スポンサードリンク
第2世代Ryzen CPUにネイティブ対応となるX470チップセット搭載AM4マザーボードとしてASUSからリリースされた、ゲーマー&OCer向けのハイエンドブランド”ROG CROSSHAIR”シリーズの最新モデル「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」をレビューしていきます。TDP105WのRyzen 7 2700Xに合わせたVRM電源回路の最適化、プリマウントリアI/Oシールドの採用、M.2 SSDヒートシンクの搭載など、前世代CROSSHAIR VI HEROよりも着実にブラッシュアップされた第2世代Ryzen用ハイエンドマザーボードを徹底検証します。
製品公式ページ:https://www.asus.com/Motherboards/ROG-CROSSHAIR-VII-HERO-WI-FI/
マニュアル:http://dlcdnet.asus.com/pub/ASUS/mb/SocketAM4/ROG_CROSSHAIR-VII-HERO_WI-FI/E13834_ROG_CROSSHAIR_VII_HERO_WI-FI_UM_WEB.pdf
【注意事項】
検証中のトラブルなども記事内で記載していますが、第2世代Ryzen CPU自体が発売されたばかりなので、OSの問題なのか、マザーボードBIOSの問題なのか原因の切り分けが現状でできないものも少なくありません。今後ドライバやBIOSなどソフトウェアの更新でパフォーマンスや安定性が向上することは期待できると思うので、その辺りも念頭に置いて読んでもらえるとありがたいです。
同検証は18年5月下旬に行っており「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」のBIOS:0601を使用しています。最新BIOSでは修正されている不具合や追加されている機能もあると思うので、最新BIOSのリリースについては公式ページを各自でチェックしてください。
サポート:https://www.asus.com/Motherboards/ROG-CROSSHAIR-VII-HERO-WI-FI/HelpDesk_BIOS/
【18年6月16日:初稿】
レビュー記事初稿を公開、BIOS:0601で検証
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi) レビュー目次
1.ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)の外観・付属品
2.ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)の基板上コンポーネント詳細
3.ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)へのパーツ組み込み(ギャラリー)
4.ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)の検証機材セットアップ
5.ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)のBIOSについて
6.イルミネーション操作機能「ASUS AURA Sync」について
7.ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)のOC設定について
8.ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)の動作検証・OC耐性
9.ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)のレビューまとめ
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)の外観・付属品
まず最初にASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)の外観と付属品をチェックしていきます。「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」のパッケージはマザーボードの箱としては独特な上開き化粧箱になっていました。開閉しやすく高級感もあります。
外パッケージの蓋を開くと上段にはマザーボード本体が収められており、下段には各種付属品が収められた小分けパッケージが入っていました。
マニュアルなど冊子類で必要なものが一通り揃っています。その他にもコースター、ステッカー、CableMod製のスリーブケーブル購入時の割引クーポンなどが付属します。ドライバ類についてはそろそろUSBメモリに移行して欲しいところ。ASUS製のマザーボードなので定評のある詳細日本語マニュアルも付属します。
組み立てに関連する付属品としては、Wifiアンテナ、SATAケーブル4本、RGB 4PIN LEDテープ接続ケーブル、アドレッサブル3PIN LEDテープ接続ケーブル、SLI HBブリッジ、M.2 SSD固定用スペーサー&スクリュー*2、Q-Connectorとなっています。
パワースイッチやストレージLEDなど細かいPINをまとめてマザーボードに接続可能な便利なコネクタです。「Q-Connector」は組み立て時にあると便利ですがASUSマザーボードの中でも付属しないモデルもあるので事前にチェックがおすすめです。
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)にはNVIDIA製GPU搭載グラフィックボードでマルチGPUを構築するためのSLIブリッジとしてGTX 10XXシリーズの広帯域SLI接続に対応した1スロットスペース型のSLI HBブリッジが付属しています。
同社から発売されている「ASUS ROG SLI HB BRIDGE 3スロット版」がマザーボードのデザインと非常にマッチするのでおすすめです。マザーボード上の汎用4PIN LED端子と接続することでマザーボード備え付けLEDイルミネーションと同期操作も可能です。
ASUS AURA Syncに対応したLED端子ヘッダーの延長ケーブルとしてRBG 4PIN汎用ヘッダー用とアドレッサブル型3PINヘッダー用の2種類が付属します。
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)にはアドレス指定対応LEDテープ用のVD-G型3PINヘッダーがマザーボード上に実装されていますが、それを等間隔3PINの独自コネクタに変換する延長ケーブルが付属します。
マザーボード全体像は次のようになっています。
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)はATXフォームファクタのマザーボードです。黒色のPCB基板には電子回路をイメージさせるイラストがプリントされています。前世代CROSSHAIR VIとほぼ同じデザインですが、カラーリングはグレーからより深みのあるブラックに変更されています。
マザーボード右下のチップセット用ヒートシンクについて、Intel CPU向けのROG MAXIMUSブランド同様にASUS ROG CROSSHAIR VII HEROも電子回路をイメージさせるデザインになっています。
第2世代Ryzenの最上位モデル「Ryzen 7 2700X」のオーバークロックに耐えるVRM電源部分を冷やすため、アルミニウム塊型の大型ヒートシンクが設置されています。ASUS ROG CROSSHAIR VII HEROに搭載されたCPUソケットの上側と左側のヒートシンクはVRM電源からの発熱を効率的に拡散するためヒートパイプで連結されているところは前モデルCROSSHAIR VI HEROと同じですが、CROSSHAIR VII HEROのヒートシンク部分にはさらにスリットが追加で設けられて放熱面積が拡張されています。
