AMD Ryzen 5 PRO 4650G


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第3世代Ryzenと同じZen2 CPUコアと、7nmプロセスで改良・製造されるRadeon Graphicsを組み合わせた、RenoirことAMD第4世代Ryzen APUのビジネスユーザー向けPROシリーズから、6コア12スレッドのハイパフォーマンスモデル「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」をレビューします。
6コア12スレッドAPUの「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」が、前世代最上位にして同クラスのRyzen 5 3400Gからどれほどの飛躍を果たしたのか、さらに競合Intelのメインストリーム向け6コア12スレッドCPUのCore i5 10400と比較して、クリエイティブタスクやPCゲーミングでどれくらいの性能を発揮するのか検証していきます。



製品公式ページ:https://www.amd.com/ja/products/apu/amd-ryzen-5-pro-4650g
AMD Ryzen PRO APU 4000 Renior





AMD Ryzen 5 PRO 4650G レビュー目次


1.AMD Ryzen 5 PRO 4650Gの外観・付属品・概要
2.AMD Ryzen 5 PRO 4650Gの検証機材・動作設定
3.AMD Ryzen 5 PRO 4650Gの動作クロック・消費電力・温度
4.AMD Ryzen 5 PRO 4650Gのクリエイティブタスク性能
5.AMD Ryzen 5 PRO 4650Gのグラフィック性能とメモリOC
6.AMD Ryzen 5 PRO 4650Gのレビューまとめ



【機材協力:AMD Japan】



AMD Ryzen 5 PRO 4650Gの外観・付属品・概要

「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」の外観や付属品について簡単にチェックしておきます。またこの章では「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」の仕様等について簡単に触れておきたい概要もあれば紹介します。
DSC02993_DxO
以下、販売形態やCPU外観は共通なのでRyzen 7 PRO 4750Gの写真を流用します。
「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」は2020年8月現在、『プラスチック製トレイパッケージに封入されたバルク品のみ、かつ多くの通販サイトではマザーボードとのセット購入が必須』という形式のみの販売となっており、第3世代Ryzen通常モデルのようなボックス版については未定です。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G review_02600_DxO

「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」を含めて第3世代Ryzenは第1/2世代Ryzenと同じAM4ソケットに対応するCPUなので、第1世代から第3世代までCPUの形状には変化はありません。裏面のCPUソケット側はLGAタイプのCPUソケットを採用するIntel製CPUと違って剣山状の金属端子が生えています。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G review_02608_DxO

AMD公式に発表されている基本スペックを確認すると、「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」のCPUに関する基本スペックは通常モデルRyzen 5 4600Gと共通で、メインストリーム向けCPUながら6コア12スレッドのメニーコア、ベースクロック3.7GHz、単コア最大ブーストクロック4.2GHzで、TDPはiGPU非搭載のRyzen 5 3600と同じくTDP65Wに設定されています。
AMD Ryzen 5 4600G_top
注意点としてRyzen PROシリーズに属する「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」はCPUおよびGPUの動作倍率(コアクロック)はロックされており、ユーザーによる手動オーバークロックは不可能です。Ryzen用の純正OCツールRyzen Masterにも対応していませんが、メモリについてはマザーボードBIOSから設定すれば定格の3200MHz以上にオーバークロックが可能です。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_spec

AMD Ryzen 5 PRO 4650Gに加えて、従来モデルAMD Ryzen 5 3600、競合製品のIntel Core i5 10400やIntel Core i5 10400Fのスペックを早見表にまとめて比較すると次のようになっています。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G スペック簡易比較

Ryzen 5 PRO 4650G
Ryzen 5 3600 Core i5 10400
Core i5 10400F
コアスレッド 6コア12スレッド
ベースクロック 3.7GHz 2.9GHz
全コア最大ブースト ~4.2GHz 4.0GHz
単コア最大ブースト 4.2GHz 4.3GHz
オーバークロック
コア:X
メモリ:O
O X
(Z490環境ならメモリはOC可能)
L3キャッシュ 8MB 32MB 12MB
TDP 65W
CPUクーラー X 付属
(Wraith Stealth)
O
iGPU
O X O X
メモリ ch / pcs
2 / 4
CPU直結PCIEレーン
PCIE3.0
16 + 4
PCIE4.0
16 + 4
PCIE3.0
16
おおよその国内価格
(北米希望小売価格)
3.0万円
(209ドル)
2.4万円
(199ドル)
2.3万円
(182ドル)
2.2万円
(157ドル)

8コア16スレッドの最上位モデルAMD Ryzen 7 PRO 4750Gについても個別の詳細レビューを公開しています。
「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」をレビュー。Core i7 10700と徹底比較
AMD Ryzen 7 PRO 4750G

