スポンサードリンク
AMD Ryzenのエンスー向けCPU「Ryzen Threadripper」に対応するX399チップセット搭載TR4 SocketマザーボードとしてMSIからリリースされたゲーミングモデル「MSI X399 GAMING PRO CARBON AC」のレビュー用サンプルをメーカーよりご提供いただけたのでレビューしていきます。ブラック基調に高級感のあるカーボンパターンを採用し艶のあるグロッシーな表面加工でマンネリも回避、万人受けするCARBONシリーズのデザインはそのままに高OC耐性と基本機能を詰め込んだミドルハイX399マザーボードです。
製品公式ページ:https://jp.msi.com/Motherboard/X399-GAMING-PRO-CARBON-AC.html
マニュアル:http://download.msi.com/archive/mnu_exe/E7B09v1.0.zip
【注意事項】
検証中のトラブルなども記事内で記載していますが、AMD Ryzen threadripper CPU自体が発売されたばかりなので、OSの問題なのか、マザボBIOSの問題なのか原因の切り分けが現状でできないものも少なくありません。今後ドライバやBIOSなどソフトウェアの更新でパフォーマンスや安定性が向上することは期待できると思うので、その辺りも念頭に置いて読んでもらえるとありがたいです。
同検証は17年9月上旬に行っておりMSI X399 GAMING PRO CARBON ACのBIOSは150(サポートページでは7B09v15と表記)を使用しています。最新BIOSでは修正されている不具合や追加されている機能もあると思うので、最新BIOSのリリースについては公式ページを各自でチェックしてください。
サポート:https://jp.msi.com/Motherboard/support/X399-GAMING-PRO-CARBON-AC.html#down-bios
【注意】
メモリOCを行った際にコアクロックのOC倍率が正常に適用されない症状の修正が含まれているので、BIOS:150(サポートページでは7B09v15と表記)以降のバージョンへアップデートを推奨します。
【17年9月15日:初稿】
レビュー記事初稿を公開、BIOS:150(サポートページでは7B09v15と表記)で検証
MSI X399 GAMING PRO CARBON AC レビュー目次
1.MSI X399 GAMING PRO CARBON ACの外観・付属品
2.MSI X399 GAMING PRO CARBON ACの基板上コンポーネント詳細
3.MSI X399 GAMING PRO CARBON ACへのパーツ組み込み(ギャラリー)
4.MSI X399 GAMING PRO CARBON ACの検証機材のセットアップ
5.MSI X399 GAMING PRO CARBON ACのBIOSについて
6.イルミネーション操作機能「MSI Mystic Light」について
7.MSI X399 GAMING PRO CARBON ACのOC設定について
8.MSI X399 GAMING PRO CARBON ACの動作検証・OC耐性
9.MSI X399 GAMING PRO CARBON ACのレビューまとめ
X399 GAMING PRO CARBON ACの外観・付属品
まず最初にMSI X399 GAMING PRO CARBON ACの外観と付属品をチェックしていきます。パッケージを開くと上段にはマザーボード本体が静電防止ビニールに入った状態で収められていました。マザーボードを取り出すと2重底になっており下段には各種付属品が入っています。
付属品一覧は次のようになっています。
マニュアルやドライバCDなど必要なものが一通り揃っています。ドライバ類についてはそろそろUSBメモリに移行して欲しいところ。
多言語マニュアルには日本語のページもありますが50ページほどで内容は多くありません。付属する多言語マニュアルとオンライン上で公開されているマニュアルの内容は同じでした。詳細について知りたい場合は英語のマニュアルを見てください。
マニュアル:http://download.msi.com/archive/mnu_exe/E7B09v1.0.zip
組み立てに関連する主要な付属品は専用の不織布の袋に入っています。
内容品はSATAケーブル4本、SLI HBブリッジ、3D X-MOUNTINGスクリュー(3Dプリンタパーツ固定用のネジ)、リアI/Oパネル、汎用4PIN LED用Y字分岐延長ケーブル、エンブレムシールです。
リアI/Oシールドは表面はマットなブラックのカラーリングになっています。ただCARBONシリーズなのにリアI/Oパネルがカーボン調イラストではなくアクセントカラーがレッドなのは気になるところ。また裏面のマザーボードと接する部分はスポンジが入っていました。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACには汎用LED 4PINヘッダーは基板上に1基しか実装されていませんが、付属のケーブルが2分岐ケーブルなので2つのLEDイルミネーションパーツを接続可能です。
SLIブリッジについてはGTX 10XXシリーズの広帯域SLI接続に対応したSLI HBブリッジが17年以降発売のマザーボードの一部からは付属するようになっており、MSI X399 GAMING PRO CARBON ACにもMSIゲーミングシリーズのドラゴンのロゴが描かれた2スロットスペース型SLI HBブリッジが付属しています。
同社から発売されている「MSI SLI HB BRIDGE L (4SLOT)」がマザーボードのデザインと非常にマッチするのでおすすめです。ただし赤色。
小分けのパッケージ内にはシルバーとゴールドの交換用カバーが入っていました。MSI X399 GAMING PRO CARBON ACではデフォルトでカーボン調のプレートが着脱可能になっており、付属の交換用カバーや3Dプリントで作成したオリジナルカバーに交換ができます。
Intel製無線コントローラー「8265NGW」を搭載したWiFi&Bluetooth拡張PCI-Eカードも付属します。
またオーバークロック向けの付属品として、マザーボード固定ネジ穴を流用したスポットファンマウンタ「OC Fan Stand」が付属します。
使い方についてはマニュアルを読んでもらうと一番わかりやすいと思います。
スポットクーラーのマウンタとしてアイデアは面白いのですが、「VRM電源周りを狙ってファンを設置できない」、「1段目PCI-Eスロットに大型グラフィックボードを搭載すると干渉する」など実際に使うとなると問題点がいくつか浮上するのであまり実用性はないというのが正直な感想です。
マザーボード全体像は次のようになっています。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACはATXフォームファクタのマザーボードです。ゲーミングマザーボードながら赤色を廃して黒一色のカラーリングです。
マザーボード右下のチップセット用ヒートシンクについては素材はマットなブラック塗装の金属で、中央のプレートはグロッシーな表面、製品名のCARBONの通りカーボンパターンが描かれ、MSIのブランドネームが刻印されています。
リアI/Oカバーもブラックの枠、シルバーのライン、グロッシーなカーボン調パターンプレートとなっておりマザーボード全体として統一感のあるデザインです。これまでMSI Carbonシリーズはメタリック?なカーボンパターンでしたが、MSI X399 GAMING PRO CARBON ACでは艶のあるグロッシーな表面になっているとことが特徴的です。VRM電源ヒートシンクは背が高く放熱フィンが備わった大型のヒートシンクになっています。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACには10+3フェーズのVRM電源が実装されています。従来製品より電力効率を30%改善した「TITANIUM CHOKE IIコイル」、低温で稼働し高い電力効率と安定性を実現する「DARK CHOKE」、低ESR(等価直列抵抗)と10年以上の寿命を実現した「DARK CAP」など高品質コンポーネントを採用し軍事規格「ミリタリークラス6」に準拠した業界トップクラスの品質を誇っています。
