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Intelの2017年最新エンスー向けCPU SkyLake-X&KabyLake-Xに対応するX299マザーボードとしてASUS製マザーボードのベーシックライン「PRIME」シリーズからリリースされた、クリエイティブ作業をこなすパワーユーザー向け多機能ハイエンドモデル「ASUS PRIME X299-DELUXE」をレビューしていきます。Thunderbolt3拡張ボード「ASUS ThunderboltEX 3」が標準で付属、4K動画のストリーミングも可能な最大4.6Gbpsに及ぶ最新接続規格Wi-Fi 802.11ad(WiGig, 60GHz)対応無線LAN搭載など非常に豪華なマザーボードです。現時点ではちょっとした付加機能な「ASUS LiveDash」の将来性にも期待できそう。
製品公式ページ:https://www.asus.com/jp/Motherboards/PRIME-X299-DELUXE/
マニュアル:http://dlcdnet.asus.com/pub/ASUS/mb/LGA2066/PRIME_X299-DELUXE/J12794_PRIME_X299-DELUXE_UM_WEB.pdf
【注意事項】
検証中のトラブルなども記事内で記載していますが、Intel SkyLake-X&KabyLake-X CPU自体が発売されたばかりなので、OSの問題なのか、マザボBIOSの問題なのか原因の切り分けが現状でできないものも少なくありません。今後ドライバやBIOSなどソフトウェアの更新でパフォーマンスや安定性が向上することは期待できると思うので、その辺りも念頭に置いて読んでもらえるとありがたいです。
同検証は17年7月中旬に行っておりASUS PRIME X299-DELUXEのBIOSは0402を使用しています。最新BIOSでは修正されている不具合や追加されている機能もあると思うので、最新BIOSのリリースについては公式ページを各自でチェックしてください。
サポート:https://www.asus.com/jp/Motherboards/PRIME-X299-DELUXE/HelpDesk_Download/
【17年7月30日:初稿】
レビュー記事初稿を公開、BIOS:0402で検証
ASUS PRIME X299-DELUXE レビュー目次
1.ASUS PRIME X299-DELUXEの外観・付属品
2.ASUS PRIME X299-DELUXEの基板上コンポーネント詳細
3.ASUS PRIME X299-DELUXEへのパーツ組み込み(ギャラリー)
4.ASUS PRIME X299-DELUXEの検証機材のセットアップ
5.ASUS PRIME X299-DELUXEのBIOSについて
6.イルミネーション操作機能「ASUS AURA Sync」について
7.LCDモニタ「ASUS LiveDash」について
8.ASUS PRIME X299-DELUXEのOC設定について
9.ASUS PRIME X299-DELUXEの動作検証・OC耐性
10.ASUS PRIME X299-DELUXEのレビューまとめ
ASUS PRIME X299-DELUXEの外観・付属品
まず最初にASUS PRIME X299-DELUXEの外観と付属品をチェックしていきます。パッケージを開くと上段にはマザーボード本体が静電防止ビニールに入った状態で収められていました。
マザーボードを取り出すと2重底になっており下段には各種付属品が入っています。
数が非常に多いので順々にチェックしていきますが、付属品一覧は次のようになっています。
マニュアルやドライバCDなど必要なものが一通り揃っています。ドライバ類についてはそろそろUSBメモリに移行して欲しいところ。
ASUS製のマザーボードなので定評のある詳細日本語マニュアルも付属します……、と思いきや今回は国内正規品を購入したにもかかわらず日本語マニュアルではなく普通に?英語マニュアルでした。まあ日本語マニュアルはオンライン公開されているので問題ありませんが。
マニュアル:http://dlcdnet.asus.com/pub/ASUS/mb/LGA2066/PRIME_X299-DELUXE/J12794_PRIME_X299-DELUXE_UM_WEB.pdf
基本的な組み立て関連の付属品として、まずはSATAケーブル6本、リアI/Oパネル、M.2 SSD固定用スペーサー&スクリュー、M.2 SSD垂直マウントパーツ、無線アンテナ2組があります。
リアI/Oシールドは表面はシンプルなグレー寄りなシルバーのカラーリングになっています。また裏面のマザーボードと接する部分はスポンジが入っていました。
パワースイッチやストレージLEDなど細かいPINをまとめてマザーボードに接続可能な便利なコネクタです。「Q-Connector」は組み立て時にあると便利ですがASUSマザーボードの中でも付属しないモデルもあるので事前にチェックがおすすめです。
SLIブリッジについてはGTX 10XXシリーズの広帯域SLI接続に対応したSLI HBブリッジが17年1月以降からは付属するようになっており、ASUS PRIME X299-DELUXEには1スロットスペース型でROG印の入ったSLI HBブリッジが入っていました。またGTX 10XXシリーズでは正式サポートから外れていますが3-way SLIブリッジも付属しています。
冷却ファン&サーモセンサー拡張ボード「ASUS FAN EXTENSION CARD」が標準で付属します。
マザーボード本体と拡張ボードに接続可能な2PIN型サーモセンサーが3本付属します。
ASUS PRIME X299-DELUXEにはアドレス指定対応LEDテープ用の独自3PINヘッダーがマザーボード上に実装されていますが、それを等間隔の3PINヘッダーに変換する延長ケーブルが付属します。
最新規格USB3.1の倍の帯域幅をもつ40GbpsのThunderbolt3端子を増設可能なThunderbolt3拡張ボード「ASUS ThunderboltEX 3」が付属します。
ASUS PRIME X299-DELUXEのリアI/Oパネルに搭載されているUSB3.1端子はThunderbolt3には非対応ですが、「ASUS ThunderboltEX 3」を使用することでThunderbolt3に対応してUSB Type-C型端子とUSB3.1 Type-A端子が増設可能です。「ASUS ThunderboltEX 3」を使用する際はハードウェアのセットアップに加えてBIOSからの設定も必要です。詳しくはこちら。
マザーボード全体像は次のようになっています。
ASUS PRIME X299-DELUXEはATXフォームファクタのマザーボードです。メインストリーム向けPRIMEシリーズの最上位マザーボードということで清潔感のあるホワイトとシルバーのカラーリングが採用されています。
マザーボード右下のチップセット用ヒートシンクはホワイト&シルバーで鉄琴のような外観のデザインになっています。ホワイトカバーの中央のブラックに見えるラインはスモークブラックな半透明になっており、電源が入るとアドレッサブルなLEDラインイルミネーションとして機能します。また左下側のヒートシンクの下にはM.2スロットが設置されておりヒートシンクはそのままM.2 SSDクーラーとしての役割も果たします。