「Ryzen 5 PRO 4650G」に搭載されたiGPUのRadeon GraphicsはCompute Unit数7(ストリームプロセッサ数448)となっており、アーキテクチャは従来のVega Graphicsを踏襲していますが、7nmプロセスで改良されたことによって定格コアクロックは1900MHzと従来モデル比で35%も高速化しています。
第3世代Ryzen APUの最上位モデルであるRyzen 5 3400Gに搭載されていたVega11はCompute Unit数11、定格コアクロック1400MHzだったので、単純計算では10%強の性能減となりますが、定格システムメモリ周波数の向上や7nmプロセスによる改良によって実性能では数%の高速化を果たしているとのこと。
AMD Ryzen PRO APU 4000 Renior_performance
「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」など第4世代Ryzen APUと前世代Ryzen APUに搭載されたiGPUのスペックを比較すると次のようになっています。
AMD第4世代Ryzen APU iGPUスペック一覧
APU コア/
スレッド
iGPU
コア数
iGPU
コアクロック
定格メモリ周波数
(VRAM共有)
Ryzen 7 4700G
(PRO 4750G)
8 / 16 Radeon 8 (7nm)
SP:512
2100MHz3200MHz
Ryzen 5 4600G
(PRO 4650G)
6 / 12 Radeon 7 (7nm)
SP:448
1900MHz3200MHz
Ryzen 5 3400G 4 / 8
Vega 11 (12nm)
SP:714
1400MHz2933MHz
Ryzen 3 4300G
(PRO 4350G)
4 / 8 Radeon 6 (7nm)
SP:384
1700MHz3200MHz
Ryzen 3 3200G 4 / 4
Vega 8 (12nm)
SP:512
1250MHz2933MHz

今回レビューする「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」の基本スペックは第4世代Ryzen APUの通常モデルRyzen 5 4600Gと共通ですが、ビジネスユーザー向けRyzen PROシリーズに属する製品となっており、独自の特長としてセキュリティ機能「AMD PRO Technology」が利用できます。
AMD Ryzen PRO APU 4000 Renior_AMD Pro Security
AMD PRO Technologyは、一部のIntel製CPUがサポートするセキュリティ機能Intel vProに対する競合機能になっています。
AMD Ryzen PRO APU 4000 Renior_PRO Technology
ECCメモリやセキュリティ機能などビジネスユーザー向けのCPU機能についてAMD製CPUとIntel製CPUの対応状況を簡単にまとめると次のようになっています。()内には8コア16スレッドCPUの一部を例に挙げています。
ビジネスユーザー向け機能の対応比較
CPU ECCメモリ対応
セキュリティ機能
AMD Ryzen PRO
(Ryzen 7 PRO 4750G)
O AMD PRO Technology
Ryzen 4000G, 3000
(Ryzen 7 4700G, 3700X)
X
Intel Xeon-W 1200
(Xeon-W 1270/P)
Intel vPro
Core 10th
(Core i7 10700/K/F)
X Intel vPro
(一部、非サポートのモデルも)


「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」などAMD Ryzen 4000Gシリーズについては2020年6月以降に新たに発売されたB550チップセットとA520チップセットを搭載したマザーボードがネイティブサポートするほか、昨年発売されたX570チップセットを搭載したマザーボードもBIOSアップデートで対応します。 B450やA300などの旧チップセットはAMDの公式サポートからは外れているので注意が必要です。
AMD Ryzen PRO APU 4000 Renior_Chipset-Support
なおB550マザーボードに対してもAMD Ryzen 4000Gシリーズに最適化された新マイクロコードAMD AGESA ComboV2 1.0.0.2を含むBIOSアップデートがリリースされています。
AMD Ryzen APU 4000 Renior_BIOS
300/400シリーズの旧チップセットについてはAMDの公式サポート外なので、AMD Ryzen 4000Gシリーズが完全に正常動作する保証はないのですが、マザーボードメーカーからは一部製品に対してベータBIOSという形で対応BIOSが提供される可能性があります。
AMD Ryzen APU 4000 Renior_BIOS_A300

「ASRock DeskMini X300」をレビュー。Ryzen 4000Gに完全対応!
ASRock DeskMini X300



AMD Ryzen 5 PRO 4650Gの検証機材・動作設定

以下、「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」の各種検証を行うベンチ機、および比較対象となる各CPUのベンチ機の詳細となります。
AMD AM4(X570/B550/X470)環境 テストベンチ機の構成
CPU 【第4世代Ryzen APU】
AMD Ryzen 7 PRO 4750G (レビュー
AMD Ryzen 5 PRO 4650G (レビュー
AMD Ryzen 3 PRO 4350G (レビュー
【第3世代Ryzen】
AMD Ryzen 9 3900X (レビュー
AMD Ryzen 7 3700X (レビュー
AMD Ryzen 5 3400G (レビュー)
マザーボード (4000G)
MSI MPG B550I Gaming Edge WiFi
レビュー
マザーボード (3000)
MSI MEG X570 ACE
レビュー
マザーボード (3000G)
ASRock Fatal1ty X470 Gaming-ITX/ac
レビュー
CPUクーラー Corsair H150i PRO RGB (レビュー
Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー
メインメモリ
(4000G/3000G)
G.Skill Trident Z Black
F4-3733C17D-32GTZKK
DDR4 16GB*2=32GB
(4000G) 3600MHz, CL16-16-16-36-CR1
(3000G) 3200MHz, CL16-16-16-36-CR1
メインメモリ
(3000)
G.Skill Trident Z Neo
F4-3600C14Q-32GTZN
DDR4 8GB*4=32GB (レビュー
3600MHz, CL16-16-16-36-CR1
ビデオカード(共通) ZOTAC RTX 2080Ti AMP Extreme Core
レビュー
システムストレージ(共通) Samsung 860 PRO 256GB (レビュー
OS(共通) Windows10 Home 64bit
電源ユニット(共通) Corsair HX1200i (レビュー
ベンチ板 STREACOM BC1 (レビュー

