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TLCタイプSamsung製64層V-NANDのメモリチップとSamsung製メモリコントローラーSamsung MJXを採用するメインストリーム向け最新SATA接続M.2 SSD「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB (型番:MZ-N6E1T0B/IT)」のレビュー用サンプルをメーカーよりお借りできたのでレビューしていきます。
TLC型SSDというとメモリの一部をSLCとして使用するSLCキャッシュ機能によって書き込み性能を底上げしているため、連続した大容量の書き込みにおいてはキャッシュを使い切ると階段的に書き込み速度がガクッと下がる欠点があったのですが、Samsung 860 EVOシリーズの中でも今回レビューする「Samsung 860 EVO M.2 1TB」など1TB以上の大容量モデルではそんなデメリットを克服しているらしいので、その辺りについても細かくチェックしていきます。
代理店公式ページ:https://www.itgm.co.jp/product/ssd860evo/
製品公式ページ:https://www.samsung.com/us/~/~/solid-state-drives/ssd-860-evo-m-2
データシート:https://s3.ap-northeast-2~/Samsung_SSD_860_EVO_M2_Data_Sheet_Rev1.pdf
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB レビュー目次
1.Samsung SSD 860 EVO M.2について
2.Samsung SSD 860 EVO M.2 1TBの外観
3.Samsung SSD 860 EVO M.2 1TBの検証機材と基本仕様
4.Samsung SSD 860 EVO M.2 1TBのベンチマーク比較
5.Samsung SSD 860 EVO M.2 1TBの連続書き込みについて
6.Samsung SSD 860 EVO M.2 1TBの温度とサーマルスロットリングについて
7.Samsung SSD 860 EVO M.2 1TBの実用性能比較
8.Samsung SSD 860 EVO M.2 1TBのレビューまとめ
Samsung SSD 860 EVO M.2について
Samsung社が送る2018年最新のSATA SSD「Samsung SSD 860 EVO」シリーズは同社にとってSATA SSDの普及帯メインストリーム向けモデルとなっています。Samsung SSD 860 EVOシリーズではメモリチップにSamsung製64層V-NAND 3bit MLC(TLC)を採用、キャッシュメモリは512MBから4GBのLPDDR4を搭載、メモリコントローラーにはホストシステムとの通信を高速化したSamsung MJXを使用しています。シーケンシャル読出550MB/s、シーケンシャル書込520MB/s、4KQD1ランダム読出10,000 IOPS、4KQD1ランダム書込42,000 IOPS、4KQD32ランダム読出97,000 IOPS、4KQD32ランダム書込88,000 IOPSの高速アクセスを実現しています。「Samsung SSD 860 EVO」はSamsung製64層V-NAND 3bit MLC、一般に言うところのTLCタイプ64層3D NANDが採用されています。TLC NANDは上位モデル860 PROに採用されているMLC NANDに比べて書き込み性能で劣るため、TLC SSDでは一般に搭載するNANDフラッシュメモリーの一部をSLCキャッシュとして使用して書き込み性能を底上げする機能が採用されていますが、「Samsung SSD 860 EVO」ではこのキャッシュ機能を強化し、必要に応じてSLCの領域を増減する「Intelligent TurboWrite」機能が採用されています。
「Intelligent TurboWrite」においてはキャッシュとなる疑似SLC領域は標準で数GBの容量が確保されますが、それを上回る大容量の書き込みアクセスが発生した場合にモデルによって定められた容量を追加でバッファ領域として利用できます。「Samsung SSD 860 EVO」シリーズ各モデルのSLC領域、可変領域、書込速度は次のテーブルのようになっています。
「Samsung SSD 860 EVO」シリーズ Intelligent TurboWrite の仕様 | ||||||
容量 | 250GB | 500GB | 1TB | 2TB | 4TB | |
キャッシュ サイズ |
標準 | 3GB | 4GB | 6GB | ||
可変領域 | 9GB | 18GB | 36GB | 72GB | ||
最大 | 12GB | 22GB | 42GB | 78GB | ||
連続書込 | キャッシュ内 | 520MB/s | ||||
キャッシュ外 | 300MB/s | 500MB/s | 520MB/s |
「Samsung SSD 860 EVO」シリーズには自作PC向け製品として標準的な2.5インチSATA SSDに加えて、従来のモバイルPCなどで採用されるmSATA SSDや、最新モバイルPCに採用が増え、自作PC向けにも使用可能なM&B Key型M.2 SSDの3つのプラットフォームで展開されています。
