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GeForce RTX 2080 TiグラフィックボードとしてMSからリリースされた、簡易水冷&空冷のハイブリッド型GPUクーラー搭載モデル「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」のサンプル機をお借りできたのでレビューしていきます。NVIDIA Turing世代のウルトラハイエンドGPU「GeForce RTX 2080 Ti」が、下位モデルのGeForce RTX 2080や前世代最上位のGeForce GTX 1080 Tiをどの程度上回るのか実ゲームベンチマークで徹底比較します。
簡易水冷RTX 2080 Tiグラフィックボード「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」は製品単品は国内では未発売ですが、PCショップアークで搭載BTO PCが販売されています。
・「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」搭載BTO PCの販売ページへ
MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK レビュー目次
1.MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKの外観
2.MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKの検証機材セットアップ
3.MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKのゲーム性能
4.MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKの温度・消費電力・ファンノイズ
5.簡易水冷グラボはマルチGPUのプライマリに最適
6.MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKのレビューまとめ
MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKの外観
早速、「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」を開封していきます。簡易水冷GPUクーラーを採用する「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」のパッケージサイズは空冷モデルと比較してみると非常に巨大です。
キャラメルボックス型の外スリーブから取り出した黒色段ボールの内パッケージを開くと、スポンジ蓋の上にマニュアルやドライバCDの入った紙製の袋があり、その下にはスポンジスペーサー&静電防止ビニールという一般的な梱包でグラフィックボード本体が鎮座していました。
マニュアル類以外の付属品として、ラジエーター固定ネジ(UNC No.6-32)*4個、PCIE 6PIN to PCIE 8PIN補助電源変換ケーブルが付属します。
梱包や付属品のチェックは簡単に済ませて、「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」のグラフィックボード本体を見ていきます。
「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」のGPUクーラーはリファレンスモデルや安価モデルで採用されることの多い外排気型ブロアーファンと簡易水冷クーラーを組み合わせたハイブリッド型になっており、右側にはブロアーファンが、左側にはMSIゲーミングを代表するドラゴンロゴが描かれた水冷ヘッドがあります。
「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」のGPUクーラー外装は黒色プラスチック製ですが、アクセントに添えられたカーボンパターンやシャープな造形もあって安っぽさは感じさせません。PCIEブラケットのある左端には白色文字でSEA HAWKロゴが描かれています。
MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKは、RTX 2080 TiのリファレンスモデルともいえるFounders Editionとほぼ同じ長さの全長268mmです。300mm超のモデルも多い中ではRTX 2080 Tiグラフィックボードとしてはコンパクトな部類です。
MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKは、水冷チューブの分だけ背は高くなるものの、基板とGPUクーラー自体はPCIブラケットの高さとほぼ同じ背の低いデザインです。
RTX 2080 Tiのオリファンモデルは3スロット占有クーラーを採用しているモデルも多いですが、「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」は2スロット占有です。
GTX 10XXシリーズの上位モデルからVRM電源部分の発熱が話題になることも多かったですが、「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」ではハイブリッドGPUクーラーのうち外排気ブロアーファンと専用ヒートシンクがVRM電源を冷却する構造になっています。またバックプレートはVRAMチップの冷却を補助しています。
MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKはリファレンスの動作クロックよりも高い数値で動作するメーカーによるファクトリーOCが施されたOCモデルですが、補助電源数はリファレンスと同じく8PIN*2となっています。
「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」のPCI-E端子、各種ビデオ出力、NVLink端子には黒色の保護カバーが装着されています。
MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKのビデオ出力はHDMI2.0×1、DisplayPort1.4×3、USB Type-Cの5基が実装されています。
MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKにはマットなブラック塗装の金属製バックプレートが搭載されています。バックプレートは基板の反りを防止するだけでなく、サーマルパッドを介してVRAM等と接しており放熱にも一役を買っています。
なおグラフィックボードの重量はGeForce RTX 2080 Ti Founders Editionが1318g、MSI GeForce RTX 2080 Ti GAMING X TRIOが1571gに対して、MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK(ラジエーター除く)は1056gとなっており、RTX 2080 Tiグラフィックボードとして比較的軽量です。
バックプレート等で基板の反りは防止されていますが、重量は1kg程度と重いのでPCI-Eスロットへの負荷を考えるとVGAサポートステイなどを追加で設置して、垂れ下がりを防止したほうがいいかもしれません。
「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」は前述の通り簡易水冷GPUクーラーが標準搭載されたGeForce RTX 2080 Tiグラフィックボードです。
水冷ラジエーターには標準的な120mmサイズで25mm厚のラジエーターが採用されています。冷却ファンにはご同社製ハイエンドモデルの空冷GPUクーラーにも採用されるダブルボールベアリング採用で高耐久性なTorx Fanの120mm角版「Silent 120mm Torx Fan」が標準で搭載されています。水冷ラジエーターの背面はプラスチックカバーで保護されており、ユーザーが使用を開始するまでにフィンが潰れる心配もありません。
ラジエーター冷却ファンはグラフィックボード本体付近の特殊なミニコネクタで接続されています。このコネクタを流用してファンを換装するのは難しいですが、コネクタの着脱自体は可能なので、ファンの電源をマザーボード等から取るのであればファンの換装も可能です。
水冷チューブには径9mm程度と細めな高品質PTFEチューブが採用されています。輪が連なった構造と高耐久素材により耐久性に優れ、曲げや角度による内径変形を防ぎます。強めに曲げてもチューブが折れて内径が潰れる様子はないのでコンパクトなPCケースなどでも安心して使用できます。水冷チューブの長さは300mm程度と短めなので、基本的にPCケースリアのファンマウントスペースに設置が推奨される仕様です。
水冷チューブのグラフィックボード側の根本はストレートのロータリー構造になっており、捩じりが必要になる場合も容易にチューブを取り回すことができます。
MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKの検証機材セットアップ
外観やハードのチェックはこのあたりにして早速、MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKを検証用の機材に組み込みました。テストベンチ機の構成は次のようになっています。テストベンチ機の構成 | ||
ベンチ機1 |
ベンチ機2 |
|
OS | Windows10 Home 64bit | |
CPU |
Intel Core i9 9900K(レビュー) Core/Cache:5.1/4.7GHz, 1.300V 殻割り&クマメタル化(レビュー) |
Intel Core i7 7700K (レビュー) |
CPUクーラー |
Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
ASUS ROG RYUO 120 (レビュー) |
M/B | ASUS WS Z390 PRO (レビュー) |
ASUS ROG MAXIMUS IX FORMULA (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) 4000MHz, CL17-17-17-37-CR2 |
G.Skill Trident Z F4-3600C15D-16GTZ DDR4 8GB*2=16B (レビュー) |
システム ストレージ |
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB (レビュー) |
Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
データストレージ |
SanDisk SSD Ultra 3D SATA SSD 2TB (レビュー) | |
電源ユニット |
Corsair HX1200i (レビュー) Corsair RM650i |
Thermaltake Toughpower iRGB PLUS 1250W Titanium (レビュー) |
PCケース/ ベンチ板 |
STREACOM BC1 (レビュー) |
Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t (レビュー) NZXT Aer F 140 3基(レビュー) |
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製3bit-MLC型64層V-NANDのメモリチップを採用するメインストリーム向け最新SATA接続M.2 SSD「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」を使用しています。「Samsung SSD 860 EVO M.2」は2.5インチSATA SSDと同等のパフォーマンスをケーブルレスで発揮できる手軽さが魅力です。Samsung SSD 860 EVOシリーズの容量1TB以上のモデルは大容量データの連続書き込みにおける書き込み速度の低下というTLC型SSDの欠点も解消されているので、大容量ファイルをまとめて入れても余裕のあるメインストレージとしてお勧めのSSDです。
・「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」をレビュー
