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ハイダイナミックレンジHDR10、可変リフレッシュレート型同期機能「AMD FreeSync」、144Hzリフレッシュレートに対応し、高色域・高視野角で画質に優れたIPS液晶パネルを採用、27インチWQHD解像度という高スペックながら、販売価格は5万円を切るという超優良コストパフォーマンスを実現したゲーミング液晶モニタ「Pixio PX277h」のレビュー用サンプルをメーカーよりお借りできたのでレビューしていきます。
製品公式ページ:https://www.pixiogaming.jp/px277h
マニュアル:https://docs.wixstatic.com/ugd/349c0f_360b0d222e0f4ecb9ed6bfcac3ec57b8.pdf
Pixio PX277h (27インチ/WQHD/144Hz/IPS/HDR10/HDMI2.0、DP
Pixio
Pixio PX277h レビュー目次
1.Pixio PX277hの概要
2.Pixio PX277hの開封・付属品
3.Pixio PX277hの液晶モニタ本体
4.Pixio PX277hのOSD操作・設定
5.Pixio PX277hの画質・応答速度・遅延について
6.Pixio PX277hで144Hz&FreeSyncを試す
7.Pixio PX277hでHDR&FreeSyncを試す
8.Pixio PX277hのレビューまとめ
Pixio PX277hの概要
「Pixio PX277h」は解像度が2560x1440のWQHD解像度で、モニタサイズが27インチの液晶モニタです。液晶パネルタイプはノングレア(非光沢)で発色や視野角に優れたIPS(AH-VA)パネルが採用されています。コントラスト比は通常1,000:1、応答速度は5ms(GTG)です。「Pixio PX277h」のリフレッシュレートはネイティブ144Hzです。60Hzを大きく上回るリフレッシュレートによって応答速度も高速になるのでブレや残像がなくなってクッキリとした滑らかな表示です。60FPSでは識別の難しいゲーム内遠方で動くエネミーやオブジェクトの発見などが容易になるので、オンライン対戦FPSゲームなど競技性の高いPCゲームにおいて対戦相手よりも優位に立つことができます。
加えてティアリング(フレーム更新タイミング差による画面のズレ)やスタッタリング(カクツキ)を抑制できる、AMDの可変リフレッシュレート型同期機能「FreeSync(Adaptive Sync)」にもHDMI2.0とDisplayPortの2系統で対応しており、いずれも対応フレームレートは40Hz~144Hzと広範囲です。
HDR表示についてはPS4 ProやXbox One XやPCで幅広く採用されているHDR10に対応しています。HDR表示で重要になる最大輝度は600nit(cd/m^2)です。AMDのFreeSync公式サイトのリストには掲載されていませんが、HDMI2.0入力はHDRに関する認証のFreeSync 2(HDR)を取得していると公式サイトには記載されています。
「Pixio PX277h」に搭載されたビデオ入力はHDMI2.0*1、HDMI1.4、DisplayPort1.4*1の2系統です。HDMI2.0とDisplayPortがWQHD解像度/144Hzに対応しており、HDMI1.4は75Hzが上限となります。
「Pixio PX277h」の寸法はモニタスタンド込みで幅622mm x 高さ458.9mm x 奥行159mm(モニタ本体の奥行は35mm)となっています。付属モニタスタンドは上下チルトのみ対応しています。モニタスタンドを含めた本体重量は4kgです。100mm x 100mmのVESAマウントにも対応しており重量的にもモニタアームが使用可能です。
Pixio PX277hの開封・付属品
なにはともあれまずは「Pixio PX277h」を開封していきます。「Pixio PX277h」のパッケージサイズは幅690mm x 高さ440mm x 厚さ110mmと、27インチサイズの液晶モニタが入っている箱としてはほぼ最小限の大きさで、重量も5kg程度で軽量です。
「Pixio PX277h」のパッケージは比較的小さく軽量であり、上側には持ち手が付いているので女性でも問題なく持ち運べると思います。
持ち手側を開いて発泡スチロール製スペーサーを引き出す形で開封します。各種付属品はスペーサーに蓋もなく収められているので、スペーサーをパッケージから取り出す際は、付属品が脱落しないように、付属品のある面が上になるように確認してから引き出してください。
各種付属品が収められた側の発泡スチロール製スペーサーの蓋を取り外すと液晶モニタ本体が現れます。液晶モニタ本体は透明なビニール袋に包まれていました。
「Pixio PX277h」の付属品を簡単にチェックしておくと、ACアダプタ&ACケーブル、HDMIケーブル、マニュアルが付属します。
「Pixio PX277h」のビデオ入力はHDMIとDisplayPortの2つがありますが、それに接続するためのHDMIケーブルのみが標準で付属します。
各種ケーブルを個別に購入するのであれば、HDMIケーブルなら「エレコム Premium HDMIケーブル スリムタイプ」、DisplayPortケーブルなら「サンワサプライ DisplayPort ケーブル」は、いずれも標準で付属するケーブルよりも細くて取り回しが良いので管理人も個人的に使用しており、おすすめのケーブルです。
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 1.0m
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 1.5m
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 2.0m
エレコム
サンワサプライ DisplayPort ケーブル 1.0m KC-DP1K
サンワサプライ DisplayPort ケーブル 1.5m KC-DP15K
サンワサプライ DisplayPort ケーブル 2.0m KC-DP2K
サンワサプライ
「Pixio PX277h」に付属するモニタスタンドはフットとフレームの2つの部品に分かれており、ネジ止めで組み立てる構造になっています。簡易のドライバーが付属するので組み立てにドライバーを各自で用意する必要はありません。