AMD Ryzen 5 PRO 4650G review_02743_DxO
AMD Ryzen 5 3500X review_00823

AMD AM4(X570)環境では検証機材マザーボードとして「MSI MEG X570 ACE」を使用しています。「MSI MEG X570 ACE」でCPU動作設定を標準設定のAutoとした場合、各CPUは仕様通りの定格動作で問題なく動作するので、測定に当たってソフトウェア的には特に個別の設定は行っていません。
ただしAMD Ryzen CPUではCPUクーラーの冷却性能が十分であれば電力制限を解除して自動的に動作クロックを引き上げる機能「XFR (Extended Frequency Range)」が効くため、電力制限の閾値となるPPTが仕様値のTDPよりも高く設定されています。例えばRyzen 9 3900XではTDP105Wを上回って仕様上の上限値となるPPT 142W以下で動作します。
AMD-Ryzen-9-3900X_TDP-PPT

Ryzen CPUの仕様値TDPと標準PPT

仕様値TDP 標準PPT
Ryzen 9 3950X, Ryzen 9 3900XT,
Ryzen 9 3900X, Ryzen 7 3800X,
Ryzen 7 2700X
105W 142W
Ryzen 5 3600X, Ryzen 5 2600X 95W 128W
Ryzen 7 PRO 4750G, Ryzen 7 3700X,
Ryzen 5 PRO 4650G, Ryzen 5 3600,
Ryzen 5 3500X, Ryzen 3 PRO 4350G
Ryzen 3 3300X, Ryzen 7 2700
65W 88W

CPU Package Power(CPU消費電力)がTDPを上回るPPTの範囲内で制限されるという動作は、CPU Package PowerがそもそもTDPの範囲内に収まるPCゲーム性能には基本的に影響しないものの、クリエイティブタスク性能には大きく影響し、また消費電力の測定にも当然影響します。そこでPCゲーム性能の測定を除いて、第3世代Ryzenの中でTDPを超えるCPU消費電力になるものについては、参考値としてPPTを仕様値TDPに一致させたケースについても測定を行います。
Ryzen CPUの検証でPPT=TDPを参考値として測定する理由
CPU_Boost_Model_2


Intel LGA1200(Z490)環境 テストベンチ機の構成
CPU Intel Core i9-10900K(レビュー
Intel Core i9-10900(レビュー
Intel Core i7-10700K(レビュー
Intel Core i7-10700F(レビュー
マザーボード MSI MEG Z490I UNIFY
 (レビュー
CPUクーラー Fractal Design Celsius S36 (レビュー
Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー
メインメモリ G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK
DDR4 8GB*4=32GB (レビュー
3600MHz, CL16-16-16-36-CR1
その他
レビュー対象CPUのベンチ機と共通


第3世代Ryzen検証環境のシステムメモリには、第3世代Ryzen&X570マザーボードのプラットフォームに最適化されたハイパフォーマンスOCメモリの最速モデル「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」を使用しています。3600MHz/CL14の最速モデル、3200MHz/CL14や3600MHz/CL16といった定番スペックがラインナップされ、高級感のあるヒートシンクや8分割ARGB LEDを搭載してデザイン面でも優れる「G.Skill Trident Z Neo」シリーズは、第3世代Ryzenの自作PCで性能を追求するなら間違いのないオススメなOCメモリです。
「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」をレビュー
G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN

ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する2019年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、Intel Core-XやAMD Ryzen TRのようなハイエンドデスクトップ環境はもちろん、メインストリーム向けでもハイパフォーマンスな環境を目指すのであれば、システムストレージ用に一押しのSSDです。
「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
Samsung SSD 860 PRO 256GB

CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。


グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。Thermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスで適量が塗布されていれば、CPUクーラー固定時の圧着でヒートスプレッダ全体へ自然に伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
Thermal Grizzly Kryonaut_apprication

サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
「Thermal Grizzly Carbonaut」はRyzen 9 3900Xを冷やせるか!?
Thermal Grizzly Carbonaut_Ryzen 9 3900X



AMD Ryzen 5 PRO 4650Gの動作クロック・消費電力・温度

「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」に関する検証のはじめに、「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」の動作クロック、消費電力、温度など同CPUの基本的な動作についてチェックしていきます。