多コア&高クロックCPUへ安定した大電力供給が行えるように「MSI X399 GAMING PRO CARBON AC」のEPS端子は8PIN×2が実装されています。EPS電源端子については電源容量800W以下の電源ユニットでは1つしか端子がない場合があるので、EPS端子が足りているか事前に注意して確認してください。
リアI/Oには最新のUSB3.1規格に対応したUSB端子としてLAN端子の下にType-AとType-Cの2端子が設置されています。そのほかのUSB端子についてはUSB3.0端子が8基とUSB2.0端子が2基搭載されています。マウス・キーボードなどの周辺機器を多数繋いでいても、HTC ViveやOculus Rift CV1のようなVR HMDに十分対応可能です。ただUSB3.0/3.1は無線マウスと電波干渉を起こすことがあるのでUSB2.0は少し離れた場所に設置して欲しかったです。加えてゲーマーには嬉しいPS/2端子も搭載されています。
有線LANには低CPU負荷、高スループットで定評のあるIntel純正のLANコントローラーが採用されています。
またリアI/Oには「BIOS FLASHBACK+」ボタンが設置されており所定のUSB端子にBIOSファイルの入ったUSBメモリを接続してボタンを押すと「BIOS FLASHBACK+」機能によってCPUやメモリなしの状態でもBIOSの修復・アップデートが可能です。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACのリアI/Oには無線LANモジュールは標準では搭載されていませんが、付属のPCI-E拡張カードを使用することでWiFi&Bluetoothの無線機能を増設可能です。接続規格としてはWi-Fi 802.11 a/b/g/n/ac、2.4/5GHzデュアルバンド、Bluetooth 4.2に対応しています。
拡張カードとマザーボードはPCI-Eスロット以外に内部USBケーブルでも接続されていますが、WiFiのみの使用でBluetoothを使用しないのであれば内部USBケーブルの接続は必要ありません。WiFiはWindows10の標準ドライバで動作しましたがBluetoothは別途ドライバのインスールが必要になるようです。
重量計を使用して重さを測定してみたところ、MSI X399 GAMING PRO CARBON ACは1266gでした。同じくATXサイズX299マザーボードのMSI X299 GAMING PRO CARBON ACは1156g、MSI X299 GAMING M7 ACKは1148gなので大型ヒートシンクなど豪華な構成になった分だけ重量は増えています。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACの基板上コンポーネント詳細
続いて「MSI X399 GAMING PRO CARBON AC」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。システムメモリ用のDDR4メモリスロットはCPUソケット両側に8基のスロットが設置されています。
固定時のツメはマザーボード上側の片側ラッチとなっています。グラフィックカードのあるPCI-Eスロット側はラッチがないので干渉の心配もありません。
DDR4メモリスロットには外部ノイズEMIから保護するための金属シールド「DDR4 Steel Armor」が実装されており、DDR4 BOOSTというMSI独自の基板配線の最適化技術と組み合わせて、より安定したメモリのオーバークロック環境を実現しています。
メモリモジュール数ごとの推奨されるメモリスロットのレイアウトが変わるので下記の表に従ってメモリを装着してください。
グラフィックボードなどを設置するPCI-Eスロットは上から[x16、x1、x16、N/A、x16、x1、x16]サイズのスロットが設置されています。プライマリGPUは1段目のスロットなので大型のハイエンド空冷クーラーを使用する場合はグラフィックボードとCPUクーラーの干渉に注意が必要です。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACにおいて各PCI-Eスロットのレーン配分は下の図の通りで固定されており、PCI-Eレーンの排他利用や共有などはありません。
グラフィックボード向けのx16スロットは1段目、5段目のスロットに配置されており、現在主流な2スロット占有グラフィックボードを使用しても下位グラフィックボードが上位グラフィックボードのエアフローを妨げないよう配慮されています。付属もしくは別売りの2スロットスペース型SLI HBブリッジを使用すれば、NVIDIAの最新GPUであるGTX 1080 Ti、GTX 1080、GTX 1070を使用したマルチGPU SLI環境を構築可能です。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACにも最近のトレンドとしてすべてのx16サイズスロット1Kgを超える重量級グラボの重さに耐えるように補強用メタルアーマー搭載スロット「MSI PCI Express Steel Armor slots」が採用されています。半田付けによる固定を強化したことで従来よりも4倍も頑丈になっており、PCI-Eスロットをシールドで覆うことによって外部ノイズEMIから保護する役割も果たします。
1段目のPCI-Eスロット上にはグラフィックボードなどPCI-Eスロットに設置した拡張カードへ安定した電力供給を行うための追加電源としてグラフィックボード補助電源のPCI-E 6PINと同じコネクタのオプション電源端子が用意されています。オプション扱いですがマルチGPU構成で組む場合は接続したほうがよさそうです。
SATAストレージ用の端子はマザーボード右下に8基搭載されています。SATA3_1~8はいずれもAMD X399チップセットのコントローラーによる接続で、RAID0/1/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACには高速NVMe接続規格に対応したM.2スロットがPCI-Eスロット間に3基設置されています。3基のM.2スロットはいずれもNVMe(PCI-E3.0x4)とSATA接続の両方のM.2 SSDに対応しており排他利用はありません。
3基のM.2スロットにはMSI独自のSSDヒートシンク「M.2 Shield」が設置されており、同ヒートシンクを使用することで、グラフィックボードなど発熱から保護し、M.2 SSDがむき出しの状態よりもサーマルスロットリングの発生を遅くする効果が見込まれます。
マザーボード右下には最新USB3.1対応内部ヘッダーが実装されています。またSATA端子の隣にはマザーボード基板と平行に内部USB3.0ヘッダーも2基設置されています。
2つの内部USB3.0ヘッダーのうちSATA端子に近い方はMSIの独自機能である「MSI SUPER CHARGER」に対応しており専用アプリケーションをWindows上で専用アプリをインストールすることによってシステムがスリープ/休止状態であってもスマートフォンなどの急速充電に対応したUSBポートとして使用可能になります。
USB2.0の内部ヘッダーも2基ずつマザーボード下に設置されています。CorsairLinkやNZXT CAM対応製品など内部USB2.0を使用する機器も増えていますが、MSI X399 GAMING PRO CARBON ACであればそれらの機器も問題なく使用可能です。
1ゲーミングマザーボードということでMSI独自の高音質オンボードサウンド機能を従来機種よりもさらに強化した「AUDIO BOOST 4」も採用されています。日本ケミコン製のオーディオコンデンサを採用し、オーディオパートはマザーボードから物理的に分離され、左右のオーディオチャンネルがレイヤー分けされることでクリアな音質を実現します。インピーダンス最大600オームまで対応可能な高出力DACで高音質ヘッドホンも使用可能です。FPSゲームなどで足音や銃声をゲーム内にOSD表示で可視化する「NAHIMIC Sound Technology」も使用できます。