「Pixio PX277h」付属モニタスタンドは構造もシンプルなので簡単に組み立てることができます。
Pixio PX277hの液晶モニタ本体
続いて「Pixio PX277h」の液晶モニタ本体をチェックしていきます。「Pixio PX277h」の外装は黒色プラスチックで上側中央にPixioのメーカーロゴが赤色テキストで描かれていることを除けばシンプルな作りです。
「Pixio PX277h」のモニタスタンドの足はかなり細く華奢に見えますがですが、金属製のフレームで頑丈なので安定しており、普通に使用する分には問題ありません。
「Pixio PX277h」はフレームレス構造ではなく、一般的な液晶モニタ同様に、液晶パネルの周囲にフレームが存在します。フレーム内パネル上には非表示領域が1, 2mmほどあってフレームを含めると、上左右の非表示領域の幅は13mm程度、下は20mm程度です。
「Pixio PX277h」のモニタ本体の厚さは最薄部で9mm、最厚部で35mmほどと最近の液晶モニタとして考えても非常にスリムです。
液晶モニタ本体が非常にスリムなので設置してみても圧迫感が全くありません。
重量もモニタ本体で3.5kg、モニタスタンド込みで3.9kg程度と軽量です。
モニタ本体の正面から見て右下の外周部分には、液晶モニタの電源をON/OFFするパワースイッチやモニタOSDを操作するための4つのスイッチが配置されています。
「Pixio PX277h」のI/Oポートは背面左側に配置されており、右から順に3.5mmヘッドホンジャック、DisplayPort1.2、HDMI2.0、HDMI1.4、USB端子(メンテナンス用)、ACアダプタ接続用DC端子が設置されていました。
「Pixio PX277h」付属モニタスタンドは簡素な作りからもわかるように調整機能は限られており、上下チルトのみ対応しています。
Pixio PX277hはVESA100x100規格のVESAマウントに対応しておりサードパーティ製のモニターアームを使用できます。固定ネジが付属しないのでモニターアーム側にM4規格のネジが付属するか注意してください。
モニターアームについては管理人は「Lumen MA-GS102BK」、もしくは色違いでほぼ同機能な「サンワダイレクト 100-LA018」という製品をおすすめしています。モニターアームというとエルゴトロン製が一番の売れ筋ですが、クランプのネジが下に伸びているタイプのモニターアームは机に干渉して使えないという問題があり、MA-GS102BKはクランプを上側から六角レンチで締めるタイプでテーブル下の隙間が狭いデスクでも使用できるので管理人も使っています。
「Lumen MA-GS102BK」はモニタとアームを接続する部分がクイックリリースのブラケット式になっていてモニタアームからモニタ本体の着脱が非常に簡単です。ピボット機能もあるので設置後にモニタを縦・横で向きを切り替えることもできます。ただ関節の滑りに若干難があるので潤滑剤を塗布するのがおすすめです。
Pixio PX277hのOSD操作・設定
「Pixio PX277h」のOSD操作はモニタ右下の外周部にある5つのボタンのうち左側の4つを使用します。4つのボタンのうち一番右のボタンを押下すると詳細設定メニューが画面中央に表示されます。OSDメニューの表示位置は詳細設定で移動が可能です。OSDメニューのサイズは画面の9分の1より小さいサイズなので人によっては文字が小さくて見づらいかもしれません。
詳細設定メニューでは④ボタンが決定/選択、③ボタンが次(下)の項目/設定値増、②ボタンが前(上)の項目/設定値減、①ボタンが戻る、のように機能が割り当てられています。
「Pixio PX277h」のOSDメニューは上のように日本語UIに対応していますが、初期設定では英語UIになっているので、詳細設定メニューの「OSD Setting - Language」から日本語を選択して日本語UIに切り替えてください。
詳細設定メニューが表示されていない状態では、左の3つのボタンは機能ショートカットキーになっており、左から順に、ビデオ入力切替、画質モード(ECO Mode)切替、インサイト表示が割り当てられています。
インサイト表示機能はゲーム内で照準が表示されないゲームにおいてエイムの基準点にできて便利です。
「Pixio PX277h」のOSDメニューには大きく分けて、「ビデオ入力ソース設定(入力ソース)」「明るさ・コントラスト設定」「画質モード/色設定」「画質設定」「アスペクト比設定(ディスプレイ設定)」「音量設定(オーディオ)」「PIP設定」「OSDメニュー設定」「その他の設定」の9つの項目が用意されています。安価なモニタなのでOSD設定項目は最小限かと思いきや多岐に渡る設定項目が用意されています。
「Pixio PX277h」の画質モードは、「スタンダード」「テキスト」「ゲーム1」「ゲーム2」「ゲーム3」「ムービー」「省エネ」の7つの画質モードが用意されており、初期設定ではスタンダードモードが選択されています。
その他の設定からはDisplayPortビデオ入力の動作バージョンが設定できます。BTO PCのグラフィックボードに多い印象ですが、DP1.2のままだとUEFI(BIOS)メニューが暗転したままになって表示できない場合があります。そういった場合はDP1.1にバージョンを下げるとUEFI(BIOS)メニューが正常に表示できます。ただしDP1.1ではWQHD/144Hzの表示ができないので、設定完了後はDP1.2に戻してください。
モニタ側のエンジンで高画質化をはかる諸機能についてもOSDから設定が可能です。高画質化機能を全て無効化して表示遅延を小さくする「BYPASS(On/Off)」、「シャープネス(0~100)」、オーバードライブで応答速度を高速化する「応答速度(On/Off)」、「ノイズリダクション(Off/Low/Middle/high)」、低解像度の映像ソースを高画質化する「Super Resolution(0~5)」、「Dynamic Luminc(On/Off)」の6つが用意されています。
「Pixio PX277h」にはサブ入力画面をメイン入力の上に小窓で表示するPIP(Picture in Picture)機能にも対応しており、PCで攻略情報を調べたりSNSをチェックしながら、コンソールゲーム機でゲームをプレイするようなながら作業も可能です。
