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Radeon R9 Furyシリーズ以来2年ぶりとなるAMDの次世代ミドルハイGPUである「Radeon RX Vega 56」のリファレンス空冷モデルをレビューします。NVIDIAからGTX 1070が投入されて以来、PC向けミドルハイGPU市場はNVIDIAに独占される形でしたが、そんな空白期間にNVIDIAが築き上げた牙城に、AMDの最新ミドルハイGPUであるRX Vega 56がどこまで食い込むことができるのか徹底検証していきます。
・RX Vega 56販売ページ:
<Amazon><TSUKUMO><PCショップアーク>
<PCワンズ><パソコン工房><ドスパラ>
Radeon RX Vega 56 レビュー目次
1.Radeon RX Vega 56の外観
2.Radeon RX Vega 56の検証機材セットアップ
3.Radeon RX Vega 56のゲーム性能
4.Radeon RX Vega 56の温度・消費電力
5.Radeon RX Vega 56のオーバークロック
6.倍速補完機能「AMD Fluid Motion」の効果と使い方
7.Radeon RX Vega 56のレビューまとめ
Radeon RX Vega 56の外観
早速、Radeon RX Vega 56を開封していきます。キャラメルボックス型の箱から内パッケージを取り出して開くとスポンジスペーサー&エアパッキン付き静電防止ビニールという一般的な梱包でグラフィックボード本体が鎮座していました。グラフィックボード以外の付属品は簡易マニュアルのみです。
梱包や付属品のチェックは簡単に済ませて、グラフィックボード本体を見ていきます。
Radeon RX Vega 56は標準リファレンスモデル同様に全長267mm程度です。競合製品となるNVIDIA GeForce GTX 1070のリファレンスモデルであるFounders Editionとおなじボード長となっています。
GPUクーラーはリファレンスモデルとして標準的な外排気型でブロアーファンが搭載されています。
余談ですがRX Vega 56のリファレンスモデルはいくつかのベンダーからリリースされていて基本的に箱詰めだけの違いなのですが、ブロアーファン中央のシールは各社で違います。MSIやGIGABYTEは自社のメーカーロゴのシールです。個人的にRadeonマークのシールが好みだったのでサファのRX Vega 56を選びました。
Radeon RX Vega 56のリファレンスモデルは2スロット占有グラフィックボードとなっています。
Radeon RX Vega 56はPCIブラケットと同じ背の高さなので、PCケースサイドパネルとの干渉の心配も最小限です。
Radeon RX Vega 56は上位モデルのRX Vega 64と同じく補助電源が8PIN*2です。
Radeon RX Vega 56はAMDのリファレンスモデルなので販売ベンダーによらずグラフィックボード自体は共通となりますが、今回購入したSAPPHAIREの箱詰め品についてはPCI-E端子と各種ビデオ出力の保護カバーはなしでした。
Radeon RX Vega 56のビデオ出力はHDMI2.0×1、DisplayPort1.4×3の4基が実装されています。PCIブラケット側から排気を行うブロアーファンGPUクーラーなのでDVI-Dが廃されて排気面が広く確保されているのが嬉しいです。
Radeon RX Vega 56のリファレンス空冷モデルには金属製バックプレートが装着されています。
補助電源部分にはGPUの負荷状況を示すLEDインジケーターである「GPU Tach」が並んでいます。「GPU Tach」については左上に実装された小型スイッチによってLED発光カラーを赤と青、また発光の有無自体も設定可能です。
PCIブラケット付近にはBIOS切り替え用のスライドスイッチが設置されています。PCIブラケット側にスライドされている標準状態がプライマリBIOS、逆側はセカンダリBIOSとなっています。
デュアルBIOSについてはGPU性能や静音化に関わる消費電力制限(パワーリミット)に影響します。プライマリは標準パフォーマンス、セカンダリは省電力で静音重視なプロファイルとなっています。
なおグラフィックボードの重量はGTX 1080 Ti Founders Editionが1056gに対して、Radeon RX Vega 56も同等の1058gでした。ちなみにRadeon RX Vega 64 Limited Editionも1000g程度です。
バックプレート等で基板の反りは防止されていますが、PCI-Eスロットへの負荷を考えるとVGAサポートステイなどで垂れ下がりを防止したほうがいいかもしれません。
Radeon RX Vega 56の検証機材
