ENERMAX LIQTECH TR4 II 240


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AMD Ryzen Threadripper専用かつ完全対応となる簡易水冷CPUクーラー ENERMAX LIQTECH TR4 IIシリーズから、汎用性の高い240サイズラジエーター搭載モデル「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240(型番:ELC-LTTRTO240-TBP)」をレビューします。32コア64スレッドのRyzen Threadripper 3970Xを使用して「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」の冷却性能を徹底検証していきます。
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代理店公式ページ:https://www.links.co.jp/item/liqtech-tr4-ii/
製品公式ページ:http://www.enermaxjapan.com/cpu-cooler/Liquid/ELC-LTTRTO240-TBP.html

ENERMAX LIQTECH TR4 II (1)





レビュー目次


1.ENERMAX LIQTECH TR4 II 240の梱包・付属品
2.ENERMAX LIQTECH TR4 II 240の水冷ヘッドと水冷チューブ
3.ENERMAX LIQTECH TR4 II 240のラジエーターと冷却ファン
4.ENERMAX LIQTECH TR4 II 240を検証機材とセットアップ
5.ENERMAX LIQTECH TR4 II 240のLEDイルミネーション
6.ENERMAX LIQTECH TR4 II 240のファンノイズと冷却性能
7.ENERMAX LIQTECH TR4 II 240のレビューまとめ


補足.空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて


【機材協力:株式会社クーラージャイアント】


【注意】
旧モデルにおいて性能低下等のRMA事例が報告されていましたが、LIQTECH TR4 IIでも初期ロットには性能低下の可能性があります。2020年2月現在、主に市場に出回っている最新ロットでは修正済みとのことです。
環境にもよりますが、ファンを2000RPM程度で回しても、3960Xや3970Xの定格で80度前後に達する場合は怪しいので、代理店もしくはメーカーへ問い合わせてみてください。



ENERMAX LIQTECH TR4 II 240の梱包・付属品

まずはENERMAX LIQTECH TR4 II 240の梱包や付属品をチェックしていきます。
製品パッケージはグレーカラーのシンプルなデザインです。製品パッケージ正面右側にはシルバーの下地に製品名が記載されています。「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」は定格でTDP280W、オーバークロックによってCPU消費電力が500Wを超えるようなAMD第3世代Ryzen Threadripperに対応しています。
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製品パッケージはN式サイド差込式と呼ばれるタイプの箱になっていました。蓋を開くとスポンジの蓋がありそれを出すとパルプモールド製スペーサーに簡易水冷クーラー本体や付属品が収められています。240や360サイズラジエーターの簡易水冷CPUクーラーはパッケージも大きいので梱包によっては取り出しにくいことがありますが、ENERMAX LIQTECH TR4 IIは短辺方向に蓋を開くので開封スペースも最小限になっており、取り出しが非常に楽でした。
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簡易水冷CPUクーラー本体と冷却ファン以外の付属品は、マニュアルと小分けのパッケージ入ったネジ・ケーブル類となっています。
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ネジ類については、ラジエーターにファンを固定するための長ネジが8本、ラジエーターをPCケースに固定するための短ネジが8本、水冷ヘッドをマザーボードに装着するためのスタンドオフとスプリング付きハンドスクリューナットが4個ずつです。(280サイズでは同じく8本ずつ、360サイズでは12本ずつとなります)
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簡易水冷CPUクーラーでは水冷ベースプレートに予め熱伝導グリスが塗られているものも多いですが、「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」にはユーザーが塗る熱伝導グリスが付属します。
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240サイズラジエーター搭載モデルの「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」は120mmファン冷却ファンを2基使用するのでPWM4PINファン端子用の2分岐ケーブルが付属します。280サイズ「ENERMAX LIQTECH TR4 II 280」の場合は同じく2分岐ケーブル、360サイズ「ENERMAX LIQTECH TR4 II 360」の場合は3分岐ケーブルが付属します。
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「ENERMAX LIQTECH TR4 II」は水冷ポンプの電源を3PINファン端子から取得する構造になっていますが、4PINペリフェラルから電源を取得できる変換ケーブルも付属します。ただRyzen Threadripper対応のX399マザーボードはいずれも2A以上の出力で水冷対応ファン端子があるので変換ケーブルの出番はないと思います。
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LEDイルミネーション関連では、SATA電源ケーブル、LEDイルミネーションコントローラー、水冷ヘッドLEDイルミネーション接続ケーブルが付属します。
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水冷ヘッドに接続するLEDイルミネーションケーブルは、水冷ヘッドに実装された独自規格のミニコネクタをアドレッサブルRGB対応VD-G型汎用3PIN LEDコネクタに変換します。
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Intel Z390やAMD X470など最新マザーボードではマザーボード側のアドレッサブルLEDヘッダーは基本的にアドレッサブルRGB対応VD-G型汎用3PIN LEDヘッダーで統一されていますが、GIGABYTEとMSIの初期X399マザーボードでは独自端子が採用されていたので、GIGABYTE独自規格のVDG 3PINヘッダーやMSI独自規格のGVD-(3528) 3PINヘッダーをアドレッサブルRGB対応VD-G型汎用3PIN LEDコネクタに変換するケーブルも付属します。
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CPUクーラー本体を取り出すと、水冷ヘッドからラジエーターまで全体がビニールに包まれていました。
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ラジエーターの放熱フィンは出荷前のメーカーによる梱包やユーザーが取り出し時に誤って握ってしまったりして潰してしまうことが多いので厚紙スリーブで保護されている配慮はありがたいです。
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ENERMAX LIQTECH TR4 II 240の水冷ヘッドと水冷チューブ