「Pixio PX277h」はPIP機能の設定も充実しています。現在のビデオ入力をメイン入力にして、サブ入力は「Pixio PX277h」に実装されているDP1.2、HDMI2.0、HDMI1.4の3つから自由に選択ができ、サブ画面は画面四隅に表示が可能で、サイズもSmall/Medium/Large/Hugeの4段階が用意され最大サイズのHugeではサブ画面を1280x720のHD解像度で表示できます。
Pixio PX277hの画質・応答速度・遅延について
Pixio PX277hの画質についてチェックしていきます。直接的な画質ではありませんがPixio PX277hの液晶パネルは光沢のあるグレアではなくアンチグレアタイプなので暗転時に自分の顔などが映り込みません。
液晶パネルには大きく分けてIPS液晶パネルとVA液晶パネルとTN液晶パネルの3種類があり、各社個別の製品によって個体差はあるものの、この3つの液晶パネルの特性を簡単にまとめると次のテーブルのようになります。
「Pixio PX277h」に採用されているIPS液晶パネルはTN液晶パネルやVA液晶パネルと比べると色再現性や視野角など一般に画質に直結する性能が優れている反面、価格が高価になりがちな液晶パネルです。TN液晶パネルに比べて応答速度が遅めなので、60Hzオーバーのリフレッシュレートを実現しているIPS液晶パネル採用ゲーミングモニタは少ないため、輪をかけて高価です。とはいえ画質とリフレッシュレートを両立できるので、予算に糸目をつかないエンスーゲーマー勢に好まれています。
液晶パネルの簡易比較表 | |||
IPS | VA | TN | |
色再現性 | ◎ | 〇 | △ |
コントラスト | 〇 | ◎ | △ |
視野角 | 〇 | 〇 | △ |
応答速度 | 〇 | △ | ◎ |
価格 (高RR) |
△ (×) |
△ | 〇 |
「Pixio PX277h」(画質設定は標準のまま)で、いくつかのカラーグラデーション画像を表示して確認してみたところ、発色に優れたIPS液晶パネルなので滑らかなグラデーションで綺麗に表示されました。
「Pixio PX277h」については標準設定では白色が若干ですが黄色みがかって見えるかもしれません。白色が黄色く感じる場合は色温度の設定を6500Kから7500Kに上げるか、ユーザー設定で赤緑青の強さ(0~100で既定値は50)を調節できるので、赤と緑を45~48、青を53~55程度に設定して調節してみてください。
色温度を調整することで白色の色味を調整できます。
「Pixio PX277h」はIPS液晶パネルが採用されているので視野角も良好です。
続いて「Pixio PX277h」の応答速度や残像についてチェックしてみました。
「UFO Test: Ghosting」を使用してチェックしてみたところ、「Pixio PX277h」には応答速度が比較的遅いIPS液晶パネルなので、144Hzリフレッシュレートで動作させても2,3フレーム前の残像が残る感じになりました。
さらに「Pixio PX277h」のリフレッシュレートを変えてみたり、他の液晶モニタを比較対象にしたりしながら、「UFO Test: Ghosting」の様子を「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影し、比較してみます。
まずは「Pixio PX277h」のリフレッシュレートを60Hzと144Hzに変えて「UFO Test: Ghosting」の様子を比較してみました。リフレッシュレートを上げるとそれに伴って応答速度も上がってはいますが、リフレッシュレートの伸びに追いついていない様子で、144Hzでも残像感は残っています。
「Pixio PX277h」に加えて、高価なIPS液晶パネルを採用する32インチ4Kモニタ「LG 32UD99-W(レビュー)」、同じくIPS液晶パネル採用で120Hzの高リフレッシュレート動作となるウルトラワイドQHD解像度ゲーミングモニタ「Dell AW3418DW 120Hz(レビュー)」、VA液晶パネルを採用する31.5インチ4Kモニタ「BenQ EW3270U(レビュー)」、4K解像度で120Hzリフレッシュレートに対応する「Acer Predator X27(レビュー)」を比較対象として「UFO Test: Ghosting」の様子を比較していきます。
リフレッシュレート60Hzに揃えて比較してみると、「Pixio PX277h」はほかのIPS液晶パネルの製品よりも若干残像感が強く、比較対象の中では他のIPS液晶パネル製品とVA液晶パネル製品の中間くらいの応答速度です。
さらに各製品を最大リフレッシュレート動作として「UFO Test: Ghosting」の様子を比較してみました。60HzオーバーのハイリフレッシュレートかるIPS液晶モニタと一緒に比較してみてもやはり残像感が強めです。
また「UFO Test: Ghosting」において下の写真のようにUFOが微かに表示された瞬間を始点に、その地点のUFOが完全に消えた時点を終点にして、その間隔のフレーム数を応答速度として算出し比較してみました。
「Pixio PX277h」および、比較対象となる「LG 32UD99-W」、「Dell AW3418DW)」、「ASUS ROG SWIFT PG258Q」、「BenQ EW3270U」以上の液晶モニターについて、上の手順で算出した応答速度を比較したところ次のようになりました。
「Pixio PX277h」は同じくIPS液晶パネルを採用している「LG 32UD99-W」や「Dell AW3418DW)」と比べると上の動画検証同様に応答速度は若干遅めです。
最後に「Pixio PX277h」の表示遅延(内部遅延)について測定を行いました。
モニタにはGPUからのビデオ入力が送られてきてから実際にモニタに表示されるまで遅延が存在し、この遅延が大きいと例えば、FPSゲームでゲームパッドのトリガーやマウスのクリックによる操作からワンテンポ遅れて、マズルフラッシュが表示される、といった現象が発生します。人間は当然目で見てから操作するので、格闘ゲームやFPSゲームなど1,2フレームを争うような競技性の高いゲームにおいてはモニタの表示遅延が可能な限り小さいことが望まれます。
モニタの表示遅延測定においてはモニタ以外の要因で遅延に差が出ると問題があるので、検証モニタへビデオ出力を行うPCはCore i7 7700KとGTX 1080 Tiを搭載した次のベンチ機で統一しています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i7 7700K 殻割り&クマメタル化(レビュー) Core:5.0GHz, Cache:4.8GHz |
