ASUS ROG CROSSHAIR VI HERO




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ASUS製のAMD CPU向けマザーボードの中でも、オーバークロックとPCゲーミングユースに最適化された「ROG CROSSHAIR」ブランドからAMD Ryzen CPU対応AM4マザーボードとして久しぶりの新作として発売された「ASUS ROG CROSSHAIR VI HERO」をレビューします。ASUSのROGシリーズらしい独自機能満載のマザーボードで、特にAM3互換マウンティングホールは発売直後のRyzenスターターにとって最高の機能です。
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ちなみにブランドネーム「ROG CROSSHAIR」の由来は次のようになっています。(ソース
『CROSSHAIR(クロスヘア)という製品名は、PCゲームのFPS(First Person Shooter:一人称視点のシューティングゲーム)で使われている、十字型の照準器(Crosshair)から取ったものです。また、R.O.G.シリーズを始めるにあたり、その独自性を強調するために、ほかのマザーボードとはまったく異なる名前を付ける必要がありました。』とのこと。


製品公式ページ:https://www.asus.com/jp/Motherboards/ROG-CROSSHAIR-VI-HERO/
日本語マニュアル:http://dlcdnet.asus.com/pub/ASUS/mb/SocketAM4/CROSSHAIR-VI-HERO/J12051_CROSSHAIR_VI_HERO_UM_V2_WEB.pdf
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【注意事項】
検証中のトラブルなども記事内で記載していますが、Ryzen 7自体が発売されたばかりなので、OSの問題なのか、マザボBIOSの問題なのか原因の切り分けが現状でできないものも少なくありません。今後ドライバやBIOSなどソフトウェアの更新でパフォーマンスや安定性が向上することは期待できると思うので、その辺りも念頭に置いて読んでもらえるとありがたいです。
同検証は17年7月上旬に行っておりASUS ROG CROSSHAIR VI HEROのBIOS:0702を使用しています。最新BIOSでは修正されている不具合や追加されている機能もあると思うので、最新BIOSのリリースについては公式ページを各自でチェックしてください。
サポート:https://www.asus.com/jp/Motherboards/ROG-CROSSHAIR-VI-HERO/HelpDesk_Download/


【17年3月6日】
レビュー記事初稿を公開、BIOS:0702で検証
【17年3月16日】
BIOS:0902で検証



ASUS ROG CROSSHAIR VI HERO レビュー目次


1.ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROの外観・付属品
2.ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROの基板上コンポーネント詳細
3.
AM3互換マウンティングホールが便利
4.ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROへのパーツ組み込み(ギャラリー)
5.ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROの検証機材のセットアップ
6.ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROのBIOSについて
7.イルミネーション操作機能「ASUS AURA Sync」について
8.
ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROのOC設定について
9.ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROの動作検証・OC耐性
10.ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROのレビューまとめ



CROSSHAIR VI HEROの外観・付属品

まず最初にCROSSHAIR VI HEROの外観と付属品をチェックしていきます。
ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROのパッケージはマザーボードの箱としては独特な上開き化粧箱になっていました。開閉しやすく高級感もあります。
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パッケージの蓋を開くと上段にはマザーボード本体が収められており、下段には各種付属品が入っていました。
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付属品一覧は次のようになっています。
マニュアルやドライバCDなど必要なものが一通り揃っています。CableMod製のスリーブケーブル購入時の割引クーポンが入っていました。その他にもコースターやステッカーが。ドライバ類についてはそろそろUSBメモリに移行して欲しいところ。
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ASUS製のマザーボードなので定評のある詳細日本語マニュアルも付属します……、と思いきや今回は国内正規品を購入したにもかかわらず日本語マニュアルではなく普通に?英語マニュアルでした。まあ日本語マニュアルはオンライン公開されているので問題ありませんが。ASUSマザボは3月3日に間に合わないのでは的な情報もありましたし、日本語マニュアルを刷る時間もなかったのかも。
日本語マニュアル:http://dlcdnet.asus.com/pub/ASUS/mb/SocketAM4/CROSSHAIR-VI-HERO/J12051_CROSSHAIR_VI_HERO_UM_V2_WEB.pdf
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組み立てに関連する付属品としては、SATAケーブル4本、リアI/Oパネル、LEDテープ接続ケーブル、SLI HBブリッジ、M.2 SSD固定用スペーサー&スクリュー、Q-Connector、カスタマイズネームプレート用固定ネジとなっています。
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リアI/Oシールドは表面はマットなブラックのカラーリングになっています。また裏面のマザーボードと接する部分はスポンジが入っていました。
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組み立て時にあると便利な「Q-Connector」はASUSマザーボードの中でも付属しないモデルもあるので事前にチェックがおすすめです。
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SLIブリッジについてはGTX 10XXシリーズの広帯域SLI接続に対応したSLI HBブリッジが200シリーズマザーボードからは付属するようになっており、ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROには1スロットスペース型でROG印の入ったSLI HBブリッジが入っていました。
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付属するSLI HBブリッジは装飾品的な要素の薄いものになっていますが、200シリーズマザーボードからは3Dプリンターを利用したオリジナルアクセサリーを自分で作れるようになっています。(関連記事) マザーボードのカラーリングを汎用性のあるブラックに統一してカラーリングはLEDイルミネーションに任せたように、装飾面ではカスタマイズ性の向上を追求するコンセプトになっているようです。

