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Intel躍進の原動力となった8086プロセッサの発売から40周年を記念して6月8日から全世界同時発売された、Intel第8世代CoffeeLake-Sの6コア12スレッドCPU限定モデル「Core i7 8086K」のレビュー用サンプルをご提供いただいたのでレビューしていきます。「Core i7 8086K」の殻割り&液体金属化で全コア5.2GHz以上のオーバークロックに挑戦します。
「Core i7 8086K」は標準モデルのCore i7 8700Kとコアスレッド数やTDPなど基本的なスペックは共通していますが、ベースクロックが3.7GHzから4.0GHzへ、ブーストクロック(単コア)が4.7GHzから5.0GHzへパワーアップしています。TDPは共通ですがベースクロックが上がっているので、マザーボード側の電圧や電力制御の許容値が上がるため実際は「Core i7 8086K」のほうが若干、消費電力や発熱が大きくなる可能性があります。
製品公式ページ:https://www.intel.com/content/www/us/en/products/processors/core/i7-processors/i7-8086k.html
Core i7 8086K 開封の儀
まずは「Core i7 8086K」を開封していきます。標準モデルのCore i7 8700Kは従来の紙製パッケージですが、限定モデルの「Core i7 8086K」はCore i9 7980XEやCore i7 6950XなどIntelのエンスー向け最上位CPUにのみで使用されてきた豪華な化粧箱が採用されています。
Core i9 7980XEは黒地に金色の文字というシンプルデザインですが、「Core i7 8086K」はCoffeeLake-SシリーズのCore i7モデルと同じイラストが描かれたカラフルなパッケージです。
パッケージを開くとCPU本体以外に、40周年記念のメッセージシートなどが封入されています。
「Core i7 8086K」のCPU自体は、当然ですが、CoffeeLake-Sの標準モデルと同じです。個人的にはヒートスプレッダが記念モデル限定で銅製とか違いがあってもよかったのではとも思います。
Core i7 8086Kの検証機材
「Core i7 8086K」の検証に使用するマザーボードについて特に拘りはなかったのですが、LGA115XのCPUはCPU着脱の際に滑って落としてピン折れのコンボが怖いので、安心安全のCPU Instlation ToolがあるASUS製品から選択しました。あるのとないのとでCPU着脱時の安心感が大違いなので自作PC初心者にはCPU Instlation ToolがあるASUS製マザーボードがおすすめです。他社マザーボードでも採用して欲しいところ。今回のCore i7 8086KのOC検証に使用した検証機材はすでに紹介したマザーボードの「ASUS ROG MAXIMUS X HERO(Wi-Fi AC)」のほかに次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i7 8086K 6コア12スレッド 4.3~5.0GHz Intel Core i7 8700K 6コア12スレッド 4.3~4.7GHz |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) |
マザーボード |
ASUS ROG MAXIMUS X HERO(Wi-Fi AC) (レビュー) |
ビデオカード | MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung 850 PRO 256GB (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
以上で検証機材のセットアップも完了です。
Core i7 8086Kの定格動作について
「Core i7 8086K」のオーバークロック検証の前に定格動作について簡単にチェックしておきます。注意点として、Core i7 8086KなどCoffeeLake-S対応Z370マザーボードについては、爆熱問題で騒がれたCore i9 7900Xに対応したX299マザーボードと同様に、最大動作倍率がマザーボード依存でTDPも基本的に完全無視となっており、板と組み合わせて実際に動かしてみるまでどのような動作倍率になるのかわかりません。
ASUS ROG MAXIMUS X HERO(BIOS:1301)の標準設定を定格とすると、「Core i7 8086K」は仕様値通り全コア4.3GHz動作が標準動作となりました。また動作周波数制御の問題なのか負荷が軽い場面やCinebenchのシングルスレッド性能検証でも安定させることが難しいのですが、一応仕様値通りに「Core i7 8086K」が単コア負荷時は最大5.0GHz動作になることも確認できました。
「Core i7 8086K」と「Core i7 8700K」をCinebenchで比較すると、6コア全てに負荷がかかるマルチスレッド性能はいずれも全コア4.3GHz動作となるのでスコアがほぼ一致しますが、シングルスレッド性能についてはいずれも最大クロックで安定しないものの、最大4.7GHzの「Core i7 8700K」がシングルスコア205に対して、最大5.0GHzの「Core i7 8086K」はシングルスコア216で高スコアとなっています。
ちなみに手動でコアクロックを全コア5GHzに固定するとシングルスコアは221となります。
Core i7 8086Kの殻割りオーバークロック
続いて本題の「Core i7 8086K」の手動オーバークロックを行います。限定モデルの「Core i7 8086K」も標準モデルと同じくCPUダイとヒートスプレッダ間はソルダリングではなく、巷ではグリスと呼ばれるTIM(Thermal Interface Material)が使用されており、360サイズ簡易水冷など市販CPUクーラーでもグリスの熱伝導効率がボトルネックになってしまうので、ヒートスプレッダの殻割りを行って、CPUダイとヒートスプレッダ間を液体金属に塗り替えました。なおCPUの殻割りは当然ですがメーカー保証外となるので注意して下さい。
CPUの殻割り液体金属化の詳細な手順については下記の記事でまとめているので割愛します。最近では簡単に殻割りができるツールもあるので、気になる方は参考にしてみてください。
・6コア12スレッド「Core i7 8700K」を殻割り5.2GHzにOCレビュー