「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」のGPUクーラー外装にはLEDイルミネーションは搭載されていませんが、簡易水冷クーラーの水冷ヘッドのドラゴンロゴにのみ白色LEDが内蔵されていました。
「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」はRTX 2080 Ti リファレンスモデルのブーストクロック1545MHzに対して、標準でブーストクロック1635MHzにオーバークロックされています。またパワーリミット(TDP)も定格の250Wから260Wへと引き上げられています。
MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKのゲーム性能
MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKの性能を測るべく各種ベンチマークを実行しました。性能比較には「GeForce RTX 2080 Founders Edition」、「GeForce RTX 2070 Founders Edition」、「Radeon VII Reference Edition」、「GeForce GTX 1080 Ti Founders Edition」、「EVGA GeForce GTX 1080 SC2 Gaming iCX」を使用しています。「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkで現在主流なDirectX11のベンチマーク「FireStrike」による比較になります。
FireStrike | Extreme | Ultra | |
RTX 2080 Ti MSI SEA HAWK X |
34342 | 16713 | 8140 |
RTX 2080 FE |
27296 | 13208 | 6408 |
RTX 2070 FE |
22944 | 10946 | 5383 |
Radeon VII |
27488 | 13410 | 6838 |
GTX 1080 Ti FE |
27344 | 13617 | 6781 |
GTX 1080 11Gbps | 22517 | 10881 | 5404 |
「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkのDirectX12ベンチマーク「TimeSpy」による性能比較となります。
TimeSpy | Async Off |
Extreme | |
RTX 2080 Ti MSI SEA HAWK X |
14153 | 13271 | 6715 |
RTX 2080 FE |
11081 | 10307 | 5129 |
RTX 2070 FE |
9042 | 8390 | 4202 |
Radeon VII |
8829 | 8213 | 4249 |
GTX 1080 Ti FE | 9542 |
8831 | 4425 |
GTX 1080 11Gbps | 7704 | 7267 | 3503 |
「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」を含めた各グラフィックボードについて、17年中頃から普及しつつあるHTC VIVEやOculus RiftなどVR HMDを使用したVRゲームに関する性能を測定する最新ベンチマーク「VRMark」による性能比較となります。
Orange Room |
Cyan Room |
Blue Room |
|
RTX 2080 Ti MSI SEA HAWK X |
13098 | 13988 | 4649 |
RTX 2080 FE |
12983 | 11183 | 3580 |
RTX 2070 FE |
12557 | 9146 | 2844 |
Radeon VII |
11580 | 11183 | 3580 |
GTX 1080 Ti FE | 13084 | 8409 | 3028 |
GTX 1080 11Gbps | 12239 | 6974 | 2345 |
続いて実ゲームを用いたベンチマークになります。解像度はフルHD、WQHD、4K(3840*2160)の3種類について行っており、同一のグラフィック設定で同一のシーンについて平均FPSを比較しました。
ベンチマーク測定を行ったゲームタイトルは、Assassin's Creed Origins(最高設定プリセット)、Battlefield 1(最高設定プリセット)、Destiny2(最高設定プリセット)、The Division(グラフィック設定)、Far Cry 5(最高設定プリセット&TAA)、Final Fantasy XV(最高設定プリセット、NVIDIA GameWorks無効)、Ghost Recon Wildlands(グラフィック設定)、Mirrors Edge Catalyst(ハイパー設定プリセット)、MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット)、Rise of the Tomb Raider(グラフィック設定)、Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)、Titanfall 2(グラフィック設定)、WatchDogs_2(最高設定プリセット)、The Witcher3(最高設定)、Gears of War 4(最高設定プリセット)以上の15タイトルです。
Assassin's Creed Origins(最高設定プリセット)に関する「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Battlefield 1(最高設定プリセット)に関する「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Destiny2(最高設定プリセット)に関する「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