SATA接続M.2 SSD版「Samsung SSD 860 EVO」シリーズは最大容量2TBのモデルも含めてメモリチップ等の基板上素子は片面実装となっています。64層3D NANDの採用により1チップ当たりの容量が増加したため従来製品では両面実装になっていた1TBモデルも片面実装となり、2TBモデルもラインナップに加えられたことも最大の特徴の1つです。
「Samsung SSD 860 EVO」シリーズのMTBF(平均故障間隔)は150万時間、書込耐性は250GBが150TBW、500GBが300TBW、1TBが600TBW、2TBが1200TBWとなっており、メーカーによる製品保証期間は5年間です。
Samsung SSD 860 EVO(SATA接続M.2 SSD) スペック一覧 |
||||
容量 | 250GB MZ-N6E250B/IT |
500GB MZ-N6E500B/IT |
1TB MZ-N6E1T0B/IT |
2TB MZ-N6E2T0B/IT |
メモリー | Samsung製64層V-NAND 3bit MLC (TLC) |
|||
コントローラ | Samsung MJX | |||
キャッシュ | 512MB LPDDR4 | 1GB LPDDR4 | 2GB LPDDR4 | |
連続読出 | 550MB/s | |||
連続書込 | 520MB/s | |||
4Kランダム読出 QD1 / QD32 |
10,000 IOPS / 97,000 IOPS | |||
4Kランダム書込 QD1 / QD32 |
42,000 IOPS / 88,000 IOPS | |||
動作温度範囲 | 0°C~70°C | |||
MTBF | 150万時間 | |||
耐久性評価 | 150TBW | 300TBW | 600TBW | 1200TBW |
保証期間 | メーカー5年 |
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TBの外観
まず最初にSamsung SSD 860 EVO M.2 1TBの外観や付属品について簡単にチェックしておきます。紙製のパッケージを開くとSSD本体はプラスチックのスペーサーに収められていました。
「Samsung SSD 860 EVO M.2」のSSD本体については緑色PCB基板に各種素子が実装された標準的なデザインです。基板上右側からメモリコントローラー、DRAMキャッシュ、メモリチップ2枚が実装されています。M.2端子にはM-KeyおよびB-Keyの切れ込みが入っています。
左半分のメモリチップに比べて、右半分のメモリコントローラーやDRAMキャッシュは0.5mmほど背が低くなっているので1枚板なヒートシンクを各自で装着する場合はサーマルパッドの厚みを調整する必要があります。
「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」のSSD背面にはメモリチップ等の実装はなく、各種認証に関するシールだけ貼られています。
「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」のSSD本体の外観については1TBの大容量ながら片面実装を実現していることを除けば標準的なSATA接続のM.2 SSDです。
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TBの検証機材と基本仕様
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TBの各種検証を行う環境としては、ASRock Z270 SuperCarrierなどで構成されているベンチ機を使用しました。構成の詳細は下記テーブルの通りです。テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i7 7700K 殻割り&クマメタル化(レビュー) Core:5.0GHz, Cache:4.8GHz |
CPUクーラー | Intel TS15A |
メインメモリ | Corsair Dominator Platinum Special Edition DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) 3200MHz, 14-16-16-36-CR2 |
マザーボード |
ASRock Z270 SuperCarrier (レビュー) |
ビデオカード | 【基礎性能検証用】 MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC (レビュー) 【PCゲームロード時間検証用】 EVGA GTX 1080 Ti SC2 iCX (レビュー) |
システムストレージ |
Crucial MX300 SATA M.2 SSD 1TBCT1050MX300SSD4 |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」のボリュームをWindows10上で作成したところ空きスペースは931GBでした。
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TBのベンチマーク比較