外観やハードのチェックはこのあたりにして早速、Radeon RX Vega 56を検証用の機材に組み込みました。テストベンチ機の構成は次のようになっています。テストベンチ機の構成 | ||
ベンチ機1 |
ベンチ機2 |
|
OS | Windows10 Home 64bit | |
CPU |
Core i7 7700K Core/Cache:5.0/4.8GHz, 1.350V 殻割り&クマメタル化(レビュー) |
Core i7 7700K (レビュー) |
M/B | ASRock Z270 SuperCarrier (レビュー) |
ASUS ROG MAXIMUS IX FORMULA (レビュー) |
メインメモリ | Corsair Dominator Platinum Special Edition DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) 3200MHz, 14-16-16-36-CR2 |
G.Skill TridentZ DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) |
ストレージ |
【システム】 Crucial MX300 SATA M.2 SSD 1TBCT1050MX300SSD4 【ゲームデータ】 SanDisk SSD Ultra 3D SATA SSD SDSSDH3-2T00-J25 (レビュー) |
Intel SSD 540シリーズ SATA M.2 SSD 240GB |
電源ユニット |
Corsair HX1200i (レビュー) |
Thermaltake Toughpower iRGB PLUS 1250W Titanium (レビュー) |
PCケース/ ベンチ板 |
STREACOM BC1 (レビュー) |
Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t (レビュー) NZXT Aer F 140 3基(レビュー) |
GPU-Z上ではGPUクロックは1590MHzと表示されていますが、RX Vega 56のリファレンスモデルの仕様値としてはベースクロック1156MHz、ブーストクロック1471MHzとなっています。
空冷リファレンスモデルについてRX Vega 56と上位モデルのRX Vega 64を比較してみると、コアクロックに関して最大の状態であるステータス7のコア電圧はどちらも1200mVですが、コアクロックの設定値はRX Vega 64が1632MHzに対して、RX Vega 56は1592MHzでした。
一方でメモリクロックに関しては周波数と電圧が共に異なっており、RX Vega 64はメモリ周波数945MHz、メモリ電圧が1100mVであるのに対して、RX Vega 56はメモリ周波数800MHz、メモリ電圧が950mVでした。
Radeon RX Vega 56のリファレンスモデルではスライドスイッチによるBIOS切り替えに加えて、Radeon設定のパフォーマンスプロファイルから「Power Save」「Balanced」「Turbo」の3つモードを選択できます。
下のテーブルのようにBIOSスイッチとパフォーマンスプロファイルの組み合わせて計6種のパワーモードを選択することが可能です。なおパフォーマンスプロファイルによる電力制御はAfterBurnerによるパワーリミットのスライダー設定と同じ動作でした。
Radeon RX Vega 56のゲーム性能
Radeon RX Vega 56の性能を測るべく各種ベンチマークを実行しました。Radeon RX Vega 56はBIOSスイッチとパフォーマンスプロファイルで電力制限モードを変更できますが、今回のゲーム性能検証ではプライマリBIOSとBalancedの標準設定を使用しています。性能比較には「EVGA GTX 1080 11Gbps SC2 Gaming iCX」、「RX Vega 64 Limited Edition」、「EVGA GTX 1070 SC Gaming ACX3.0」を使用しています。まずFFXIV 紅蓮のリベレーター ベンチマークのフルHD・最高品質のスコアは同検証環境で15000程度となりました。Radeon RX Vega 56であればFFXIV 紅蓮 リベレーターに余裕で対応可能なグラフィック性能があります。
なおFF14ベンチではスコアが1万を超えたあたりからFPSが上がりすぎてCPUベンチの傾向が強くなりグラフィックボードの性能比較ベンチとしてはあまり使えなくなってくるので注意してください。FFXIV 紅蓮のリベレーターに最適なグラフィックボードやCPUなどPCスペックについては次の記事でも紹介しています。
・FFXIV 紅蓮のリベレーターにおすすめなグラボやPCは?
