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水冷トップと冷却ファンにアドレッサブルLEDイルミネーションと搭載し、水車型フローインジケーターが簡易水冷CPUクーラーの顔ともいえる水冷トップを飾る豪華な240サイズ簡易水冷CPUクーラー「ENERMAX LIQFUSION 240(型番:ELC-LF240-RGB)」のサンプル機をメーカーよりご提供いただけたのでレビューしていきます。豪華な見た目だけではなく、ニッケルメッキ処理済み銅製ベースプレートを採用し、セラミックベアリング採用水冷ポンプを熱源のCPUから隔離されラジエーター寄りチューブ上に配置するなど高耐久性にも重きを置いた非常に完成度の高い簡易水冷CPUクーラーです。
代理店公式ページ:
製品公式ページ:http://www.enermax.com/home.php?fn=eng/product_a1_1_1&lv0=109&lv1=122&no=389
マニュアル:http://www.enermax.com/files/ProductFile_eng/PF_File/925.pdf
レビュー目次
1.ENERMAX LIQFUSION 240の外観・付属品
2.ENERMAX LIQFUSION 240の水冷トップと水冷チューブ
3.ENERMAX LIQFUSION 240のラジエーターと冷却ファン
4.ENERMAX LIQFUSION 240をセットアップ
5.ENERMAX LIQFUSION 240のLEDイルミネーション
6.ENERMAX LIQFUSION 240の冷却性能
7.ENERMAX LIQFUSION 240のレビューまとめ
補足.空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて
ENERMAX LIQFUSION 240の梱包・付属品
まずはENERMAX LIQFUSION 240の外観や付属品をチェックしていきます。240サイズなどマルチファンの大型ラジエーターを搭載する簡易水冷クーラーのパッケージはかなり大きいものが多いですが、「ENERMAX LIQFUSION 240」は短辺方向に開く外装パッケージなので開封スペースも最小限です。
ENERMAX LIQFUSION 240の製品パッケージを見ると外装の中にCPUクーラーや付属品に合わせた形のパルプモールドが入っていました。パルプモールドにぴっちりと内容品が収められており、必要最小限のパッケージサイズに押さえられています。
「ENERMAX LIQFUSION 240」で使用するネジやケーブル等の付属品はプラスチックのパッケージとビニール袋に分けて収められていました。
マウントパーツを詳しく見ていくと、Intel LGA115XとAMD AM4の両プラットフォームで共通して使用するバックプレートとポジションプレート、ポジションスクリュー(長ネジ)*4、ワッシャー*4、セットスクリュー(短ネジ)*4が付属します。「ENERMAX LIQFUSION 240」は『Intel: LGA 115x, 1366, 2011, 2011-3, 2066』『AMD: FM1, FM2/+, AM2/+, AM3/+, AM4』など現行のほぼすべてのプラットフォームに対応していますが、マウントパーツの数も少なくシンプルです。
ENERMAX LIQFUSION 240には、冷却ファンを固定するための長ネジが4本×2セットで計8本、ラジエーターをPCケースに固定するための短ネジが4本×2セットで計8本が付属します。
簡易水冷CPUクーラーでは水冷トップのベースプレートに予めグリスが塗られた製品が多いですが、「ENERMAX LIQFUSION 240」には個別に塗布するためのグリスと塗り広げるためのヘラが付属します。
「ENERMAX LIQFUSION 240」は240サイズラジエーター採用簡易水冷CPUクーラーで120mmファンを2基搭載するので、PWM対応4PIN端子を1つのファン端子で給電できるY字2分岐ケーブルが付属します。
「ENERMAX LIQFUSION 240」の水冷ポンプからは給電のための3PINファン端子ケーブルが伸びていますが、マザーボードのファン端子が水冷ポンプの電源出力に対応していない環境向けに、3PINファン端子を4PINペリフェラルに変換するケーブルも付属します。
「ENERMAX LIQFUSION 240」の水冷トップと冷却ファンにはアドレッサブルLEDイルミネーションが搭載されておりそれぞれからLEDイルミネーションへの給電と制御を行うためのケーブルが伸びています。それに接続モバイルするための分岐ケーブルとコントロールボックスとSATA電源ケーブルが付属します。