続いて「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」の水冷ヘッド本体をチェックしていきます。
水冷ヘッドのトップは透明アクリル板なので開封時は傷防止の保護フィルムが貼られています。ENERMAX LIQTECH TR4 IIの水冷ヘッドの形状は単純な四角形となっており、天板は透明なアクリル板が装着されて中央にメーカーロゴが刻まれているだけという非常にシンプルなデザインです。
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水冷ヘッドのENERMAXロゴとアクリルプレート下の白色半透明リング部分にはアドレッサブルLEDイルミネーションが内蔵されおり、専用コントローラーやマザーボードのアドレッサブルLEDヘッダーからの給電で点灯します。
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水冷ヘッドは簡易水冷クーラーでは一般的なポンプ一体型水冷ブロックで高さは40mmほどです。精密工学によって設計(EF1ポンプデザイン)された強力な水冷ポンプは、最大450L/h(7.5L/m)の高い流量を実現し優れた冷却性能を発揮します。また「Ceramic nano Pl ベアリング」を水冷ポンプに採用することで、MTBF(平均故障間隔)100,000時間という高耐久性かつ耐熱性に優れ、摩擦抵抗を抑えることで低ノイズと滑らかな回転を実現します。
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水冷ヘッドからは直出し構造で水冷ポンプおよび冷却ファンの電源取得のための汎用3PINファンケーブルが伸びているのでマザーボードのファン端子から水冷ポンプへの給電が可能です。
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ポンプ回転数の定格仕様値は3000RPMとなっていますが、「ASRock Fatal1ty X399 Professional Gaming」に接続したところフルスピードでは2800RPMとなりました。ポンプはPWMによる速度調整には非対応ですが、電圧調整による60~100%の速度調整には対応しており、2300RPM前後まで回転数を落とすこともできました。
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水冷ポンプ電源ケーブルのすぐ傍には水冷ヘッドに内蔵されたアドレッサブルLEDイルミネーションへ電源供給とライティング制御を行うためのLEDヘッダーが実装されています。
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ENERMAX LIQTECH TR4 IIのCPUと接触するベース部分は銅製になっており、銅製ベースプレートは鏡面磨き上げではありませんが、滑らかな表面に研磨されています。
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AMD Ryzen ThreadripperのCPU本体にはAsetek OEMの簡易水冷CPUクーラー用リテンションブラケットが付属しますが、Asetek OEMの簡易水冷CPUクーラーと銅製ベースプレートのサイズを比較すると、一目瞭然なレベルで「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」のほうが巨大です。
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「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」には既存のCPUと比較して超大型なRyzen Threadripperの68mm×51mmのCPUヒートスプレッダを完全にカバーすることが可能な68mm×53mmの大型銅製ベースプレートが採用されています。
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また銅製ベースプレート内側のマイクロフィンにはENERMAX特許取得済みの「シャント・チャンネル・テクノロジー(SCT:Shunt-Channel-Technology)」設計が採用されています。SCT設計ではマイクロフィンの流入-流出経路の中間にフィンがないスリットを挿入することで通常発生する境界層を排除して、クーラントの流れの運動量を増やすことで循環効率と熱伝導性能を最大限に高め、強力な冷却性能を実現しています
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「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」の水冷チューブは見ての通り水冷ヘッドの上面から直出しの構造になっています。
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水冷ヘッド側のチューブの根元は少し硬めですがストレート型ロータリー式になっているので、ラジエーターの設置レイアウトに合わせて柔軟に水冷チューブの取り回しが可能です。
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水冷チューブには劣化に強く水漏れ、クーラントの揮発の心配がないポリアミドゴムチューブを採用、上から柔軟性に優れ摩耗防止に適したナイロンスリーブが巻かれており取り回しにも優れています。
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水冷チューブの長さは約400mmです。十分な長さがあるのでミドルタワー程度のPCケースであればトップだけでなく、フロントのファンマウントスペースにもラジエーターを設置できます。
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水冷チューブの径は15mm程と比較的太めなのでチューブ折れや潰れの心配はあまりありませんが、少し曲げにくくなっています。とはいえ大型ラジエーター搭載モデルなのでミドルタワー以上のPCケースに搭載することが前提になっており水冷チューブの取り回しに困ることはないと思います。
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ENERMAX LIQTECH TR4 II 240のラジエーターと冷却ファン

