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28コア56スレッドのウルトラメニーコアCPUながら、倍率ロックフリーでユーザーによるオーバークロックにも対応する「Intel Xeon W-3175X」のために開発された最強の簡易水冷CPUクーラー「Asetek 690LX-PN」のサンプル機を国内正規代理店アユート様よりお借りできたのでレビューしていきます。「Intel Xeon W-3175X」の全28コア4GHz超のオーバークロックを御しきれるのか「Asetek 690LX-PN」の冷却性能を徹底検証します。
『Asetekって聞いたことないけど、どういう会社?』と思う人も少なくないかもしれませんが、ハイエンド自作PCユーザーからは切って離せない超重要なメーカーです。なのに聞き覚えがない、あまり表に出てこないのはなぜかというと、有名メーカーの簡易水冷CPUクーラーのOEM元だからです。
Corsair Hydro PROシリーズ、NZXT Kraken X2シリーズ、ASUS ROG RYUJIN/RYUOシリーズ、CRYORIG Aシリーズ、Thermaltake Waterシリーズ、Fractal Design Celsius Sシリーズ、Scythe APSALUS-G6など高性能で知られる簡易水冷CPUクーラーの基幹部分である水冷ヘッド(ベースプレート&ポンプ)はAsetek製となっています。自作PC向け簡易水冷CPUクーラーのOEM元はいくつかありますが、その性能の高さからAsetek製かどうかをまず調べるというくらいに凄い会社です。
Asetek公式ホームページ:https://www.asetek.com/gaming/diy-partners/
レビュー目次
1.Asetek 690LX-PNの梱包・付属品
2.Asetek 690LX-PNの水冷トップと水冷チューブ
3.Asetek 690LX-PNのラジエーターと冷却ファン
4.Asetek 690LX-PNをセットアップ
5.Asetek 690LX-PNのファンノイズと冷却性能
6.Asetek 690LX-PNのレビューまとめ
補足.空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて
Asetek 690LX-PNの梱包・付属品
まずは「Asetek 690LX-PN」外観や付属品をチェックしていきます。「Asetek 690LX-PN」はどちらかというとエンタープライズとかに近い製品なのでシンプルな茶箱パッケージに梱包されているかと思いきや、白色を基調にしたカラープリントのコンシューマー向け製品的なしっかりとしたパッケージで梱包されていました。
「Asetek 690LX-PN」のパッケージは幅400mm程で長辺方向に開くN式箱なので開封スペースは若干広く取ります。
中を見るとスポンジスペーサーにビニール袋で包装された「Asetek 690LX-PN」本体が収められていました。CPUクーラーには予め冷却ファンが装着されています。CPUクーラー以外の付属品として水冷ヘッドをCPUソケットに固定するためのT30規格のトルクスドライバーが付属します。
Asetek 690LX-PNの水冷トップと水冷チューブ
続いて「Asetek 690LX-PN」の水冷トップ本体をチェックしていきます。「Asetek 690LX-PN」の水冷トップ黒色プラスチックの外装で、天面に取り付けガイドが記載されたオレンジ色のシールが貼られているだけという非常にシンプルな形状です。ポンプの上にとりあえずカバーを被せただけという感じです。
Asetek 690LX-PNの水冷トップからは、水冷ポンプへの給電および回転数取得用の4PINファン端子(PWM信号用端子は非接続なので電気的には3PIN)が伸びています。
Asetek 690LX-PNの水冷ポンプは上述の通り3PINファン端子から電源供給を行うので、マザーボードのPWM信号による速度調整には非対応ですが、電圧制御による速度調整には対応しています。ファン速度の検出値が2倍になっていますが、定格(最大)ポンプ回転数は仕様3800RPMより若干低い3600RPM前後に対して、電圧制御60%にするとポンプ回転数を2500RPM前後まで下げることもできます。
一般的なAsetek製簡易水冷のポンプスピードでは定格3000RPM(実測2700~2800RPM)なので、30~40%ほど高速なポンプが搭載されています。