またリアI/OカバーはVME電源ヒートシンクと一体間のあるデザインで、チップセット同様に電子回路をイメージしたイラストが描かれており「CROSSHAIR VII」の名が刻印されています。
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)には12フェーズのVRM電源が実装されています。VRM電源には一般的なMOSFETの半分のサイズで90%の優れた効率を実現した「NexFET Power Block MOSFET」を使用し、チョークコイルには低損失で低発熱な「MicroFine Alloy Chokes」を使用。コンデンサには-75℃~+125℃での動作に対応し、一般的なコンデンサの5倍の寿命を持つ「10K Black Metallic Capacitors」が使用されています。
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)のVRM電源フェーズ数は前世代のCROSSHAIR VIと同じく12フェーズとなっていますが、CROSSHAIR VIがCPUコア8フェーズ/SOCアンコア4フェーズだったのに対して、ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)では発熱のバランスや負荷に合わせて最適化し、CPUコア10フェーズ/SOCアンコア2フェーズに変更されています。またCPUコアに対するVRM電源フェーズがSOCアンコアに対するVRM電源フェーズを挟む形で左側と上側に分散させることで熱を拡散させてVRM電源周りの温度を下げることに成功したとのことです。
「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」ではEPS端子はTDP105WのRyzen 7 2700Xのオーバークロックにも対応すべく、8PIN+4PINが設置されています。700W以下のメインストリーム電源ユニットではEPS端子が1つしかないものもあるので組み合わせて使用する電源ユニットには注意が必要です。
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)にはマザーボード一体型リアI/Oバックパネル「プリマウントI/Oシールド」も採用されています。PCケースにパネルを装着する作業は固くて装着し難かったり、忘れてしまうこともあるのでマザーボードに統合されているのは嬉しい機能です。
リアI/Oには最新のUSB3.1 Gen2規格に対応したUSB端子としてType-AおよびType-Cの赤色の端子が2基設置されています。そのほかのUSB端子については2基のUSB2.0端子と8基のUSB3.0端子が搭載されています。個人的に残念なポイントとしてはUSB3.0/3.1は無線マウスと電波干渉を起こすことがあるので、USB2.0端子はUSB3.0/3.1端子から少し離れたところに設置して欲しかったです。ゲーマーには嬉しいPS/2端子も搭載されています。
ネットワーク関連では低CPU負荷、高スループットで定評のあるIntel純正のLANコントローラーが採用された有線LAN端子が設置されています。ASUS ROG CROSSHAIR VII HEROには無線LANありとなしの2モデルがラインナップされていますが、今回レビューする「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」は無線LANモジュールを標準搭載しており、Wi-Fi 802.11 a/b/g/n/ac、2.4/5GHzデュアルバンド、Bluetooth 4.2に対応しています。リアI/Oには無線モジュールのアンテナ端子が設置されているので付属のアンテナを接続できます。
またリアI/Oには「USB BIOS FlashBack」ボタンが設置されており所定のUSB端子にBIOSファイルの入ったUSBメモリを接続してボタンを押すと「USB BIOS FlashBack」機能によってCPUやメモリなしの状態でもBIOSの修復・アップデートが可能です。
重量計を使用して重さを測定してみたところ、同じくATXサイズマザーボードのASUS ROG STRIX B470-F GAMINGは998g、ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROは1091gに対して、ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)は1081gでした。
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)の基板上コンポーネント詳細
続いて「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。システムメモリ用のDDR4メモリスロットはCPUソケット右側に4基のスロットが設置されています。
固定時のツメはマザーボード上側の片側ラッチとなっています。グラフィックカードのあるPCI-Eスロット側はラッチがないので干渉の心配もありません。
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)ではCPUソケットからA1、A2、B1、B2と配置されているDDR4メモリスロットのうち、A2とB2から埋めるようにと指示があるので注意してください。Ryzen対応のAM4マザーボードでは信号反射などの影響からこのようなメモリスロットの埋め方が推奨されているようです。
グラフィックボードなどを設置するPCI-Eスロットは上から[N/A、x16、N/A、x1、x16、x1、x16]サイズが設置されています。上段のプライマリグラフィックボードを2段目のスロットに配置することで、大型ハイエンド空冷CPUクーラーとグラフィックボードの干渉を回避しています。最下段のx16サイズスロットの帯域は最大PCI-E2.0x4です。x1サイズスロットの帯域はいずれもPCI-E2.0x1で、下段のM.2スロットにNVMe M.2 SSDを使用している場合は3段目と6段目のx1サイズスロットは排他利用となります。
マルチグラフィックボード向けのx16スロットは2段目、5段目に配置されており、現在主流な2スロット占有グラフィックボードを使用しても下位グラフィックボードが上位グラフィックボードのエアフローを妨げないよう配慮されています。付属の1スロットスペース型SLI HBブリッジを使用すれば、NVIDIAの最新GPUであるGTX 1080 Ti、GTX 1080、GTX 1070を使用したマルチGPU SLI環境を構築可能です。
2段目と5段目のPCI-Eスロット及び、2段目の上に配置されたM.2スロットのM.2_2はCPU直結のPCI-E3.0x16帯域を共有しており、接続状態に応じて下記のように排他利用となります。M.2_2にNVMe M.2 SSDを使用する場合はプライマリグラフィックボードの帯域もPCI-E3.0x8となります。(18年5月現在、最速のGPUであるGTX 1080 TiでもPCI-E3.0x16とPCI-E3.0x8で性能差は1%もありません。)
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)にも最近のトレンドとしてx16サイズスロットには1Kgを超える重量級グラボの重さに耐えるように、従来のプラスチックスロットよりも垂直方向の力に対して1.6倍、水平方向の力に対して1.8倍も強靭になった補強用メタルアーマー搭載スロット「SAFE SLOT」が採用されています。
ASUSのメタルアーマー「SAFE SLOT」はPCI-Eスロットのプラスチックパーツ側面に金属製のフレームが埋め込まれており、金属フレームの四隅を半田付けで固定する構造になっています。(下写真はASUS ROG Strix Z270I Gamingのもの)
