Intel 12th-Gen AlderLake-S CPU IHS bented


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Intel第12世代Alder Lake-S CPUのIHS(銅製ヒートスプレッダ)がLGA1700ソケットのリテンション圧で歪むという情報があり、当初、何をバカなと疑っていたのですが、実際に調べてみたところガチでした。 (個人的にも新年早々に2022年トップやらかしになりそうな、ツイートもしてしまい……)

CPUソケット圧で曲がるのは事実ですが、既知の影響は”CPUクーラーとの接触が緩くなる可能性”だけです。
破損に繋がる問題という報告は今のところありません。



Intel第12世代CPUのIHSはソケット圧で歪む

厚みのある銅板のIHSがCPUソケットのリテンション程度で歪むわけが……、と思っていたのですが、CPUソケットでリテンションしていない状態と、CPUソケットでリテンションした状態を比較するとIHSの歪みは一目瞭然です。




CPUソケットのリテンションによってCPUのヒートスプレッダが歪むのか、Intel第11世代CPUとLGA1200ソケットでも試してみました。
Intel第11世代CPUとLGA1200ソケットでも僅かに中央に凹形状になるよう歪む傾向はありますが、Intel第12世代CPUとは歪みの度合いが明らかに違います。



Intel第12世代CPUは縦長の形状になったので、左右端の中間で圧力を加える現在のCPUソケット構造的に、従来よりも中央が沈み込みやすく、また今のところ流通しているLGA1700ソケットの固定金具はレバーの締め具合的にかなりリテンション圧が強いようなので、これらの要因からCPUヒートスプレッダが中央に凹な形状へ変形しやすいのだと思います。
Intel Core i9 12900K review_00193_DxO


ワッシャー挿入で冷却が改善するかも

またigor'sLABでは、CPUソケットリテンションの金具とマザーボード基板の間に厚み1mm以下のワッシャーを入れるとCPU温度が5度下がったという記事が公開されています。


この検証結果の裏付けとしてこちらの動画を撮影しました。
リテンション金具をマザーボードに固定しているネジについて、初期状態(完全に締めた状態)と、ワッシャーの代わりに単純に固定ネジを1.5回転緩めた状態で比較しています。
CPUソケットのリテンション圧が下がることでIHS中央の凹形歪みが軽減されており、こうなると流石にぐぅの音もでません。
CPUクーラーベースプレートの形状次第ではあるものの、ワッシャーを挿入することでCPU温度が下がる可能性がある、というのは納得できます。


なお金具の固定ネジを緩めるだけだと金具が斜めに向いて、外側が浮いてしまいます。CPUクーラーのベースプレートと干渉する可能性があるので、実用シーンではこの方法は避けてください。

CPUソケットのリテンション圧でどれくらい歪むのかは各自が使用するマザーボードの個体差で程度が変わります。
またCPUクーラーのベースプレートは中央に凸な形状であるものが多いので、多少の歪みはカバーでき、その範囲内ならワッシャーを入れても効果はありません。
ワッシャーを挿入することで本当に5度前後の温度低下があるのかはケースバイケースです。
またリテンションが弱まることで、LGAピンとの接触周りに予想外の不具合が出る可能性も否定できないので、ご注意を。
正直なところ個人的にはお勧めしません。



あと補足として、igor'sLABの検証ではワッシャーの厚みが1.0mmで最も冷え、1.3mmでは若干後退することが報告されており、その理由が”ILM(ソケットの金具)にCPUクーラーベースプレートが乗っているため”と書かれています。
この理由についてはおそらく正確ではなく、ワッシャーの厚みに比例した冷え具合の推移は下の模式図で説明が付きます。
offset
注:作図の都合でCPUダイとヒートスプレッダの接触面に差がありますが、ここはSTIMによってすべて接していると考えてください。