CPUソケット下まで伸びるチップセットクーラーカバーにはX299マザーボードで初実装となるASUSの新たな試みとしてLCDパネル「ASUS LiveDash」が搭載されています。プログラミング次第でCPU温度のモニタリング表示からオリジナルアニメーションなど様々な表示が可能なのですが、個人的にはPOST中のチェック項目を逐次表示してくれるのが印象的で、今度の発展次第では初心者ガイドとしてかなり有力な機能になる可能性を感じました。
VRM電源クーラーはグレー寄りなシルバーのアルミニウム製ヒートシンクです。リアI/Oカバーは清潔感のあるホワイトカラーです。チップセットクーラー同様にブラックの鏡面に見える部分は電源が入るとアドレッサブルなLEDラインイルミネーションとして機能します。
ASUS PRIME X299-DELUXEではVRM電源が8フェーズでした。10コア以上のIntel Core i9に対応するマザーボードのフェーズ数としては若干心もとないかもしれません。i9 7900XのOCで負荷をかけた時の安定性や温度についてはOC検証でじっくりチェックしていきたいです。
最大18コアのIntel SkyLake-X CPUに対応するX299マザーボードの上位モデルということで多コア&高クロックCPUへ安定した大電力供給が行えるようにEPS電源は8+4PINが配置されています。EPS電源端子については電源容量800W以下の電源ユニットでは1つしか端子がない場合があるので、EPS端子が足りているか事前に注意して確認してください。
リアI/Oには最新のUSB3.1規格に対応したUSB端子として水色でType-A*3とType-Cの4端子が設置されています。そのほかのUSB端子についてはUSB3.0端子が4基とUSB2.0端子が4基搭載されています。マウス・キーボードなどの周辺機器を多数繋いでいても、HTC ViveやOculus Rift CV1のようなVR HMDに十分対応可能です。個人的に残念なポイントとしてはUSB3.0/3.1は無線マウスと電波干渉を起こすことがあるので少し離れた場所にUSB2.0を設置して欲しかったです。
ネットワーク関連では低CPU負荷、高スループットで定評のあるIntel純正のLANコントローラーが採用された有線LAN端子が2基設置されています。無線LANモジュールも標準搭載しており、Wi-Fi 802.11 a/b/g/n/ac、2.4/5GHzデュアルバンドに加えて、4K動画のストリーミングも可能な最大4.6Gbpsに及ぶ最新接続規格Wi-Fi 802.11ad(WiGig, 60GHz)に対応しているところが特徴的です。Bluetooth 4.1にも対応しています。リアI/Oには無線モジュールのアンテナ端子が設置されているので付属のアンテナを接続できます。
Wi-Fi 802.11 a/b/g/n/acとWi-Fi 802.11adの無線コントローラーは別のモジュールとして用意されており、Wi-Fi 802.11adはx1サイズPCI-Eスロットと排他利用ですが、3段目のx1サイズPCI-Eスロットを使用する場合もWi-Fi 802.11 a/b/g/n/acとBluetoothは使用可能です。
重量計を使用して重さを測定してみたところ、ASUS PRIME X299-DELUXEは1109gで、同じくATXサイズX299マザーボードのMSI X299 GAMING PRO CARBON ACは1156gとほぼ同じ重量でした。一方でATXサイズのX299マザーボードであるGIGABYTE X299 AORUS Gaming 7は1300gなのでこちらと比較するとやや軽量となっています。
ASUS PRIME X299-DELUXEの基板上コンポーネント詳細
続いて「ASUS PRIME X299-DELUXE」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。システムメモリ用のDDR4メモリスロットはCPUソケット両側に8基のスロットが設置されています。
固定時のツメはマザーボード上側の片側ラッチとなっています。グラフィックカードのあるPCI-Eスロット側はラッチがないので干渉の心配もありません。
ASUS PRIME X299-DELUXEはクアッドチャンネルのSkyLake-XとデュアルチャンネルのKabyLake-Xに対応しており、使用するCPUによってメモリモジュール数ごとの使用するメモリスロットのレイアウトが変わるので下記の表に従ってメモリを装着してください。
グラフィックボードなどを設置するPCI-Eスロットは上から[N/A、x16、x1、x16、x16、x1、x16]サイズのスロットが設置されています。上段のプライマリグラフィックボードを2段目のスロットに配置することで、大型ハイエンド空冷CPUクーラーとグラフィックボードの干渉を回避しています。
2段目(No.1)、5段目(No.4)、7段目(No.6)のx16サイズPCI-EスロットのPCI-Eレーン配分は使用するCPUのレーン数44or28or16によって変化するので下の表を確認してください。4段目(No.3)のX16サイズスロットは44or28レーンCPUではPCI-E3.0x4帯域固定ですが、16レーンCPUを使用する場合のみ内部USB3.1ヘッダーと排他利用となります。また3段目(No.2)のx1サイズPCI-EスロットはWi-Fi 802.11ad(WiGig, 60GHz)と排他利用です。6段目(No.5)のx1サイズPCI-EスロットはSATA3_7と排他利用です。
グラフィックボード向けのx16スロットは2段目、5段目のスロットに配置されており、現在主流な2スロット占有グラフィックボードを使用しても下位グラフィックボードが上位グラフィックボードのエアフローを妨げないよう配慮されています。付属もしくは別売りの1スロットスペース型SLI HBブリッジを使用すれば、NVIDIAの最新GPUであるGTX 1080 Ti、GTX 1080、GTX 1070を使用したマルチGPU SLI環境を構築可能です。
ASUS PRIME X299-DELUXEにも最近のトレンドとして2段目と5段目と7段目ののx16スロットには1Kgを超える重量級グラボの重さに耐えるように、従来のプラスチックスロットよりも垂直方向の力に対して1.6倍、水平方向の力に対して1.8倍も強靭になった補強用メタルアーマー搭載スロットが採用されています。
ASUSのメタルアーマーはPCIスロットのプラスチックパーツ側面に金属製のフレームが埋め込まれており、金属フレームの四隅を半田付けで固定する構造になっています。(下写真はASUS ROG Strix Z270I Gamingのもの)
SATAストレージ用の端子はマザーボード右下に7基搭載されています。SATA3_1~7はいずれもIntel X299チップセットのコントローラーによる接続で、RAID0/1/5/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。
ASUS PRIME X299-DELUXEには高速NVMe接続規格に対応したM.2スロットがPCI-Eスロット間に2基設置されています。M2_1はNVMe(PCI-E3.0x4)とSATA接続の両方のM.2 SSDに対応しています。M2_2はNVMe(PCI-E3.0x4)のM.2 SSDにのみ対応しています。M2_2はU.2端子と排他利用です。2基のM.2スロットはIRSTによるハードウェアRAIDに対応しています。
