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28コア56スレッドながら倍率アンロックな「Intel Xeon W-3175X」のオーバークロックに対応するためHPTXサイズ上端を占有する32フェーズの超弩級VRM電源回路を搭載し、7基のx16サイズPCIEスロットによってパーソナルワークステーションにも対応できる拡張性を備えたC621チップセット搭載LGA3647マザーボード「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」をレビューしていきます。
製品公式ページ:https://www.gigabyte.com/Motherboard/C621-AORUS-XTREME-rev-10#kf
マニュアル:http://download.gigabyte.asia/FileList/Manual/mb_manual_c621-aorus-xtreme_1001_j.pdf
「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」は北米では2019年6月にいち早く販売が開始され、少し遅れて2019年7月からオリオスペックなどの一部PCパーツショップで受注販売が開始されました。自作PCエンスージアスト向けの製品かと思いきや、同製品の国内正規代理店 旭エレクトロニクスによると、法人系ユーザーからの問い合わせもあったそうな。
GIGABYTE C621 AORUS XTREME レビュー目次
1.GIGABYTE C621 AORUS XTREMEの外観・付属品
2.GIGABYTE C621 AORUS XTREMEの基板上コンポーネント詳細
3.GIGABYTE C621 AORUS XTREMEの検証機材
4.GIGABYTE C621 AORUS XTREMEのBIOSについて
5.多機能かつ使いやすいファンコン機能「スマートFan 5」について
6.GIGABYTE C621 AORUS XTREMEのOC設定について
7.GIGABYTE C621 AORUS XTREMEの動作検証・OC耐性
8.GIGABYTE C621 AORUS XTREMEのレビューまとめ
【注意事項】
同検証は20年1月上旬に行っておりGIGABYTE C621 AORUS XTREMEのBIOSはF3dを使用しています。最新BIOSでは修正されている不具合や追加されている機能もあると思うので、最新BIOSのリリースについては公式ページを各自でチェックしてください。
サポート:https://www.gigabyte.com/Motherboard/C621-AORUS-XTREME-rev-10/support#support-dl-bios
【20年1月18日:初稿】
レビュー記事初稿を公開、BIOS:F3dで検証
GIGABYTE製マザーボードは簡単な内容なら日本語でメーカーへ直接問い合わせが可能
GIGABYTE製マザーボードについてはGIGABYTEの公式サポートページにおいてアカウント登録が必要ですが、意外なことに日本語による問い合わせに対応しています。問い合わせページのインターフェースの言語は英語なので英語で行けるところは英語で入力するほうがいいと思いますが、長文を書く必要がある問い合わせの本文では日本語で書いてもしっかり対応してもらえました。ハードウェア的な故障等のサポート(交換や修理)は代理店を介する必要がありますが、同社専用ソフトウェアの不具合や最新バージョンの問い合わせなど簡単な内容であれば、メーカー窓口に直接問い合わせができるのでレスポンスの面でメリットがあります。
サポートページ:http://esupport.gigabyte.com/Login/Index?ReturnUrl=%2f
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEの外観・付属品
まず最初にGIGABYTE C621 AORUS XTREMEの外観と付属品をチェックしていきます。GIGABYTE C621 AORUS XTREMEのパッケージはマザーボードの箱としては独特な上開き化粧箱になっていました。開閉しやすく高級感もあります。
パッケージを開くと上段にスポンジクッションのスペーサーに収められた各種付属品が現れます。下段には静電防止ビニールに包まれ、同じくスポンジクッションのスペーサーで保護されたマザーボード本体が収められています。
マニュアルなど冊子類が一通り揃っています。ファングッズとしてはAORUSロゴバッジが付属します。
注目ポイントとして「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」のドライバはCDではなく専用のUSBメモリに収録されていました。光学ドライブを搭載しない環境も増えているので嬉しい配慮です。その他のマザーボード製品でもドライバはUSBメモリに移行して欲しいところ。
組み立てに関連する付属品としては、リアI/Oシールド、SATAケーブル4本、RGB対応汎用4PIN LEDテープ接続ケーブル×1、アドレッサブルRGB LED変換ケーブル×2、サーモセンサー2本、G-Connector、ケーブルタイです。
付属する4本のSATAケーブルについては一般的なビニール被膜タイプではなく、スリーブ化された高級感のあるSATAケーブルが6本付属しています。
「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」はGIGABYTE RGB Fusionによるライティング制御に対応したLEDヘッダーの延長ケーブルとしてRGB対応汎用4PIN LEDヘッダー用とアドレッサブルRGB対応VG-D型汎用3PIN LEDヘッダー用の2種類が付属します。アドレッサブルRGB用ケーブルはマザーボード上に実装されたVD-G型3PINヘッダーをロック付き3PINコネクタに変換するケーブルになっています。
「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」にはフロントパネルコネクタをひとまとめにしてマザーボードに接続しやすくする独自パーツ「G-Connector」が付属します。今回は検証用スイッチ&LEDで試してみましたが次のように「G-Connector」へ各種コネクタを装着します。あとはこのまま「G-Connector」をマザーボードのフロントパネルヘッダーに挿せばOKという非常に便利な独自機能です。