「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」の性能を測るためストレージに関する基本的なベンチマークソフトを使用して測定を行います。比較対象として同じくSATA SSDの「SanDisk SSD Ultra 3D 2TB(レビュー)」と「Samsung 850 PRO 2TB(レビュー)」と「PNY CS1311 960GB」でも同様の測定を行いました。まずはCrystalDiskMark6.0.0(QD32, 8GiB)のベンチマーク結果です。
「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」のベンチマークスコアは連続読み出し560MB/s、連続書き込み530MB/sでSATA3.0 SSDとしては理想的な性能です。
ATTO Disk Benchmark(512B-64MB, 256MB, QD4)の結果は次のようになっています。ATTO Disk Benchmarkはブロックサイズ別のランダム性能を主にチェックするベンチマークなので4KB~1MBを抜粋してリード/ライト性能をグラフにして比較しました。
AS SSD Benchmark(5GB)の結果は次のようになっています
PCMark8 ストレージテストのベンチマーク結果は次のようになっています
「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」について基本的な各種ベンチマークのスコアを比較してみたところ、ベンチマークの種類によって若干のバラつきはあるものの、いずれの製品もSATA3.0 SSDとしては仕様の上限付近をマークしています。
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TBの連続書き込みについて
「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」に連続書き込みを行った場合の動作についてチェックします。記事冒頭でも言及しましたが、従来のTLC型SSDは書き込み速度の底上げのためSLCキャッシュを使用しているので、キャッシュ容量を超える大容量の書き込みが発生した場合、書き込み速度が階段的にガクッと下がる仕様になっています。動画ファイルなど数十GB以上の単一ファイルの場合はCrystalDiskMarkなどで表示される400~500MB/sの連続書き込み速度を維持できず100~200MB/sまで書き込み速度が下がります。
上の章で比較用SSDとして使用したSATA SSDの「Samsung 850 PRO 2TB」はMLC型なのでHD Tune Proを使用して250GBの大容量な連続書き込みを行っても書き込み速度が下がることはありません。特に「Samsung 850 PRO 2TB」はMLC型の中でも高性能なのでリード・ライト共に終始非常に安定しています。
一方でもう1つの比較用SSDであるSATA SSDの「PNY CS1311 960GB」はSLCキャッシュによる書き込み速度の底上げを行っている典型的なTLC型SSDとなっており、書き込み開始直後は500MB/sの書き込み速度をマークしているものの、全容量960GBに対して1.5%程度の13~15GBを書き込んだ後は300~350MB/sまで書き込み速度が低下します。
「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」ではどのような挙動を見せるのか確認してみたところ、100GBの大容量書き込みを行っても書き込み速度はSATA3.0規格として理想的な500MB/sを維持できています。「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」はTLC型に分類されるSSDですが、最新のSamsung製64層3D NANDを採用しているので容量1TB以上のモデルではTLC型SSDの欠点である大容量書き込み時の速度低下が完全に解消されています。
なおSamsung SSD 860 EVOシリーズのSLCキャッシュ機能「Intelligent TurboWrite」について、容量下位モデルの250GB/500GBモデルでは最大キャッシュ容量12GB/22GBを超過すると書き込み速度が300MB/s程度まで低下します。大容量書き込み時の書き込み速度を重視するのであれば1TB以上のモデルを選択するのがおすすめです。
「Samsung SSD 860 EVO」シリーズ Intelligent TurboWrite の仕様 | ||||||
容量 | 250GB | 500GB | 1TB | 2TB | 4TB | |
キャッシュ サイズ |
標準 | 3GB | 4GB | 6GB | ||
可変領域 | 9GB | 18GB | 36GB | 72GB | ||
最大 | 12GB | 22GB | 42GB | 78GB | ||
連続書込 | キャッシュ内 | 520MB/s | ||||
キャッシュ外 | 300MB/s | 500MB/s | 520MB/s |
なお「Samsung SSD 860 EVO」シリーズについて検証している過程で、発生頻度は高くないものの特定条件下において1TB以上の大容量モデルであっても大容量の連続した書き込み時に書き込み速度がキャッシュ外の仕様値よりも明らかに低くなるケースが確認できました。通常は500MB/s前後をマークする動画ファイルのコピー書き込みにおいて、M.2 SSDの「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」では仕様値500MB/sを大きく下回る250MB/s程度、2.5インチSATA SSDの「Samsung SSD 860 EVO 2TB」でも仕様より低い400MB/sに下がるケースがあることも確認しています。