ケーブルが長くならざるを得ないVR HMDの接続ケーブルではパフォーマンスに大きな影響を与える信号損失が発生しやすいため、MSIではUSBリピーターチップ「VR BOOST」によって信号強度を高めてVR機器に最適化したUSBポートが設置されています。MSI X399 GAMING PRO CARBON ACではリアI/Oシールドにプリントがないので若干わかりにくいですが、「VR BOOST」対応USB端子は右下写真の2つです。
冷却ファンを接続するためのコネクタについてはPWM対応4PINファンコネクタとしてCPUファン端子、水冷ポンプ対応端子、ケースファン端子4基の計6基が搭載されています。これだけあれば360サイズなどの大型ラジエーターを複数基積んだハイエンド水冷構成を組んでもマザーボードのファン端子だけで余裕で運用可能です。水冷ポンプ対応の「PUMP_FAN1」端子は最大24W(12V、2A)の出力にも対応しているので本格水冷向けのD5やDDCポンプの電源としても変換ケーブルを噛ませることで使用できます。
MSIのファンコントロール機能にはソース温度の乱高下を無視してスムーズなファン回転数変化を実現するヒステリシス機能も備わっています。
MSIのLEDイルミネーション同期調整機能「MSI Mystic light」による操作に対応した汎用4PIN LEDヘッダーがマザーボードの左下に設置されています。当サイトでもレビュー記事を掲載しているLEDテープ「SilverStone SST-LS02」やLEDファングリル「SilverStone FG121 / FG141」などが接続可能です。なおMSI X399 GAMING PRO CARBON ACには「5050」と「3528」という汎用LED機器の規格に対応したヘッダーがそれぞれ用意されていますが、基本的に「5050」のヘッダーを使用してください。
またマザーボード右下にはOCerのみならず一般自作erにとっても組み立て中の動作確認に便利なオンボードとスタートスイッチとリセットスイッチが実装されています。POSTエラーのチェックができるDebug Code LEDも設置されています。リアパネルにはCMOSクリアのハードウェアスイッチも設置されているのでオーバークロック設定を失敗しても簡単に初期化が可能です。
リセットスイッチの隣にあるダイヤルボタン「GAME BOOST Knob」はスイッチを入れてダイヤルを回すことでマザーボードに収録された7段階のオーバークロックプロファイルを簡単に適用することができます。ただ個人的には各自でBIOSからOC設定をするほうがおすすめなので余計な?お世話的な機能のようにも感じます。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACのボタン電池はマザーボード上のソケットではなく専用の小型PINを使用したケーブルで接続されてリアI/Oカバーの下に貼りつけられています。アクセス自体は容易ですが互換品の入手的にユーザーによるボタン電池の交換は基本的に無理なので若干注意が必要です。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACへのパーツ組み込み
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACにDDR4メモリとCPUクーラーを設置してみました。内容的には写真のギャラリーだけになっています。DDR4メモリには「G.Skill Trident Z F4-3866C18Q-32GTZR」(レビュー記事)、CPUクーラーにはNZXT KRAKEN X62(レビュー)を使用しています。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACの検証機材
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACを使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。MSI X399 GAMING PRO CARBON AC以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | AMD Ryzen Threadripper 1950X 16コア32スレッド 定格全コア同時3.6GHz (レビュー) |
CPUクーラー | NZXT KRAKEN X62 280サイズ簡易水冷 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z RGB F4-3866C18Q-32GTZR DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) |
CPUベンチ用 ビデオカード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung 850 PRO 256GB (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair RM650i (レビュー) |
MD Ryzen ThreadripperのTR4 Socketに対応する280サイズラジエーター採用で最高クラスの冷却性能を誇る簡易水冷CPUクーラー「NZXT KRAKEN X62」をNZXTの国内正規代理店タイムリー社よりAMD Ryzen Threadripper CPUやX399チップセット搭載TR4マザーボードをお借りして検証機材として使用しています。個別レビュー記事も公開中です。
・最も美しい簡易水冷CPUクーラー「NZXT KRAKEN X62」をレビュー
なお「NZXR KRAKEN X62」については水冷チューブがメモリスロットと干渉してしまうので規定の向きではメモリ8枚刺しができません。メモリ4枚刺しであれば問題ありませんが予めご注意ください。
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
以上で検証機材のセットアップが完了となります。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACのBIOSについて
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACを使用した検証機の構築も完了したので動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。(OSから日付調整する前にスクショを取っている場合、日付がおかしいですが無視してください。また内容的に差異のないものは過去の同社製マザーボードのBIOSスクリーンショットを流用しています。)
BIOSに最初にアクセスするとイージーモードというグラフィカルな画面が表示されます。パッと見の見栄えは良いのですが詳細モードでないと詳細設定ができないので「F7」キーを押してサクッと詳細モード移るのがおすすめです。右上には表示言語変更のプルダウンメニューがあります。MSIマザーボードはASUSの次くらいにしっかりとローカライズされているので日本語UIも使いやすいと思います。
MSIのBIOS詳細モードでは「SETTING」「OC」「M-FLASH」「OC PROFILE」「HARDWARE」「BOARD EXPLORER」の6つのアイコンを選択することで中央のイラスト部分や画面全体に詳細設定項目が表示されるという構造になっています。キーボード操作も可能ですがマウス操作を重視したUIです。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACのBIOSにおいて設定の保存とBIOSからの退出は「SETTING」アイコンの「保存して終了」の項目内に存在します。ASUS、ASRock、GIGABYTEなどと違ってカーソルキーのみの移動で設定保存と退出関連の項目にサクッと移動できないのが少し不便に感じます。起動デバイスを指定して再起動をかける「Boot Override」機能があるのは使い勝手が良くて好印象です。