また17年最新マザーボードでは実装の減りつつあるNVMe対応U.2端子もASUS PRIME X299-DELUXEには実装されています。U.2端子はM2_2と排他利用です。
CPUとチップセット間はIntel X299シリーズチップセットではX99から更新されたDMI 3.0で接続されており、この帯域が非公式ながらNVMe M.2 SSDの接続規格であるPCI-E3.0x4とほぼ同じ帯域です。
X299チップセット搭載マザーボードのM.2スロットのうちチップセットを経由して接続されているストレージへ個別にアクセスがある場合は最新の3.0GB/s越えの高速SSDでもフルスペック動作が可能になっていますが、この帯域がボトルネックになるため複数のM.2スロットで一度にアクセスが発生すると合計で4GB/s程度がボトルネックになります。現状ではランダム性能への影響は軽微で主にシーケンシャル性能に制限がかかります。
M.2スロットのPCI-Eレーンがどこに繋がっているかで簡単に次のようなメリットとデメリットがあります。
CPU直結の場合 | チップセット接続の場合 | |
長所 | 複数のM.2 SSD(PCH側*1含む)の 同時アクセスでもフルスペック動作 |
IRSTによるハードウェアRAIDで 性能を上げることができる |
短所 | IRSTによるハードウェアRAID が構築できない (Intel製SSDではVROCで ソフトウェアRAIDが構築可能) |
複数のM.2 SSDから同時にアクセス がある場合、ストライプRAIDの場合 4GB/s程度がボトルネックになる |
チップセット下M.2スロットにはチップセットクーラーと一体型の独自のSSDヒートシンクが搭載されています。
ATX24PIN端子横のM.2スロットは垂直設置型のスロットになっており、付属の垂直設置マウンタを使用してM.2 SSDを装着します。
ATX 24PIN端子のすぐ左には最新USB3.1対応内部ヘッダーとUSB3.0端子が設置されています。USB3.0端子のはSATA端子同様にマザーボード基板と平行に実装されています。
マザーボード下側にはUSB3.0とUSB2.0の内部ヘッダーが1基ずつ設置されています。リアには大量のUSB端子があるのでUSB端子自体が不足することはないと思いますが、内部USB2.0はCorsairLinkやNZXT CAM対応製品など使用する機器も増えているので、内部USBを必要とするユーザーは少し注意が必要かもしれません。
ASUS独自の高音質オンボードサウンド機能を従来機種よりもさらに強化した「Crystal Sound 3」も採用されています。日本製オーディオコンデンサを採用し、オーディオパートはマザーボードから物理的に分離され、左右のオーディオチャンネルがレイヤー分けされることでクリアな音質を実現します。
有線LANには低CPU負荷、高スループットで定評のあるIntel純正のLANコントローラーが採用されており、加えて有線LANの信号特性を改善する独自機能「LANGuard」も搭載し、オンライン通信対戦ゲームユーザーの快適なプレイをバックアップします。
マザーボード右下には本格水冷PCユーザーには嬉しい外部温度センサーの接続端子が設置されています。ASUSのファンコントロール機能は外部センサーをソースにした水温依存のファンコントロールが可能なので管理人は以前から水冷ユーザーにお勧めしています。(関連記事)
マニュアルからの画像を使用しますが、冷却ファンや簡易水冷クーラーのポンプの接続用の端子はマザーボード上の各場所に計7か所設置されていました。これだけあれば360サイズなどの大型ラジエーターを複数基積んだハイエンド水冷構成を組んでもマザーボードのファン端子だけで余裕で運用可能です。加えて「W_PUMP+」端子は最大36W(12V、3A)の出力にも対応しているので本格水冷向けのD5やDDCポンプの電源としても変換ケーブルを噛ませることで使用できます。
ASUSのLEDイルミネーション同期調整機能「ASUS AURA Sync」による操作に対応した汎用4PIN LEDヘッダーがマザーボードの左上のEPS端子横に設置されています。当サイトでもレビュー記事を掲載しているLEDテープ「SilverStone SST-LS02」やLEDファングリル「SilverStone FG121 / FG141」などが接続可能です。また対応機器が今のところ不明ながらアドレス指定LEDテープに対応したLEDヘッダーも右下に設置されています。
マザーボード基板上にはOCerのみならず一般自作erにとっても組み立て中の動作確認に便利なオンボードのスタートスイッチとリセットスイッチが実装されています。CMOSクリアのハードウェアスイッチも設置されているのでOC設定をミスっても簡単に初期化が可能です。POST中のハードウェア検出エラーを知らせてくれるQ-Code LEDも備わっているので、CPUやメモリの設置ミスがあってもすぐにわかります。
ASUS PRIME X299-DELUXEへのパーツ組み込み
ASUS PRIME X299-DELUXEにDDR4メモリとCPUクーラーを設置してみました。内容的には写真のギャラリーだけになっています。DDR4メモリには「G.Skill Trident Z F4-3866C18Q-32GTZR」(レビュー記事)、CPUクーラーには「Fractal Design Celsius S36」(レビュー記事)を使用しています。
ASUS PRIME X299-DELUXEの検証機材
ASUS PRIME X299-DELUXEを使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。ASRock ASUS PRIME X299-DELUXE以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9 7900X 10コア20スレッド (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z RGB F4-3866C18Q-32GTZR DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) |
CPUベンチ用 ビデオカード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung 850 PRO 256GB (レビュー) |
OS | Windows10 64bit Home |
電源ユニット | Corsair RM650i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
検証機材のCPUにはX299マザーボードで使用可能なIntel Core-X CPUとして7月現在最上位モデルとなる10コア20スレッドの「Intel Core i9 7900X」を使用しています。検証機材のi9 7900XはCPUダイとヒートスプレッダ間のグリスを液体金属グリスに塗り替えているので通常よりも低い温度で動作しています。
・【一家に1台】汐見板金の国産殻割りツール「Delid Master」をレビュー!
