ASRock X470 Taichi


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第2世代Ryzen CPUにネイティブ対応となるX470チップセット搭載AM4マザーボードとしてASRockからリリースされた、高いOC耐性と同時に優れたコストパフォーマンスを実現するミドルハイブランド”Taichi”シリーズの最新モデル「ASRock X470 Taichi」のレビュー用サンプルをメーカーよりお借りできたのでレビューしていきます。競合他社と比較しても特盛りな16フェーズのVRM電源回路を実装し、8コア16スレッドのRyzen 7 2700Xの大幅なオーバークロックにも余裕で対応可能なコスパ優秀マザーボードを徹底検証します。
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製品公式ページ:https://www.asrock.com/MB/AMD/X470 Taichi/index.jp.asp
マニュアル(英語):http://asrock.pc.cdn.bitgravity.com/Manual/X470 Taichi_jp.pdf
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ちなみにASRockにおける「Taichi」ブランドの歴史は比較的新しくX470Taichiで2周年弱くらいとなっています。16年6月に発売されたIntelのエンスー向けCPU Broadwell-Eに対応する後期X99マザーボードとしてTaichiシリーズは初登場しました。
それでは「TaichiってASRockのマザボブランドの中でどんな位置づけなのか?」というと、ASRockではゲーミングマザーボードのブランドは「Fatal1ty」と名付けられており、その最上位として「Fatal1ty Professional Gaming」が存在します。(X470マザーボードではFatal1ty Professional Gamingの代わりにTaichi Ultimateが上位モデルとしてラインナップされています。)
X99やZ270のチップセットを搭載した「Fatal1ty Professional Gaming」と「Taichi」を見比べると一目瞭然なのですが、「Taichi」は「Fatal1ty Professional Gaming」から付加価値性の高い一部機能をオミットした廉価版という位置付けになっています。
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【注意事項】
検証中のトラブルなども記事内で記載していますが、第2世代Ryzen CPU自体が発売されたばかりなので、OSの問題なのか、マザボBIOSの問題なのか原因の切り分けが現状でできないものも少なくありません。今後ドライバやBIOSなどソフトウェアの更新でパフォーマンスや安定性が向上することは期待できると思うので、その辺りも念頭に置いて読んでもらえるとありがたいです。
同検証は18年4月下旬に行っておりASRock X470 TaichiのBIOSはver1.30を使用しています。最新BIOSでは修正されている不具合や追加されている機能もあると思うので、最新BIOSのリリースについては公式ページを各自でチェックしてください。
サポート:https://www.asrock.com/MB/AMD/X470 Taichi/index.jp.asp#BIOS


【18年5月4日:初稿】
レビュー記事初稿を公開、BIOS:1.30で検証


ASRock X470 Taichi レビュー目次


1.ASRock X470 Taichiの外観・付属品
2.ASRock X470 Taichiの基板上コンポーネント詳細
3.ASRock X470 Taichiへのパーツ組み込み(ギャラリー)
4.ASRock X470 Taichiの検証機材セットアップ
5.ASRock X470 TaichiのBIOSについて
6.ASRock Polychlome RGB Syncについて
7.ASRock X470 TaichiのOC設定について
8.
ASRock X470 Taichiの動作検証・OC耐性
9.ASRock X470 Taichiのレビューまとめ


ASRock X470 Taichiの外観・付属品

まず最初にASRock X470 Taichiの外観と付属品をチェックしていきます。
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ASRock X470 Taichiはマザーボードのパッケージとしては珍しくキャラメル箱と呼ばれる外箱に内パッケージという構造になっていました。
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内パッケージを開くと上段には各種付属品が入っていました。付属品を取り出すと2重底になっており下段にはマザーボード本体が静電防止ビニールに入った状態で収められていました。
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マニュアル類は、英語のソフトウェアマニュアル、多言語の簡易マニュアル、ドライバCDが付属します。ドライバ類についてはそろそろUSBメモリに移行して欲しいところ。
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多言語マニュアルの日本語ページは少ないですが、詳細な日本語マニュアルは公式ホームページでPDFファイルとして公開されているのでこちらを参照してください。
マニュアル:http://asrock.pc.cdn.bitgravity.com/Manual/X470 Taichi_jp.pdf