「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」の5段目に配置されているx16サイズPCI-Eスロットは内部帯域がPCI-E3.0x8ですが、CPUソケット下のM.2スロットと帯域が共有されており、BIOSから5段目PCIEスロットとM.2スロットの帯域設定が行えます。
M.2スロットを無効化して5段目PCIEスロットをPCI-E3.0x8帯域で動作させるモードの設定は2種類ありますが、「Disable (X4/X4 mode)」では、PCI-E3.0x8帯域を2つのPCI-E3.0x4帯域に帯域を分割することが可能で、M.2 SSDの複数枚刺しが可能な拡張ボード「ASUS HYPER M.2 X16 CARD」に対応しています。
M.2 SSD4枚刺しに対応した拡張ボード「ASUS HYPER M.2 X16 CARD」については個別に詳細なレビュー記事を公開しているのでこちらを参考にしてください。
・「ASUS HYPER M.2 X16 CARD」をレビュー
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)にはSATAストレージ用の端子は6基搭載されています。SATA_0~5の6基はAMD X470チップセットのコントローラーによる接続で、RAID0/1/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。
高速NVMe接続規格に対応したM.2スロットはCPUソケット下とチップセット下の計2基が設置されています。M.2_1はNVMe接続とSATA接続の両方のM.2 SSDに対応していますが、M.2_2はNVMe接続のM.2 SSDのみに対応となります。いずれもNVMe接続時の帯域はPCI-E3.0x4です。ただしM.2_2は2段目および5段目のGPU用PCI-Eスロットと一部帯域共有となっています。
CPUソケット下のM.2スロット「M.2_2」には「REPUBLIC OF GAMERS」のテキストロゴが刻印されたプレートカバー型の放熱ヒートシンクが装着されており、M.2 SSDのサーマルスロットリング発生を抑制する効果が期待できます。
ATX 24PIN端子のすぐ隣には最新USB3.1 Gen2対応内部ヘッダーとUSB3.0端子が設置されています。
マザーボード下側には内部USB3.0ヘッダーが1基と内部USB2.0ヘッダーが2基設置されています。CorsairLinkやNZXT CAM対応製品など使用する周辺機器も増えているなか、前世代CROSSHAIR VI含め17年頃にASUSからリリースされていた上位マザーボードでは内部USB2.0ヘッダーを1基しか備えていないモデルが多かったですが、ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)では2基に増えているので、内部USB2.0で接続する機器も安心して使用できます。内部USB2.0が2基でも不足する場合はUSB2.0ヘッダー増設ハブ「NZXT INTERNAL USB HUB」がおすすめです。
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)はゲーミングマザーボードということで高音質オンボードサウンド機能を従来機種よりもさらに強化した「SupremeFX」も採用されています。デジタル部とアナログ部の基板分離などヘッドホン・スピーカー出力の高音質化にも注力しており、光学デジタルによるデジタル音声出力もあるので高級なヘッドホンアンプユーザーにも満足のいく構成です。最近のゲーミングマザボはサウンドボード要らずです。
有線LANには低CPU負荷、高スループットで定評のあるIntel純正のLANコントローラーが採用されており、加えて有線LANの信号特性を改善する独自機能「LANGuard」も搭載し、オンライン通信対戦ゲームユーザーの快適なプレイをバックアップします。
冷却ファンや簡易水冷クーラーポンプの接続用ファン端子はマザーボード上の各場所に計8個設置されています。水冷ポンプ用ファン端子「W_PUMP+」や高電流ファン端子「H_AMP_FAN」は36W(3A)の高出力に対応しており、簡易水冷の水冷ポンプや本格水冷用のD5/DDCポンプなどにも電力供給できます。
マザーボード上には本格水冷PCユーザーには嬉しい外部温度センサーの接続端子が水路IN/OUT用を含めて3基設置されています。ASUSのファンコントロール機能は外部センサーをソースにした水温依存のファンコントロールが可能なので管理人は以前から水冷ユーザーにお勧めしています。(関連記事)
加えて右下写真の3PINファン用端子と同じ構造の端子は水冷の流量検出端子となっており、フローインジケーター&メーターを接続することで流量の検出が可能です。ASUSマザボさえあれば水冷環境の構築は全て大丈夫と言っても過言ではなくなってきています。
水路IN/OUT用温度センサー端子の隣にあるEXT_FAN端子には別売りオプションパーツの冷却ファン&サーモセンサー拡張ボード「ASUS FAN EXTENSION CARD」を装着してマザーボードのファンコン機能によって操作可能なファン端子やコントロールソース温度となる温度センサーを拡張できます。
マザーボード基板上にはOCerのみならず一般自作erにとっても組み立て中の動作確認に便利なオンボードのスタートスイッチとリセットスイッチが実装されています。リアI/OにはCMOSクリアのハードウェアスイッチも設置されているのでOC設定をミスっても簡単に初期化が可能です。マザーボード基板右上にはPOSTエラーのチェックができるDebug LEDが設置されています。
加えて、極端なOC中にリセットボタンでもシステムを再起動や強制終了できない時に、BIOSの設定値を保ったまま強制的に再起動を掛けられる「ReTryボタン」、コアクロックやメモリクロックが緩いプロファイルを使用してシステムを確実に起動させハードウェア故障とOC設定失敗の切り分けを容易にする「SAFE BOOTボタン」、マザーボード上のプローブから各種動作電圧を測定可能な「Probelt」などOCer向けの機能も充実しています。
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)へのパーツ組み込み
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)にDDR4メモリとCPUクーラーを設置してみました。内容的には写真のギャラリーだけになっています。DDR4メモリには「G.Skill FLARE X F4-3200C14D-16GFX」(レビュー)、CPUクーラーには「Corsair H150i PRO RGB」(レビュー)を使用しています。
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)の検証機材セットアップ
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)を使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | AMD Ryzen 7 2700X (レビュー) |
CPUクーラー | Corsair H150i PRO RGB (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill FLARE X F4-3200C14D-16GFX DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) |
CPUベンチ用 ビデオカード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
WD Blue 3D NAND SATA SSD 500GB (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