「Core i7 8086K」の殻割りの効果を「CPU動作クロック:全コア5.0GHz」、「CPUコア電圧:1.400V」、「ロードラインキャリブレーション:Level6」、「SVID:Disable」の簡単OC設定で比較してみました。
OC後のストレステストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間8分、WQHD解像度、60FPS、容量4.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はCore i7 8086Kの場合15分ほどなので同じ動画のエンコードを2つ並列して2周実行しています。テスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
「Core i7 8086K」の殻割り前後でストレステスト中のCPU温度を比較すると次のようになっています。殻割り前はCPU温度は最大92度まで上がりましたが、殻割りをしてCPUダイとヒートスプレッダ間に液体金属を塗ることによって最大温度は72度まで下がりました。平均温度でも17.5度下がっています。
今回入手した「Core i7 8086K」についてはCPUコア電圧1.400V前後で全コア5.2GHzまでは上記のストレステストで問題なく安定動作が確認できました。
ストレステストでは5分と持たず落ちるので一発芸なOC設定ですが、1.480Vほど電圧を盛るとCinebenchは安定して回せる程度の安定度で全コア5.3GHzにもOCできました。ただしスコアが綺麗に伸びていないので、このあたりが簡易水冷による常用限界っぽいです。
サンプルが少ないので断言はできませんが、Core i7 8700Kは1.400Vで全コア5.0GHzが回らない個体もあることを考えると、1.400V前後で5.2GHzがあっさり回る「Core i7 8086K」は若干ではあるもののOC耐性の高い石が選別されているような感触です。
下はCPUや動作クロック別のCinebenchのベンチマークスコア比較となっています。「Core i7 8086K」と「Core i7 8700K」と比較すると動作クロックが同じであれば、当然ですがベンチマークスコアもほぼ一致しています。
続いて各CPU別にシステム全体の消費電力を比較してみました。
測定には電源ユニット「Corsair RM650i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの出力ではなく変換ロスを差し引いた純粋な検証システム全体への入力電力をチェックしています。消費電力測定の負荷には上の温度テスト同様に動画のエンコードを行い、最初5分間の平均電力を消費電力、最大電力を瞬間最大負荷としています。
「Core i7 8086K」と「Core i7 8700K」と比較すると定格において両者の消費電力は120~130W程度でほぼ一致しており、CPU以外の消費電力も考慮するとTDP95WのCPUらしい消費電力になっています。ただし殻割り比較で使用した全コア5.0GHzのOC設定では、共通のOC設定を使用しているのですが、「Core i7 8086K」のほうが10Wほど消費電力が高くなりました。定格ではほぼ一致しているのでCPUの仕様による差ではなく単純にCPUダイ自体の個体差のような気がします。
メモリについても検証機材「G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK」でオーバークロックを試してみたところ、メモリ周波数4000MHz&メモリタイミング17-17-17-37-CR2で安定動作が確認できました。メモリ周りについても「Core i7 8086K」はCore i7 8700Kと同等のOC耐性があるようです。
Core i7 8086Kのレビューまとめ
最後に「Core i7 8086K」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 40周年記念モデルで製品パッケージが豪華な化粧箱
- Core i7 8700Kよりも高速なベース4.0GHz、単コアブースト5.0GHz
- 倍率アンロックCPUなので手動OCが可能
- Core i7 8700KよりもOC耐性が良い石が選別されている?(気がする)
- 販売価格5万円で、8700Kよりも1万円高い
「Core i7 8086K」については目に見える違いとして、シングルコアの最大ブーストクロックが5.0GHzになって、パッケージが豪華な化粧箱になっていますが、それらを除けば基本的には通常モデルのCore i7 8700Kと共通点の多いCPUです。Cinebenchのシングルスレッド性能でも差が出ているようにCore i7 8086KはCore i7 8700Kよりも高速であることは間違いないのですが、+1万円の価値をそこに見出せるかというと難しいというのが正直なところだと思います。概ねご祝儀的に購入するプレミア製品という理解で間違いないかなと。
「Core i7 8086K」はその他のK付きCPU同様にCPU動作倍率はアンロックなのでユーザーによる手動OCに対応しています。Core i7 8700Kと違ってグリスではなくソルダリングだったりするとプレミア製品としての価値も上がった気がするのですが、やはり「Core i7 8086K」もグリスでした。
OC耐性については検証したサンプルが少ないので断言はできないものの、コア電圧を1.400V以上盛ってやっと全コア5.0GHzで動作するような個体も8700Kには存在するので、1.400V前後で全コア5.2GHzがあっさりと回った「Core i7 8086K」は単コアとはいえ定格で5.0GHzで動作する仕様を考えると、OC耐性が多少は優れた個体が選別されているような気がします。8086Kか8700Kを手動OCで全コア5.0GHz以上で運用したい!ということであれば、8086Kのほうが確率は良いかもしれません。
以上、40周年記念限定モデル「Core i7 8086K」の殻割りOCレビューでした。
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検証機材として使用している以下のパーツもおすすめです。
G.Skill Trident Z RGB DDR4メモリ
G.Skill Trident Z Black DDR4メモリ Skylake-X対応
G.Skill
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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記念品、コレクターアイテムとして見るのが適当な気が。