スポンサードリンク
EVGAからリニューアルして登場した、GTX 1080 Ti Founders Edition(リファレンス基板)とTITAN Xpを簡易水冷化可能なGPUクーラー換装キット「EVGA GTX 1080 Ti SC HYBRID Waterblock Cooler (型番:400-HY-5598-B1)」を購入したのでレビューしていきます。今回はGTX 1080 Ti Founders Editionを実際に簡易水冷化してみます。
製品公式ページ:https://www.evga.com/products/product.aspx?pn=400-HY-5598-B1
マニュアル:https://www.evga.com/support/manuals/files/400-HY-5598-B1.pdf
「EVGA GTX 1080 Ti SC HYBRID Waterblock Cooler」はGTX 1080 Ti発売当初に販売されていた簡易水冷化キットから大幅にリニューアルされており、拡張ベースプレートを使用してGPUコアとVRAMチップを一括で冷却する構造を採用し、VRM電源には専用ヒートシンクを設置して、ブロアー型ではなく一般的なウィング型の冷却ファンを搭載しています。
「EVGA GTX 1080 Ti SC HYBRID Waterblock Cooler」はGTX 1080 Ti Founders Editionなどリファレンス基板を採用するGTX 1080 Tiグラフィックボードに対応しています。EVGA製品ではFounders Edition以外にSC Blackと、追加ファン端子で若干基板レイアウトが異なるもののSC2にも対応しています。初期にFEを購入したユーザーなどGTX 1080 Tiグラフィックボードの冷却性能に不満のあるユーザーにはおすすめなキットです。
EVGA GTX 1080 Ti SC HYBRID Waterblock Cooler レビュー目次
1.EVGA GTX 1080 Ti SC HYBRID Waterblock Coolerの内容品
2.GTX 1080 Tiのリファクーラーを分解する
3.GTX 1080 Tiのクーラーを簡易水冷クーラーに換装する
4.簡易水冷化GTX 1080 Tiの冷却性能を検証
5.簡易水冷化GTX 1080 Tiの冷却ファンを交換してみる
6.EVGA GTX 1080 Ti SC HYBRID Waterblock Cooler レビューまとめ
EVGA GTX 1080 Ti SC HYBRID Waterblock Coolerの内容品をチェック
GTX 1080 Ti Founders Editionの分解や簡易水冷キットの組み込みの前に、簡単にEVGA GTX 1080 Ti SC HYBRID Waterblock Coolerの内容品をチェックしておきます。黒い外装スリーブを外すと茶色の段ボール箱があり、その中に簡易水冷化キットの内容品が収められています。
上段には、GPUクーラー外装、VRM電源クーラー、メモリヒートシンクプレートが置かれていました。
パーティションの段ボールを取り出すとその下には簡易水冷クーラー本体が収められています。
その他の付属品としてマニュアル、各種ネジ類、ケーブルタイが付属します。ネジの種類はかなり多いですが、種類ごとに小分けのパッケージに封入されており、マニュアルに記載された識別番号のシールが袋に貼られているので見分けは付くと思います。
マニュアル:https://www.evga.com/support/manuals/files/400-HY-5598-B1.pdf
GPUクーラー外装には厳重に保護ビニールが貼られていました。
GPUクーラー外装はほぼ全てプラスチック製になっています。外周部のグレーの部分は金属製のプレートがネジ止めされていました。
サンプルイメージではGPUクーラー外装の外周部はFounders Editionに似たポリゴンを模したダイヤモンドカットに見えたのですが、実物はダイヤモンドカットに見えるイラストが描かれているだけでした。この部分は実物を見るとちょっと安っぽくて残念です。旧型同様に普通にシルバーのプレートで良かった気がします。
外装の右端はエアスリットがある雰囲気ですが実際は密閉されていて冷却ファンから吸入されたエアはPCIブラケット側からのみ排出される構造です。
旧型の簡易水冷化キットではVRM電源部分はリファレンスのFounders Edition同様に大型のベースプレート&ブロアーファンで冷却する構造でしたが、「EVGA GTX 1080 Ti SC HYBRID Waterblock Cooler」では専用のVRM電源ヒートシンク&ウィング型冷却ファンで冷やす構造になっています。VRM電源ヒートシンクには標準でサーマルパッドが貼られていました。
