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6コア12スレッドのCore i7 8700KなどIntel第八世代CoffeeLake-S CPUに対応するZ370マザーボードとしてゲーマー&オーバークロッカー向けにASUSが贈る「ROG MAXIMUS」ブランドのエントリーモデル「ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)」をレビューします。

いきなり前言を翻すようですが実際に細かくチェックしていくとエントリーモデルというよりも「ROG MAXIMUS」ブランドにおける価格と性能のバランスが取れた万人受けするオールラウンダーという印象が強くなっていく「ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)」の実力を徹底検証していきます。
製品公式ページ:https://www.asus.com/jp/Motherboards/ROG-MAXIMUS-X-HERO-WI-FI-AC/
マニュアル:http://dlcdnet.asus.com/pub/ASUS/mb/LGA1151/ROG_MAXIMUS_X_HERO_WI-FI_AC/J13390_ROG_MAXIMUS_X_HERO_WI-FI_AC_UM_WEB_20171010.pdf

ASUS ROG MAXIMUS X HERO (Wi-Fi AC) ATXマザーボード
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ASUS
Amazon.co.jp で詳細情報を見る <米尼><>< TSUKUMO>< PCショップアーク> ドスパラ
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【注意事項】
検証中のトラブルなども記事内で記載していますが、Intel CoffeeLake-S CPU自体が発売されたばかりなので、OSの問題なのか、マザーボードBIOSの問題なのか原因の切り分けが現状でできないものも少なくありません。今後ドライバやBIOSなどソフトウェアの更新でパフォーマンスや安定性が向上することは期待できると思うので、その辺りも念頭に置いて読んでもらえるとありがたいです。
同検証は17年11月上旬に行っており「ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)」のBIOS:0505を使用しています。最新BIOSでは修正されている不具合や追加されている機能もあると思うので、最新BIOSのリリースについては公式ページを各自でチェックしてください。
サポート:https://www.asus.com/jp/Motherboards/ROG-MAXIMUS-X-HERO-WI-FI-AC/HelpDesk_Download/
【17年11月10日:初稿】
レビュー記事初稿を公開、BIOS:0505で検証
ASUS ROG MAXIMUS X HERO レビュー目次
1.ASUS ROG MAXIMUS X HEROの外観・付属品
2.ASUS ROG MAXIMUS X HEROの基板上コンポーネント詳細
3.ASUSマザボのCPUインストレーションツールが便利
4.ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)へのパーツ組み込み(ギャラリー)
5.ASUS ROG MAXIMUS X HEROの検証機材セットアップ
6.ASUS ROG MAXIMUS X HEROのBIOSについて
7.イルミネーション操作機能「ASUS AURA Sync」について
8.ASUS ROG MAXIMUS X HEROのOC設定について
9.ASUS ROG MAXIMUS X HEROの動作検証・OC耐性
10.ASUS ROG MAXIMUS X HEROのレビューまとめ
ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)の外観・付属品
まず最初にASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)の外観と付属品をチェックしていきます。ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)のパッケージはマザーボードの箱としては独特な上開き化粧箱になっていました。開閉しやすく高級感もあります。

外パッケージの蓋を開くと上段にはマザーボード本体が収められており、下段には各種付属品が収められた小分けパッケージが入っていました。

マニュアルなど冊子類で必要なものが一通り揃っています。その他にもコースター、ステッカー、CableMod製のスリーブケーブル購入時の割引クーポンなどが付属します。ドライバ類についてはそろそろUSBメモリに移行して欲しいところ。

ASUS製のマザーボードなので定評のある詳細日本語マニュアルも付属します……が、今回は米尼個人輸入なので日本語マニュアルではなく英語マニュアルでした。まあ日本語マニュアルはオンライン公開されているので問題ありませんが。
マニュアル:http://dlcdnet.asus.com/pub/ASUS/mb/LGA1151/ROG_MAXIMUS_X_HERO_WI-FI_AC/J13390_ROG_MAXIMUS_X_HERO_WI-FI_AC_UM_WEB_20171010.pdf
組み立てに関連する付属品としては、Wifiアンテナ、SATAケーブル4本、RGB 4PIN LEDテープ接続ケーブル、アドレッサブル3PIN LEDテープ接続ケーブル、SLI HBブリッジ、CPUインストレーションツール、M.2 SSD固定用スペーサー&スクリュー、MOS Cooling Fan Braket、Q-Connectorとなっています。

パワースイッチやストレージLEDなど細かいPINをまとめてマザーボードに接続可能な便利なコネクタです。「Q-Connector」は組み立て時にあると便利ですがASUSマザーボードの中でも付属しないモデルもあるので事前にチェックがおすすめです。


「MOS fan bracket kit」を使用するとマザーボード固定ネジ穴を使用してVRM電源クーラーに最大で40mm角の冷却ファンをスポットクーラーとして増設することが可能です。


SLIブリッジについては200シリーズマザーボードからは従来のSLIブリッジだけでなくGTX 10XXシリーズの広帯域SLI接続に対応したSLI HBブリッジが付属するようになっており、ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)には1スロットスペース型SLI HBブリッジが付属します。


同社から発売されている「ASUS ROG SLI HB BRIDGE 3スロット版」がマザーボードのデザインと非常にマッチするのでおすすめです。マザーボード上の汎用4PIN LED端子と接続することでマザーボード備え付けLEDイルミネーションと同期操作も可能です。


ASUS AURA Syncに対応したLED端子ヘッダーの延長ケーブルとしてRBG 4PIN汎用ヘッダー用とアドレッサブル型3PINヘッダー用の2種類が付属します。

ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)にはアドレス指定対応LEDテープ用の独自3PINヘッダーがマザーボード上に実装されていますが、それを等間隔の3PINヘッダーに変換する延長ケーブルが付属します。


