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ASRockのゲーミングブランド「Fatal1ty」シリーズからAMD Ryzen CPUに対応するMini-ITXマザーボードとしてリリースされたX370チップセットを搭載する上位モデル「ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/ac」のレビュー用サンプルをASRock社よりお借りできたのでレビューします。低CPU負荷かつ高スループットで定評のあるIntel製コントローラーを採用する有線LANに加えて、最高867Mbpsに達する802.11acに対応したIntel製無線LAN&Bluetoothモジュールを標準搭載するRyzen対応Mini-ITXマザーボードの決定版と言っても過言ではない製品です。
Fatal1ty X370 Gaming-ITX/ac
製品公式ページ:http://www.asrock.com/mb/AMD/Fatal1ty X370 Gaming-ITXac/index.jp.asp
マニュアル(英語):http://asrock.pc.cdn.bitgravity.com/Manual/Fatal1ty X370 Gaming-ITXac.pdf
Fatal1ty AB350 Gaming-ITX/ac
製品公式ページ:http://www.asrock.com/mb/AMD/Fatal1ty AB350 Gaming-ITXac/index.jp.asp
マニュアル(英語):http://asrock.pc.cdn.bitgravity.com/Manual/Fatal1ty AB350 Gaming-ITXac.pdf
X370とAB350の違いはチップセットの種類と無線LAN通信速度のみとなっています。Mini-ITXで実装可能なインターフェース数的にX370チップセットと350チップセットで差はほぼ出ないので、無線LAN速度(X370は最大867Mbps、AB350は最大433Mbps)のみと考えてOKです。
【注意事項】
検証中のトラブルなども記事内で記載していますが、Ryzen CPU自体が発売されたばかりなので、OSの問題なのか、マザボBIOSの問題なのか原因の切り分けが現状でできないものも少なくありません。今後ドライバやBIOSなどソフトウェアの更新でパフォーマンスや安定性が向上することは期待できると思うので、その辺りも念頭に置いて読んでもらえるとありがたいです。
同検証は17年9月上旬に行っておりASRock X370/B350 Gaming-ITX/acのBIOSはver3.00を使用しています。最新BIOSでは修正されている不具合や追加されている機能もあると思うので、最新BIOSのリリースについては公式ページを各自でチェックしてください。
サポート:http://www.asrock.com/mb/AMD/Fatal1ty X370 Gaming-ITXac/index.jp.asp#BIOS
なおASRockのAM4マザーボードの初期ロットではBIOSのアップデートが面倒な構造になっていたようですが、最新ロットでは「Instant FLASH」というBIOS上からのアップデートに対応しているので、簡単にBIOSのアップデートが可能です。
【17年9月10日:初稿】
レビュー記事初稿を公開、BIOSver3.00で検証
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/ac レビュー目次
1.ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acの外観・付属品
2.ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acの基板上コンポーネント詳細
3.ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acへのパーツ組み込み(ギャラリー)
4.ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acの検証機材セットアップ
5.ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acのBIOSについて
6.ASRock RGB LEDについて
7.ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acのOC設定について
8.ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acの動作検証・OC耐性
9.ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acのレビューまとめ
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acの外観・付属品
まず最初にASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acの外観と付属品をチェックしていきます。パッケージを開くと上段にはマザーボード本体が静電防止ビニールに入った状態で収められていました。マザーボードを取り出すと2重底になっており下段には各種付属品が入っています。
マニュアル類は、日本語のソフトウェアマニュアル、多言語の簡易マニュアル、ドライバCDが付属します。ドライバ類についてはそろそろUSBメモリに移行して欲しいところ。今回のサンプル機はレビュー用に本社から取り寄せたため日本語マニュアルがありませんが、国内で正規販売されているものについては日本語マニュアルが付属するとのことです。
多言語マニュアルには日本語のページもありますが、オンラインで公開されている日本語マニュアルのほうがページ数も多く詳細に説明されているのでオンラインマニュアルの参照を推奨します。
マニュアル:http://asrock.pc.cdn.bitgravity.com/Manual/Fatal1ty X370 Gaming-ITXac.pdf
組み立て関連の付属品はSATAケーブル4本、リアI/Oパネル、スクエア型WiFi&Bluetoothアンテナ、M.2 SSD固定ネジです。
リアI/Oシールドは表面はブラックと少しピンクっぽい色のカラーリングになっています。また裏面のマザーボードと接する部分にはスポンジなど緩衝材はありませんでした。
マザーボード全体像は次のようになっています。