簡易水冷クーラーについてはEVGAのロゴが刻まれているところ以外は標準的なものになっています。
水冷トップ側のチューブ端はロータリーになっているので水冷チューブの取り回しも良好です。
簡易水冷ベースには標準で熱伝導グリスが塗られているので各自で用意する必要はありません。
ベース部分は銅製で綺麗に磨き上げられていました。
水冷トップからは汎用ファンケーブルが出ておりラジエーター冷却ファンへの給電はここから行えます。
ファン端子自体は汎用ですが3PIN型の冷却ファンでないと接続できないので冷却ファンの交換を検討しているユーザーは注意してください。なおグランドと+12Vのピンしかないのでファン回転数は定格固定のように見えますが、電圧制御かPWM信号生成によってラジエーターファンの回転速度もGPU温度依存で制御されています。
簡易水冷クーラーのラジエーターと冷却ファンはいずれも120サイズの標準的なもので、ラジエーターが30mm、冷却ファンが25mmで計55mm厚程度となります。
冷却ファンには「PLA12925S12M」という一般的な120mm角のファンが採用されていました。タコメーターの端子がなく、正確な仕様が不明なのですがファンノイズから逆算してみたところ定格1800RPM程度のそこそこ高速な冷却ファンのようです。
GTX 1080 Tiのリファクーラーを分解する
なにはともあれまずはGTX 1080 Ti Founders Editionを分解していきます。GTX 1080やTITAN X Pascal同様にGTX 1080 Ti Founders Editionのリファレンス基板の分解にはナットドライバーが必要です。ナットドライバーだけ別に購入するのも微妙なので持っていない人は「Ifixit 54 Bit Driver Kit」というドライバーセットの購入がおすすめです。
グラフィックボードの分解中はネジ等小さいパーツが多いので分解や組立中はもちろん分解後の保管中にも失くさないように、小さいパックやチャック付きポリ袋を用意しておくと便利です。
ポリ袋は分解したグラボの元々のネジを保管するのに、小さいパックは作業時にネジ類を放り込んでおくと紛失し難くなります。
まずはGTX 1080 Tiのバックプレートを外してみます。GTX 1080 Ti FEの分解で要注意なのはバックプレートに埋まっためっちゃ小さいネジと、基板とクーラーを固定しているナットネジです。特に小さいネジはバックプレートに埋まっているのでネジ穴ナメると救済策がほぼなくなります。
この二つは「PH0」規格のプラスドライバーと「4.0」径のナットドライバーで外せました。
バックプレートネジはめっちゃ小さいので失くさないように要注意です。
まずはバックプレートの取り外し完了です。
続いてナットネジを外しにかかる前にPCIブラケットとクーラーを固定しているネジ2本を予め外しておいた方がいいです。忘れることがあるので。
難敵ナットネジですが、ペンチを使って外す人がたまにいるようですが管理人的には非常に危険な気がするので非推奨です。滑って基板裏の素子や基板自体を傷つけたら10万がお釈迦になるのでせいぜい1000円くらいですしナットドライバーの使用を強く推奨します。
管理人が購入したASUS箱詰めのGTX 1080 Ti Founders EditionはGPUコア周辺のスプリングネジの1つに封印シールが貼られていました。これを剥がすと正規保証がなくなります。ネジザウルスという裏技もあるのですが面倒なのでペリッと剥がしてネジも外しました。
ネジを全て外せばグラボの分解作業はほぼ終わりです。クーラーを変にぶつけてGPUコアをコア欠けしないようように注意してLEDとファンのケーブルを外します。
以上でGTX 1080 Ti Founders Editionの分解作業は完了です。
GTX 1080 Tiのクーラーを簡易水冷ハイブリッドクーラーに換装する
さてここからはEVGA製のGTX 1080 Ti用簡易水冷キット「EVGA GTX 1080 Ti SC HYBRID Waterblock Cooler」を先ほど分解したGTX 1080 Tiの基板に装着していきます。EVGA GTX 1080 Ti SC HYBRID Waterblock Coolerの設置については基本的にマニュアル通りに進行していけばOKです。図解もしっかりしているのでこの記事よりもマニュアルの方が組み立て手順についてはわかりやすいと思います。
マニュアル:https://www.evga.com/support/manuals/files/400-HY-5598-B1.pdf
EVGA GTX 1080 Ti SC HYBRID Waterblock Coolerでは使用するネジがかなり多い(FEとSCでは使用しないネジもある)のでマニュアルでも番号が振られていますが記事中でも下の番号を使って紹介していきます。
