面実装のSSDです。
「WD_BLACK SN770M NVMe SSD」の表面にはM.2端子を右にして右端にメモリコントローラー、その左隣にメモリチップが実装されています。
「WD_BLACK SN770M NVMe SSD」はメモリチップとメモリコントローラーの全高に差があり、各自でヒートシンク等を装着する時は用意するサーマルパッドの厚みに注意してください。なお1TBよりも2TBのほうがメモリチップは高くなります。
「WD_BLACK SN770M NVMe SSD」では同じくDRAMキャッシュレスのインハウス製メモリコントローラーが採用されています。メモリチップは全容量で基板左側の1枚のみ、WD/SanDiskの112層TLC型3D NAND BiCS5が採用されています。
ちなみに、メモリコントローラーやメモリチップなどSSDを構成する部品がM.2 2230サイズの小さい基板にギュッと詰め込まれていますが、実装されているパーツそのものはM.2 2280サイズのWD_BLACK SN770とほぼ同じです。
特にSSDの中核をなすメモリコントローラーとメモリチップの種類は共通なので、「WD_BLACK SN770M NVMe SSD」は末尾”M”の添え字の通り、WD_BLACK SN770のミニ(Mini)バージョンです。
「WD_BLACK SN770M NVMe SSD」はSSD上に実装されたDRAMキャッシュの代わりに、PCIE3.0/4.0の高速帯域を介してシステムメモリの一部をキャッシュとして使用するHMB(Host Memory Buffer)に対応しています。
自作PC向けなどで市販されているM.2 SSDは基本的に長さ80mmのM.2 2280サイズですが、「WD_BLACK SN770M NVMe SSD」には長さ30mmの2230サイズです。
M.2 2230サイズの「WD_BLACK SN770M NVMe SSD」はASUS ROG AllyやSteam DeckのハンドヘルドゲーミングPCやSurface Pro 9/8のSSD換装に対応します。
WD_BLACK SN770M 1TB/2TBの検証機材と基本仕様
「WD_BLACK SN770M 1TB / 2TB」の各種検証を行う環境としては、PCIE4.0/5.0に対応するAMD Ryzen 9 7950X&GIGABYTE X670E AORUS MASTERなどで構成されているベンチ機を使用しました。構成の詳細は下記テーブルの通りです。テストベンチ機の構成 | |
CPU | AMD Ryzen 9 7950X (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z5 Neo F5-6000J3038F16GX2-TZ5N DDR5 16GB×2=32GB (レビュー) |
マザーボード |
GIGABYTE X670E AORUS MASTER (レビュー) |
ビデオカード | PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 990 PRO 1TB (レビュー) |
OS | Windows 11 Pro 64bit 22H2 |
電源ユニット | Corsair HX1500i 2022 (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
システムメモリの検証機材には、Ryzen 7000用OCメモリのスイートスポットとアピールされているメモリ周波数6000MHz/CL30の低レイテンシなメモリOCに対応した「G.Skill Trident Z5 Neo(型番:F5-6000J3038F16GX2-TZ5N)」を使用しています。
G.Skill Trident Z5 NeoシリーズはAMD EXPOのOCプロファイルに対応した製品なので、AMD Ryzen 7000シリーズCPUで高性能なPCを構築するお供としてオススメのOCメモリです。ARGB LEDイルミネーションを搭載したバリエーションモデル G.Skill Trident Z5 Neo RGBもラインナップされています。
・「G.Skill Trident Z5 Neo」をレビュー。EXPOで6000MHz/CL30のOCを試す!