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acはMini-ITXフォームファクタのマザーボードとなっており、ブラックのPCB基板を背景に赤色をアクセントカラーにしたヒートシンクとメモリスロットが採用されておりゲーミングマザーボードらしい配色になっています。ブラックのPCB基板は「高密度ガラス繊維PCB」が採用されており湿度による電気短絡を防ぎ安定動作を助ける効果があります。
マザーボード中央下のチップセット用ヒートシンクは単純な赤色ではなく若干オレンジ掛かった赤色になっており独特な色味です。ヒートシンク右下にはASRockのゲーミングブランド「ASRock Fatal1ty」のブランドロゴが削り出されています。
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acのVRM電源フェーズ数はMini-ITXサイズとしては頑張って8フェーズが実装されています。8コア16スレッドのRyzen 7を少なくとも定格運用可能なポテンシャルは備えています。従来比で飽和電流を最大3倍まで効果的に増加させるためマザーボードのVcore電圧を強化する「新世代プレミアムパワーチョークコイル」や低オン抵抗でCPU Vcore向けの電源をより効率的に供給できる「デュアルスタック MOSFET (DSM)」などでタフなOC耐性を実現します。リアI/O寄りにあるVRM電源部分にもチップセットと同色のヒートシンクが設置されています。
AMD Ryzenはメインストリーム向け最上位の8コア16スレッド「Ryzen 7」からエントリー向けの「Ryzen 3」まで共通のマザーボードとなるので、X370チップセット搭載の上位マザーボードではRyzen 7のOCにも耐えるようにCPU補助電源はEPS 8PIN+4PINを要求するものも少なくありませんが、ASRock X370 Gaming-ITX/acはMini-ITXフォームファクタということもあり要求されるのはEPSコネクタは8PINが1つです。
リアI/Oには最新のUSB3.1規格に対応したType-AとType-Cの2端子が設置されています。そのほかのUSB端子についてはUSB3.0端子2基とUSB2.0端子2基が搭載されています。マウス・キーボードなど各種周辺機器でも使用することを考えるとHTC Viveは問題なさそうですが、USB3.0端子を多く要求するOculus Riftの利用にはUSBハブを利用するなど工夫が必要になりそうです。USB3.0/1は無線マウスと電波干渉を起こすことがあるので少し離れた場所にUSB2.0が設置されている配慮が嬉しいです。ゲーマーには嬉しいPS/2端子も搭載されています。
内蔵グラフィック搭載CPU(APU)向けにHDMI端子が2基設置されています。HDMIのバージョンは両方とも1.4なので4K出力の場合は30FPSになる点に注意してください。
ネットワーク関連では低CPU負荷かつ高スループットで定評のあるIntel純正のLANコントローラーが採用された有線LAN端子が設置されています。ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acは小型PC向けMini-ITXマザーボードなので無線LAN&Bluetooth対応のモジュールがあるのも魅力的です。Wi-FiはIEEE802.11ac/n/a/g/b、Bluetoothはver4.2に対応しています。
付属のスクエア型アンテナと組み合わせることでコンパクトながら検出力の強い無線環境を簡単に構築できます。Windows10 OSであればOSに標準で収録されているドライバで動くので導入の手間もありません。
重量計を使用して重さを測定してみたところ、ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acは411gとなっており、ATXマザーボードのASRock Fatal1ty X370 Professional Gamingが958gなので重量も半分程度と非常に軽量です。
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acの基板上コンポーネント詳細
続いて「ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/ac」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。まずはシステムメモリ用のDDR4メモリスロットですが、CPUソケット右側に2基のスロットが設置されています。
固定時のツメはマザーボード上側(上写真の右側)の片側ラッチとなっています。グラフィックカードのあるPCI-Eスロット側はラッチがないので干渉の心配もありません。
Mini-ITXマザーボードでは稀にメモリスロットの間隔が狭くヒートシンク付きメモリでヒートシンク同士が干渉することがありますが、ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acではG.Skill Trident Zを装着しても1mmほどの余裕が残っていました。
グラフィックボードなどを設置するPCI-Eスロットはx16スロットが1基のみ実装されています。最近のトレンドとしてはグラフィックボード用のx16スロットには1Kgを超える重量級グラボの重さに耐えるよう補強用メタルアーマーも採用されています。
ASRockの「STEEL SLOT」はPCI-Eスロットの全体に金属アーマーを装着して、アーマー自体は四隅を半田付けで固定する構造になっています。
SATAストレージ用の端子は4基(SATA_0~3)搭載されています。SATAストレージはいずれもAMD X370チップセットコントローラーによる接続です。RAID0/1/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。
NVMe(PCI-E3.0x4)とSATA接続の両方のM.2 SSDに対応したM.2スロットがマザーボード裏面に1基搭載されています。
内部USB3.0端子はATX 24PIN端子とSATA端子に挟まれてマザーボード右端中央に配置されていました。Mini-ITXマザーボードの多くに言える見落としの多いポイントですが、右下の写真のようにCryorig C1などの大型トップフロークーラーと組み合わせる場合はメモリだけでなくUSB3.0ケーブルが干渉する場合もあるので注意が必要です。内部USB3.0ケーブルとCPUクーラーの干渉を避ける上で内部USB3.0ヘッダーはグラフィックボードと干渉しない範囲内で可能な限り下側に寄せて欲しいところ。
ボタン電池はマザーボード上のソケットではなく専用の小型PINを使用したケーブルで接続されているので、ユーザーによるボタン電池の交換は基本的に行うことはできません。