「ENERMAX LIQFUSION 240」には標準で2年のメーカー・代理店保証がありますが、保証期間終了後に水路内のクーラントが揮発してしまった場合に、ユーザーが各自でメンテナンスしてクーラントを再充填できるように、交換用クーラント100mLとATX電源から直接水冷ポンプを動作させられる電源アダプタが付属します。
パルプモールドからCPUクーラー本体を取り出すと、水冷トップとチューブはビニールに包まれ、ラジエーターは厚紙のスリーブで保護されていました。
ラジエーターの放熱フィンは出荷前のメーカーによる梱包やユーザーが取り出し時に誤って握ってしまったりして潰してしまうことが多いので厚紙スリーブで保護されている配慮はありがたいです。
ENERMAX LIQFUSION 240の水冷トップと水冷チューブ
続いて「ENERMAX LIQFUSION 240」の水冷トップ本体をチェックしていきます。「ENERMAX LIQFUSION 240」の水冷トップの形状はシンプルな円柱ですが、黒色プラスチックのベースの上にLEDイルミネーションのディフューザーを兼ねた半透明なプラスチックのリングがあり、その天面にはヘアライン仕上げの黒色アルミニウムプレートが装着されて高級感のある趣です。アルミニウムプレート上には銀色のENERMAXメーカーロゴが刻印されています。
水冷トップの天面は透明なアクリルプレートが設置されており、水冷トップの水路内部に配置された水車型のフローインジケーターが覗ける構造になっています。
水冷トップに内蔵されたアドレッサブルLEDイルミネーションと組み合わさって、水車型フローインジケーターがゆっくりと回る様子は綺麗です。水車の回転速度はポンプ速度を最大にしてもゆっくりです。ベースプレートでの熱交換効率は流速に依存する傾向があるので、もうちょっと速く回る構造にしてくれたほうが冷却性能的には嬉しかったかもしれません。
水冷トップの半透明プラスチックリングの3時方向からは、内蔵されたアドレッサブルLEDイルミネーションへの給電・制御を行うためのケーブルが伸びています。細かいところですが、水冷チューブを動かすときに電源ケーブルに当たるので、電源ケーブルの出し口は2時か4時の方向にズラして欲しかったです。
「ENERMAX LIQFUSION 240」は簡易水冷CPUクーラーのベースプレートとしては珍しく、ニッケルメッキ処理が施された銅製ベースプレートが採用されています。銅面剥き出しに比べて表面が酸化しにくく長期間の安定した冷却性能の維持を考えるとニッケルメッキ処理はありがたい仕様です。ベースプレートの表面は滑らかで鏡面磨き上げになっています。
「ENERMAX LIQFUSION 240」が対応するCPUで最もヒートスプレッダの大きいLGA2066でも、ベースプレートとヒートスプレッダが全体でしっかり接する十分な大きさが確保されています。
水冷トップを固定するためのネジは、水冷トップの0時と6時の方向に2か所配置されており、あらかじめ脱落防止機構付きでネジが装着されています。水冷ブロックを抑えながらCPUクーラーをネジ止めしようとして、ネジをマザーボードやPCケースに落とす心配がありません。細かい配慮が行き届いています。
水冷トップの3時方向からはL字エルボーを経由してラジエーターへ繋がる水冷チューブが伸びています。
L字エルボーの水冷トップ側の根本はロータリー式になっているので両側ともにチューブ同士が干渉しない範囲で180度自由に動かすことができます。根本の距離は広めでチューブも細いので同じ方向でも180度近くまで回すことができます。
水冷チューブはゴム製チューブにナイロンスリーブが巻かれています。細くて丈夫なチューブなので曲げやすく取り回しにも優れています。かなり強く曲げてもチューブが折れて潰れなかったのでコンパクトなPCへ組み込む際にも苦労することはないと思います。
水冷チューブの径は11mm、長さは400mmです。十分な長さがあるのでミドルタワー程度のPCケースであればトップやリアだけでなく、フロントのファンマウントスペースにもラジエーターを設置できます。
簡易水冷CPUクーラーの多くでは水冷トップに水冷ポンプが内蔵されているものが主流ですが、「ENERMAX LIQFUSION 240」は、水冷チューブ状に水冷ポンプを配置するという独特な構造が採用されています。水冷ポンプには高耐久性なセラミックベアリングが採用されており、MTBF(平均故障間隔)も5万時間で、熱源のCPUから離れた場所に配置されているので、簡易水冷CPUクーラーの心臓ともいえる水冷ポンプの寿命について「ENERMAX LIQFUSION 240」には非常に安心感が持てます、