マザーボード全体像は次のようになっています。
ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)はATXフォームファクタのマザーボードです。黒色のPCB基板には電子回路をイメージさせるイラストがプリントされています。

マザーボード右下のチップセット用ヒートシンクについてはZ270チップセット採用のASUS ROG MAXIMUS IXシリーズ同様にASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)も電子回路をイメージさせるデザインになっています。

CPUソケットの上と左には独立したVRM電源クーラーヒートシンクが設置されています。VRM電源クーラーはチップセット同様に電子回路をイメージしたイラストが描かれ、リアI/Oカバーとも一体間のあるデザインです。リアI/Oカバーにはブランドネーム「MAXIMUS」の名が刻印されています。

ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)には10フェーズのVRM電源が実装されています。VRM電源には一般的なMOSFETの半分のサイズで90%の優れた効率を実現した「NexFET Power Block MOSFET」を使用し、チョークコイルには低損失で低発熱な「MicroFine Alloy Chokes」を使用。コンデンサには-75℃~+125℃での動作に対応し、一般的なコンデンサの5倍の寿命を持つ「10K Black Metallic Capacitors」が使用されています。

「ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)」のEPS端子は6コア12スレッドのCore i7 8700KなどCoffeeLake-S CPUに対応したマザーボードですが、CPUへ電力供給を行うEPS端子としては8PIN端子が1つ設置されています。

ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)にはマザーボード一体型リアI/Oバックパネル「プリマウントI/Oシールド」も採用されています。PCケースにパネルを装着する作業は固くて装着し難かったり、忘れてしまうこともあるのでマザーボードに統合されているのは嬉しい機能です。

リアI/Oには最新のUSB3.1規格に対応したUSB端子としてType-AとType-Cの2端子が設置されています。そのほかのUSB端子についてはUSB3.0端子が4基とUSB3.0端子が2基搭載されています。マウス・キーボードなどの周辺機器を多数繋いでいても、HTC ViveやOculus Rift CV1のようなVR HMDに十分対応可能です。個人的に残念なポイントとしてはUSB3.0/3.1は無線マウスと電波干渉を起こすことがあるのでUSB2.0端子は少し離れた場所に設置して欲しかったです。

ビデオ出力にはHDMIとDisplayPortが設置されていますが、HDMI端子については4K・60FPSに非対応で4K・30FPSが上限となるver1.4対応でした。CoffeeLake-S用のZ370ザーボードではリアI/OのHDMI端子で4K・60FPSに対応したHDMI2.0を搭載するものは非常に少ないので外部GPU(グラフィックボード)を使用しないユーザーは注意が必要です。
ネットワーク関連では低CPU負荷、高スループットで定評のあるIntel純正のLANコントローラーが採用された有線LAN端子が設置されています。ASUS ROG MAXIMUS X HEROには無線LANありとなしの2モデルがラインナップされていますが今回レビューする「ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)」は無線LANモジュールを標準搭載しており、Wi-Fi 802.11 a/b/g/n/ac、2.4/5GHzデュアルバンド、Bluetooth 4.1にも対応しています。リアI/Oには無線モジュールのアンテナ端子が設置されているので付属のアンテナを接続できます。

またリアI/Oには「USB BIOS FlashBack」ボタンが設置されており所定のUSB端子にBIOSファイルの入ったUSBメモリを接続してボタンを押すと「USB BIOS FlashBack」機能によってCPUやメモリなしの状態でもBIOSの修復・アップデートが可能です。

重量計を使用して重さを測定してみたところ、ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)は1091g程度、同じくATXサイズでZ270マザーボードとしては重い部類のASRock Z270 SuperCarrierは1092gでした。ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)はメインストリーム向け高性能ATXマザーボードとしてはちょっと重めな重量です。ちなみにエンスー向けX299マザーボードのASUS ROG MAXIMUS X HEROは1117gでした。



ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)の基板上コンポーネント詳細
続いて「ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。システムメモリ用のDDR4メモリスロットはCPUソケット右側に4基のスロットが設置されています。

固定時のツメはマザーボード上側の片側ラッチとなっています。グラフィックカードのあるPCI-Eスロット側はラッチがないので干渉の心配もありません。


グラフィックボードなどを設置するPCI-Eスロットは上から[x1、x16、N/A、x1、x16、x1、x16]サイズが設置されています。上段のプライマリグラフィックボードを2段目のスロットに配置することで、大型ハイエンド空冷CPUクーラーとグラフィックボードの干渉を回避しています。最下段のx16サイズスロットはx4帯域となっておりNVMe SSDなどに使用できます。

マルチグラフィックボード向けのx16スロットは2段目、5段目に配置されており、現在主流な2スロット占有グラフィックボードを使用しても下位グラフィックボードが上位グラフィックボードのエアフローを妨げないよう配慮されています。付属の1スロットスペース型SLI HBブリッジを使用すれば、NVIDIAの最新GPUであるGTX 1080 Ti、GTX 1080、GTX 1070を使用したマルチGPU SLI環境を構築可能です。

ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)にも最近のトレンドとしてx16サイズスロットには1Kgを超える重量級グラボの重さに耐えるように、従来のプラスチックスロットよりも垂直方向の力に対して1.6倍、水平方向の力に対して1.8倍も強靭になった補強用メタルアーマー搭載スロット「SAFE SLOT」が採用されています。

ASUSのメタルアーマー「SAFE SLOT」はPCI-Eスロットのプラスチックパーツ側面に金属製のフレームが埋め込まれており、金属フレームの四隅を半田付けで固定する構造になっています。(下写真はASUS ROG Strix Z270I Gamingのもの)

1/4/6段目に設置されたx1サイズのPCI-Eスロットはいずれも右端には切り込みが入れられているので、通信速度がPCI-E3.0x1で問題なければx1サイズより大きい拡張カードも使用可能です。

ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)にはSATAストレージ用の端子は6基搭載されています。SATA_0~5の6基はIntel Z370チップセットのコントローラーによる接続で、RAID0/1/5/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。

高速NVMe接続規格に対応したM.2スロットはCPUソケット下とチップセット下の計2基が設置されています。M2_1はNVMeとSATAの両方に対応していますが、SATA接続の場合はSATA3_0端子と排他利用です。M2_2はNVMeのみに対応しており、使用する場合は7段目のPCI-Eスロットの接続帯域がPCI-E3.0x2に制限されます。M2_1とM2_2はいずれもチップセット経由の接続です。

CPUソケット下のM.2スロット「M2_1」には「REPUBLIC OF GAMERS」のテキストロゴが刻印されたプレートカバー型の放熱ヒートシンクが装着されており、M.2 SSDのサーマルスロットリング発生を抑制する効果が期待できます。


ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)に関して、PCI-Eスロットや各種ストレージ端子の排他利用についてまとめると次のようになっています。
- GPU用の2段目と5段目のPCI-Eスロットは[x16, N/A]or[x8, x8]帯域
- 5段目x1スロットと最下段x16スロットは一部帯域共有で[N/A, x4] or [x1, x2]
- M2_1でSATA接続のM.2 SSDを使用する場合とSATA6G_1は使用不可
- M2_2をのNVMe接続はx2とx4を選択でき、x4の場合はSATA6G_5とSATA6G_5は使用不可
また「ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)」は同社製アクセサリ「ASUS HYPER M.2 X16 CARD」に対応しており、5段目のPCI-Ex8帯域PCI-Eスロットに2枚のM.2 SSDをCPU直結のPCI-Eレーンで接続することが可能です。x8帯域をx4/x4帯域に分割して使用するモードがBIOS設定として用意されています。


ASUS HYPER M.2 X16 CARD
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CPUとチップセット間はIntel Z370シリーズチップセットではX99から更新されたDMI 3.0で接続されており、この帯域が非公式ながらNVMe M.2 SSDの接続規格であるPCI-E3.0x4とほぼ同じ帯域です。

Z370チップセット搭載マザーボードのM.2スロットのうちチップセットを経由して接続されているストレージへ個別にアクセスがある場合は最新の3.0GB/s越えの高速SSDでもフルスペック動作が可能になっていますが、この帯域がボトルネックになるため複数のM.2スロットで一度にアクセスが発生すると合計で4GB/s程度がボトルネックになります。現状ではランダム性能への影響は軽微で主にシーケンシャル性能に制限がかかります。
M.2スロットのPCI-Eレーンがどこに繋がっているかで簡単に次のようなメリットとデメリットがあります。
CPU直結の場合 | チップセット接続の場合 | |
長所 | 複数のM.2 SSD(PCH側*1含む)の 同時アクセスでもフルスペック動作 |
IRSTによるハードウェアRAIDで 性能を上げることができる |
短所 | IRSTによるハードウェアRAID が構築できない (Intel製SSDではVROCで ソフトウェアRAIDが構築可能) |
複数のM.2 SSDから同時にアクセス がある場合、ストライプRAIDの場合 4GB/s程度がボトルネックになる |
ATX 24PIN端子のすぐ隣には最新USB3.1対応内部ヘッダーとUSB3.0端子が設置されています。

マザーボード下側には内部USB3.0ヘッダーが1基と内部USB2.0ヘッダーが2基設置されています。CorsairLinkやNZXT CAM対応製品など使用する周辺機器も増えているなか、ASUSのZ270やX299の上位マザーボードでは内部USB2.0ヘッダーを1基しか備えていないモデルが多かったですがASUS ROG MAXIMUS X HEROでは2基に増えておりこれらの機器も安心して使用できます。内部USB2.0が2基でも不足する場合はUSB2.0ヘッダー増設ハブ「NZXT INTERNAL USB HUB」がおすすめです。

ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)は上位ゲーミングマザーボードということで高音質オンボードサウンド機能を従来機種よりもさらに強化した「SupremeFX」も採用されています。デジタル部とアナログ部の基板分離などヘッドホン・スピーカー出力の高音質化にも注力しており、光学デジタルによるデジタル音声出力もあるので高級なヘッドホンアンプユーザーにも満足のいく構成です。最近のゲーミングマザボはサウンドボード要らずです。

有線LANには低CPU負荷、高スループットで定評のあるIntel純正のLANコントローラーが採用されており、加えて有線LANの信号特性を改善する独自機能「LANGuard」も搭載し、オンライン通信対戦ゲームユーザーの快適なプレイをバックアップします。


マザーボード基板上にはOCerのみならず一般自作erにとっても組み立て中の動作確認に便利なオンボードのスタートスイッチとリセットスイッチが実装されています。リアI/OにはCMOSクリアのハードウェアスイッチも設置されているのでOC設定をミスっても簡単に初期化が可能です。マザーボード基板右上にはPOSTエラーのチェックができるDebug LEDが設置されています。


冷却ファンや簡易水冷クーラーポンプの接続用ファン端子はマザーボード上の各場所に計9個設置されています。水冷ポンプ用ファン端子「W_PUMP+」や高電流ファン端子「H_AMP_FAN」は36W(3A)の高出力に対応しており、簡易水冷の水冷ポンプや本格水冷用のD5/DDCポンプなどにも電力供給できます。

マザーボード上には本格水冷PCユーザーには嬉しい外部温度センサーの接続端子が水路IN/OUT用を含めて4基設置されています。ASUSのファンコントロール機能は外部センサーをソースにした水温依存のファンコントロールが可能なので管理人は以前から水冷ユーザーにお勧めしています。(関連記事)
加えて右下写真の3PINファン用端子と同じ構造の端子は水冷の流量検出端子となっており、フローインジケーター&メーターを接続することで流量の検出が可能です。ASUSマザボさえあれば水冷環境の構築は全て大丈夫と言っても過言ではなくなってきています。