まず最初にVRM電源クーラーとメモリヒートシンクプレートを装着してネジ止めします。VRM電源クーラーの固定ネジはFounders Editionを簡易水冷化する場合は13番ネジを使用するように指定されていますが、クーラーが浮いてグラつくので管理人はSC BlackやSC2に合わせて6番ネジを使用しました。メモリヒートシンクプレートの固定はマニュアル通り14番ネジで大丈夫です。
いずれもサーマルパッドが標準で貼られているのでグラフィックボード基板に装着してネジ止めするだけなのですぐに終わる作業だと思います。なおメモリヒートシンクプレートのGPUコア周辺には簡易水冷クーラー本体との熱伝導のためにグリスが塗られているのでネジ止め等の際にグリスに触らないようにだけ注意してください。
VRM電源クーラーとメモリヒートシンクプレートを装着してを装着したら簡易水冷GPUクーラーを取り付けます。簡易水冷クーラーには標準で熱伝導グリスが塗布されていますが、今回も熱伝導グリスとして当サイトでは毎度おなじみ管理人愛用のクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。熱伝導効率も高く、柔らかいグリスで塗布しやすいのでおすすめです。
最終的にネジ止めで圧着されるのでグリスの塗り方は割とてきとうでOKです。管理人は一応米の字に伸ばして塗っています。
あとは簡易水冷クーラーをGPU基板に装着してから裏返して8番ネジで固定したら簡易水冷クーラーの装着が完了です。メモリヒートシンクプレートのネジ穴が簡易水冷クーラーの装着ガイド的な役割を果たしており、GPU基板に直接装着していた旧型と比較して、ネジ止め前から水冷トップが安定するので簡単に固定することができました。
簡易水冷クーラーを装着したら、水冷トップから伸びている水冷トップへの給電ケーブルをGPU基板の小型ファン端子に装着して、分岐ケーブルをVRMクーラーの冷却ファンと接続します。
あとは簡易水冷化キットに付属するトップカバーと、Founders Editionの場合はグラボに標準で搭載されているバックプレートを装着すれば簡易水冷化完了です。
簡易水冷化GTX 1080 Tiの冷却性能を検証
GTX 1080 Ti Founders Editionの簡易水冷化も完了したので早速、ベンチ機に組み込んで冷却性能をチェックしてみました。EVGA GTX 1080 Ti SC HYBRID Waterblock Coolerで簡易水冷化したGTX 1080 Ti Founders Editionは以降GTX 1080 Ti FE Hybridと呼ぶことにします。各種検証に用いるベンチ機の構成は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | ||
ベンチ機1 |
ベンチ機2 |
|
OS | Windows10 64bit Home | |
CPU |
Core i7 7700K Core/Cache:5.0/4.8GHz, 1.300V 殻割り&クマメタル化(レビュー) |
Core i7 7700K (レビュー) |
M/B | ASRock Z270 SuperCarrier (レビュー)(BIOS:1, 2) |
ASUS ROG MAXIMUS IX FORMULA (レビュー) |
メインメモリ | Corsair Dominator Platinum Special Edition DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) |
G.Skill TridentZ DDR4 8GB*4=32GB |
システムストレージ |
Crucial MX300 SATA M.2 SSD 1TBCT1050MX300SSD4 | Intel SSD 540シリーズ SATA M.2 SSD 240GB |
電源ユニット |
Corsair RM650i (レビュー) |
Corsair HX1200i (レビュー) |
PCケース/ ベンチ板 |
STREACOM BC1 (レビュー) |
Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t (レビュー) NZXT Aer F 140 3基(レビュー) |
ラジエーターのサイズも120mmのコンパクトサイズなのでPCケースのリアファンマウントなどに設置することができて取り回しも良好です。
GTX 1080 Ti FE Hybridのグラフィックボード本体は普通にリファレンスのFounders Editionなので、MSI AfterBurnerを使用して、コアクロック+160MHz、パワーリミット120%へ手動でOCしたものについても検証を行いました。このOCでコアクロックはピーク2050MHz程度まで上がります。