ENERMAX LIQFUSION 240のラジエーターと冷却ファン
続いてENERMAX LIQFUSION 240のラジエーター部分をチェックしていきます。「ENERMAX LIQFUSION 240」のラジエーターデザインは一般的なもので、特徴は側面に配置されたENERMAXロゴのみとなっています。ラジエーターグリルはマットなブラックカラーで綺麗に塗装されています。
放熱フィンのピッチについては水冷ユーザー視点で言うと少し密度が高いと感じました。密度が高い分、放熱フィンの放熱性能は高まりますが、静圧の低いケースファンや低回転数動作の場合、十分なパフォーマンスを発揮できない可能性もあるので注意が必要です。
管理人が本格水冷向けのラジエーターとして推奨している「Alphacool NexXxoS Full Copper ラジエーター」シリーズ(右)のフィンピッチと比較すると「ENERMAX LIQFUSION 240」のラジエーターフィンピッチの密度の高さがわかりやすいと思います。
ラジエーターの厚さは一般的な27mm厚です。25mm厚の冷却ファンと組みわせることになるので、ファンマウントスペースのクリアランスは52mmほど必要になります。
ENERMAX LIQFUSION 240には「ENERMAX T.B. RGB(型番:UCTBRGB12-LF)」という120mmサイズの冷却ファンが標準で2つ付属します。「ENERMAX T.B. RGB」は500~2000RPMで速度調整可能なPWM対応の4PIN型ケースファンです。
なお同名製品「ENERMAX T.B. RGB(型番:UCTBRGB12)」はファン単体でも販売されていますが、単体販売品は定格ファン回転数が1500RPMであり、LEDイルミネーションはアドレッサブル制御非対応など仕様が若干違うので注意してください。
「ENERMAX T.B. RGB」は円形フレームからX字の方向にファン固定用のプレートが伸びるという独特な形状の120mmサイズ冷却ファンです。円形フレームに沿った半透明なグレーのラインはLEDイルミネーションが内蔵されています。
「ENERMAX T.B. RGB」の円形フレーム上に搭載されたLEDリングには、ムラの無い均一な輝度で鮮やかなライティングを実現したENERMAX LED LIGHTING Technologyが採用されています。
軸固定用の支柱はファンブレードに対して垂直になっており、ファンブレードの根元が支柱付近を通過するときに発生するノイズを抑制しています。
冷却ファンのフレームからはファンに給電を行うためのPWM対応4PINファン端子ケーブルと、LEDイルミネーションへの給電・制御を行うための独自規格のLED端子ケーブルの2本が伸びています。
ファンフレームのネジ穴周辺部分には、高回転時に発生しやすい振動やノイズを抑制し、静音性を高める防振ラバーパッドを搭載しています。
「ENERMAX T.B. RGB」の軸受には製品名”T.B”の頭文字にもなっている、ENERMAXが特許を取得した「Twister Bearing」が採用されています。「Twister Bearing」は摩擦を最小限に抑えるためにひとつのパーツで構成され、オイルを注すことなく滑らかな動作を実現する特殊な素材を採用、マグネティックボールが軸を支持することにより振動を大幅に軽減しています。自称軸音ソムリエの管理人が軸音テイスティング(耳を近づけてファンを指で弾くだけ)をしてみましたが、若干、サーっという軸音が聞こえました、ただ回転数が上がると消えるので500~800RPM程度の回転数があれば聞こえない程度の軸音だと思います。
ENERMAX LIQFUSION 240には、冷却ファンを固定するための長ネジが4本×2セットで計8本、ラジエーターをPCケースに固定するための短ネジが4本×2セットで計8本が付属します。ちなみにネジ規格はM3.5のようです。
冷却ファンをラジエーターに固定すると「ENERMAX LIQFUSION 240」は下のようになります。
ENERMAX LIQFUSION 240の検証機材・セットアップ
ENERMAX LIQFUSION 240を検証機材のベンチ機にセットアップします。各種CPUクーラーの検証を行うベンチ機のシステム構成は次のようになっています。テストベンチ機の構成 | ||
ベンチ機1 |
||
OS | Windows10 64bit Home | |
CPU |
Core i7 7700K Core/Cache:5.0/4.8GHz, 1.300V 殻割り&クマメタル化(レビュー) |
AMD Ryzen 7 2700X (レビュー) |
M/B | ASRock Z270 SuperCarrier (レビュー)(BIOS:1, 2) |