温度センサー端子の隣にあるEXT_FAN端子には別売りオプションパーツの冷却ファン&サーモセンサー拡張ボード「ASUS FAN EXTENSION CARD」を装着してマザーボードのファンコン機能によって操作可能なファン端子やコントロールソース温度となる温度センサーを拡張できます。

ASUSマザボのCPUインストレーションツールが便利
「ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)」も対応しているASUS製マザーボードの一部に付属するCPUインストレーションツールが非常に便利なので紹介します。日本国内ではマニュアルやBIOSメニューのローカライズ品質やユーザー数の多さからASUS製マザーボードが初心者におすすめなマザーボードとしては鉄板として紹介されることが多いです。とはいえ最近のマザーボードは不具合や相性問題も少ないので、ASRock、GIGABYTE、MSIなどASUSを含めた主要4社のマザーボードであれば特に問題はなくなっています。
しかしながら管理人的にはASUSマザーボードの独自の機能であるCPUインストレーションツールの存在が理由で初心者にはこの機能に対応したマザーボードをお勧めしています。
初心者、経験者ともに自作PCでパーツをダメにする可能性のトップに入るであろう項目にCPU着脱時のマザーボードのCPUソケットのピン折れがありますが、CPUインストレーションツールを使えばCPUの着脱が格段に簡単になるのでその心配はほぼなくなります。
CPUインストレーションキットは下の写真のようなプラスチックのパーツです。

CPUインストレーションキットはCPUの上から嵌める枠のような構造です。

CPUインストレーションキットに装着することによってCPUを指で持ち上げやすくなります。


CPU単体では指を引っかける部分に乏しいのでCPUソケットの直上でポロッと落としてしまわないか物凄く気を使いますが、CPUインストレーションキットを装着すると持ちやすさが格段に改善されます。


ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)へのパーツ組み込み
ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)にDDR4メモリとCPUクーラーを設置してみました。内容的には写真のギャラリーだけになっています。DDR4メモリには「G.Skill Trident Z Black F4-4200C19Q2-64GTZKK」(レビュー)、CPUクーラーには「Fractal Design Celsius S36」(レビュー)を使用しています。





ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)の検証機材
ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)を使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i7 8700K 6コア12スレッド (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4200C19Q2-64GTZKK(2枚のみ使用) DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) |
CPUベンチ用 ビデオカード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung 850 PRO 256GB (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
検証機材のCPUにはZ370マザーボードで使用可能なIntel CoffeeLake-S CPUの最上位モデルとなる6コア12スレッドの「Intel Core i7 8700K」を使用しています。検証機材のCore i7 8700KはCPUダイとヒートスプレッダ間のグリスを液体金属グリスに塗り替えているので通常よりも低い温度で動作しています。
・6コア12スレッド「Core i7 8700K」を殻割り5.2GHzにOCレビュー


CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。

グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。

以上で検証機材のセットアップが完了となります。
ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)のBIOSについて
「ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)」を使用した検証機の構築も完了したので動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。(OSから日付調整する前にスクショを取っている場合、日付が変になっているかもしれませんが無視してください。また内容的に差異のないものは過去のスクリーンショットを流用しています。)
ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)のBIOSに最初にアクセスするとEZモードというグラフィカルな画面が表示されます。パッと見の見栄えは良いのですが詳細モードでないと詳細設定ができないので「F7」キーを押してサクッと「アドバンスドモード(Advanced Mode)」へ移るのがおすすめです。

「F7」キーを押すとアドバンスドモードという従来通りの文字ベースのBIOSメニューが表示されます。「Main」タブの「System language」-「English」と表記された項目のプルダウンメニューから言語設定が可能で日本語UIを選択できます。ASUSマザーボードは競合他社と比較してもBIOSメニューの日本語ローカライズの充実と正確さが魅力です。

次回起動時に初回から詳細モードを起動する場合は、「起動-ブート設定」にある「セットアップモード」の項目をアドバンスドモードに変更してください。

ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)のBIOSにおいて設定の保存とBIOSからの退出はトップメニュータブ最右端の「終了」から行えます。その他の設定を行っていても左右カーソルキーですぐに退出可能です。

特定のブートデバイスを指定してBIOSから退出するBoot Override機能は「起動」タブメニューの最下段「起動デバイス選択」に配置されています。

管理人の購入した個体については初期のBIOSバージョンは「0215」でした。11月09日現在、ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)のサポートページで公開されている最新版は「0505」だったのでBIOSの更新を行いました。

BIOSのアップデート方法は、まず下から最新のBIOSファイルをダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
サポート:https://www.asus.com/jp/Motherboards/PRIME-X299-DELUXE/HelpDesk_Download/
USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、アドバンスドモードの「ツール-ASUS EZ Flash 3 Utility」でストレージデバイスからのアップデートでBIOSファイルを選択します。あとはガイドに従ってクリックしていけばOKです。



ブートとOSインストール周りについて紹介します。とはいってもASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)のブート回りは下画像のように非常に簡潔にまとめられており初心者でも迷うことはないと思います。
OSのインストールも「Boot Option #1」に「UEFI:〇〇」というOSインストールメディアを設定して保存&退出でOKです。「Boot Option #1」の下にスクロールしていくとブートデバイスを個別に指定して再起動できる「Boot override」もあるのでこちらから、同様に「UEFI:〇〇」というOSインストールメディアを選択してもOKです。

BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)のBIOS機能で管理人が気になったものをいくつかチェックしていきます。
マザーボード備え付けのLEDイルミネーションについてはデフォルトではOSのシャットダウンやスリープ時もLEDが点灯しますが、「When system is in sleep, hibernate and soft off states」の項目をOFFにすることでスリープ時やシャットダウン時のみLEDイルミネーションをOFFにすることができます。