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
以上で検証機材のセットアップは完了です。
ASUS PRIME X299-DELUXEのBIOSについて
ASUS PRIME X299-DELUXEを使用した検証機の構築も完了したので動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。(OSから日付調整する前にスクショを取っている場合、日付がおかしいですが無視してください。また内容的に差異のないものは過去の同社製マザーボードのBIOSスクリーンショットを流用しています。)
ASUS PRIME X299-DELUXEのBIOSに最初にアクセスするとEZモードというグラフィカルな画面が表示されます。パッと見の見栄えは良いのですが詳細モードでないと詳細設定ができないので「F7」キーを押してサクッと「アドバンスドモード(Advanced Mode)」へ移るのがおすすめです。
「F7」キーを押すとアドバンスドモードという従来通りの文字ベースのBIOSメニューが表示されます。「Main」タブの「System language」-「English」と表記された項目のプルダウンメニューから言語設定が可能で日本語UIを選択できます。ASUSマザーボードは競合他社と比較してもBIOSメニューの日本語ローカライズの充実と正確さが魅力です。
次回起動時に初回から詳細モードを起動する場合は、「起動-ブート設定」にある「セットアップモード」の項目をアドバンスドモードに変更してください。
ASUS PRIME X299-DELUXEのBIOSにおいて設定の保存とBIOSからの退出はトップメニュータブ最右端の「終了」から行えます。その他の設定を行っていても左右カーソルキーですぐに退出可能です。
特定のブートデバイスを指定してBIOSから退出するBoot Override機能は「起動」タブメニューの最下段「起動デバイス選択」に配置されています。
管理人の購入した個体については初期のBIOSバージョンは「0402」でした。7月11日現在、ASUS PRIME X299-DELUXEのサポートページで公開されている最新版も「0402」です。
BIOSのアップデート方法は、まず下から最新のBIOSファイルをダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
サポート:https://www.asus.com/jp/Motherboards/PRIME-X299-DELUXE/HelpDesk_Download/
USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、アドバンスドモードの「ツール-ASUS EZ Flash 3 Utility」でストレージデバイスからのアップデートでBIOSファイルを選択します。あとはガイドに従ってクリックしていけばOKです。
ブートとOSインストール周りについて紹介します。とはいってもASUS PRIME X299-DELUXEのブート回りは下画像のように非常に簡潔にまとめられており初心者でも迷うことはないと思います。
OSのインストールも「Boot Option #1」に「UEFI:〇〇」というOSインストールメディアを設定して保存&退出でOKです。「Boot Option #1」の下にスクロールしていくとブートデバイスを個別に指定して再起動できる「Boot override」もあるのでこちらから、同様に「UEFI:〇〇」というOSインストールメディアを選択してもOKです。
BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、ASUS PRIME X299-DELUXEのBIOS機能で管理人が気になったものをいくつかチェックしていきます。
ASUS PRIME X299-DELUXEにはU.2端子がM2_2スロットと排他利用で設置されているので特に問題ないかと思いますが、ASUS PRIME X299-DELUXEのBIOSメニューではM.2-U.2変換のHyper Kitに関する設定項目はストレージ設定には用意されていませんでした。
排他利用となるU.2端子とM.2_2スロットは「詳細ーオンボードデバイス詳細設定」の設定項目からAutoもしくはU.2指定の設定が可能です。
またSkylake-X&X299プラットフォームからサポートされるようになったソフトウェアRAID機能「VROC」に対応するための設定項目として「CPU Storage Configuration」が用意されており、一般的なPCI-E-M.2変換ボードや未発売ですがM.2 SSD4枚刺しに対応した拡張ボード「Hyper M.2 x16」を選択可能です。
ASUS PRIME X299-DELUXEに標準で付属するThunderbolt3拡張ボード「ASUS ThunderboltEX 3」を使用する場合は「詳細ーThunderbolt Configuration」で「ASUS ThunderboltEX 3」を刺しているスロットを選択する必要があるので注意してください。
チップセットのLEDイルミネーションについてはデフォルトではOSのシャットダウンやスリープ時もLEDが点灯しますが、「When system is in sleep, hibernate and soft off states」の項目をOFFにすることでスリープ時やシャットダウン時のみLEDイルミネーションをOFFにすることができます。
なおシャットダウン・スリープ時のLEDの点灯・消灯設定はWindows上の「AURA Sync」から設定が可能でアプリからの操作が優先されます。ASUS Aura Syncソフトウェアの「Power Off」タブがスリープやシャットダウン時のLEDイルミネーションの設定になっています。ここから設定を行うことでASUS PRIME X299-DELUXEでもシャットダウン・スリープ時のLEDイルミネーションの消灯が可能です。AURA Syncについて詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
マザーボード上のコンポーネント詳細でも紹介した外部温度センサーについてはBIOS上からも温度をモニタリングできます。簡易水冷(AIO水冷)ポンプ専用の項目も用意されており、ASUS PRIME X299-DELUXEであれば冷却機能周りは空冷・水冷ともにほぼ全てBIOS上でコントロール可能です。
BIOS上のファンコントロール機能についてですが、CPUファン端子とCPU OPT端子はCPU温度依存のファンコントロールしかできませんが、その他のケースファン端子については、外部温度センサーなどの各種温度ソースからファンコントロールが可能です。
またDIY水冷では標準的な水冷ポンプであるD5ポンプやDDCポンプを運用可能な電力出力に対応した水冷ポンプファン端子が外部温度センサーによるファンコントロールに対応したところは注目ポイントです。