Asetek 690LX-PNのCPUと接触するベース部分には、既存のCPUと比較して超大型なヒートスプレッダを搭載するIntel Xeon W-3175Xとピッタリサイズで70mm×56mmの大型銅製ベースプレートが搭載されています。銅製ベースプレートの表面は鏡面磨き上げほどではありませんが滑らかです。
今回のサンプル機は使用済みでしたが、標準で熱伝導グリスが均等に塗られているので、こだわりがなければ初回使用時は個別にグリス購入の必要はありません。
「Asetek 690LX-PN」の水冷チューブは水冷トップの天面のロゴを正しい方向にした時に、0時の方向(CPUソケット上向き)から出る構造になっています。
水冷チューブは水冷トップの片側から出る構造になっており、角度が30度くらいのL字エルボーの水冷トップ側は根本ロータリー式になっているので両側ともにチューブ同士が干渉しない範囲で180度自由に動かすことができます。根本の距離は広めでチューブも細いので同じ方向でも180度近くまで回すことができます。
「Asetek 690LX-PN」の水冷チューブは外径が10mm、内径が5mm程度で、ゴム製チューブが剥き出しになっています。細くて丈夫なチューブなので曲げやすく取り回しにも優れています。
水冷チューブの長さは400mm程なので、大型PCケースのトップやフロントのラジエーター設置スペースでも問題なく設置できると思います。
Asetek 690LX-PNのラジエーターと冷却ファン
続いてAsetek 690LX-PNのラジエーター部分をチェックしていきます。「Asetek 690LX-PN」には120mm角冷却ファンを3基搭載する360サイズラジエーターが搭載されており、付属ファンは標準で設置されています。
「Asetek 690LX-PN」のラジエーターは一見して一般的な360サイズラジエーターですが、実際はかなり異なる仕様なので詳しくチェックしていきます。
「Asetek 690LX-PN」のラジエーターについては、水冷ユーザー視点で言って放熱フィンのピッチがかなり高密度であるのに加えて、クーラントが流れるチューブ間隔も狭く120mm幅の中で多くのチューブが通っています。フィン密度が高い分、ラジエーターの放熱性能は高まりますが、静圧の低いケースファンや低回転数動作の場合、十分なパフォーマンスを発揮できない可能性もあるので注意が必要です。
管理人が本格水冷向けのラジエーターとして推奨している「Alphacool NexXxoS Full Copper ラジエーター」シリーズと比較すると、「Asetek 690LX-PN」のほうがチューブ数が多く、フィンピッチが遥かに高密度であることが一目でわかります。特にチューブ間の放熱フィン形状は、Alphacool NexXxoSではチューブ間で1つの波であるのに対して、「Asetek 690LX-PN」では2つの波が並んでいます。
また一般的な簡易水冷CPUクーラーのラジエーターの厚さは27mm厚ですが、「Asetek 690LX-PN」は2倍近い55mm厚となっており、冷却ファンの静圧がいっそう要求される形状です。冷却ファン自体も一般的な25mm厚よりも大きい38mm厚なのでファン&ラジエーターマウントスペースのクリアランスは93mmほど必要になります。
「Asetek 690LX-PN」の冷却ファン&ラジエーターの厚みは、一般的な簡易水冷CPUクーラーのそれよりも厚みが非常に大きいことがわかります。
重量もラジエーター&冷却ファンの重量も一般的な360サイズ簡易水冷CPUクーラーが2000g前後であるのに対して、「Asetek 690LX-PN」は1.7~1.8倍重い3500g前後です。
Asetek 690LX-PNには、Nidec(日本電産株式会社)製の120mm角38mm厚冷却ファン「B35502-35DEL7」が3基付属します。厚みが大きいだけでなく、回転数も非常に高く、定格回転数は4000RPM以上です。PWM速度制御に対応しており、1300RPM程度まで回転数は下げられますがそれでもファンノイズはかなり大きいです。
なお最大電流はファン1基で1.5Aと非常に大きく、Y字分岐ケーブル等を使用して1つのファン端子にまとめて接続するとマザーボードやファンコンが破損する可能性があるので注意してください。
Asetek 690LX-PNの付属冷却ファンは、一般的な簡易水冷CPUクーラーと異なり、冷却ファンが短いネジによってラジエーターに固定されています。
ネジの規格自体は国内で一般的に流通しているM4なので28~30mm長のM4ネジを使えば一般的な25mm厚の冷却ファンに換装が可能ですが、上のような形で標準ファンが固定されているので、プラスの1番で軸が5mm以下のドライバーが必要になります。