同社から発売されている「ASUS ROG SLI HB BRIDGE 3スロット版」がマザーボードのデザインと非常にマッチするのでおすすめです。マザーボード上の汎用4PIN LED端子と接続することでマザーボード備え付けLEDイルミネーションと同期操作も可能です。
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マザーボード全体像は次のようになっています。
ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROはATXフォームファクタのマザーボードです。黒色のPCB基板には電子回路をイメージさせるイラストがプリントされています。
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ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROはゲーミングマザーボードですがカラーリングに赤はなく黒一色です。
下はROG MAXIMUSシリーズの旧機種VIII HERO ALPHAと新機種IX FORMULAですが、VIIIシリーズでも赤色は減ってきていますがIXシリーズで完全に黒一色になっています。CROSSHAIR VI HEROとMAXIMUS IX FORMULAはどちらもROGブランドから同じ17年にリリースされたマザーボードだけあって同系統のデザインになっています。
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マザーボード右下のチップセット用ヒートシンクについて、Intel CPU向けのROG MAXIMUSブランド同様にASUS ROG CROSSHAIR VI HEROも電子回路をイメージさせるデザインになっています。
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8コア16スレッドCPUであるRyzen 7のオーバークロックにも耐える12フェーズVRM電源部分を冷やす大型ヒートシンクが設置されています。リアI/Oカバーと一体間のあるデザインで、チップセット同様に電子回路をイメージしたイラストが描かれており「CROSSHAIR VI HERO」の名が刻印されています。VRM電源クーラーヒートシンクには熱を効率的に拡散するためヒートパイプが埋め込まれています。
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ASUS公式サイトによると『一般的なMOSFETの半分のサイズで90%の優れた効率を実現した「NexFET Power Block」を使用し、チョークコイルには低損失で低発熱な「MicroFine Alloy Chokes」を使用。コンデンサには-75℃~+125℃での動作に対応し、一般的なコンデンサの5倍の寿命を持つ「10K Black Metallic Capacitors」を使用しています』とのこと。
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AMD Ryzenはメインストリーム向けの8コア16スレッド「Ryzen 7」からエントリー向けの「Ryzen 3」まで共通のマザーボードとなるので、ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROにはRyzen 7のオーバークロックでも安定動作するようにCPU補助電源はEPS 8PIN+4PINが要求されます。EPSコネクタは8PIN1つしかない電源ユニットも多いので、使用する電源ユニットで端子が足りるかは注意してください。
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マザーボードの裏面は次のようになっています。
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マザーボード裏面には特に何もありませんが、オンボードサウンドのデジタル/アナログの基板分離部分の境目が確認できます。
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リアI/Oには最新のUSB3.1規格に対応したType-AとType-Cの2端子が設置されています(コントローラーはASMedia製)。4基のUSB2.0端子に加えてUSB3.0端子も8基搭載されているので、マウス・キーボードなどの周辺機器を多数繋いでいても、HTC ViveやOculus Rift CV1のようなVR HMDに十分対応可能です。
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ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROにはビデオ出力は設置されていないのでグラフィックボードが必ず必要になります。

重量計を使用して重さを測定してみたところ、ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROは941gとなっており、同じくATXのASUS ROG MAXIMUS HERO ALPHAが1064g、ASRock Z270 Taichiは904gで平均的なATXマザーボードの重量でした。
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CROSSHAIR VI HEROの基板上コンポーネント詳細

続いて「ASUS ROG CROSSHAIR VI HERO」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。
システムメモリ用のDDR4メモリスロットはCPUソケット右側に4基のスロットが設置されています。
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固定時のツメはマザーボード上側(上写真の右側)の片側ラッチとなっています。
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ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROではA1、A2、B1、B2と配置されているDDR4メモリスロットのうち、A2とB2から埋めるようにと指示があるので注意してください。Ryzen対応のAM4マザーボードでは信号反射などの影響からこのようなメモリスロットの埋め方が推奨されているようです。
ASUS ROG CROSSHAIR VI HERO メモリスロットの埋め方