The Division(グラフィック設定)に関する「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Far Cry 5(最高設定プリセット&TAA)に関する「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Final Fantasy XV(最高設定プリセット、NVIDIA GameWorks無効)に関する「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Ghost Recon Wildlands(グラフィック設定、ウルトラ設定から以下を変更、ターフエフェクト:オフ/ゴッドレイ:オン/ロングレンジシャドウ:オン)に関する「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Mirrors Edge Catalyst(ハイパー設定プリセット)に関する「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット)に関する「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Rise of the Tomb Raider(グラフィック設定)に関する「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)に関する「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Titanfall 2(グラフィック設定)に関する「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
WatchDogs_2(最高設定プリセット)に関する「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
The Witcher3(最高設定)に関する「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Gears of War 4(最高設定プリセット)に関する「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK、GeForce RTX 2080 Founders Edition、GeForce RTX 2070 Founders Edition、Radeon VII Reference Edition、GeForce GTX 1080 Ti Founders Edition、GeForce GTX 1080 11Gbps OCの6種類について実ゲーム性能の比率の平均を出したところ、MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKはGTX 1080 Ti FEよりも最大35%以上高速という結果になりました。
GeForce RTX 2080 Tiはフレームレートが60FPS前後に近づいてCPUボトルネックが効きにくくなる4Kなどの高解像度において高いパフォーマンスを発揮しやすく、前世代最上位のGeForce GTX 1080 Tiと比較して平均で35%以上、ゲームタイトルによってはベストケースで40~50%も上回ります。
MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKの温度・消費電力・ファンノイズ
MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKの負荷時のGPU温度やファンノイズや消費電力についてチェックしていきます。「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」のGPU温度とファンノイズの検証負荷としては20分間に渡たり連続してGPUに100%近い負荷をかける3DMark TimeSpy Stress Testを使用しています。
MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKのテスト終盤におけるGPU温度は最大度、ファン回転数は最大2200RPM程度でした。パワーリミットが300Wへ大幅に引き上げられているので、2スロット占有GPUクーラーのFounders Editionと比較するとGPU温度は大幅に低く、ファン回転数も小さい値に収まっています。
また3スロット占有の超大型GPUクーラーを搭載するMSI GeForce RTX 2080 Ti GAMING X TRIOと比較すると、MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKのブロアーファンこそ高いものの(後述するがGPU温度にはあまり影響していない)、GPUコア温度はMSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKのほうが10度前後低くなっています。
従来の簡易水冷&空冷ハイブリッド型GPUクーラーではGPUクーラー本体のブロアーファンとラジエーター冷却ファンのファン回転デューティ比が共通でしたが、RTX 20XXシリーズではリファレンス基板でも2基のファンを個別制御できるようになっています。
「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」では、同社製ツール「MSI AfterBurner」は対応していないのですが、「EVGA Precision X1」というNVIDIA公式レビューでも使用されていたツールを使用することで、固定回転数やマニュアル設定ファンカーブによる独立した2基のファン制御が可能です。
ブロアーファンとラジエーター冷却ファンのファン回転デューティ比を50%に固定すると、いずれもファン回転数は1050RPM程度になり、特にブロアーファンの回転数が標準動作の1700RPMよりも大幅に下がりますが、ラジエーター冷却ファンの回転数はほぼ同じなのでGPUコア温度もほとんど変化せず、冷却性能はそのままに静音性を上げることができます。
GPUコアクロックについては「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」の仕様値ではブースト1635MHzとなっていましたが、負荷テスト中の実動平均は1801MHzとなりました。