なおシャットダウン・スリープ時のLEDの点灯・消灯設定はWindows上の「AURA Sync」から設定が可能でアプリからの操作が優先されます。ASUS Aura Syncソフトウェアの「Power Off」タブがスリープやシャットダウン時のLEDイルミネーションの設定になっています。ここから設定を行うことでASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)でもシャットダウン・スリープ時のLEDイルミネーションの消灯が可能です。AURA Syncについて詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

オンボードデバイス設定構成からはPCIE4_3(7段目のx16サイズスロット)の帯域やM2_2スロットの動作モードなど、他デバイスとの排他利用があるデバイスについて動作モードの設定が可能です。


「ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)」の5段目に設置されたx16サイズPCI-Eスロットは内部帯域がPCI-E3.0x8となっており、主にマルチGPU環境構築でセカンダリグラフィックボード用に使用されるのですが、x4/x4帯域にPCI-Eレーンを分割して同社のオプションパーツ「ASUS HYPER M.2 X16 CARD」を使用した複数枚のM.2 SSDの増設にも対応しています。5段目のPCI-Eスロットに「ASUS HYPER M.2 X16 CARD」を装着している場合、下のように追加で設定項目が表示されます。

「Hyper M.2 X16」の設定をEnabledにすることによって「ASUS HYPER M.2 X16 CARD」を使用して2枚のM.2 SSDをCPU直結のPCI-Eレーンで接続することができました。


マザーボード上のコンポーネント詳細でも紹介した外部温度センサーについてはBIOS上からも温度をモニタリングできます。簡易水冷(AIO水冷)ポンプ専用の項目も用意されており、ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)であれば冷却機能周りは空冷・水冷ともにほぼ全てBIOS上でコントロール可能です。

BIOS上のファンコントロール機能についてですが、CPUファン端子とCPU OPT端子はCPU温度依存のファンコントロールしかできませんが、その他のケースファン端子については、外部温度センサーなどの各種温度ソースからファンコントロールが可能です。

ファン操作モードはPWM速度調整とDC(電圧)速度調整の2種類が用意されていますが、DC速度調整の場合は制御プロファイルを手動にすると、下限温度以下で冷却ファンを停止させる所謂セミファンレス機能を実現する「Allow Fan Stop」の設定が表示されます。

またASUSマザーボードにもグラフィカルUIによるファンコントールの設定機能として「Q-Fan Control」が用意されています。設定可能な内容はは上で紹介したコンソールのファンコンと同じですが、グラフィカルUIでわかりやすく設定できるよ、という機能です。直感的にわかりますし直打ちが苦手な人にはありがたい機能だと思います。

イルミネーション操作機能「ASUS AURA Sync」について
「ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)」はASUS純正のライティング操作機能「ASUS AURA Sync」に対応しています。
「ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)」ではリアI/Oカバー、CPUソケット下M.2スロット、チップセットクーラーの3か所にLEDイルミネーションが実装されています。

ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)に搭載されたLEDイルミネーションや汎用ヘッダーに接続されたイルミネーション機器は発光カラーや発光パターンを専用アプリのAURA Syncから同期操作可能になっています。AURA Syncはマザーボードのサポートページから最新版をダウンロードできます。
サポート:https://www.asus.com/jp/Motherboards/ROG-MAXIMUS-X-HERO-WI-FI-AC/HelpDesk_Download/
専用アプリである「AURA Sync」を使用することで、色を指定した固定色発光、カラーサイクル等の発光パターンプリセット、温度や音楽に合わせた発光変化など自由度の高いイルミネーション設定が可能です。




ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)のマザーボード備え付けLEDイルミネーションはソフトウェア上から各エリアに対して個別に発光カラーを設定できます。




ASUSのLEDイルミネーション同期調整機能「ASUS AURA Sync」による操作に対応した汎用4PIN LEDヘッダーがマザーボードの左上のEPS端子横と左下の2か所に設置されています。当サイトでもレビュー記事を掲載しているLEDテープ「SilverStone SST-LS02」やLEDファングリル「SilverStone FG121 / FG141」などが接続可能です。


またCablemod製から発売されているアドレス指定LEDテープなどに対応した3PINアドレッサブルLEDヘッダーも右下に設置されています。


ASUSのLEDイルミネーション機能「AURA Sync」については汎用イルミネーション機器の使用方法や導入例などを下の記事でも紹介しているので、詳しくはこちらを参照してください。
・ASUS製のLEDイルミネーション操作機能「AURA Sync」の使い方

ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)のOC設定について
ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)を使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
「ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)」のオーバークロック設定は「AI Tweaker」というトップメニューのタブページにCPUコアクロック、メモリ、電圧など各種設定項目が集約されています。「AI Tweaker」ページをスクロールしていくとCPUコアクロック、メモリ、電圧などの各種設定項目が表示されるので設定しやすいUIです。設定値を直接入力する項目でデフォルトの「Auto」に戻す場合は「a」キーを入力すればOKです。

「ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)」のオーバークロック設定項目の最初にある「AI Overclock Tweaker」ではプルダウンメニューから「Auto」「Manual」「XMP」の3つの設定モードが選択できます。Autoモードは基本的な設定項目に関する自動or手動設定が可能な一般ユーザー向けの設定モードとなっています。ManualモードはBCLK等の詳細なOC設定項目が解放される上級者向けの設定モードです。XMPモードはManualモードベースですが、OCメモリに収録されたXMPプロファイルを適用できる設定モードになっています。
OC初心者はXMPを使用しないならAutoモード、XMPを使用するならXPMモードを使用すればOKです。