グラフィックボードなどを設置するPCI-Eスロットは上から[x1、x16、N/A、x1、x16、x1、x16]サイズのスロットが設置されています。上段のプライマリグラフィックボードを2段目のスロットに配置することで、大型ハイエンド空冷CPUクーラーとグラフィックボードの干渉を回避しています。
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グラフィックボード向けのx16スロットは2スロット、5スロットに配置されており、現在主流な2スロット占有グラフィックボードを使用しても下位グラフィックボードが上位グラフィックボードのエアフローを妨げないよう配慮されています。付属のSLI HBブリッジも1スロットスペース型になっているので、NVIDIAの最新GPUであるGTX 1080 Ti、GTX 1080、GTX 1070を使用したマルチGPU SLI環境を構築可能です。
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ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROにも最近のトレンドとして2段目と5段目のx16スロットには1Kgを超える重量級グラボの重さに耐えるように従来のプラスチックスロットよりも垂直方向の力に対して1.6倍、水平方向の力に対して1.8倍も強靭になった補強用メタルアーマー搭載スロットが採用されています。
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ASUSのメタルアーマーはPCIスロットのプラスチックパーツ側面に金属製のフレームが埋め込まれており、金属フレームの四隅を半田付けで固定する構造になっています。(下写真はASUS ROG Strix Z270I Gamingのもの)
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1段目、4段目、7段目のx1サイズスロットは右端に切り込みが入れられているので、通信速度がPCI-E2.0x1で問題なければx2サイズ以上の拡張カードも使用可能になっています。
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グラフィックボード向けの2段目と5段目のx16サイズスロット以外は全てPCI-E2.0規格となっています。特に最下段のx16スロットのレーン配分はPCI-E2.0x4帯域なのでPCI-Eアドイン型NVMe SSDやPCI-E→M.2変換ボードを使用したNVMe M.2 SSDではシーケンシャルリード・ライトなどで仕様値の半分程度の性能しか出ないので注意してください。
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また最下段のPCI-E2.0x4に対応したx16サイズスロットとその他3つのx1サイズスロットの帯域は排他利用になっています。具体的なことはマニュアルに記載されていませんでしたが、BIOSからは帯域に関する設定項目があり、最下段のPCI-E2.0x4スロットは「x1 or x4」帯域から選択になっているので、[N/A, N/A, N/A, x4]もしくは[x1, x1, x1, x1]のようなレーン配分になるようです。
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SATAストレージ用の端子は8基搭載されています。SATAはいずれもAMD X370チップセットのコントローラーによる接続で、RAID0/1/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。排他利用はありません。
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高速NVMe接続規格に対応したM.2スロットはチップセット下に1基のみ設置されています。NVMe(PCI-E3.0x4)とSATA接続の両方のM.2 SSDに対応しています。他社の3万円越え高級AM4マザーボードではM.2スロットを2基以上設置しているモデルがあるのでM.2 SSDを多く使用したいユーザーには悩ましい仕様です。
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ATX24PINのすぐ左には最新規格USB3.1用の内部コネクタ端子が設置されていました。なおUSB3.1の接続コントローラーはリアI/OはサードパーティのASMedia製になっていますが、オンボードの内部ヘッダーはX370チップセットのコントローラーとなります。
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USB3.0とUSB2.0の内部ヘッダーも1基ずつマザーボード下に設置されています。リアには大量のUSB端子があるのでUSB端子自体が不足することはないと思いますが、内部USB2.0はCorsairLinkやNZXT CAM対応製品など使用する機器も増えているので、内部USBを必要とするユーザーは少し注意が必要かもしれません。
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ゲーミングマザーボードということで高音質オンボードサウンド機能を従来機種よりもさらに強化した「SupremeFX」も採用されています。デジタル部とアナログ部の基板分離などヘッドホン・スピーカー出力の高音質化にも注力しており、光学デジタルによるデジタル音声出力もあるので高級なヘッドホンアンプユーザーにも満足のいく構成です。最近のゲーミングマザボはサウンドボード要らずです。
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有線LANには低CPU負荷、高スループットで定評のあるIntel純正のLANコントローラーが採用されており、加えて有線LANの信号特性を改善する独自機能「LANGuard」も搭載し、オンライン通信対戦ゲームユーザーの快適なプレイをバックアップします。
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マザーボード下側のUSB3.0内部端子のすぐ右側には本格水冷PCユーザーには嬉しい外部温度センサーの接続端子が設置されています。ASUSのファンコントロール機能は外部センサーをソースにした水温依存のファンコントロールが可能なので管理人は以前から水冷ユーザーにお勧めしています。(関連記事
加えて温度センサーの右上にある3PINファン用端子と同じ構造の端子は水冷の流量検出端子となっておりBitspower製のフローインジケーター&メーターを接続することで流量の検出が可能です。ASUSマザボさえあれば水冷環境の構築は全て大丈夫と言っても過言ではなくなってきていますね。
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マニュアルからの画像を使用しますが、冷却ファンや簡易水冷クーラーのポンプの接続用の端子はマザーボード上の各場所に計7か所設置されていました。これだけあれば360サイズなどの大型ラジエーターを複数基積んだハイエンド水冷構成を組んでもマザーボードのファン端子だけで余裕で運用可能です。加えて「W_PUMP+」端子は最大36W(12V、3A)の出力にも対応しているので本格水冷向けのD5やDDCポンプの電源としても変換ケーブルを噛ませることで使用できます。
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ASUSのLEDイルミネーション同期調整機能「AURA Sync」による操作に対応した汎用4PIN LEDヘッダーがマザーボードの右上と右下に設置されています。当サイトでもレビュー記事を掲載してるLEDテープ「SilverStone SST-LS02」やLEDファングリル「SilverStone FG121 / FG141」などが接続可能です。AURA Syncの対応製品や使用方法についてはこちらの記事を参考にしてください。
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マザーボード基板上にはOCerのみならず一般自作erにとっても組み立て中の動作確認に便利なオンボードのスタートスイッチとリセットスイッチが実装されています。またリアパネルには誤押下防止のセーフティ付きでCMOSクリアのハードウェアスイッチも設置されているのでOC設定をミスっても簡単に初期化が可能です。
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POST中のハードウェア検出エラーを知らせてくれるLEDインジケーターやQ-Code LEDも備わっているので、めCPUやメモリの設置ミスがあってもすぐにわかります。
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加えて、極端なOC中にリセットボタンでもシステムを再起動や強制終了できない時に、BIOSの設定値を保ったまま強制的に再起動を掛けられる「ReTryボタン」、コアクロックやメモリクロックが緩いプロファイルを使用してシステムを確実に起動させハードウェア故障とOC設定失敗の切り分けを容易にする「SAFE BOOTボタン」、マザーボード上のプローブから各種動作電圧を測定可能な「Probelt」などOCer向けの機能も多数用意されています。
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最後に1点、残念というか気になったポイントを上げるとすればリアI/Oカバーを外してみたところ、CMOSクリアスイッチとUSB3.0の間にmini-PCIスロットがありました。おそらく無線LANカードを設置するためのスロットだと思うので3万円を超えるマザーボードですし、無線LANが付いていてもよかった気がします。ちなみにIntel向けのROG MAXIMUS IX HEROにも無線LANはありません。
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なお管理人はebayから互換性のありそうな無線LANモジュールを取り寄せて無印版へ勝手に増設しました。
ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROに無線LANモジュールを増設してみた
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AM3互換マウンティングホールが便利

ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROに関して管理人的には最大の魅力とも言える独自機能が「AM3用CPUクーラー互換マウンティングホール」です。
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AMDの新CPU Ryzenに対応したX370やB350チップセットを搭載するマザーボードはCPUソケットが「AM4」という新ソケットに更新されたことで、旧AMDマザーボードで採用されていたAM3などのCPUソケットとはCPUクーラー設置用のマウンティングホールの位置が変わってしまい、AM3対応CPUクーラーがAM4マザーボードでは使用できないという過渡期にあって避けようのない問題が発生しています。
実際にCPUクーラーメーカーの多くがAM4マウント用のマウントパーツ提供を宣言していますが、3月3日のAMD Ryzen発売を迎えても未だにAM4マウント対応製品が十分に出そろっていない状態です。
そんな中、ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROはマザーボード基板にAM4対応マウンティングホールだけでなく、AM3など旧規格のCPUクーラーにも対応した互換マウンティングホールを備えています。

前置きはこの辺りにして早速、「ASUS ROG CROSSHAIR VI HERO」のCPUソケット周辺やマウンティングホールについてチェックしていきます。
AM4マザーボードではAMD Ryzen CPUのエントリーからハイモデルに付属する純正CPUクーラーを装着するためのマウンティングパーツがデフォルトで設置されています。
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表からも見える4か所のネジを外すと純正クーラー用のバックプレートと固定器具が簡単に取り外せます。
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純正クーラー用のマウンティングパーツを取り外すとCPUクーラー周辺は次のようになっています。
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CPUクーラー固定器具をマザーボードに設置するためのマウンティングホールをアップすると、ホールがひょうたん型になっており、AM4マウントだけでなくAM3マウントにも互換性を保っていることがわかります。
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今回は試しにまだAM4マウンティングパーツの提供されていない(今後提供予定あり)「CoolerMaster MasterLiquid PRO 120」のAM3マウント用バックプレートで試してみました。
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AM3マウント用のバックプレートですがAM3互換マウンティングホールのおかげで問題なく設置できます。
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あとは通常のAM3マザーボード同様にCPUクーラーを固定すればOKです。
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AM4マウント対応CPUクーラーの出そろっていない過渡期限定で活躍する機能ではありますが、発売直後のお祭り時期にがっつり検証したい管理人のようなユーザーにとって、AM3用CPUクーラー互換マウンティングホールはこの上なく魅力的な機能です。