レビュー後半の動作検証ではRyzen 7 2700Xを使用したOC検証も行いますが、CPUクーラーには2018年1月に発売されたばかりの新製品でCorsair製簡易水冷CPUクーラーの最上位モデルとなる360サイズラジエーター搭載の簡易水冷CPUクーラー「Corsair H150i PRO RGB」を使用しています。
マザーボード備え付けの固定器具にCPUクーラーリテンションブラケットのフックをひっかけてハンドスクリューで締めるだけなので設置が非常にお手軽です。
360サイズラジエーター搭載の「Corsair H150i PRO RGB」と280サイズラジエーター搭載の「Corsair H115i PRO RGB」はいずれも冷却性能が高く、LEDイルミネーションやファン制御などの操作性・カスタマイズ性にも優れているので第2世代Ryzen CPUとの組み合わせにはおすすめなCPUクーラーです。
・「Corsair H150i PRO RGB」&「Corsair H150i PRO RGB」をレビュー
システムメモリにはRyzen環境におけるハイパフォーマンスなOCメモリとして昨年より定評のある「G.Skill FLARE X F4-3200C14D-16GFX」を使用しています。メモリ周波数3200MHz、メモリタイミング14-14-14-34-CR1の高速・低遅延な動作がOCプロファイルを使用したオーバークロックで簡単に実現でき、第2世代Ryzen環境ならさらに伸びしろもあるので、第2世代Ryzen環境向けにおすすめのDDR4メモリです。
・3200MHzのRyzen用OCメモリ「G.Skill F4-3200C14D-16GFX」をレビュー
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
以上で検証機材のセットアップが完了となります。
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)のBIOSについて
「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」を使用した検証機の構築も完了したので動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。(OSから日付調整する前にスクショを取っている場合、日付が変になっているかもしれませんが無視してください。また内容的に差異のないものは過去のスクリーンショットを流用しています。)
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)のBIOSに最初にアクセスするとEZモードというグラフィカルな画面が表示されます。パッと見の見栄えは良いのですが詳細モードでないと詳細設定ができないので「F7」キーを押してサクッと「アドバンスドモード(Advanced Mode)」へ移るのがおすすめです。
「F7」キーを押すとアドバンスドモードという従来通りの文字ベースのBIOSメニューが表示されます。「Main」タブの「System language」-「English」と表記された項目のプルダウンメニューから言語設定が可能で日本語UIを選択できます。ASUSマザーボードは競合他社と比較してもBIOSメニューの日本語ローカライズの充実と正確さが魅力です。
次回起動時に初回から詳細モードを起動する場合は、「起動-ブート設定」にある「セットアップモード」の項目をアドバンスドモードに変更してください。
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)のBIOSにおいて設定の保存とBIOSからの退出はトップメニュータブ最右端の「終了」から行えます。その他の設定を行っていても左右カーソルキーですぐに退出可能です。
特定のブートデバイスを指定してBIOSから退出するBoot Override機能は「起動」タブメニューの最下段「起動デバイス選択」に配置されています。
「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」のBIOSバージョンは18年5月現在、最新版の「0601」がサポートページで公開されているのでアップデートしました。
BIOSのアップデート方法は、まず下から最新のBIOSファイルをダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
サポート:https://www.asus.com/Motherboards/ROG-CROSSHAIR-VII-HERO-WI-FI/HelpDesk_BIOS/
USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、アドバンスドモードの「ツール-ASUS EZ Flash 3 Utility」でストレージデバイスからのアップデートでBIOSファイルを選択します。あとはガイドに従ってクリックしていけばOKです。
ブートとOSインストール周りについて紹介します。とはいってもASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)のブート回りは下画像のように非常に簡潔にまとめられており初心者でも迷うことはないと思います。
OSのインストールも「Boot Option #1」に「UEFI:〇〇」というOSインストールメディアを設定して保存&退出でOKです。「Boot Option #1」の下にスクロールしていくとブートデバイスを個別に指定して再起動できる「Boot override」もあるのでこちらから、同様に「UEFI:〇〇」というOSインストールメディアを選択してもOKです。
BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)のBIOS機能で管理人が気になったものをいくつかチェックしていきます。
マザーボード備え付けのLEDイルミネーションについてはデフォルトではOSのシャットダウンやスリープ時もLEDが点灯しますが、「When system is in sleep, hibernate and soft off states」の項目をOFFにすることでスリープ時やシャットダウン時のみLEDイルミネーションをOFFにすることができます。
なおシャットダウン・スリープ時のLEDの点灯・消灯設定はWindows上の「AURA Sync」から設定が可能でアプリからの操作が優先されます。ASUS Aura Syncソフトウェアの「Power Off」タブがスリープやシャットダウン時のLEDイルミネーションの設定になっています。ここから設定を行うことでASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)でもシャットダウン・スリープ時のLEDイルミネーションの消灯が可能です。AURA Syncについて詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
また第2世代Ryzenの発売と同時にメインストリーム向けRyzen CPUでもサポートが開始されたNVMe SSDによるRAIDストレージの構築が可能な「NVMe RAID」についても、「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」は対応しており、「詳細 - SATA Configuration」に「NVMe RAID mode」という設定項目が配置されています。
「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」の5段目に配置されているx16サイズPCI-Eスロットは内部帯域がPCI-E3.0x8ですが、CPUソケット下のM.2スロットと帯域が共有されており、BIOSから5段目PCIEスロットとM.2スロットの帯域設定が行えます。