ASUSマザーボードにもグラフィカルUIによるファンコントールの設定機能「Q-Fan Control」があります。機能的には上で紹介したコンソールのファンコンと同じですが、グラフィカルUIでわかりやすく設定できるよという機能になっています。直感的にわかりますし直打ちが苦手な人にはありがたい機能だと思います。
イルミネーション操作機能「ASUS AURA Sync」について
「ASUS PRIME X299-DELUXE」にはチップセットクーラーとリアI/Oカバーに同社のイルミネーション操作機能「ASUS AURA Sync」に対応したLEDイルミネーションが搭載されています。チップセットクーラーには4球、リアI/Oカバーには7球のLED素子が実装されており、これらはアドレス指定による(アドレッサブルな)イルミネーション操作に対応しています。オーロラライクなアドレッサブル発光パターンだけでなく、各アドレスに対して静的に発光カラーを指定することも可能です。
ASUS PRIME X299-DELUXEに搭載されたLEDイルミネーションや汎用ヘッダーに接続された機器は発光カラーや発光パターンを専用アプリのAURA Syncから同期操作可能になっています。AURA Syncはマザーボードのサポートページから最新版をダウンロードできます。
サポート:https://www.asus.com/jp/Motherboards/PRIME-X299-DELUXE/HelpDesk_Download/
専用アプリである「AURA Sync」を使用することで、色を指定した固定色発光、カラーサイクル等の発光パターンプリセット、温度や音楽に合わせた発光変化など自由度の高いイルミネーション設定が可能です。
ASUS PRIME X299-DELUXEのマザーボード備え付けLEDイルミネーションはアドレス指定操作に完全対応しており各ソフトウェア上からLED素子に対して個別に発光カラーを設定できます。
またマザーボード上に設置された汎用RGB LED 4PINヘッダーやアドレス指定対応3PINヘッダーを使用することで当サイトでもレビュー記事を掲載しているLEDテープ「SilverStone SST-LS02」やLEDファングリル「SilverStone FG121 / FG141」など汎用LED機器によるLEDイルミネーションの拡張も可能です。
ASUSのLEDイルミネーション機能「AURA Sync」については汎用イルミネーション機器の使用方法や導入例などを下の記事でも紹介しているので、詳しくはこちらを参照してください。
・ASUS製のLEDイルミネーション操作機能「AURA Sync」の使い方
LCDモニタ「ASUS LiveDash」について
X299マザーボードで初実装となるASUSの新たな試みとして「ASUS PRIME X299-DELUXE」にはLCDパネル「ASUS LiveDash」が搭載されています。プログラミングやGif画像次第でCPU温度のモニタリング表示からオリジナルアニメーションなど様々な表示が可能なのですが、個人的にはPOST中のチェック項目を逐次表示してくれるのが印象的で、今度の発展次第では初心者ガイドとして非常に有力な機能になる可能性を感じました。
Windows上アプリケーション「ASUS LiveDash」から、プリセットとして用意されたCPU温度などのモニタリング表示やアニメーションを選択可能です。17年7月時点ではオリジナルのアニメーションを適用することはできませんが、128x32 pxのGif画像として規格化されているようなので将来的にはアニメーション表示のカスタム機能も解放されると思います。
ASUS PRIME X299-DELUXEのOC設定について
ASUS PRIME X299-DELUXEを使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
ASUS PRIME X299-DELUXEはSkylake-XとKabyLake-Xの2種類のCPUに対応していますが、KabyLake-XのOC設定については基本的にZ270マザーボードの設定に準拠するため、当記事ではi9 7900XなどSkyLake-X CPUのOC設定について説明します。また一部で日本語UIに誤訳が含まれる場合があるのでBIOSのスクリーンショットでは英語UIを使用しています。
「ASUS PRIME X299-DELUXE」のオーバークロック設定は「AI Tweaker」というトップメニューのタブページにCPUコアクロック、メモリ、電圧など各種設定項目が集約されています。「AI Tweaker」ページをスクロールしていくとCPUコアクロック、メモリ、電圧などの各種設定項目が表示されるので設定しやすいUIです。設定値を直接入力する項目でデフォルトの「Auto」に戻す場合は「a」キーを入力すればOKです。
「ASUS PRIME X299-DELUXE」のオーバークロック設定項目の最初にある「AI Overclock Tweaker」ではプルダウンメニューから「Auto」「Manual」「XMP」の3つの設定モードが選択できます。Autoモードは基本的な設定項目に関する自動or手動設定が可能な一般ユーザー向けの設定モードとなっています。ManualモードはBCLK等の詳細なOC設定項目が解放される上級者向けの設定モードです。XMPモードはManualモードベースですが、OCメモリに収録されたXMPプロファイルを適用できる設定モードになっています。
OC初心者はXMPを使用しないならAutoモード、XMPを使用するならXPMモードを使用すればOKです。
CPUコアクロック(コア倍率)の変更について説明します。
コアクロックはコア数に対して各コアに最大動作クロック(BCLKに対する倍率)を指定できます。「コア0:コア1:コア2:コア3」を倍率として、例えば「45:43:43:42」のようにバラバラに指定した場合、4つのコアのうち1つに負荷が掛かる場合は4コアのうち1つが45倍動作、2つと3つの場合は43、4つの場合は42となります。
ASUS PRIME X299-DELUXEではCPU内部クロック倍率の設定モードとして、マザーボードのお任せとなる「Auto」、全コアの倍率を同じに設定する「Sync All Cores」、負荷のかかっているコア数によって最大動作倍率を設定する「By Core Usage」、各コアに対して動作倍率とコア電圧を個別設定可能な「By Specific Core」の4つのモードが存在します。
「By Core Usage」モードでは負荷がかかっているコア数に対して最大動作倍率を設定可能になっており、負荷時のコア数と最大動作倍率のセットを最大8セット設定できます。
「By Specific Core」では各コアに対して動作倍率とコア電圧を個別設定可能なモードです。各コアに対して最大動作倍率だけでなく、コア電圧も設定することができ、通常の電圧設定同様に「Manual(固定電圧)」「Adaptive」「Offset」の電圧モードが選択できるところが特徴的です。