今回の個体については初期のBIOSバージョンは「120」で、公式ページでこれより新しいBIOS「150」が公開されているのでアップデートを行いました。
BIOSのアップデート方法は、まず下から最新のBIOSファイルをダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
サポート:https://jp.msi.com/Motherboard/support/X399-GAMING-PRO-CARBON-AC.html#down-bios
USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、詳細モード左下の「M-FLASH」を選択します。「M-FLASH」モードはBIOSとは完全に別で用意されており再起動するか尋ねられるので再起動します。ただし手動でOCを行っている場合は「M-FLASH」を選択しても一度設定をデフォルトに戻して再起動がかかるので、再度BIOSに入って「M-FLASH」を選択する必要があるようです。
再起動して「M-FLASH」に入ったら下のようにUSBメモリ内のBIOSファイルを選択してアップデートを実行すればBIOSのアップデートが完了します。なおBIOSアップデート後は自動でBIOSへ入らないので注意してください。アップデート後はOC設定なども初期化されてしまうので初回は自動でBIOSに入って欲しいです。
BIOSのアップデートまでの手順を動画で撮影しました。
ブートとOSインストール周りについて紹介します。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACのブートデバイス関連の設定は「SETTING」アイコンの「ブート」という項目にまとめられています。
「Boot mode select」はデフォルトでは「UEFI&Legacy」になっていますが、Windows10ユーザーは基本的にUEFIしか使用しないのでUEFIに固定してしまうのがおすすめです。
起動デバイスの優先順位は「FIXED BPPT ORDER Priorities」という項目で、ハードディスクやDVDドライブなど大別した優先順位が設定可能となっており、その下にある「〇〇 Drive BBS Priorities」で同じ種類のデバイスについて個別の起動優先順位の設定を行えます。
一般的にはWindows OSの入った「UEFI:HardDisk:Windows Boot Manager(〇〇)」を最上位に設定して、その他の起動デバイスは無効化しておけばOKです。
Windows 10 OSのインストール手順(BIOSにおける設定)についても簡単に紹介しておきます。
Windows 10のOSインストールメディア(USBメモリ)については「FIXED BPPT ORDER Priorities」では「UEFI USB Key:UEFI: 〇〇」という名前になります。「UEFI USB Key:UEFI: 〇〇」を起動優先順位の最上位に設定してください。ちなみにWindows10の製品パッケージに付属するUSBメモリではUEFIで認識できないトラブルが発生することがあるようなのでそういうときはこちらの記事に従ってMS公式ツールを使用して適当なUSBメモリでOSインストールメディアを作成すると上手くいきます。
起動優先順位でインストールメディアを最上位に設定したら設定を変更してBIOSから退出します。ただMSI X399 GAMING PRO CARBON ACはブートデバイスを指定できるBoot Overrideを使用できるので直接OSインストールメディアを起動デバイスとして指定して再起動してもOKです。
BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、MSI X399 GAMING PRO CARBON ACのBIOS機能で管理人が気になったものをいくつかチェックしていきます。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACのファンコントロールや各種コンポーネント温度のハードウェアモニタリングはトップメニューの「HARDWARE」アイコンからアクセスできます。
「MSI X399 GAMING PRO CARBON AC」のファンコン機能は下のスクリーンショットのようにグラフィカルUIによる設定のみで他社製品のようなコンソールで値を打ち込むようなメニューは存在しません。またファンコンカーブの設定にはマウス操作が必須です。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACではファンコントロールのソースとして使用できるモニタリング温度は「CPU」「System」の2つのみでした。MSI X399 GAMING PRO CARBON ACは非対応ですが、MSIのX399マザーボードの一部では外部温度センサーにも対応しているのでCarbonクラスでも対応して欲しいところ。
MSI製マザーボードのファンコントロール機能はグラフィカルUIでわかりやすく設定できるよ、という機能になっています。直感的にわかりますし直打ちが苦手な人にはありがたい機能だと思います。ただ個人的にはコンソール直打ちが好きなので管理人がMSIマザボを敬遠してしまう理由の1つです。
あと細かいところですがBIOS内のスクリーンショットをF12キーで撮影できますがスクリーンショットファイルの名前がタイムスタンプではなく保存するUSBメモリのルートに存在するファイルで重複しない連番なのが少し使い難かったです。間違って上書き保存してしまうことがあるのでタイムスタンプにして欲しいです。
イルミネーション操作機能「MSI Mystic Light」について
MSI製のマザーボードにもマザーボード備え付けのLEDイルミネーションやRGB対応汎用4PINイルミネーション機器に対応したイルミネーション操作機能「MSI Mystic Light」が用意されています。MSI X399 GAMING PRO CARBON ACではマザーボードのカラーリングを黒一色にする代わりに「MSI Mystic Light」というLEDイルミネーション操作機能で飾るコンセプトになっています。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACでは大きく分けて、リアI/Oカバー&オンボードサウンド、チップセットクーラー、マザーボード右下裏の3か所にLEDイルミネーションが実装されています。
MSIのLEDイルミネーション同期調整機能「MSI Mystic light」による操作に対応した汎用4PIN LEDヘッダーがマザーボードの左下に設置されています。当サイトでもレビュー記事を掲載してるLEDテープ「SilverStone SST-LS02」やLEDファングリル「SilverStone FG121 / FG141」などが接続可能です。なおMSI X399 GAMING PRO CARBON ACには「5050」と「3528」という汎用LED機器の規格に対応したヘッダーがそれぞれ用意されていますが、基本的に「5050」のヘッダーを使用してください。
MSI Mystic Lightに対応する機器についてはMSIの公式ページで一覧が公開されています。
MSI Mystic Light対応機器:https://jp.msi.com/Landing/mystic-light-motherboard#mystic
当サイトでレビュー記事を公開中のCorsair製DDR4 OCメモリ「Corsair VENGEANCE RGB」もMSI Mystic Lightによるイルミネーション同期設定にも対応しています。
・「Corsair VENGEANCE RGB」DDR4 OCメモリをレビュー