M.2スロットを無効化して5段目PCIEスロットをPCI-E3.0x8帯域で動作させるモードの設定は2種類ありますが、「Disable (X4/X4 mode)」では、PCI-E3.0x8帯域を2つのPCI-E3.0x4帯域に帯域を分割することが可能で、M.2 SSDの複数枚刺しが可能な拡張ボード「ASUS HYPER M.2 X16 CARD」に対応しています。
M.2 SSD4枚刺しに対応した拡張ボード「ASUS HYPER M.2 X16 CARD」については個別に詳細なレビュー記事を公開しているのでこちらを参考にしてください。
・「ASUS HYPER M.2 X16 CARD」をレビュー
マザーボード上のコンポーネント詳細でも紹介した外部温度センサーについてはBIOS上からも温度をモニタリングできます。簡易水冷(AIO水冷)ポンプ専用の項目も用意されており、ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)であれば冷却機能周りは空冷・水冷ともにほぼ全てBIOS上でコントロール可能です。
BIOS上のファンコントロール機能についてですが、CPUファン端子とCPU OPT端子はCPU温度依存のファンコントロールしかできませんが、その他のケースファン端子については、外部温度センサーなどの各種温度ソースからファンコントロールが可能です。
ファン操作モードはPWM速度調整とDC(電圧)速度調整の2種類が用意されていますが、DC速度調整の場合は制御プロファイルを手動にすると、下限温度以下で冷却ファンを停止させる所謂セミファンレス機能を実現する「Allow Fan Stop」の設定が表示されます。
またASUSマザーボードにもグラフィカルUIによるファンコントールの設定機能として「Q-Fan Control」が用意されています。設定可能な内容は上で紹介したコンソールのファンコンと同じですが、グラフィカルUIでわかりやすく設定できるよ、という機能です。直感的にわかりますし直打ちが苦手な人にはありがたい機能だと思います。
イルミネーション操作機能「ASUS AURA Sync」について
「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」はASUSのライティング操作機能「ASUS AURA Sync」に対応しており、マザーボード備え付けのLEDイルミネーションや汎用ヘッダーに接続された外付けLED機器などのライティング制御が可能です。「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」ではチップセットクーラーとリアI/OカバーにRGB LEDイルミネーションが内蔵されています。
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)に搭載されたLEDイルミネーションや汎用ヘッダーに接続されたイルミネーション機器は発光カラーや発光パターンを専用アプリのAURA Syncから同期操作可能になっています。AURA Syncはマザーボードのサポートページから最新版をダウンロードできます。
サポート:https://www.asus.com/jp/Motherboards/ROG-STRIX-X470-F-GAMING/HelpDesk_Download/
専用アプリである「AURA Sync」を使用することで、色を指定した固定色発光、カラーサイクル等の発光パターンプリセット、温度や音楽に合わせた発光変化など自由度の高いイルミネーション設定が可能です。
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)のマザーボード基板上にはLEDイルミネーション同期調整機能「ASUS AURA Sync」による操作に対応した汎用4PIN LEDヘッダーが右上と右下の2か所に設置されています。当サイトでもレビュー記事を掲載しているLEDテープ「SilverStone SST-LS02」やLEDファングリル「SilverStone FG121 / FG141」などが接続可能です。またマザーボード下端にはアドレッサブルLEDテープに対応したVD-G型の3PINヘッダーも2基実装されています。
アドレッサブルLEDテープに対応したVD-G型の3PINヘッダーで使用可能なアドレッサブルLEDテープについては国内で発売済みの「BitFenix Alchemy 3.0 Addressable RGB LED Strip」やASUS ROG純正品の「ASUS ROG ADDRESSABLE LED STRIP-60CM」が動作することが確認できています。
当サイトでレビュー記事を公開中のG.Skill製DDR4 OCメモリ「G.Skill Trident Z RGB」もASUS Aura Syncによるイルミネーション同期設定に対応しています。
・「G.Skill TridentZ RGB DDR4」OCメモリをレビュー
下は「ASUS ROG ZENITH EXTREME」で「G.Skill Trident Z RGB」を使用した例ですが、ASUS AURA Syncのウィンドウ上側にDRAMの項目が表示されて「G.Skill Trident Z RGB」も同期操作が可能になります。ColorCycleのような全体同期型の発光パターン以外にも、「G.Skill Trident Z RGB」は各DRAM毎に4分割アドレッサブルLEDが実装されているので個別制御も可能です。
ASUSのLEDイルミネーション機能「AURA Sync」については汎用イルミネーション機器の使用方法や導入例などを下の記事でも紹介しているので、詳しくはこちらを参照してください。
・ASUS製のLEDイルミネーション操作機能「AURA Sync」の使い方
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)のOC設定について
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)を使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
第2世代Ryzen CPUについてはX470チップセット搭載マザーボードと組み合わせた場合に使用できる純正のOCツール「AMD Ryzen Masterユーティリティ」が用意されていますが、こちらの使い方については下の記事を参考にしてください。
・AMD Ryzen専用純正OCツール「AMD Ryzen Masterユーティリティ」の使い方
「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」のオーバークロック設定は「Extreme Tweaker」というトップメニューのタブページにCPUコアクロック、メモリ、電圧など各種設定項目が集約されています。「Extreme Tweaker」ページをスクロールしていくとCPUコアクロック、メモリ、電圧などの各種設定項目が表示されるので設定しやすいUIです。設定値を直接入力する項目でデフォルトの「Auto」に戻す場合は「a」キーを入力すればOKです。
CPUコアクロック(コア倍率)の変更について説明します。
コアクロックはコア数に対して各コアに最大動作クロック(BCLKに対する倍率)を指定できます。「コア0:コア1:コア2:コア3」を倍率として、例えば「45:43:43:42」のようにバラバラに指定した場合、4つのコアのうち1つに負荷が掛かる場合は4コアのうち1つが45倍動作、2つと3つの場合は43、4つの場合は42となります。
AMD Ryzen CPUについても定格では同様に、例えばRyzen 7 2700Xでは冷却性能依存の自動OC機能「XFR」の影響で若干前後しますが、単コア負荷の場合は4.3GHz、動画のエンコードなど全コア負荷の重いワークロードでは3.9GHz程度で動作します。