いまのところ確実に再現する手順(具体的な原因)はわかっていないのですが、下記の手順において手順2の段階で書き込み速度の低下が発生しやすいことが確認できています。
1. HD Tune Pro 5.70のFile benchmarkで100GB以上の書き込みと読み出しを行う
2-a. 50GB程度の動画ファイルをSamsung 860 EVO M.2 1TBへ書き込む
2-b. HD Tune Pro 5.70で同じ負荷を繰り返す
同社製品のMLC型SSDで「Samsung 850 PRO 2TB」や「Samsung 860 PRO 2TB」、および他社製品でSandisk製ですが同じくTLCタイプ64層3D NANDを採用している「SanDisk 3D SSD 2TB」の3つについて同じ検証を行っても速度低下は発生しなかったため、「Samsung SSD 860 EVO」シリーズに固有の症状として、何らかの条件下(おそらく大容量書き込みが連続して発生した場合)において書き込み速度の低下が発生する可能性があるようです。
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TBの温度とサーマルスロットリングについて
M.2 SSDで重要な項目として「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」の温度とサーマルスロットリングについてチェックしていきます。筐体を放熱ヒートシンクとして使用できて熱密度を下げられる2.5インチSSDと比較して、M.2 SSDではそのコンパクトさゆえに放熱性能には表面積的な限界があり、連続したアクセスが発生するとメモリチップやメモリコントローラーが高温になって速度制限がかかるサーマルスロットリングが発生する可能性があることが知られているので、「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」について連続アクセス発生時の温度やサーマルスロットリング発生の有無をモニタリングソフトとサーモグラフィーを使用して検証します。
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TBのSSD温度の測定やサーマルスロットリング発生の有無の確認については、マザーボード上のM.2スロットにそのままSSDを装着して検証を行います、
測定時の検証負荷としては上で行ったベンチマーク測定同様にCrystalDiskMark6.0.0(QD32, 8GiB)を使用して間を置かず複数回ベンチマークをループさせ、その間のSSD温度や読み出し・書き込み速度のモニタリング値をHWinfoを使用してログ取得します。(下画像はSamsung 960 PROの例)
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TBの検証結果を確認する前に、同じくSATA接続M.2 SSDの「Crucial MX300 M.2 SSD 1TB」を比較参考のサンプルとして上記の負荷テストを実行した結果を確認しておきます。
Crucial MX300 M.2 SSD 1TBで負荷テストを実行した場合のSSD温度とアクセススピードの推移は下のようになっています。Crucial MX300 M.2 SSD 1TBのソフトウェアモニタリング温度はおそらくメモリチップの温度を示しており、メモリ温度は最大温度に近い60度半ばを示しています。
サーモグラフィーによって負荷テスト終盤におけるCrucial MX300 M.2 SSD 1TBのM.2 SSD上の温度を確認してみると、右端に配置されたメモリコントローラーは90度、中央に配置されたメモリチップは50~60度となっています。Crucial MX300 M.2 SSD 1TBは連続アクセススピードが数GB/sに達するNVMe接続と比較すると低速なSATA接続SSDですが、メモリコントローラーはかなりの高温です。
本題のSamsung SSD 860 EVO M.2 1TBの温度やサーマルスロットリングの有無についてチェックしていきます。
まずソフトウェアモニタリングによるSamsung SSD 860 EVO M.2 1TBのSSD温度とアクセススピードの推移は下のようになっています。Samsung SSD 860 EVO M.2 1TBに関してソフトウェアモニタリングが可能な温度はメモリチップの温度になっているようです。メモリ温度の最大値は50度未満なので良好な結果だと思います。
負荷テスト終盤におけるSamsung SSD 860 EVO M.2 1TBのサーモグラフィーは下のようになっています。Crucial MX300 M.2 SSD 1TB同様に右端のメモリコントローラー温度が最大温度になっていますが、メモリコントローラーの温度は60度半ば、左半分に実装された2枚のメモリチップは40~50度となっています。同じSATA接続SSDでもCrucial MX300 M.2 SSD 1TBと比較してSamsung SSD 860 EVO M.2 1TBは大幅に温度が低くなっており、そのままの状態でも安心して使用できます。
「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」についてはメモリコントローラーおよびメモリチップ温度は比較的低温なのでそのままの状態でも問題なさそうですが、長期運用における温度原因の故障リスクを最小限にするため、可能であれば、M.2 SSDヒートシンクやヒートシンク付きPCIE拡張ボードの利用をおすすめします。
