6コア12スレッド「Core i7 7800X」をレビュー


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定格で全コア同時4.0GHz動作な6コア12スレッドCPU「Intel Core i7 7800X」を国内発売に先駆けて北米から個人輸入してきたので簡単にレビューしていきます。6コア以上のマルチスレッド性能では手動で3.8GHz前後にOCしたRyzen 7 1700がコスパ最強というのは以前から管理人も推していた通りなのですが、「Core i7 7800X」も手動でOCをしていくとなかなか侮れないパフォーマンスを発揮します。
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i7 7800XをはじめとしてSkyLake-XのCPU形状については前世代Broadwell-E(下の写真は同世代Xeon)とほぼ同じです。
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違うところはPCB基板の一角にチップが実装されているところくらいです。このチップが万力やカッターによる殻割り作業を激しく妨害します。
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Intelの新CPU恒例の基板の厚さチェックです。
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まさかBroadwell-Eよりもさらに薄く刻んでくるとはっ……!
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Core i7 7800XのOCを行う環境としては、GIGABYTE X299 AORUS Gaming 7などで構成されているベンチ機を使用しました。
テストベンチ機の構成
CPU Intel Core i7 7800X
6コア12スレッド 全コア同時4.0GHz
CPUクーラー Fractal Design Celsius S36
レビュー
メインメモリ Corsair Dominator Platinum
Special Edition
DDR4 8GB*4=32GB (レビュー
マザーボード
GIGABYTE X299 AORUS Gaming 7
レビュー
ビデオカード MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC
ファンレス (レビュー
システムストレージ
Samsung 850 PRO 256GB (レビュー
OS Windows10 64bit Home
電源ユニット Corsair RM650i (レビュー

CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
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まずはBIOSから特に設定を行わずに定格(マザーボード別のデフォルト設定)で起動してみました。GIGABYTE X299 AORUS Gaming 7の場合、Core i7 7800Xは全コア同時コアクロック:4.0GHz、メッシュクロック:2.4GHz、コア電圧:1.070V前後で動作しました。
i7 7800X 定格_1
定格のi7 7800XのCinebenchスコアは1297程度となりました。
i7 7800X 定格_2
ちなみにi7 7800X定格の時点で2世代前の6コアエクストリームCPU「i7 5930K」を頑張ってOCした4.4GHzのCinebenchスコアを抜き去りました。
i7 5930K

さて続いてサクッとコアクロックのOCをしていきます。
SkyLake-X&X299環境のOC方法に関する紹介は後日公開予定のマザーボードレビュー記事に譲るとして、とりあえず非殻割りのi7 7800Xをコアクロック4.7GHz、コア電圧1.240VにOCしてみました。
i7 7800X 4.7GHz
今回検証に使用した個体では4.7GHzにOCするとで動画エンコードの負荷テストでCPU温度が最大82度まで上がってしまったので、非殻割りでは石の個体差もあると思いますが4.7GHzあたりが常用限界になりそうです。
7GHz_2


続いて各種比較データをチェックしていきます。
まずはCinebenchのベンチマークスコアをグラフにまとめてみました。

i7 7800Xは6コア12スレッドCPUですが定格のコアクロックが4.0GHzと高いので、Ryzenの6コア12スレッドモデルRyzen 5よりも高い性能を発揮しています。なおRyzen 5も4.0GHz程度のOCは可能でOCするとスコアは1300程度になります。さらにi7 7800Xを4.5GHzにOCすると8コアRyzen 7のコスパ最強モデルであるRyzen 7 1700の定格に並びます。殻割りでOC限界突破して4.8GHz以上にOCするとRyzen 7 1700Xクラスまで伸びるという塩梅です。
i7 7800X_cinebench
Cinebenchは特に動画のエンコード性能に直結するベンチマークで動画のエンコード時間とベンチマークスコアは概ね比例しますが、実際の動画のエンコードはCineベンチほどマルチコア/スレッドの効率が良くないので、4.5GHz以上にOCしたi7 7800Xと3.9~4.0GHzにOCしたRyzen 7で実際に動画のエンコード時間を比較してみると高コアクロックなi7 7800Xのほうがシングルスレッド性能が高いため意外なことにRyzen 7よりも早くエンコードが終了しました。
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同じ動画のエンコードを2つ並列で実行してみるとRyzen 7のほうが少し速くなります。
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次にi7 7800Xのオーバークロック別で定格、4.5GHz OC、4.6GHz OC、4.7GHz OC時についてCPU温度をチェックしてみました。
検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間8分、WQHD解像度、60FPS、容量4.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はi7 7800Xの場合15分ほどです。エンコード中のファン回転数は一定値(1000RPM)に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。

ストレステスト中にi7 7800XはOC設定別でCPU温度が次のようになりました。
i7 7800Xは殻割りなしでも定格なら最大温度57度に収まっています。i7 7800Xは非ソルダリングですが定格運用であれば高性能な空冷や120サイズ以上の簡易水冷のCPUクーラーで運用できそうです。また4.5GHz前後のOCについては240サイズ以上の簡易水冷CPUクーラーであれば非殻割りの状態でも十分常用できると思います。大型ラジエーターの簡易水冷なら4.7GHzはギリギリいけるかもしれません。石の個体差もあると思いますが4.7GHz以上を狙う場合は殻割りクマメタル化して大型簡易水冷or本格水冷が必要になりそうです。
i7 7800X_OC_temp

