Fractal Design Celsius S36


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360サイズの大型ラジエーターを採用してIntel Core i9やAMD Ryzen 7などエンスーユーザー向けCPUにも対応可能なハイエンド簡易水冷CPUクーラー「Fractal Design Celsius S36」をメーカーよりご提供いただけたのでレビューしていきます。Fractal Designらしいシックで落ち着いたデザインが採用され、ラジエーター上にファンハブを備えているので複数の冷却ファンを装着していても、すっきりとしたケーブルマネジメントが可能です。
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製品公式ページ:http://www.fractal-design.jp/home/product/water-cooling/celsius-s36
国内代理店:http://www.ask-corp.jp/products/fractal-design/cpu-cooler/celsius-s36.html
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レビュー目次


1.Fractal Design Celsius S36の梱包・付属品
2.Fractal Design Celsius S36の水冷トップとチューブ
3.Fractal Design Celsius S36のラジエーターと冷却ファン
4.Fractal Design Celsius S36をセットアップ

5.Fractal Design Celsius S36の冷却性能
6.Fractal Design Celsius S36のレビューまとめ

補足.
空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて



Fractal Design Celsius S36の梱包・付属品

まずはFractal Design Celsius S36の外観や付属品をチェックしていきます。
製品パッケージはブラック基調、ブルーのアクセントカラーというブランドイメージを踏襲したカラーリングに、製品サンプル写真を中央に大きく配置するスタイリッシュなレイアウトです。
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製品パッケージには「5 years Guarantee」とロゴが描かれていますが、メーカー出荷からの保証期間のため日本国内では正規代理店のアスク経由で購入後1年間保証となります。
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製品パッケージはスリーブ箱から中箱を取り出すタイプです。360サイズラジエーターを搭載するFractal Design Celsius S36は横長パッケージなので正面の蓋を開くタイプのパッケージのほうがありがたいと思います。
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製品や各種付属品を納めておくスペーサーにはパルプモールドが使用されていました。
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付属品を詳しく見ていくと、ファン固定やCPUクーラーマウント用の各種ネジ類が左上の小分け袋に入っています。Fractal Design Celsius S36は120*3の360サイズラジエーター搭載モデルなので同一の冷却ファンが3つ付属します。
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マニュアルは多言語で日本語の短い説明も付記されており、図説もついているので迷うことはないと思います。
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ラジエーターに使用するための固定ネジとしては、ラジエーターにファンを固定するための32mmほどのものが12本とラジエーターをPCケースに固定するための短いネジが12本の計24本付属します。ネジの規格はUNC #6-32とい国内では一般に入手しにくい規格のネジです。
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ただしUNC #6-32は水冷ラジエーター用のネジとしては主流な規格のため水冷パーツを取り扱っているオリオスペックでは互換性のあるネジを購入可能です。プッシュプルのファンサンド構成にしたい人などは水冷ラジエーター向けのネジで探すとちょうどいいネジを見つけやすいです。

マウントパーツ関連ではIntel LGA115X用のバックプレートと各種プラットフォーム向けのスタンドオフスクリューが付属します。スタンドオフはIntel LGA115X/2011-3、AMD AM3以下、AMD AM4の3種類でそれぞれ小分け袋に包装されています。
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LGA115X用のバックプレートはネジ穴部分がスライドするようになっており、旧CPUソケットのLGA1366などを搭載するマザーボードにも対応しています。
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スタンドオフスクリューはプラットフォーム別に4種類付属しており、左から順に、ガンメタルで上下のネジ山長が同じものがIntel LGA115X用、ガンメタルでネジ山の片方が短いものがLGA2011-3用、ブラックでネジ山の長さが同じものがAMD AM3以下用、ガンメタルでソケットの付いているものがAMD AM4用となっています。
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プラットフォーム別リテンションブラケットについては、デフォルトでIntelプラットフォーム用のものが水冷トップに装着されており、AMDプラットフォーム用の水冷トップは別部品として付属しています。
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簡易水冷CPUクーラー本体は水冷トップとラジエーターが個別のビニール袋に包装されていました。
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なお今回のサンプル品ではラジエーターの放熱フィンの一部に凹みがありませんでしたが、他社製品の梱包ですが、こんな感じに厚紙などでラジエーターは個別に保護しておいて欲しいところ。冷却性能に問題が出るほどではありませんが、几帳面な人にとっては気になる部分なので、