組み立て関連の付属品はSATAケーブル4本、リアI/Oパネル、スティック型WiFiアンテナ2本、M.2 SSD固定ネジ*2、SLI HBブリッジです。
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ASRock X470 TaichiにはNVIDIA製GPU搭載グラフィックボードでマルチGPUを構築するためのSLIブリッジとしてGTX 10XXシリーズの広帯域SLI接続に対応した1スロットスペース型のSLI HBブリッジが付属しています。
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リアI/Oシールドは表面はマットブラックなカラーリングになっています。また裏面のマザーボードと接する部分にはスポンジなど緩衝材はありませんでした。3万円を超える比較的に高級なマザーボードなのでスポンジを詰めておいて欲しいところ。
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マザーボード全体像は次のようになっています。
ASRock X470 TaichiははATXフォームファクタのマザーボードで、シルキーで滑らかなブラックのPCB基板を背景にしてグレーとツートンカラーになっています。PCB基板には湿度による電気短絡を防ぎ安定動作を助ける「高密度ガラス繊維PCB」が採用されています。
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マザーボード右下のチップセット用ヒートシンクもブラック&グレーのツートンカラーになっています。ASRock Taichiといえば登場当初はブラック&ホワイトのコントラストの効いたモノトーンカラーでTaichiの名前通りマザーボード全体で太極図を模したデザインが特徴でしたが、17年後半以降万人に受け入れられやすいデザインが模索され、名前の由来でもある太極図より、その構成要素の歯車が主張するデザインになっていきました。
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「ASRock X470 Taichi」ではチップセットクーラーが細かいパーツで構成されており、今にも歯車が動き出しそうなギミック感があります。ブラック&ホワイトの太極図デザインから、ブラック&グレーの歯車デザインに切り替わる過程ではユニークさを失った感もありましたが、「ASRock X470 Taichi」では万人受けとユニークさが見事に両立していると感じました。
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VRM電源部分に覆いかぶさるようして伸びる大型のリアI/Oカバーが重厚感を演出しており、グレーの「XXL アルミニウム合金製ヒートシンク」と名付けられているVRM電源ヒートシンクとも上手く調和しています。アルミ製のVRM電源クーラーにはヒートシンク全体で効率的に放熱を行うため熱の拡散を速めるヒートパイプが組み込まれています。
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ASRock X470 TaichiのVRM電源フェーズ数は特盛16フェーズとなっており、8コア16スレッドのRyzen 7 CPUを大幅にオーバークロックしても安定した電力供給が可能な数が実装されています。
従来比で飽和電流を最大3 倍まで効果的に増加させるためマザーボードのVcore電圧を強化する「新世代プレミアム60Aパワーチョークコイル」や低オン抵抗でCPU Vcore向けの電源をより効率的に供給できる「デュアルスタック MOSFET (DSM)」などでタフなOC耐性を実現します。
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前世代のASRock X370 TaichiではCPUへの電力供給を行うEPS端子は8PIN*1のみが実装されていましたが、第1世代Ryzenの最上位モデルRyzen 7 1800Xを超えるTDP105WのRyzen 7 2700Xのオーバークロックにも対応すべく、「ASRock X470 Taichi」ではEPS端子は8PIN+4PINに増強されています。700W以下のメインストリーム電源ユニットではEPS端子が1つしかないものもあるので組み合わせて使用する電源ユニットには注意が必要です。
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リアI/Oには最新のUSB3.1 Gen2規格に対応したType-AとType-Cの2端子が設置されています。そのほかのUSB端子についてはUSB3.0端子が6基が搭載されています。マウス・キーボードなど各種周辺機器でも使用することを考えるとHTC Viveは問題なさそうですが、USB3.0端子を多く要求するOculus Riftの利用にはUSBハブを利用するなど工夫が必要になりそうです。個人的に残念なポイントとしてはUSB3.0/1は無線マウスと電波干渉を起こすことがあるので、加えてUSB3.0端子から少し離れた場所にUSB2.0を設置して欲しかったです。ゲーマーには嬉しいPS/2端子も搭載されています。
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ビデオ出力も実装されているのでVega GPUを内蔵するRyzen APUにも対応しますが、HDMI1.4なので4K解像度は30FPSまでとなり、60FPSには非対応となります。ネットワーク関連では低CPU負荷かつ高スループットで定評のあるIntel純正のLANコントローラーが採用された有線LAN端子に加えて、無線LANモジュールも標準搭載しており、接続規格としてはWi-Fi 802.11 a/b/g/n/ac、2.4/5GHzデュアルバンド、Bluetooth 4.2に対応しています。リアI/Oには無線モジュールのアンテナ端子が設置されているので付属のスティック型アンテナを接続できます。
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重量計を使用して重さを測定してみたところ、同じくATXマザーボードのASRock Fatal1ty X370 Professional Gamingが958g、ASRock X399 Taichiが1405gに対して、ASRock X470 Taichiは958gとなっており、メインストリム向けATXマザーボードとしては標準的な重さです。
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ASRock X470 Taichiの基板上コンポーネント詳細