3DMarkで現在主流なDirectX11のベンチマーク「FireStrike」による比較になります。
FireStrike | Extreme | Ultra | |
RX Vega 56 (BIOS1, BL) |
19045 | 9201 | 4643 |
RX Vega 64 LE (BIOS1, BL) |
22430 | 10684 | 5306 |
GTX 1080 11Gbps | 22833 | 10880 | 5467 |
GTX 1070 |
18292 | 8599 | 4262 |
3DMarkの最新DirectX12ベンチマーク「TimeSpy」による性能比較となります。
TimeSpy | Asyncなし | 性能伸び率 | |
RX Vega 56 (BIOS1, BL) |
6127 | 5740 | 107% |
RX Vega 64 LE (BIOS1, BL) |
7115 |
6688 | 106% |
GTX 1080 11Gbps | 7678 | 7296 | 105% |
GTX 1070 | 5968 | 5735 | 104% |
続いて実ゲームを用いたベンチマークになります。解像度はフルHD、WQHD、4K(3840*2160)の3種類について行っており、同一のグラフィック設定で同一のシーンについて平均FPSを比較しました。
ベンチマーク測定を行ったタイトルは、Battlefield 1(最高設定プリセット)、Destiny2(最高設定プリセット)、The Division(グラフィック設定)、For Honor(超高設定プリセット)、Ghost Recon Wildlands(グラフィック設定)、Mirrors Edge Catalyst(ハイパー設定プリセット)、Rise of the Tomb Raider(グラフィック設定)、Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)、Titanfall 2(グラフィック設定)、WatchDogs_2(最高設定プリセット)、The Witcher3(グラフィック設定)、Gears of War 4(最高設定プリセット)以上の12タイトルです。
Battlefield 1(最高設定プリセット)のベンチマーク結果です。
Destiny2(最高設定プリセット)のベンチマーク結果です。
The Division(グラフィック設定)のベンチマーク結果です。
For Honor(超高設定プリセット)のベンチマーク結果です。
Ghost Recon Wildlands(グラフィック設定)のベンチマーク結果です。
Mirrors Edge Catalyst(ハイパー設定プリセット)のベンチマーク結果です。
Rise of the Tomb Raider(グラフィック設定)のベンチマーク結果です。
Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)のベンチマーク結果です。
Titanfall 2(グラフィック設定)のベンチマーク結果です。
WatchDogs_2(最高設定プリセット)のベンチマーク結果です。
The Witcher3(グラフィック設定)のベンチマーク結果です。
Gears of War 4(最高設定プリセット)のベンチマーク結果です。
Radeon RX Vega 56、Radeon RX Vega 64 Limited Edition、GTX 1080 11Gbps OC、GTX 1070 OCの4種類について実ゲーム性能の比率の平均を出したところ、Radeon RX Vega 56はGTX 1070とほぼ同性能という結果になりました。グラフィック性能面では競合NVIDIAの最新GTX10シリーズの中で一番人気なミドルハイGPUのGTX 1070と争えるパフォーマンスを十分に発揮しています。
Radeon RX Vega 56の温度・消費電力
Radeon RX Vega 56oの負荷時のGPU温度とファンノイズを検証しました。温度とファンノイズの検証負荷としてはFireStrike Extreme ストレステストを使用しました。プライマリBIOSにおけるパフォーマンスプロファイルのBalancedとPowerSaveの2つについて同じ測定を行ってGPU温度とメモリ温度とファン回転数を比較しました。
Radeon RX Vega 56ではGPUコア温度のターゲット温度が75度になるように設定されているので、パフォーマンスプロファイルのBalancedとPowerSaveの両方でストレステスト中のGPUコア温度は最大75度となっています。ファン回転数は75度を達成できる範囲内で収束するためテスト序盤で一気にファン回転数が上がって最大値をマークしますが、最終的にBalancedでは1700RPM、PowerSaveでは1500RPMとなりました。ファンコンの挙動が独特なので10分間の負荷では完全に収束しない感じですが、概ねBalancedではせいぜい1800RPM、PowerSaveでは1600RPM程度に収まると思います。