まず最初にベンチ機1でGTX 1080 Ti FE Hybridの負荷時のGPU温度とファンノイズを検証しました。
温度とファンノイズの検証負荷としてはFireStrike Extreme ストレステストを使用しています。
GTX 1080 Ti FE Hybridではストレステスト中のGPUコア温度は最大47度、ファン回転数(VRMクーラーファン)も1300RPM未満と抜群の冷却性能を発揮しています。手動でOCして実働コアクロックが2.0GHz程度になっている状態でもGPUコアの最大温度は49度となり50度未満に収まりました。
GTX 1080 Ti FE Hybridのストレステスト中のコアクロックをチェックしてみると、熱ダレによるコアクロックの低下がほぼ発生しないので同じ基板でも空冷のFounders Editionと比べて70MHz以上高い実働平均1800MHzをマークしています。手動でOCした場合はZotac AMP Extremeなど一般に販売される超高OCチューニングされた製品並みとなる実働平均2000MHzを実現しました。
またベンチ機2のPCケースにGTX 1080 Ti FE Hybrid(定格)を組み込んでFire Strike Extreme グラフィックテスト1を1時間に渡ってループさせて実用の冷却性能を確認してみました。
検証機材のPCケースには「Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t」を使用しており、ケースファンにはNZXT製のエアフロー重視でPCケースの吸気・排気ファンに最適なケースファン「NZXT Aer F 140」をPCケースのフロントに吸気ファンとして2基、トップに排気ファンとして1基設置してファン回転数1000RPM固定で運用しています。GPUクーラーの簡易水冷ラジエーターは排気でリアに設置しています。
PCケースに入れて長時間負荷をかけてもベンチ板測定同様に最大温度は48度で、コアロックの平均値は1790MHzでした。3スロット占有の大型GPUクーラーを搭載するモデルでも同環境ではベンチ板測定に比べて熱処理が難しくなるのが常ですが、簡易水冷化されたGTX 1080 Ti FE Hybridであれば熱ダレとは無縁の抜群の安定性を発揮します。
また実働ストレステスト中の0分, 10分, 20分…について30秒間の平均FPSの推移をチェックしました。長時間の負荷においてもスタートから99%の性能を維持しておりリファレンスと比較すると熱ダレによる性能低下は圧倒的に小さくなっています。
1時間のストレステスト終盤にスマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE」を使用してゲーム負荷時のグラフィックボード上の各所の温度をチェックしました。
GTX 10XXシリーズの上位モデルではVRM電源部分の温度がかなり高くなりがちですが、GTX 1080 Ti FE Hybridでは最も熱い部分でも70度後半となっており、安心して運用できる温度に収まっています。
GTX 1080 Ti FE Hybridを含めていくつかのグラフィックボードについてサウンドレベルメーターを利用してゲーム負荷時のノイズレベルを測定・比較しました。ノイズレベルの測定には「サンワダイレクト 400-TST901A」を使用しています。
電源OFF時の騒音値は33~35dBです。目安として40dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになり、45dB前後で煩く感じます。50dBを超えてくるとヘッドホンをしていても煩く感じます。同じ騒音値でも不快に感じたり感じなかったりと音の性質にもよるので注意してください。
ノイズレベルの測定結果は次のようになっています。
GTX 1080 Ti FE Hybridのファンノイズは定格で43.5dB、手動OCでも44.2dBとなっておりGTX 1080 Tiグラフィックボードとしてはまずまずの結果となっています。
ファンノイズについてはVRM電源クーラーは40dB以下に収まっているのですがラジエーターに標準搭載される冷却ファンのファンノイズがボトルネックになっていました。
標準搭載されている冷却ファンはタコメーターがないので負荷時の回転数がわからないのですが、定格1800RPMの「Fractal Design Venturi HP-12 PWM」を使用して確認したところ、ストレステスト終盤のファン回転数は1700RPM程度となったことから、1600~1700RPM程度で動作する定格1800RPMのファンのように思います。水冷ブロックから伸びるファン端子に接続したファンはGPUコア温度依存でファンコントロールされますが、GPUコア温度50度前後でもほぼ最大速度動作となるようです。