マザーボード全体像は次のようになっています。
「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」は、近年では非常に珍しいHPTXフォームファクタに分類されるマザーボードとなっており、一般的なATXフォームファクタが縦305mm×横244mmに対して、縦386mm×横359mmと非常に巨大です。ちなみに上端がネジ穴の位置よりも20mm弱はみ出していることからわかるようにHPTXの規格よりも実際はさらに大きくなっています。
一般的なATXサイズのマザーボードを横に並べて比べると、ATXが横幅の小さいMicro-ATXに見えるという圧倒的な大きさなのが分かります。
Intel Xeon W-3175Xに対応するマザーボードとしてASUSから発売された「ASUS ROG Dominus Extreme」がATX互換+αなネジ穴に対して、「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」はATXのネジ穴とは互換性のないHPTX規格のネジ穴を採用しています。「ASUS ROG Dominus Extreme」がPCケースに収まれば一般的なATX対応PCケースにも設置できるのに対して、「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」はネジ穴的に搭載可能なPCケースの選択肢はかなり狭いので注意が必要です。
CPUソケットとメモリスロットとPCIEスロット以外を全て覆うように装着された黒一色のアルミニウム製ヒートシンクは圧倒的な重厚感です。
マザーボード下側は最近のAORUS XTREMEシリーズ同様に黒を基調にしたデザインとなっており、鏡面の斜めライン上にはAORUSブランドのキャッチフレーズ「TEAM UP, FIGHT ON」が刻印されており、三角形のヘアラインアルミニウムプレートには、「AORUS」を示す「Speed(素早さ)」「Power(力強さ)」「Accuracy(精密さ)」を表現したという”鷹(ファルコン)”をモチーフにしたアイコンロゴが素地に溶け込む感じで控えめに描かれています。
「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」のリアI/OカバーやVRM電源ヒートシンクもまた黒一色のデザインになっています。リアI/Oカバーに同製品のブランドネーム「AORUS」が刻印された鏡面プレートが装着されている以外は飾り気のないデザインですが、上端を占有するVRM電源に装着された超大型VRM電源クーラーはとにかく目を引きます。
「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」には28コア56スレッドながら倍率アンロックな「Intel Xeon W-3175X」のオーバークロックに対応するため、計32フェーズという超特盛りなVRM電源が実装されています。1フェーズ当たり50Aを供給可能なDr. MOSで構成されており、最大1600Aの電力供給に対応します。
28コア56スレッドながら倍率アンロックな「Intel Xeon W-3175X」へ安定した大電力供給が行えるように「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」のEPS端子は8PIN×4が実装されています。EPS電源コネクタに装着された金属アーマーはコネクタの補強とともに熱拡散も補助します。
「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」はATX 24PINコネクタも2基実装されており、2基の電源ユニットによる電力供給に対応しています。電源ユニット1台でも運用は可能です。
「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」のリアI/Oには2基のUSB3.0端子と4基のUSB2.0端子が搭載されています。リアI/Oに標準搭載されたUSB端子はかなり少なめです。ネットワーク関連では低CPU負荷かつ高スループットで定評のあるIntel純正のLANコントローラーが採用された有線LAN端子が2基搭載されています。
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEの基板上コンポーネント詳細
続いて「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。LGA3647ソケットではCPUクーラー固定ネジ穴の規格としてSquare ILMとNarrow ILMの2種類がありますが、「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」はNarrow ILMが採用されています。
Xeon W-3175XなどLGA3647対応CPUは6チャンネルのメモリ接続に対応しているので、「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」ではCPUソケットの左右に6基ずつで計12基のDDR4メモリスロットが実装されています。
ECC RegisteredやECC Un-bufferedのDDR4メモリにも対応し、公式にサポートが公表されているメモリ容量は16GB×12=192GBです。
メモリを着脱するラッチは両側ラッチが採用されています。またDDR4メモリスロットには外部ノイズEMIから保護して安定したメモリOC環境を実現し、またメモリモジュールの挿抜によるPCB基板の歪みや破損を防止する金属シールド「Ultra Durable Memory Armor」が実装されています。
グラフィックボードなどを設置するPCIEスロットは全10段で上から[N/A、N/A、N/A、x16、x16、x16、x16、x16、x16、x16]サイズのスロットが設置されています。
実際のPCIEレーン帯域について、4段目は5段目と帯域共有、8段目は9段目と帯域共有となっておりそれぞれ[x16, N/A]もしくは[x8, x8]で使用できます。6段目と10段目はCPU直結のPCIE3.0x8で使用でき、7段目はOCH経由のPCIE3.0x4で使用できて、排他利用はありません。