なおRX Vega 56のメモリであるHBM2はGPUクーラーベースとの接触の問題が指摘されていますが、海外サイトによる検証(リンク)によると、RX Vega 56におけるHBM2の接触のワーストケースであっても、HBM2の温度は80度半ばとなっており、上位GPUのRX Vega 64でも同様の温度になるので、この件については破損に繋がるような実害はないように思います。
Radeon RX Vega 56のGPUコア動作クロックは仕様値ではベースクロック1156MHz、ブーストクロック1471MHzと表記されていますが、実際はBIOSスイッチやパフォーマンスプロファイルの組み合わせで電力制限がかかって動作クロックは逐次変動します。
RX Vega 56の各電力モードについて動作クロックをモニタリングしたところ次のようになりました。標準動作のプライマリBIOS&Balancedの場合は平均して1300MHz程度で動作します。
またRX Vega 56と上位GPUのRX Vega 64についてリファレンスモデル同士でコアクロックを比較すると標準設定となるプライマリBIOS&Balancedでは平均コアクロックには100MHz程度の差がありました。
【ベンチ機2に入れた実用負荷テストは後日更新します】
Radeon RX Vega 56を含めていくつかのグラフィックボードについてサウンドレベルメーターを利用してゲーム負荷時のノイズレベルを測定・比較しました。ノイズレベルの測定には「サンワダイレクト 400-TST901A」を使用しています。
電源OFF時の騒音値は33~35dBです。目安として40dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになり、45dB前後で煩く感じます。50dBを超えてくるとヘッドホンをしていても煩く感じます。同じ騒音値でも不快に感じたり感じなかったりと音の性質にもよるので注意してください。
ノイズレベルの測定結果は次のようになっています。
Radeon RX Vega 56のファンノイズは、Balancedの収束値である1700RPMでは50.1dB、PowerSaveの収束値である1500RPMでは47.5dBとなりました。競合のGTX 10XXシリーズ上位モデルのリファレンス相当のファンノイズとなっています。
Radeon RX Vega 56の消費電力と瞬間的な最大電源負荷を測定しました。
測定には電源ユニット「Corsair HX1200i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの出力ではなく変換ロスを差し引いた入力電力をチェックしています。また電力測定の際は上記の主電源ユニットに加えて、CPUへの電力供給を行うEPS端子へ接続するために別の副電源ユニットを使用しています。右下スクリーンショットのように、この状態でCPUに負荷をかけても測定値が変動しないのでCPUによる消費電力の変動は基本的に含まれないと考えて大丈夫です。
測定負荷にFireStrike Extreme ストレステストを使用して、”平均値を消費電力”、”最大値を瞬間的な最大電源負荷”としたところ、測定結果は次のようになりました。
同検証環境に置いてRadeon RX Vega 56のプライマリBIOS&Balancedにおける消費電力は241W、瞬間最大負荷は307Wとなりました。競合モデルのGTX 1070はもとよりその上位モデルのGTX 1080と比較しても大きく上回る消費電力となっており、上で行ったゲームパフォーマンスの比較も考えるとワットパフォーマンスはやはり厳しいものがあります。省電力モードのPowerSaveに設定してやっとGTX 1080と同程度の消費電力でした。瞬間最大負荷が上位GPUのRX Vega 64に比べるとかなり下がっているので電源ユニットの電源容量への要求という意味では導入のハードルも低いと思います。
なお電力モード別で消費電力やコアクロックなど各数値について比較すると下のテーブルのようになりました。測定負荷にはFireStrikeExtremeストレステストを使用して数値は最後の1分間から計算しています。
平均FPSと消費電力からワットパフォーマンスをチェックしてみたところ、上位GPUのRX Vega 64ではパフォーマンスプロファイルをPowerSaveに変更するとワッパの改善も大きかったですが、RX Vega 56自体が電力効率を優先してチューニングされたモデルだからなのか、RX Vega 56では電力モードを変更してもワッパには大きな差は出ませんでした。RX Vega 56については普通に標準設定のプライマリBIOS&Balancedの組み合わせで良さそうです。
Radeon RX Vega 56のオーバークロック
Radeon RX Vega 56のオーバークロックについても簡単に検証をしてみました。AMD Radeon RX VegaやRX 4XX/5XXシリーズのオーバークロックについてはRadeonドライバ内の「WattMan」から詳細に行うことが可能です。