続いてENERMAX LIQTECH TR4 II 240のラジエーターと冷却ファンをチェックしていきます。
ENERMAX LIQTECH TR4 IIのラジエーターはラジエーターコアを保護するグリルの側面にENERMAXブランドネームとロゴの刻印された外装が装着されており重厚感のある雰囲気になっています。側面に装飾プレートがあるだけでもラジエーターの外観が他とは違った印象でカッコよくなります。
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ラジエーターのグリルのファン固定部分には防振ラバーパッドが貼られており、冷却ファン高回転時に発生しやすい振動やノイズを抑制し静音性を高める役割を果たします。サードパーティ製の冷却ファンに交換してもラジエーター側に防振ラバーパッドがあるのでノイズ対策面で安心です。
防振の配慮自体は嬉しいのですが、ネジ穴付近のラバーパッドの穴が狭いのでファンを固定する時にラジエーターのネジ穴にファン固定ネジを合わせにくいという欠点もありました。ラバーパッドのネジ穴はもう少し広めにとってもらえると良かったかも。
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放熱フィンのピッチについては水冷ユーザー視点でも狭すぎず広すぎずちょうどいい塩梅です。このフィンピッチであれば低速ファンによる静音動作から高速ファンによる高冷却動作まで幅広く対応できると思います。
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管理人が本格水冷向けのラジエーターとして推奨している「Alphacool NexXxoS Full Copper ラジエーター」シリーズのフィンピッチ(右)と比較するとENERMAX LIQTECH TR4 II 240のフィンピッチ(左)のほうがやや細かいかな、というくらいでほぼ似たようなフィンピッチになっています。
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今回レビューするモデルは240サイズラジエーター搭載モデルなので片面に120mmファンを2基設置可能ですが、上位モデルには280サイズラジエーター採用で片面に140mmファンを2基設置可能な「LIQTECH TR4 II 280(型番:ELC-LTTRTO280-TBP)」や360サイズラジエーター採用で片面に120mmファンを3基設置可能な「LIQTECH TR4 II 360(型番: ELC-LTTRTO360-TBP)」もラインナップされています
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ENERMAX LIQTECH TR4 IIシリーズのラジエーターの厚さについて、280サイズと360サイズの2モデルは簡易水冷CPUクーラーとしては標準的な30mm厚ですが、今回レビューする240サイズモデルの「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」は40mm厚で10mmほど厚みが大きいので注意してください。25mm厚の一般的な冷却ファンを装着した場合、65mmのクリアランスが必要になります。
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ENERMAX LIQTECH TR4 II 240には「T.B.Pressure 120mm fan」という冷却ファンが2つ付属します。
「T.B.Pressure 120mm fan」は500~2300RPMで速度調整可能なPWM対応の4PIN型ケースファンです。
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軸固定用の支柱は弧を描く形ですが軸側の根本付近はファンブレードの回転方向に対して直交しており、ファンブレードの根元が支柱付近を通過するときに発生するノイズを抑制しています。
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ファンフレームのネジ穴周辺部分には、高回転時に発生しやすい振動やノイズを抑制し、静音性を高める防振ラバーパッドを搭載しています。
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吸気面と排気面ともにファンフレームはすり鉢状に面取り拡張されて大風量を獲得できるように最適化されています。
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冷却ファンの軸受には製品名”T.B”の頭文字にもなっている、ENERMAXが特許を取得した「Twister Bearing」が採用されています。「Twister Bearing」は摩擦を最小限に抑えるためにひとつのパーツで構成され、オイルを注すことなく滑らかな動作を実現する特殊な素材を採用、マグネティックボールが軸を支持することにより振動を大幅に軽減しています。自称軸音ソムリエの管理人が軸音テイスティング(耳を近づけてファンを指で弾くだけ)をしてみましたが、低速回転時の軸音が聞こえない良いファンでした。低回転軸音に煩い管理人的も納得の良い冷却ファンなので低回転運用しても軸音が気になることはないと思います。
Twister Bearing