「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」は6コア12スレッドのCPUで、AMD公式の仕様ではベースクロック3.7GHz、単コア最大ブーストクロック4.2GHzとなっています。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_CPU-Z
なお「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」のCPUスペックはRyzen 5 3600と同等ですが、L3キャッシュの容量が3600の32MBに対して、8MBしかありません。
AMD AM4(X570)_CPU-Z

HWiNFOから「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」のコアクロックの挙動を確認したところ、確かに負荷の軽い場面では最大4.2GHz程度で動作するコアがありました。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_Boost-Clock_Single
「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」のAMD公称仕様値としてはTDP65WのCPUですが、実際の内部設定としては定格電力制限『PPT:88W、TDC:65A、EDC:90A』が許容されています。「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」はCPUクーラーによるCPUの冷却が十分であれば(CPU温度が閾値95度以下であれば)、PPT88Wの制限下で動作しXFRによって仕様値ベースクロック3.6GHzよりも高い動作クロックへ引き上げられます。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_PPT
「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」をB550マザーボード「MSI MPG B550I Gaming Edge WiFi(BIOS:112)」と組み合わせてCPU動作をBIOS標準設定とし、CinebenchやAviult&x264エンコードを実行したところ、いずれのケースにおいても全6コアへ同時に大きな負荷がかかった時の動作クロックは平均4.27GHz程度でした。この時のCPU Package Powerは68W前後で推移しています。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_Boost-Clock_multi

「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」は手動オーバークロックには対応していませんが、マザーボードBIOSから電力制限の変更は可能です。
MSI MPG B550I Gaming Edge WiFi(BIOS:112)においては「System Configuration AM4」の名前で簡単に電力制限モードを変更できる設定値が用意されており、標準設定の”65W”に加えて、”45W”と”35W”の3種類から電力制限を選択できます。
45W設定における電力制限は『PPT:54W、TDC:45A、EDC:65A』、45W設定における電力制限は『PPT:42W、TDC:39A、EDC:55A』となっています。
MSI MPG B550I Gaming Edge WiFi_powerlimit

MSI MPG B550I Gaming Edge WiFiのSystem Configuration AM4からTDP制御を行った時の「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」のCPU Package Powerやコアクロックの挙動について、動画エンコードを例にして簡単にチェックしてみました。
動画エンコードによってCPUにフル負荷をかけた時、TDP65Wの標準設定ではPPT:88Wが許容されていますが、全コア最大動作倍率の制限が先に効いてくるので、CPU Package Powerは平均68W程度とTDPに対して微増に収まっています。
一方で省電力モードの45Wや35WではPPTとして54Wと42Wが許容されているので、テスト開始から5分程度はそれに応じたCPU Package Powerが生じていますが、5分を経過した辺りでCPU Package Powerが45Wと35Wに制限される様子が確認できます。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_TDP_CPP
管理人が明確に確認できたのはRyzen 4000Gシリーズからなのですが、Ryzen CPUでもIntelのPL1/PL2/Tauのようなステップ型の電力制御として「SmartShift Control」が導入されたようです。
AMD Ryzen 7 PRO 4750G_SmartShift Control
AMD製CPUのSmartShift Controlでは、ごく短期間の電力制限解除を行う「Fast PPT(Short PPT)」、数分程度の中期的な電力制限解除を行う「Slow PPT(Long PPT)」、そして最終的な長期間電力制限値となる「Sustained PPT」の3つのパラメーターが確認できています。BIOS上ではまだ存在を確認できていませんが、前者2つの許容時間を決めるパラメーターも存在するようです。
MSI MPG B550I Gaming Edge WiFi_SmartShift Control

各TDP設定においてテスト中のコアクロックは当然ながらCPU Package Powerに応じて変化します。「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」はTDP65W(PPT:88W)において全コア4.27GHz程度で動作しますが、TDP45W設定ではPPT:54Wが許容される開始直後は4,10GHz程度、PPT:45Wに下がる後半では3.87GHz程度となります。さらにTDP35W設定ではPPT:42Wが許容される開始直後は3.80GHz程度、PPT:35Wに下がる後半では3.57GHz程度となります。
コアクロックから概算すると、TDP45Wモードでは定格の90%以上、TDP35Wモードでは定格の80%以上の性能を発揮できるようです。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_TDP_Clock