OSD機能が充実したMSI AfterBurnerもAMD GPUのチューニングに対応しているのでこちらからOCを行うユーザーもいるかもしれません。基本的な設定内容はWattManでもAfterBurnerでも同じなので、管理人も当初はAfterBurnerから設定を行ったのですが、AMD Radeon Adrenalin Edition 17.12.1とMSI AfterBurner ver4.4の環境でパワーリミットを操作すると、パワーリミットの基準がマイナスに振ってしまう不具合があるので今のところRX Vegaのチューニングを行う場合はWattManの使用を推奨します。
「WattMan」にアクセスするにはデスクトップの右クリックメニューやタスクバーアイコンから「Radeon設定」を起動します。Radeon設定を起動したら「ゲーム」アイコンから「グローバル設定」を選択します。
「グローバル設定」のグローバルWattManを選択すると、パフォーマンスプロファイルの変更やコアクロックなどのOCチューニングに関する画面が表示されます。手動設定でOCチューニングを行う場合はパフォーマンスプロファイルのスライダーからカスタムを選択します。
「WattMan」を使用したOCチューニングについて管理人としては、
『1.パワーリミットによるコアクロック及び電力の増減設定』
『2.メモリクロックのスライダーによるメモリOC』
『3.コアクロックのスライダーによるコアOC』
の3ステップがおすすめです。
Radeon RX Vega 56は標準でもパワーリミットによってコアクロックが抑制されているのでパワーリミットを解除する(+〇%に操作する)だけで標準よりも動作クロックが上昇します。メモリクロックについてもRX Vega 56の場合は定格800MHzから個体差にもよりますが900MHz前後まではOCできると思います。パワーリミットを最大まで上げた状態でさらにコアクロックを伸ばしたい場合は、コアクロックのスライダーを使用して少しずつコアクロックを盛っていきます。
コア/メモリ電圧もWattManから操作可能ですが、単純に電圧不足でドライバがクラッシュしたり電圧過剰でサーマルリミットが発生する以外に、パワーリミットによる電力制御と干渉して挙動がおかしくなったりして設定を詰めるのが微妙に面倒なのでAutoのまま放置するのが推奨です。
なおメモリクロックについては上位GPUのRX Vega 64と同じ945MHzへ単純にメモリクロックのスライダーのみの変更でOCするとFireStrikeExtremeのストレステスト中にモザイク状描画ノイズが発生しました。RX Vega 64ではメモリ電圧が1100mVに設定されているようなのでメモリ電圧を昇圧し、パワーリミットも+50%に解除しましたが、メモリ周波数が700MHzと950MHzに切り替わる形で変動して安定しませんでした。ちなみに水冷版RX Vega 64ではメモリ電圧が950mVと表示されるので、空冷版RX Vega 64でメモリクロックそのままに950mVに下げたところやはり電力制御と干渉するのかコアクロックとメモリクロックが安定しなくなりました。
電圧を正常に盛ることができればRX Vega 56でもメモリクロック945MHzくらいは安定すると思うのですが、電力制御と干渉してうまくOCできていないように感じます。
WattManを使用したRX Vega 56のOC設定は上の3ステップを基本として、今回は手動OC設定として「メモリクロック+80MHz」「メモリクロック+80MHz, パワーリミット+50%」「コアクロック+3%, メモリクロック+80MHz, パワーリミット+50%」の3種類を採用して比較を行います。また通常の電力モードからプライマリBIOSのBalancedとTurboも各OC設定との比較基準として使用します。
まずは各設定によるGPUコアクロックの比較です。
プライマリBIOS&Balancedとメモリ+80MHzを比較するとメモリをOCした分だけ電力的に圧迫されるためかコアクロックが若干ですが下がりました。Turboモードは実際の動作としてはパワーリミットを+15%に解除しているので、+50%に解除したOC設定と比較するとコアクロックには100MHz程度の差があります。パワーリミットを+50%に解除した状態でさらにコアクロックを+3%にOCしてもコアクロックは10MHz程度しか上がっていないのでパワーリミットがOCのボトルネックになるようです。
ここからさらにコアクロックを上げる場合はコア電圧を下げて同じコアクロックにおける消費電力を下げるという面倒なチューニングが必要になってくるため、やはりOC方法の説明で解説したように電圧はAutoのままパワーリミットとメモリクロックのスライダーだけ弄るのが手っ取り早くておすすめです。