イルミネーション操作機能「MSI Mystic Light」はこれまで「MSI Gaming APP」というアプリケーションランチャーソフトに統合されていましたが、「MSI X399 GAMING PRO CARBON AC」では単独のアプリケーションとして配布されており、使い勝手が良くなっていました。
「MSI Mystic Light」のトップメニューでは緑線で囲った部分をプルダウンメニューから「All Sync」に設定するとマザーボードだけでなく、その他にも接続されているMSI Mystic Light対応機器の同期設定が行えます。青で囲った部分から発光カラーやパターンを設定でき、下にある7つの菱形をクリックすると左下のカラーパレットが表示され、クリックした菱形に対してパレットからカラーを選択して保存しておけます。
マザーボードやMSI Mystic Light対応機器へ個別に設定を行う場合は、同期設定に関するプルダウンメニューから個別設定の「Individual」を選択し、その下にあるDevice Settingにマザーボードアイコンが表示されている状態で「Setting」のボタンをクリックします。
上の手順でマザーボード上のLEDイルミネーションに対する個別設定ウィンドウが表示されます。
マザーボードのプレビューイメージの左上にある「Sync ALL」のチェックボックスをチェックするとマザーボード上のLEDイルミネーションの同期設定を行えます。マザーボード備え付けLEDイルミネーションに対して個別に発光カラーを設定する場合は「Sync ALL」のチェックを外して、「LED AREA」のプルダウンメニューから設定したい箇所を選択します。
ウィンドウ下側にあるプルダウンメニューから発光パターンが設定できます。発光カラーについてもカラーパレットやプリセットカラーは上で紹介した同期設定と同様に設定を行えます。
下のようにマザーボード備え付けのLEDイルミネーションや汎用4PIN LED端子に接続可能なLED機器はMSI Mystic Lightから個別に発光カラー・パターンの制御が可能です。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACのOC設定について
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACを使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
AMD Ryzen Threadripper CPUについては純正のOCツール「AMD Ryzen Masterユーティリティ」が用意されていますが、こちらの使い方については下の記事を参考にしてください。
・AMD Ryzen専用純正OCツール「AMD Ryzen Masterユーティリティ」の使い方
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACではオーバークロック関連の設定項目はトップメニューの「OC」アイコンに各種設定がまとめられています。下にスクロールしていくと概ね「コアクロック→メモリ→電圧」の順番で並んでいます。設定値を直接入力する項目でデフォルトの「Auto」に戻す場合は「a」キーを入力すればOKです。
OCメニューのトップには「OC Explore Mode」という項目があり一般的なOC設定の可能な「Normal」に加えて、一部の高度なOC設定項目を解除できる「Expert」モードがあります。基本的なOC設定は「Normal」モードでも十分行えるので初心者は無理せず「Normal」モード推奨です。
CPUコアクロック(コア倍率)の変更について説明します。
コアクロックはコア数に対して各コアに最大動作クロック(BCLKに対する倍率)を指定できます。「コア0:コア1:コア2:コア3」を倍率として、例えば「45:43:43:42」のようにバラバラに指定した場合、4つのコアのうち1つに負荷が掛かる場合は4コアのうち1つが45倍動作、2つと3つの場合は43、4つの場合は42となります。そしてベースクロック(BCLK)は通常100MHzなので動作倍率40倍であればコアクロックは4.0GHzとなります。
AMD Ryzen Threadripper CPUについても定格では同様に、例えばRyzen Threadripper 1950Xでは冷却性能依存の自動OC機能「XFR」の影響で若干前後しますが、単コア負荷の場合は4.2GHz、全コア負荷の場合はTDPの範囲内で変動しますが軽いワークロードであれば全コア4.0GHzで動作し、動画のエンコードなど重いワークロードでは平均3.5~3.6GHz程度で動作します。
Ryzen ThreadripperのCPUコアクロックに関してBIOSから行う基本的なOC設定や専用ユーティリティー「Ryzen Master」によるOC設定では、単一の「P-State」を設定して固定コアクロックかつ固定電圧でOC設定としていますが、Ryzen CPUでは本来、複数の「P-State」が設定可能です。
アイドル時のP-State0、低負荷時のP-State1、高負荷時のP-State2のように負荷に応じてP-State(コアクロックと電圧の組み合わせ)という状態を遷移できます。例えばRyzen Threadripperの定格動作ではCPUごとにデフォルトで設定されたP-Stateに従って動作しているので可変コアクロックかつ可変電圧になっています。
固定最大コアクロック&固定電圧によるOCに比べて、複数のP-Stateを設定する方法は難易度が高いですが、一部のコアのみより高いクロックで動作させるなど細かい設定が可能になります。とはいえやはり複数のP-Stateを設定する方法は難易度が高い設定になるので、簡単な単一P-Stateで固定最大倍率&固定電圧のOCがおすすめです。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACのコアクロックのOC設定方法はコアクロック(MHz)の動作倍率を指定する形になっていました。「CPU Ratio」の項目を「40.25」と設定するとベースクロック(BCLK):100MHzに対して4025MHzで動作するように設定されます。動作倍率は0.25刻みで指定可能です。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACにはBIOS:150においてベースクロックの変更が可能な設定項目は用意されていませんでした。
AMD CPUのマルチスレッディング機能である「SMT: サイマルテイニアス マルチスレッディング(Simultaneous multithreading)」の有効・無効をBIOS上から設定可能です。設定箇所はOCトップメニューの最下にある「CPUの機能」という項目の下位に置かれています。
続いてコア電圧の調整を行います。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACではOCの項目で下にスクロールしていくと、各種電圧設定項目が表示されますが、AMD Ryzen Threadripper CPUの手動OCに関連する電圧設定については基本的に「CPU Core電圧」「CPU SOC電圧」「DRAM電圧」の3項目のみに注目すればOKです。
CPUコアクロックのOCに関連する電圧設定としては、MSI X370 XPOWER GAMING TITANIUMではCPUコア電圧(BIOS上ではCPU Core voltageと表記されています)の項目を変更します。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACではマニュアルの設定値を指定して入力する固定モードのみが使用できます。CPUコア電圧は0.0125V刻みでコア電圧の設定が可能です。電圧設定の目安としては1950Xの場合、全コア4.0GHzで1.300~1.400V程度となります。