Asetek 690LX-PNの検証機材・セットアップ
「Asetek 690LX-PN」を検証機材のベンチ機にセットアップします。Asetek 690LX-PNの検証機材として、Intel Core i9 9900KとIntel Core i9 7980XEなどで構成されているベンチ機を使用しました。構成の詳細は下記テーブルの通りです。
テストベンチ機の構成 | |
OS | Windows10 Home 64bit |
CPU | Intel Xeon W-3175X (レビュー) |
マザーボード | ASUS ROG Dominus Extreme (レビュー) |
メインメモリ | Corsair Dominator Platinum RGB CMT32GX4M4C3200C14 DDR4 8GB*12=96GB (レビュー) |
ビデオカード | MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | DimasTech Bench Table EasyXL(レビュー) |
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する18年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、Intel 第9世代Core-Xのようなエンスー環境はもちろん、Intel/AMDのメインストリーム向けCPU環境であってもシステムストレージ用に一押しのSSDです。
・「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
CPUクーラーの設置方法について、当サイトの評価基準となるチェックポイントは次の3つです。
- LGA115Xの場合、CPU固定バックプレートが単独でマザーボードに固定できるか
- マウントパーツ設置状態でCPUを交換できるか
- 空冷の場合、ネジ止めの場合はマザーボード側から固定できるか
簡易水冷or水冷ブロックの場合、ハンドスクリューなどツールレス固定ができるか
上の3項目を全て満たす例として本格水冷用のCPU水冷ブロックですが「EK-Supremacy EVO」のマウンタ構造は「バックプレートをM/Bに固定可能」「完全ツールレス」「マウンタ設置状態でCPUの交換が可能」なので本格水冷・簡易水冷クーラーの水冷ブロック固定方式としてはベストだと思っています。水冷クーラーメーカーにはどんどん真似してもらいたい理想的な構造です。
今回は「Asetek 690LX-PN」の対応環境の1つであるIntel Xeon W-3175Xに対応するIntel LGA3647マザーボード「ASUS ROG Dominus Extreme」を例にして設置手順を簡単に紹介します。
Intel LGA3647ソケットは既存のCPUソケット大きく異なるポイントとしてCPUソケット自体にはCPUを上から押さえつけて固定するフレームがありません。
LGA3647マザーボードでは単純にCPUクーラーで押さえつけて固定する形式のものが多くCPUやCPUクーラーの着脱に不安がありますが、Xeon W-3175X専用マザーボード「ASUS ROG Dominus Extreme」にはCPUをCPUクーラーに固定できる「CPUクリップ」というプラスチック製パーツが付属しています。
CPUはCPUクリップに固定されて脱落せず、CPUクリップはCPUクーラーに固定されるので、CPUクーラーの着脱時にCPUクーラーからCPUが落下してマザーボードがピン折れするのを防止できます。
CPUクーラーをマザーボードに固定する準備はこれで完了したので熱伝導グリスをCPUのヒートスプレッダに塗布します。熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
Thermal Grizzly Kryonaut TG-K-001-RS(少量、1g)
Thermal Grizzly Kryonaut TG-K-015-RS(1.5ml)
Thermal Grizzly Kryonaut TG-K-030-RS(3.0ml)
親和産業
通常グリスを塗る量はてきとうでOKで、管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
ただしIntel Xeon W-3175XなどLGA3647系CPUはCPUヒートスプレッダのサイズが大きいので、同じくCPUヒートスプレッダが大きいAMD Ryzen Threadripperのグリスの塗り方としてNoctuaが推奨している方式を真似て、今回はグリスを塗りました。