続いて各設定別に消費電力をチェックしてみると、パフォーマンスプロファイルの変更や手動設定によってパワーリミットの解除を行うと消費電力と瞬間最大負荷が目に見えて増加していることがわかります。パワーリミット+50%では上位GPUのRX Vega 64の標準設定に近い、消費電力330Wと瞬間最大負荷430Wという値まで上がります。
OC設定別で消費電力やコアクロックなど各数値について比較すると下のテーブルのようになりました。測定負荷にはFireStrikeExtremeストレステストを使用して数値は最後の1分間から計算しています。
パワーリミットそのままでメモリクロックだけOCすると消費電力に変化なくパフォーマンスは改善するので、ワッパ改善を目指すのであればまずは、メモリクロックを安定動作する最大までOCするのが良さそうです。
ちなみに今回の検証でRX Vega 56を最大までOCするとコアクロック1476MHz、メモリクロック880MHzで平均FPSは53.2でした。一方で上位GPUのRX Vega 64ではプライマリBIOS&Balancedの標準設定においてコアクロック1430MHz、メモリクロック945MHzで平均FPSが55.8でした。RX Vega 56とRX Vega 64の有効なコア数比は3584:4096で1割以上差があることを考えると、動作クロックも含めたスケーリング的にFPSの差が小さすぎるかなという印象です。
RX Vega 56のリファレンスモデルについては電力制限が理由でOCの限界が早いですが、RX Vega 56のAIBモデルでパワーリミットをかなり盛れるのであれば下剋上もありえるのでは、と思います。
価格の問題はあるものの純正水冷版が鉄板なRX Vega 64と違ってRX Vega 56についてはAIBモデルが本命な気がします。
倍速補完機能「AMD Fluid Motion」の効果と使い方
AMD Radeonグラフィックボード限定で使用可能な動画フレーム倍速補完機能「AMD Fluid Motion」を実際に試してみました。「AMD Fluid Motion」は映画やアニメなどの各種動画で幅広く採用されている24FPSや30FPSの動画を60FPSに補完する機能で、高性能TVに搭載される”倍速機能”と同じことをグラフィックボードで行っています。サンプルに動画を2つ用意しました。1つ目の動画はわかりにくいですが、Fluid Motionによって若干動画がヌルヌルになっています。
2つ目のように同じような画像が大きくスクロールしていくシーンでは倍速補完の効果は絶大になっています。カクカク感が気にならない動画よりもオリジナルで気になる動画でより効果を発揮するようです。
ちなみにRX 460とi7 6700Kの環境でFluid Motion使用時と非使用時のGPU温度(最大)、GPU使用率(平均)、CPU使用率(平均)は次のようになりました。GPU使用率は大きくなっていますがファンノイズが煩くなるほどGPU温度は上がらないので、GPU性能が比較的低いエントリー帯のRX 560やRX 460でもFluid Motion使用に伴うハード面での弊害は特にないようです。
AMD Fluid Motionの利用には同機能に対応したビデオ(DVD、BD、動画ファイル)プレイヤーが必要で、市販のソフトウェアで正式に対応しているプレーヤーは「PowerDVD」となっています。
ただし市販品でなくても「Media Player Classic - Homecinema(以下、MPC HC)」というフリーソフトの動画プレイヤーと、同じくフリーで公開されているプラグイン等を使用することでAMD Fluid Motionを利用可能なので実際に試してみました。
AMD Fluid Motionを使うのに必要なフリーソフトは「Media Player Classic - Homecinema」、「Bluesky Frame Rate Converter」の2つになります。各ソフトをリンク先からダウンロードしてください。管理人はMPC HCは圧縮ファイル版、「Bluesky Frame Rate Converter」はインストール版を使用しました。
各種ソフトのインストールや解凍が完了したら、まず「Bluesky Frame Rate Converter」の設定を行います。こちらは次の画像のように各項目が設定されていれば問題ありません。(後ほどもしも動画が60FPS化されない場合は「AFMサポートを初期化する」を選んで再起動すると正常に動作するかも)
続いて「MPC HC」の設定を行います。メニューの表示から最下部にあるオプションを選択します。
オプション画面が表示されるので、左側メニューから「外部フィルタ」を選択して、右側のフィルタ追加を選び,、リストから「Bluesky Frame Rate Converter」を登録します。
追加した後は「フィルタを追加」の下の部分で「優先する」選択してください。
最後にRadeon設定から「AMD Fluid Motion」を有効化すれば設定完了です。