2023年最新のSSDレビューでは高度に圧縮されたゲームデータをグラフィックボードのVRAMへ直接取り込んで、GPUによって高速に展開するDirectX 12のDirectStorageのようなAPIに対応したPCゲームも検証しています。
その時にSSDの理想的な性能を検証できるように、最新のウルトラハイエンドGPUを搭載したグラフィックボード「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN」を使用しています。
PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8は、ベイパーチャンバー構造のベースコアや、厚みのあるファンブレードをバリヤーリングで結合した重厚な冷却ファンを採用する4スロット占有大型GPUクーラーにより、各社AIBモデルの中でもトップクラスの静音性を実現しています。
メーカーのPNYは2022年に株式会社アスクが販売代理店契約を結んだばかりの新参なので国内での知名度は高くありませんが、北米など海外市場では30年以上に渡りコンシューマーならびにビジネス向けで電子機器の製造・販売を行う大手メーカーです。
国内正規品なら代理店を介してPNY公式のグローバル保証と同じ3年間の長期保証が受けられるところも魅力です。
・「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8」をレビュー
検証環境については上述の通り、AMD Ryzen 9 7950XやGIGABYTE X670E AORUS MASTERで構成されるテストベンチ機を使用していますが、検証するNVMe M.2 SSDはマザーボード上のCPUソケット直下に配置されている、CPU直結PCIE5.0x4レーン接続のM.2スロットに設置しています。
またサーマルスロットリングによる性能低下の可能性を排除するため、JIUSHARK M2-THREEという60mm角ファンでアクティブ冷却できるM.2 SSDヒートシンクを組み合わせた状態で設置しています。
GIGABYTE X670E AORUS MASTERにM.2 SSDを設置する場合、M.2-PCIE変換ボードも使用するなら、計5つの候補があり、どこに接続するかでベンチマーク結果が大きく変わります。
Ryzen 7000シリーズCPU&X670Eマザーボードの環境においてCPU直結PCIEレーンは、主にグラフィックボードで使用するPCIE5.0x16レーンに加えて、NVMe M.2 SSD用のPCIE5.0x4レーンが2つがあり、実のところNVMe M.2 SSDを使用するなら、このNVMe M.2 SSD用のCPU直結PCIE5.0x4レーンが最速となります。
「WD_BLACK SN770M 1TB」のボリュームをWindows 11上で作成したところ、空きスペースは931GBでした。
「WD_BLACK SN770M 2TB」のボリュームをWindows 11上で作成したところ、空きスペースは1.81TBでした。
「WD_BLACK SN770M NVMe SSD」はSSD上に実装されたDRAMキャッシュの代わりに、PCIE3.0/4.0の高速帯域を介してシステムメモリの一部をキャッシュとして使用するHMB(Host Memory Buffer)に対応しています。 「WD_BLACK SN770M NVMe SSD」の1TBモデルは、SSDが指定する最適バッファサイズは200MBですが、実際に確保されるバッファサイズは64MBでした。
WD_BLACK SN770M 1TB/2TBのベンチマーク比較
「WD_BLACK SN770M 1TB / 2TB」の性能を測るためストレージに関する基本的なベンチマークソフトを使用して測定を行います。まずはCrystalDiskMark8.0.4 (1GiB, +Mix)について、「WD_BLACK SN770M 1TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
「WD_BLACK SN770M 1TB」のベンチマークススコアは連続読み出しが5.2GB/s、連続書き込みが5.0GB/s前後に達しており、製品スペック通りの性能です。実用性能への影響の大きい4Kランダム読み出し(Q1T1)も88MB/s程度と非常に高速です。
最大容量の2TBモデルも連続読み出し5200MB/s、連続書き込み4900MB/sの高速な連続アクセススピードです。また製品仕様の通りですが、4Kランダム読み出しは1TBモデルと比べると少し低めです。
ASUS ROG Allyに採用されているMicron 2400 512GB/1TB/2TBのCrystalDiskMarkスコアは次のようになっています。
以下、各種比較対象SSDのCrystalDiskMark8 ベンチマークスコアになっています。
AS SSD Benchmark v2.0.6821.41776 (1GB)について、「WD_BLACK SN770M 1TB / 2TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