CPUクーラー | Intel TS15A |
メインメモリ | Corsair Dominator Platinum Special Edition DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) 3200MHz, 14-16-16-36-CR2 |
マザーボード |
ASRock Z270 SuperCarrier (レビュー) |
ビデオカード | EVGA GTX 1080 Ti SC2 iCX (レビュー) |
システムストレージ |
Crucial MX300 SATA M.2 SSD 1TBCT1050MX300SSD4 |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
キーボード | HyperX Alloy FPS メカニカルゲーミングキーボード (レビュー) |
モニタの表示遅延を測定する具体的な方法としては、キー押下時にそのキーのLEDが点灯するキーボードを使用して、LEDの点灯から画面表示への反映までの間隔を遅延時間として測定します。画面表示の確認については簡単にメモ帳を使用しています。この様子を「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影し、遅延フレーム数を数えて遅延時間を算出します。
「Pixio PX277h」や比較モニタの表示遅延の測定結果は次のようになりました。なお「Pixio PX277h」は表示遅延を小さくする画質設定「BYPASS」をONにして測定しています。
「Pixio PX277h」については144Hzリフレッシュレート時は他の100Hzオーバーの比較対象と同じくらいの表示遅延になりましたが、60Hzリフレッシュレート時の表示遅延が比較的大きく出ました。とはいえ60FPSベースで見て1,2フレームの差なので体感できるほどの差ではなく問題ないと思います。グラフの通りリフレッシュレートを上げると応答速度だけでなく表示遅延も改善するのでゲーマーにとってハイリフレッシュレート液晶モニタを選択するメリットは大きいです。
Pixio PX277hで144Hzリフレッシュレート&AMD FreeSyncを試す
「Pixio PX277h」の最大の特徴の1つである144Hzリフレッシュレートと可変リフレッシュレート型同期機能「AMD FreeSync」について試していきます。「Pixio PX277h」の特徴の1つである”144Hzリフレッシュレート”について、その意味自体は特に説明せずとも読者はご存知だと思いますが、一般的な60Hzリフレッシュレートの液晶モニタが1秒間に60回の画面更新を行うのに対して、144Hzリフレッシュレートであれば標準的な60Hzの2.4倍となる1秒間に144回の画面更新を行います。最近では競技ゲーマー向けのTN液晶モニタですが240Hzの超高速リフレッシュレートなゲーミングモニタも販売されています。
1秒間に144回の画面更新を行う144Hzリフレッシュレートの物理的なメリットとしては、単純に秒間コマ数が増えるので映像がより滑らかになります。上の章で詳しく検証したようにリフレッシュレートが上がると応答速度も上がって細部がクッキリとしたシャープな映像に見えやすくなり、加えて画面更新間隔が短くなるので表示遅延が小さくなり、さらにスピーディーなプレイで他者を圧倒しやすくなります。
「Pixio PX277h」ではNVIDIA GeForce GTX 10シリーズやAMD Radeon RX Vega/5XXシリーズなど最新グラフィックボードのHDMI2.0ビデオ出力やDisplayPort1.2ビデオ出力に接続することによって、モニタリフレッシュレートを120Hzや144Hzなどに自由に設定できます。HDMI1.4は最大75Hzまでです。AMD製GPUの場合はWindowsのディスプレイ設定から、NVIDIA製GPUの場合はNVIDIAコントロールパネルから設定を行います。
オンライン対戦FPSなど競技性の高いゲームにおいて144Hzリフレッシュレートのモニタを使用した時の実用的なアドバンテージとして、ゲーム内視線を左右に振った時の視認性が上がるという例は直感的にもわかりやすいメリットですが、加えてゲーム内遠方に存在して動いているエネミーやオブジェクトの視認性が上がるというメリットも存在します。
下の比較動画では4分割して映像を並べていますが、右下以外の3つは右下画面の緑枠部分を拡大するよう接写して、「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影したものになっています。リフレッシュレート別で左上は60Hz、右上は120Hz、左下は240Hzとなっていますが、赤枠で囲った建物の出入り口付近で左方向に移動する敵の動きはリフレッシュレートが上がるほど視認しやすくなるのがわかると思います。
なお「Pixio PX277h」でWQHD解像度/144FPSを狙うには、元から軽めのPCゲームや画質設定を下げた最新PCゲームであってもグラフィックボードのGPU性能がかなり要求されます。液晶モニタに「Pixio PX277h」を使用するのであれば18年7月現在、最速グラフィックボードであるNVIDIA GeForce GTX 1080 Ti、もしくは若干性能が下がりますが、可変リフレッシュレート型同期機能「AMD FreeSync」が利用可能なAMD Radeon RX Vega 64がおすすめです。
・GeForce GTX 1080 Ti レビュー記事一覧
・Radeon RX Vega 64&56のレビュー記事一覧へ
続いて「Pixio PX277h」の大きな特徴の2つ目となる可変リフレッシュレート型同期機能「AMD FreeSync」についてチェックしていきますが、実際のゲーム画面について確認する前に「AMD FreeSync」に関する予備知識を簡単に開設します。
液晶モニタはGPUから連続して送られてくる映像(フレーム)を、リフレッシュレートに応じて一定間隔で更新しながら液晶パネル上に表示していきます。下はその理想的な様子の模式図です。
しかしながらGPUによる映像出力と液晶モニタのリフレッシュレートは、実際には上のような理想的な関係にはなりません。その理由は単純で、PCゲームのようにリアルタイムレンダリングによって描画を行う映像ソースは、その時々の描画負荷によって各フレームの描画(レンダリング)にかかる時間が異なる、可変フレームレートの映像だからです。