Fractal Design Celsius S36の水冷トップと水冷チューブ

続いて「Fractal Design Celsius S36」の水冷トップ本体をチェックしていきます。
購入時点ではトップパネルには保護フィルムが貼られています。
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Fractal Design Celsius S36の水冷トップはコンパクトサイズで、上面はFractal Designのブランドロゴである雪の結晶をあしらった光沢のあるブラックパネルになっており、周囲を囲む円形のリングはラバー加工が施されシンプルながらスタイリッシュかつ高級感を感じるデザインになっています。
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水冷トップの高さは40mm以下となっておりポンプを搭載していることを考えると非常にスリムです。
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スリムな水冷トップには最高級の消音素材を採用したセラミック製ベアリングおよびシャフトで平均故障時間(MTTF)が約50,000時間の高静音かつ高寿命な水冷ポンプが内蔵されています。
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ブランドロゴが刻印されたフィッティングカバーもクールです。水冷チューブは見ての通り水冷トップの上面から直出しの構造になっています。
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水冷チューブを接続しているフィッティング部分は一見、通常のストレートフィッティングですが、水冷トップ側とラジエーター側はいずれも根本がロータリーになっているので水冷チューブの取り回しは良好です。
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水冷トップからは直出し構造で水冷ポンプおよび冷却ファンの電源取得のための汎用4PINファンケーブルが伸びています。ポンプと冷却ファンの電力を1つのファン端子から供給するので仕様値では電力9Wの出力が要求されており、使用するマザーボードのファン端子出力には注意が必要です。Intel200シリーズやAMD AM4など最近のマザーボードであれば水冷ポンプ用の高出力ファン端子が実装されていると思いますが、少し古いマザーボードを使用しているユーザーは念のため予めマニュアルや仕様書をチェックしておいてください。なお同ファン端子からモニタリング可能な回転数はポンプの回転数です。
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Fractal Design Celsiusシリーズはマザーボードのファンコントロールによる「PWMモード」と水冷ブロックの内部ICによるファンコントロールを行う「Autoモード」の2種類のファンコントロール機能が用意されています。このモード切替スイッチは水冷トップの外周リングが担っていました。外周リングの溝の位置がそのまま現在の動作モードを示しており、リングをも回すことで簡単にモードを切り替えることが可能です。外周リングには前述の通りラバー加工が施されていますが、外観の高級感だけでなくモード切替のリング操作でも手が滑りにくいという恩恵がありました。
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水冷チューブには柔軟性に優れ摩耗防止に適したナイロンスリーブ付きの低浸透性ゴムチューブが採用されており信頼性だけでなく見た目にも非常に高級感があります。
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水冷チューブの長さは約400mmです。十分な長さがあるのでミドルタワー程度のPCケースであればトップだけでなく、フロントのファンマウントスペースにもラジエーターを設置できます。
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水冷チューブの径は15mm程と比較的太めなのでチューブ折れや潰れの心配はあまりありませんが、少し曲げにくくなっています。とはいえ大型ラジエーター搭載モデルなのでミドルタワー以上のPCケースに搭載することが前提になっており水冷チューブの取り回しに困ることはないと思います。
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Fractal Design Celsius S36のCPUと接触するベース部分は銅製になっており保護フィルムではなくプラスチックのカバーで保護されていました。デフォルトで熱伝導グリスが均等に塗られているのでこだわりがなければ初回使用時は個別にグリス購入の必要はありません。
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銅製ベースの表面は粗いわけではありませんが、鏡面磨き上げではありませんでした。
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ベースのサイズについて、Intel LGA115XなどIntelのメインストリームCPUやAMD Ryzenのヒートスプレッダであれば問題ありませんが、LGA2011-3やLGA2066などIntelのエンスー向けCPUのヒートスプレッダの場合、接触面がやや不足してはみ出してネジ穴に及んでいます。Fractal Design Celsiusシリーズは240or360サイズのハイエンド向けCPUクーラーなのでLGA2011-3やLGA2066でも余裕のあるベースサイズにして欲しかったところ。
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リテンションブラケットは水冷トップから取り外し可能です。Intel CPU用がデフォルトで装着されていますが、AMD CPU用のブラケットに換装することでAMD CPUでも使用できます。
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Fractal Design Celsius S36のラジエーターと冷却ファン