ASRock Fatal1ty Z270 Gaming-ITX/acはMini-ITXマザボながらオンボードサウンドに「Creative Sound Blaster Cinema 3」という高音質ソリューションが採用されオーディオ面でも充実しています。アナログ出力にはニチコン製オーディオ向けキャパシタやSN比120dBのDACなど高品質素子を採用、7.1チャンネル HDオーディオに対応しており、デジタル出力でもオーディオ用の外部アンプなどとの接続にも最適な光デジタル端子が設置されています。
メモリスロットのすぐ左にはRyzen CPUの一部モデルに付属するLEDイルミネーション対応Wraithクーラーを接続するための汎用4PIN LEDヘッダーが実装されています。またその隣にある「USB_5」ヘッダーは本来、Wraith Max CPUクーラーとの接続に使用するための端子ですが、ハード自体は普通の内部USBヘッダーなのでNZXT KrakenやCorsair H110iなどとの接続にも使用できます。
冷却ファンを接続するためのコネクタについてはPWM対応4PINファンコネクタがマザーボード上メモリスロット周辺にに3基設置されています。Mini-ITXマザーボードはファン端子が2基しかないものも多いので冷却を重視するユーザーには嬉しい数です。加えて3つのうち1つは最大出力18W(1.5A)の水冷ポンプにも対応した端子になっています。
Ryzen CPUのパフォーマンスにおいてはメモリの動作クロックも重要になりますが、メモリOCの設定段階ではPOSTにすらたどり着けずCMOSクリア(BIOS設定の初期化)が必要になる場合があります。ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acにはCMOSクリアのためのオンボードボタンは実装されておらず、マザーボード下部中央のジャンパーピンを使用してCMOSクリアを行います。ただし位置的にはグラフィックボードの下になるのでシステム組み込み後にCMOSクリアを行うのは難しい配置です。同社の他製品のようにリアI/OにCMOSクリア用スイッチを設置して欲しかったです。
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acへのパーツ組み込み
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acにDDR4メモリとCPUクーラーを設置してみました。内容的には写真のギャラリーだけになっています。DDR4メモリには「Kingston HyperX Fury DDR4」、CPUクーラーには「Wraith Max」(レビュー記事)を使用しています。
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acの検証機材
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acを使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/ac以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | AMD Ryzen 7 1800X (レビュー) |
CPUクーラー | Cryorig C1 (レビュー) & CRYORIG XF-140 |
メインメモリ | Kingston HyperX Fury DDR4 HX424C15FB2K2/16 DDR4 8GB*2=16GB (レビュー予定) |
CPUベンチ用 ビデオカード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
CFD SATA SSD 120GB |
OS | Windows10 64bit Home |
電源ユニット | Corsair RM650i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
検証機材のCPUにはAM4マザーボードで使用可能なAMD Ryzen CPUの最上位、8コア16スレッドの「Ryzen 7 1800X」を使用しています。
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acはMini-ITXサイズAM4マザーボードの中でも多めな8フェーズVRM電源を搭載していますが、Ryzen 7 1800XのOC検証には少々不安も残ったのでRM電源周りの冷却を補助するためにハイエンドトップフローCPUクーラー「Cryorig C1」を検証機材のCPUクーラーに使用しました。さらに冷却性能を補助するため25mm厚の140mm冷却ファン「CRYORIG XF-140」を組み合わせています。
・Cryorig C1用のRyzen対応AM4マウントパーツを使ってみた
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acにはCryorig C1を問題なく設置できました。
Mini-ITXサイズマザーボードはCPUクーラーを選ぶことが多いですが、Ryzen純正CPUクーラーの「Wraith Max」「Wraith Towor/Spire」やAM4マウント対応の高性能なロープロファイルCPUクーラー「Cryorig C7」と「Noctua NH-L9x65」もメモリやVRM電源ヒートシンクなどと干渉することなく設置できました。
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。熱伝導効率も高く、柔らかいグリスで塗布しやすいのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
以上で検証機材のセットアップが完了となります。
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acのBIOSについて
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acを使用した検証機の構築も完了したので動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。(OSから日付調整する前にスクショを取っている場合、日付がおかしいですが無視してください。また内容的に差異のないものは過去の同社製マザーボードのBIOSスクリーンショットを流用しています。)