続いてCPU消費電力の検証結果をチェックしていきますが、当サイトのCPUレビューでは主として”CPU温度への影響要因”という意味においてCPU消費電力を評価しているので、動画のエンコードによって長期間電力制限が効いている状態の平均的な消費電力をCPU消費電力として比較します。
個人的な意見としては短期間電力制限は短期間かつCPU温度によっても制御されるのでCPU温度への影響要因として比重は小さく、また瞬間ピーク電力はせいぜいがTDP+100W程度なので、マザーボードVRM電源の破損を心配するほどではなく、その程度の電力超過は電源ユニットで十分吸収できるので、評価対象としてあまり意味がないと思っています。
またCPU製品仕様のTDPについては、定義がIntel/AMDで厳密には異なり、各社の具体的な測定・算出方法も不明なので、CPU動作クロックを含めて総合的に判断する必要があるものの、基本的には長期間電力制限時の消費電力がTDP仕様値とほぼ一致、もしくはTDP仕様値を下回れば正常であると評価します。
当レビュー記事では簡単のため割愛しますが、CPUの消費電力に関する評価基準の補足として下記の記事も参考にしてください。
2019年最新CPUの消費電力・発熱・TDP・温度について - 爆熱評価のウソほんと
2019年最新CPUの消費電力・発熱・TDP・温度について

CPU消費電力の測定には電源ユニット「Corsair HX1200i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの出力ではなく変換ロスを差し引いたシステム全体への入力電力をチェックしています。なお電源ユニットに対する実際の最大瞬間負荷は測定値より50~100W上回る場合があるので電源ユニットの電源容量選択の参考にする場合は注意してください。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_power
CPUの消費電力や温度の測定を行う負荷テストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、Aviutl&x264を使って動画のエンコードを行います。動画エンコードの同時実行数については4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列実行、16コア以上は3並列実行としています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTやPrimeなど専用負荷ソフトを使用しているレビューもありますが、管理人の私見としてはCPU負荷が非現実的なので、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースを想定した場合、ほぼ最大のCPU負荷となるx264による動画エンコードとストレステストに採用しています。
Core i9 7980XE_Test

「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」と比較対象の各CPUについて、上記負荷テスト中の”平均値を消費電力”、”最大値を瞬間的な最大電源負荷”と表記した場合、システム消費電力の測定結果は次のようになっています。

「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」のCPUにフル負荷をかけた時の消費電力は97.9W、瞬間最大負荷は133Wでした。iGPUに対して3DMark Fire Strikeで負荷をかけると消費電力は59.3Wとなりアイドル比で+30W程度ですが、CPUコアとSOCコアの合計値に電力制限があり、グラフィック負荷時にSOCコアの消費電力が上がるため、CPUとiGPUへ同時に負荷をかけても、CPU単体と比較して10~20W増程度です。
またiGPUだけに3DMark Fire Strikeで負荷をかけた場合は興味深く、Ryzen 5 3400Gよりも数%程度の高速化を果たしている「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」のほうが低消費電力となっており、7nmプロセスで改良されたRadeonグラフィックスのワットパフォーマンスの向上をはっきりと確認できます。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_Power

続いてCPU温度について、上のグラフの通り最大負荷時の消費電力がRyzen 7 PRO 4750GとRyzen 5 3400Gではほぼ同等だったので、以前の検証を踏襲してRyzen 5 PRO 4650Gでも、簡単に360サイズ簡易水冷CPUクーラーで冷やして動画エンコード時のCPU温度を比較してみました。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G review_02911
CPU消費電力(発熱)が同じであっても、CPUダイサイズ、IHSの大きさ、TIMの種類などによってCPU温度は大きく変わるのですが、Ryzen 7 PRO 4750GとRyzen 5 3400Gについては、CPUコアクロックの制御ソースでもあるCPU温度(Tdie/Tctl)はほぼ同等でした。
その2つよりもCPU消費電力の低いRyzen 5 PRO 4650Gはというと、Ryzen 7 PRO 4750Gに比べて電圧特性が低く、似たようなコアクロックに対して各コアの消費電力が高いからか僅かに高いCPU温度を示したものの、実用上は誤差レベルの違いに収まりました。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_temp

以上の消費電力と温度のグラフの通り、「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」は最大負荷時において前世代最上位のRyzen 5 3400Gと比較して低い消費電力かつ同程度のCPU温度なので、Ryzen 5 3400Gと組み合わせてよく使用される、ASRock Deskmini A300(対応BIOS待ち)やIn Win B1など電源ユニットを含むPCケース、Noctua NH-L9aやCRYORIG C7などのロープロファイルCPUクーラーと、電力的・温度的に互換と考えていいと思います。
PC-Case_bundled-PSU

「ASRock DeskMini X300」をレビュー。Ryzen 4000Gに完全対応!
ASRock DeskMini X300



AMD Ryzen 5 PRO 4650Gのクリエイティブタスク性能を比較

「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」のクリエイティブタスク性能をRyzen 5 3600やCore i5 10400と比較してチェックしていきます。

「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」は、6コア12スレッドのCPUであり、単コア最大動作クロックは4.2GHz、全コア最大動作クロックは4.2GHz程度です。PPT:88Wの電力制限が定格仕様通り適用されている場合、3Dレンダリングや動画のエンコードなど全コアに対して大きく負荷がかかる時の実動クロックは4.27GHz程度となります。