続いて「ASRock X470 Taichi」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。
システムメモリ用のDDR4メモリスロットはCPUソケット右側に4基のスロットが設置されています。
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固定時のツメはマザーボード上側(上写真の右側)の片側ラッチとなっています。グラフィックカードのあるPCI-Eスロット側はラッチがないので干渉の心配もありません。
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ASRock X470 TaichiではA1、A2、B1、B2と配置されているDDR4メモリスロットのうち、A2とB2から埋めるようにと指示があるので注意してください。Ryzen対応のAM4マザーボードでは信号反射などの影響からこのようなメモリスロットの埋め方が推奨されているようです。
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グラフィックボードなどを設置するPCI-Eスロットは上から[N/A、x16、N/A、x1、x16、x1、x16]サイズのスロットが設置されています。上段のプライマリグラフィックボードを2段目のスロットに配置することで、大型ハイエンド空冷CPUクーラーとグラフィックボードの干渉を回避しています。最下段のx16サイズスロットの帯域はPCI-E2.0x4となっており、下側のM.2スロットと排他利用になります。x1サイズスロットの帯域はいずれもPCI-E2.0x1です。
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グラフィックボード向けのx16スロットは2段目と5段目に配置されており、現在主流な2スロット占有グラフィックボードを使用しても下位グラフィックボードが上位グラフィックボードのエアフローを妨げないよう配慮されています。付属の1スロットスペース型SLI HBブリッジを使用すれば、NVIDIAの最新GPUであるGTX 1080 Ti、GTX 1080、GTX 1070を使用したマルチGPU SLI環境を構築可能です。
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最近のトレンドとしてはグラフィックボード用のx16スロットには1Kgを超える重量級グラボの重さに耐えるメタルアーマーが採用されています。ASRockの「STEEL SLOT」ではスロット全体に金属アーマーを装着して四隅をハンダで固定する構造になっています。(下写真はASRock Fatal1ty Z270 Gaming-ITX/acのもの)
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6段目のx1サイズスロットは右端に切り込みが入れられているので、通信速度がPCI-E2.0x1で問題なければx2サイズ以上の拡張カードも使用可能になっています。
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ASRock X470 TaichiにはSATAストレージ用の端子は8基(1~6とA1~A2)搭載されています。SATA_1~6の6基はAMD X470チップセットのコントローラーによる接続で、SATA_A1~A2はASMedia製コントローラーによる接続です。SATA_1~6についてはRAID0/1/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。
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高速NVMe接続規格に対応したM.2スロットはチップセット左に2基設置されています。赤色のM.2スロットはNVMe接続とSATA接続の両方、緑色のM.2スロットはNVMe接続のM.2 SSDに対応しています。ただしNVMe接続については赤色のM.2スロットの帯域がPCIE3.0x4に対して、緑色のM.2スロットの帯域はPCIE2.0x4なので最新のNVMe M.2 SSDを接続しても3GB/sを超える連続リード等の高速動作では仕様値の半分程度の性能しか発揮できない場合があります。また緑色のM.2スロットは最下段のx16サイズPCI-Eスロットと排他利用です。
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他社では17年頃から採用が始まっていたM.2 SSDヒートシンクについて、ASRock製品でもX470マザーボードから装備され始めました。「ASRock X470 Taichi」ではPCIE3.0x4帯域のNVMe M.2 SSDに対応する上側のM.2スロットにグレーのアルミニウムプレート型のM.2 SSDヒートシンクが備わっています。
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内部USB3.0ヘッダーはマザーボード右端に2基実装されており、ATX24PINコネクタ寄りの内部USB3.0ヘッダーは一般的なマザーボード基板に垂直な端子ですが、SATA端子寄りの内部USB3.0ヘッダーは一般的なマザーボード基板に平行な端子になっています。また内部USB3.0ヘッダーの中間には内部USB3.1 Gen2ヘッダーも実装されています。
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マザーボード下には内部USB2.0ヘッダーも2基設置されていました。CorsairLinkやNZXT CAM対応製品など内部USB2.0を使用する機器も増えていますが、ASRock X470 Taichiであればそれらの機器も問題なく使用可能です。内部USB2.0が2基でも不足する場合はUSB2.0ヘッダー増設ハブ「NZXT INTERNAL USB HUB」がおすすめです。
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ASRock X470 Taichiはオンボードサウンドに「Purity Sound 4」という高音質ソリューションが採用されています。アナログ出力はニチコン製オーディオ向けキャパシタやSN比120dBのDACなど高品質素子を採用し、7.1チャンネル HDオーディオに対応しており、デジタル出力でもオーディオ用の外部アンプ等との接続に最適な光デジタル端子が設置されています。
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リアパネルにはCMOSクリアのハードウェアスイッチ実装されておりOC設定に失敗してもPCケースを開くことなくBIOSの設定をクリアできるので手動でOCを行うユーザーにとても便利です。
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冷却ファンを接続するためのコネクタについてはPWM対応4PINファンコネクタがマザーボード上に5基設置されています。マザーボード上部のCPUソケット周辺にCPUファン端子CPUオプションファン端子(水冷ポンプ対応)、マザーボード下部の外周にケースファン端子3基(水冷ポンプ対応)の計5基です。水冷ポンプ対応ファン端子は2A、24Wの電源出力が可能です。
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メモリスロットのすぐ左下にはRyzen 7 2700Xに付属するWraith PrismなどRyzen CPUの一部モデルに付属するLEDイルミネーション対応クーラーを接続するための汎用4PIN LEDヘッダーが実装されています。またその隣にある「USB_5」ヘッダーもWraith MaxやWraith Prismとの接続に使用するための端子ですが、実態は内部USBヘッダーなのでNZXT KrakenやCorsair H110iなどとの接続にも使用できます。
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ASRock X470 Taichiには「Hyper BCLK Engine」という外部ベースクロックジェネレータが実装されています。「Hyper BCLK Engine II」はオーバークロックにおいて正確なクロック波形の提供やBCLKの変更を可能にする便利なモジュールです。
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ASRock X470 Taichiへのパーツ組み込み

ASRock X470 TaichiにDDR4メモリとCPUクーラーを設置してみました。内容的には写真のギャラリーだけになっています。
DDR4メモリには「G.Skill FLARE X F4-3200C14D-16GFX」(レビュー)、CPUクーラーには「Corsair H150i PRO RGB」(レビュー)を使用しています。
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ASRock X470 Taichiの検証機材

ASRock X470 Taichiを使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。ASRock X470 Taichi以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成
CPU AMD Ryzen 7 2700X
レビュー
CPUクーラー Corsair H150i PRO RGB
レビュー
メインメモリ G.Skill FLARE X
F4-3200C14D-16GFX
DDR4 8GB*2=16GB (レビュー

ARD4-U16G48SB-26V-D
Samsung Edition
DDR4 8GB*2=16GB (レビュー
CPUベンチ用
ビデオカード
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC
ファンレス (レビュー
システムストレージ
WD Blue 3D NAND SATA SSD 500GB
レビュー
OS Windows10 Home 64bit
電源ユニット Corsair HX1200i (レビュー
ベンチ板 STREACOM BC1 (レビュー

レビュー後半の動作検証ではRyzen 7 2700Xを使用したOC検証も行いますが、CPUクーラーには2018年1月に発売されたばかりの新製品でCorsair製簡易水冷CPUクーラーの最上位モデルとなる360サイズラジエーター搭載の簡易水冷CPUクーラー「Corsair H150i PRO RGB」を使用しています。
マザーボード備え付けの固定器具にCPUクーラーリテンションブラケットのフックをひっかけてハンドスクリューで締めるだけなので設置が非常にお手軽です。
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360サイズラジエーター搭載の「Corsair H150i PRO RGB」と280サイズラジエーター搭載の「Corsair H115i PRO RGB」はいずれも冷却性能が高く、LEDイルミネーションやファン制御などの操作性・カスタマイズ性にも優れているので第2世代Ryzen CPUとの組み合わせにはおすすめなCPUクーラーです。
「Corsair H150i PRO RGB」&「Corsair H150i PRO RGB」をレビュー
Corsair H150i_H115i PRO RGB

システムメモリにはRyzen環境におけるハイパフォーマンスなOCメモリとして昨年より定評のある「G.Skill FLARE X F4-3200C14D-16GFX」を使用しています。メモリ周波数3200MHz、メモリタイミング14-14-14-34-CR1の高速・低遅延な動作がOCプロファイルを使用したオーバークロックで簡単に実現でき、第2世代Ryzen環境ならさらに伸びしろもあるので、第2世代Ryzen環境向けにおすすめのDDR4メモリです。
3200MHzのRyzen用OCメモリ「G.Skill F4-3200C14D-16GFX」をレビュー
G.Skill FLARE X F4-3200C14D-16GFX


CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
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グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
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以上で検証機材のセットアップが完了となります。
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ASRock X470 TaichiのBIOSについて

ASRock X470 Taichiを使用した検証機の構築も完了したので動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。
(OSから日付調整する前にスクショを取っている場合、日付がおかしいですが無視してください。また内容的に差異のないものは過去の同社製マザーボードのBIOSスクリーンショットを流用しています。)

ASRock X470 TaichiのBIOSに最初にアクセスすると従来通りの文字ベースBIOSメニューが表示されました。画面上に表示されている「Main」「OC Tweaker」「Advanced」などメニュータブから左右カーソルキーで各設定ページが表示できます。画面右下の「English」と表記されたボタンから言語設定が可能です。
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ASRock X470 TaichiのBIOSについては多言語に対応しており、「Save Changes and Exit」が「変更がそして退出することを保存します」のように翻訳が怪しい部分はあるものの日本語にも対応しているので初心者ユーザーにも優しいBIOSだと思います。
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ASRock X470 TaichiのBIOSにおいて設定の保存とBIOSからの退出はトップメニュータブ最右端の「出口」から行えます。特定のブートデバイスを指定してBIOSから退出するBoot Override機能もあります。
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「ASRock X470 Taichi」の公式サポートページでは4月22日現在、製品版用の最新BIOS「P1.30」(ベータ版)が配布されているのでアップデートを行いました。
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BIOSのアップデート方法は、まず下から最新のBIOSファイルを公式DLページからダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
サポート:https://www.asrock.com/MB/AMD/X470 Taichi/index.jp.asp#BIOS

USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、トップメニュータブ「ツール」の「Instant FLASH」を選択します。「Instant FLASH」を選択すると自動でUSBメモリ内から総当たりでアップデートファイルを探索してくれます。自動探索は便利なのうですが、反面、探索方法は総当たりなのでファイルが多いと時間がかかるため、アップデート時はファイルの少ないUSBメモリを使用するのがおすすめです。
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USBメモリからアップデートファイルが見つかると更新するかどうか尋ねられるので、更新を選択すればあとは自動でBIOSがアップデートされます。
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ブートとOSインストール周りについて紹介します。とはいってもASRock X470 Taichiのブート回りは下画像のように非常に簡潔にまとめられており初心者でも迷うことはないと思います。
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OSのインストールも「起動順序 #1」に「UEFI 〇〇」というOSインストールメディアを設定して保存&退出でOKです。出口(Exit)のメニューから「UEFI 〇〇」をブートオーバーライドで指定して起動しても同様にOSのインストールデバイスから起動可能です。
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BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、ASRock X470 TaichiのBIOS機能で管理人が気になったものをいくつかチェックしていきます。

第2世代Ryzen発売と同時にメインストリーム向けRyzenシリーズに対しても機能が解放されたNVMe RAIDに関する設定項目として、NVMe SSDを使用したハードウェアRAIDの構築が可能な「NVMe RAID mode」の設定項目があるアドバンスド-AMD PBSに配置されています。
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ファンコントロール機能について紹介します。
ASRock X470 Taichiのファンコン機能は設置されている5つのファン端子を個別に設定可能です。
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「標準/サイレント/パフォーマンス/最大速度」の4種類のプリセット設定に加えて、個別に温度・ファン速度の比例カーブを指定できる「カスタマイズ」の5つのモードを使用できます。
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「カスタマイズ」モードでは比例カーブを決める温度とファン速度を4つ指定できます。CPUファンはCPUソースで固定ですが、CPU_OPTとケースファン3基はソースとなるセンサーにCPU温度とマザーボード温度の2つから選択できます。外部温度センサーには非対応です。
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各種モニターとファン端子コントロールの間に「Fan Tuning」と「Fan-Tasticチューニング」という項目があります。「Fan Tuning」はワンクリックで自動で接続された冷却ファンの動作を最適化してくれる機能です。「Fan-Tasticチューニング」はグラフィカルUIによるファンコントールの設定機能になっています。
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機能的には上で紹介したコンソールのファンコンと同じで、グラフィカルUIでわかりやすく設定できるよという機能になっています。直感的にわかりますし直打ちが苦手な人にはありがたい機能だと思います。マウス操作重視のUIですがキーボードからもカーソルキーでフルコントロール可能です。
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ASRock Polychlome RGB Syncについて

ASRockからはマザーボード備え付けのLEDイルミネーションやRGB LEDテープやアドレッサブルLEDテープに対応したライティング操作機能「ASRock Polychlome RGB Sync」が用意されています。
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ASRock X470 Taichiではマザーボード備え付けのLEDイルミネーションに加えて4PIN RGB LEDテープに対応した4PIN LEDヘッダーが2基設置されています。当サイトでもレビュー記事を掲載しているLEDテープ「SilverStone SST-LS02」やLEDファングリル「SilverStone FG121 / FG141」などが接続可能です。出力が何Wまでかについては記載がないので不明です。
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またアドレッサブルLEDテープに対応した3PINヘッダーも実装されています。使用可能なアドレッサブルLEDテープについては国内で発売済みの「BitFenix Alchemy 3.0 Addressable RGB LED Strip」が動作することが確認できています。アドレッサブルLEDテープを接続した場合、個別発光パターン設定から「Spring」「Meteor」「Stack」「Cram」「Scan」「Neon」「Water」「Rainbow」などのアドレッサブルな発光パターンが選択できます。
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「ASRock Polychlome RGB Sync」は製品サポートページで配布されている専用アプリを使用することで他社のLEDイルミネーション操作同様に発光カラーや発光パターンを設定できます。
発光パターンには「Static」「Breathing」「Strobe」「Cycling」「Random」「Music」「Wave」を選択できます。「Static」「Breathing」「Strobe」など特定の発光カラーを指定する発光パターンでは、リング型RGBカラーパレットを使用して発光カラーを自由に設定できます。
ASRock Polychlome RGB Sync