ストレステスト中のGPUコア温度は50度未満とかなり余裕があるので、定格1200~1400RPM程度の3PIN冷却ファンに換装すればさらに静穏性を上げることができると思います。
GTX 1080 Ti FE Hybridの消費電力と瞬間的な最大電源負荷を測定しました。
測定には電源ユニット「Corsair RM650i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの出力ではなく変換ロスを差し引いた純粋な検証システム全体への入力電力をチェックしています。また測定負荷にFireStrike Extreme ストレステストを使用して、”平均値を消費電力”、”最大値を瞬間的な最大電源負荷”としました。測定結果は次のようになっています。
同検証環境に置いてGTX 1080 Ti FE Hybridの消費電力は324Wとなり、リファレンスモデルのGTX 1080 Ti Founders Editionよりも5Wほど高い消費電力となりました。手動でOCを行うと定格よりも41W程消費電力が増えて消費電力365W、瞬間最大負荷で419Wとなります。OCで消費電力は増えていますがストレステストでも50度未満に収まっていたように簡易水冷化なら問題なく運用できます。
簡易水冷化GTX 1080 Tiの冷却ファンを交換してみる
「EVGA GTX 1080 Ti SC HYBRID Waterblock Cooler」で簡易水冷化したGTX 1080 Tiこと「GTX 1080 Ti FE Hybrid」はストレステスト時のGPU温度やコアクロックの数値は非常に優秀だったものの、標準搭載のファンノイズがやや大きめでバランスが悪く感じたので市販の120mm角の3PINファン「Fractal Design Dynamic X2 GP-12 Black」に交換してみます。「Fractal Design Dynamic X2 GP-12 Black」は低速な定格1200RPMの3PINファン端子の冷却ファンということで「GTX 1080 Ti FE Hybrid」の静穏重視な交換ファンとしては最適ではないかと思い選択しました。
軸受にはMTBF(平均故障間隔)がトップクラスの100, 000時間である高級LLS軸受けを使用し、さらにハブ部分にベアリングの軸圧力を軽減するカウンターバランスマグネットを採用することでベアリングの耐用性を更に強化しています。 自称軸ソムリエの管理人が軸音テイスティング(耳を近づけてファンを指で弾くだけ)をしてみましたが、低速回転時の軸音はやや聞こえました。固定用の支柱はファンブレードに対して垂直になっており、ファンブレードが支柱を通るときに通常発生するノイズを抑制しています。
ファンフレームはすり鉢状に面取り拡張されており吸気・排気に優れる構造です。空気力学的に基づき設計された薄板状の支柱(ワイヤ用支柱も含む)により、航空機の翼に一般的にみられるデザインを模倣し、正しい角度で簡単に空気が流れる様にする事でノイズや望ましくない乱流の発生を低減します。
ファンブレードの付け根部分にある3つの切り込みはファンブレードが固定用の支柱を通るときに発生するノイズを拡散する事で抑制します。ファンブレードの後縁付近には航空機の翼のデザインによくみられる「トリップワイヤー技術」という構造をしており、マイクロ乱流層を発生させ全体的に効率の良い静かなエアフローを実現するそうです。
ラジエーター冷却ファンの交換については普通にプラスの長ネジで固定されているだけなので簡単に「Fractal Design Dynamic X2 GP-12 Black」へ交換することができます。
ラジエーター冷却ファンの交換も完了したのでベンチ機1で先ほど同様に検証負荷としてはFireStrike Extreme ストレステストを使用し、GPUコア温度やファンノイズなどについてチェックしてみました。
GTX 1080 Ti FE Hybridではストレステスト中のGPUコア温度は最大47度、ファン回転数(VRMクーラーファン)も1300RPM未満と抜群の冷却性能を発揮しています。手動でOCして実働コアクロックが2.0GHz程度になっている状態でもGPUコアの最大温度は49度となり50度未満に収まりました。
「Fractal Design Dynamic X2 GP-12 Black」に換装することでGPUコア温度が上がるのでコアクロックも多少下がっていますが、それでも標準ファンよりも平均10MHz低い程度に留まって平均1796MHzをマークしました。
ファンノイズについてはラジエーターファンの最大回転数が1200RPMに下がっているので騒音値も39.6dBにさがっています。