また各CPU別にシステム全体の消費電力を比較してみました。
測定には電源ユニット「Corsair RM650i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの出力ではなく変換ロスを差し引いた純粋な検証システム全体への入力電力をチェックしています。消費電力測定の負荷には上の温度テスト同様に動画のエンコードを行い、最初5分間の平均電力を消費電力、最大電力を瞬間最大負荷としています。
i7 7800Xは定格では消費電力152WとなりRyzen 7 1800Xよりも16W程度高い消費電力になりました。4.7GHz OC時の消費電力は212WでRyzen 7を4.0GHzにOCした時と同等の消費電力になるようです。
i7 7800X_power


またスマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE」を使用して4.7GHz OCで負荷を30分ほどかけてVRM電源部分の温度をチェックしてみました。
前回のi7 7740Xの時は50度前後だったのでそれよりは温度が上がっているもののそれでもまだ70度前後なので余裕があります。板にもよると思いますが、i7 7800XのOC程度であればX299マザーボードのVRM電源温度が問題になることはまだないようです。
i7 7800X FLIR



6コア12スレッドのi7 7800Xは前世代の6コア上位モデル6850Kと違ってPCI-Eレーン数がフルレーンではなく28レーンに制限されているので2-wayマルチGPUでx16帯域を2つ使用したいユーザーにとって安価なソリューションではなくなってしまいましたが、次世代でメインストリームに降りてくると噂の6コア12スレッドに先駆けて、i7 7800Xは6コアで4GHz後半のオーバークロック、殻割りして頑張れば5GHzも狙えるCPUになっています。4.5GHz前後までOCするとCinebenchスコアこそ8コア16スレッドのRyzen 7の3GHz後半OCに劣るものの実際のエンコードでは伯仲するというRyzen 7の思わぬ伏兵として予想外のパフォーマンスを発揮します。手動OCしたRyzen 7 1700のコスパ最強の座を奪うことは難しいと思いますが、2コア少ない身ながらハイクロックでRyzen 7の領域に食い込むというなかなかに興味深いポジショニングです。
がっつりOCしてもVRM電源温度が上がり過ぎず発熱も240や280サイズの簡易水冷ラジエーターなら十分対応可能な範囲に収まるところも使い勝手が良いと思います。ここから先はi9 7900Xはいわずもがな、8コアのi7 7820Xも消費電力の方が怪しくなってきそうなので。
またx16帯域のSLIこそ無理ですが、メインストリームCPUに比べればPCI-Eレーンが豊富であることには変わりないので、CPU直結PCI-EレーンでNVMe SSDを複数使用したり、仮想RAIDの新機能VROCで爆速ストレージを構築したりと高速ストレージ環境としては充実しているところは魅力に感じるユーザーもいるかもしれません。

「6コアってメインストリームの4コアと比べてシングル性能(コアクロック)で劣るんでしょ」という従来の考えを捨てさせるには十分なOC耐性を発揮しているので、7700K&Z270環境から+αで背伸びして手を伸ばしたくなる、i7 7800XはそんなCPUだと思います。

以上、7740Xに続いてやや駆け足気味ですがi7 7800Xのレビューでした。
6コア12スレッド「Core i7 7800X」をレビュー





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おまけ

ついでにまだ検証途中ですが、アンコア(メッシュ)クロックとメモリクロックについて。

メッシュクロックにはCPUコア電圧とは別にメッシュ電圧が用意されておりHas-E/Bro-Eのアンコアと似た感じでOCを行えます。i7 7800X~i9 7900Xについてはメッシュクロックの定格は2.4GHzになっており、1.180V前後で3.2GHzくらいまでOCできました。ただメッシュをOCするメッシュ電圧を盛る)とCPUコア電圧とは独立に影響してCPU温度が上がるので注意が必要です。Cinebenchスコアではメッシュを数100MHz盛るよりコアクロック100MHz盛る方が効果が大きいので基本的にコアクロック優先で良いような気がします。

メモリクロックについてはBro-Eでは3200MHz前後が一般的なOC限界でしたが、SkyLake-Xでは検証機材のCorsair Dominator Platinum Special Editionの3200MHzのXMPプロファイルを使用して問題なく動作しました。Bro-EでメモリOC時に有効だったVCCSA盛りは3200MHz程度なら必要ないようです。i7 7800Xのメモリ3200MHz OCでは定格の0.900V程度で変動がありませんでした。3800MHz以上を狙うと盛る必要があるかも。やはりメモリのOC耐性はSkyLake-Xで大幅に上がっていると期待して良さそうです。

コア4.9GHz、メッシュ3.2GHz、メモリ3200MHzにOCするとCinebenchのスコアが1597まで上がります。
i7 7800X 4.9GHz_1

殻を割ると4.9GHz常用は大型簡易水冷ならいけそうな感じです。キャッシュを盛り始めると少し厳しくなってきますが。わりと気温との闘いな件、なんでIntelはHEDT向けCPUを初夏にリリースするのだろうか……。
i7 7800X review_08010

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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)



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