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acのBIOSに最初にアクセスすると従来通りの文字ベースBIOSメニューが表示されます。画面右下の「English」と表記されたボタンから言語設定が可能です。
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acのBIOSについては多言語に対応しており、「Save Changes and Exit」が「変更がそして退出することを保存します」のように翻訳が怪しい部分はあるものの日本語にも対応しているので初心者ユーザーにも優しいBIOSだと思います。
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acのBIOSにおいて設定の保存とBIOSからの退出はトップメニュータブ最右端の「出口」から行えます。特定のブートデバイスを指定してBIOSから退出するBoot Override機能もあります。
レビュー用サンプルのBIOSバージョンは「2.10」でした。公式ページで最新版の「3.00」が公開されているので最新版にアップデートしました。初期のASRock製AM4マザーボードではBIOSのアップデートが面倒な構造になっていたようですが、17年5月以降は「Instant FLASH」というBIOS上からのアップデートに対応しているので、簡単にBIOSのアップデートが可能です。
BIOSのアップデート方法は、まず下から最新のBIOSファイルを公式DLページからダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
サポート:http://www.asrock.com/mb/AMD/Fatal1ty X370 Gaming-ITXac/index.jp.asp#BIOS
USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、トップメニュータブ「ツール」の「Instant FLASH」を選択します。「Instant FLASH」を選択すると自動でUSBメモリ内から総当たりでアップデートファイルを探索してくれます。探索方法は総当たりなのでファイルが多いと時間がかかるため、アップデート時はファイルの少ないUSBメモリを使用するのがおすすめです。
USBメモリからアップデートファイルが見つかると更新するかどうか尋ねられるので、更新を選択すればあとは自動でBIOSがアップデートされます。
ブートとOSインストール周りについて紹介します。とはいってもASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acのブート回りは下画像のように非常に簡潔にまとめられており初心者でも迷うことはないと思います。
OSのインストールも「起動順序 #1」に「UEFI 〇〇」というOSインストールメディアを設定して保存&退出でOKです。「UEFI 〇〇」をブートオーバーライドで指定しても同様にOSのインストールデバイスから起動可能です。
BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acのBIOS機能で管理人が気になったものをいくつかチェックしていきます。
アドバンスドのストレージ設定からはSATAストレージだけでなく、M.2スロットに接続されたSATA接続M.2 SSDやNVMe接続M.2 SSDの一覧が確認できます。
ファンコントロール機能について紹介します。
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acのファンコン機能は設置されている3つのファン端子を個別に「標準/サイレント/パフォーマンス/最大速度」の4種類のプリセット設定に加えて、個別に温度・ファン速度の比例カーブを指定できる「カスタマイズ」の5つのモードを使用できます。
「カスタマイズ」モードでは比例カーブを決める温度とファン速度を4つ指定できます。CPUファンはCPUソースで固定ですが、CPU_OPTとケースファン3基はソースとなるセンサーにCPU温度とマザーボード温度の2つから選択できます。外部温度センサーには非対応です。
各種モニターとファン端子コントロールの間に「Fan Tuning」と「Fan-Tasticチューニング」という項目があります。「Fan Tuning」はワンクリックで自動で接続された冷却ファンの動作を最適化してくれる機能です。「Fan-Tasticチューニング」はグラフィカルUIによるファンコントールの設定機能になっています。
機能的には上で紹介したコンソールのファンコンと同じで、グラフィカルUIでわかりやすく設定できるよという機能になっています。直感的にわかりますし直打ちが苦手な人にはありがたい機能だと思います。マウス操作重視のUIですがキーボードからもカーソルキーでフルコントロール可能です。
ASRock RGB LEDについて
ASRockでもAMD AM4マザーボードやIntel 200シリーズマザーボードから備え付けのLEDイルミネーションや4PIN RGB LEDテープに対応したLEDイルミネーション操作機能「ASRock RGB LED」が追加されました。ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acでは4PIN RGB LEDテープに対応した4PIN LEDヘッダーが1基設置されています。AMD Ryzen CPUの公式CPUクーラーであるWraith MaxやWraith Toworをはじめとして、当サイトでもレビュー記事を掲載しているLEDテープ「SilverStone SST-LS02」やLEDファングリル「SilverStone FG121 / FG141」などが接続可能です。
「ASRock RGB LED」は製品サポートページで配布されている専用アプリを使用することで他社のLEDイルミネーション操作同様に発光カラーや発光パターンを設定できます。
発光パターンには「Static」「Breathing」「Strobe」「Cycling」「Random」「Music」「Wave」を選択できます。赤→緑→青に緩やかに変化するカラーサイクルについては「Cycling」ではなく「Wave」が対応しています。
「Static」「Breathing」「Strobe」など特定の発光カラーを指定する発光パターンでは、リング型RGBカラーパレットを使用して発光カラーを自由に設定できます。
ASRock RGB LEDにはBIOS上のグラフィカルUIでLEDイルミネーションの調整をデスクトップアプリ同様に行えるという特徴があったのですが、ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acについてはBIOS:3.00ではグラフィカルUIではなくテキストベースUIでした。LEDイルミネーション関連は流石にグラフィカルUIにして欲しいので今後の更新を待ちたいです。