またベンチ機2のPCケースに「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」を組み込んでFire Strike Extreme グラフィックテスト1を1時間に渡ってループさせて実用の冷却性能を確認してみました。
検証機材のPCケースには「Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t」を使用しており、ケースファンにはNZXT製のエアフロー重視でPCケースの吸気・排気ファンに最適なケースファン「NZXT Aer F 140」をPCケースのフロントに吸気ファンとして2基、リアに排気ファンとして1基設置してファン回転数1000RPM固定で運用しています。
PCケースに入れて長時間負荷をかけたところ最大温度は58度で、コアロックの平均値は1812MHzでした。フロント2/リア1で140mmファンを設置して1000RPMで回しているのが功を奏する形で、バラック状態の上記テストよりも若干冷えており、「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」のブロアーファン回転数は1700RPM、ラジエーター冷却ファン回転数は1000RPM程度です。簡易水冷&空冷ハイブリッドGPUクーラーなので、消費電力の大きいRTX 2080 TiをPCケースに組み込んでも余裕で冷やすことができています。
また実働ストレステスト中の0分, 10分, 20分…について30秒間の平均FPSの推移をチェックしました。長時間の負荷においても「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」はスタートから98%以上の性能をキープしています。
1時間のストレステスト終盤にスマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE Pro」(レビュー)を使用してゲーム負荷時のグラフィックボード上の各所の温度をチェックしました。
前世代GTX 10XXシリーズの上位モデルではVRM電源部分の温度がかなり高くなりがちだったのに対して、RTX 20XXシリーズではこれまで当サイトで行ってきた検証において最上位のRTX 2080 Tiでも比較的低い温度に収まるケースが多く、VRM電源をブロアーファンで冷やす構造の「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」は60度前後に収まっており、安心して運用できる温度です。
またブロアーファンとラジエーター冷却ファンのファン回転デューティ比を50%に固定したケースについて、同設定におけるGPUコア温度は標準動作とほぼ同じであることは上で確認しましたが、VRM電源やVRAMがどうなるのか同様に測定してみました。ブロアーファンのファン回転数が大幅に下がりますが、VRM電源やVRAMの周辺温度は標準動作と比較して+3~5度程度、70度未満に収まるので、静音化を重視したマニュアル設定は実用レベルです。
「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」を含めていくつかのグラフィックボードについてサウンドレベルメーターを利用してゲーム負荷時のノイズレベルを測定・比較しました。ノイズレベルの測定には「サンワダイレクト 400-TST901A」を使用しています。
電源OFF時の騒音値は33~35dBです。目安として40dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになり、45dB前後で煩く感じます。50dBを超えてくるとヘッドホンをしていても煩く感じます。同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質にもよるので注意してください。
ノイズレベルの測定結果は次のようになっています。
MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKのファンノイズは、1700RPMという比較的高めな回転数のブロアーファンがボトルネックになるので、45.2dB程度でそこそこの大きさです。とはいえMSI GeForce RTX 2080 Ti GAMING X TRIOのような超大型モデルを除けば、RTX 2080 Tiの中でも静音性で勝っています。また上で検証したように冷却性能にさほど影響の出ない範囲でブロアーファンのファン回転数を手動設定で下げると、ファンノイズは38.6dBへと大幅に下げることもできます。
MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKの消費電力と瞬間的な最大電源負荷を測定しました。
測定負荷には上で行った温度検証と同様に3DMark TimeSpy ストレステストを使用しています。テスト全体から1秒間隔でモニタリングを行い、平均値を”消費電力”、最大値を”瞬間的な最大電源負荷”とします。なお電源ユニットに対する実際の最大瞬間負荷は測定値より50~100W上回る場合があるので、電源ユニットの電源容量選択の参考にする場合は注意してください。
消費電力の測定は電源ユニット「Corsair HX1200i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの入力ではなく変換ロスを差し引いたシステムへの出力電力をチェックしています。また電力測定の際は上記の主電源ユニットに加えて、CPUへの電力供給を行うEPS端子へ接続するために別の副電源ユニットを使用しています。
この方法であれば、CPU(後述のiGPUも)に負荷をかけても、CPUによる消費電力の変動はメイン電源ユニットCorsair HX 1200iの測定値には影響しません。しかしながら、測定値にはまだATX24PIN経由で供給されるマザーボードやDDR4メモリの電力が含まれるので、iGPUを使用した時の3DMark TimeSpy ストレステスト中の消費電力と最大電源負荷を同様に測定し、各種グラフィックボード使用時と差分を取る形でグラフィックボード単体の消費電力と最大電源負荷を算出します。
MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKの消費電力は259W、最大瞬間負荷は349Wでした。MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWKのTDP(パワーターゲット)はファクトリーOCによって260Wに設定されており、消費電力はTDP250W設定のGTX 1080 Ti FEをちょうど10W程度上回っていますが、瞬間最大負荷は30W程度上回ります。
RTX 2080 Tiは消費電力はおおむね据え置きのままでGTX 1080 Tiよりも30%以上もグラフィック性能で高速化を果たしており、次世代GPUを名乗るに相応しい優秀なワットパフォーマンスを実現していると思います。
簡易水冷グラボはマルチGPU時のプライマリに最適
GeForce RTX 2080 TiやGeForce RTX 2080のように発熱の大きいグラフィックボードでマルチGPU環境を構築する時に、上段のプライマリGPUに簡易水冷グラフィックボードを設置するメリットをご紹介します。GeForce RTX 2080 TiやGeForce RTX 2080を使用したマルチGPUはNVLink SLI Bridgeのサイズが2種類しかないので、左下写真の3スロット(1スロットスペース)、もしくは右下写真の4スロット(2スロットスペース)のどちらかのレイアウトで構築することになります。
マルチGPU環境では、ファンの直前に比較的高温な熱源であるセカンダリグラフィックボードの背面が来るため、上段のプライマリグラフィックボードの冷却が難しく、そこが性能面でボトルネックになる可能性が高いことが知られています。4スロットは3スロットに比べて、1スロット分余分にスペースが確保できるので、マルチGPU時にプライマリグラフィックボードを冷やしやすいというメリットがあるのですが、現在、マザーボードレイアウトで主流なのは3スロットのレイアウトで4スロットに対応した製品は数が少ないです。
グラフィックボードベンダー各社からリリースされているRTX 2080 TiのAIBモデルは3スロットを占有するものが多く、マルチGPU構築によってプライマリグラフィックボードを適切に冷やすのが難しく、ポテンシャルを最大限に発揮できない可能性があります。
そこで今回は簡易水冷グラフィックボードをマルチGPUの構築に使用した時のメリットを確認するため、現在主流な3スロットレイアウトのマザーボードで前者/後者をプライマリ/セカンダリとして「簡易水冷&3スロット空冷」、「3スロット空冷&3スロット空冷」、「2スロット空冷&3スロット空冷」の3パターンのRTX 2080 TiのマルチGPUを構築し、それぞれの冷却性能やグラフィック性能を検証してみました。
検証機材のPCケースには「Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t」を使用しており、ケースファンにはNZXT製のエアフロー重視でPCケースの吸気・排気ファンに最適なケースファン「NZXT Aer F 140」をPCケースのフロントに吸気ファンとして2基、リア(簡易水冷グラボではリア寄りのトップに移動)に排気ファンとして1基設置してファン回転数1200RPM固定で運用しています。
今回使用するグラフィックボードは2019年最速のGeForce RTX 2080 Tiなので、測定負荷として3DMark Time Spy Extreme Stress Testを採用しました。
まずはRTX 2080 Tiを使用した「簡易水冷&3スロット空冷」、「3スロット空冷&3スロット空冷」、「2スロット空冷&3スロット空冷」の3パターンのマルチGPUについて、Time Spy Extreme Stress Test中のフレームレート、つまりグラフィック性能を比較した結果を見ていきます。
グラフのようにテスト開始直後100秒の平均フレームレート(avg_s)はいずれの構成で81~82FPSで一致しているのですが、テスト開始3分が経過すると徐々にフレームレートの推移に差が現れ出します。テスト終了直前100秒の平均フレームレート(avg_e)を見ると、3スロットレイアウトのマルチGPU環境では「3スロット空冷&3スロット空冷」のパフォーマンスが最も低くなり平均67.2FPS、対してプライマリグラフィックボードを簡易水冷にした「簡易水冷&3スロット空冷」では平均FPS81.1FPSで20%も性能が向上することがわかります。
プライマリGPUが空冷GPUクーラーの「3スロット空冷&3スロット空冷」と「2スロット空冷&3スロット空冷」は開始・終了の前後、たったの20分程度でもパフォーマンスが大きく下がっているのに対して、プライマリGPUが簡易水冷GPUクーラーの「簡易水冷&3スロット空冷」は終了まで高いパフォーマンスを維持し続けています。
各構成におけるフレームレート比較の傾向は、GPUコアクロックの比較にも現れています。テスト終盤において「簡易水冷&3スロット空冷」では平均1700MHzをキープしていますが、「2スロット空冷&3スロット空冷」は1500MHzに、「3スロット空冷&3スロット空冷」は1300MHzに大幅に下がっています。
消費電力を確認してみると、3つのパターンのいずれにおいても序盤は650W前後の消費電力ですが、ワーストケースである「3スロット空冷&3スロット空冷」の終盤では、Temp Limitによるコアクロックの制限によって消費電力も下がって450W前後になっています。
続いて上段のプライマリGPUのGPUコア温度比較となります。
「簡易水冷&3スロット空冷」は60度半ばに収束していくのがわかりますが、「3スロット空冷&3スロット空冷」と「2スロット空冷&3スロット空冷」はGPU Temp Limitでコアクロックに制限がかかるので90度以上に達することはありませんが、それでも開始数分で最大温度の88度に達しています。
また検証機材PCケース「Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t」はPSUシュラウドがあってセカンダリGPUのGPUクーラー正面のスペースが狭くて環境は悪いですが、「簡易水冷&3スロット空冷」のセカンダリGPUのGPU温度も70度後半に収まり、空冷プライマリGPUより低い温度です。