実際にはもう少し複雑な三次元曲面になると思うのですが、簡単に断面をとり二次元図にします。
CPUヒートスプレッダの初期状態(ソケット金具によるリテンションがない状態)を完全な平面とし、一方、CPUクーラーベースプレートを中央に凸な曲面と考えます。
ワッシャーがない状態(もしくはワッシャーの厚みが十分でない)でCPUソケット金具によるリテンションを加えるとCPUヒートスプレッダが大きく湾曲し、CPUダイの直上において、ヒートスプレッダとCPUクーラーベースプレートの間に隙間ができます。
offset_1
そして、挿入するワッシャーの厚みが大きくなるほど、CPUヒートスプレッダは元の平面に近づきます。これは上の動画で見た通りです。
CPUクーラーベースプレートは中央に凸な曲面なので、”適切な厚みのワッシャー”(模式図では一例として0.5mm、igor'sLABの検証における1.0mm)を挿入して、緩く湾曲したCPUヒートスプレッダが最も密接します。
しかし、それ以上にワッシャーの厚みが大きくなり、CPUヒートスプレッダが平面に近づくと、ヒートスプレッダとCPUクーラーベースプレートが中央でしか接しなくなります。とはいえ中央はCPUダイの直上なので、冷却性能が大きくは後退しないというわけです。
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ワッシャーの厚みによるCPUクーラーとの干渉の有無、システムメモリやPCIEボードの動作安定性、冷却性能の改善など、ワッシャー挿入MODについてはこちらの記事を参照してください。




マザーボードによる違いはあるのか?

今回手持ちのIntel LGA1700ソケットのマザーボード3種類、ASUS ROG MAXIMUS Z690 HERO、ASRock Z690 Taichi、MSI MEG Z690 UNIFYで確認してみましたが、いずれもCPUソケットにCPUを装着した時の歪みがありました。
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Intel LGA1700のCPU固定金具はFoxconnとLOTESの2社が提供しています。
今回検証したうち、ASUS ROG MAXIMUS Z690 HEROとASRock Z690 TaichiはFoxconn製で、いずれも金具の固定ネジを緩めることで、IHSの歪みが軽減されることが確認できました。
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MSI MEG Z690 UNIFYはLOTES製の金具ですが、こちらもやはり同じで、ネジを緩めると歪みが軽減されました。
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MSI MEG Z690 UNIFYのCPUソケット固定金具は若干リテンション圧が緩めで固定バーを下げる時も軽い印象があり、IHSの歪みも小さめでした。
ただ写真を撮影していませんが、ASUS ROG STRIX Z690-A GAMING WIFI D4にはLOTES製の金具が採用されており、こちらは固定バーを下げる時の硬さがFoxconn製と同じような感じでした。
マザーボードメーカーや金具メーカーによる違いは今のところ個体差程度、どの製品を使用しても大なり小なりCPUのIHSは歪むと考えていいと思います。



CPUヒートスプレッダは恒久的に歪むのか

断言できる材料は今のところないのですが、CPUソケットのリテンション圧で歪んだIHSが取り外し後も元に戻らず、歪んだままになる可能性はあると思います。
初期に入手した12世代CPUと、箱から出したばかりの新品の12世代CPUを比較したところ、光の漏れ具合を見ての通り、明らかに差がありました。
古い方のCPUの初期状態をチェックしていなかったので、単純にそういうIHS形状だった、等の別の要因も否定はできないのですが、CPUソケットに装着した状態で曲がっている以上、元に戻らず曲がったままという可能性も否定できません。
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冒頭の繰り返しになりますが、CPUソケット圧で曲がるのは事実であるものの、既知の影響は”CPUクーラーとの接触が緩くなる可能性”だけです。
破損に繋がる問題という報告は今のところありません。




ワッシャーの厚みによるCPUクーラーとの干渉の有無、システムメモリやPCIEボードの動作安定性、冷却性能の改善など、ワッシャー挿入MODについてはこちらの記事を参照してください。







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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)



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