ASRockマザーボードにはBIOS上のグラフィカルUIでLEDイルミネーションの調整をデスクトップアプリ同様に行えるという特徴があったのですが、「ASRock X470 Taichi」についてはテキストベースUIでした。LEDイルミネーション関連は流石にグラフィカルUIにして欲しいので今後の更新を待ちたいです。
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下はASRock Z270 SuperCarrierのものですが、BIOSの詳細モードでツールのRGB LEDからLEDイルミネーションの設定画面にアクセスすると、使用しているマザーボードに合わせて写真も表示され、専用アプリ同様にLEDイルミネーションの操作が可能です。
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ASRock X470 TaichiのOC設定について

ASRock X470 Taichiを使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。


第2世代Ryzen CPUについてはX470チップセット搭載マザーボードと組み合わせた場合に使用できる純正のOCツール「AMD Ryzen Masterユーティリティ」が用意されていますが、こちらの使い方については下の記事を参考にしてください。
AMD Ryzen専用純正OCツール「AMD Ryzen Masterユーティリティ」の使い方
AMD Ryzen Masterユーティリティ

ASRock X470 Taichiのオーバークロック設定はOCツールというトップメニューのタブページにCPUコアクロック、メモリ、電圧など各種設定項目が集約されています。OCツールのページをスクロールしていくとCPUコアクロック、メモリ、電圧の順番で設定項目が表示されます。
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CPUコアクロック(コア倍率)の変更について説明します。
コアクロックはコア数に対して各コアに最大動作クロック(BCLKに対する倍率)を指定できます。「コア0:コア1:コア2:コア3」を倍率として、例えば「45:43:43:42」のようにバラバラに指定した場合、4つのコアのうち1つに負荷が掛かる場合は4コアのうち1つが45倍動作、2つと3つの場合は43、4つの場合は42となります。

AMD Ryzen CPUについても定格では同様に、例えばRyzen 7 2700Xでは冷却性能依存の自動OC機能「XFR」の影響で若干前後しますが、単コア負荷の場合は4.3GHz、動画のエンコードなど全コア負荷の重いワークロードでは3.9GHz程度で動作します。

RyzenのCPUコアクロックに関して、BIOSから行う基本的なOC設定と専用ユーティリティー「Ryzen Master」によるOC設定は、単一の「P-State」で固定コアクロックかつ固定電圧を指定するOC設定になっていますが、Ryzen CPUでは本来、複数の「P-State」が設定可能です。
アイドル時のP-State0、低負荷時のP-State1、高負荷時のP-State2のように負荷に応じてP-State(コアクロックと電圧の組み合わせ)という状態を遷移できます。例えばRyzenの定格動作ではCPUごとにデフォルトで設定されたP-Stateに従って動作しているので可変コアクロックかつ可変電圧になっています。
固定最大コアクロック&固定電圧によるOCに比べて、複数のP-Stateを設定する方法は難易度が高いですが、一部のコアのみより高いクロックで動作させるなど細かい設定が可能になります。とはいえやはりマニュアルで複数のP-Stateを設定する方法は難易度が高い設定になるので、簡単な単一P-Stateで固定最大倍率&固定電圧のOCがおすすめです。
Ryzen P-State_1


ASRock X470 TaichiのコアクロックのOC設定方法はコアクロック(MHz)の指定値を直に打ち込む形になっていました。「CPU Frequency and Voltage Change」の項目を「手動」に変更すると「CPU Frequency」の項目が表示されます。例えば「4025」のように「CPU Frequency」を設定すると4025MHzで動作するように設定されます。コアクロックは25MHz間隔で指定可能です。
ASRock X470 Taichi_BIOS_OC_2
ASRock X470 Taichiは外部ベースクロックジェネレータ「Hyper BCLK Engine II」が搭載されておりはベースクロック(BCLK)を100MHz~200MHzの範囲内で1MHz刻みで変更可能です。「Overclock Mode」を手動に変更するとBCLK設定項目が表示されます。
ASRock X470 Taichi_BIOS_OC_3
ASRock X470 TaichiではAMD CPUのマルチスレッディング機能である「SMT: サイマルテイニアス マルチスレッディング(Simultaneous multithreading)」の有効・無効をBIOS上から設定可能です。
ASRock X470 Taichi_BIOS_OC_4
動作させるコア数をプルダウンメニューから指定することが可能な「Down Core Control」の項目は、トップメニュータブの「アドバンスド」から「AMD CBS」、「Zen Common Options」、「Core/Thread Enablement」を選択していくと表示されます。8コアCPUのRyzen 7を使用している場合は2コア([1+1]or[2+0])、3コア([3+0])、4コア([2+2]or[4+0])、6コア([3+3])が選択可能です。
ASRock X470 Taichi_BIOS_OC_5


続いてコア電圧の調整を行います。
AMD Ryzen CPUのオーバークロックで変更する電圧設定については、CPUコアクロックに影響する「CPUコア電圧」と、メモリクロックやRyzen APUに搭載される統合GPUの動作周波数に影響すると「SOC電圧」の2種類のみと非常に簡単化されています。
Ryzen OC Voltage
ASRock X470 TaichiではOCツールの項目で下にスクロールしていくと、各種電圧設定項目が表示されますが、AMD Ryzen CPUの手動OCに関連する電圧設定については基本的に「CPU Core電圧」「CPU SOC電圧」、そして「DRAM電圧」の3項目のみに注目すればOKです。
ASRock X470 Taichi_BIOS_OC_6
ASRock X470 Taichi_BIOS_OC_7