CPUヒートスプレッダにグリスを塗ったら、CPUクリップの爪がベースプレートのネジ穴に引っかかるように上から水冷ヘッドを被せ、裏返してからCPUクリップをしっかりとマウントブラケットに固定します。
マザーボードのCPUソケットにある▲マークと、CPUクリップの▲の切り抜きの位置が一致するように注意して水冷ヘッドをマザーボードに置きます。水冷ヘッドを乗せたら、1.左右の対角ネジ、2.左右の中央ネジの順番に、付属のトルクスドライバーでネジ止めしします。
簡易水冷CPUクーラーは空冷CPUクーラーと違ってラジエーター設置スペースが要求されますが、CPUソケット周辺のスペースはすっきりしており、「Asetek 690LX-PN」なら「ASUS ROG Dominus Extreme」においてメモリやPCIEスロットと干渉する心配もありません。
Asetek 690LX-PNのファンノイズと冷却性能
続いて本題となる「Asetek 690LX-PN」の冷却性能と静音性を詳細に検証していきます。検証システムをベンチ板に置いた状態で測定を行っているためCPUクーラーが水冷・空冷によらず基本的にCPUクーラーの理想的な性能をチェックすることになります。
「Asetek 690LX-PN」については標準付属ファンを搭載したケースに加えて、Noctuaの高性能次世代冷却ファン「Noctua NF-A12x25 PWM」に換装したケースについても検証しました。
また比較対象としてLGA3647専用空冷CPUクーラーの「Noctua NH-U12S DX-3647」と「Noctua NH-U14S DX-3647」についても検証を行いました。
まずはサウンドレベルメーター(騒音計)を使用してファンノイズをCPUクーラー別で比較しました。騒音計の収音部分とノイズ発生部分との距離が15cm程度になる位置で測定を行っています。簡易水冷の場合はラジエーターとポンプ両方からの距離が15cm程度になるように設置しています。
電源OFF時の騒音値は33~35dBです。目安として40dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになり、45dB前後で煩く感じます。50dBを超えてくるとヘッドホンをしていても煩く感じます。同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質にもよるので注意してください。
「Asetek 690LX-PN」(ポンプ速度は定格の3800RPM)において、標準付属ファンでファン回転数を最低回転数の1300PRMにした場合、ファン回転数を1800RPMにした場合、そして冷却ファンを「Noctua NF-A12x25 PWM」に換装してファン回転数を1800RPMにした場合の3つについてファンノイズを比較すると次のようになりました。
「Asetek 690LX-PN」の標準付属ファンは最低回転数の1300RPMでもノイズレベルは46dBを上回ってそこそこ煩く、1800RPMまで引き上げると50dBを超過し、ヘッドホンをつけていてもファンノイズがはっきり聞こえるくらい大きな騒音になります。
一方でNF-A12x25 PWMに換装すると同冷却ファンの最大回転数に近い1800RPMでも、標準付属ファンの最低回転数1300RPMより静かになります。ファン換装時の冷却性能については後ほど言及しますが、ノイズレベルの測定からわかる静音性を見るとNF-A12x25 PWMに換装するのが正解に思える結果です。
続いて「Asetek 690LX-PN」など各種CPUクーラーの冷却性能をチェックしていきます。
ストレステストによる「Asetek 690LX-PN」の”継続的な”冷却性能を検証する前に、Cinebenchを使用して「Asetek 690LX-PN」の水冷ヘッドは熱移動速度的にどの程度のCPU消費電力まで対応できるのか、”瞬間的な”冷却限界をチェックしてみました。
Xeon W-3175Xのコアクロック:全コア4.1GHzに、コア電圧:1.100Vに、メモリ周波数:3600MHzにオーバークロックしてCinebenchを実行するとCPU消費電力は500Wとなり、数秒の負荷でCPU温度は80度に達するので、継続的に(実用的に)「Asetek 690LX-PN」が冷却可能なCPU消費電力は450W程度になると予想できます。
続いて長期的にCPU負荷をかけて「Asetek 690LX-PN」の冷却性能をチェックしていきます。
ストレステストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間7分、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はXeon W-3175X 定格の場合は8分ほどなので同じ動画のエンコードを3つ並列して実行しています。テスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
Intel Xeon W-3175Xの動作設定は、CPU本体については「長期間電力制限:255W」「短期間電力制限時間:32秒」「短期間電力制限時間:510W」でIntel仕様値のままですが、メモリは「メモリ周波数3600MHz」「メモリタイミング16-16-16-36-CR2」「メモリ電圧:1.350V」にOCしています。この設定でIntel Xeon W-3175Xを動かした時、Cinebench R15のスコアは5530ほどとなります。
またこの動作設定において上で紹介したストレステストを実行すると、Xeon W-3175XのEPS電源経由の消費電力は330W前後に達します。
「Asetek 690LX-PN」(ポンプ速度は定格の3800RPM)のファン回転数を1300RPMと1800RPMに、比較対象である「Noctua NH-U14S DX-3647」はファン回転数を1200RPM、「Noctua NH-U12S DX-3647」はファン回転数を1600RPMに固定してストレステストを実行した時のCPU温度は次のようになりました。
Xeon W-3175XをIntel公式の仕様値であるTDP255Wの定格動作の通りに電力制限を課していますが、「Asetek 690LX-PN」による冷却でストレステスト中のCPU温度は、温度依存で制限のかかる閾値85度よりも十分に低い、60度前後に収まりました。
「Noctua NH-U14S DX-3647」と「Noctua NH-U14S DX-3647」もXeon W-3175Xによる300Wクラスの発熱を御しきれているので十分に高性能ですが、それらよりも10度低い温度を叩き出せる「Asetek 690LX-PN」の冷却性能は圧巻です。また「Asetek 690LX-PN」のラジエーターは放熱フィンが非常に高密度ですが最低回転数の1300RPMでも300W程度の放熱が可能な気流を放熱フィンに対して生み出せていることがわかります。
続いてXeon W-3175Xを全コア4GHz超にオーバークロックして、「Asetek 690LX-PN」が冷やしきれるのか検証してみました。
OC検証ではDxO Photo LabによるRaw現像をストレステストにしました。CPU使用率や消費電力は動画エンコードや3Dレンダリング同様で、CPUマルチスレッド性能をフルに発揮できるタスクです。
DxO Photo Labによるストレステストの具体的な設定としては、「SONY DSC-RX100M5」で撮影した5472×3648解像度のRAW画像ファイル 100枚に対して、DxO PhotoLabの画質プリセット「DxO 標準」をベースにノイズ除去を「PRIME」に変更したプリセットを適用し、RAW現像を行いました。なおDxO PhotoLabによるRAW現像は並列処理数を設定できるので並列処理数は14に指定しています。
Xeon W-3175Xを全コア4.1GHz、コア電圧1.050VにOCして上述のストレステストを実行すると、CPU消費電力は440~460W程度になります。
「Asetek 690LX-PN」(ポンプ速度は定格の3800RPM)において、標準付属ファンでファン回転数を1800RPMに、そして冷却ファンを「Noctua NF-A12x25 PWM」に換装してファン回転数を1800RPMに固定して、全コア4.1GHzにOCしたXeon W-3175Xに対してストレステストを実行した時のCPU温度は次のようになりました。
「Asetek 690LX-PN」ならXeon W-3175Wを全コア4GHz前後にOCしてCPU消費電力が400~450Wに達しても継続的に冷やしきることができます。
また標準付属ファンを使用した場合と、「Noctua NF-A12x25 PWM」に換装した場合を比較するとファン回転数はいずれも1800RPMで揃えていますが、冷却性能には誤差程度の差しかありませんでした。「Noctua NF-A12x25 PWM」は25mm厚の標準的な冷却ファンなので、「Asetek 690LX-PN」の極厚かつ高密度な放熱フィンを考えると十分な気流を通すためにプッシュプル構成にする必要がある可能性も想定していたのですが、片面だけでも特に問題ないという結果でした