CROSSHAIR VI HEROへのパーツ組み込み

ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROにDDR4メモリとCPUクーラーを設置してみました。内容的には写真のギャラリーだけになっています。
DDR4メモリには「G.Skill TridentZ RGB」(レビュー)、CPUクーラーには「CoolerMaster MasterLiquid PRO 120」(レビュー)を使用しています。ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROはブラックを基調としたデザインになっているので、ブラックやシルバーのPCパーツを組み合わせると映えると思います。
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CROSSHAIR VI HEROの検証機材のセットアップ

ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROを使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。ASUS ROG CROSSHAIR VI HERO以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成
CPU AMD Ryzen 7 1800X
CPUクーラー CoolerMaster
MasterLiquid Pro 120 (レビュー
メインメモリ G.Skill TridentZ RGB
F4-3000C16Q-32GTZR
DDR4 8GB*4=32GB (レビュー
CPUベンチ用
ビデオカード
ASUS GeForce GT730
ファンレス GT730-SL-2GD3-BRK
システムストレージ
Samsung 950 PRO 512GB
NVMe接続M.2 SSD (レビュー
OS Windows10 64bit Home
電源ユニット Corsair RM650i (レビュー

検証機材のCPUにはAM4マザーボードで使用可能なAMD Ryzen CPUの最上位、8コア16スレッドの「Ryzen 7 1800X」を使用しています。またCPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。熱伝導効率も高く、柔らかいグリスで塗布しやすいのでおすすめです。
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グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
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システムストレージには高速NVMe M.2 SSDのSamsung 950 PRO 512GBを使用しました。
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以上で検証機材のセットアップが完了となります。
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ちなみにBIOSにたどり着くまでに一波乱ありました。電源を入れてスタートスイッチを押したところ、CPUエラーのLEDが点灯し、Q-Code LEDにはマニュアルに該当のない48が表示されたままPOSTから進まなくなりました。リセットスイッチやセーフモードスイッチも試して、電源を切ってCPU、メモリの挿抜、最小構成起動などいろいろ試しても問題が解消しませんでした。結局、COMSクリアで無事にBIOSにたどり着くことができました。POSTでエラーが発生する場合はひとまずリアI/OのCOMSクリアを試してみてください。
BIOSを0702に更新してもたまにQ-Code LEDが変化しなくなり、POSTで固まる場面に遭遇しました。そういう時はResetスイッチで再起動をかけると次は上手くPOSTを完了できるようなのでBIOSがいろいろと未完成なように感じます。



CROSSHAIR VI HEROのBIOSについて

ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROを使用した検証機の構築も完了したので動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。(OSから日付調整する前にスクショを取っている場合、日付がおかしいですが無視してください。)
ASUSマザーボードは競合他社と比較しても日本語ローカライズの充実と正確さが魅力です。


管理人の購入した個体については初期のBIOSバージョンは「0601」、リリース日は2月と比較的新しいものの「0601」はサポートページにも公開されていないバージョンになっており、サポートページで公開されている「0702」では安定性の向上なども含まれているので最低でも「0702」にはアップデートしたほうがいいと思います。
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BIOSのアップデート方法は、まず下から最新のBIOSファイルをダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
https://www.asus.com/jp/Motherboards/ROG-CROSSHAIR-VI-HERO/HelpDesk_Download/
USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、アドバンスドモードの「ツール-ASUS EZ Flash 3 Utility」でストレージデバイスからのアップデートでBIOSファイルを選択します。あとはガイドに従ってクリックしていけばOKです。
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ブートとOSインストール周りについて紹介します。とはいってもASUS ROG CROSSHAIR VI HEROのブート回りは下画像のように非常に簡潔にまとめられており初心者でも迷うことはないと思います。
OSのインストールも「Boot Option #1」に「UEFI:〇〇」というOSインストールメディアを設定して保存&退出でOKです。「Boot Option #1」の下にスクロールしていくとブートデバイスを個別に指定して再起動できる「Boot override」もあるのでこちらから、同様に「UEFI:〇〇」というOSインストールメディアを選択してもOKです。
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BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROのBIOS機能で管理人が気になったものをいくつかチェックしていきます。
まず17年発売のASUS製マザーボードではNVMe SSD接続端子の1つであるU.2端子はほぼ完全に廃止されていますが、M.2スロット用U.2変換キットである「HyperKit」については継続して利用できるようです。CROSSHAIR VI HEROの場合は公式ページやマニュアルでは特に説明がありませんでしたが、基板上に実装されているM.2スロットでHyperKitが使用可能です。
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チップセットのLEDイルミネーションについてはデフォルトではOSのシャットダウンやスリープ時もLEDが点灯しますが、「In sleep, hibernate and soft off states」の項目をOFFにすることでスリープ時やシャットダウン時のみLEDイルミネーションをOFFにすることができます。
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なおシャットダウン・スリープ時のLEDの点灯・消灯設定はWindows上の「AURA Sync」から設定が可能でアプリからの操作が優先されます。少し分かりにくいのですが「Independent」タブのマザーボードの項目がスリープやシャットダウン時のLEDイルミネーションの設定になっています。ここから設定を行うことでASUS ROG CROSSHAIR VI HEROでもシャットダウン・スリープ時のLEDイルミネーションの消灯が可能です。AURA Syncについて詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
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マザーボード上のコンポーネント詳細でも紹介した外部温度センサーについてはBIOS上からも温度をモニタリングできます。簡易水冷(AIO水冷)ポンプ専用の項目も用意されており、CROSSHAIR VI HEROであれば冷却機能周りは空冷・水冷ともにほぼ全てBIOS上でコントロール可能です。
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BIOS上のファンコントロール機能についてですが、CPUファン端子と水冷ポンプ端子の冷却ファンとポンプはCPU温度依存のファンコントロールしかできませんが、その他のケースファン端子については、外部温度センサーなどの各種温度ソースからファンコントロールが可能です。
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ASUSマザーボードにもグラフィカルUIによるファンコントールの設定機能「Q-Fan Control」があります。機能的には上で紹介したコンソールのファンコンと同じですが、グラフィカルUIでわかりやすく設定できるよという機能になっています。直感的にわかりますし直打ちが苦手な人にはありがたい機能だと思います。
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イルミネーション操作機能「ASUS AURA Sync」について