レンダリングにかかる時間が一定ではないPCゲームにおいては、60Hzという更新周期に合わせてGPU内のフレームバッファを取り出して表示を更新する「垂直同期(V-Sync)」が一般的です。しかしながら垂直同期においては60Hzリフレッシュレートのモニタの場合、画面更新間隔の約16msを超えてしまうフレームが発生するとその更新タイミングでは1つ前と同じフレームを表示することになるので、この時に「Stutter(スタッター、日本語では”カクつき”など)」が発生して(を感じて)しまいます。
一方で垂直同期を使用しない「同期なし」ではどうかというと、画面の更新とGPU側フレームバッファの更新が重なることによって、1つの画面内の上下で前後するフレームが表示される「Tearing(テアリング、誤読ですがティアリングでも日本なら通じる)」が発生します。
液晶モニタにはピクセルが格子状に並んでいますが、画面更新ではパネル上のピクセルが同時一斉に更新されるのではなく、上の列から下の列へ順番に更新されていきます。そのため同期なしにおいては、画面更新の途中でGPU側フレームバッファが更新されると上半分はn番目のフレーム、下半分はn+1番目のフレームが表示され、画面の中央に切れ目が表示されて見えたり、上下で全く違う絵が表示されるといった現象が発生し、これがテアリングと呼ばれています。
以上PCゲーマーを悩ませるスタッターとテアリングの諸事情を踏まえて、可変リフレッシュレート型同期機能「AMD FreeSync」はどういったものかというと『GPUフレームバッファの更新に合わせて画面を更新する』ので、PCゲームのようにGPUフレームバッファの更新が一定しない可変フレームレートの映像であっても、モニタ表示において原理的にスタッターもテアリングも発生しない同期技術となっています。
なお「AMD FreeSync」では垂直同期のON/OFFをユーザーが各自で設定する必要があります。
単純にFreeSyncを有効にしただけではテアリングの発生を完全には防止できず(同期なしよりは大幅に減るが)、テアリングを完全に無くすためには垂直同期も同時に有効化する必要があります。一方でFreeSyncを有効にした状態で垂直同期を無効化するとテアリングが若干発生する可能性は残るものの、マウスの入力遅延を小さくすることができます。
「AMD FreeSync」はAMD独自の技術かというと、そうではなく技術自体は、ディスプレイなどに関する業界団体「VESA」が当初DisplayPort1.2規格に含まれる技術として公開した可変リフレッシュレート型同期機能「Adaptive Sync」をそのまま採用しています。「AMD FreeSync」対応モニタとは、Adaptive Syncに対応したモニタ製品がAMD製GPUと組み合わせた場合に可変リフレッシュレート型同期機能が正常に動作することをAMDが公式に確認し、ロゴを付与した製品となっています。機能そのものはAdaptive SyncなのでAMD製GPUだけでなく、Xbox One Xなど一部のコンソールゲーム機やビデオプレーヤーにも対応可能というメリットがあります。
AMD FreeSync採用製品に関する注意事項として、可変リフレッシュレート同期が可能なフレームレートの範囲はモニタ製品ごとに異なります。対応フレームレートの上限を上回る、もしくは下限を下回ると、垂直同期無効の場合はテアリングが、垂直同期有効の場合はスタッタリングが発生します。最近のFreeSync対応モニタは最大リフレッシュレートが上限で30~40FPSが下限と対応フレームレートが広いものが多いですが、たまに対応フレームレートの範囲が狭い製品もあるようです。(FreeSync対応モニタリスト)
可変リフレッシュレート型同期機能にはAMD製GPUやコンソールゲーム機などで使用可能な「AMD FreeSync(VESA Adaptive-Sync)」以外にも、NVIDIA製GPU搭載PC専用で使用可能な「NVIDIA G-Sync」も存在します。
「NVIDIA G-Sync」はモニタ側に専用モジュールを搭載しており、その分高価ですが、「AMD FreeSync」とは違って可変リフレッシュレート型同期機能を使用可能な映像ソースのフレームレートについて、モニタに依存した制限が基本的に存在しないというメリットがあります。
一方で「AMD FreeSync」はVESAが策定したAdaptive Sync(アダプティブシンク/適応同期)機能に準拠した仕様に、AMDが動作確認を行って公式ロゴを付与したものなので専用モジュールが必要なく、安価で採用製品が多いというメリットがあります。
「NVIDIA G-Sync」と「AMD FreeSync」はいずれも可変リフレッシュレート型同期機能というくくりで扱われますが、下にまとめた比較表を見てわかるように両者の仕様にはけっこう違いがあります。垂直同期の扱いからの推測ですが、「NVIDIA G-Sync」が『専用モジュールによって、GPUレンダリング完了タイミングと画面更新タイミングを同期させるワンパッケージな機能』であるのに対して、「AMD FreeSync」は『一定期間のリフレッシュレートを映像ソースFPSの傾向に合わせて逐次変化させる機能』となっているようです。
可変フレームレート機能の簡易比較表 | ||
NVIDIA G-Sync(公式) | AMD FreeSync(公式) Adaptive Sync |
|
対応出力機器 | NVIDIA製GPU搭載PCのみ | AMD製GPU搭載PC Xbox One X (PS4 ProやIntel iGPUも今後対応するかも?) |
ビデオ入力 |
DisplayPortのみ | 製品によるが、規格としてはDisplayPortとHDMIの両方に対応 |
垂直同期 |
NVコンパネのG-Sync設定を有効にすると、ゲーム内の垂直同期設定は、通常、ドライバによって自動で上書きされる | Radeon設定のFreeSyncとは別にゲーム内で設定が必要 垂直同期有効ではテアリングが発生しなくなる 垂直同期無効ではテアリングが発生する可能性あり |
対応FPS/Hz | 最大リフレッシュレート以下 | モニタ製品によって範囲は異なり、リフレッシュレートを最大値として、下限値がある (FreeSync対応モニタリスト) 下限をフレームレートが下回るとスタッターやテアリングが発生 |
HDR対応 | 「G-Sync HDR」認証の製品はHDR表示にも対応 |