続いてFractal Design Celsius S36のラジエーター部分をチェックしていきます。
Fractal Design Celsius S36のラジエーターは120*3の360mmサイズとなっておりとにかく大きいです。外観については普通のラジエーターですがマットなブラックの塗装はムラもなく綺麗でした。
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Fractal Design Celsius S36が他と違うところとしては、ラジエーターのフィッティングポートの水冷チューブの間には冷却ファンを接続するためのファンハブが設置されています。ファンハブは水冷チューブのスリーブを通して水冷トップとファン用4PIN端子で接続されています。ラジエーター上に冷却ファン電源用ハブがあるので2~3基のファンを搭載するFractal Design Celsiusシリーズでもケーブルマネジメントが容易かつ綺麗になります。ひと昔前であればM/Bファン端子の電源出力という制約から実装の難しかった機能ですが、水冷ポンプ用高出力ファン端子という最近のM/Bトレンドを活用した非常に賢い独自機能だと思います。
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ラジエーターの厚さは標準的な30mm厚です。
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放熱フィンのピッチについては水冷ユーザー視点でも狭すぎず広すぎずちょうどいい塩梅です。このフィンピッチであれば低速ファンによる静音動作から高速ファンによる高冷却動作まで幅広く対応できると思います。
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管理人が本格水冷向けのラジエーターとして推奨している「Alphacool NexXxoS Full Copper ラジエーター」シリーズ(右)のフィンピッチと比較するとFractal Design Celsius S36(左)のフィンピッチのほうがやや細かいかな、というくらいでほぼ似たようなフィンピッチになっています。
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Fractal Design Celsius S36には定格2100RPMのPWM速度調整に対応した冷却ファン「Dynamic X2 GP-12 PWMファン」が3基付属しています。ファン回転数の定格値は2000RPMと大きめですが、PWM速度調整に対応した4PINファンのため500~2000RPMで自由に速度調整が可能なので、静音性とパフォーマンスの割り振りは自由に行えます。
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軸受にはMTBF(平均故障間隔)がトップクラスの100, 000時間である高級LLS軸受けを使用し、さらにハブ部分にベアリングの軸圧力を軽減するカウンターバランスマグネットを採用することでベアリングの耐用性を更に強化しています。  自称軸ソムリエの管理人が軸音テイスティング(耳を近づけてファンを指で弾くだけ)をしてみましたが、低速回転時の軸音はやや聞こえました。低速で静音運用したいユーザーは軸音の小さいファンを別途購入したほうがいいかもしれません。固定用の支柱はファンブレードに対して垂直になっており、ファンブレードが支柱を通るときに通常発生するノイズを抑制しています。

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ファンフレームはすり鉢状に面取り拡張されており吸気・排気に優れる構造です。空気力学的に基づき設計された薄板状の支柱(ワイヤ用支柱も含む)により、航空機の翼に一般的にみられるデザインを模倣し、正しい角度で簡単に空気が流れる様にする事でノイズや望ましくない乱流の発生を低減します。  
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ファンブレードの付け根部分にある3つの切り込みはファンブレードが固定用の支柱を通るときに発生するノイズを拡散する事で抑制します。ファンブレードの後縁付近には航空機の翼のデザインによくみられる「トリップワイヤー技術」という構造をしており、マイクロ乱流層を発生させ全体的に効率の良い静かなエアフローを実現するそうです。
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付属品でも紹介しましたが、冷却ファンのラジエーターへの固定やラジエーターのPCケースへの固定に使用するネジの規格はUNC No.6-32でした。日本国内のユーザーとしてはホームセンターで簡単に入手可能なM3かM4ネジを採用してほしいところです
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ただしUNC No.6-32は水冷ラジエーター用のネジとしては主流な規格のため水冷パーツを取り扱っているオリオスペックでは互換性のあるネジを購入可能です。プッシュプルのファンサンド構成にしたい人などは水冷ラジエーター向けのネジで探すとちょうどいいネジを見つけやすいです。UNC No.6-32ネジを別途購入すればプッシュプル構成も構築可能です。