ネジ類の数についてはラジエーターサイズごとに異なっており、ファン固定用32mm長ネジとラジエーター固定用6mm短ネジは240サイズ/280サイズでは8個ずつ、360サイズでは12個ずつ付属しています。
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冷却ファンのラジエーターへの固定やラジエーターのPCケースへの固定に使用するネジの規格は、採用の多いUNC No.6-32や日本国内ホームセンターで簡単に入手可能なM3かM4ネジのどちらでもなく、M3.5のようです。

ラジエーター固定ネジ穴下については、ネジによる貫通を防止するガードなどはありません。ネジ穴の下に冷却液の流れるチューブこそないものの放熱アルミフィンがあります。付属のネジを使用して付属ファンを固定する場合はクリアランスが確保されています。ネジ穴下にチューブはないので水漏れなどの心配はありませんが個体差で問題が生じる可能性もあるのでネジ穴下でチューブとの接触がないかは注意が必要です。
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ENERMAX LIQTECH TR4 IIのラジエーター&冷却ファンの外観は、ラジエーター側面のオリジナル外装と冷却ファンのデザインに統一感があり、工業製品的なゴツい重厚感があってカッコいいです。
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ENERMAX LIQTECH TR4 II 240の検証機材・セットアップ

「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」を検証機材のベンチ機にセットアップします。ベンチ機のシステム構成は次のようになっています。
テストベンチ機の構成

ベンチ機1
ベンチ機1
ベンチ機2
ベンチ機2
OS Windows10 64bit Home
CPU
AMD Ryzen Threadripper 3970X
32コア64スレッド (レビュー
M/B ASRock TRX40 Taichi
レビュー
メインメモリ G.Skill Trident Z RGB
F4-3200C14Q-32GTZRX
(+F4-3600C14D-16GTZN×2セット)
DDR4 8GB*8=64GB (レビュー
グラフィックボード
MSI GeForce GT 1030
2GH LP OC ファンレス
レビュー
ZOTAC RTX 2080Ti
AMP Extreme Core
レビュー
システムストレージ
Samsung 860 PRO 256GB
レビュー
電源ユニット
Corsair HX1200i
レビュー
Thermaltake Toughpower
iRGB PLUS 1250W Titanium
レビュー
PCケース/
ベンチ板
STREACOM BC1 (レビュー
Cooler Master
MASTERCASE MAKER 5t
レビュー
NZXT Aer F 140 3基(レビュー

第3世代Ryzen Threadripper関連の検証機材としてTRX40マザーボードには「ASRock TRX40 Taichi」を使用しています。「ASRock TRX40 Taichi」は自作PCマザーボード向けとしては初となる90A対応Dr. MOSで構成される16フェーズの超堅牢なVRM電源回路、そして全高54mmの超大型かつアクティブ冷却ファン搭載のVRM電源クーラーを搭載しており、PBOによる全コア4GHzクロックアップを施したRyzen Threadripper 3970Xが運用可能な抜群のパフォーマンスを発揮します。各社がハイエンドモデルでE-ATXなど大型サイズを採用する中、標準のATXサイズで使い勝手の良いマザーボードとなっており、TRX40マザーボードの中でも特にオススメの1枚です。
「ASRock TRX40 Taichi」をレビュー。ATXサイズで32コアスリッパに完全対応!
ASRock TRX40 Taichi

ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する18年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、Ryzen Threadripper&X399のようなエンスー環境のシステムストレージ用に一押しのSSDです。
「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
Samsung SSD 860 PRO 256GB


CPUクーラーの設置方法について、当サイトの評価基準となるチェックポイントは次の3つです。
  • CPU固定バックプレートが単独でマザーボードに固定できるか
  • マウントパーツ設置状態でCPUを交換できるか
  • 空冷の場合、ネジ止めの場合はマザーボード側から固定できるか
    簡易水冷or水冷ブロックの場合、ハンドスクリューなどツールレス固定ができるか

上の3項目を全て満たす例として本格水冷用のCPU水冷ブロックですが「EK-Supremacy EVO」のマウンタ構造は「バックプレートをM/Bに固定可能」「完全ツールレス」「マウンタ設置状態でCPUの交換が可能」なので本格水冷・簡易水冷クーラーの水冷ブロック固定方式としてはベストだと思っています。水冷クーラーメーカーにはどんどん真似してもらいたい理想的な構造です。