ASUS ROG CROSSHAIR VII HERO (Wi-Fi) (レビュー) |
メインメモリ | Corsair Dominator Platinum Special Edition DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) 3200MHz, 14-16-16-36-CR2 |
G.Skill FLARE X F4-3200C14D-16GFX DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) |
グラフィックボード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
|
システムストレージ |
Crucial MX300 SATA M.2 SSD 1TBCT1050MX300SSD4 | WD Blue 3D NAND SATA SSD 500GB (レビュー) |
電源ユニット |
Corsair HX1200i (レビュー) |
|
PCケース/ ベンチ板 |
STREACOM BC1 (レビュー) |
CPUクーラーの設置方法について、当サイトの評価基準となるチェックポイントは次の3つです。
- LGA115Xの場合、CPU固定バックプレートが単独でマザーボードに固定できるか
- マウントパーツ設置状態でCPUを交換できるか
- 空冷の場合、ネジ止めの場合はマザーボード側から固定できるか
簡易水冷or水冷ブロックの場合、ハンドスクリューなどツールレス固定ができるか
上の3項目を全て満たす例として本格水冷用のCPU水冷ブロックですが「EK-Supremacy EVO」のマウンタ構造は「バックプレートをM/Bに固定可能」「完全ツールレス」「マウンタ設置状態でCPUの交換が可能」なので本格水冷・簡易水冷クーラーの水冷ブロック固定方式としてはベストだと思っています。水冷クーラーメーカーにはどんどん真似してもらいたい理想的な構造です。
前置きはこのあたりにしてベンチ機へENERMAX LIQFUSION 240をセットアップします。
「ENERMAX LIQFUSION 240」のマウントパーツの設置手順はIntel LGA115XやAMD AM4などLGA2066以外のプラットフォームかIntel LGA2066かの2種類に分かれています。
今回メインの検証機材として使用するLGA1151プラットフォームでは付属マウントパーツを全て使用します。
まずはマザーボードを裏返して付属のバックプレートをマザーボードのネジ穴に合わせて乗せ、ポジションスクリュー(長ネジ)*4をネジ穴に通します。バックプレートは金属製ですが、マザーボードと接する面にはスポンジが貼られているのでショートや素子破損の心配はありません。
ネジが落ちないように注意してマザーボードを表に返したら、マザーボードのネジ穴から飛び出しているポジションスクリューに付属のプラスチック製ワッシャーを通し、その上からスタンドオフを固定します。
スタンドオフを装着したら、その上にポジションプレートを乗せてセットスクリュー(短ネジ)*4でポジションプレートを固定したら、マウントパーツの設置は完了です。AMD AM4プラットフォームの場合はバックプレート装着前に標準マウントパーツの取り外し手順が加わりますがそれ以外はLGA115X系と全く同じです。
マウントパーツは単独でもマザーボードに固定されているので、CPUクーラーの設置が完了していない状態でもバックプレートなどが脱落することはなく、PCケースに設置した状態でもCPUクーラーの固定が容易になっています。
またマウントパーツでプレートを使用するタイプのCPUクーラーでは、プレートと干渉してしまうためマウントパーツ設置状態ではCPUの交換ができないものが多いですが、「ENERMAX LIQFUSION 240」のポジションプレートは枠が大きいのでソケットやレバーと干渉せず、マウントパーツを装着したままでも問題なくCPUの交換ができました。
水冷トップをマザーボードに固定する準備はこれで完了したので熱伝導グリスをCPUのヒートスプレッダに塗布します。熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。熱伝導効率も高く、柔らかいグリスで塗布しやすいのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
熱伝導グリスを塗ったらバックプレートから延びるネジに水冷ヘッドの足のネジ穴が合うようにしてCPUクーラーを装着します。CPUの上に乗せたらグリスが広がるように力の入れすぎに注意して水冷ヘッドをグリグリと捻りながら押し込んでください。あとは水冷トップの上下に装着済みのネジでリテンションすれば水冷トップの固定は完了です。