CPUコアクロックのOCに関連する電圧設定としては、ASRock X470 Taichiでは「CPU Frequency」のすぐ下にある「CPU Voltage」の項目を変更します。(電圧設定の箇所にもコア電圧の項目がありますが、そちらは自動のまま放置でOKです。)
ASRock X470 Taichiではマニュアルの設定値を指定して入力する固定モードのみが使用できます。AMD Ryzen CPUのコア電圧は0.00625V刻みでコア電圧の設定が可能です。
ASRock X470 Taichi_BIOS_OC_8
CPUコア電圧モードについて簡単に説明すると、オフセットモードやアダプティブモードはCPU負荷に比例して電圧が設定されており、低負荷時は電圧が下がるので省電力に優れるのですが、OCをする場合はマザーボードによって挙動に差があり安定する設定を見極めるのが難しいので、個人的にはオフセットやアダプティブは定格向け、OCには固定値適用の固定モードを推奨しています。
仮にOCでオフセットやアダプティブを使う場合も最初はコアクロックに対して安定する電圧を見極める必要があるので、まずは固定モードを使用します。
ちなみにマザーボードにより対応しているモードは異なりますが、CPUのオーバークロックに付随するコア電圧のモードの概略図は次のようになっています。
vc

またデフォルト設定では自動になっている「電圧設定」の「ロードライン・キャリブレーション(負荷時のコア電圧の低下を防ぐ機能)」は添え字が小さくなるほど補正が強くなるのでレベル1~レベル5で適切なものを選んでください。レベルを上げる(添え字は下がります)ほどCPUやVRM電源の発熱が大きくなりますが、温度についてはサーマルスロットリングの保護機能もありますし、補正が強いほどOC時に最も安定しやすいので、レベル2かレベル1で冷やせる範囲内で選択すれば良いと思います。
ASRock X470 Taichi_BIOS_OC_9
なおASRock製X299マザーボードではLLCで補正最大のレベル1を選択するとVRM電源温度の発熱が急激に増加しましたが、「ASRock X470 Taichi」では電圧補正相応の発熱なので、レベル1を選択しても問題ありませんでした。

あとASRock X470 Taichiでは複数のP-State(Custom P-State)の個別設定も可能です。設定項目は若干わかりにくい場所にに配置されており、トップメニュータブのOCツールの「CPU Frequency and Voltage Change」の項目を「手動」にした状態で、トップメニュータブのアドバンスドから「AMD CBS」、「Zen Common Options」「Custom Pstates / Throttling」と順番に下っていくことでアクセスできます。
ASRock X470 Taichi_BIOS_OC_10
Custom P-Stateでは「P-State X FID」「P-State X DID」「P-State X VID」の3種の設定値を各P-State Xに対して設定します。いずれの設定値も16進数(0~9、A~F)による設定で例えば、3a(16進数)=3*16+10=58(10進数)となります。
各P-State Xに対するコアクロックの設定は次のようになります。
 コアクロック = BCLK(ベースクロック)*FID / DID * 2
つまり「FID / DID * 2」がコアクロックOC一般に言うコア倍率になります。例えば上のスクリーンショットでは「FID:88」「DID:8」なので10進数に戻してコア倍率を計算すると、34.00となりBCLK:100MHzに乗じて3400MHz動作となります。「Custom P-States X」の下にある「Frequency(MHz)」の横のテキストボックスにも3400と表示されています。似たようなコア倍率に対して「Core FID」と「Core DID」の組み合わせが複数存在する可能性がありますが、この組み合わせによるOC安定性に関する違いまではわからないので、そのあたりは各自で詰めてみてください。
各P-State Xに対するコア電圧は「P-State X VID」によって決まっており、同様に16進数による設定値入力で、0~FFの範囲内で設定可能です。「P-State X VID」の設定値に対してコア電圧は次のようになります。
 コア電圧 = 1.55000V - 0.00625 * VID
例えばVID:3a(16進数)=58(10進数)の場合はコア電圧は1.18750Vとなります。
以上のような流れで最大コアクロックをP-State 0として順番に下がるように設定していきます。



メモリのオーバークロックについても簡単に紹介だけしておきます。
メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。

メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありませんが、ASRock X470 Taichiでは正常にPOSTできないメモリOC設定でエラーが出た場合は数回再起動した後、自動で2133MHzや2400MHzなど定格となるSPDプロファイルの緩い設定で再起動してくれるのでメモリOCを安心して行えます。


メモリOCで有名なXMPプロファイルはIntelの策定した規格なのでAMD CPU&マザーボードの環境では厳密にいうと非対応ですが、ASRock X470 TaichiではXMPプロファイルの項目が表示されており、XMPプロファイルからRyzen環境で動作しそうな適当なOCプロファイルを自動生成して適用してくれます。
ASRock X470 Taichi_BIOS_OC_11

ASRockのAM4マザーボードについてはメモリ周波数・タイミングのオーバークロック方法、というか設定場所が2か所に分かれており「設定方法1」と「設定方法2」として紹介していますが、どちらが上手くいくかマザーボードや使用するメモリで違うようなので各自の環境に合わせて色々と試してみてください。

【メモリ周波数&タイミング設定方法 その1】
ASRock X470 Taichiでは上で紹介して「XMP設定の読込」からXMPプロファイルを選択するとOCツール上にメモリ周波数やメモリタイミング(10進数で設定可能)の設定に関する項目が表示されます。この設定方法1でも設定内容自体は次に紹介する設定方法2と同じなので、続いて紹介する設定方法2を参考にして各種設定を行ってください。
ASRock X470 Taichi_BIOS_OC_12
ASRock X470 Taichi_BIOS_OC_13ASRock X470 Taichi_BIOS_OC_14