下はASRock Z270 SuperCarrierのものですが、BIOSの詳細モードでツールのRGB LEDからLEDイルミネーションの設定画面にアクセスすると、使用しているマザーボードに合わせて写真も表示され、専用アプリ同様にLEDイルミネーションの操作が可能です。
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acのOC設定について
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acを使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
AMD Ryzen CPUについてはX370チップセット搭載マザーボードと組み合わせた場合に使用できる純正のOCツール「AMD Ryzen Masterユーティリティ」が用意されていますが、こちらの使い方については下の記事を参考にしてください。
・AMD Ryzen専用純正OCツール「AMD Ryzen Masterユーティリティ」の使い方
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acのオーバークロック設定はOCツールというトップメニューのタブページにCPUコアクロック、メモリ、電圧など各種設定項目が集約されています。OCツールのページをスクロールしていくとCPUコアクロック、メモリ、電圧の順番で設定項目が表示されます。
CPUコアクロック(コア倍率)の変更について説明します。
コアクロックはコア数に対して各コアに最大動作クロック(BCLKに対する倍率)を指定できます。「コア0:コア1:コア2:コア3」を倍率として、例えば「45:43:43:42」のようにバラバラに指定した場合、4つのコアのうち1つに負荷が掛かる場合は4コアのうち1つが45倍動作、2つと3つの場合は43、4つの場合は42となります。
AMD Ryzen CPUについても定格では同様に、例えばRyzen 7 1800Xでは冷却性能依存の自動OC機能「XFR」の影響で若干前後しますが、単コア負荷の場合は4.1GHz、動画のエンコードなど全コア負荷の重いワークロードでは3.7GHz程度で動作します。
RyzenのCPUコアクロックに関してBIOSから行う基本的なOC設定や専用ユーティリティー「Ryzen Master」によるOC設定では、単一の「P-State」を設定して固定コアクロックかつ固定電圧でOC設定としていますが、Ryzen CPUでは本来、複数の「P-State」が設定可能です。
アイドル時のP-State0、低負荷時のP-State1、高負荷時のP-State2のように負荷に応じてP-State(コアクロックと電圧の組み合わせ)という状態を遷移できます。例えばRyzenの定格動作ではCPUごとにデフォルトで設定されたP-Stateに従って動作しているので可変コアクロックかつ可変電圧になっています。
固定最大コアクロック&固定電圧によるOCに比べて、複数のP-Stateを設定する方法は難易度が高いですが、一部のコアのみより高いクロックで動作させるなど細かい設定が可能になります。とはいえやはり複数のP-Stateを設定する方法は難易度が高い設定になるので、簡単な単一P-Stateで固定最大倍率&固定電圧のOCがおすすめです。
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acのコアクロックのOC設定方法はコアクロック(MHz)の指定値を直に打ち込む形になっていました。「CPU Frequency and Voltage Change」の項目を「手動」に変更すると「CPU Frequency」の項目が表示されます。例えば「4025」のように「CPU Frequency」を設定すると4025MHzで動作するように設定されます。コアクロックは25MHz間隔で指定可能です。ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acではベースクロック(BCLK)の変更はできず100MHzで固定となります。
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acではAMD CPUのマルチスレッディング機能である「SMT: サイマルテイニアス マルチスレッディング(Simultaneous multithreading)」の有効・無効をBIOS上から設定可能です。
動作させるコア数をプルダウンメニューから指定することが可能な「Down Core Control」の項目は、トップメニュータブの「アドバンスド」から「AMD CBS」、「Zen Common Options」、「Core/Thread Enablement」を選択していくと表示されます。8コアCPUのRyzen 7を使用している場合は2コア([1+1]or[2+0])、3コア([3+0])、4コア([2+2]or[4+0])、6コア([3+3])が選択可能です。
続いてコア電圧の調整を行います。
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acではOCツールの項目で下にスクロールしていくと、各種電圧設定項目が表示されますが、AMD Ryzen CPUの手動OCに関連する電圧設定については基本的に「CPU Core電圧」「CPU SOC電圧」「DRAM電圧」の3項目のみに注目すればOKです。
CPUコアクロックのOCに関連する電圧設定としては、ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acでは「CPU Frequency」のすぐ下にある「CPU Voltage」の項目を変更します。(電圧設定の箇所にもコア電圧のオフセット項目がありますが、そちらは自動のまま放置でOKです。)
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acではマニュアルの設定値を指定して入力する固定モードのみが使用できます。AMD Ryzen CPUのコア電圧は0.00625V刻みでコア電圧の設定が可能です。負荷時のコア電圧補正機能ロードラインキャリブレーション(LLC)がないのでLLC対応マザーボードと比較して50mV程度高めにコア電圧を設定するとOCが安定しやすいです。