FreeSyncとHDRに対応したモニタなら併用可能 別途、HDR表示時に表示遅延や発色を最適化する「FreeSync 2 HDR」認証もある |
対応モニタ |
採用製品は比較的少ない | 採用製品は比較的多い |
製品価格 | 専用モジュール搭載なので高価 FreeSync対応の同スペック製品と比較して+1~2万円ほど |
VESA規格準拠なので安価 |
前置きが長くなりましたが、「AMD FreeSync」に関連した予備知識の解説も済んだので、実際のゲーム画面で可変リフレッシュレート型同期機能「AMD FreeSync」の効果をチェックしていきます。
「Pixio PX277h」で可変リフレッシュレート型同期機能「AMD FreeSync」を使用するには、「Pixio PX277h」をAMD Radeon RX Vega/5XXシリーズなどAMD製最新GPUを搭載したPCやXbox One Xなど対応機器を接続する必要があるので、今回はRadeon RX Vega 64搭載グラフィックボード「SAPPHIRE NITRO+ RADEON RX VEGA 64 8G HBM2 LIMITED EDITION」を検証機材として使用しました。
FreeSync対応機器を接続したら、最初に「Pixio PX277h」のOSDメニューのその他の設定の小項目にあるFreeSync ModeをONに変更します。ちなみにFreeSyncで正常にリフレッシュレートが可変になると、OSD右上のリフレッシュレートの数字が逐次変化するようになるので、FreeSyncが正しく動作しているかはここで確認してみてください。
OSDメニューからモニタのFreeSyncを有効にしたら、AMD製GPU搭載PCの場合はRadeon Settingsのディスプレイ設定からAMD FreeSyncを有効にします。以上でAMD FreeSync自体は有効化が完了します。
また上で解説したようにAMD FreeSyncではテアリング解消とマウス遅延低減のどちらを優先するかで垂直同期の有無を各自で選択する必要があります。垂直同期は通常ゲーム内設定でON/OFFの切り替えが可能ですが、ドライバ側が上書きしてゲーム内からは切り替えられない場合があるのでその時はRadeon Settingsのゲームプロファイルもチェックしてください。
AMD FreeSyncの検証に際してはリプレイ機能があって同一シーンで検証がしやすいので「Project Cars 2」を使用しています。またフレームレートやテアリングの発生の様子を確認しやすいように、画面左上にはGPUフレームレートOSD、画面左端にはGPUフレームバッファで色の変わるカラーバーが表示されるようにしています。
画面右上のフレームレートはGPUフレームバッファから算出されているので必ずしもリフレッシュレートとは一致しません。画面左端のカラーバーは連続するフレーム間、つまりn番目とn+1番目のフレームではそれぞれ異なる色になっているため、同時に複数色のカラーバーが表示されている画面はテアリングが発生していることを意味します。
まずは同期なし、垂直同期、FreeSync、FreeSync+垂直同期の違いを分かりやすく体感してもらうため、モニタリフレッシュレートを60Hz(FreeSync対応フレームレートは40FPS~60FPSになる)においてGPU側出力フレームレートが30FPS~60FPSの間で変動するようにして、「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影して、画面表示の様子を比較してみました。
同期なしでは盛大にテアリングが発生し、垂直同期ではスタッター(カクつき)が発生しているのがわかります。一方でFreeSyncと垂直同期の両方を有効にした場合はテアリングもスタッターも発生しません。ただし例外として動画で50秒以降のフレームレートが40FPSを下回るとAMD FreeSyncの対応フレームレート外となるためスタッターが発生しています。またFreeSyncのみを有効にして垂直同期は無効の場合、同期なしと比べて圧倒的にテアリングが減っているのがわかります。ただし対応フレームレート内であっても稀にテアリングが発生し、対応フレームレート外では同期なし同様にテアリングが発生します。
続いてリフレッシュレートが「Pixio PX277h」の最大値144Hz(FreeSync対応フレームレートは40FPS~144FPSになる)においてGPU側出力フレームレートが100FPS前後で変動するようにして、先ほど同様に同期なし、垂直同期、FreeSync、FreeSync+垂直同期の様子を16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影して比較してみました。
FreeSync有効であれば同期なしのテアリングや垂直同期のスタッターに悩まされることなく滑らかで綺麗な映像が表示できています。FreeSyncの60Hz/50FPS前後と144Hz/100FPS前後を比較すると当然ですが後者の方がコマ割りが増えるので16倍速スローモーションでもスムーズに見えます。
FreeSyncのみを有効した時に映像フレームレートが対応フレームレート範囲外になるとテアリングが発生しますが、リフレッシュレートを上回ってしまう場合については、Radeon SettingsのフレームターゲットコントロールやRivaTunerのフレームレートリミットを使用することでテアリングの発生を抑制することができます。
今回の比較はいずれもFreeSyncが有効になっているのでスタッターもなく滑らかですが、単純にFreeSyncだけを有効にすると144FPSの上限を超えた時にスタッターが発生します。リフレッシュレートが144Hz(フレームレートの上限が144FPS)の場合は120FPS~140FPSが上限になるようにフレームレートに制限をかければ、マウス操作を低遅延しつつ、テアリングの発生も最小限に抑えて快適なゲームプレイが可能です。
またPUBGやCS:GOのようなオンライン対戦FPSや格闘ゲームなど1,2フレームを争う競技性の高いPCゲームでは、表示遅延(入力遅延)が発生する垂直同期は嫌われる傾向にありますが、144Hzや240Hzといったハイリフレッシュレートモニタにおいて、同期機能を無効化した場合に発生するテアリングがどのように影響するのか検証してみました。