ユーザーがCPUのOCを行う場合は通常、全コアの最大倍率を一致させると思いますが、同マザーボードの場合は「Sync All Cores」モードを選択して「1コアの倍率制限値: 45」と設定することでデフォルトのBCLK(ベースクロック)が100MHzなのでその45倍の4.5GHzで全てのコアが動作します。
「AI Overclock Tweaker」から「Manual」モードもしくは「XMP」モードを選択するとベースクロック(BCLK)の設定項目が表示されます。デフォルトのAutoでは100MHzに固定されていますが、設定値を直打ちすることで80~300MHzの範囲内で0.125MHz刻みで設定できます。CPUコアクロックはBCLKに対する動作倍率で設定されるのでBCLK110MHz、動作倍率45倍の場合はコアクロック4.95GHz動作となります。ただしBCLKを使用したOCはかなり上級者向けなので通常はAutoか100MHzが推奨です。
キャッシュ(メッシュ)動作倍率は「最大CPUキャッシュ倍率」と「最小CPUキャッシュ倍率」から変更可能です。CPUコアクロック同様にベースクロックに対する動作倍率でメッシュの動作周波数を設定できます。
続いてコア電圧の調整を行います。
電圧設定の予備知識としてIntel SkyLake-X CPUでは統合電圧レギュレータ(FIVR)がCPU上に実装されており、マザーボードのVRMから供給されるCPU全体への電圧を源泉にして、CPU各コアやメッシュなど個別のユニットに対して異なる電圧レールで電力が供給されます。CPU全体への電圧(1.800~1.900V程度)とCPUコアへの電圧(1.000~1.300V程度)は似た名前で別の設定項目として用意されているので電圧設定を行う際は間違えないように注意して下さい
CPUコアクロックのOCに関連する電圧設定としては、ASUS PRIME X299-DELUXEでは「CPUコア電圧(CPU Core Voltage)」の項目を変更します。「CPU Input Voltage」という項目もありますがこちらは上で説明したようにCPU全体への入力電圧なので基本的にAutoのままで放置してください。
ASUS PRIME X299-DELUXEではCPUコア電圧にマニュアルの設定値を固定する「Manual」モード、CPUに設定された比例値にオフセットかける「Offset」モード、ターボブースト時にのみ昇圧を行う「Adaptive」モードの3種類が使用できます。
ASUS PRIME X299-DELUXEでコアクロックのOCを行う場合、CPUコア電圧の設定については設定が簡単で安定しやすいので固定値を指定するManualモードがおすすめです。10コアi9 7900XをOCする場合のCPUコア電圧の目安としては非殻割りでは1.200V、殻割りクマメタル化では1.260~1.300V程度が上限になると思います。
CPUコア電圧モードについて簡単に説明すると、オフセットモードやアダプティブモードはCPU負荷に比例して電圧が設定されており、低負荷時は電圧が下がるので省電力に優れるのですが、OCをする場合はマザーボードによって挙動に差があり安定する設定を見極めるのが難しいので、個人的にはオフセットやアダプティブは定格向け、OCには固定値適用の固定モードを推奨しています。
仮にOCでオフセットやアダプティブを使う場合も最初はコアクロックに対して安定する電圧を見極める必要があるので、まずは固定モードを使用します。
ちなみにマザーボードにより対応しているモードは異なりますが、CPUのオーバークロックに付随するコア電圧のモードの概略図は次のようになっています。
SkyLake-X CPUのキャッシュクロックをOCする場合は、CPUコア電圧とは別に「CPUキャッシュ電圧(CPU Cache Voltage)」を設定します。CPUキャッシュ電圧を盛るとCPUコア電圧とは独立に発熱が増える(CPU温度が上がる)ので注意してください。CPUキャッシュ電圧もCPUコア電圧同様に「Manual」「Offset」「Adaptive」の3種類のモードから電圧設定が可能です。
CPUキャッシュ電圧の目安としてはi9 7900Xの場合は定格メッシュ周波数の2400MHzでは0.900V程度、3200MHzまでOCすると1.200V程度が要求されます。
またCPUのOC/DCに関連する電力設定としてASUS PRIME X299-DELUXEではコアクロックと電圧の設定項目の中間あたりに「External Digi+ Power Control」と「CPU電力詳細設定」の2つがあります。
コアクロックを高く設定する時に追加で変更するといい項目として「External Digi+ Power Control」の「ロードラインキャリブレーション」があります。ロードラインキャリブレーションはCPU負荷時の電圧降下を補正してOCを安定させる機能となっており、補正の強度としてLevel 1~Level 8の8段階になっており、Levelが大きくなるほど電圧降下の補正は強くなりOCは安定しやすくなりますが発熱も大きくなります。Level 5あたりから始めて安定する設定値を模索していくのがおすすめです。
「External Digi+ Power Control」ではその他にも「CPU VRM スイッチング周波数」「CPU VRM スペクトラム拡散」「CPU VRM 可動フェーズ設定」などCPUのオーバークロック時にマザーボードVRMからの電力供給を安定させる設定項目が用意されています。
また「CPU電力詳細設定」には「瞬間許容電力制限値(Short Duration Power Limit)」「許容電力上限値(Long Duration Power Limit)」という2つの電力制限機能があり、電力制限がかかる閾値(単位はW)と電力制限がかかるまでの時間を設定できます。電力制限がかかるとその指定電力内に収まるようにコアクロックに制限がかかります。デフォルトの状態では「Auto」になっていますが、ASUS PRIME X299-DELUXEでは手動でコアクロックのOCを行った場合はパワーリミットが掛からないように勝手に設定してくれるので放置でも問題ありません。基本的に一定消費電力以内に収めるための省電力機能(+若干のシステム保護機能)と考えてください。
メモリのオーバークロックについても簡単に紹介だけしておきます。
メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。
一方でXMPによるメモリOCは上の手順によるOCをメーカー側がすでに行い動作確認をしているので、メーカーが動作確認を行ったOCプロファイルを適用するだけで簡単にメモリをオーバークロックできます。
メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありませんが、「ASUS PRIME X299-DELUXE」では正常にPOSTできないメモリOC設定でエラーが出た場合は数回再起動した後、自動で2133MHzのような緩い設定で起動してくれるのでメモリOCを安心して行えます。