以下、各種比較対象SSDのAS SSD Benchmark ベンチマークスコアになっています。
Anvil’s Storage Utilities v1.1.0 (1GB)について、「WD_BLACK SN770M 1TB / 2TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
以下、各種比較対象SSDのAnvil’s Storage Utilities ベンチマークスコアになっています。
WD_BLACK SN770M 1TB/2TBの連続書き込みについて
「WD_BLACK SN770M 1TB / 2TB」に連続書き込みを行った場合の動作についてチェックします。TLC型やQLC型と呼ばれる3bit以上のマルチレベルセルで動作するNANDが採用されているSSDでは、マルチレベルセル化によって遅くなる書き込み速度の底上げのため、NANDメモリの一部を高速キャッシュ領域とする機能が実装されています。
2022年現在、TLCやQLCの記憶領域を動的にSLC化する製品が多いので、この高速キャッシュ領域のことをSLCキャッシュと呼ぶことにします。(可能性としてTLC型SSDやQLC型SSDがMLCで高速キャッシュを構築することもありうる)
このようなSLCキャッシュを有するSSDにおいては、連続した大容量の書き込みによって書き込み総量がSLCキャッシュを超過した場合、書き込み速度がステップ状にガクッと下がります。
例えば600MB/sが理論的な上限速度となるSATA SSDの場合は、動画ファイルなど数十GB以上の単一ファイルの連続書き込みが発生すると、SLCキャッシュ超過後はCrystalDiskMarkなどベンチマークソフトで表示される500MB/s程度の連続書き込み速度を維持できず、100~200MB/sまで書き込み速度が低下する可能性があります。
最新のTLC型NANDをメモリチップに採用する「WD_BLACK SN770M 1TB」がどのような挙動を見せるのか確認してみました。
「WD_BLACK SN770M 1TB」は空き容量が200GB以上あり、SLCキャッシュが十分に開放された状態であれば、100GBの書き込みを行っても、製品仕様でも紹介されているように書き込み開始から一貫して4.4GB/s前後の書き込みスピードを発揮できました。
フォーマット直後の状態からボリューム全域に書き込みを行った時の書き込み速度の推移が下のようになっています。実用的にはあまり意味のない評価方法ですが、SLCキャッシュの挙動を把握する上では役立つこともあるので。
「WD_BLACK SN770M 1TB」は、4GB/s前後の書き込み速度を発揮する高速なSLCキャッシュとして、空き容量が100%の状態ならTLC型SSDとしては理想的な1/3容量+αをそのまま使用でき、超過後は書き込み速度が500MB/s程度に低下しています。
大容量2TBモデルの「WD_BLACK SN770M 2TB」も同じような挙動です。
容量が大きいので、当然、空き容量が100%の状態ならTLC型SSDとしては理想的な1/3容量+αで700GB前後をSLCキャッシュとして使用できます。一方でSLCキャッシュ超過後の書き込み速度は300MB/s程度となっており、1TBモデルと比較すると少し遅めです。
「WD_BLACK SN770M 1TB / 2TB」(下グラフは1TBの例)のSLCキャッシュ容量はシンプルに空き容量の1/3となっており、さらに、Windows上でボリュームとして認識される容量(空き容量に比例して確保されるSLCキャッシュ)とは別に、30GB程度の空き容量として表示されないSLCキャッシュ用領域があります。
「WD_BLACK SN770M 1TB / 2TB」は空き容量の1/3+αというSLCキャッシュとしては理想的な構造でなので、1TBや2TBの大容量モデルであれば基本的に100GB以上のSLCキャッシュを使用でき、SLCキャッシュの開放も高速でした。
超過後の書き込み速度は500MB/s程度とSATA SSD相当なのであまり速くはありませんが、実用的にはSLCキャッシュの超過による性能低下で不便を感じることはないと思います。
ちなみにASUS ROG Allyに採用されているMicron 2400の1TB版の場合、QLC型NANDのSSDなので、SLCキャッシュ容量は空き容量の1/4+αとなっています。
SLCキャッシュ超過後の書き込み速度も150MB/s程度とかなり遅くなるので、大容量データを頻繁に書き込みする使い方だと「WD_BLACK SN770M 1TB」のほうが格段に扱い易いと思います。
WD_BLACK SN770M 1TB/2TBの消費電力と温度
「WD_BLACK SN770M 1TB / 2TB」の消費電力についてチェックしていきます。NVMe M.2 SSDの消費電力測定には、当サイトの検証に使用するためワンオフで特注した測定ツール GPU Power Testerを使用しています。
GPU Power Testerはその名の通り、PCIEスロット経由とPCIE補助電源の消費電力を直接に測定しグラフィックボードの消費電力を検証する機器ですが、M.2延長カードを改造した増設ユニットを使用することでNVMe M.2 SSDの消費電力を測定できます。