Fractal Design Celsius S36のラジエーターの固定ネジ穴下については、表裏の全24か所にネジによる貫通を防止するガードが設置されていました。Fractal Design Celsius S36のラジエーターにはグリルの端ギリギリまで水の流れるスレッドがありますが、ネジ貫通防止ガードがあるので安心してネジ止めできます。簡易水冷CPUクーラーのラジエーターでは意外と対策が施されていないことの多い部分だけにFractal Designの細部へのこだわりを感じます。
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なおネジ貫通防止ガードがあるため付属のネジで冷却ファンを固定する場合はネジの長さが余ってしまうので付属のワッシャーで長さを調整する必要があります。
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冷却ファンをラジエーターに固定すると下のようになります。
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冷却ファンをネジ止めする際に、何か所かでケーブルをファンフレームとネジの間にケーブルを通すようにネジ止めすると綺麗にケーブルマネジメントできます。
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冷却ファンを設置すると厚さは55mm程度となります。
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Fractal Design Celsius S36の検証機材・セットアップ

Fractal Design Celsius S36を検証機材のベンチ機にセットアップします。ベンチ機のシステム構成は次のようになっています。
テストベンチ機の構成
ベンチ機1
ベンチ機1
OS Windows10 64bit Home

CPU

Core i7 7700K
Core/Cache:5.0/4.8GHz, 1.300V
殻割り&クマメタル化(レビュー
Core i9 7900X
殻割り&クマメタル化(レビュー
M/B ASRock Z270 SuperCarrier
レビュー)(BIOS:1, 2
ASRock Fatal1ty
X299 Professional Gaming i9
レビュー
メインメモリ Corsair Dominator Platinum
Special Edition
DDR4 8GB*4=32GB (レビュー
グラフィックボード
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC
ファンレス (レビュー
システムストレージ
Crucial MX300 SATA M.2 SSD 1TBCT1050MX300SSD4 Samsung 850 PRO 256GB
電源ユニット
Corsair RM650i
レビュー
PCケース/
ベンチ板
STREACOM BC1 (レビュー

CPUクーラーの設置方法について、当サイトの評価基準となるチェックポイントは次の3つです。
  • LGA115Xの場合、CPU固定バックプレートが単独でマザーボードに固定できるか
  • マウントパーツ設置状態でCPUを交換できるか
  • 空冷の場合、ネジ止めの場合はマザーボード側から固定できるか
    簡易水冷or水冷ブロックの場合、ハンドスクリューなどツールレス固定ができるか

上の3項目を全て満たす例として本格水冷用のCPU水冷ブロックですが「EK-Supremacy EVO」のマウンタ構造は「バックプレートをM/Bに固定可能」「完全ツールレス」「マウンタ設置状態でCPUの交換が可能」なので本格水冷・簡易水冷クーラーの水冷ブロック固定方式としてはベストだと思っています。水冷クーラーメーカーにはどんどん真似してもらいたい理想的な構造です。