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一応テンプレなので管理人的に高評価なCPUクーラーマウントについて説明しましたが、
「ENERMAX LIQTECH TR4 II」についてはCPUソケットがそのままでほぼマウントパーツになっており、
 1.スタンドオフをマザーボードに装着
 2.CPUクーラーをスプリング付きハンドスクリューナットで固定
以上の2ステップとなっており非常に簡単です。


Asetek OEMクーラー互換のリテンションブラケットやNoctuaのTR4対応空冷CPUクーラーではベースコアにリテンションネジが装着済みなので1ステップで装着可能とENERMAX LIQTECH TR4 IIよりもひと手間少ないですが、ENERMAX LIQTECH TR4 IIではスタンドオフが水冷ヘッドの装着ガイドの役割を果たしており、ネジ穴(水冷ヘッド)の位置合わせが簡単というメリットがあります。
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前置きはこのあたりにしてベンチ機へENERMAX LIQTECH TR4 II 240をセットアップします。
ENERMAX LIQTECH TR4 II 240をマザーボード装着する時に使用するネジ類はスタンドオフとスプリング付きハンドスクリューナットの2種類だけです。
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スタントオフをCPUソケット周辺のCPUクーラー固定用ネジ穴に装着するだけでCPUクーラー装着のための下準備は完了です。
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熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
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グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
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普段は熱伝導グリスを上のようにてきとうに塗っているのですが、Ryzen Threadripperはヒートスプレッダが大きいため、『最初に等間隔に9カ所小さめに熱伝導グリスを落として、さらにその間の4か所に少し大きめに熱伝導グリスを塗る』というNoctua式の塗り方が良い感じだったので今回はNoctua式を採用しました。
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この塗り方で後ほどCPUクーラーを着脱してみたところCPUのヒートスプレッダ全体へ熱伝導グリスが綺麗に伸びていました。
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サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
「Thermal Grizzly Carbonaut」はRyzen TR 3970Xを冷やせるか!?
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ENERMAX LIQTECH TR4 IIのCPUと接触するベース部分には、購入時点では保護フィルムで保護されています。CPUクーラー装着前に保護フィルムを剥がし忘れないように注意してください。
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熱伝導グリスを塗ったらスタンドオフに水冷ヘッドの足のネジ穴が合うようにしてCPUクーラーを装着します。CPUの上に乗せたらグリスが広がるように力の入れすぎに注意して水冷ヘッドをグリグリと捻りながら押し込んで、スプリング付きハンドスクリューナットを締めたら「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」の設置完了です。
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以上でENERMAX LIQTECH TR4 II 240のベンチ機へのセットアップ完了です。
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AMD Ryzen Threadripper対応マザーボードはCPUソケットの両側にメモリスロットがあるため、空冷CPUクーラーではファンやヒートシンクがメモリスロットに被さってしまい、ヒートシンク付きメモリの選択肢が狭い傾向にありますが、「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」ならメモリ干渉フリーで心配はありません。
簡易水冷CPUクーラーはラジエーター設置の手間やスペース確保の問題はありますが、マザーボード上のメモリなどのコンポーネントとの干渉は大型のハイエンド空冷CPUクーラーより発生し難く、水冷ヘッドの設置自体も基本的にツールレスで容易なのが長所だと思います。
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ENERMAX LIQTECH TR4 II 240のLEDイルミネーション