CPUコア電圧モードについて簡単に説明すると、オフセットモードやアダプティブモードはCPU負荷に比例して電圧が設定されており、低負荷時は電圧が下がるので省電力に優れるのですが、OCをする場合はマザーボードによって挙動に差があり安定する設定を見極めるのが難しいので、個人的にはオフセットやアダプティブは定格向け、OCには固定値適用の固定モードを推奨しています。
仮にOCでオフセットやアダプティブを使う場合も最初はコアクロックに対して安定する電圧を見極める必要があるので、まずは固定モードを使用します。
ちなみにマザーボードにより対応しているモードは異なりますが、CPUのオーバークロックに付随するコア電圧のモードの概略図は次のようになっています。
あとASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acでは複数のP-State(Custom P-State)の個別設定も可能です。設定項目は若干わかりにくい場所にに配置されており、トップメニュータブのOCツールの「CPU Frequency and Voltage Change」の項目を「手動」にした状態で、トップメニュータブのアドバンスドから「AMD CBS」、「Zen Common Options」「Custom Pstates / Throttling」と順番に下っていくことでアクセスできます。
Custom P-Stateでは「P-State X FID」「P-State X DID」「P-State X VID」の3種の設定値を各P-State Xに対して設定します。いずれの設定値も16進数(0~9、A~F)による設定で例えば、3a(16進数)=3*16+10=58(10進数)となります。
各P-State Xに対するコアクロックの設定は次のようになります。
コアクロック = BCLK(ベースクロック)*FID / DID * 2
つまり「FID / DID * 2」がコアクロックOC一般に言うコア倍率になります。例えば上のスクリーンショットでは「FID:88」「DID:8」なので10進数に戻してコア倍率を計算すると、34.00となりBCLK:100MHzに乗じて3400MHz動作となります。「Custom P-States X」の下にある「Frequency(MHz)」の横のテキストボックスにも3400と表示されています。似たようなコア倍率に対して「Core FID」と「Core DID」の組み合わせが複数存在する可能性がありますが、この組み合わせによるOC安定性に関する違いまではわからないので、そのあたりは各自で詰めてみてください。
各P-State Xに対するコア電圧は「P-State X VID」によって決まっており、同様に16進数による設定値入力で、0~FFの範囲内で設定可能です。「P-State X VID」の設定値に対してコア電圧は次のようになります。
コア電圧 = 1.55000V - 0.00625 * VID
例えばVID:3a(16進数)=58(10進数)の場合はコア電圧は1.18750Vとなります。
以上のような流れで最大コアクロックをP-State 0として順番に下がるように設定していきます。
メモリのオーバークロックについても簡単に紹介だけしておきます。
メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。
メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありませんが、ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acでは正常にPOSTできないメモリOC設定でエラーが出た場合は数回再起動した後、自動で2133MHzのような緩い設定で再起動してくれるのでメモリOCを安心して行えます。
メモリOCで有名なXMPプロファイルはIntelの策定した規格なのでAMD CPU&マザーボードの環境では非対応ですが、ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acではXMPプロファイルの項目が表示されており、おそらくXMPプロファイルから適当なOCプロファイルを自動生成しているものと思われます。
ASRockのAM4マザーボードについてはメモリ周波数・タイミングのオーバークロック方法、というか設定場所が2か所に分かれており「設定方法1」と「設定方法2」として紹介していますが、どちらが上手くいくかマザーボードや使用するメモリで違うようなので各自の環境に合わせて色々と試してみてください。
【メモリ周波数&タイミング設定方法 その1】
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acでは上で紹介して「XMP設定の読込」からXMPプロファイルを選択するとOCツール上にメモリ周波数やメモリタイミングの設定に関する項目が表示されます。この設定方法1でも設定内容自体は次に紹介する設定方法2と同じなので、続いて紹介する設定方法2を参考にして各種設定を行ってください。
【メモリ周波数&タイミング設定方法 その2】
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acではメモリ周波数・タイミングの手動オーバークロックを行う設定項目の場所は少々わかりにくいところにあります。なお手動でメモリ設定を行う場合は上記のXMPに関する設定は自動を選択しておいてください。
メモリ設定項目へはトップメニュータブ「アドバンスド」から「AMD CBS」、「DRAM Timing Configuration」の順番に下っていくとアクセスできます。ここで「Overclock」の項目を「Enabled」に設定すると各種メモリOC設定項目が表示されます。
メモリ周波数は「Memory Clock Speed」の項目から選択します。一般的な表記の半分の数値がプルダウンメニューから表示されるので、例えば3200MHzに設定したい場合は1600MHzを選択してください。メモリ周波数もBCLKに対する倍率で決まりますが、BCLK100MHzに対してBIOS:P1.30では最大40倍(4000MHz)まで設定可能です。
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acではメモリタイミングの個別手動設定も可能です。
メモリタイミングを手動で設定する場合は基本的には「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS Read (tRCDrd)」、「RAS to CAS Write (tRCDwr)」、「RAS Precharge (tRP)」、「RAS Active Time (tRAS)」の主要な5タイミングと、加えて「Command Rate:1 or 2」の6つ以外はAutoのままでいいと思います。