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEには最近のトレンドとしてx16サイズスロット全てにPCIEスロット補強用メタルアーマー「Ultra Durable PCIe Armor」とPCIEスロット左右端の固定を補強するGIGABYTE特許取得済「Double Locking Bracket」による2重の保護が施されています。1Kgを超える重量級グラボの重さに耐えるためのこれらの対策により垂直方向に3.2倍、水平方向に1.7倍と両方向の負荷に対する強度は大幅に向上しています。
マザーボード右端下側にはグラフィックボードなどPCIEスロットに設置した拡張カードへ安定した電力供給を行うための追加電源としてマザーボードと平行にPCIE補助電源6PINコネクタ×2のオプション電源端子が用意されています。オプション扱いですがマルチGPU構成で組む場合は接続したほうがよさそうです。
SATAストレージ用の端子はマザーボード右下に8基搭載されています。右寄り8基のSATA3_0~7はいずれもIntel C621チップセットのコントローラーによる接続で、RAID0/1/5/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。オレンジ色のSATA端子は傍にある白色の電源端子と組み合わせることでワークステーション等で使用されるSATA DOMに対応します。
「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」には高速NVMe(PCIE3.0x4)接続規格に対応したM.2スロットは搭載されていませんが代わりに、U.2ポートが1基実装されています。
「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」はC621チップセットを搭載したマザーボードですが、X299チップセットと同じくDMI 3.0でCPUとチップセットが接続されています。この帯域が非公式ながらNVMe M.2 SSDの接続規格であるPCIE3.0x4とほぼ同じ帯域です。
X299チップセット搭載マザーボードのM.2スロットのうちチップセットを経由して接続されているストレージへ個別にアクセスがある場合は最新の3.0GB/s越えの高速SSDでもフルスペック動作が可能になっていますが、この帯域がボトルネックになるため複数のM.2スロットで一度にアクセスが発生すると合計で4GB/s程度がボトルネックになります。現状ではランダム性能への影響は軽微で主にシーケンシャル性能に制限がかかります。
またIntel X299プラットフォームでは新たに「Intel VROC(Virtual RAID on CPU)」という仮想RAID機能がサポートされておりCPU直結PCIEレーンに接続されたNVMe SSDでもハードウェアRAIDが構築可能になっています。ただし複数ストレージを単一ストレージとして使用してリード・ライト速度を向上させるRAID 0についてはX299マザーボードで標準サポートとなっておりそのまま使用可能ですが、冗長性を確保するためのRAID 1を利用するためには「Standard Key」、RAID 1やRAID 5を利用するためには「Premium Key」という物理キーを購入してマザーボード上の端子に装着する必要があります。
M.2スロットのPCIEレーンがどこに繋がっているかで簡単に次のようなメリットとデメリットがあります。
複数のM.2 SSDを同時にフルアクセスさせたい場合は、PCIE→M.2アダプタを使用するなどしてCPU直結のM.2スロットを用意し、マザーボード備え付けのM.2スロットと組み合わせるなど工夫が必要です。
CPU直結の場合 | チップセット接続の場合 | |
長所 | 複数のM.2 SSD(PCH側*1含む)の 同時アクセスでもフルスペック動作 |
IRSTによるハードウェアRAIDで 性能を上げることができる |
短所 | IRSTによるハードウェアRAID が構築できない (Intel製SSDではVROCで ソフトウェアRAIDが構築可能) |
複数のM.2 SSDから同時にアクセス がある場合、ストライプRAIDの場合 4GB/s程度がボトルネックになる |
マザーボード右端には内部USB3.0ヘッダーと、通常のType-A型のUSB3.0端子が搭載されています。
マザーボード右下には1基のUSB2.0内部ヘッダーが実装されています。CorsairLinkやNZXT CAM対応製品などUSB2.0内部ヘッダーを使用する機器も増えていますが、GIGABYTE C621 AORUS XTREMEにはUSB2.0内部ヘッダーが1基しかないので、不足する場合はUSB2.0ヘッダー増設ハブの「NZXT INTERNAL USB HUB」や「Thermaltake H200 PLUS」がおすすめです。
「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」はパーソナルワークステーション向け製品ですが、ゲーミングブランドAORUSの名を冠するだけあって、GIGABYTE独自の高音質オンボードサウンド機能が採用されています。SN比120dBで圧倒的なオーディオ再生能力を誇り、フロント/リアのマイク入力のSN比が110dB/114dBに改善された「ALC1220-VB 120dB SNR HD オーディオ」を搭載しています。自動でヘッドホンのインピーダンスを検出して最適な出力を可能にする「Smart Headphone Amp」機能などもあり、サウンドボードや外部DAC要らずな高音質オンボードサウンドが実現されています。
冷却ファンや簡易水冷クーラーのポンプの接続用の端子は計7基あります。これだけあればマルチファンラジエーターを複数積んだハイエンド水冷構成を組んでもマザーボードのファン端子で運用可能です。「PUMP」の添え字の付いたファン端子は最大24W(12V、2A)の出力にも対応しているので本格水冷向けのD5やDDCポンプの電源としても使用できます。
加えて「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」には、本格水冷PCユーザーには嬉しい外部温度センサーの接続端子が2基設置されています。GIGABYTEのファンコントロール機能は外部センサーをソースにした水温依存のファンコントロールが可能なので水冷ユーザーにお勧めです。