「ASUS ROG CROSSHAIR VI HERO」にはチップセットクーラーとリアI/Oカバーに同社のイルミネーション操作機能「ASUS AURA Sync」に対応したLEDイルミネーションが搭載されています。
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ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROに搭載されたLEDイルミネーションや汎用ヘッダーに接続された機器は発光カラーや発光パターンを専用アプリのAURA Syncから同期操作可能になっています。AURA Syncはマザーボードのサポートページから最新版をダウンロードできます。
サポート:https://www.asus.com/jp/Motherboards/PRIME-X299-DELUXE/HelpDesk_Download/
専用アプリである「AURA Sync」を使用することで、色を指定した固定色発光、カラーサイクル等の発光パターンプリセット、温度や音楽に合わせた発光変化など自由度の高いイルミネーション設定が可能です。
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ASUSのLEDイルミネーション同期調整機能「AURA Sync」による操作に対応した汎用4PIN LEDヘッダーがマザーボードの右上と右下に設置されています。当サイトでもレビュー記事を掲載してるLEDテープ「SilverStone SST-LS02」やLEDファングリル「SilverStone FG121 / FG141」などが接続可能です。AURA Syncの対応製品や使用方法についてはこちらの記事を参考にしてください。
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またマザーボード上に設置された汎用RGB LED 4PINヘッダーを使用することでLEDテープなどによるLEDイルミネーションの拡張も可能です。ASUSのLEDイルミネーション機能「AURA Sync」については下の記事で紹介しているので、詳しくはこちらを参照してください。
ASUS製のLEDイルミネーション操作機能「AURA Sync」の使い方
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CROSSHAIR VI HEROのOC設定について

ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROを使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。


AMD Ryzen CPUについてはX370チップセット搭載マザーボードと組み合わせた場合に使用できる純正のOCツール「AMD Ryzen Masterユーティリティ」が用意されていますが、こちらの使い方については下の記事を参考にしてください。
AMD Ryzen専用純正OCツール「AMD Ryzen Masterユーティリティ」の使い方
AMD Ryzen Masterユーティリティ



CPUコアクロック(コア倍率)の変更について説明します。
コアクロックはコア数に対して各コアに最大動作クロック(BCLKに対する倍率)を指定できます。「コア0:コア1:コア2:コア3」を倍率として、例えば「45:43:43:42」のようにバラバラに指定した場合、4つのコアのうち1つに負荷が掛かる場合は4コアのうち1つが45倍動作、2つと3つの場合は43、4つの場合は42となります。

AMD Ryzen CPUについても定格では同様に例えばRyzn 7 1800Xでは、冷却性能依存の自動OC機能「XFR」の影響で若干前後しますが、単コア負荷の場合は4.0GHz、全コア負荷の場合は3.7GHzで動作します。しかしながら当レビュー記事執筆時点(3月6日)ではBIOSとRyzen専用OCツール「AMD Ryzen Masterユーティリティ」ともにRyzen CPUは全コア同時のコアクロック設定しか行えませんでした。