CPUコア電圧モードについて簡単に説明すると、オフセットモードやアダプティブモードはCPU負荷に比例して電圧が設定されており、低負荷時は電圧が下がるので省電力に優れるのですが、OCをする場合はマザーボードによって挙動に差があり安定する設定を見極めるのが難しいので、個人的にはオフセットやアダプティブは定格向け、OCには固定値適用の固定モードを推奨しています。
仮にOCでオフセットやアダプティブを使う場合も最初はコアクロックに対して安定する電圧を見極める必要があるので、まずは固定モードを使用します。
ちなみにマザーボードにより対応しているモードは異なりますが、CPUのオーバークロックに付随するコア電圧のモードの概略図は次のようになっています。
またコアクロックを高く設定する時に追加で変更するといい電圧設定項目として「DigitALL power」がCPUコア電圧の設定欄の直上にあります。
「DigitALL power」内の設定項目の中でCPU負荷時の電圧降下を補正してOCを安定させる「CPUロードラインキャリブレーション」はMode1~Mode8まで設定可能となっており、添え字の数字が小さくなるほど補正が強くなります。小さくするほどOCの安定性は増しますがCPUの発熱も大きくなるのでMode3あたりを最初に使っておいて、ストレステストのCPU温度をチェックしながらモードを上げていくのがおすすめです。
あと「MSI X399 GAMING PRO CARBON AC」では複数のP-State(Custom P-State)の個別設定も可能です。設定項目は若干わかりにくい場所にに配置されており、トップメニューアイコン「SETTING」の「拡張設定」から「AMD CBS」「Zen Common Options」と下っていきます。
まず最初に「OC Mode」の項目を「Customized」に変更します。
「OC Mode」の項目を変更した後、「Custom Pstates / Throttling」の項目を開くと複数のP-State(Custom P-State)の個別設定画面が表示されます。
Custom P-Stateでは「P-State X FID」「P-State X DID」「P-State X VID」の3種の設定値を各P-State Xに対して設定します。いずれの設定値も16進数(0~9、A~F)による設定で例えば、3a(16進数)=3*16+10=58(10進数)となります。
各P-State Xに対するコアクロックの設定は次のようになります。
コアクロック = BCLK(ベースクロック)*FID / DID * 2
つまり「FID / DID * 2」がコアクロックOC一般に言うコア倍率になります。例えば上のスクリーンショットでは「FID:88」「DID:8」なので10進数に戻してコア倍率を計算すると、34.00となりBCLK:100MHzに乗じて3400MHz動作となります。「Custom P-States X」の下にある「Frequency(MHz)」の横のテキストボックスにも3400と表示されています。似たようなコア倍率に対して「Core FID」と「Core DID」の組み合わせが複数存在する可能性がありますが、この組み合わせによるOC安定性に関する違いまではわからないので、そのあたりは各自で詰めてみてください。
各P-State Xに対するコア電圧は「P-State X VID」によって決まっており、同様に16進数による設定値入力で、0~FFの範囲内で設定可能です。「P-State X VID」の設定値に対してコア電圧は次のようになります。
コア電圧 = 1.55000V - 0.00625 * VID
例えばVID:3a(16進数)=58(10進数)の場合はコア電圧は1.18750Vとなります。
以上のような流れで最大コアクロックをP-State 0として順番に下がるように設定していきます。
メモリのオーバークロックについても簡単に紹介だけしておきます。
メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。
一方でXMPによるメモリOCは上の手順によるOCをメーカー側がすでに行い動作確認をしているので、メーカーが動作確認を行ったOCプロファイルを適用するだけで簡単にメモリをオーバークロックできます。
なおAMD Ryzen Threadripper環境ではメモリのオーバークロックに伴って、コアクロックOC時のコア電圧の要求値が上がるので注意してください。一例として1950XとASRock X399 Taichiの組み合わせで全コア4.0GHzのOCに関して、メモリ周波数2133MHzでは1.275Vで回った石でもメモリ周波数3466MHzにOCすると1.320V程度が安定動作に要求されました。
メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありませんが、「MSI X399 GAMING PRO CARBON AC」では正常にPOSTできないメモリOC設定でエラーが出た場合は数回再起動した後、自動で2133MHzのような緩い設定で起動してくれるのでメモリOCを安心して行えます。
メモリOCで有名なXMPプロファイルはIntelの策定した規格なのでAMD CPU&マザーボードの環境では非対応ですが、MSI X399 GAMING PRO CARBON ACなどの一部のMSIマザーボードでメモリに収録されたXMPプロファイルからRyzen環境でも使用可能なメモリOCプロファイルを自動生成する「A-XMP」という独自機能があります。
XMPを使用しない場合、「DRAM Frequency」がAutoでは多くのDDR4メモリで動作クロック2133~2666MHzでメモリごとに設定されたタイミングによる定格動作となります。手動でメモリ周波数を設定する場合は「DRAM Frequency」の項目でプルダウンメニューから最大4000MHzまでの動作クロック(倍率)設定が可能です。
メモリタイミングの個別打ち込み設定も可能です。メモリタイミングを手動で設定する場合は基本的には「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS Read (tRCDrd)」、「RAS to CAS Write (tRCDwr)」、「RAS Precharge (tRP)」、「RAS Active Time (tRAS)」の主要な5タイミングと、加えて「Command Rate:1 or 2」の6つ以外はAutoのままでいいと思います。
メモリ周波数を3200MHz以上にOCする場合は「GearDownMode」をEnabledに設定すると動作が安定するかもしれないので、Autoで上手くいかない場合は設定を変更してみてください。
メモリタイミングの下の方にある「ProcODT」という設定値がAutoのままではPOSTがクリアできない場合があります。AutoでPOSTをクリアできない、もしくは起動後に安定しない場合は「ProcODT」を43.6~68.6の間で固定して安定するものを探してみてください
DDR4メモリの周波数OCを行う際は「DRAM CH AB/CD Voltage」の項目を、3000MHz以上にOCする場合は1.300~1.350V、3800MHz以上にOCする場合は1.370~1.400Vに上げる必要があります。メモリをOCする場合は最初から1.350V以上にDRAM電圧を盛っておくのがおすすめです。
加えてAMD Ryzen Threadripper CPUでメモリの動作クロックをOCする場合はDRAM電圧だけでなく「CPU SOC電圧(VDD SOC電圧)」も1.100V程度に盛ってやると動作が安定しやすいようです。
AMD Ryzen Threadripperにはメモリーアクセスモードとして「Distributed / Local」の2つのモードが用意されていますが、「MSI X399 GAMING PRO CARBON AC」では専用アプリ「AMD Ryzen Master」を使用せずBIOSからメモリーアクセスモードの変更を行うことが可能です。
メモリタイミング設定画面の「Misc Item」(もしくは「Settingー拡張設定ーAMD CBSーDF Common Options」)にある「Memory interleaving」の項目がメモリーアクセスモードの設定に該当しています。「Memory interleaving」の設定値は次のようになっています。
