2ステップ低電圧化でRX 5700 XTのワッパを大幅改善!


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競合RTX 2070 SUPERよりも100ドル安価でコスパに優れるAMDの次世代GPU NaviことRadeon RX 5700シリーズ上位モデル「Radeon RX 5700 XT」を、ワッパ的にも美味しく使えるようにする”低電圧化”について詳しく検証してみたのでレビューしていきます。「Radeon RX 5700 XT」が定格動作と比較して低電圧化によってどれくらい消費電力を下げることができ、またゲーム性能をどれくらい維持できるのか徹底解説します。

DSC02170_DxO

この記事では「Radeon RX 5700 XT」の低電圧化の設定方法や、低電圧化によるゲーム性能・消費電力の変化に的を絞って簡略化しています。「Radeon RX 5700 XT」の一般的な内容や当記事と共通の検証システム等については別途、詳細なレビュー記事を公開しているのでこちらを参照してください。
「Radeon RX 5700 XT」をレビュー。RTX 2070 SUPERと徹底比較!
Radeon RX 5700 XT Reference



Radeon RX 5700 XT 低電圧化 レビュー目次


1.Radeon RX 5700 XTの低電圧化
  ・2ステップで簡単なRX 5700 XT 低電圧化の方法
2.Radeon RX 5700 XT 低電圧化のゲーム性能と消費電力
3.Radeon RX 5700 XT 低電圧化のレビューまとめ



Radeon RX 5700 XTの低電圧化

「Radeon RX 5700 XT」の低電圧化を行う方法について紹介していきます。

最初に、”低電圧化”もオーバークロックと同様にメーカー保証外のチューニングであり、製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。
電圧を盛りコアクロックを引き上げるオーバークロックと違って、”低電圧化”ではその名の通り、電圧を引き下げるのでハードウェアが破損する可能性はかなり低いですが、電圧不足でGPUがハングアップするとOSやデータが破損する可能性はあります。低電圧化のチューニング時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならチューニング設定専用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。


「Radeon RX 5700 XT」の低電圧化の設定はデスクトップの右クリックメニューやアイコンなどからアクセスできる「Radeon設定」から行います。
Radeon RX 5700 XT_Low-V_Radeon Setting_1
「Radeon設定」が開いたら、トップメニューのゲーム、ゲームエクスプローラーのグローバル設定、グローバルWattManの順番に選択していきます。
Radeon RX 5700 XT_Low-V_Radeon Setting_2
Radeon RX 5700 XT_Low-V_Radeon Setting_3
Radeon RX 5700 XT_Low-V_Radeon Setting_4
Radeon設定のWattmanから下にスクロールしていくと、前世代同様にコアクロックやメモリクロックに関する設定が可能です。
Radeon RX 5700 XT_Low-V_Radeon Setting_5
ちなみにチューニングコンロールの「GPUの自動電圧低下」を選択すると、低電圧化設定を自動的に行うことができますが、こちらは効果が小さいのであまりオススメしません。
Radeon RX 5700 XT_Low-V_Radeon Setting_Auto-Low-V
電圧とコアクロックの比例関係を示すV-Fカーブの右上端にあるオレンジの●を選択して表示される電圧とコアクロックは、その個体のデフォルト値となっており各自で異なります。管理人が今回入手した「Radeon RX 5700 XT」のコアクロック/コア電圧カーブの最大値は2034MHz/1198mVでした。なおこれはあまり良い特性の個体ではないようなので、一般的にはこの記事よりも優秀なチューニングが行えると思います。
Radeon RX 5700 XT Reference_WattMan_clock
なおRadeon設定のWattManからはファン制御カーブの手動設定も可能です。「Radeon RX 5700 XT」にはGPU温度とジャンクション温度の2種類の温度がありファン制御カーブはジャンクション温度を参照しています。低電圧化を行うだけだとファン回転数の制御が微妙で上手く静音化できない可能性もあるので、冷却ファンを静かにしたい場合はここも調整してみてください。
Radeon RX 5700 Reference_WattMan_Fan



「Radeon RX 5700 XT」の低電圧化の設定手順を簡単な2ステップにまとめて紹介します。とりあえずここで紹介する2ステップさえ読めば誰でも簡単に低電圧化が可能です。

1.Radeon RX 5700 XTの低電圧化設定を適用する

まず第1ステップとしてWattManから「Radeon RX 5700 XT」の低電圧化設定を適用します。
V-Fカーブの左下にあるスライドスイッチを選択して設定方法を手動設定に切り替えます。V-Fカーブの右上端にある、オレンジの●がコアクロックの増減、白い△がGPU電圧の増減になっており、マウス操作でスライダーを動かして設定できます。
管理人のオススメな設定は『コアクロック:1900MHz(固定)、GPU電圧:1000mV(調整)』です。
Radeon RX 5700 XT_Low-V_Howto_1