ASUS PRIME X299-DELUXEでは「AI Overclock Tweaker」からXMPモードを選択するとに設定することでOCメモリに収録されたXMPプロファイルによるメモリのオーバークロックが可能です。
「AI Overclock Tweaker」のAutoモードやManualモードでは、「DRAM Frequency」の設定値がAutoでは多くのDDR4メモリで動作クロック2133~2666MHzでメモリごとに設定されたタイミングによる定格動作となります。手動でメモリ周波数を設定する場合は「DRAM Frequency」の項目でプルダウンメニューから最大4400MHzまでの動作クロック(倍率)設定が可能です。
メモリ周波数もBCLKに対する倍率で動作周波数が決まっているので、BCLKを標準値の100MHzから120MHzに上げると、44倍設定時の動作周波数は4000MHzから5280MHzに上がります。
メモリタイミングの個別打ち込み設定も可能です。メモリタイミングを手動で設定する場合は基本的には「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS (tRCD)」、「RAS Precharge (tRP)」、「RAS Active Time (tRAS)」の主要な4タイミングと、加えて「Reflash Cycle Time (tRFC)」と「Command Rate:1 or 2」の6つ以外はAutoのままでいいと思います。
DDR4メモリの周波数OCを行う際は「DRAM CH AB/CD Voltage」の項目を、3000MHz以上にOCする場合は1.300~1.350V、3800MHz以上にOCする場合は1.370~1.400Vに上げる必要があります。メモリをOCする場合は最初から1.350V以上にDRAM電圧を盛っておくのがおすすめです。
X299環境のクアッドチャンネルでメモリのオーバークロックを行う場合、高メモリクロックでタイミングを詰めていくとPOSTをクリアできても4枚or8枚のうち一部しかメモリが認識されないままPOSTクリアしてWindowsが起動する場合があります。CPU-ZやAIDA64メモリベンチで32GB、クアッドチャンネルと誤表示されるため、メモリOC後に全てのメモリモジュールが正常に動作しているか確認する場合はタスクマネージャーの「パフォーマンス-メモリ」から装着した容量が表示されているかを見てください。
ここで正常にメモリ容量が表示されない場合はメモリ周波数を下げる、タイミングを緩める、メモリ電圧を盛るなどOC設定の見直しが必要です。
Intelの前世代エンスー向けCPU Broadwell-Eではメモリ周波数を3200MHz以上にOCする場合は「VCCSA(CPU SA Voltage)」を1.200V前後に盛ると動作が安定したのですが、Intel SkyLake-X i9 7900Xやi7 7800Xで管理人が確認した限りでは定格の0.900V前後のままで問題ありませんでした。
あと今のところX299環境では不具合を確認できていませんでしたが、メモリのオーバークロックでPCI-E拡張カードの検出不可やオンボードUSB端子の干渉などが発生する場合は「電圧設定」にある「VCCIO(CPU IO Voltage)」や「チップセット電圧(PCH Voltage)」を盛ると安定するかもしれません。
ASUS PRIME X299-DELUXEの動作検証・OC耐性
BIOS周りの管理人的に気になるところの紹介はこのあたりにしてASUS PRIME X299-DELUXEを使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。まずはFast Bootとフルスクリーンロゴを無効にしてOSの起動時間を測定したところ、ASUS PRIME X299-DELUXEの起動時間は29秒ほどした。多機能なエンスー向けマザーボードの起動時間としては遅いというほどではありませんが、POST時間に少し時間がかかっている印象です。
続いてASUS PRIME X299-DELUXEを使用した場合のCPUとメモリのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
Core i9 7900XのOC設定は「CPUクロック倍率:46」「CPUコア電圧:1.200V(固定モード)」「メッシュ倍率:32」「メッシュ電圧:1.180V(固定モード)」「ロードラインキャリブレーション: Level 5」「CPU VRM スペクトラム拡散: Disabled」「メモリ周波数:3200MHz」「メモリ電圧:1.350V」「メモリタイミング:19-20-20-42-CR2」「VCCSA:1.040V」としています。
上の設定を適用したところ問題なくOSを起動させることができました。
ASUS PRIME X299-DELUXEの環境でG.Skill Trident Z RGB F4-3866C18Q-32GTZRを使用して、メモリ周波数:3200MHz、メモリタイミング:19-20-20-42-CR2にOCで動作しました。
マザーボード以外は同じ検証機材でOCを行った時は3800MHzで動作したのですが、「ASUS PRIME X299-DELUXE」では3200MHzまでメモリ周波数を下げ、Command Rate:2に緩めないとmemtestによる動作テストで1時間ほどするとエラーが出ました。
検証メモリにはG.Skill Trident Z RGBを使用していますが、ASUS AURA Syncをインストールした状態でメモリOCを行いmemtestを実行するとTrident Z RGBとマザーボード上のLEDイルミネーションがフリーズする不具合も発生しました。
AURA Syncなどイルミネーション機能が悪さをしている可能性も否定できないのですが、ASUS PRIME X299-DELUXEは(現在のBIOSでは?)メモリOC耐性があまり高くないのかもしれません。
10コア20スレッド「Intel i9 7900X」のコア4.6GHz/メッシュ3.2GHz、メモリ周波数3200MHz、メモリタイミング19-20-20-42-CR2でCinebenchも問題なくクリアできました。
続いてこのOC設定を使用してストレステストを実行しました。
検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間8分、WQHD解像度、60FPS、容量4.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はCore i9 7900Xの場合10分ほどなので同じ動画のエンコードを2つ並列して2周実行しています。テスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
ストレステスト中のCPU温度とCPU使用率のログは次のようになりました。マザーボードにASUS PRIME X299-DELUXEを使用することでCore i9 7900Xを全コア同時4.6GHz、メッシュ3.2GHz、メモリ3200MHzにOCしてストレステストをクリアできました。CPUクーラーのファン回転数は1500RPMで固定しています。
スマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE」を使用してASUS PRIME X299-DELUXEのVRM電源温度をチェックしてみました。
まずは同マザーボードにおけるデフォルト設定で負荷をかけてからVRM電源温度を測定してみました。X299マザーボードの多くはデフォルト設定で全コア4.0GHzで動作するものが多いですが、ASUS PRIME X299-DELUXEなど一部のASUSマザーボードでは140W制限下で動作するため、平均して3.6~3.9GHz程度での動作となります。
デフォルト設定の動作ではコアクロックが抑えられているのでVRM電源周りの発熱についても控えで、VRM周りに風の当たらない簡易水冷CPUクーラー環境でも負荷時60度前後なので安心して使用できます。
続いてi9 7900Xを上記のBIOS設定でOCした時の負荷テスト中の温度をチェックしていきます。同マザーボードに限った話ではありませんが、SkyLake-Xでi9 7900X以上のモデルをOCする場合はスポットクーラーを使用してVRM電源部分の冷却推奨です。VRM電源の温度が一定値を超えると保護機能が起動してコアクロックが強制的に下げられます。ちなみに上の設定でi9 7900Xを4.6GHzまでOCするとシステム全体の消費電力が350W前後に達します。
まずはマザーボード全体についてですが、ASUS PRIME X299-DELUXEではチップセットなどの温度は特に問題なさそうです。
続いて肝心のVRM電源温度ですが、i9 7900Xを全コア4.6GHzにOCしていますがスポットクーラーとして120mmファンを1800RPMで回しているのでVRM電源周りの温度は60度前後に収まりました。ソフトウェア読みのVRM電源温度も60度前後だったのでASUS PRIME X299-DELUXEについてはスポットクーラーを使用して適切に冷やしてやればi9 7900XのOC運用も問題なさそうです。
ASUS PRIME X299-DELUXEのレビューまとめ
最後に「ASUS PRIME X299-DELUXE」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- ホワイト&シルバーの清潔感のあるデザイン
- Aura Syncで操作可能なアドレッサブルなマザーボードLEDイルミネーションが綺麗
- LCDパネル「ASUS Live Dash」が意外と便利かも
- 10コアi9 7900X 4.6GHz、メモリクロック3200MHz OCで安定動作
- 重量級グラボにも耐えるメタルアーマー採用PCI-Eスロット
- スタート・リセットスイッチなど動作検証に便利なオンボードスイッチ
- 外部センサーと搭載で水温ソースのファンコンも可能なので水冷PCにも最適
- 独自のSSDヒートシンク付きと垂直型でNVMe対応M.2スロットが2基設置されている
- 高速NVMe接続対応のU.2端子が1基設置されている
- NVIDIA GTX 10XXシリーズのマルチGPU用のSLI HBブリッジが付属する
- Thunderbolt3拡張ボード「ASUS ThunderboltEX 3」が付属
- 最大4.6Gbpsに及ぶ最新無線接続規格Wi-Fi 802.11ad(WiGig)対応無線LAN搭載
- VRM電源クーラーが小さいのでi9 7900XのOC時はスポットクーラーの併用を推奨
(交換用大型ヒートシンクの配布を検討してもらえると嬉しい) - 内部USB2.0ヘッダーが少ない
- 初期ロットには紙の日本語マニュアルが付属しなかった
- メモリのOC耐性は低いかもしれない(BIOS:0402、検証機材メモリとの相性問題かも)
SkyLake-X CPU対応X299マザーボード「ASUS PRIME X299-DELUXE」は、ASUSのベースラインブランド「PRIME」シリーズらしく基本的な機能を手堅く揃えつつ、最上位モデルの”DELUXE”とうことでThunderbolt3端子を増設可能な拡張ボード「ASUS ThunderboltEX 3」が標準で付属、4Kストリーミングも可能な4.6Gbpsの最新無線LAN WiGigを搭載するなどクリエイティブ作業を行うパワーユーザーにも最適な多機能ハイエンドマザーボードとして仕上がっています。
X299マザーボードで初実装となるASUSの新たな試みとして「ASUS PRIME X299-DELUXE」にはLCDパネル「ASUS LiveDash」が搭載されていますが、POST中のチェック項目を逐次表示してくれるのが印象的で、今度の発展次第では初心者ガイドとして非常に有力な機能になる可能性を感じました。LCDパネル「ASUS LiveDash」は今後の発展に期待の高まる独自機能です。
ASUS PRIME X299-DELUXEを使用した検証機では10コア20スレッドのi9 7900Xを全コア4.6GHz、メッシュ3.2GHzに、メモリ周波数も3200MHzにオーバークロックして負荷テストをクリアすることができました。
ただ他のマザーボード複数において3800MHzで回ったメモリが3200MHz程度しか回らなかったので、メモリOC耐性はあまり高くないのかもしれません。ASUS AURA Syncに対応したLEDイルミネーション搭載メモリを使用しているたので、AURA Syncなどイルミネーション関連機能が悪さをしている可能性もあります。今後のBIOSアップデートでメモリOC関連の改善には期待したいところです。
i9 7900Xと組み合わせて使用した場合、同マザーボードにおけるデフォルト設定では140W制限のためフル負荷時に全コアの平均クロックが3.6~3.9GHz程度ということもありCPU温度も低め、VRM電源温度は風の当たらない簡易水冷CPUクーラーでも60度前後に収まのでデフォルト設定で運用しやすくなっています。
ただしOC時はやはりVRM電源の温度が高くなるのでVRM電源周りに風を当てるためにスポットクーラーの併用を推奨します。VRM電源周りの発熱自体はありますがスポットクーラーさえ適切に運用すればi9 7900Xの4.6GHz OCでも60度前後に抑えることができるのでi9 7900XのOC環境としては比較的使いやすいマザーボードだと思います。
以上、「ASUS PRIME X299-DELUXE」のレビューでした。
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検証機材として使用している以下のパーツもおすすめです。
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G.Skill Trident Z Black DDR4メモリ Skylake-X対応
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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