省電力モードであるSystem Configuration AM4を使用してTDP45WモードやTDP35Wモードを使用すると「Fast PPT / Slow PPT / Sustained PPT」の3つのパラメーターの組み合わせが面倒なことになるので、今回はSystem Configuration AM4を使用せずに上記PPTを54Wおよび42Wに固定したケースについて追加で検証しました。
MSI MPG B550I Gaming Edge WiFi_SmartShift Control


「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」は全コア4.27GHz程度で動作するので、CPUのマルチスレッド性能を測定するベンチマークで定番のCinebench R15のスコアは1600程度、Cinebench R20のスコアは3700程度でした。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_Cinebench R15
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_Cinebench R20
CPU消費電力が定格で十分に冷えた時の2/3程度まで低くなるSustained PPT:42W設定でもCinebench R20のスコアは3400程度と性能低下は10%ほどに抑えられています。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_Cinebench R20_susPPT42W


CPU性能の詳細な検証に用いるクリエイティブタスクについてはCPU使用率がフルロードになる3Dレンダリング、動画エンコード、RAW現像、ゲームビルドの4種類となっています。
具体的な測定内容は、3Dレンダリングはオープンソース3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト、動画のエンコードは無料で利用できる動画編集ソフトとして国内外で多数のユーザーがいる「Aviutl」のx264エンコーダによるフルHD動画のエンコード、RAW現像はDxO PhotoLab(PRIMEあり、5472×3648解像度のRAW画像ファイル 100枚)、デモプロジェクト「Infiltrator」を使用したUnreal Engine 4によるゲームビルドです。

3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフトで測定する3Dレンダリング性能についてはレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、比較対象の中で最も遅いものを基準にして、「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_Creative_1_Blender

x264エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_Creative_2_Aviutl-x264-FHD

DxO PhotoLabによるRAW現像速度について「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_Creative_3_DxO

「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド性能については、ビルド時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、比較対象の中で最も遅いものを基準にして、「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」を含めた各種CPUのビルド速度を性能比としてグラフ化しました。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_Creative_4_UE

6コア12スレッドCPU「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」のクリエイティブタスク性能を簡単にまとめると下のグラフのようになっています。()内にはクリエイティブタスクでCPUに100%負荷がかかった時の典型的なシステム消費電力を記載しています。いずれもiGPU使用時ですが、Ryzen 5 3600だけはGPUにGeForce GT 1030を搭載した時の消費電力です。
Ryzen 5 PRO 4650Gは全コア4.27GHz程度で動作する定格設定の場合、同じく6コア12スレッドCPUのRyzen 5 3600と概ね同等、Intel第10世代Core i5については最もコアクロックの低いCore i5 10400よりも15%程度高速ですが、3万円を少し超えて同価格帯となるCore i5 10600/10600Kであれば同程度の性能です。
ただしUnreal Engine 4だけは大きくスコアを落としました。Intel製CPUのほうが若干優位になりやすいタスクではあるのですが、Ryzen 5 3600と比較しても差が大きいので、3600の32MBに対して8MBと少ないキャッシュが影響しているのではないかと思います。
PCMark10の一部テストでもスコアを落とすものがある(こちらは実用上は体感できないケースだと思いますが)ので、小さいキャッシュ容量が足を引くタスクもあるようです。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_Creative_pefsum
Ryzenシリーズの中では同クラスのRyzen 5、前世代では最上位だったRyzen 5 3400Gと比較すると、クリエイティブタスクで重要なマルチスレッド性能に直結するCPU部分が、3400GではRyzen 7 2700Xなど第2世代RyzenのZen+アーキテクチャに対し、Ryzen 5 PRO 4650Gは第3世代Ryzenと同じZen2アーキテクチャなので、170~200%程度というコアスレッド数の差を超える性能スケーリングです。
とりわけUnreal Engine 4によるゲームビルドやx265による動画エンコードでの性能の伸びは顕著で2倍近い性能向上を果たしています。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_Creative_pefsum_vs-APU

また「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」のSustained PPTを54Wや42Wとして電力制限を適用した時のクリエイティブタスク性能をまとめると次のようになっています。
公称TDP値を下回るPPT:54W設定では定格と比較して性能差は誤差レベルですし、定格に対してCPU Package Powerが2/3程度となるPPT:42W設定でも性能低下は10%程度に収まります。
Intel製CPUと比較した場合、コアスレッド数相応の性能を得ようとするとPL1:95W以上が要求されるCore i7/i9と違って、PL1:65W程度で十分なCore i5は電力的に制約があったとしても性能で極端に大きい差が付くことはありません。
とはいえ、消費電力が低ければそれだけ小さいCPUクーラーでも静音動作が期待できるようになるので、Ryzen 4000Gシリーズに採用される7nmプロセス Zen2アーキテクチャのワットパフォーマンスの高さには相対的な魅力があることを再認識できます。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_Creative_pefsum_TDP



AMD Ryzen 5 PRO 4650Gのグラフィック性能とメモリOCについて

「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」のグラフィック性能やメモリOCについてチェックしていきます。