「Asetek 690LX-PN」の360サイズラジエーターにおいて400~450Wの継続的な放熱を行うには「Noctua NF-A12x25 PWM」の1800~2000RPMの静圧および風量があれば十分であり、かつ500W超のCPU負荷についてはそもそも水冷ヘッドの熱移動速度的に対応が難しくなります。
以上のように「Asetek 690LX-PN」の冷却ファンを「Noctua NF-A12x25 PWM」に換装しても特に目立ったデメリットはなく、静音性は大幅に向上するので、文句なしにオススメです。
Asetek 690LX-PNのレビューまとめ
最後にXeon W3175Xのために開発された最強の簡易水冷CPUクーラー「Asetek 690LX-PN」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- Xeon W-3175Xの大型IHSと同サイズの銅製ベースプレート
- 一般的な簡易水冷CPUクーラーより30~40%高速な3800RPMの高性能ポンプ搭載
- Xeon W-3175Xを全コア4GHz超、CPU消費電力400~450Wで運用可能な冷却性能
- 瞬間的には500WクラスのCPU消費電力にも対応可能
- PCIEスロットやメモリスロットとの干渉は発生しない
- 標準付属ファンは煩い
NF-A12x25 PWMに換装すれば冷却性能はそのままに静音性は大幅に改善できる - ラジエーター&冷却ファンは一般的な簡易水冷の2倍程度の93mm厚
- 価格が税込み7万円と非常に高価
「Asetek 690LX-PN」は、最大で300W超クラスの電力負荷になる28コア56スレッド「Intel Xeon W-3175X」を定格でサーマルスロットリングさせることなく安定して運用することができるのは当然として、CPU消費電力が450W前後に達する全コア4GHz超のオーバークロックにも対応可能な抜群の冷却性能を発揮しました。
「Intel Xeon W-3175X」を定格で運用するのであれば、NoctuaからリリースされているLGA3647専用空冷CPUクーラーでも対応が可能ですが、ユーザーによるマニュアルOCにも対応するXeon W-3175Xのベストパートナーは「Asetek 690LX-PN」であることは間違いありません。
また「Asetek 690LX-PN」は360サイズラジエーター搭載でありラジエーター&ファンの厚みが93mmと大きいのでラジエーター設置スペースが大きく要求されるところは注意が必要ですが、CPUソケット周りのスペースは空冷CPUクーラーよりも自由度が高く、CPUクーラーがメモリスロットやPCIEスロットと干渉することがないところも魅力です。
付属の冷却ファンについては定格(最大)回転数4000RPM超というのは流石に過剰装備で、ファン1基の最大電流が1.5Aという扱いにくさもあり、管理人的には静音性に優れ、冷却性能的にも必要十分な「Noctua NF-A12x25 PWM」に換装するのがオススメです。
以上、「Asetek 690LX-PN」のレビューでした。
Noctua NF-A12x25 PWM 120mmファン 定格2000RPM PWM対応
Noctua NF-A12x25 ULN 120mmファン 定格1200RPM PWM対応
Noctua
国内正規代理店Techaceの公式通販 で詳細情報を見る
<TSUKUMO:PWM/ULN><PCショップアーク>
補足:空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて
「空冷クーラー」と「水冷クーラー」の2種類ついて同じところと違うところ、また原理的に考えた冷却性能の比較を簡単に補足しておきます。関連記事
・最も美しい簡易水冷CPUクーラー「NZXT KRAKEN X72」をレビュー・360サイズの最強簡易水冷CPUクーラー「Corsair H150i PRO RGB」をレビュー
・「Fractal Design Celsius S36」をレビュー
・「ASUS ROG RYUJIN 360」をレビュー
・「CRYORIG A40 V2」をレビュー
・「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む
(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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