CPUコアクロック(コア倍率)の変更について説明します。
コアクロックはコア数に対して各コアに最大動作クロック(BCLKに対する倍率)を指定できます。「コア0:コア1:コア2:コア3」を倍率として、例えば「45:43:43:42」のようにバラバラに指定した場合、4つのコアのうち1つに負荷が掛かる場合は4コアのうち1つが45倍動作、2つと3つの場合は43、4つの場合は42となります。
ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)ではCPU内部クロック倍率の設定モードとして、マザーボードのお任せとなる「Auto」、全コアの倍率を同じに設定する「Sync All Cores」、負荷のかかっているコア数によって最大動作倍率を設定する「Per Core」の3つのモードが存在します。

「Per Core」モードでは負荷がかかっているコア数に対して最大動作倍率を設定可能です。

一般ユーザーがCPUのOCを行う場合は通常、全コアの最大倍率を一致させると思いますが、同マザーボードの場合は「Sync All Cores」モードを選択して「1コアの倍率制限値: 50」と設定することでデフォルトのBCLK(ベースクロック)が100MHzなのでその50倍の5.0GHzで全てのコアが動作します。

「AI Overclock Tweaker」から「Manual」モードもしくは「XMP」モードを選択するとベースクロック(BCLK)の設定項目が表示されます。デフォルトのAutoでは100MHzに固定されていますが、設定値を直打ちすることで40~104MHzの範囲内では0.050MHz刻み、104~1000MHzの範囲内では0.0625MHz刻みで設定できます。CPUコアクロックはBCLKに対する動作倍率で設定されるのでBCLK110MHz、動作倍率45倍の場合はコアクロック4.95GHz動作となります。ただしBCLKを使用したOCはかなり上級者向けなので通常はAutoか100MHzが推奨です。

キャッシュ(メッシュ)動作倍率は「CPUキャッシュ最大動作倍率(Max CPU Cache Ratio)」と「CPUキャッシュ最小動作倍率」から変更可能です。CPUコアクロック同様にベースクロックに対する動作倍率でメッシュの動作周波数を設定できます。

続いてコア電圧の調整を行います。
CoffeeLake-S CPUではCPUコアとキャッシュへの電圧は共通なので、CPUコアクロックやキャッシュクロックのOCに関連する電圧設定としては、ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)では「CPUコア/キャッシュ電圧(CPU Core/Cache Voltage)」の項目を変更します。
ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)ではCPUコア電圧をマニュアルの設定値に固定する「Manual」モード、CPUに設定された比例値にオフセットかける「Offset」モード、ターボブースト時にのみ昇圧を行う「Adaptive」モードの3種類が使用できます。

ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)でCPUコア/キャッシュクロックのOCを行う場合、CPUコア電圧の設定については設定が簡単で安定しやすいので固定値を指定するManualモードがおすすめです。6コア12スレッドCore i7 8700KをOCする場合のCPUコア電圧の目安として、非殻割りで5.0GHzを目指す場合は1.300~1.400V、殻割りクマメタル化で5.0GHz以上を目指す場合は1.400~1.500V程度が上限になると思います。

CPUコア電圧モードについて簡単に説明すると、オフセットモードやアダプティブモードはCPU負荷に比例して電圧が設定されており、低負荷時は電圧が下がるので省電力に優れるのですが、OCをする場合はマザーボードによって挙動に差があり安定する設定を見極めるのが難しいので、個人的にはオフセットやアダプティブは定格向け、OCには固定値適用の固定モードを推奨しています。
仮にOCでオフセットやアダプティブを使う場合も最初はコアクロックに対して安定する電圧を見極める必要があるので、まずは固定モードを使用します。
ちなみにマザーボードにより対応しているモードは異なりますが、CPUのオーバークロックに付随するコア電圧のモードの概略図は次のようになっています。

CPUコアクロックをOCする場合は「CPU SVID サポート」を無効化した方がよいとBIOSヘルプで推奨されています。

またCPUのOC/DCに関連する電力設定としてASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)ではコアクロックと電圧の設定項目の中間あたりに「External Digi+ Power Control」と「CPU電力詳細設定」の2つがあります。

コアクロックを高く設定する時に追加で変更するといい項目として「External Digi+ Power Control」の「ロードラインキャリブレーション」があります。ロードラインキャリブレーションはCPU負荷時の電圧降下を補正してOCを安定させる機能となっており、補正の強度としてLevel 1~Level 8の8段階になっており、Levelが大きくなるほど電圧降下の補正は強くなりOCは安定しやすくなりますが発熱も大きくなります。
「ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)」では、CPUコア電圧マニュアルモードと組み合わせる場合、LLCをLevel6に設定するとマニュアル指定値が綺麗に反映されるようなのでLevel6がおすすめです。

「External Digi+ Power Control」ではその他にも「CPU VRM スイッチング周波数」「CPU VRM スペクトラム拡散」「CPU VRM 可動フェーズ設定」などCPUのオーバークロック時にマザーボードVRMからの電力供給を安定させる設定項目が用意されています。

また「CPU電力詳細設定」には「瞬間許容電力制限値(Short Duration Power Limit)」「許容電力上限値(Long Duration Power Limit)」という2つの電力制限機能があり、電力制限がかかる閾値(単位はW)と電力制限がかかるまでの時間を設定できます。電力制限がかかるとその指定電力内に収まるようにコアクロックに制限がかかります。デフォルトの状態では「Auto」になっていますが、ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)では手動でコアクロックのOCを行った場合はパワーリミットが掛からないように勝手に設定してくれるので放置でも問題ありません。基本的に一定消費電力以内に収めるための省電力機能(+若干のシステム保護機能)と考えてください。

メモリのオーバークロックについても簡単に紹介だけしておきます。
メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。
一方でXMPによるメモリOCは上の手順によるOCをメーカー側がすでに行い動作確認をしているので、メーカーが動作確認を行ったOCプロファイルを適用するだけで簡単にメモリをオーバークロックできます。
メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありませんが、「ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)」では正常にPOSTできないメモリOC設定でエラーが出た場合は数回再起動した後、自動で2133MHzのような緩い設定で起動してくれるのでメモリOCを安心して行えます。
ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)では「AI Overclock Tweaker」からXMPモードを選択するとに設定することでOCメモリに収録されたXMPプロファイルによるメモリのオーバークロックが可能です。