Die : Distributed : UMAモード
Channel : Local : NUMAモード
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACの動作検証・OC耐性
BIOS周りの管理人的に気になるところの紹介はこのあたりにしてMSI X399 GAMING PRO CARBON ACを使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。まずはFast Bootとフルスクリーンロゴを無効(BIOS設定)にしてOSの起動時間を測定したところ、MSI X399 GAMING PRO CARBON ACの起動時間は27秒ほどした。多機能なエンスー向けマザーボードの起動時間としては遅いというほどではありませんが、POST時間に少し時間がかかっている印象です。
続いてMSI X399 GAMING PRO CARBON ACを使用した場合のCPUとメモリのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
Ryzen Threadripper 1950XのOC設定は「CPUクロック倍率:40」「CPUコア電圧:1.3375V」「ロードラインキャリブレーション: Mode3」「メモリ周波数:3200MHz」「メモリ電圧:1.350V」「メモリタイミング:14-14-14-34-CR1」としています。
上の設定を適用したところ問題なくOSを起動させることができました。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACの環境(BIOS:150)でメモリ周波数を3200MHzにOCしてメモリタイミング:14-14-14-34-CR1に詰めることができました。
以下、検証機材メモリとの相性があまり良くない可能性もあると念頭に置いた上で、MSI X399 GAMING PRO CARBON ACのメモリOC耐性に関する報告として聞いていただきたいのですが、メモリOCの検証機材としてG.Skill Trident Z RGB F4-3866C18Q-32GTZRを使用しており、AMD Ryzen Threadripper環境で3466MHzで安定動作、3600MHzでの起動なども確認できているメモリですが、「MSI X399 GAMING PRO CARBON AC」の環境では3466MHzではPOSTが安定せず、3600MHzについては起動も確認するのが難しいという具合でした。
3200MHzが14-14-14-34という比較的シビアなタイミングで安定動作したので、3466MHzに対して20-20-20-40くらいまで緩めるとMemTestなどでエラーが出るとしてもPOSTでランダムにこけるということはあまりないように思います。GearDowmModeの有効固定、ProcODTの指定、タイミングの微調整など試してみたのですが3466MHz以上においてPOSTを安定させることができませんでした。数回POSTエラーを繰り返して正常に起動する(エラー回数はランダム)ということもあるので、Auto設定にしている何かが悪さをしているのかもしれません。色々試してみた結果として、3466MHz以上で安定してPOSTクリアするのが難しいというのはBIOS:1.50におけるMSI X399 GAMING PRO CARBON ACの特徴のように感じました。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACは3200MHzについては14-14-14-34というシビアなタイミングで安定動作しているのでX399マザーボードとしては十分及第点だと思いますが、+αを求める上で今後のBIOSアップデートで3466MHz以上でも安定するように改善されていって欲しいと思います。
繰り返しますが、検証機材メモリ「G.Skill Trident Z RGB F4-3866C18Q-32GTZR」と単純に相性が良くない(他のマザーボードとは相性が良い)という可能性もあり、全てのメモリOCに当てはまらない可能性もあるので注意してください。
また「F4-4200C19Q2-64GTZKK(8GB*8, XMP4200MHz)」で8GB*8=64GBについて動作を確認してみたところ、2933MHzで安定動作となりました。3066MHzは起動するもののMemTestで不安定、3200MHzは起動も難しいといった感じでした。Samsung Bダイ 8GBの8枚組であれば2933MHzも難しくないと思います。
16コア32スレッド「AMD Ryzen Threadripper 1950X」のコアクロック4.0GHz、メモリ周波数3200MHz、メモリタイミング14-14-14-34-CR1でCinebenchも問題なくクリアできました。
続いてこのOC設定を使用してストレステストを実行しました。
検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間8分、WQHD解像度、60FPS、容量4.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はThreadripper 1950Xの場合10分ほどなので同じ動画のエンコードを2つ並列して2周実行しています。テスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
ストレステスト中のCPU温度とCPU使用率のログは次のようになりました。マザーボードにMSI X399 GAMING PRO CARBON ACを使用して「AMD Ryzen Threadripper 1950X」のコアクロック4.0GHz、メモリ周波数3200MHzにOCしてストレステストをクリアできました。CPUクーラーのファン回転数は1500RPMで固定しています。
スマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE」を使用してMSI X399 GAMING PRO CARBON ACのVRM電源温度をチェックしてみました。
まずは同マザーボードにおいてAMD Ryzen Threadripper 1950Xをデフォルト設定で負荷をかけてからVRM電源温度を測定してみました。定格では180W制限下で動作するため平均して全コア3.5~3.6GHz程度での動作となります。
デフォルト設定の動作でもEPS端子経由の消費電力は180W程度に達するので、簡易水冷CPUクーラーでVRM電源周りに風が直接当たらない場合、VRM電源温度は高温部分で80度半ばに達します。ソフトウェア読みでも80度半ばでした。すぐに破損に繋がるレベルの温度ではありませんが定格運用であっても可能であればスポットクーラーなどでVRM電源周りを冷やしたいところです。
続いてRyzen Threadripper 1950Xを上記のBIOS設定でOCした時の負荷テスト中の温度をチェックしていきます。同マザーボードに限った話ではありませんがRyzen Threadripper CPUで12コア以上のモデルをOCする場合はスポットクーラーを使用してVRM電源部分の冷却推奨です。ちなみにMSI X399 GAMING PRO CARBON AC環境でRyzen Threadripper 1950Xを4.0GHz、メモリ3200MHzまでOCするとシステム全体の消費電力が370~400Wに達します。
Ryzen Threadripper 1950Xを全コア4.0GHzにOCし、スポットクーラーとして120mmファンを1500RPMで回していますが、サーモグラフィー上ではVRM電源周りの温度は90度半ば、またソフトウェア読みのVRM電源温度は最大100度に達しました。メモリソケット左にある3フェーズについては50度前後なので、CPUソケット上の10フェーズがCPUへの電力供給のメインとなっているようです。