テアリングはモニタ表示更新中のフレームバッファの更新で発生しますが、目で見た時の違和感はn番目とn+1番目のフレームの絵の差に影響されます。コマ割りが細かくなる高フレームレートではn番目とn+1番目の絵の違いは当然、低フレームレートの場合よりも小さくなります。そのため50FPSでは画面の分断のように知覚できたテアリングは、200FPSのような高フレームレートでは細かいノイズのような形で知覚されます。
100FPSを超える高フレームレートでは大きな分断に見えるテアリングの代わりに、細かいノイズのように感じるテアリングが増えてきます。『細かいノイズの発生程度であれば高リフレッシュレートモニタのテアリングは実用上は大した問題ではなく、可変リフレッシュレート型同期機能は不要である』という意見がありますが、高リフレッシュレートモニタのアドバンテージとして先に解説した「ゲーム内遠方に存在して動いているエネミーやオブジェクトの視認性」と合わせて考えると、このノイズの有無は遠方の細かいエネミーやオブジェクトの発見に影響します。なので高リフレッシュレートモニタを使用するのであれば可変リフレッシュレート型同期機能はあったほうがいい、というのが管理人の意見です。
Pixio PX277hでHDR&FreeSyncを試す
最後に「Pixio PX277h」の4K・HDR表示についてチェックします。「Pixio PX277h」にはHDMI2.0、HDMI1.4、DisplayPort1.2の3つのビデオ入力がありますが、HDR10に対応しているのはHDMI2.0ビデオ入力のみとなっています。DisplayPort1.2はWQHD/144Hz・FreeSyncには対応していますが、HDRには非対応なので注意してください。
PCではRadeon RX Vega 64環境において「Pixio PX277h」でWQHD解像度、144Hzリフレッシュレート、FreeSync有効、HDR10の豪華な表示が確認できました。
また「Pixio PX277h」のHDMI2.0ビデオ入力にPS4 ProやXbox One Xを繋いでみたところ、「Pixio PX277h」の解像度は2560x1440のWQHDですが、3840x2160の4K解像度として認識されました。よくよく調べてみるとPCでもディスプレイアダプタのプロパティでモード一覧に4K解像度がありました。
おそらくWQHDに非対応なコンソールゲーム機と接続する時のためにダウンスケールを前提として4K解像度が選択可能になっているようです。OSDには4K解像度の入力があると表示されますが、ハードウェア的には当然WQHD解像度なので、左下写真のようにモニタ側のエンジンでスケーリングされます。
あと4K解像度が入力されるとモニタ側のスケーリングの問題なのか右上の写真のように画面中央を境界にして垂直に20ピクセルほど右側が下がって表示されてしまうことがありました。OSDメニューのアスペクト比をオートかフルスクリーンで固定しておけばほぼ発生しませんが、あやまって触ってしまい上の症状が発生した場合は、ケーブルを抜き差しし直すと画面が正常にもどります。
HDRについて簡単に説明しておくと、HDR(ハイダイナミックレンジ)というのは、RGBの光の三原色の映像情報に加えて、輝度(明るさ)の情報が備わった映像ソースのことです。従来の表示機器や映像ソースでは10^3程度のダイナミックレンジしかありませんでしたが、HDRに対応することでダイナミックレンジが10^5程度と100倍近く拡張され、「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」なるように画面の明るさを操作することで、白飛びや黒潰れをなくして高画質を実現しています。
HDRに関する説明は色々とあると思いますが、管理人は「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」と大雑把に理解しています。「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」するということは必ずしも”見えやすく”なるわけではありません。というか暗い場所は暗くなるので必然、暗い部分は見えにくいですし、明るい場所が明るくなったら太陽を覗き込んだ時のようにその周辺は光で潰れて見えにくくなります。もちろん明暗が分かれることで境界線がクッキリして見えやすくなる場合もあります。一部のゲーミングモニタに暗所を明るく(白く)して見えやすくする機能があるように、HDR表示は見やすさには直結しないので、見やすさという意味で画質が良くなるのかというと、その点はケースバイケースで、暗い部分が強調されることを考えると見えにくさの方が体感しやすい気がします。
HDRは原理的にはモニタから見える映像を”リアル”に近づける機能です。ただし実際のところはモニタ個別の色調設定などの都合で鮮やかになり過ぎたり色味が変わったりするので、「実際の視覚と同じ」という意味でリアルかというと疑問符が付くのですが。「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」なるので立体感は増して、平面表示の中に奥行を感じやすくなるという点ではリアルな表示に近づきます。個人的にはHDR表示の効果はSDRに比べて、鮮やかになって、立体感が増すと感じています。
4Kモニタの広告をフルHDモニタで見る以上に、SDRモニタでHDRについて体感的に理解することは困難です。なのでHDRについては店頭など実機で体験して気に入れば購入するくらいが正直なところおすすめです。HDRについては正直に言って”百聞は一見に如かず”な機能です。SDRモニタ上で調べるよりもHDR表示の実機を見て気に入るかどうかが全てな機能だと思います。
またHDRでは映像ソースのダイナミックレンジが拡張された分、ハード側(液晶モニタ自体)の表示性能も重要になります。1枚絵の中で幅広いダイナミックレンジを表現するためには、部分部分の明るさ(輝度)の表現が重要になるので、HDRに関連するハード的な予備知識として、液晶モニタのLEDバックライトの「エリア駆動(部分駆動やローカルディミングとも呼ばれる)」や画素自体が自発光する「有機ELモニタ」があります。
「Pixio PX277h」も含めて既存の液晶モニタではLEDバックライトの方式がエッジライト型の製品が主流ですが、一部の高級液晶モニタで採用されているパネル直下型バックライトでは、表示位置の輝度情報に応じてLEDバックライトの輝度を制御するエリア駆動(部分駆動やローカルディミングとも呼ばれる)によって、暗い場所のバックライトを消灯し、逆に明るい場所だけを点灯させることができます。