一般ユーザーがCPUのOCを行う場合は全コアの最大倍率を一致させると思いますが、同マザボの場合は「CPU Core Ratio(倍率): 40」と設定することでデフォルトのベースクロック100MHzの40倍で4.0GHzで動作します。上で説明したように現時点では全コア同時の最大クロックしか設定できません。
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CPU動作倍率は「自動」設定の場合は単純に倍率の値を入力するだけですが、プルダウンから「手動」を選択すると「FID」と「DID」の2つの数値を入力する形になります。管理人にも具体的な意味は分からないのですが、実際の動作としては『倍率 = FID / DID』となります。
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ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROでベースクロック(BCLK)を変更する場合は「AI Overclock Tuner」を手動(Manual)に変更すると、「APU周波数」という設定値名でベースクロックの設定欄が表示されます。BCLKをデフォルトの100MHzのままでOCする場合も手動で100を指定したほうが安定するかもしれません。
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ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROのBIOSの注目ポイントとして、AMD CPUのマルチスレッディング機能である「SMT: サイマルテイニアス マルチスレッディング(Simultaneous multithreading)」の有効・無効をBIOS上から設定可能です。
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また「Advanced」タブの「AMD CBS - Zen Common Option」にある「Down Core Control」の項目では動作させるコア数をプルダウンメニューから指定することができます。8コアCPUのRyzen 7を使用している場合は2コア([1+1]or[2+0])、3コア([3+0])、4コア([2+2]or[4+0])、6コア([3+3])が選択可能です。
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続いてコア電圧の調整を行います。
AMD Ryzen CPUの電圧設定については基本項目が「APU電圧」「CPU SOC電圧」「DRAM電圧」「1.8V PLL電圧」「1.05V SB電圧」の5項目のみと非常に簡単化されています。加えてCROSSHAIR VI HEROでは「Tweaker's Paradise」の項目からその他多くの電圧設定が可能です。
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CPUコアクロックのOCに関連するコア電圧のOC設定としては、ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROではCPUコア電圧(BIOS上ではAPU電圧と表記されています)の項目を変更します。CPUコア電圧ではマニュアルの設定値を固定する「マニュアル」モード、CPUに設定された比例値にオフセットかける「オフセット」モードの2種類が使用できます。
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オフセットモードやアダプティブモードはCPU負荷に比例して電圧が設定されており、低負荷時は電圧が下がるので省電力に優れるのですが、OCをする場合はマザーボードによって挙動に差があり安定する設定を見極めるのが難しいので、個人的にはオフセットやアダプティブは定格向け、OCには固定値適用の固定モードを推奨しています。
仮にOCでオフセットやアダプティブを使う場合も最初はコアクロックに対して安定する電圧を見極める必要があるので、まずは固定モードを使用します。
ちなみにマザーボードにより対応しているモードは異なりますが、CPUのオーバークロックに付随するコア電圧のモードの概略図は次のようになっています。
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またコアクロックを高く設定する時に追加で変更するといい項目として「External Digi+ Power Contral」があります。「CPUロードラインキャリブレーション: Level5」「CPU Current Capability: 140%」「デューティコントロール: Extreme」などに設定することで発熱は大きくなりますが、OC時の安定性が向上します。
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メモリのオーバークロックについても簡単に紹介だけしておきます。
メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。

メモリOCで有名なXMPプロファイルはIntelの策定した規格なので、AMD CPU&マザーボードの環境では非対応かと思いきや、おそらく公式にはXMPは公式にはサポートではないものの、ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROでは「AI Overclock Tuner」のプルダウンメニューに「D.O.C.P」という設定項目があります。
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「D.O.C.P」では搭載されているメモリに収録されたXMPプロファイルが動作しそうなBCLK値などのOC設定値を自動生成したプリセットが5つほど提供されます。
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ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROではメモリクロックをプルダウンメニューから最大3200MHz(32倍)までの動作クロック設定が可能で、タイミング値も個別に打ち込みが可能です。
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なおメモリクロックもCPUコアクロック同様にBCLKに対する倍率なので、BCLKを変更することでBCLK:100MHz時の3200MHz上限から、例えばBCLK:120MHzにすると上限3800MHzに引き上げられます。
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ちなみにAMD Ryzen CPUでメモリの動作クロックをOCする場合はDRAM電圧だけでなく「CPU SOC電圧」も適度に盛ってやるとメモリOCが安定するそうです。
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CROSSHAIR VI HEROの動作検証・OC耐性

BIOS周りの管理人的に気になるところの紹介はこのあたりにしてASUS ROG CROSSHAIR VI HEROを使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。

まずは高速ブートを無効にしてBIOS上の起動設定を次のようにしてOSの起動時間を測定しました。
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起動時間は35秒ほどとなりました。POSTにかかる時間が長いのでIntel KabyLake CPU向けマザーボードの起動時間よりも15秒ほど起動が遅く、X99チップセット搭載マザーボードと同程度の時間がかかります。Ryzen 3/5など下位モデルCPUが出た時にこの起動時間の差は少しネックになるかもしれません。BIOSのアップデートでPOST時間が短縮されるのに期待したいです。