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Samsung SSD 860 EVO M.2 1TBの実用性能比較
続いて「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」で大容量・多数データのコピーやPCゲームのロード時間など実際の使用について性能比較をしてみました。ベンチマークソフトによる基礎検証同様に比較対象としてSATA SSDの「SanDisk SSD Ultra 3D 2TB(レビュー)」と「Samsung 850 PRO 2TB(レビュー)」と「PNY CS1311 960GB」でも同様の測定を行いました。まずはファイルのコピーに関する実性能比較となります。検証に使用するデータとしては次のような80GBで多数のファイルが入ったゲームのフォルダ(The Witcher 3とRise of the tomb Raiderなどのゲームフォルダ)と50GBの動画ファイルの2種類を使用しています。
データのコピーにおいては当然ですが、元データのあるストレージの読み出し性能とコピー先の書き込み性能の両方が重要になります。測定においては書き込み先/読み出し元の対象となるストレージが必要になるため、各ストレージのコピー相手にはM.2-PCIE変換アダプタ「Aquacomputer kryoM.2」に設置したSamsung 960 PRO 512GBを使用しています。
コピーテストにおいて検証ストレージがコピー相手「Samsung 960 PRO 512GB」と同じくNVMe SSDの場合は、ASRock Z270 SuperCarrierの1段目PCI-Eスロットにグラフィックボード、3段目PCI-Eスロットにコピー相手「Samsung 960 PRO 512GB」、5段目PCI-Eスロットに検証ストレージを装着しています。
Z270プラットフォームではCPU-チップセット間のDIMM3.0の帯域がボトルネックになって複数のNVMe SSDへ同時にアクセスが発生するとトータルのアクセススピードが4GB/s程度に制限される場合がありますが、ASRock Z270 SuperCarrierではPLXスイッチチップを介するもののCPU直結PCI-Eレーンに接続されているので、この問題は発生しません。
「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」など各種検証ストレージとSamsung 960 PRO 512GBとの間で50GBの動画ファイルおよび80GBのゲームフォルダをコピーした時間の比較結果は次のようになりました。
まずは50GBの動画ファイルのコピーについてですが、動画ファイルは単一の大容量ファイルなので実際のコピーではベンチマークのシーケンシャルリード・ライト性能が重要になってきます。
「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」を含めて4種のSATA SSDは連続読み出し性能がどの製品でもSATA3.0の規格上限に達しているのでコピー読み出し時間も100秒程度で横並びになっており、読み出し速度は500MB/s程度となっています。
「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」は、同社製MLC型SSDで前世代フラッグシップSATA SSD「Samsung 850 PRO 2TB」と同等の102秒という書き込み時間を実現しています。同じく64層3D NAND採用でTLC型SSDの書き込み速度低下を解消している競合製品の「SanDisk SSD Ultra 3D 2TB」と比較しても若干速い書き込み速度となっています。
続いてゲームフォルダのコピーについてですが、ゲームフォルダは大小様々なファイルを含むので、実際のコピーではベンチマークの連続性能だけでなく、ランダム性能も重要になってきます。
動画ファイルのコピー読み出し同様にゲームフォルダのコピー読み出しにおいても「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」を含めて4種のSATA SSDは180秒程度で横並びになっており、読み出し速度は平均420MB/s程度となっています。
一方で書き込み速度については、MLC型の「Samsung 850 PRO 2TB」が最速の165秒、TLC型の「PNY CS1311 960GB」が304秒に対して、「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」は「Samsung 850 PRO 2TB」に若干遅れて171秒でした。動画ファイルのコピー書き込み同様に競合製品の「SanDisk SSD Ultra 3D 2TB」よりも若干高速という結果になっています。
続いて実際にPCゲームのロード時間も比較してみました。
The Witcher 3ではグラフィック設定をフルHD解像度・最高設定としてノヴィグラドの広場からトゥサンのコルヴォ・ビアンコブドウ園までのファストトラベル時のロード時間を比較しています。
Rise of the Tomb RaiderではフルHD解像度においてグラフィック設定をDirectX12で個別に最高設定として製鋼所の空き地までのファストトラベル時のロード時間を比較しています。