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前置きはこのあたりにしてベンチ機へFractal Design Celsius S36をセットアップします。
まずはマザーボードを裏返してバックプレートのネジ穴をマザーボードのCPUソケット四隅の穴に挿入します。最新のKabyLake CPUに対応するLGA1151ソケットでバックプレートを装着する場合はネジ穴スライド部分の位置は一番内側でした。
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バックプレートが脱落しないように注意してマザーボードを表に向け、スタンドオフと呼ばれる水冷トップを固定するためのスペーサーを使ってマザーボードをバックプレートと挟みます。Intelプラットフォーム用のスタンドオフは2種類用意されていますが、LGA1151では一番左にある両側のネジ山が長いガンメタルカラーのスタンドオフを使用します。
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下のようにスタンドオフとバックプレートでマザーボードを挟みます。
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4か所全てでスタンドオフを固定したらマウントパーツの設置が完了です。
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マウントパーツは単独でもマザーボードに固定されているので、CPUクーラーの設置が完了していない状態でもバックプレートなどが脱落することはなく、PCケースに設置した状態でもCPUクーラーの設置が容易になっています。
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AMD Ryzen対応のAM4マウントで使用する場合は、マザーボード備え付けのCPUクーラー固定器具を外して、バックプレートを流用し付属のソケット付きスタンドオフを装着するだけで準備完了です。
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Intelの最新エンスー向けCPU SkyLake-Xに対応するX299チップセット搭載LGA2066プラットフォームではCPUソケットこそ前世代のLGA2011-3とは異なるもののCPUクーラーのネジ穴レイアウトは共通なのでLGA2011-3用のスタンドオフとマザーボード備え付けのネジ穴に装着すればマウントパーツの設置完了です。
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水冷トップをマザーボードに固定する準備はこれで完了したので熱伝導グリスをCPUのヒートスプレッダに塗布します。熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。熱伝導効率も高く、柔らかいグリスで塗布しやすいのでおすすめです。
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グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
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熱伝導グリスを塗ったらバックプレートから延びるネジに水冷ヘッドの足のネジ穴が合うようにしてCPUクーラーを装着します。CPUの上に乗せたらグリスが広がるように力の入れすぎに注意して水冷ヘッドをグリグリと捻りながら押し込んでください。
Fractal Design Celsius S36の水冷トップの固定ネジはツールレスな大型ハンドスクリューなので固定は容易です。プラスドライバーでも締められますが、そこまで強く締める必要はないので対角順に水冷ヘッドがグラグラ動かない程度に手でネジを締めてください。
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Fractal Design Celsius S36は水冷チューブが水冷ブロック上面からの直出しなので、CPUソケット右側にあるメモリとの干渉の心配もありません。
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以上でFractal Design Celsius S36のベンチ機へのセットアップ完了です。
簡易水冷CPUクーラーはラジエーター設置の手間やスペース確保の問題はありますが、マザーボード上でメモリやグラフィックボードなどとの干渉は大型のハイエンド空冷CPUクーラーより発生し難く、水冷トップの設置自体も基本的にツールレスで容易なのが長所だと思います。
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Fractal Design Celsius S36の冷却性能

本題となるFractal Design Celsius S36の冷却性能についてチェックしていきます。
検証システムをベンチ板に置いた状態で測定を行っているためCPUクーラーが水冷・空冷によらず基本的にCPUクーラーの理想的な性能をチェックすることになります。
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比較対象として空冷クーラーの「Intel TS15A」、「CoolerMaster MasterLiquid Pro 120」についても同一環境で検証を行いました。
Intel TS15ACM MasterLiquid Pro 120


Fractal Design Celsiusシリーズはマザーボードのファンコントロールによる「PWMモード」と水冷ブロックの内部ICによるファンコントロールを行う「Autoモード」の2種類のファンコントロール機能が用意されています。
「Autoモード」では水冷トップ内蔵の温度センサーをファンコンソースとして冷却ファンおよび水冷ポンプを操作しているようです。ちなみにAutoモードはかなり静音動作寄りの設定になっていました。一方で「PWMモード」については接続したファン端子からのPWM信号によって冷却ファンと水冷ポンプに対して同じデューティ比で速度調整が行われます。
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ただし水冷ポンプの速度調整についてはASRockマザーボードのPWM速度調整では2700~3000RPMのフルスピードと1600~2000RPMの低スピードの大まかに2つの範囲内でしか速度調整が行えませんでした。ポンプ側の速度調整については各マザーボードのコントローラーとの相性で操作可能な範囲に差があるかもしれません。


冷却性能の検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間8分、WQHD解像度、60FPS、容量4.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はi7 7700Kの場合20分ほどです。エンコード中のファン・ポンプ回転数はCPUクーラー別で個別に設定した一定値に固定しています。