「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」などRyzen 4000Gシリーズも第3世代Ryzenと同様にインターコネクトInfinity Fabricの動作周波数はメモリ周波数と同期しており、加えてRyzen APUでは統合グラフィックスであるRadeonグラフィックスのビデオメモリはシステムメモリと共有されているので、メモリ周波数が総合的なパフォーマンス、特にグラフィック性能へ大きく影響します。
「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」などRyzen PROシリーズはCPUコアクロックやGPUコアクロックのOCには非対応ですが、メモリはOCできるのでメモリOCによって大幅なパフォーマンス向上が狙えます。
ASRock DeskMini X300_Overclocking_MEM
「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」は第3世代Ryzenと同じくZen2アーキテクチャが採用されているので、メモリ周波数は、シングル/デュアルランクのメモリ2枚組み構成において対応する定格最大が3200MHz、Infinity Fabricが1:1同期可能な一般的な常用OC限界が3600MHzとなっています。
なお前世代Ryzen 3000Gシリーズは3000番台ながらCPUアーキテクチャはRyzen 7 2700Xなど第2世代のZen+だったのでメモリ周波数は定格最大が2933MHz、一般的な常用OC限界が3200MHzでした。単純なiGPUスペックだけでなく、このメモリ周波数の違いもグラフィック性能の差に影響します。
Ryzen APU 4000G_memory

メモリOCに対する挙動には大差ないので、上位モデル「AMD Ryzen 5 PRO 4750G」の環境でメモリOCを試してみた結果を紹介すると、
メモリ周波数3600MHzかつメモリタイミング14-15-15-35-CR1で実用最速クラスのOCプロファイルを収録する「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14D-16GTZN」や「Team T-FORCE Xtreem ARGB DDR4 TF10D416G3600HC14CDC01」は8GB×2=16GBで安定動作を確認できました。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_Ramtest_8GBx2_3600MHz_CL14
他には大容量な16GB×2=32GBの「G.Skill Trident Z Black F4-3733C17D-32GTZKK」を使用したところ、メモリモジュールはデュアルランクですが、第3世代Ryzenにおいてスイートスポットと公式スライドでも紹介されている、メモリ周波数3600MHzかつメモリタイミング16-16-16-36-CR1が安定動作しました。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_Ramtest_16GBx2_3600MHz_CL16
なおRyzen 5 PRO 4650GなどRyzen 4000Gではシステムメモリの一部がiGPUのビデオメモリとして共有されているため、メモリ周波数を3600MHz以上にOCすると上のRAM Testのようなメモリ安定性テストをクリアできても、PCゲームなどでiGPUに負荷がかかるとクラッシュする場合があります。
Ryzen 4000GなどAMD Ryzen APUでメモリOCを行う場合は、Night Raid Stress Testなどを使用してメモリOC時のiGPUの安定性もチェックしてください。
RAM Testなどメモリ安定性テストをクリアできるのに、iGPU負荷でクラッシュする場合は、SOC電圧を固定電圧で1.100~1.200V、もしくはオフセットで+0.050~0.100Vに昇圧するだけでiGPU負荷でも安定することが多いです。
AMD Ryzen APU_Memory OC_iGPU-Stress

iGPUとしてRadeon Graphicsを搭載しているとはいえ、CPUアーキテクチャは第3世代Ryzenと同じくZen2が採用されているので、3600MHz以上のプロファイルを収録したメーカー動作確認済みOCメモリであれば、「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」でも3600MHzのメモリOCはInfinity Fabricが1:1同期を含めて比較的簡単に安定動作を期待できると思います。
メモリOCに関するさらに詳しい情報やオススメOCメモリについてはこちらの記事を参照してください。
【できる!メモリOC】 OCメモリの選び方から設定まで完全解説
【できる!メモリOC】 OCメモリの選び方から設定まで完全解説


グラフィック性能への影響が大きいメモリOCについて簡単に解説が済んだので、続いて本題となる「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」のグラフィック性能をチェックしていきます。
グラフィック性能比較で最もメジャーな3DMarkで現在主流なDirectX11のベンチマーク「FireStrike」のグラフィックスコアについて、「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_Gaming_3DMark_1_FS
3DMarkのCPU統合グラフィックス向けDirectX12ベンチマーク「NightRaid」のグラフィックスコアについて、「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_Gaming_3DMark_2_NR

国内最大手かつ大人気のMMO RPG「ファイナルファンタジーXIV」の2019年最新大型アップデート「FFXIV: 漆黒のヴィランズ」の公式ベンチマークソフトで、「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」のPCゲーミング性能を測定してみました。FFXIV: 漆黒のヴィランズの公式ベンチマークソフトでは総合スコアを1.5×100で割った値がちょうど平均FPSになっています。
「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」は、グラフィック品質をデスクトップ向け標準にすると、1280×720のHD解像度まで下げてやっと平均60FPSの快適水準を上回ります。1600×900なら8000近くはマークできるのでグラフィック設定を多少下げれば平均60FPSを狙えそうです。1920×1080のフルHD解像度となると公式ベンチの評価は快適となっていますが、平均40FPSくらいなのでちょっと厳しいというのが正直な感想です。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_FF14_1280
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_FF14_1600
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_FF14_1920
また2020年最新PCゲームと比較しても高画質でグラフィック負荷が重いPCゲームに分類されるシングルプレイ用ロールプレイングゲーム「ファイナルファンタジーXV」の公式ベンチマークソフトで、「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」のPCゲーミング性能を測定してみました。
「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」は、1280×720のHD解像度、グラフィック設定:軽量品質においてベンチマークスコアは4200程度、快適度評価は「普通」でした
AMD Ryzen 5 PRO 4650G_FF15