ENERMAX LIQTECH TR4 II 240の水冷ヘッドに搭載されたアドレッサブルLEDイルミネーションのライティングや制御についてチェックしていきます。
ENERMAX LIQTECH TR4 II 240の水冷ヘッドおよび冷却ファンにはアドレッサブルLEDイルミネーションが搭載されており、付属コントローラーやマザーボードの制御機能によってライティング制御が可能です。
なお「ENERMAX LIQTECH II TR4」シリーズでは水冷ポンプ給電用のファン端子ケーブルからの給電単独でもLEDイルミネーションの点灯が可能です。LED端子からの制御を受けない場合は、内蔵コントローラーによってオーロラ状の七色(Racing Rainbow)に変化します。
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「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」に搭載されたアドレッサブルLEDイルミネーションは、標準で付属するコントローラーによって制御することができます。コントローラーからはSATA電源ケーブルが伸びており、SATA電源を電源供給元として、「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」のアドレッサブルLEDイルミネーションへの電源供給とライティング制御が可能となっています。
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付属コントローラーには[▲ , ▼ , M]の3つのボタンがありますが、「▲」と「▲」ボタンは設定値の変更、「M」ボタンで設定項目が変更できます。コントローラーに実装されたLEDの発光カラーは設定モードを示しており、緑色は「発光パターン」、赤色は「変化スピード」、青色は「輝度」、黄色は「自動発光パターンモード」となります。
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「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」のアドレッサブルLEDイルミネーション接続ケーブルのコントローラー側コネクタはアドレッサブルRGB対応VD-G型汎用3PINヘッダーなので、付属コントローラー以外のアドレッサブルLEDコントローラーに接続できます。
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「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」のアドレッサブルLEDイルミネーションは、マザーボード上のアドレッサブルLEDヘッダーに接続することによって、ASUS AURA Sync、ASRock Polychlome RGB Sync、GIGABYTE RGB Fusion、MSI Mystic Lightなどのマザーボードに搭載されたライティング制御機能による操作することも可能です。
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今回は付属の専用コントローラーを使用して「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」のアドレッサブルLEDイルミネーションやライティング制御について紹介します。
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「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」のアドレッサブルLEDイルミネーションは付属の専用コントローラーを使用することで発光パターンが変更できます。
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「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」に付属する専用コントローラーから選択可能な発光パターンは以下の10種類です。
・「Racing Rainbow(標準設定)」:七色のカラーサークルが時計回りに回転する
・「Breathing Rainbow」:七色のカラーサークルが明滅する
・「Flash Rainbow」:七色のカラーサークルが明滅する
・「Overlaying Rainbow」:LEDロゴ&リングの各アドレスが順に点灯していくのを1周として8色繰り返す
・「Flow Rainbow」:全8色でLEDロゴとLEDリングの各アドレスが順に発光カラーを切り替えていく
・「Colors Auto Run」:全体同一カラーで七色に変化する(▲を3秒長押しで現在の色に停止/解除)
・「Ripple Auto Run」:各アドレスが順に点滅に点灯していくのを1周として8色繰り返す
・「Overlaying Red」:赤色でLEDロゴ&リングの各アドレスが順に点灯していく
・「Overlaying Green」:緑色でLEDロゴ&リングの各アドレスが順に点灯していく
・「Overlaying Blue」:青色でLEDロゴ&リングの各アドレスが順に点灯していく

設定モード切替スイッチでコントローラーのLEDが黄色になる「自動発光パターンモード」を選択すると、上に記載した10種類の発光パターンが順番に実行されます。


その他の発光パターンについてもいくつが動画を撮影しました。




「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」の水冷ヘッドに搭載されたアドレッサブルLEDイルミネーションは、同じくアドレッサブルLEDイルミネーションを搭載したDDR4メモリの「G.Skill Trident Z Neo」や「G.Skill Trident Z RGB」と非常にマッチするので、組み合わせての使用がオススメです。
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ENERMAX LIQTECH TR4 II 240のファンノイズと冷却性能

本題となる「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」の冷却性能や静穏性についてチェックしていきます。
検証システムをベンチ板に置いた状態で測定を行っているためCPUクーラーが水冷・空冷によらず基本的にCPUクーラーの理想的な性能をチェックすることになります。
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まずはサウンドレベルメーター(騒音計)を使用してファンノイズをCPUクーラー別で比較しました。騒音計の収音部分とノイズ発生部分との距離が15cm程度になる位置で測定を行っています。簡易水冷の場合はラジエーターとポンプ両方からの距離が15cm程度になるように設置しています。
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電源OFF時の騒音値は33~35dBです。目安として40dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになり、45dB前後で煩く感じます。50dBを超えてくるとヘッドホンをしていても煩く感じます。同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質にもよるので注意してください。

「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」のラジエーター冷却ファンとエアフローファンのファンノイズを個別に測定したところ次のようになりました。ENERMAX LIQTECH TR4 II 240はラジエーター冷却ファンを1200RPM前後に収まるようにすると静音動作で運用できると思います。
ENERMAX LIQTECH TR4 II 240_noise
上のグラフでは冷却ファンを付属品から「Noctua NF-A12x25 PWM」に換装したケースについてもファンノイズとファン回転数の関係を掲載していますが、「Noctua NF-A12x25 PWM」に交換すれば標準ファンと同じノイズレベルにおいて200PRM~400RPM程度高いファン回転数で運用でき、より高い冷却性能と静音性を実現できます。「Noctua NF-A12x25 PWM」は1台あたり3500円ほどと高価ですが、CPUクーラーのパフォーマンスを追及するのであれば、一押しの冷却ファンです。
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続いて「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」の冷却性能をチェックしていきます。
CPUクーラーの冷却性能を検証するためのストレステストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、Aviutl&x264を使って動画のエンコードを行います。動画エンコードの同時実行数については4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列実行、16コア以上は3~4並列実行としています。テスト中のファン回転数については一定値に固定します。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
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まず最初に第3世代Ryzen Threadripperの32コア64スレッドモデル「AMD Ryzen Threadripper 3970X」を定格動作として、ストレステスト中のCPU温度をチェックしていきます。
Ryzen Threadripper 3970Xを定格で運用するとCinebench R20のスコアは16700ほどとなります。またこの動作設定において上で紹介したストレステストを実行すると、システムの消費電力(概ねマイナス80WでCPUの消費電力)は360W前後に達します。
AMD Ryzen Threadripper 3970X_def_cinebench R20
AMD Ryzen Threadripper 3970X_def_power