他社製品がVRM電源クーラーヒートシンクをヒートパイプによって連結する形で拡張している一方で、MSI X399 GAMING PRO CARBON ACは高さを増すことでヒートシンクの面積を稼いでいますが、やはりヒートパイプを使用する他社と比較してVRM電源クーラーのサイズが小さいこともあり、Ryzen Threadripper 1950Xで大幅なオーバークロックは若干注意が必要かもしれません。
ただX299 CARBONでi9 7900XをOCした際はスポットクーラーファンを1800RPMと今回よりも高く回していますが同程度の消費電力に対してVRM電源温度は70度前後に収まっていたのを考えると、MSI X399 GAMING PRO CARBON ACでは1950XのOCによって100度前後とかなり高めの温度になっているところは少々気になるところです。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACのレビューまとめ
最後に「MSI X399 GAMING PRO CARBON AC」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- ブラックメインにアクセントとしてグロッシーなカーボン調プレートが飾られたデザイン
- LEDイルミネーションでユーザーの好みに合わせてデコレーションできる
- 外部ノイズEMIから保護するための金属シールド「DDR4 Steel Armor」
- 重量級グラボにも耐えるメタルアーマー採用PCI-Eスロット「MSI PCI Express Steel Armor slots」
- 16コアRyzen TR 1950X 4.0GHz、メモリクロック3200MHz OCで安定動作
- VRM電源フェーズ数は10+3フェーズ
- MSI独自のSSDヒートシンク「M.2 Shield」が付いた高速NVMe接続のM.2スロットが3基設置
- スタート・リセットスイッチなど動作検証に便利なオンボードスイッチ
- NVIDIA GTX 10XXシリーズのマルチGPU用のSLI HBブリッジが付属する
- VRM電源クーラーが小さいので1950Xの定格でもスポットクーラーの使用を強く推奨
- ユーザーによるボタン電池の交換が行えない
- 欲を言えば外部温度センサーソースのファンコン機能が欲しいところ
- ベースクロックは100MHz固定でBCLKによるOCには非対応
AMD Ryzen Threadripper CPU対応X399マザーボード「MSI X399 GAMING PRO CARBON AC」はMSIのCARBONシリーズらしく、基本的な機能を手堅く揃えつつCPUコアとメモリともにOC耐性にも優れた高性能ゲーミングマザーボードとして仕上がっています。デザイン面では従来のメタリックなカーボン柄ではなく、グロッシーで艶のあるカーボンパターンを採用し、加えてゴールドやシルバーの交換用プレートや3Dプリンティングのオリジナルプレートに取り換えられたりと、マンネリを回避しつつ人を選ばないクールなデザインを維持しています。
BIOSデザインについては好みの問題かと思いますが、MSI X399 GAMING PRO CARBON ACではマウス&キーボード環境を想定したグラフィカルなUIが採用されており管理人的には少し使いづらいと感じてしまいました。個人的にMSIマザボを敬遠してしまう理由の1つではあるのですが、グラフィカルUIが好きなユーザーにとっては嬉しい仕様だとも思うので個々人の好みで評価は分かれるところです。
MSI X399 GAMING PRO CARBON ACを使用した検証機では16コア32スレッドのAMD Ryzen Threadripper 1950Xを全コア4.0GHzに、メモリ周波数も3200MHzにオーバークロックして負荷テストをクリアすることができました。
Ryzen Threadripper 1950Xと組み合わせて使用した場合、定格運用ではTDP180Wの制限内で動作するためCPU温度は240サイズ以上の簡易水冷CPUクーラーであればサーマルスロットリングの閾値となる実温度68度、Tctl95度以下での運用も難しくはありません。マザーボードのOC耐性についても上述の通り1950Xで全コア4.0GHzへのオーバークロック、メモリ周波数3200MHzでメモリタイミング14-14-14-34-CR1という比較的シビアなタイミングを達成しているのでOC耐性についても及第点は十分にクリアしていると思います。
OC検証のところでも詳しく説明しましたが、メモリ周波数が3466MHzを超えてくるとPOSTを安定してクリアするのが難しくなってくるようなので、この辺りは今後のBIOSアップデートに期待したいところです。
見逃せないところとしては、ヒートパイプによる連結でVRM電源クーラーヒートシンクを拡張している他社製品に比べて、MSI X399 GAMING PRO CARBON ACはVRM電源クーラーが小型である点は正直に言って少々残念でした。1950X定格のパッシブで80度半ば、全コア4.0GHzかつメモリ3466MHzにOCするとEPS経由の消費電力も400W近くなるためVRM電源の負荷も増大し、120サイズファンのスポットクーラーを1500RPMで回しても100度に達します。100度を超えたからすぐ壊れるというわけではありませんが、定格でもスポットクーラーの仕様を推奨、全コア4.0GHzのような常用限界に近いOCをする場合はサードパーティー性のモノブロック型水冷ブロックを使用するなどVRM電源の冷却を強化したいところです。
以上、「MSI X399 GAMING PRO CARBON AC」のレビューでした。
検証機材として使用している以下のパーツもおすすめです。
G.Skill Flare X F4-3200C14Q-32GFX Threadripper対応
G.Skill Trident Z RGB F4-3200C14Q-32GTZRX Threadripper対応
G.Skill
<PCショップアーク><PCワンズ><OCworks>
Ryzen Threadripperは従来のCPUに比べて非常に大きいヒートスプレッダが採用されているので、大型ベースコアを採用するThreadripper専用CPUクーラーもおすすめです。
Noctua NF-A12x25 PWM 120mmファン 定格2000RPM PWM対応
Noctua NF-A12x25 ULN 120mmファン 定格1200RPM PWM対応
Noctua
<米尼:PWM/FLX/ULN><TSUKUMO>
<PCショップアーク><オリオスペック>
Noctua NH-U14S TR4-SP3 - 140mm [Noctua正規代理店]
Noctua NH-U12S TR4-SP3 - 120mm [Noctua正規代理店]
Noctua NH-U9 TR4-SP3 - 92mm [Noctua正規代理店]
Noctua
<TSUKUMO:U14S/U12S/U9><PCワンズ>
関連記事
・X399チップセット搭載Socket TR4マザーボードのレビュー記事一覧へ・「AMD Ryzen Threadripper 2950X」をPBOで4.0GHzにOCレビュー
・「AMD Ryzen Threadripper 2990WX」を全コア4.0GHzにOCレビュー
・「G.Skill Trident Z RGB F4-3200C14Q-32GTZRX」をレビュー
・「G.Skill FLARE X F4-3200C14Q-32GFX」をレビュー
・Ryzen TR対応128GBメモリ「Corsair VENGEANCE LPX」をレビュー
・Ryzen Threadripper対応CPUクーラーのレビュー記事一覧へ
(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
スポンサードリンク
今検索した限りでもyahooショッピングやamazonで互換しそうなのが買えないことはないね
とはいえ電池ケース式に改造した方が楽ではある
まあそもそも最近は替える前に商品寿命の方が尽きる感じだしなあ