2.Radeon RX 5700 XTの低電圧化設定を適用する

続いて第2ステップとして「Radeon RX 5700 XT」に適用した低電圧化設定が安定して動作するかどうかを確認します。
「Radeon RX 5700 XT」に適用した低電圧化設定安定性を確認する方法として当サイトでは3DMarkのTime Spy ストレステストを推奨しています。ストレステストに失敗する場合は、1.の手順に戻って電圧を昇圧、クリアできる場合は10mVずつ電圧を下げていき、安定動作が可能なGPU電圧を探っていきます。
Radeon RX 5700 XT_Low-V_Howto_2s
Time SpyやFire Strikeのベンチマークだけを実行して安定性を確認しているところもありますが、負荷がかかった直後に即落ちすることはなくても、GPU温度の上昇とともに動作が徐々に不安定になっていく場合もあります。そういった時は実際に安定させるためにはさらに昇圧が必要になるので、20分程度に渡って負荷をかけ続けることができるTime Spy ストレステストで安定性の確認を推奨しています。



Radeon RX 5700 XT 低電圧化のゲーム性能と消費電力

低電圧化を施した「Radeon RX 5700 XT」の性能を測るべく各種ベンチマークを実行しました。
「Radeon RX 5700 XT」の低電圧化設定については上の章で紹介した2ステップの設定方法によって決定し、今回検証に使用する個体で最適かつ安定だった『コアクロック:1900MHz、GPU電圧:1020mV』としました。なお以降、低電圧化とは『コアクロック:1900MHz、GPU電圧:1000mV前後』にチューニングしたものとして解説していきます。
Radeon RX 5700 XT_Low-V

2019年最新のPCゲームを用いたベンチマークになります。同一のグラフィック設定で同一のシーンについてWQHD解像度で平均FPSを比較しました。
ベンチマーク測定を行ったゲームタイトルは、Anthem(ウルトラ設定プリセット)、Assassin's Creed Odyssey(最高設定プリセット)、Battlefield V(最高設定プリセット, DirectX12)、CONTROL(最高設定プリセット, DirectX11)、Destiny 2(最高設定プリセット)、The Division 2(ウルトラ設定プリセット, DirectX11)、Far Cry 5(最高設定プリセット&TAA)、Final Fantasy XV(最高設定プリセット、NVIDIA GameWorks無効)、Gears 5(最高設定プリセット)、Ghost Recon Wildlands(ウルトラ設定から以下を変更、ターフエフェクト:オフ/ゴッドレイ:オン/ロングレンジシャドウ:オン)、Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット, DirectX11)、MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット)、Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット, DirectX12)、Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)、The Witcher 3(個別設定を全て最高設定)以上の15タイトルです。
game_benchmark_201909

「Radeon RX 5700 XT」の定格動作と低電圧化において、上記の15種類の最新PCゲームについて性能比を算出したところ次のようになりました。100%を超えているタイトルについては定格動作のほうが高いフレームレートとなっています。
低電圧化によってコアクロックは抑制されるので単純に性能が下がるだけかというとそうでもなく、特にRX 5700 XTのリファレンスモデルはGPUクーラーの性能が低いので、低電圧化によってGPU温度が下がり、パフォーマンスが上昇するというケースがあります。
Radeon RX 5700 XT Low-Voltage_perf

Radeon RX 5700 XTの定格動作や低電圧化など6種類のGPUについて実ゲーム性能の比率の平均を出してみたところ、Radeon RX 5700 XTは現行最新の競合GPUであるRTX 2070を10%程度上回り、NVIDIAの前世代最上位GPUであるGTX 1080 Tiに迫る性能です。
一方でNVIDIAがカウンターパンチとしてリリースしてきたRTX 2070 SUPERと比較すると、それぞれのGPUでゲームによって得手不得手がありますが、「Radeon RX 5700 XT」はあと1歩及びませんでした。RTX 20XX SUPER自体がRX 5700の性能に合わせて繰り出された後だしジャンケン的製品なので仕方ないことですが。
今回の検証ではRX 5700 XTやRTX 2070 SUPERがターゲットとするフルHDやWQHDの解像度においてRTX 2060 SUPERが数%程度上回りましたが、競合製品として十分に通用する性能を発揮していると思います。
Radeon RX 5700 XT Low-Voltage_perfsum


ゲーム性能の検証では「Radeon RX 5700 XT」の定格動作と低電圧化では誤差程度の性能差しかないという結果が得られましたが、その裏付けとして、続いて低電圧化を施した「Radeon RX 5700 XT」の負荷時のGPU温度やファンノイズや消費電力についてチェックしていきます。