さらにPCケースに入れて長時間負荷をかけてみたところ最大温度は57度、コアロックの平均値は1770MHzでした。標準搭載の冷却ファン使用時に比べて10度前後は温度が上がっていますが、それでも十分な冷却性能を発揮しています。
以上のように冷却性能的にはGTX 1080 Ti相手でも全く問題がなく、静穏性が向上するので「EVGA GTX 1080 Ti SC HYBRID Waterblock Cooler」を使用する、もしくはEVGAのSC2 HybridやFTW3 Hybridのユーザーには、「Fractal Design Dynamic X2 GP-12 Black」への換装は非常におすすめです。
Fractal Design Dynamic X2 GP-12 Black (FD-FAN-DYN-X2-GP12-BK)
Fractal Design Dynamic X2 GP-12 White (FD-FAN-DYN-X2-GP12-WT)
Fractal Design
EVGA GTX 1080 Ti SC HYBRID Waterblock Cooler レビューまとめ
最後にGTX 1080 Ti Founders Edition用簡易水冷換装キット「EVGA GTX 1080 Ti SC HYBRID Waterblock Cooler (型番:400-HY-5598-B1)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- TDP250W以上となるGTX 1080 Tiを50度前後で運用可能な冷却性能
- 3スロット占有大型GPUクーラー以上に冷える
- PCケースに入れて長時間負荷をかけても熱ダレしない
- VRM電源部分の冷却も70度半ばと良好
- GPUクーラーの換装は基本的にグラフィックボードの保証がなくなる
(EVGA製グラボの場合は元に戻せば保証を受けられる) - 国内未発売なので米尼個人輸入。国内への直送可能
- 標準搭載冷却ファンは冷却性能重視なので1200~1500RPMの3PINファンに換装がおすすめ
GTX 1080 Ti Founders Editionなどリファレンス基板を採用しているGTX 1080 Tiグラフィックボードで使用できる簡易水冷GPUクーラー換装キット「EVGA GTX 1080 Ti SC HYBRID Waterblock Cooler」を使うことで、長時間の負荷でも熱ダレせずに、リファレンスGPUクーラーよりも遥かに高い静穏性を実現することができました。
GPUクーラーの換装は基本的にグラフィックボードの保証が切れるというネックはあるものの、BTO PCに搭載されている、もしくは発売初期に購入したリファレンスのGTX 1080 Tiグラボのユーザーにとって、GPUクーラー単体の交換で簡単に冷却性能と静穏性を上げることができる簡易水冷化キットは非常に嬉しい製品だと思います。
保証を考えると簡易水冷GPUクーラー標準搭載のグラボへの買い替えが正解なのかもしれませんが、「EVGA GTX 1080 Ti SC HYBRID Waterblock Cooler」によるGPUクーラー換装であれば費用が2万円程度に抑えることが可能というメリットもあります。
簡易水冷化キットはGPUがコア欠けしないように注意して水冷トップをネジ止めするという作業が若干厄介でしたが、「EVGA GTX 1080 Ti SC HYBRID Waterblock Cooler」ではVRAM冷却用のヒートシンクプレートが、水冷トップの装着ガイド的な役割を果たしてくれるので簡単に装着できました。換装に作業の難易度という点ではハードルは高くないと思います。
現在、使っているGTX 1080 Tiグラフィックボードの冷却性能や静穏性に不満があるなら、買い替え以外の解決策として簡易水冷GPUクーラー換装キット「EVGA GTX 1080 Ti SC HYBRID Waterblock Cooler」もおすすめです。
以上、「EVGA GTX 1080 Ti SC HYBRID Waterblock Cooler」のレビューでした。
(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
スポンサードリンク
このキット、Titan以外での利用は、個人的にあまり想定できていないんですが、どんな需要が有るんですかね……?
このレビューの話からは外れますが、複数の簡易水冷/本格水冷環境で、複数の120mmファンのラジェーター冷却力比較とか気になります
フィンピッチなんかの差で、ラジェーターとファンの相性も有りそうに思いますが、中々それに関する検証記事が見つけられず……
……あまりにも検証範囲が広くなりすぎますかね