以上の条件で「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」など各ストレージについてゲームのロード時間比較を行った結果は次のようになりました。
ロード時間を測定して比較してみたところコンマ秒で差がある可能性はあるものの「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」含めて各SATA SSDでは大きな差は確認できませんでした。
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TBのレビューまとめ
最後にSamsung製64層V-NANDを採用するTLC型SATA接続M.2 SSD「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB(型番:MZ-N6E1T0B/IT)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- SATA3.0規格として理想的な連続リード560MB/s、連続ライト530MB/s
- TLC SSDながら1TB以上のモデルは連続した大容量の書き込みでも500MB/sを維持
- 1TBや2TBの大容量モデルも片面実装のM.2 SSD
- 高価なMLC SSDと比較しても遜色ないリード・ライト性能
- TLCらしい安価な価格帯
- 1TBモデルの耐久性評価は600TBWで他社製品よりも仕様上50%以上の高寿命
- 250GB/500GBの容量下位モデルは大容量書き込み時に書込速度が300MB/sに低下
- 1TB以上のモデルでも特定条件下で書き込み速度の低下が発生する可能性あり
- 同容量の他社製品よりも若干高価
「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」を検証してみたところ、基礎的な各種ベンチマークでは既存のSATA SSD同様にSATA3.0の規格上限を満たす理想的なスコアでした。
従来型のTLC SSDではSLCキャッシュ容量を超えるような連続した大容量の書き込み時に階段的に速度低下が発生するという欠点がありましたが、最新のSamsung製64層V-NANDを採用する「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」などSamsung SSD 860 EVOシリーズのうち1TB以上の大容量モデルはTLC SSDながらその欠点を解消しています。
実際のファイルコピー速度の比較においても従来型TLC SSDの「PNY CS1311 960GB」と違って書き込み速度の低下は発生せず、格段に速い書き込み速度を実現していました。高価なMLC型SSDでありSATA SSDの中でも最高クラスの性能を誇る同社製の前世代フラッグシップSATA SSD「Samsung 850 PRO 2TB」と比較しても「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」は遜色ない性能を発揮しています。同じくTLCタイプ64層3D NANDを採用する競合他社の2TBモデルよりも優秀な結果を出しているところも注目ポイントです。
ただし250GB/500GBの容量下位モデルはSLCキャッシュを超過して大容量書き込みが発生すると書き込み速度は300MB/s程度まで低下してしまいます。前世代と比較すると改善はされているのですが、同じくTLCタイプ64層3D NANDを採用する他社製品には容量500GBでキャッシュ超過後400MB/s以上を実現している製品があるので、下位モデルについては少し難しいところがあります。
M.2 SSDはフォームファクタとして放熱面積に限界があるのでメモリチップやメモリコントローラーの温度が気になるところなのですが、「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」は温度面で見ても他社のSATA接続M.2 SSDよりも大幅に低い温度が実現できているので安心して使用することができます。
1TBや2TBの大容量モデルであってもSamsung SSD 860 EVO M.2シリーズは片面実装なので、ユーザーが各自でM.2 SSDヒートシンクを装着する時に背面素子を気にする必要がないというメリットもあります。
Samsung SSD 860 EVOシリーズは耐久性についても1TBモデルで600TBWとなっており、TLCタイプ64層3D NANDを採用する他社製品と比較して50%以上の長寿命が期待できるところも魅力です。代わりに価格は他社の同容量の製品よりも割高になっていますが、5年保証と耐久性(仕様値)とのトレードオフと考えると妥当な価格だと思います。
TLC型SSDらしい安価な価格帯を維持したままで、大容量書き込み時の速度低下という欠点を解消し、高価なMLC型に匹敵する性能を実現した「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」は大容量なSATA接続M.2 SSDの中でも2018年の鉄板モデルの1つとして間違いのない製品だと思います。
以上、「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」のレビューでした。
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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