「Radeon RX 5700 XT」のGPU温度とファンノイズの検証負荷としては20分間に渡たり連続してGPUに100%近い負荷をかける3DMark TimeSpy Stress Testを使用しています。
Radeon RX 5700 XT 50TH Anniversary Edition_TimeSpy Stress Test
「Radeon RX 5700 XT」に低電圧化を施した時、テスト終盤におけるGPU温度は最大75度で、ファン回転数は最大で2100RPMまで上昇しますが、1800~2100RPMの間で変動しています。ジャンクション温度と違ってGPU温度は定点の温度になっていますが、低電圧化と定格動作で大差がないという意外な結果になりました。
Radeon RX 5700 XT Low-Voltage_temp_gpu
GPUに搭載された複数の温度センサーのうち、最大温度を示すジャンクション温度の推移は下のようになりました。Radeon RX 5700シリーズはジャンクション温度をファン制御のソース温度とし、負荷がかかるといったん上限速度まで上昇し、徐々に収束していく方式が採用されています。
今回のテストにおいて「Radeon RX 5700 XT」の低電圧化は、定格動作よりもジャンクション温度が低いことが分かります。またファン回転数も最大値の2100RPMに張り付いていないことから、低電圧化によって消費電力が下がっていることも推察できます。
Radeon RX 5700 XT Low-Voltage_temp_junction

GPUコアクロックの推移は特に興味深く、「Radeon RX 5700 XT」の定格動作では変動が大きくピーク値では確かに低電圧化を上回るコアクロックを示していますが、平均のコアクロックでは低電圧化が上回っています。ピークのコアクロックと平均のコアクロックのどちらが有効なのかで性能差が出たと考えると(測定誤差もあると思いますが)、15種類のゲームベンチマークでタイトルによって優劣に若干の差が出たことに納得がいきます。
Radeon RX 5700 XT Low-Voltage_clock

低電圧化を施した「Radeon RX 5700 XT」の消費電力と瞬間的な最大電源負荷を測定しました。
測定負荷には上で行った温度検証と同様に3DMark TimeSpy ストレステストを使用しています。テスト全体から1秒間隔でモニタリングを行い、平均値を”消費電力”、最大値を”瞬間的な最大電源負荷”とします。なお電源ユニットに対する実際の最大瞬間負荷は測定値より50~100W上回る場合があるので、電源ユニットの電源容量選択の参考にする場合は注意してください。
消費電力の測定は電源ユニット「Corsair HX1200i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの入力ではなく変換ロスを差し引いたシステムへの出力電力をチェックしています。また電力測定の際は上記の主電源ユニットに加えて、CPUへの電力供給を行うEPS端子へ接続するために別の副電源ユニットを使用しています。
この方法であれば、CPU(後述のiGPUも)に負荷をかけても、CPUによる消費電力の変動はメイン電源ユニットCorsair HX 1200iの測定値には影響しません。しかしながら、測定値にはまだATX24PIN経由で供給されるマザーボードやDDR4メモリの電力が含まれるので、iGPUを使用した時の3DMark TimeSpy ストレステスト中の消費電力と最大電源負荷を同様に測定し、各種グラフィックボード使用時と差分を取る形でグラフィックボード単体の消費電力と最大電源負荷を算出します。
GPU_Powe

Radeon RX 5700 XTに低電圧化を施した時、消費電力は181W、最大瞬間負荷は231Wでした。管理人が推奨している『コアクロック:1900MHz、GPU電圧:1000mV前後』のチューニングによって、Radeon RX 5700 XTはゲーム性能をそのままに、消費電力を30W前後下げることに成功しています。
「Radeon RX 5700 XT」の低電圧化設定によって30W前後も消費電力が下がっており、ゲーム性能はそのままに1ランク下のモデルの低消費電力を実現した形です。
Radeon RX 5700 XT Low-Voltage_power



Radeon RX 5700 XT 低電圧化 レビューまとめ

最後に「Radeon RX 5700 XT」の低電圧化を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ
  • 『コアクロック:1900MHz、GPU電圧:1000mV前後』の設定ならゲーム性能はほぼ変化なし
  • 同設定で消費電力は定格よりも30W程度低下
  • 低電圧化によって399ドルで同価格のRTX 2060 SUPERと同消費電力で10%程度高速に
  • 低電圧化の設定は2ステップで簡単
  • 消費電力が下がるのでファンの煩いリファレンスモデルを静音化できる
悪いところor注意点
  • 低電圧化のチューニングはメーカー保証外
  • 消費電力の低下とゲーム性能の維持はGPU個体差にもよる

「Radeon RX 5700 XT」は2ステップの簡単な低電圧化チューニングによって30W前後も消費電力が下げることが可能で、ゲーム性能はそのままに1ランク下のモデルの低消費電力を実現できます。
「Radeon RX 5700 XT」は同製品のカウンターパンチとして投入された競合製品のRTX 2070 SUPERと比較するとグラフィック性能で1歩及ばず、かといって下位モデルのRTX 2060 SUPERと比較すると消費電力が大きいというポジショニングでした。
しかしながら低電圧化を施すとその評価も大きく変わり、RTX 2070 SUPERよりも100ドル安価な399ドルで、同価格のRTX 2060 SUPERと同消費電力ながら10%程度高速というコストパフォーマンスが純粋に光るかなり優良なGPUになります。

以上、『2ステップ低電圧化でRX 5700 XTのワッパを大幅改善!』でした。
2ステップ低電圧化でRX 5700 XTのワッパを大幅改善!





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