水冷トップ側面から水冷チューブの出ている簡易水冷CPUクーラーでは最左端にあるメモリスロットの距離次第で水冷トップ右のチューブエルボーとメモリが干渉してCPUクーラーを設置できない場合がありますが、「ENERMAX LIQFUSION 240」では検証機材のASRock Z270 SuperCarrierでも十分なクリアランスが確保されているのでその他のマザーボードでも概ね干渉は起こらないと思います。
簡易水冷CPUクーラーはラジエーター設置の手間やスペース確保の問題はありますが、マザーボード上のメモリなどのコンポーネントとの干渉は大型のハイエンド空冷CPUクーラーより発生し難く、水冷トップの設置自体も基本的にツールレスで容易なのが長所だと思います。
以上でENERMAX LIQFUSION 240のベンチ機へのセットアップ完了です。
ENERMAX LIQFUSION 240のLEDイルミネーション
ENERMAX LIQFUSION 240の水冷トップと冷却ファンに搭載されたアドレッサブルLEDイルミネーションのライティングや制御についてチェックしていきます。「ENERMAX LIQFUSION 240」の水冷トップには12球(アドレス)、冷却ファンには18球(アドレス)のアドレッサブルLEDイルミネーションがそれぞれ内蔵されています。
水冷トップは天面のアクリルプレートから覗くことができる水車型フローインジケーターの回転と組み合わさって、アドレッサブルに発光する様子が綺麗です。
「ENERMAX LIQFUSION 240」に搭載されたアドレッサブルLEDイルミネーションは、標準で付属するコントローラーによって一括で制御することができます。コントローラーには下写真で右から、ステータスLED、アップボタン、ダウンボタン、モードボタンが配置されています。
コントローラーに付属のLED分岐ケーブルとSATA電源ケーブルを接続することによって、水冷トップと冷却ファン2基へSATA電源から電力供給して、コントローラー1つで一括してライティング制御が行えます。
モードボタンを押下するとステータスLEDが赤色と緑色に変化します。緑色は発光パターン設定モード、赤色は変化スピード設定モードになっていることを示しており、各モードではその名前の通りアップ/ダウンボタンで発光パターンや変化スピードが設定できます。
付属コントローラーで設定可能な発光パターンには、全アドレスの発光カラーが一致するものとしてカラーサイクル、ブリンキング(点滅)、ブレシング(明滅)などがあり、ブリンキングとブレシングはアップ/ダウンで発光カラーも赤緑青白などから選択できます。また七色のカラーバーが周回するレインボーなどアドレッサブルな発光パターンも3種類用意されています。
またアップボタンを3秒長押しするとステータスLEDがオレンジ色に点灯しオートランモードに切り替わります。オートランモードではレインボー、ブレシング、ブリンキング、カラーサイクルなど複数の発光パターンが規定の順番で順々に切り替わります。
付属コントローラーのモードボタンを3秒長押しすることで接続されたLEDを消灯することもできます。
またENERMAX LIQFUSION 240のアドレッサブルLEDイルミネーションは付属のコントローラーに加えて、公式ページでASRock Polychlome RGB SyncやGIGABYTE RGB FusionやMSI Mystic Lightなどマザーボードのライティング制御機能による操作にも対応していることが公表されています。
ただしENERMAX LIQFUSION 240の水冷トップや冷却ファン2基から伸びているLED接続ケーブルのコネクタはいずれも独自規格となっています。
ENERMAX LIQFUSION 240のLEDコネクタは一見して4PINの独自形状ですが電気的には3PINのみが有効なVD-G型となっており、ASUS、ASRock、MSIの最新マザーボードで採用されているVD-G型3PINアドレッサブルLEDヘッダーに接続が可能でした。
ASUS AURA Syncは公式に対応が公表されていませんが右上写真のように接続することで問題なくLEDイルミネーションを点灯・制御することができました。ASRockとMSIについては同種のLEDヘッダーが採用されており、GIGABYTEについてはマザーボードのヘッダーは異なるものの変換ケーブルが標準でマザーボードに付属するので、いずれも問題なく使用できると思います。