「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」のファン回転数を1200RPMに固定してストレステストを実行したところ、「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」はRyzen Threadripper 3970XのCPU温度を最大75.5度、平均72.3度に収め、定格における理想的なコアクロックである全コア3.8GHz前後をキープできました。「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」の付属ファンの定格回転数は2300RPMなのでまだまだの余力を残しています。
ENERMAX LIQTECH TR4 II 240_temp_3970X_def


続いてAMD Ryzen Threadripper 3970Xを手動でオーバークロックした時の「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」の冷却性能について、ストレステスト中のCPU温度をチェックしていきます。
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」のOC設定としては、Precision Boost Overdriveを有効化して『PPT = 1000W、TDC = 490A、EDC = 630A』、また「CPUコア電圧:-100mV オフセット」に設定しています。
Ryzen Threadripper 3970Xをこの設定でPrecision Boost Overdriveによってクロックアップすると、Cinebench R20のスコアは17800ほどとなります。またこの動作設定において上で紹介したストレステストを実行すると、システムの消費電力(概ねマイナス80WでCPUの消費電力)は500W前後に達します。
AMD Ryzen Threadripper 3970X_PBO_cinebench R20
AMD Ryzen Threadripper 3970X_PBO_power

「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」のファン回転数を今回は1600RPMに上げました。Precision Boost Overdriveでは定格運用と同様に単コア最大ブーストクロックを有効にしつつ、電力制限を解除することで全コア負荷時の全コア最大動作クロックを引き上げることができますが、「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」で適切に冷やしてやることによって全コア4.0GHzへのクロックアップができました。
Ryzen ThreadripperのPBOによるクロックアップ(OC)では消費電力も400Wを超えてくるのでラジエーターやヒートシンクの放熱容量だけでなく、CPUヒートスプレッダと接するベースの熱交換性能のCPU温度に対する比重かなり大きくなってきます。
簡易水冷クーラーらしい放熱容量の高さや熱移動のスムーズさに、超大型ベースプレートによる優れた熱交換性能が組み合わさって、Ryzen Threadripper 39700XのPBOによる全コア4.0GHzに対しても「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」は余裕のある冷却性能を実現しています。
ENERMAX LIQTECH TR4 II 240_temp_3970X_PBO


なお、今回検証に使用した「AMD Ryzen Threadripper 3970X」など第3世代Ryzen ThreadripperはいずれもTDP280WのCPUとなっており、CPU消費電力が非常に高いのでマザーボードVRM電源回路への負荷も気になるところですが、主要4社のハイエンドモデルはもちろんのこと、ASRock TRX40 CreatorやASUS Prime TRX40-Proのような5万円台でTRX40の中で最安値クラスの製品であっても、簡易水冷CPUクーラーを組み合わせた環境においてVRM電源回路は標準装備のみで問題ありませんでした。
X399マザーボードでTDP250WのWXシリーズを使用する時、VRM電源に直接風の当たらない簡易水冷CPUクーラーではVRM電源の冷却に気を使う必要がありましたが、第3世代Ryzen Threadripper対応TRX40マザーボードではVRM電源の冷却に気を使う必要は基本的にありません。
TRX40-MB_FLIR_3970X_def

多くのTRX40マザーボードでは標準装備のみでVRM電源回路の冷却は十分ですが、VRM電源の冷却補助にスポットクーラーを増設するのであれば、マザーボードスペーサーのネジ穴を利用して固定できるフレキシブルファンアーム「サイズ 弥七」や、可変アルミニウム製ファンフレームでVRM電源を狙って設置が容易な「IN WIN MARS」がオススメです。
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ENERMAX LIQTECH TR4 II 240のレビューまとめ