グラフィックボードの消費電力測定に使用するようなライザーケーブル/ライザーカードから、さらにM.2-PCIE変換ボードを中継すると、機器の組み合わせやPCIE5.0等の高速接続規格によってはSSDの動作が不安定になることがありますが、この方法ならマザーボードのM.2スロットにM.2 SSDを直結した時と同等の性能で安定して消費電力を測定できます。
まずはSSDの消費電力の傾向を把握するため、CrystalDiskMark8.0.4 (1GiB, +Mix)を測定負荷としてアクセスタイプ別に消費電力がどうなるのかチェックしていきます。
CrystalDiskMarkの設定は各アクセスタイプで測定時間20秒/測定回数1回、測定インターバル10秒に変更しています。12種類のアクセスタイプの負荷に加えて、テスト終了後のアイドル状態の消費電力も測定しています。
CrystalDiskMarkを測定負荷とした時に連続読み出し/連続書き込みのアクセスタイプは、消費電力が最も大きくなる、ワーストケースに近い負荷となります。
CrystalDiskMarkで負荷をかけた時の「WD_BLACK SN770M 1TB」の消費電力の推移は次のようになっています。
「WD_BLACK SN770M 1TB」の消費電力は連続アクセスの最大値でも平均4.4W程度です。最大アクセススピードが控えめ(帯域的に上限が7GB/sのPCIE4.0対応としては)、メモリチップが1枚だけ、DRAMキャッシュレスなどの要因が重なって、かなり省電力なSSDです。
一方、実用性能への影響が大きく、PCゲーミングの実消費電力に近い数値となる4Kランダム(Q1T1)では1.3~1.5Wとなっており、やはりPCIE4.0対応SSDとしてはトップクラスの省電力性能です。
M.2 2230サイズの基板にギュッと詰め込まれていますが、消費電力もM.2 2280サイズのWD_BLACK SN770とほぼ同じでした。
Surface ProやハンドヘルドゲーミングPCを含め近年のモバイルPCはバッテリー持続時間を少しでも伸ばすため、ASPM(Active-State Power Management)が基本的に標準で有効になっています。
デスクトップPC環境ではASPMは通常、使用されませんが、機能自体はBIOS設定とWindows設定を変更することで有効化できるので、ASPM時のアイドル電力も測定してみました。
最近のWD製SSDは非ASPMのデスクトップPC環境だとアイドル時の消費電力が他社製品よりも高い傾向ですが、「WD_BLACK SN770M 1TB / 2TB」では非ASPMの1.00W前後から、ASPMでは0.03Wまでアイドル時の消費電力が下がりました。測定機器(GPU Power Tester)の測定下限に近い数値です。
「WD_BLACK SN770M 2TB」は1TBモデルよりも消費電力は+0.2~0.3W程度、各アクセスで微増していますが、概ね傾向は同じです。
連続アクセスの最大値でも平均4.6W程度、4Kランダム(Q1T1)では1.3~1.5Wとなっており、やはりPCIE4.0対応SSDとしてはトップクラスの省電力性能です。
消費電力が特に大きくなりやすい連続読み出し/連続書き込み(SEQ 1M Q8T1)について、「WD_BLACK SN770M 1TB / 2TB」と各種ストレージを比較すると次のようになります。
実用性能に影響の大きいランダム読み出し/ランダム書き込み(RND 4K Q1T1)について、「WD_BLACK SN770M 1TB / 2TB」と各種ストレージを比較すると次のようになります。
PC電源ONでSSDに対して読み書きアクセスがないアイドル状態の消費電力について、「WD_BLACK SN770M 1TB / 2TB」と各種ストレージを比較すると次のようになります。
続いて、実用シーンのSSD消費電力として当サイト的に重要なPCゲームのプレイシーンをチェックしていきます。
使用しているタイトルは、DirectStorageに対応するPCゲームとしてラチェット&クランク パラレル・トラブル(Ratchet & Clank: Rift Apart)とFORSPOKEN、ストレージへのAPIが従来式の高画質PCゲームとしてMarvel’s Spider-Man RemasteredとForza Horizon 5となっており、いずれも4K解像度でグラフィック設定は基本的に各設定項目が最高設定です。以上4種類のゲームを使用して120秒間の5つのシーンについてSSDの消費電力を測定しており、具体的には次の動画の通りです。
「WD_BLACK SN770M 1TB / 2TB」のDirectStorage対応を含む4種類のPCゲーム、5つのシーンにおけるSSD消費電力の推移は次のようになっています。
グラフ中には上で行ったCrystalDiskMarkによる消費電力測定の結果のうち、連続読み出し(SEQ 1M Q8T1)、ランダム読み出し(RND 4K Q1T1)、アイドルの3種類の消費電力も横線で併記しています。