RyzenのCPUコアクロックに関して、BIOSから行う基本的なOC設定と専用ユーティリティー「Ryzen Master」によるOC設定は、単一の「P-State」で固定コアクロックかつ固定電圧を指定するOC設定になっていますが、Ryzen CPUでは本来、複数の「P-State」が設定可能です。
アイドル時のP-State0、低負荷時のP-State1、高負荷時のP-State2のように負荷に応じてP-State(コアクロックと電圧の組み合わせ)という状態を遷移できます。例えばRyzenの定格動作ではCPUごとにデフォルトで設定されたP-Stateに従って動作しているので可変コアクロックかつ可変電圧になっています。
固定最大コアクロック&固定電圧によるOCに比べて、複数のP-Stateを設定する方法は難易度が高いですが、一部のコアのみより高いクロックで動作させるなど細かい設定が可能になります。とはいえやはりマニュアルで複数のP-Stateを設定する方法は難易度が高い設定になるので、簡単な単一P-Stateで固定最大倍率&固定電圧のOCがおすすめです。
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)のコアクロックのOC設定方法はベースクロック(BCLK):100MHzに対する倍率指定となっており0.25倍単位でCPUコアクロックの倍率を設定できます。「CPUクロック倍率(CPU Core Ratio): 40.00」と設定することでデフォルトのベースクロック100MHzの40倍で4.0GHzで動作します。
「AI Overclock Tweaker」から「Manual」モードもしくは「D.O.C.P」モードを選択するとベースクロック(BCLK)の設定項目が表示されます。デフォルトのAutoでは100MHzに固定されていますが、設定値を直打ちすることで40~300MHzの範囲内で0.200MHz刻みで設定できます。CPUコアクロックはBCLKに対する動作倍率で設定されるのでBCLK110MHz、動作倍率45倍の場合はコアクロック4.95GHz動作となります。ただしBCLKを使用したOCはかなり上級者向けなので通常はAutoか100MHzが推奨です。
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)ではAMD CPUのマルチスレッディング機能である「SMT:サイマルテイニアス マルチスレッディング(Simultaneous multithreading)」の有効・無効をBIOS上から設定可能です。
第2世代RyzenをX470チップセット搭載AM4マザーボードと組み合わせることで利用可能な新機能「Precision Boost Overdrive」については標準設定では無効化されていますが、「AMD CBS」、「Zen Common Options」、「NBIO Common Options」を選択していくと設定項目が表示され、「Precision Boost Overdrive」の機能の有効化や手動設定が行えます。
続いてコア電圧の調整を行います。
AMD Ryzen CPUのオーバークロックで変更する電圧設定については、CPUコアクロックに影響する「CPUコア電圧」と、メモリクロックやRyzen APUに搭載される統合GPUの動作周波数に影響すると「SOC電圧」の2種類のみと非常に簡単化されています。
AMD Ryzen CPUでオーバークロックを行う場合に変更する電圧設定については基本項目が「CPUコア電圧」「CPU SOC電圧」「DRAM電圧」の3項目のみと非常に簡単化されています。加えてASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)では「Digi+ VRM」の項目からその他多くの電圧設定が可能です。
CPUコアクロックのOCに関連するコア電圧のOC設定としては、ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)ではCPUコア電圧の項目を変更します。CPUコア電圧ではマニュアルの設定値を固定する「マニュアル」モード、CPUに設定された比例値にオフセットかける「オフセット」モードの2種類が使用できます。
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)でCPUコアクロックのOCを行う場合コア電圧設定モードとして通常はマニュアルモードを推奨します。マニュアルモードの場合は0.00625V刻みでコア電圧の設定が可能です。
またCPUのOCに関連する追加の電力設定としてASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)では、コアクロックと電圧の設定項目の中間あたりに「External Digi+ Power Control」が配置されています。
コアクロックを高く設定する時に追加で変更するといい項目として「External Digi+ Power Control」内に「ロードラインキャリブレーション」があります。ロードラインキャリブレーションはCPU負荷時の電圧降下を補正してOCを安定させる機能となっており、補正の強度としてLevel 1~Level 5の5段階になっており、Levelの添え字の数字が大きくなるほど電圧降下の補正は強くなりOCは安定しやすくなりますが発熱も大きくなります。Level 3あたりから始めて安定する設定値を模索していくのがおすすめです。
「External Digi+ Power Control」ではその他にも「CPU VRM スペクトラム拡散」「VDDR CPU VRM 動作モード」「VDDR CPU VRM 可動フェーズ設定」などCPUのオーバークロック時にマザーボードVRMからの電力供給を安定させる設定項目が用意されています。
あと「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」は複数のP-State(Custom P-State)の個別設定も可能です。設定項目は若干わかりにくい場所にに配置されており、設定項目はトップメニュータブの「Advanced」から「AMD CBS」「Zen Common Options」「Custom Pstates / Throttling」と順番に下っていくことでアクセスできます。
Custom P-Stateでは「P-State X FID」「P-State X DID」「P-State X VID」の3種の設定値を各P-State Xに対して設定します。いずれの設定値も16進数(0~9、A~F)による設定で例えば、3a(16進数)=3*16+10=58(10進数)となります。
各P-State Xに対するコアクロックの設定は次のようになります。
コアクロック = BCLK(ベースクロック)*FID / DID * 2
つまり「FID / DID * 2」がコアクロックOC一般に言うコア倍率になります。例えば上のスクリーンショットでは「FID:88」「DID:8」なので10進数に戻してコア倍率を計算すると、34.00となりBCLK:100MHzに乗じて3400MHz動作となります。「Custom P-States X」の下にある「Frequency(MHz)」の横のテキストボックスにも3400と表示されています。似たようなコア倍率に対して「Core FID」と「Core DID」の組み合わせが複数存在する可能性がありますが、この組み合わせによるOC安定性に関する違いまではわからないので、そのあたりは各自で詰めてみてください。
各P-State Xに対するコア電圧は「P-State X VID」によって決まっており、同様に16進数による設定値入力で、0~FFの範囲内で設定可能です。「P-State X VID」の設定値に対してコア電圧は次のようになります。