AMD Ryzen 5 PRO 4650Gのレビューまとめ

「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ or 概要
  • AMD初の6コア12スレッドAPU
  • 定格でメモリ周波数3200MHzに対応
  • 定格の実動CPP:68W前後において全コアが実動平均で4.3GHz程度
  • TDP45W(3.9~4.1GHz)、TDP35W(3.6~3.8GHz)の省電力モード
  • 前世代最上位3400Gを1.7~2倍も上回るクリエイティブタスク性能
  • 前世代最上位3400Gよりも低消費電力で数%高いiGPUのグラフィック性能
  • Intel第10世代Core i5よりもCPUの電力効率に優れ、iGPUの性能は2倍以上
  • 6コア12レッドAPUながら税込み3.2万円程度(2020年8月現在)
悪いところ or 注意点
  • Ryzen PROシリーズなのでCPU・GPUのコアクロックは倍率ロックでOC非対応
  • Unreal Engine 4によるゲームビルドなど3600や10400と比較して性能の低いタスクもある
  • AMD正式サポートのマザーボードはX570とB550など500シリーズのみ
  • 通販は基本的にMBセット購入必須なバルク版のみの取り扱い(2020年8月現在)

6コア12スレッドAPU「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」は、前世代最上位Ryzen 5 3400Gよりも低い消費電力で2倍近く上回るクリエイティブタスク性能(CPUマルチスレッド性能)を発揮し、iGPUについても7nmプロセスで改良されたRadeonグラフィックスによって数%高い性能をより低い消費電力で実現し、”飛躍”という表現がピタリとはまる進化を遂げています。

6コアになったことで”供給電力は足りるのか”、”小型クーラーで冷やせるのか”は気になるところでしたが、消費電力やCPU温度については前世代最上位Ryzen 5 3400Gよりも低く、CPU温度も同程度なので、Ryzen 5 3400Gが運用できるシステム(CPUクーラーや電源)であれば、CPU(と必要に応じてマザーボード)を移植するだけでそのまま運用できます。

競合Intelの6コア12スレッドCPUである第10世代Core i5と比較すると、上位モデルと違ってCore i5はPL1:65Wもあればコアスレッド数相応の性能を発揮できるので、単純な性能面では伯仲していると言えると思います。
とはいえPPT:42W程度に電力を制限しても定格の90%程度とCore i5 10400を僅かに上回る性能を発揮できる「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」のワットパフォーマンスの高さには見るものがあり、ASRock Deskmini A300やIn Win B1のような大型CPUクーラーと搭載できないコンパクトPCにおいて静音性を損なうことなく性能を追求できるというメリットがあります。
なお価格についてはiGPU性能に差がありますが、Core i5 10400は15%程度性能が下がるもののiGPUありで2.4万円と安価、同価格帯のCore i5 10600(K)ならCPU自体はほぼ同性能となるので、Core i5 10400の割安感が目立ち、このラインでは珍しく?バリエーションの豊富さがIntelに味方しているような気がします。

iGPUに目を向けても、Intelのデスクトップ向けCPUで一般に搭載されているUHD Graphics 630の2倍以上、Intel製iGPUでは現状最速のIris Plus Graphics(64EU)よりも60%も高い性能を「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」は発揮します。
流石に最新高画質ゲームは難しいですが、オーバーウォッチやフォートナイトのような軽量なe-Sports系PCゲームなら十分対応が可能ですし、2Dイラストや動画編集などのクリエイティブタスクでCPUの足を引っ張らず作業をサクサク行えるだけのグラフィック性能は備えています。

「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」などRyzen 4000Gシリーズは2020年8月現在、『プラスチック製トレイパッケージに封入されたバルク品のみ、かつ多くの通販サイトではマザーボードとのセット購入が必須』となっており、対応マザーボードを購入済みのユーザーにとっては残念な形態です。せめて従来のバルク品CPUのようにCPUクーラーやメモリとのセット購入も可能にして欲しいところ。

6コアCPUでビデオカードを必要としない容積5L前後のコンパクトPCを組むのであれば、高電力効率かつ高グラフィック性能な6コア12スレッドAPUの「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」はベストバイと言い切って間違いない、オススメの製品です。

以上、「AMD Ryzen 5 PRO 4650G」のレビューでした。
AMD Ryzen 5 PRO 4650G


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