2023年最新水準の高画質タイトルを使用して検証していますが、PCゲームシーンだとDirectStorage対応と従来式のどちらであっても、SSD消費電力の平均値は、CDMのランダム読み出しとアイドルの消費電力の中間に収まります。
DirectStorage対応PCゲーム、ラチェット&クランクのワープやFORSPOKENのロード・ファストトラベルでは連続アクセス的な大きい消費電力も発生しますが、いずれも1~2秒あるかどうかという瞬間的なものです。
「WD_BLACK SN770M 1TB / 2TB」を含めた各種ストレージについてゲームシーンの平均消費電力を比較すると次のようになっています。(最大値も併記していますが、上の推移グラフを見ての通り瞬間的なピーク値となっており測定毎に振れ幅があるので参考程度に考えてください。)
現状ではPCゲームプレイ中のSSD消費電力は、データの読み出しが多いタイトルでもCDMの4Kランダム読み出しと同程度、そうでなければアイドル状態をベースにして4Kランダム読み出し的な消費電力のアクセスがぽつぽつと発生する感じなので、製品別に見てもSSD消費電力の傾向はCDMの4Kランダム読み出しかアイドルに一致します。
「WD_BLACK SN770M 1TB / 2TB」はゲームシーンにおける消費電力の指標の1つとなるCDMの4Kランダム読み出しで低消費電力だった通り、実際にPCゲーム中の消費電力もトップクラスに低消費電力です。
ただWD製SSDの特長としてアイドル時の消費電力は僅かに高めなので頻繁にロードが発生しないゲームだと相対的にみて消費電力は大きくなります。
「WD_BLACK SN770M 1TB / 2TB」の温度についての検証は省略します。
近年ではマザーボードM.2スロットに十分な性能のM.2 SSDヒートシンク搭載が標準化しており、市販M.2 SSDヒートシンクも安価で高性能なものが簡単に見つかるようになっています。
PCIE4.0/5.0対応でドンドン高速化していく中、NVMe M.2 SSDをヒートシンクなしで温度測定や耐久テストを行うのは時勢に合わない、上記の通りヒートシンクも多様化しているので一例を示してもあまり参考にならない、と思ったというのも1つ理由です。
どうしてもヒートシンクなし、もしくは冷却が限定される環境での運用を検討する必要があるのであれば、上記の消費電力測定で消費電力が小さいSSDを選ぶ、というのが正解ですし。
またゲームシーンの消費電力検証で見た通り、実用シーンでCrystalDiskMarkの連続アクセスのようなPCIE4.0なら7GB/s前後、PCIE5.0なら10GB/sを超える高速アクセスが長時間に渡って発生するのかは疑わしく、比較的に理想的な連続アクセスが生じる動画ファイルのコピーでも、100GBの読み書きは5GB/sなら20秒、長く見積もっても30秒前後で済むので、それ以上のストレステストに意味があるのか疑問です。
またCrystalDiskMark自体はストレージベンチとして非常に有用ですが、SSDの温度検証という観点でいうとテストの3/4で連続アクセス的な消費電力が発生するCrystalDiskMarkを測定負荷に採用するのはあまり意味がないと感じています。
延長カード型でPCIE5.0にも対応するM.2 SSD消費電力測定モジュールも無事に完成したので、PCゲーム以外の実用シーンについてもSSD消費電力を調査しつつ、SSD温度検証の在り方について調べるのが今後の課題だと思っていますが、今回は省略ということで。
WD_BLACK SN770M 2TBでROG AllyのSSDを換装してみる
「WD_BLACK SN770M 2TB」を追加検証するタイミングで、折よくハンドヘルドゲーミングPCのASUS ROG Allyが手元にあったのでSSD換装を試してみました。なお、分解によるSSDの交換作業を行うと換装したPC自体は公式サポート対象外になる可能性があるので、その点は注意してください。
ASUS ROG Allyの内蔵SSDを換装する手順、専用アプリを含めたWindows OSの再インストールについては手順を詳細に解説した記事を公開しています。
一番やっかい?な、PCの背面カバーを外して内部にアクセスする方法など物理的にSSDを交換する作業については3分程度の動画にもまとめたのでASUS ROG AllyのSSD換装をこれからしようと思っている人は参考にしてみてください。
上記記事の手順で作業をして、ROG AllyのSSDを「WD_BLACK SN770M」で大容量な2TBにアップグレードできました。Armoury Crate SEなどプリインストールアプリもしっかりとインストールされています。
ROG Allyの標準SSDであるMicron 2400と、今回換装に使用した「WD_BLACK SN770M 2TB」について、CrystalDiskMark、PCMark10 Storage Benchmark、3DMark Storage Benchmarkの3種類でベンチマークをとってみたので参考までに。
WD_BLACK SN770M 1TB/2TBのレビューまとめ
最後に「WD_BLACK SN770M 1TB / 2TB」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- ASUS ROG AllyやSteam Deck、Surface ProのSSD換装が可能なM.2 2230サイズ