最後にAMD Ryzen Threadripper専用かつ完全対応となる簡易水冷CPUクーラー「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240(ELC-LTTRTO240-TBP)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ
  • ThreadripperのIHSにも余裕のある73x63mmの超大型ベースプレートを採用
  • 240サイズのラジエーター採用なので放熱容量とPCケース互換性のバランスが良い
  • 32コアRyzen Threadripper 3970XのPBOによる全コア4.0GHzを運用可能な冷却性能
  • 水冷ヘッドにアドレッサブルLEDイルミネーションを搭載
  • 水冷ポンプ用ファン端子からの給電のみでLEDイルミネーションが点灯可能
  • 専用コントローラーやマザーボードのARGBヘッダーでライティング制御が可能
  • 水冷チューブはスリーブ付きで丈夫
  • チューブは太いが水冷ヘッド側の根本がストレートロータリーなので取り回しは良い
  • 水冷ブロックの固定はスプリング付きローレットナットでツールレス固定可能
  • 水冷チューブが水冷ブロック上面から直出しなのでメモリとの干渉フリー
  • 水冷ポンプの電源がM/Bファン端子と4PINペリフェラルの両方から取得可能
  • 付属ファン「T.B.Pressure 120mm Fan」は低速回転時も軸音が小さく高品質
  • ラジエーターグリルの側面にオリジナルプレートを装備
  • ラジエーターのファンマウントに防振ラバーパッドがある
  • 2年間の正規代理店保証
悪いところor注意点
  • ファン・ラジエーターの固定ネジの規格はM3.5
  • 初期ロットでは性能低下問題が発生する可能性あり
    20年2月に市場に出回っている最新ロットは解消済みとのこと

冷却性能の検証結果からもわかるように「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」は、最小で24コア、最大で64コアがラインナップされ、全モデルがTDP280Wで実際にCPU消費電力として280Wの発熱が生じる第3世代Ryzen Threadripperを定格で問題なく運用でき、さらには単コアブーストクロックを活かしながら、全コア最大ブーストクロックを引き上げるPrecision Boost Overdriveによる400~500Wクラスの負荷も冷やしきる非常に優れた冷却性能を備えています。
Ryzen Threadripper対応CPUクーラーというと、CPU本体に専用リテンションブラケットが付属することからAsetek OEM製品の認知度が高いようですが、CPUヒートスプレッドを完全に覆う超大型ベースプレートを採用して、より優れた冷却性能を実現し、かつPCケースとの互換性に優れた240サイズラジエーターを採用する「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」は第3世代Ryzen Threadripperで作る自作PCのお供として特にオススメなCPUクーラーです。

AMD Ryzen Threadripperのリテールボックスに付属するAsetek OEM簡易水冷CPUクーラー用リテンションブラケットと違って、ENERMAX LIQTECH TR4 IIではスタンドオフ&スプリング付きローレットナットによる2ステップの装着手順が採用され、ひと手間増えていますが、スタンドオフがそのまま水冷ブロックの位置合わせガイドとして働くのでネジ穴の位置に迷うことないため、実際に設置を行ってみるとENERMAX LIQTECH TR4 IIのほうが簡単に設置できました。

水冷ヘッドのデザインも光沢のある透明アクリル天板にENERMAXのメーカーロゴイルミネーションという万人受けしやすいシンプルなものが採用され、最新後継モデルとなるLIQTECH TR4 IIでは新たにアドレッサブルLEDイルミネーションも内蔵されています。
一方でラジエーターにはメーカーロゴの刻まれたオリジナルプレートが装着されており、付属の冷却ファン「T.B.Pressure 120mm Fan」と一体感のある工業製品的な重厚な雰囲気になっています。

「ENERMAX LIQTECH TR4 II」シリーズにはラジエーターサイズ別で240サイズと280サイズと360サイズの3種類が存在します。今回レビューしたELC-LTTRO240-TBPはELC-LTTRO280-TBPやELC-LTTRO360-TBPといった上位モデルよりもラジエーターが小さく、単純に冷却性能を比較すると当然劣りますが、代わりに、省スペースで設置し易く、第3世代Ryzen Threadripperの定格であるTDP280Wの発熱に問題なく対応できるので、汎用性の高さが魅力なモデルだと思います。

以上、「ENERMAX LIQTECH TR4 II 240」のレビューでした。
ENERMAX LIQTECH TR4 II 240


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補足:空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて

「空冷クーラー」と「水冷クーラー」の2種類ついて同じところと違うところ、また原理的に考えた冷却性能の比較を簡単に補足しておきます。





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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)



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