「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS Read (tRCDrd)」、「RAS to CAS Write (tRCDwr)」、「RAS Precharge (tRP)」、「RAS Active Time (tRAS)」のの5つについてはメモリ周波数の設定項目の下に配置された項目から設定可能です。
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acの手動OCでメモリ周波数3200MHzを目指す場合は「Redresh Cycle Time(Trfc Ctrl)」と「Redresh Cycle Time 2(Trfc2 Ctrl)」も手動で設定した方が良いようです。管理人が試した限りでは「Redresh Cycle Time(Trfc Ctrl)」を560程度(16進数で230)、「Redresh Cycle Time 2(Trfc2 Ctrl)」を360程度(16進数で168)に設定するとOCが上手くいきました。
「Command Rate:1 or 2」の設定場所はメモリ周波数や主要タイミングとは少し違うところにあって、トップメニュータブ「アドバンスド」から「AMD CBS」、「UMC Common Options」、「DDR4 Common Options」、「DRAM Controller Configuration」の順番に下っていくとアクセスできます。
また「Cmd2T」の下にある「GearDownMode」をEnabledに設定すると、メモリ周波数を3200MHz以上にOCする場合は動作が安定するかもしれないので、Autoで上手くいかない場合は設定を変更してみてください。
メモリタイミングの下の方にある「ProcODT」という設定値がAutoのままではPOSTがクリアできない場合があります。AutoでPOSTをクリアできない、もしくは起動後に安定しない場合は「ProcODT」を43.6~68.6の間で固定して安定するものを探してみてください
DDR4メモリについては3000MHz以上にOCする場合はDRAM電圧を1.300~1.350Vに上げる必要があります。メモリをOCする場合は最初から1.350VにDRAM電圧を盛っておくのがおすすめです。ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acの場合は0.05V刻みで1.100~1.500Vまでで設定が可能です。
AMD Ryzen CPUでメモリの動作クロックをOCする場合はDRAM電圧だけでなく「CPU SOC電圧(CPU NB電圧)」も適度に盛ってやるとメモリOCが安定するそうです。ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acでは35mV刻みでオフセット値を設定できます。ただし基準になるSOC電圧はメモリ周波数のOCに合わせて自動で昇圧されますが、それに対するオフセット値なので設定が少々難しいです。自動で昇圧されるので基本的に+0mVでもよいと思います。
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acの動作検証・OC耐性
BIOS周りの管理人的に気になるところやOC設定の基本についての紹介はこのあたりにしてASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acを使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。まずはBIOS上の起動設定をフルスクリーンロゴとファストブートを無効(BIOS設定)にしてOSの起動時間を測定しました。ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acの起動時間は19秒ほどとなりました。X370チップセット搭載AM4マザーボードの中でも最速クラスの起動時間となっており、Intel KabyLake対応高性能マザーボードの環境と比較しても速い部類です。
続いてASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acを使用した場合のCPUのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
Ryzen 7 1800XのOC設定は「CPU動作周波数:3900」「CPUコア電圧:1.350V」「メモリ周波数:3200MHz」「メモリタイミング:18-18-18-38-CR1」「Redresh Cycle Time(Trfc Ctrl):560(16進数で230)」「Redresh Cycle Time 2(Trfc2 Ctrl):360(16進数で168)」「ProcODT:68.6ohm」と「メモリ電圧:1.350V」としています。
上の設定を適用したところ問題なくOSを起動させることができました。
検証機材のメモリ「Kingston HyperX Fury DDR4 HX424C15FB2K2/16」はXMP2400MHzのメモリですが、手動オーバークロックによって3200MHzで正常動作ということで相性が良いようです。
AMD Ryzen CPUの発売当初はマザーボードとメモリの相性問題が厳しく、Samsung Bダイ等一部の相性の良いメモリを除くと、シングルランクかつ2枚組のデュアルチャンネルでも2666MHzで動作させるのが難しいという状況でした。しかしながら17年6月に入っていリリースされたAGESA1.0.0.6のマイクロコードに対応するBIOSにアップデートすることでこういったメモリ相性問題はかなり改善されています。
今回は検証機材のメモリとして「Kingston HyperX Fury DDR4 HX424C15FB2K2/16」を使用していますが、相性は比較的良好で手動OCすることによって3066MHzで安定動作しています。レビューに使用している検証機材メモリ以外にも「Corsair VENGEANCE LPX(型番:CMK16GX4M2B3200C16)」(レビュー)や「Samsung M378A1K43BB2-CRC」(レビュー)でも3200MHzにOCして安定動作させることができました。