エンコードに用いたCPUはi7 7700K(殻割りクマメタル化済み)を使用しており、CPUダイとヒートスプレッダ間のグリスを液体金属グリスに塗り替えているので通常よりも低い温度で動作しています。
「Thermal Grizzly Conductonaut」を殻割りi7 7700Kでレビュー
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また手動でオーバークロック設定を行っています。コアクロックは4コア同時5.0GHz、キャッシュクロックは4.8GHz、コア電圧はBIOS上では1.300V固定ですがHWInfo読みで1.296~1.344Vで変動しています。


エンコード中CPU温度のCPUクーラー別比較は次のようになりました。
「Fractal Design Celsius S36」はファン回転数を900RPM、ポンプ回転数を定格に固定して5.0GHzに手動OCしたi7 7700Kで最大59度、平均55.3度で抜群の冷却性能を発揮しています。静音重視のAutoモードでも最大68度で問題なく運用可能となっており手動でファンカーブの設定が面倒というユーザーでも簡単に使用できます。
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ベンチ機1の検証環境で同様のCPUクーラー冷却性能テストを行った比較結果のまとめが次のようになっています。下に行くほど冷却性能が高く、平均温度と最大温度の和で順位付けを行っています。なおファン回転数によって順位は変わりうるのでその点は注意してください。
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サウンドレベルメーター(騒音計)を使用してファンノイズをCPUクーラー別で比較しました。騒音計の収音部分とノイズ発生部分との距離が15cm程度になる位置で測定を行っています。簡易水冷の場合はラジエーターとポンプ両方からの距離が15cm程度になるように設置しています。
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電源OFF時の騒音値は30~35dBです。目安として40dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになり、45dB前後で煩く感じます。50dBを超えてくるとヘッドホンをしていても煩く感じます。同じ騒音値でも不快に感じたり感じなかったりと音の性質にもよるので注意してください。

Fractal Design Celsius S36のファン・ポンプノイズの騒音値はファン回転数別(PWMモードを使用、ポンプ回転数は定格3000RPMに固定)で次のようになっています。ファン回転数が1100RPMを超えてくるとノイズレベルが45dB前後となりファンノイズがはっきりと聞こえるようになってきました。Fractal Design Celsius S36をマニュアル操作のPWMモードで使用する場合はファン回転数が900~1000RPM以下に収まるように設定すると静音動作で運用できると思います。
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またAutoモードについては上の負荷テスト終盤でもファン・ポンプノイズの騒音値は34.3dB程度となっており、非常に静音性を重視した動作になっていました。ファン端子からモニタリング可能なポンプ回転数は2000RPM前後でした。騒音値から見て冷却ファンについては600~700RPM前後で動作しているようです。
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上の温度検証における騒音値の比較結果は次のようになりました。
Fractal Design Celsius S36は自動速度調整のAutoモードとマニュアル速度調整のPWMモードが選択可能になっていますが、Autoモードではほぼ無音と言える非常に静音性の高い動作を実現しています。PWMモードでも40dB以下の低ノイズレベルでAutoモードよりも高い冷却パフォーマンスが発揮できます。
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また7月14日に国内で発売となるIntelの最新エンスー向けCPU SkyLake-Xの10コア20スレッドモデル「Core i9 7900X」を使用して「Fractal Design Celsius S36」の冷却性能をチェックしてみました。
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検証機材のi9 7900XはCPUダイとヒートスプレッダ間のグリスを液体金属グリスに塗り替えているので通常よりも低い温度で動作しています。
【一家に1台】汐見板金の国産殻割りツール「Delid Master」をレビュー!
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Fractal Design Celsius S36のファン回転数を1200RPMに固定して上と同様に動画のエンコードでCPUに負荷をかけたところ、Fractal Design Celsius S36はデフォルトのグリスでもi9 7900Xの定格運用であればCPU温度を最大66度に収めることが可能です。加えてi9 7900Xを殻割りクマメタル化すれば4.4GHzにOCしてもCPU温度を最大67度に収めることができました。
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Fractal Design Celsius S36のレビューまとめ