【メモリ周波数&タイミング設定方法 その2】
ASRock X470 Taichiにはもう1か所、メモリ周波数・タイミングの手動オーバークロックを行う設定項目が少々わかりにくい場所に配置されています。なお手動でメモリ設定を行う場合は上記のXMPに関する設定は自動を選択しておいてください。
メモリ設定項目へはトップメニュータブ「アドバンスド」から「AMD CBS」、「UMC Common Options」、「DDR4 Common Options」、「DRAM Timing Configuration」の順番に下っていくとアクセスできます。ここで「Overclock」の項目を「Enabled」に設定すると各種メモリOC設定項目が表示されます。
ASRock X470 Taichi_BIOS_OC_15
メモリ周波数は「Memory Clock Speed」の項目から選択します。一般的な表記の半分の数値がプルダウンメニューから表示されるので、例えば3200MHzに設定したい場合は1600MHzを選択してください。メモリ周波数もBCLKに対する倍率で決まりますが、BCLK100MHzに対して最大40倍(4000MHz)まで設定可能です。
ASRock X470 Taichi_BIOS_OC_16
ASRock X470 Taichiではメモリタイミングの個別手動設定も可能です。
メモリタイミングを手動で設定する場合は基本的には「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS Read (tRCDrd)」、「RAS to CAS Write (tRCDwr)」、「RAS Precharge (tRP)」、「RAS Active Time (tRAS)」の主要な5タイミングと、加えて「Command Rate:1 or 2」の6つ以外はAutoのままでいいと思います。
「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS Read (tRCDrd)」、「RAS to CAS Write (tRCDwr)」、「RAS Precharge (tRP)」、「RAS Active Time (tRAS)」のの5つについてはメモリ周波数の設定項目の下に配置された項目から設定可能です。
ASRock X470 Taichi_BIOS_OC_16
タイミングの設定値はいずれも16進数(0~9、A~F)による設定になっています。
例えば、2a(16進数) = 2*16+10 = 42(10進数) となります。

ASRock X470 Taichi_BIOS_OC_13
「Command Rate:1 or 2」の設定場所はメモリ周波数や主要タイミングとは少し違うところにあって、トップメニュータブ「アドバンスド」から「AMD CBS」、「UMC Common Options」、「DDR4 Common Options」、「DRAM Controller Configuration」の順番に下っていくとアクセスできます。
ASRock X470 Taichi_BIOS_OC_17
また「Cmd2T」の下にある「GearDownMode」をEnabledに設定すると、メモリ周波数を3200MHz以上にOCする場合は動作が安定するかもしれないので、Autoで上手くいかない場合は設定を変更してみてください。
ASRock X470 Taichi_BIOS_OC_18
メモリタイミングの下の方にある「ProcODT」という設定値がAutoのままではPOSTがクリアできない場合があります。AutoでPOSTをクリアできない、もしくは起動後に安定しない場合は「ProcODT」を43.6~68.6の間で固定して安定するものを探してみてください
ASRock X470 Taichi_BIOS_OC_19

DDR4メモリについてはメモリ周波数を3000MHz以上にOCする場合はDRAM電圧を1.300~1.350Vに上げる必要があります。メモリをOCする場合は最初から1.350VにDRAM電圧を盛っておくのがおすすめです。ASRock X470 Taichiの場合は0.05V刻みで設定が可能です。
ASRock X470 Taichi_BIOS_OC_20
AMD Ryzen CPUでメモリの動作クロックをOCする場合はDRAM電圧だけでなく「CPU SOC電圧(VDDR_SOC Voltage)」も1.100V程度に盛ってやると動作が安定しやすいようです。ASRock X470 TaichiではCPUコア電圧同様に0.00625mV刻みで値を設定できます。固定モードとオフセットモードが選択できますが、設定しやすいので固定モードでいいと思います。
ASRock X470 Taichi_BIOS_OC_21



ASRock X470 Taichiの動作検証・OC耐性

BIOS周りの管理人的に気になるところやOC設定の基本についての紹介はこのあたりにしてASRock X470 Taichiを使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。

まずはBIOS上の起動設定をフルスクリーンロゴとファストブートを無効(BIOS設定)にしてOSの起動時間を測定しました。ASRock X470 Taichiの起動時間は19秒ほどとなりました。メインストリーム向けハイエンドマザーボードの起動時間としては良好な結果です。



続いてASRock X470 Taichiを使用した場合のCPUのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。


Ryzen 7 2700XのOC設定は「CPU動作周波数:4200MHz」「CPUコア電圧:1.350V」「CPUロードラインキャリブレーション:Level1」「メモリ周波数:3466MHz」「メモリタイミング:16-16-16-36-CR1」「メモリ電圧:1.350V」としています。
ASRock X470 Taichi_OC test_BIOS (1)ASRock X470 Taichi_OC test_BIOS (2)ASRock X470 Taichi_OC test_BIOS (3)

上の設定を適用したところ問題なくOSを起動させることができました。
ASRock X470 Taichi_OC test_1
ASRock X470 Taichi_OC test_2


「ASRock X470 Taichi」の環境では、検証機材メモリに「G.Skill FLARE X F4-3200C14D-16GFX」を使用して手動オーバークロックすることによってメモリ周波数3466MHzにOCし、なおかつメモリタイミングを16-16-16-36-CR1に詰めることができました。なおメモリ周波数3600MHzについてはWindowsの起動までは問題ないもののF4-3200C14D-16GFXではタイミングを緩めてもMemtestをクリアすることができませんでした。
ASRock X470 Taichi_OC test_mem_1
ASRock X470 Taichi_OC test_mem_2

「ASRock X470 Taichi」と組み合わせて使用するメモリについて、メーカーで3200MHzが動作確認済みのOCメモリは容量単価で高価になっていますが、安価に済ませたいということであれば、PCショップアークから発売されている「ARD4-U16G48SB-26V-D Samsung Edition」がRyzen環境と相性の良いSamsung B-Die採用で、かつ高速な定格2666MHz対応メモリなのでお勧めです。このメモリでも手動OCによって3200MHz&CL16の安定動作が確認できています。
ARD4-U16G48SB-26V-D_3200MHz_ASRock

Ryzen 7 2700Xの4.2GHz、メモリ3466MHzでCinebenchも問題なくクリアできました。
ASRock X470 Taichi_OC test_cine


続いてこのOC設定を使用してストレステストを実行しました。
検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間8分、WQHD解像度、60FPS、容量4.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はRyzen 7 2700Xの場合15分ほどなので同じ動画で2つ平行して2周させています。エンコード中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
X470 OC Test