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acでは「Trfc/2」や「ProcODT」を手動設定する必要があるという若干のクセがあるものの、このコツさえ掴んでしまえばXMP3200MHz以上のメモリであればほぼ問題なく3200MHzで動作させることができそうな手ごたえを感じます。
Ryzen 7 1800Xの3.9GHz、メモリ3200MHzでCinebenchも問題なくクリアできました。
続いてこのOC設定を使用してストレステストを実行しました。
検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間8分、WQHD解像度、60FPS、容量4.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はRyzen 7 1800Xの場合15分ほどなので同じ動画のエンコードを2つ並列して2周実行しています。テスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
ストレステスト中のCPU温度とCPU使用率のログは次のようになりました。マザーボードにASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acを使用することでRyzen 7 1800Xを全コア同時3.9GHzにOCしてストレステストをクリアできました。CPUクーラーのファン回転数は1400RPMで固定しています。
スマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE」を使用してストレステスト終盤のASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acのマザーボード上の各所の温度をチェックしました。
8コア16スレッドのRyzen 7 1800Xを3.9GHzにOCしていますが、トップフロー型のCPUクーラーを使用していることもありVRM電源部分の温度は最大でも80度半ばに収まってくれました。とはいえトップフローでも80度台なのでVRM電源周りに風の当たらない簡易水冷やサイドフロー型のCPUクーラーでOCを行うのは避けたほうがいいと思います。
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acのレビューまとめ
最後に「ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/ac」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- ブラック&レッドのゲーミングマザーボードらしいデザイン
- 8コア16スレッドのRyzen 7に対応するMini-ITXサイズのAM4マザーボード
- 重量級グラボにも耐えるメタルアーマー採用PCI-Eスロット
- 8フェーズのVRM電源でRyzen 7の軽いオーバークロックにも対応可能
- 検証機ではRyzen 7 1800Xの全コア同時3.9GHz OCで正常動作
- 起動時間が19秒と高性能X370 AM4マザーボードの中でも最速クラス
- マザーボード背面にM.2スロットが1基設置されている
- Intel製の有線&無線LANを搭載するMini-ITXサイズAM4マザーボード
Wi-FiはIEEE802.11ac/n/a/g/b、Bluetoothはver4.2に対応 - 【17年9月】AGESA 1.0.0.6b対応でメモリ相性問題の大幅緩和が期待できる
- リアI/OにCMOSクリアスイッチを設置して欲しい
- 今後のRyzen APU対応を考えるとHDMIはver2.0を採用して欲しかった
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acを使用した検証機ではRyzen 7 1800Xの全コア3.9GHzのオーバークロックで安定動作を実現するなど高いパフォーマンスが求められる最新のゲーミングPC事情にも答えられる性能を発揮してくれました。Mini-ITXサイズゆえに実装可能面積の制約からVRM電源フェーズ数はATXマザーボードに比べると少ないので、8コア16スレッドのRyzen 7を使用するのであればVRM電源周りの冷却的にレビュー検証でも使用したCryorig C1のようなトップフロー型CPUクーラーとの組み合わせがおすすめです。
メモリ相性問題についてもAGESA 1.0.0.6のマイクロコード対応したBIOSがすでに公開されているので大幅に緩和されており、検証機材のメモリ「Kingston HyperX Fury DDR4 HX424C15FB2K2/16」はXMP2400MHzのメモリですが、相性が良いようで手動オーバークロックによって3200MHzで安定動作しました。メモリOC設定では「Trfc/2」や「ProcODT」をを手動設定する必要があるという若干のクセがあるものの、このコツさえ掴んでしまえばXMP3200MHz以上のメモリであればほぼ問題なく3200MHzで動作させることができそうな手ごたえを感じます。
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acのBIOSではクラシカルなテキストベースUIが採用されており、OSインストールのブート設定からオーバークロックまで多方面に使いやすいUIだと思います。管理人個人的にも好みです。
ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/acはMini-ITXサイズながら、AM4マザーボードとしてはATXやマイクロATXサイズに目を向けても他社製品で採用の少ない無線LAN&Bluetoothモジュールを標準で搭載しているところが最大の魅力です。有線LANと無線LANはともに性能に定評のあるIntel製コントローラーが採用されており、Ryzen CPUに対応したMini-ITXサイズAM4マザーボードとしては決定版と言っても過言ではない、一押しのマザーボードです。
以上、「ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/ac」のレビューでした。
・AM4マザーボードの販売ページ:
<Amazon><TSUKUMO><PCショップアーク>
<PCワンズ><ドスパラ><パソコン工房>
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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本記事とは直接関係ないですが、毎回熊のグリスをお勧めしてくれますが、他のグリス(液体金属等)と比べてもやはり傑出した性能なんでしょうか?(耐久性?くっつきにくい?)