最後に簡易水冷CPUクーラー「Fractal Design Celsius S36」の実機サンプルを検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ
  • 無駄がなく洗練されたシンプルなデザイン
  • 5GHzに手動OCしたi7 7700Kを運用可能な冷却性能
  • 10コアエンスー向けCPUのi9 7900Xを運用可能な冷却性能
  • 自動で静音動作なAutoモードとマニュアル操作可能なPWMモードを使い分けられる
  • バックプレートを単独でマザーボードに固定可能
  • 水冷ブロックの固定は大型ハンドスクリューナットでツールレス固定可能
  • 水冷チューブが水冷ブロック上面から直出しなのでメモリとの干渉フリー
  • M/Bと接続するのが水冷トップのファン端子1つだけなのでケーブルマネジメントが簡単で綺麗
悪いところor注意点
  • 正規保証期間は1年で短め
  • 仕様値で9W前後の出力可能なファン端子がM/B上に必要
    (16~17年発売のマザーボードであればほぼ対応できるはず)
  • ファン・ラジエーターの固定ネジが国内で入手の容易なM3やM4ではなくUNC No.6-32

冷却性能の検証結果からもわかるように「Fractal Design Celsius S36」はIntelの最新メインストリームCPU最上位であるi7 7700Kの5.0GHz OCでも静音性を保ったままで十分に冷却できる性能があります。当サイトでは発熱が比較的小さいメインストリーム向けCPUと組み合わせる簡易水冷CPUクーラーであれば取り回しの良さから120や140サイズのシングル冷却ファンサイズラジエーター採用モデルを推奨していますが、より高い静音性と冷却性能が求めるユーザーには、PCケースへの設置が問題なければFractal Design Celsiusシリーズのように240や360サイズもおすすめです。
またオーバークロックで発熱が大きくなり温度管理が格段に難しくなるAMD Ryzen 7やIntel Core i9のようなエンスー向けCPUと組み合わせるのであれば、
240/360サイズの大型ラジエーターを搭載して静音動作も十分に狙うことができるFractal Design Celsiusシリーズは最適なCPUクーラーです。

IntelおよびAMDいずれのプラットフォームにおいても、マウントパーツが個別にマザーボードに固定可能、マウントパーツを設置したままでもCPUクーラーを交換可能なところは管理人的にポイントが高いです。前者は特にマザーボードをPCケースに組み込み後のCPUクーラー設置で、バックプレートを裏から支える必要がないので他の簡易水冷CPUクーラーでも採用して欲しい構造です。

数ある簡易水冷CPUクーラーの中でも「Fractal Design Celsius」シリーズを特徴づけるのはシンプルで洗練されたデザインとラジエーターに設置されたファンハブの2つだと思います。
水冷トップはスリムサイズながら高性能な水冷ポンプを内蔵し、表面がラバー加工されたリングは高級感を演出すると同時に冷却モードのコントロールスイッチとして操作しやすくなるという二重の役割を果たしています。美観と実用、両面を追求した末のデザインであることが伝わってきました。
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また高出力ファン端子という最近のM/Bトレンドを活用し、ラジエーター上にファンハブを設置、水冷トップから伸びるファン端子に電源を集約することによって、大型ラジエーターを搭載する上で避けられない問題の1つである複数冷却ファンのケーブルマネジメントの複雑さを見事に解消されています。

Fractal Design Celsius S36は大型ラジエーターを搭載して高静音性・高冷却性という基本性能はそのままに、シンプルな美しさと最新のユーザービリティが追及されたハイエンド簡易水冷CPUクーラーです。360サイズの「Fractal Design Celsius S36」は冷却性能も非常に高いのでIntelの最新エンスー向けCPU「Core i9 7900X」と組み合わせての使用もおすすめです。

以上、「Fractal Design Celsius S36」のレビューでした。
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補足:空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて

動作検証に移る前に「空冷クーラー」と「水冷クーラー」の2種類ついて同じところと違うところ、また原理的に考えた冷却性能の比較を簡単に補足しておきます。
まず大前提として当たり前ですが空冷クーラーも水冷クーラーも”最終的にCPUの発熱は空気に放出されます”。自作PCにおける空冷と水冷の違いは、どこの空気を使ってCPUクーラーの放熱フィンから空気への熱交換(放熱)を行うかです。
例えば次の画像のようなサイドフロー型の空冷CPUクーラーの場合、ケースフロントなどから吸気された空気はケース内を通り、CPUクーラーの放熱フィンでCPUから熱を放熱されます。CPUから放熱された暖かい空気はリアファンやトップファンから排気されますが、一部はケース内に残留する可能性があります。そのため「フロントから吸気されてケース内を経由してきた冷たい空気」と「一度CPUクーラーを通った暖かい空気」が混ざるため次第に冷却効率が下がることが予想されます。
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一方で水冷(簡易水冷)CPUクーラーの場合は次のように、PCケース外から直接吸気を行う、もしくはPCケース外へ直接排気を行うことができます。水冷クーラーの場合、空気への放熱を行うラジエーターはPCケースという壁でイン・アウトが遮断されているため、PCケース内の空冷クーラーで起こるような一度放熱された空気が循環して冷却効率を下げるという現象が起きません。これが自作PCで水冷クーラーを使用するメリットです。
もちろん空冷でもケースファンを適切に設置すれば、一度熱せられた空気の循環が避けられる理想的な状態に近づきます。しかしその分ファンノイズが増えます。なので原理的にはPCケース壁で単純に熱交換部分のインアウトを遮断できる水冷クーラーのほうがよく冷えて静音になります。
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ただし上の議論は最終的な放熱部分である「冷却に使用する空気」のみに着目して空冷と水冷を比較しています。つまり出口だけの議論なので、CPUヒートスプレッダからCPUクーラーベース部分への熱移動の効率、すなわち入口部分の性能が低ければあまり意味がありません。CPUクーラーの総合的な性能はベース部分の熱交換効率、放熱フィンやラジエーターの熱交換効率などいくつかのパラメータの組み合わせなので必ずしも水冷が空冷よりも冷えるわけではないことに注意してください。

また下の2つの画像では簡易水冷クーラーを吸気にした場合と排気にした場合で、ラジエーターに流入する空気を示す矢印の色を変えています。
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まず前提として「部屋の体積はPCケースの体積よりも十分大きいのでPCで消費される程度の電力(1000W以下程度)では室温は変化せず一定」です。上の画像でPCケースへの吸気がケースフロントである場合、PCケース内には熱源が多数存在するためラジエーターに達するまでに空気は温められます。とすると空気の温度は「室温空気≦PCケース内空気」です。どんなに理想的なエアフローが存在したとしてもPCケース内を経由してラジエーターに達する空気は室温空気よりも低い温度にはなりえません。ラジエーターでの熱交換効率を左右するのは「空気とクーラントの温度差」と「ラジエーターを通過する空気の量」の2つなので「室温空気≦PCケース内空気」である以上、水冷クーラーにおいて「冷える排気」は存在しますが、「吸気よりも冷える排気」というものは存在しません。
吸気にすると熱風がPCケース内に入って壊れるとかのたまう人がたまにいますが、排気なしのケース密封で吸気にするようなそもそも馬鹿げた構成でもなければ起こりえないことなので無視してOKです。もし壊れるなら内排気空冷オリファングラボが真っ先に壊れます。
水冷クーラーを使用する場合、排気構成にしたほうがPCケース内からの見栄えがいいため、メーカーも排気構成のイメージサンプルを使用することが多い(おそらく)ですが、純粋な冷却パフォーマンスを考えれば排気よりも吸気のほうが性能が高いことは原理的に自明です。
見栄えを重視して排気にするのは全く問題ありませんし、そういう意図のもとで作られたカッコいい見せる自作PCは管理人も好むところです。しかしながらエアフローが云々とか吸気による故障を理由に「吸気よりも排気のほうが冷えるし安全」と主張するのは非常に恥ずかしいことなのでやめましょう。

最後に本題の空冷クーラーと水冷クーラーの違いについてまとめると、「水冷クーラーと空冷クーラーの理想的な性能を比べた場合どちらのほうが性能が高いかは製品次第ですが、水冷クーラーは熱交換部分をケース外に近い場所に配置できるので、吸気の簡易水冷クーラーは空冷クーラーに比べて理想的な性能を発揮しやすいという特徴があります。」




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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)



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