ストレステスト中のCPU温度とCPU使用率のログは次のようになりました。マザーボードにASRock X470 Taichiを使用することでRyzen 7 2700Xを全コア同時4.2GHzにOCしてストレステストをクリアできました。CPUクーラーのファン回転数は1200RPMで固定しています。
ASRock X470 Taichi_OC test_temp


スマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE Pro」(レビュー)を使用してASRock X470 TaichiのVRM電源温度をチェックしてみました。
Ryzen 7 2700Xやメモリを上記のBIOS設定でOCした時の負荷テスト中のVRM電源温度をチェックしていきます。ちなみにASRock X470 Taichi環境でRyzen 7 2700Xを4.2GHzまでOC、かつメモリも3466MHzにOCするとシステム全体(ほぼCPU)の消費電力が200W~250Wに達します。
ASRock X470 Taichi_OC test_power
Ryzen 7 2700Xを常用限界近くまでOCして負荷をかけていますが、簡易水冷CPUクーラーによるCPU冷却で、かつスポットクーラーよって風も当てないパッシブ冷却の状態でも、VRM電源温度は70度半ばに収まりました。
前世代X370マザーボードでもそうでしたが、競合他社と比較しても特盛りな16フェースのVRM電源が実装されており、Ryzen 7の大幅OCでも余裕で対応可能なVRM電源回路です。ASRock X470 TaichiであればRyzen 7 2700XをOCしてもパッシブ冷却で問題ないと思います。
ASRock X470 Taichi_FLIR



ASRock X470 Taichiのレビューまとめ

最後に「ASRock X470 Taichi」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ
  • 歯車メインなTaichiデザインがブラッシュアップされてカッコいい
  • 重量級グラボにも耐えるメタルアーマー採用PCI-Eスロット
  • 16フェーズで特盛り強力なVRM電源回路を搭載
  • 検証機ではRyzen 7 2700Xの全コア同時4.2GHz、メモリ3200MHz OCで安定動作
  • VRM電源温度はRyzen 7のOCによる長時間の高負荷でも70度半ばに収まる
  • 高速NVMe接続のM.2スロットが2基設置(うち1基はPCI-E2.0x4帯域)
  • M.2スロットのうち1つはM.2 SSDヒートシンクを装備
  • NVIDIA GTX 10XXシリーズのマルチGPU用SLI HBブリッジが付属する
  • Wi-FiはIEEE802.11ac/n/a/g/b、Bluetoothはver4.2に対応した無線LAN搭載
  • 「Hyper BCLK Engine」で高精度なBCLKの調整が可能
悪いところor注意点
  • スタート・リセットのオンボードスイッチは非搭載
  • リアI/OにUSB2.0端子がないのでワイヤレスUSB機器との干渉が心配
  • 欲を言えば水冷向けに外部温度センサーソースのファン制御機能が欲しい

第2世代Ryzen CPUにネイティブ対応となるX470チップセット搭載AM4マザーボードとしてASRockからリリースされた、高いOC耐性と同時に優れたコストパフォーマンスを実現するミドルハイブランド”Taichi”シリーズの最新モデル「ASRock X470 Taichi」は前世代同様に特盛り16フェーズVRM電源を実装し、無線LANを標準搭載するなどRyzen用マザーボードとして非常に高い完成度を誇っています。
デザイン面ではTaichiブランド登場時から2年が経ち、17年後半以降は万人に受け入れられやすいデザインが模索され、名前の由来でもある太極図より、その構成要素の歯車が主張するデザインになっていきましたが、「ASRock X470 Taichi」ではそのデザインコンセプトで1つの完成を見たと思います。変遷の過程ではユニークさを失った感もありましたが、細かいパーツで構成されたチップセットクーラーは今にも歯車が動き出しそうなギミック感があり、「ASRock X470 Taichi」では万人受けとユニークさが見事に両立していると感じました。

ASRock X470 TaichiのBIOSではクラシカルなUIが採用されており、日本語ローカライズが一部変になっていますが、OSインストールのブート設定からオーバークロックまで多方面に使いやすいUIだと思います。管理人個人的にも好みです。

ASRock X470 Taichiを使用した検証機では第2世代Ryzen最上位のRyzen 7 2700Xの全コア4.2GHzに、メモリ周波数も3466MHzにオーバークロックすることができました。メモリについてはRyzen環境に最適化されたOCメモリの「G.Skill FLARE X F4-3200C14D-16GFX」だけでなく、Samsung B-Dieを採用するバルクメモリ「ARD4-U16G48SB-26V-D Samsung Edition」でも3200MHzの高速動作を実現できたので、少なくとも下調べをして適切なメモリを購入すれば3200MHz動作を狙うのも難しくないと思います。
またASRock X470 Taichiには外部ベースクロックジェネレータ「Hyper BCLK Engine」が搭載され、ベースクロックを1MHz刻みで制御可能なので、より高度なオーバークロックが可能になっており、ゲーマーだけでなく第2世代Ryzen環境で極限を目指すOCerにも満足のいく製品です。

CPUのオーバークロックを行う上でVRM電源回路はマザーボード依存のOC耐性として重要ファクターの1つですが、「ASRock X470 Taichi」では前世代X370マザーボード同様に、競合他社と比較しても最多となる16フェーズを採用しており、非常に強力なVRM電源回路が搭載されています。今回の検証ではRyzen 7 2700Xの全コア4.2GHzのオーバークロックに対して、VRM電源部分はパッシブ空冷であってもVRM電源温度は70度半ばに収まるという非常に優秀な結果になりました。

優れたOC耐性や無線LANを標準搭載する汎用性を備えつつコストパフォーマンスも意識したTaichiブランドらしさに加えて、万人受けするオシャレなデザインとしても一皮むけた「ASRock X470 Taichi」は第2世代Ryzenで組むならお勧めのマザーボードです。

以上、「ASRock X470 Taichi」のレビューでした。
ASRock X470 Taichi





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検証機材として使用している以下のパーツもおすすめです。
G.Skill F4-3200C14D-16GFX DDR4-3200 CL14 8GB×2 AMD Ryzen用メモリ
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)



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