最後にファン回転数の比較となります。
「簡易水冷&3スロット空冷」はラジエーター冷却ファンが1000RPM程度、ブロアーファンが1900RPM程度、セカンダリGPUファンが2100RPMとなっており、それぞれをシングルGPUで運用した時よりはファン回転数は高くなりますが、大幅に煩くなるほどではありません。
一方で「3スロット空冷&3スロット空冷」のプライマリGPUのファン回転数はTemp Limitで100W低い電力で動作しているにもかかわらず、2800RPMという非常に高いファン回転数になっています。
また「3スロット空冷&3スロット空冷」よりもパフォーマンスの高かった「2スロット空冷&3スロット空冷」についてはスロット間隔によるエアフローも原因の1つかもしれませんが、ファン回転数がさらに高い3100RPM超となっているので、こちらが主要因の可能性があります。どちらにせよプライマリGPUに空冷を持ってきた2者についてはファン回転数が非常に高いので、ファンノイズも比例して大きくかなり煩く感じます。
以上、GeForce RTX 2080 TiやGeForce RTX 2080のように発熱の大きいグラフィックボードでマルチGPU環境を構築する時に、上段のプライマリGPUに簡易水冷グラフィックボードを設置するメリットについての検証結果となります。
現在主流な3スロットレイアウトで3スロット空冷を上段のプライマリGPUに据えると、ファンノイズが非常に大きく、グラフィック性能も下がりますが、プライマリGPUに簡易水冷グラフィックボードを使用すれば、3スロット空冷と比較して20%高いグラフィック性能をキープでき、大幅な静音化も期待できます。
MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK レビューまとめ
最後に「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 最新PCゲームを4K/60FPSの超高解像度かつ高画質設定でプレイ可能なグラフィック性能
- 前世代最上位のGTX 1080 Tiを35%以上も上回るグラフィック性能
- 3スロット空冷よりも冷却性能や静音性に優れる簡易水冷ハイブリッドGPUクーラー
- PCIEブラケットと同じ高さの基板&クーラー (水冷チューブを除く)
- 19年2月現在、グラフィックボード単品の国内販売はなし
RTX 2080 Tiは前世代最上位のGTX 1080 Tiを最大35%以上も上回るという圧倒的なグラフィック性能を実現しています。ベストケースではGTX 1080 Tiを50%近く超えるパフォーマンスを発揮することもあり、それでいて消費電力は据え置きとワットパフォーマンスも向上して、4K/60FPS+の超高解像度/高フレームレートなPCゲーミングに対応する性能は次世代GPU最上位を名乗るにふさわしいものになっています。
RTX 2080 Tiは、性能差30%程度の前世代最上位GTX 1080 Tiが8万円程度で購入できる中、発売当初は18~20万円と非常に高価かつ極めて品薄で入手困難な在庫事情という問題をかかえていました。しかしながら、発売から数か月が経過して、GTX 1080 Tiの市場在庫がなくなり、そのクラスが10万円から購入可能な下位モデルRTX 2080にシフトしており、RTX 2080 Ti自体も16万円から購入が可能になっているので、”悪い”と断言できたコストパフォーマンスも、”良くはない”と柔らかく表現できる程度には緩和されていると思います。
史上最速のGPUという唯一無二な価値があるので発売当初から一貫して、下位モデルRTX 2080に比べると”買う人は買う”製品となっていますが、RTX20XXシリーズの目玉機能であるレイトレーシングやDLSSに対応したゲームタイトルが2019年2月現在において未だ極めて少ないので、RTX 20XXシリーズが真価を発揮できるようになる(かどうか)はまだ先の話になりそうです。
「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」の魅力は何といっても、GPUコアを冷やす簡易水冷クーラーとVRAM&VRM電源を冷やす空冷クーラーを組み合わせたハイブリッド型GPUクーラーを搭載し、RTX 2080 Tiで採用の多い3スロット占有大型空冷GPUクーラーを採用製品よりも冷えて、かつ静かに運用できるところです。
また副次的なメリットとしては検証の最後に紹介したように、「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」のような簡易水冷GPUクーラー搭載グラフィックボードをマルチGPU時に上段のプライマリに据えることで冷却におけるボトルネックが解消されて、3スロットレイアウトにおいては空冷GPUクーラーを使用した場合に比べ、10~20%の性能向上(正確には性能が下がらなくなる)が狙えます。ノイズレベルで正規化して考えれば、空冷比で30%以上差が開く可能性もあり、静音性を確保しつつRTX 2080 TiのマルチGPU環境を構築したいユーザーには非常におすすめなグラフィックボードです。
以上、「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」のレビューでした。
簡易水冷RTX 2080 Tiグラフィックボード「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」は製品単品は国内では未発売ですが、PCショップアークで搭載BTO PCが販売されています。
・「MSI GeForce RTX 2080 Ti SEA HAWK」搭載BTO PCの販売ページへ
・RTX 2080 Ti 販売ページ:
<Amazon><PCショップアーク><パソコン工房>
<TSUKUMO><ドスパラ><PCワンズ><ソフマップ>
Acer X34Pbmiphzx (34インチ/UWQHD/IPS 100Hz/G-Sync)
Acer
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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