左写真はエリア駆動対応、右写真はエリア駆動非対応(LEDバックライト全体が同一輝度で発光)で撮影した様子ですが、左写真は地球周辺の黒い(暗い)部分のバックライトが切れて中央の地球の立体感が増しているのに対し、右写真では黒い部分のバックライトも点灯しており、白みがかって平坦に見えます。
明暗のメリハリがついて立体感が増すというメリットのある直下型LEDバックライトのエリア駆動ですが、「後光(Halo)」と呼ばれるデメリットも存在します。例えば『輝度解像度(エリア分割数)よりも小さい輝点では、輝点の周辺が白くぼやける』、『暗いシーンでUIメニュー周辺が白くぼやける』、『暗い背景の中で街頭などの輝点が動くときに、映像の中での輝点の移動にバックライトの移動が追いつかない残像が見える』などの不自然なバックライト点灯が「後光(Halo)」と呼ばれます。
街灯が画面上で左右に動いた時にバックライトが残像のように尾を引いて追従するのが見えると思います。あと画面上の位置が固定されているので尾を引く感じではありませんが、画面右側のUIが輝点と認識されるため、境界を越えて左側の夜空にバックライトの白いもやがかかっています。
『HDRは”百聞は一見に如かず”な機能で、SDRモニタ上で調べるよりもHDR表示の実機を見て気に入るかどうかが全て』と上で言いましたが、レビュー記事の都合上、比較写真でも撮らないと形にならないので写真を撮ってみました。
いくつかPS4 Pro/Xbox One X/Windows PCでHDR表示に対応したゲームから、通常ダイナミックレンジのSDRとハイダイナミックレンジのHDRについて比較写真を撮影してみました。ISOや絞りなどの写り具合に影響しそうなカメラ設定は比較シーン間では統一しています。また「Pixio PX277h」の画質モードでも表示が変わってくるので、SDRではデフォルト設定の標準モード、HDRも標準設定で統一しています。
PS4 Pro、Xbox One X、PCにおいて複数のゲームで確認してみたところ「Pixio PX277h」のHDR表示については、全体的に明るくなり、色が鮮やかになる傾向があるようです。また写真では比較的強めに強調されて見え実際はもう少し緩いのですが、発色が青みがかるようです。
Pixio PX277hのレビューまとめ
最後に「Pixio PX277h」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 画面サイズ27インチでPC用高解像度モニタとしては使いやすいサイズ
- 液晶パネルは反射防止のアンチグレア
- ビデオ入力はDisplayPort1.4とHDMI2.0とHDMI1.4の計3系統
- WQHD解像度で144Hzリフレッシュレートの高速動作(DisplayPortとHDMI2.0のみ)
- 可変リフレッシュレート型同期機能AMD FreeSyncに対応
(DisplayPortとHDMI2.0で40FPS~144FPSの範囲内で対応) - ハイダイナミックレンジHD10対応(HDMI2.0のみ)
- モニタ本体重量3.5kgかつVESAマウント対応でモニターアームを使用可能
- OSDの設定項目や機能は豊富で、PIP機能も充実
- 上記のハイスペックながら5万円を切る価格でコスパが非常に優秀
- パネルの応答速度が若干遅めでやや残像感がある
- 表示遅延が1,2フレーム(16ms)ほど大きめ
- HDRはHDMI2.0ビデオ入力のみが対応でDisplayPortは非対応
「Pixio PX277h」は2560x1440のWQHD解像度27インチIPS液晶パネルかつネイティブ144Hzの高速リフレッシュレートで動作し、さらに可変リフレッシュレート型同期機能「AMD FreeSync」やハイダイナミックレンジ規格HDR10に対応という充実のハイスペックながら販売価格5万円を切る非常に優れたコストパフォーマンスを実現したゲーミングモニタです。
高色域・高視野角で発色に優れ高価なIPS液晶パネルながらネイティブ144Hzリフレッシュレートに対応しており、ハイフレームレートに対応したPCゲームであれば60FPSを大きく上回る滑らかな表示が可能です。ただ若干応答速度が遅めで残像感を感じやすいのは価格相応なのかなと思いました。
「Pixio PX277h」は可変リフレッシュレート型同期機能「AMD FreeSync」に対応しており、HDMI2.0とDisplayPortのビデオ入力では40FPSから144FPSの幅広いフレームレートをカバーしており、60FPS前後しか維持できない最新の高画質な重いゲームから、100FPS以上を維持できる競技性の高い軽めなゲームまで、テアリングやスタッターのないクリアで滑らかな表示を実現します。
HDRに対応しているところも「Pixio PX277h」の魅力の1つなのですが、対応ビデオ入力がHDMI2.0のみとなっており、メインのPCとサブのコンソールゲーム機の両方でHDRを利用することがモニタ単体でできないというのが玉に瑕な仕様だと感じました。DisplayPortがHDRにも対応していれば、PCをDisplayPortに、PS4 ProやXbox One XをHDMI2.0に接続するという形がとれたので残念です。
似たようなスペックの他社製品は8万から10万円と非常に高価なので、それらに比べると若干見劣りする箇所も無きにしも非ずですが、基本的には手堅くまとまっておりOSDメニューの設定も豊富ですし、2560x1440のWQHD解像度27インチIPS液晶パネルかつネイティブ144Hzの高速リフレッシュレートで動作し、さらに可変リフレッシュレート型同期機能「AMD FreeSync」やハイダイナミックレンジ規格HDR10に対応という充実のハイスペックながら販売価格5万円を切る非常に優れたコストパフォーマンスを考えると「Pixio PX277h」はかなりおすすめな液晶モニタだと思います。
以上、「Pixio PX277h」のレビューでした。
Pixio PX277h (27インチ/WQHD/144Hz/IPS/HDR10/HDMI2.0、DP
Pixio
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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それにしてもよく書かれた素晴らしいレビューですね。 国内外含めてよくレビュー読みますが、ここまで書いてるところはそんなに見ないです。お疲れ様でした。
脱字が一箇所:
FreeSync 2(HDR)を取得いると公式サイトには記載されています。
>取得している