AMD Fluid Motionを利用する準備は完了です。「MPC HC」で動画ファイルやDVD、BDを再生すると60FPS化されると思います。60FPS化の確認には「MPC HC」メニューの「表示-統計情報」でボトムに詳細情報が各種表示できてフレームレートも書かれているのでここで確認可能です。
60FPS化が上手くいかない場合はMPC HCを再起動したり、上で書いたように「Bluesky Frame Rate Converter」から「AFMサポートを初期化する」を選んで再起動すると正常に動作するかもしれないので試してみてください。
あと動画ファイルについては対応できるものとできないものがあるようで管理人が試しただけでもFraps取ったaviファイルが60FPS化できず、そのファイルを「つんでれんこ」というソフトでエンコードしたファイルは24FPS化できました。
AMD Fluid Motionによる倍速補完機能自体は非常に有用だと思うのですが、使用準備がやや面倒だったりと若干ハードルが高いのでAMDにはぜひ純正のAMD Fluid Motion対応プレーヤーを公開してもらいたいです。
Radeon RX Vega 56 レビューまとめ
最後にAMDが送る次世代ミドルハイGPU「Radeon RX Vega 56」のリファレンスモデルを検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 最新PCゲームをフルHD・最高設定でプレイ可能なグラフィック性能
- 競合他社製品のGTX 1070と同程度の性能
- 倍速補完機能「AMD Fluid Motion」に対応
- 競合他社製品のGTX 1080よりも消費電力が大きい
- ファンノイズがそこそこ煩い
- GTX 1070比で価格が高く、極度な流通不足で入手困難
AMDのゲーマー向けGPU"Radeon RX"シリーズの次世代ミドルハイモデルRadeon RX Vega 56は17年末の大型アップデートが施された最新ドライバ「AMD Radeon Adrenalin Edition 17.12.1」を適用することで、競合NVIDIAのミドルハイGPUであるGTX 1070とほぼ一致するパフォーマンスを発揮しており、グラフィック性能面では17年最新のミドルハイGPU市場で十分通用する実力です。しかしながら消費電力はGTX 1080越えとなっており、総合的に見てNVIDIAのGTX 1070や追加投入された上位モデルGTX 1070 Tiと比較されると厳しいという実情もあります。
動画の倍速補完機能「AMD Fluid Motion」や低負荷なプレイ動画の録画・配信機能「ReLive」などソフトウェア周りは充実しており、ハード面でもアダプティブシンク機能「AMD FreeSync」に対応した液晶モニタはG-Sync対応製品よりも安価かつ多数モデルが流通しているので、そういった部分も含めて考えれば価値を見出せなくもありません。
最大の難点はやはり価格でしょうか。RX Vega 56の空冷モデルは国内相場が6~7万円とGTX 1080の高級AIBモデルに手を伸ばせるお値段、しかもほぼ同性能のGTX 1070は安価なものであれば4万円半ばで購入できるのがつらいです。RX Vega 56を決め打ちで購入しようと思っているユーザーでないとなかなか手を伸ばしにくいかと。しかもマイニング需要でゲーマーとは別の方向に売れているので極度な品薄も重なっています。
とにかく最高の性能が求められるフラッグシップという位置づけで、ともするとGTX 1080 Tiとも比較されるRX Vega 64の苦境と比較すれば、RX Vega 56に関してはミドルハイGPUというポジションなのでまだ救いのあるGPUだと思います。たしかに競合のGTX 1070と比較すると消費電力は高いものの、消費電力自体は250W前後の常識的な範囲なので実際の弊害となるGPU温度やファンノイズはAIBモデルのGPUクーラーの性能次第でカバーできる部分です。またRX Vega 56には動画の倍速補完機能「AMD Fluid Motion」などNVIDIA GTX10XXシリーズにはない特色もあります。
あとはGTX 1070と同じ価格帯とまでは言わないのでせめて5万円半ばから6万円前半で高品質なAIBモデルが潤沢に流通してくれれば、GTX 1060とRX 480/580のようにRX Vega 56とGTX 1070もミドルハイGPUとして良い競合関係になれるポテンシャルは十分にあると思います。
以上、Radeon RX Vega 56のレビューでした。
SAPPHIRE NITRO+ RADEON RX VEGA 56 LIMITED EDITION
SAPPHIRE NITRO+ RADEON RX VEGA 64 LIMITED EDITION
SAPPHIRE
・RX Vega 56販売ページ:
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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