続いてASUS ROG CROSSHAIR VI HEROを使用した場合のCPUのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。


Ryzen 7 1800XのOC設定は「CPU動作倍率:39」「BCLK:100MHz」「CPUコア電圧:1.350V固定」「DRAM電圧:1.220V」「CPUロードラインキャリブレーション: Level5」「CPU Current Capability: 140%」「デューティコントロール: Extreme」としています。
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相性問題なのかわかりませんがデフォルトのDRAM電圧が1.177Vとなっており、メモリエラーっぽいものに何度か遭遇したのでメモリ電圧も1.220Vに盛りました。


この設定を適用したところ問題なくOSを起動させることができました。
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Cinebenchも問題なくクリアできました。
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続いてこのOC設定を使用してストレステストを実行しました。
検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間8分、WQHD解像度、60FPS、容量4.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はRyzen 7 1800Xの場合15分ほどなので同じ動画で2周させています。エンコード中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。

なおストレステスト中のCPU温度については「AMD Ryzen Masterユーティリティ」のモニタリング値とHWInfoの温度が一致しているようだったのでこのモニタリング値をCPU温度として使用しました。
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ストレステスト中のCPU温度とCPU使用率のログは次のようになりました。初めてのRyzen CPUなのでOC設定には手こずりましたが、マザーボードにASUS ROG CROSSHAIR VI HEROを使用することでRyzen 7 1800Xを全コア同時3.9GHzにOCしてストレステストをクリアできました。CPUクーラーのファン回転数は900RPMで固定しています。
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スマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE」を使用してストレステスト終盤のASUS ROG CROSSHAIR VI HEROのマザーボード上の各所の温度をチェックしました。さすがに8コア16スレッドのCPUをOCしているだけあってVRM電源部分は70度後半になっています。即座に壊れる温度ではありませんが、VRM電源部分の冷却には少し注意したほうがよさそうです。
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ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROのレビューまとめ

最後に「ASUS ROG CROSSHAIR VI HERO」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ
  • ブラックを基調とし電子回路を模した17年ROGシリーズのクールなデザイン
  • AM3マウントCPUクーラー互換のマウンティングホール
  • 重量級グラボにも耐えるメタルアーマー採用PCI-Eスロット
  • スタート・リセットスイッチなど動作検証に便利なオンボードスイッチ
  • 外部センサーと搭載で水温ソースのファンコンも可能なので水冷PCにも最適
  • 検証機ではRyzen 7 1800Xの全コア同時3.9GHzオーバークロックで正常動作
  • AURA SyncでLEDイルミネーションの同期操作が可能
  • NVIDIA GTX 10XXシリーズのマルチGPU用の新型SLI HBブリッジが付属する
  • リアI/OのUSB端子がUSB2.0×4、USB3.0×12と非常に豊富
悪いところor注意点
  • リアI/Oにビデオ出力がないのでグラフィックボード必須
  • M.2スロットは1基しかない
  • 電源を入れてからPOST完了までが長い
  • 内部USB端子が少ない
  • 初期ロットには紙の日本語マニュアルが付属しなかった
  • Ryzen CPU自体が発売直後ということもありPOSTでフリーズなどBIOS周りで不具合がちらほら?

Ryzen CPUに対応したX370チップセットを搭載したAM4マザーボードとして、ゲーマーからOCerまで幅広く対応可能な「ROG CROSSHAIR」シリーズの新作として久しぶりにリリースされた「ASUS ROG CROSSHAIR VI HERO」はROGシリーズらしい多機能マザーボードでした。
とりわけAM3マウントCPUクーラー互換という独自機能もありRyzen CPU発売直後の検証では手持ちのCPUクーラーを使いまわせたので非常に助かりました。過渡期限定で活躍する機能だとは思いますが、これのおかげで発売直後の検証をスムーズに進められました。

Gaming系マザーボードながら赤色を廃した黒一色のクールなデザインへとデザインを一新し、重量級グラボにも耐えるメタルアーマー搭載のPCI-Eスロットを採用するなど最新マザーボードのトレンドもふんだんに盛り込まれています。フロントI/Oの接続を容易にする「Q-Connector」、検証に便利なオンボードのスタートスイッチ、拡張性の高いLEDイルミネーション操作機能「AURA Sync」、水冷に最適な外部センサーに対応したファンコントロールなど、ASUS独自機能を新旧取り揃えています。

検証機ではRyzen 7 1800Xの全コア3.9GHz動作を実現するなど高いパフォーマンスが求められる最新のゲーミングPC事情にも答えられる性能を発揮してくれました。



【まとめの続きについてはBIOSの成熟やWindow OSのRyzen CPU向けアプデを待って追記予定です】





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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)



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