「AI Overclock Tweaker」のAutoモードやManualモードにおいて「DRAM Frequency」の設定値がAutoになっている場合は、使用するメモリにSPD情報として収録されている動作クロック2133~2666MHzなど周波数およびタイミングによる定格動作となります。
手動でメモリ周波数を設定する場合は「DRAM Frequency」の項目でプルダウンメニューから最大8533MHzまでの動作クロック(倍率)設定が可能です。G.SkillやCorsairのOCメモリでも17年後半現在XMP4600MHzが最高なのでまだまだ道のりは長いですが。
メモリ周波数もBCLKに対する倍率で動作周波数が決まっているので、BCLKを標準値の100MHzから120MHzに上げると、44倍設定時の動作周波数は4000MHzから5280MHzに上がります。

メモリタイミングの個別打ち込み設定も可能です。メモリタイミングを手動で設定する場合は基本的には「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS (tRCD)」、「RAS Active Time (tRAS)」の主要な3タイミングと、加えて「Reflash Cycle Time (tRFC)」と「Command Rate:1 or 2」の6つ以外はAutoのままでいいと思います。
主要なタイミング設定値から「RAS Precharge (tRP)」の項目がなくなっているのがメモリOC耐性的にどのような影響があるのか気になるところです。

DDR4メモリの周波数OCを行う際は「DRAM CH AB/CD Voltage」の項目を、3000MHz以上にOCする場合は1.300~1.350V、3800MHz以上にOCする場合は1.370~1.400Vに上げる必要があります。メモリをOCする場合は最初から1.350V以上にDRAM電圧を盛っておくのがおすすめです。

1,2世代前の過去のIntel CPUではメモリ周波数を3200MHz以上にOCする場合は「VCCSA(CPU SA Voltage)」を盛ると動作がメモリOCが安定したのですが、CoffeeLake-S環境における「VCCSA」の影響は今のところよくわかりません。Auto設定で安定しない場合は昇圧を試してみても良いかもしれません。また今のところZ370環境では不具合を確認できていませんでしたが、メモリのオーバークロックでPCI-E拡張カードの検出不可やオンボードUSB端子の干渉などが発生する場合は「電圧設定」にある「VCCIO(CPU VCCIO Voltage)」や「チップセット電圧(PCH Core Voltage)」を盛ると安定するかもしれません。

ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)の動作検証・OC耐性
BIOS周りの管理人的に気になるところの紹介はこのあたりにしてASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)を使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。まずはFast Bootとフルスクリーンロゴを無効にしてOSの起動時間を測定したところ、ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)の起動時間は19秒ほどした。メインストリーム向けの多機能マザーボードの起動時間としては遅いというほどではありませんが、POST時間に少し時間がかかっている印象です。
続いてASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)を使用した場合のCPUとメモリのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
Core i7 8700KのOC設定は「CPUクロック倍率:52」「CPUキャッシュ倍率:48」「CPUコア/キャッシュ電圧:1.400V(固定モード)」「ロードラインキャリブレーション: Level 6」「SVIDサポート: Disabled」「メモリ周波数:3800MHz」「メモリ電圧:1.400V」「メモリタイミング:16-16-16-36-CR1」としています。




上の設定を適用したところ問題なくOSを起動させることができました。


ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)の環境(BIOS:0505)でメモリ周波数を3800MHzにOCしてメモリタイミング:16-16-16-36-CR1に詰めることができました。

マザーボード以外は同じ検証機材を使用してGIGABYTE Z370 AORUS Gaming 7の環境でメモリOCを行った時は3900MHzで正常に動作したのですが、「ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)」ではメモリ周波数3800MHzまでしか動作を安定させることができませんでした。とはいえ3800MHzでタイミングをCL16まで詰められるのでメモリOC耐性は決して悪くないと思います。メモリとの相性が原因である可能性も否定できないのですが、周波数ベースで見ると、いまのところASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)はGIGABYTE Z370 AORUS Gaming 7に比べてメモリOCが伸びにくいのかもしれません。まだ初期BIOSなので今後のBIOSアップデートでメモリOC耐性のさらなる改善も期待したいところ。
6コア12スレッド「Intel Core i7 8700K」のコア5.2GHz/キャッシュ4.8GHz、メモリ周波数3800MHz、メモリタイミング16-16-16-36-CR1でCinebenchも問題なくクリアできました。

続いてこのOC設定を使用してストレステストを実行しました。
検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間8分、WQHD解像度、60FPS、容量4.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はCore i7 8700K 定格の場合15分ほどなので同じ動画のエンコードを2つ並列して2周実行しています。テスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。

ストレステスト中のCPU温度とCPU使用率のログは次のようになりました。マザーボードにASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)を使用して「Intel Core i7 8700K」をコア/キャッシュクロック5.2/4.8GHz、メモリ周波数3800MHzにOCしてストレステストをクリアできました。CPUクーラーのファン回転数は1000RPMで固定しています。

続いてスマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE」を使用してASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)のVRM電源温度をチェックしてみました。
まずはASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)においてCore i7 8700Kをデフォルト設定で負荷をかけてからVRM電源温度を測定してみました。ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)のデフォルト設定ではCore i7 8700Kは全コア4.7GHzというかなり高いコアクロックで動作します。

一般的には全コア4.3GHzがCore i7 8700Kの定格動作と言われているので、ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)の標準動作における4.7GHzはそれを大きく上回る数値ですが、VRM周りに風の当たらない簡易水冷CPUクーラー環境で長時間負荷をかけてもVRM電源部分の温度はサーモグラフィー上で70度前後に収まっています。標準設定で使用する分にはCPUがCore i7 8700KであってもVRM電源周りはパッシブ空冷で問題なく運用できそうです。