- 最大容量2TBも含め全容量がTLC型SSD、M.2 2230サイズでは貴重
- 最大性能で連続読み出し5150MB/s、連続書き込み4900MB/s
- M.2 2280サイズのSN770とほぼ同じ仕様かつ同等性能
- PCMark10や3DMarkの実用性能ベンチでハイエンドPCIE4.0 SSDに迫る性能
- SLCキャッシュは100GB以上を使用でき(空き容量の1/3+α)、使用後の開放も速い
- 最大容量2TBモデルがラインナップ
- メーカー正規保証期間が5年間
- DRAMキャッシュレス、HMB(Host Memory Buffer)対応
- TLC型なのでSLCキャッシュ超過後に速度低下が発生する
キャッシュ容量は空き容量依存(詳細)で、超過後の書き込み速度は500MB/s程度
「WD_BLACK SN770M NVMe SSD」は末尾”M”の添え字の通り、WD_BLACKのハイコスパなゲーミングSSDとして当サイトでも高く評価しているWD_BLACK SN770をM.2 2230のコンパクトサイズに実装し直したSSDという評価で間違いありません。
最新デスクトップPC向けSSDとしても最前線で戦えるSSDを、ハンドヘルドゲーミングPCやSurface Pro 8/9などモバイル端末に導入できるのは非常に魅力的だと思います。
M.2 2230サイズのSSDは選択肢が限られていて、少し前まではOEM向け横流し品?を使う必要があったのですが、大手SSDメーカーWD製かつ正規の市販品を選べるのは信頼性や製品保証の面でも嬉しいところ。
M.2 2280サイズのWD_BLACK SN770がPCMark10や3DMark、ファイルコピーといった実用性能テストで、同社上位モデルのWD_BLACK SN850Xなど現状でPCIE4.0 SSD最速クラスの製品に迫る性能を発揮することは過去のレビューでも解説していますし、WD Blue SN580の記事内にはWD_BLACK SN770を含めた2023年最新環境での検証結果も載せているので、実用性能ベンチ関連はこちらを参照してください。
「WD_BLACK SN770M NVMe SSD」にはTLCタイプ3D NANDメモリが採用されているので、多くのTLC型SSDと同様の特徴が大容量書き込み時にでており、容量可変のSLCキャッシュを超過すると、理想値4800MB/s程度から500MB/s程度まで書き込み速度が低下します。
SLCキャッシュ超過時の速度低下は大きいですが、空き容量の1/3+αをSLCキャッシュとして使用でき、使用済みSLCキャッシュの開放も速いので、実用的にSLCキャッシュを超過して不便を感じることはないはずです。
M.2 2230サイズのSSDの中にはASUS ROG Allyに採用されているMicron 2400のようにQLC型SSDも多いですが、TLC型SSDの「WD_BLACK SN770M NVMe SSD」は最大容量の2TBモデルも含め全ての容量モデルが大容量データの書き込みに強く(相対的に)、実用性能ベンチで高い性能を発揮するので、Surface Pro 9/8のように普段使いするPCのアップグレードには特に最適だと思います。
一方で消費電力を見ると、「WD_BLACK SN770M NVMe SSD」もトップクラスに省電力ではあるものの、Micron 2400には一歩及びません。
PCゲームの読み出しアクセスがメインになる、ASUS ROG AllyやSteam DeckといったハンドヘルドゲーミングPCのSSD換装では、「WD_BLACK SN770M NVMe SSD」も不向きというわけではありませんが、Micron 2400のほうがより適していると感じました。(QLC型SSDの書き込み性能の低さも大してデメリットにならないので)
とはいえSoCの消費電力が10~20W程度なので、せいぜい1~2W程度(ASPM有効なモバイル端末ではゲームによっては1W未満になることも)のSSD消費電力はバッテリー持ちの観点では誤差とも言えますし、容量単価や保証条件の1つである書き込み耐性なども総合的に考えてお好みで選べばいいかなと。
以上、「WD_BLACK SN770M 1TB / 2TB」のレビューでした。
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M.2 2230サイズでASUS ROG AllyやSteam DeckのSSD換装にも使用可能なNVMe M.2 SSD「WD_BLACK SN770M 1TB」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) November 5, 2023
高コスパ&高性能で定評のあるWD_BLACK SN770と同等のSSDをモバイル端末に搭載できる!https://t.co/3vFtcgjSb4
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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