なお「ENERMAX LIQFUSION 240」の水冷トップは12アドレス、冷却ファンは18アドレスなので、マザーボードのアドレッサブルLED設定でLED球数(アドレス数)が設定できる場合、3つを付属の分岐ケーブルで一括管理するなら多い方の18に設定してください。
ENERMAX LIQFUSION 240の冷却性能
本題となるENERMAX LIQFUSION 240の冷却性能についてチェックしていきます。検証システムをベンチ板に置いた状態で測定を行っているためCPUクーラーが水冷・空冷によらず基本的にCPUクーラーの理想的な性能をチェックすることになります。
検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間8分、WQHD解像度、60FPS、容量4.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はCore i7 7700Kの場合20~30分ほどです。エンコード中のファン回転数はCPUクーラー別で個別に設定した一定値に固定しています。
エンコードに用いたCPUはCore i7 7700K(殻割りクマメタル化済み)を使用しており、CPUダイとヒートスプレッダ間のグリスを液体金属グリスに塗り替えているので通常よりも低い温度で動作しています。
・「Thermal Grizzly Conductonaut」を殻割りCore i7 7700Kでレビュー
また手動でオーバークロック設定を行っています。コアクロックは4コア同時5.0GHz、キャッシュクロックは4.8GHz、コア電圧はBIOS上では1.350V固定、ロードラインキャリブレーションはLevel2です。
エンコード中CPU温度のCPUクーラー別比較は次のようになりました。
ENERMAX LIQFUSION 240のファン回転数を1300RPM、ポンプ回転数を定格に固定すると、5.0GHzに手動OCしたCore i7 7700KのCPU温度が最大64度、平均62.3度となり優秀な冷却性能を発揮しています。120mmファン2基で冷却を行う240サイズラジエーターはPCケースへの設置において汎用性が高いモデルですが、Core i7 7700Kの全コア5.0GHz OCでも難なく冷やせます。
ベンチ機1の検証環境で同様のCPUクーラー冷却性能テストを行った比較結果のまとめが次のようになっています。下に行くほど冷却性能が高く、平均温度と最大温度の和で順位付けを行っています。なおファン回転数によって順位は変わりうるのでその点は注意してください。
サウンドレベルメーター(騒音計)を使用してファンノイズをCPUクーラー別で比較しました。騒音計の収音部分とノイズ発生部分との距離が15cm程度になる位置で測定を行っています。簡易水冷の場合はラジエーターとポンプ両方からの距離が15cm程度になるように設置しています。
電源OFF時の騒音値は33~35dBです。目安として40dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになり、45dB前後で煩く感じます。50dBを超えてくるとヘッドホンをしていても煩く感じます。同じ騒音値でも不快に感じたり感じなかったりと音の性質にもよるので注意してください。
ENERMAX LIQFUSION 240のラジエーター冷却ファンのファンノイズを個別に測定したところ次のようになりました。ENERMAX LIQFUSION 240はラジエーター冷却ファンを1300RPMまでに収まるようにすると静音動作で運用できると思います。
サウンドレベルメーターによる騒音値の比較結果は次のようになりました。
ENERMAX LIQFUSION 240はラジエーター冷却ファンのファン回転数を1300RPMに設定していますが、ファンノイズは40dB程度なので静音性も良好です。
さらにAMDの最新メインストリーム向けCPUである第2世代Ryzenの最上位モデル「Ryzen 7 2700X」で「ENERMAX LIQFUSION 240」の冷却性能を検証していきます。
Ryzen 7 2700XのOC設定は「Precision Boost Overdrive:有効」「XMPプロファイル(メモリ周波数3466MHz、メモリタイミング14-14-14-34-CR1):有効」「メモリ電圧:1.350V」としています。
OC後のストレステストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間8分、WQHD解像度、60FPS、容量4.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はRyzen 7 2700X 定格の場合は15分ほどなので同じ動画のエンコードを2つ並列して実行しています。テスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