続いてCore i7 8700Kを上記のBIOS設定でOCした時の負荷テスト中のVRM電源部分の温度をチェックしていきます。
Core i7 8700Kを全コア5.2GHzにOCした時のVRM電源温度をサーモグラフィーで確認したところ、ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)のVRM電源周りの温度は90度前後になりました。辛うじて100度の大台は超えていないもののCore i7 8700Kを5.0GHz以上にOCする場合はVRM電源周りの冷却にスポットクーラーの利用を推奨します。

「ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)」には「MOS fan bracket kit」というスポットクーラー増設キットが付属するので、これでVRM電源の冷却を補助してやれば5.2GHz以上のOCにも対応できそうです。


【追記】
ツイッターの投票で簡単に調べてみたところ下のような結果になりました。もう少しまとまるかなと思っていたのですが綺麗にバラけてしまった(ところで5.4GHzとか当たり石でも難しい周波数を選んだ人はいったい……)
簡易水冷CPUクーラー&スポットクーラーなしの環境でCore i7 8700KをOCした時にVRM電源が100度を超えたらダメだと思うコアクロックは? (逆にこれ以上OCするならスポットクーラー使うのは自己責任じゃね、と思うのは?)
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) 2017年11月9日
上の統計を参考に(5.4GHzの投票は無視)すると、5.0GHz OCがパッシブ空冷で問題なく運用できれば2/3のユーザーは満足するはず。
ということで全コア5.0GHz、1.300V(LLC:Lv6)の簡単設定ですが、OCして同じように負荷をかけたところ、VRM電源周りの温度は80度前後でした。「ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)は全コア5.0GHzまでであればパッシブ空冷でも特に問題なさそうです。

ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)のレビューまとめ
最後に「ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- ROG MAXMUSシリーズらしいブラック一色のクールなデザイン
- マザーボード上に3か所設置されたLEDイルミネーションが綺麗
- CPUインストレーションツールが非常に便利
- Core i7 8700K 5.2GHz、メモリクロック3800MHz OCで安定動作
- マザーボード一体型リアI/Oパネル「プリマウントI/Oシールド」搭載
- 重量級グラボにも耐えるメタルアーマー採用PCI-Eスロット「SAFE SLOT」
- 動作検証に便利なオンボードスタートスイッチ
- 外部センサーと搭載で水温ソースのファンコンも可能なので水冷PCにも最適
- 独自のSSDヒートシンク付き1基を含めてNVMe対応M.2スロットが2基設置されている
- NVIDIA GTX 10XXシリーズのマルチGPU用のSLI HBブリッジが付属する
- Core i7 8700Kを5.0GHz以上にOC時はスポットクーラーの併用を推奨
- HDMI端子はver1.4で4K・30FPSが上限
Intel CoffeeLake-S CPU対応Z370マザーボード「ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)」は、ASUSのゲーマー&オーバークロッカー向けブランド”ROG MAXIMUS”シリーズの中では最も安価なエントリーモデルという位置付けですが、ROG MAXIMUSシリーズのデザインを踏襲したスタイリッシュな外見、Core i7 8700Kの5GHzを超えるOCにも耐えるVRM電源、Intel製有線LAN&無線LAN搭載などゲーマーとOCer向けに必要な機能を手堅く備えています。国内で同日発売のAPEXと比較してみるとわかりやすいですが、APEXがOC特化なモデルであるのに対してHEROはオールラウンダーな構成になっており、ROG MAMIMUSシリーズの中では価格とのバランスもとれているので比較的、手を伸ばしやすい製品だと思います。
ASUS製マザーボードではお馴染みですがBIOSやマニュアルの日本語ローカライズ品質は主要4社の中でも随一となっており、BIOSのテキストベースUIの使い勝手も良好です。加えてASUSマザーボードの独自機能「CPUインストレーションツール」があればCPUの着脱時のピン折れの心配は皆無と言っても過言ではないくらい安心感のあります。ROG MAXIMUSと言うと高価で上級者向け製品のイメージが強いかもしれませんが、これらを備えた「ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)」は初心者にも優しいマザーボードだと思います。
ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)を使用した検証機では6コア12スレッドのCore i7 8700Kを全コア5.2GHz、キャッシュ4.8GHzに、メモリ周波数も3800MHzにオーバークロックして負荷テストをクリアすることができました。
Core i7 8700Kと組み合わせて使用した場合、デフォルト設定による運用では全コア4.7GHzというかなり高いコアクロックで動作しますが、それでもVRM電源温度はサーモグラフィーでせいぜい70度前後なので、同マザーボードの標準設定で運用するのであればCoffeeLake-S CPUの各種においてVRM電源はパッシブ空冷の冷却でも問題ないと思います。
一方でCore i7 8700Kを5.2GHzにOCして長時間の負荷をかけた場合、VRM電源温度は90度前後に達しました。100度の大台には辛うじて達していないもののPCケースに組み込む実用環境においてCore i7 8700Kを5.0GHz以上にOCする場合はやはりVRM電源の冷却用にスポットクーラーを使用した方がいいと思います。「MOS fan bracket kit」というスポットクーラー増設キットが標準で付属するのでVRM電源の冷却については総じて問題ないと考えてよさそうです。
メモリOCについてはメモリ周波数3800MHzにおいてメモリタイミング16-16-16-36-CR1まで詰めることができたのでメモリOC耐性も悪くないと思います。サンプル数が少ないので判断が難しいですが、いちおう他マザーボードで3900MHzで動作できたメモリがPOST失敗したので、今後のBIOSアップデートでこの辺りがさらに改善されることを期待したいです。
以上、「ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)」のレビューでした。

ASUS ROG MAXIMUS X HERO (Wi-Fi AC) ATXマザーボード
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