コア電圧 = 1.55000V - 0.00625 * VID
例えばVID:3a(16進数)=58(10進数)の場合はコア電圧は1.18750Vとなります。
以上のような流れで最大コアクロックをP-State 0として順番に下がるように設定していきます。
メモリのオーバークロックについても簡単に紹介だけしておきます。
メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。
一方でXMPによるメモリOCは上の手順によるOCをメーカー側がすでに行い動作確認をしているので、メーカーが動作確認を行ったOCプロファイルを適用するだけで簡単にメモリをオーバークロックできます。
メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありませんが、ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)では正常にPOSTできないメモリOC設定でエラーが出た場合は数回再起動した後、自動で2133MHzや2400MHzなど定格となるSPDプロファイルの緩い設定で再起動してくれるのでメモリOCを安心して行えます。
メモリOCで有名なXMPプロファイルはIntelの策定した規格なのでAMD CPU&マザーボードの環境では厳密にいうと非対応ですが、ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)などの一部のASUS製マザーボードでは「AI Overclock Tuner」のプルダウンメニューに、メモリに収録されたXMPプロファイルからRyzen環境でも使用可能なメモリOCプロファイルを自動生成する「D.O.C.P」という独自機能があります。
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)では「AI Overclock Tweaker」から「D.O.C.P」モードを選択することで、自動生成されたOCプロファイルによるメモリOC設定の適用が可能です。
XMPプロファイルを使用しない「AI Overclock Tweaker」のAutoモードやManualモードでは、「メモリ周波数」の項目とAutoにすると、DDR4メモリごとにSPDプロファイルに設定された2133MHz~2666MHzの動作周波数とタイミングによる定格動作となります。手動でメモリ周波数を設定する場合は「メモリ周波数」の項目でプルダウンメニューから最大4200MHzまでの動作クロック(倍率)設定が可能です。
メモリタイミングの個別打ち込み設定も可能です。メモリタイミングを手動で設定する場合は基本的には「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS Read (tRCDrd)」、「RAS to CAS Write (tRCDwr)」、「RAS Precharge (tRP)」、「RAS Active Time (tRAS)」の主要な5タイミングと、加えて下の方にスクロールしていくと表示される「Command Rate:1 or 2」の6つ以外はAutoのままでいいと思います。
メモリ周波数を3200MHz以上にOCする場合は「GearDownMode」をEnabledに設定すると動作が安定するかもしれないので、Autoで上手くいかない場合は設定を変更してみてください。
メモリタイミングの下の方にある「ProcODT」という設定値がAutoのままではPOSTがクリアできない場合があります。AutoでPOSTをクリアできない、もしくは起動後に安定しない場合は「ProcODT」を43.6~68.6の間で固定して安定するものを探してみてください
DDR4メモリの周波数OCを行う際は「DRAM Voltage」の項目を、3000MHz以上にOCする場合は1.300~1.350V、3800MHz以上にOCする場合は1.370~1.400Vに上げる必要があります。メモリをOCする場合は最初から1.350V以上にDRAM電圧を盛っておくのがおすすめです。
AMD Ryzen CPUでメモリの動作クロックをOCする場合はDRAM電圧だけでなく「CPU SOC電圧(CPU NB/SOC Voltage)」も1.100V~1.200V程度に盛ってやると動作が安定しやすいようです。CPUコア電圧同様にマニュアルの設定値を固定する「マニュアル」モード、CPUに設定された比例値にオフセットかける「オフセット」モードの2種類が使用でき、0.00625V刻みでコア電圧の設定が可能です。
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)の動作検証・OC耐性
BIOS周りの管理人的に気になるところやOC設定の基本についての紹介はこのあたりにしてASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)を使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。まずはBIOS上の起動設定をフルスクリーンロゴとファストブートを無効にしてOSの起動時間を測定しました。ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)の起動時間は33秒ほどとなりました。ハイエンド多機能マザーボードなのでPOSTに若干時間がかかっている印象です。
続いてASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)を使用した場合のCPUのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
Ryzen 7 2700XのOC設定は「CPU動作周波数:4200MHz」「CPUコア電圧:1.350V」「CPUロードラインキャリブレーション:Level4」「メモリ周波数:3466MHz」「メモリタイミング:16-16-16-36-CR1」「メモリ電圧:1.350V」としています。
上の設定を適用したところ問題なくOSを起動させることができました。
「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」の環境では、検証機材メモリに「G.Skill FLARE X F4-3200C14D-16GFX」を使用して手動オーバークロックすることによってメモリ周波数3466MHzにOCし、なおかつメモリタイミングを16-16-16-36-CR1に詰めることができました。
Ryzen 7 2700Xの4.2GHz、メモリ3466MHzでCinebenchも問題なくクリアできました。
続いてこのOC設定を使用してストレステストを実行しました。
検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間8分、WQHD解像度、60FPS、容量4.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はRyzen 7 2700Xの場合15分ほどなので同じ動画で2つ平行して2周させています。エンコード中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
ストレステスト中のCPU温度とCPU使用率のログは次のようになりました。マザーボードにASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)を使用することでRyzen 7 2700Xを全コア同時4.2GHzにOCしてストレステストをクリアできました。CPUクーラーのファン回転数は1200RPMで固定しています。
スマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE Pro」(レビュー)を使用してASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)のVRM電源温度をチェックしていきます。
「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」のVRM電源回路に関する概要の解説でも紹介したように、前世代CROSSHAIR VI HEROから改良が加えられVRM電源温度の低下に成功したとのことなので、Ryzen 7 2700Xの定格動作にて長時間負荷をかけて比較してみたところ次のようになりました。
前モデルCROSSHAIR VI HEROではCPUソケット左側の6フェーズに集中して負荷がかかり最大で70度半ばまでVRM電源温度が上がっているのに対し、「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」ではCPUソケット上側のVRM電源6フェーズにも負荷が分散しているので広範囲に熱くなっているものの最大温度は60度半ばまで低下していることがわかります。
続いて本題となるRyzen 7 2700Xやメモリを上記のBIOS設定でOCした時の負荷テスト中のVRM電源温度をチェックしていきます。ちなみにASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)環境でRyzen 7 2700Xを4.2GHzまでOC、かつメモリも3466MHzにOCするとシステム全体(ほぼCPU)の消費電力が200W~250Wに達します。
Ryzen 7 2700Xを常用限界近くまでOCして負荷をかけていますが、簡易水冷CPUクーラーによるCPU冷却で、かつスポットクーラーよって風も当てないパッシブ冷却の状態でも、VRM電源温度は70度後半に収まりました。ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)であればRyzen 7 2700Xの定格はもちろん、常用限界な手動オーバークロックであってもVRM電源はパッシブ冷却で問題なさそうです。
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)のレビューまとめ
最後に「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- ROG CROSSHAIRシリーズらしいブラック一色のクールなデザイン
- リアI/OカバーやPCHクーラーに内蔵されたLEDイルミネーションが綺麗
- マザーボード一体型リアI/Oパネル「プリマウントI/Oシールド」搭載
- 検証機ではRyzen 7 2700Xの全コア同時4.2GHz、メモリ3466MHz OCで安定動作
- 重量級グラボにも耐えるメタルアーマー採用PCI-Eスロット「SAFE SLOT」
- 外部センサー搭載で水温ソースのファンコンも可能なので水冷PCにも最適
- 高速NVMe接続のM.2スロットが2基設置
- M.2スロットのうち1つはM.2 SSDヒートシンクを装備
- Wi-FiはIEEE802.11ac/n/a/g/b、Bluetoothはver4.2に対応した無線LAN搭載
- NVIDIA GTX 10XXシリーズのマルチGPU用のSLI HBブリッジが付属する
- 3万円後半と第2世代Ryzen対応AM4マザーボードとしては高価
第2世代Ryzen CPUにネイティブ対応となるX470チップセット搭載AM4マザーボードとしてAUSUからリリースされた「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」は、TDP105WのRyzen 7 2700Xに合わせたVRM電源回路の最適化、プリマウントリアI/Oシールドの採用、M.2 SSDヒートシンクの搭載など、前世代CROSSHAIR VI HEROよりも着実にブラッシュアップされ、ゲーマー&OCerの高い要求に応えるハイエンドAM4マザーボードとして非常に高い完成度で仕上がっています。
ASUS製マザーボードではお馴染みですがBIOSやマニュアルの日本語ローカライズ品質は主要4社の中でも随一となっており、BIOSのテキストベースUIの使い勝手も良好です。ゲーマー向けROG STRIXと言うと比較的高価で上級者向け製品のイメージが強いかもしれませんが、「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」は初心者にも優しいマザーボードだと思います。
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)を使用した検証機では第2世代Ryzen最上位のRyzen 7 2700Xの全コア4.2GHzに、メモリ周波数も3466MHzにオーバークロックすることができました。メモリについてはRyzen環境に最適化されたOCメモリの「G.Skill FLARE X F4-3200C14D-16GFX」を今回使用していますが、X470マザーボードはメモリ互換性は優秀になっているので、少なくとも下調べをして適切なメモリを購入すれば3200MHz動作を狙うのも難しくないと思います。
CPUのオーバークロックを行う上でVRM電源回路はマザーボード依存のOC耐性として重要ファクターの1つですが、「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」では前世代CROSSHAIR VI HEROと同じく、競合他社のハイエンドモデルと比較すると若干少ない、12フェーズVRM電源です。VRM電源フェーズ数こそ比較的少なめなものの、VRM電源回路のレイアウトが最適化されたことによって発熱が分散しているので前世代CROSSHAIR VI HEROよりも低温な動作が可能になっています。「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」ならRyzen 7 2700Xのほぼ常用限界となる全コア4.2GHzのオーバークロックであってもパッシブ空冷でVRM電源温度は70度半ばに収まるので、VRM電源周りについては心配要らずです。
前世代CROSSHAIR VI HEROから複数の追加機能が実装され、VRM電源回路の最適化によりTDP105WのRyzen 7 2700Xのオーバークロックにも楽々対応できるようになった「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」は、第2世代Ryzenでハイエンド自作PCを組むのであればおすすめのマザーボードです。
以上、「ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi)」のレビューでした。
・X470チップセット搭載AM4マザーボード:
<Amazon><TSUKUMO><PCショップアーク>
<PCワンズ><ドスパラ><パソコン工房>
検証機材として使用している以下のパーツもおすすめです。G.Skill F4-3200C14D-16GFX DDR4-3200 CL14 8GB×2 AMD Ryzen用メモリ
G.Skill
<TSUKUMO><PCショップアーク><PCワンズ>
関連記事
・第2世代Ryzen対応X470チップセット搭載AM4マザーボードのレビュー記事一覧・「Ryzen 7 2700X」を全コア4.2GHz&メモリ3466MHzにOCレビュー
・3200MHzのRyzen用OCメモリ「G.Skill F4-3200C14D-16GFX」をレビュー
・360サイズの最強簡易水冷CPUクーラー「Corsair H150i PRO RGB」をレビュー
(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
スポンサードリンク
C6HでもEPSは8+4pinだと思います。修正をお願いします。