「ENERMAX LIQFUSION 240」のファン回転数を1300RPMに固定してストレステストを実行したところ、「ENERMAX LIQFUSION 240」はRyzen 7 2700XのPrecision Boost Overdrive有効下でCPU温度を最大73.3度に収めることができました。「ENERMAX LIQFUSION 240」に標準搭載の冷却ファンは定格(最大)ファン回転数が2000RPMなのでまだ余力を残していますし、Ryzen 7 2700X OCの実用にも耐える優秀な冷却性能を発揮しています。
ENERMAX LIQFUSION 240のレビューまとめ
最後にアドレッサブルLEDイルミネーション搭載簡易水冷CPUクーラー「ENERMAX LIQFUSION 240(型番:ELC-LF240-RGB)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 水冷トップ(12球)と冷却ファン(18球)*2にアドレッサブルLEDイルミネーション搭載
- 付属コントローラーで全てのアドレッサブルLEDのライティング制御が可能
- ASUS AURA SyncやASRock Polychlome RGB SyncなどM/Bのライティング制御にも対応
- 銅製ベースプレートは汚れに強いニッケルメッキ処理済み
- 5.0GHzに手動OCしたCore i7 7700Kを運用可能な冷却性能
- PBO有効&メモリ3466MHzに手動OCしたRyzen 7 2700Xを運用可能な冷却性能
- バックプレートを単独でマザーボードに固定可能
- 水冷トップ固定ネジは水冷トップに脱落防止機構ありで装着済み
- フローインジケーターを見た感じでは水路内の流速は少し遅め?
- LEDコネクタが独自規格(M/Bで採用の多いVD-G型3PINには接続可能)
- ラジエーターのネジ規格はM3.5
冷却性能の検証結果からもわかるように「ENERMAX LIQFUSION 240」は240サイズのマルチファンな大型ラジエーターを採用した簡易水冷CPUクーラーなので、Core i7 7700Kの全コア5.0GHz OCを静音性を保ったままで十分に冷却できる性能があります。18年最新メインストリームCPU最上位で6コア12スレッドのIntel Core i7 8700Kや、今回追加で検証を行ったAMD Ryzen 7 2700Xも静音性を維持したまま余裕で対応可能です。
「ENERMAX LIQFUSION 240」に関しては水冷トップと冷却ファンに標準でアドレッサブルLEDイルミネーションが搭載されているところも注目ポイントです。搭載されたアドレッサブルLEDは水冷トップに12アドレス、冷却ファン2基にそれぞれ18アドレスと競合製品よりもアドレス数が多くなっており、豪華かつスムーズなアドレッサブル発光パターンでライティングが可能です。特に水車型フローインジケーターを搭載した水冷トップはアドレッサブルLEDと相まって綺麗です。
付属コントローラーでほぼ完全にライティング制御が可能なので、豪華なLEDイルミネーションをPCケース内に導入したいというエントリーユーザーにもおすすめです。また主要4社のアドレッサブルLED制御機能にも対応しているので、それらを既に使用しているユーザーもそのまま増設することができます。
マウントパーツが個別にマザーボードに固定可能、マウントパーツを設置したままでもCPUクーラーを交換可能なところは管理人的にポイントが高いです。また水冷トップを固定するためのネジが予め脱落防止機構付きで装着されており、水冷トップ固定時にネジをマザーボードやPCケース内に落とす心配がないというのも、もうれしい構造です。欲を言うとネジ頭がハンドスクリュー型だとさらに花丸だったと思います。
「ENERMAX LIQFUSION 240」は最新のミドルタワーPCケースであればほぼ搭載可能な汎用性の高い240サイズラジエーター採用モデルで、ニッケルメッキ済みベースプレート、熱源から隔離されて高寿命が期待できる水冷ポンプ、豪華なアドレッサブルLEDイルミネーションなど非常に完成度が高いので、おすすめの簡易水冷CPUクーラーです。
LIQFUSIONシリーズについては280サイズや360サイズなど、さらに冷却性能の高いハイエンドモデルの追加投入も期待したいです。
以上、「ENERMAX LIQFUSION 240」のレビューでした。
補足:空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて
動作検証に移る前に「空冷クーラー」と「水冷クーラー」の2種類ついて同じところと違うところ、また原理的に考えた冷却性能の比較を簡単に補足しておきます。まず大前提として当たり前ですが空冷クーラーも水冷クーラーも”最終的にCPUの発熱は空気に放出されます”。自作PCにおける空冷と水冷の違いは、どこの空気を使ってCPUクーラーの放熱フィンから空気への熱交換(放熱)を行うかです。
例えば次の画像のようなサイドフロー型の空冷CPUクーラーの場合、ケースフロントなどから吸気された空気はケース内を通り、CPUクーラーの放熱フィンでCPUから熱を放熱されます。CPUから放熱された暖かい空気はリアファンやトップファンから排気されますが、一部はケース内に残留する可能性があります。そのため「フロントから吸気されてケース内を経由してきた冷たい空気」と「一度CPUクーラーを通った暖かい空気」が混ざるため次第に冷却効率が下がることが予想されます。
一方で水冷(簡易水冷)CPUクーラーの場合は次のように、PCケース外から直接吸気を行う、もしくはPCケース外へ直接排気を行うことができます。水冷クーラーの場合、空気への放熱を行うラジエーターはPCケースという壁でイン・アウトが遮断されているため、PCケース内の空冷クーラーで起こるような一度放熱された空気が循環して冷却効率を下げるという現象が起きません。これが自作PCで水冷クーラーを使用するメリットです。
もちろん空冷でもケースファンを適切に設置すれば、一度熱せられた空気の循環が避けられる理想的な状態に近づきます。しかしその分ファンノイズが増えます。なので原理的にはPCケース壁で単純に熱交換部分のインアウトを遮断できる水冷クーラーのほうがよく冷えて静音になります。
ただし上の議論は最終的な放熱部分である「冷却に使用する空気」のみに着目して空冷と水冷を比較しています。つまり出口だけの議論なので、CPUヒートスプレッダからCPUクーラーベース部分への熱移動の効率、すなわち入口部分の性能が低ければあまり意味がありません。CPUクーラーの総合的な性能はベース部分の熱交換効率、放熱フィンやラジエーターの熱交換効率などいくつかのパラメータの組み合わせなので必ずしも水冷が空冷よりも冷えるわけではないことに注意してください。
また下の2つの画像では簡易水冷クーラーを吸気にした場合と排気にした場合で、ラジエーターに流入する空気を示す矢印の色を変えています。
まず前提として「部屋の体積はPCケースの体積よりも十分大きいのでPCで消費される程度の電力(1000W以下程度)では室温は変化せず一定」です。上の画像でPCケースへの吸気がケースフロントである場合、PCケース内には熱源が多数存在するためラジエーターに達するまでに空気は温められます。とすると空気の温度は「室温空気≦PCケース内空気」です。どんなに理想的なエアフローが存在したとしてもPCケース内を経由してラジエーターに達する空気は室温空気よりも低い温度にはなりえません。ラジエーターでの熱交換効率を左右するのは「空気とクーラントの温度差」と「ラジエーターを通過する空気の量」の2つなので「室温空気≦PCケース内空気」である以上、水冷クーラーにおいて「冷える排気」は存在しますが、「吸気よりも冷える排気」というものは存在しません。
吸気にすると熱風がPCケース内に入って壊れるとかのたまう人がたまにいますが、排気なしのケース密封で吸気にするようなそもそも馬鹿げた構成でもなければ起こりえないことなので無視してOKです。もし壊れるなら内排気空冷オリファングラボが真っ先に壊れます。
水冷クーラーを使用する場合、排気構成にしたほうがPCケース内からの見栄えがいいため、メーカーも排気構成のイメージサンプルを使用することが多い(おそらく)ですが、純粋な冷却パフォーマンスを考えれば排気よりも吸気のほうが性能が高いことは原理的に自明です。
見栄えを重視して排気にするのは全く問題ありませんし、そういう意図のもとで作られたカッコいい見せる自作PCは管理人も好むところです。しかしながらエアフローが云々とか吸気による故障を理由に「吸気よりも排気のほうが冷えるし安全」と主張するのは非常に恥ずかしいことなのでやめましょう。
最後に本題の空冷クーラーと水冷クーラーの違いについてまとめると、「水冷クーラーと空冷クーラーの理想的な性能を比べた場合どちらのほうが性能が高いかは製品次第ですが、水冷クーラーは熱交換部分をケース外に近い場所に配置できるので、吸気の簡易水冷クーラーは空冷クーラーに比べて理想的な性能を発揮しやすいという特徴があります。」
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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