「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」のファンコン機能Smart Fan5では外部温度センサー2基に加えてマザーボード上備え付けの温度センサー7基で計9基の温度センサーから自由にソース温度を選択して7基のファン端子を制御できます。
マザーボード上にはOCerのみならず一般自作erにとっても組み立て中の動作確認に便利なスタートスイッチ&リセットスイッチ、POSTエラーのチェックができるDebug LEDが実装されています。
「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」にはCMOSクリアのためのオンボードボタンは実装されておらず、マザーボード右下のジャンパーピンを使用してCMOSクリアを行います。ケーブルの長い2PINスイッチをあらかじめ装着しておいた方がよさそうです。
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEにはGIGABYTE特許取得済みの「デュアルBIOS」機能が採用されており、OC設定によってメインBIOS(M_BIOS)のデータが破損してもバックアップBIOS(B_BIOS)によってメインBIOSの復旧や重要データのバックアップが可能になります。BIOSの切り替えはマザーボード下に設置されたスライドスイッチによって行います。BIOSの修復方法については下の記事を参考にしてください。
・GIGABYTEのDual BIOS対応マザーボードで破損したBIOSを修復する方法
「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」にはマザーボード左下にTHB-C端子があるので、同社のThunderbolt3拡張ボード「GIGABYTE GC-TITAN RIDGE」を使用することでThunderbolt3端子が増設可能です。
GIGABYTE GC-TITAN RIDGE Thunderbolt3拡張カード
<TSUKUMO><PCショップアーク><ドスパラ>
<パソコン工房><ソフマップ>
GIGABYTE
Amazon.co.jp で詳細情報を見る <米尼><TSUKUMO><PCショップアーク><ドスパラ>
<パソコン工房><ソフマップ>
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEの検証機材
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEを使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。GIGABYTE C621 AORUS XTREME以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Xeon W-3175X 28コア56スレッド (レビュー) |
CPUクーラー | Noctua NH-U14S DX-3647 (レビュー) |
メインメモリ | Corsair Dominator Platinum RGB DDR4 8GB*6=48GB (レビュー) 3600MHz, CL16-16-16-36-CR2 |
CPUベンチ用 ビデオカード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) Corsair HX1000i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
今回、検証機材CPUクーラーにはLGA3647専用空冷CPUクーラーの中でも最高の冷却性能を誇る「Noctua NH-U14S DX-3647」を使用しています。「Noctua NH-U14S DX-3647」の冷却性能やクリアランスについては詳細レビューを公開しているので詳しくはこちらを参考にしてください。
・「Noctua NH-U14S DX-3647」をレビュー
クリアランス回りについて簡単に紹介しておくと、メモリ互換性については冷却ファンはCPUソケット左右の最も近いメモリスロットに被さります。また後方にファンを増設する時にファンノイズを低減させるための厚手のラバーパッドを使用すると2つ目のメモリスロットにも被さります。
注意点として「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」においてNoctua NH-U14S DX-3647を使用するとヒートシンクが被さってしまうため最上段のPCIEスロットが使用できなくなります。どうしても1段目を使用したい場合は、ライザーケーブル等で延長してやる必要があります。
最上段のPCIEスロットが排他利用になるのは問題があるという場合は、冷却性能は若干さがりますが、それでもTDP255WのIntel Xeon W-3175Xを十分に冷やせて、基本的に全てのIntel Xeonスケーラブルプロセッサーに対応可能な「Noctua NH-U12S DX-3647」がオススメです。
・「Noctua NH-U12S DX-3647」をレビュー
360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーターの簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。「Noctua NF-A12x25 PWM」は、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファンとなっており、1基あたり3500円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
・「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する18年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、Ryzen Threadripperのようなエンスー環境のシステムストレージ用に一押しのSSDです。
・「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
ただしIntel Xeon W-3175XなどLGA3647系CPUはCPUヒートスプレッダのサイズが大きいので、同じくCPUヒートスプレッダが大きいAMD Ryzen Threadripperのグリスの塗り方としてNoctuaが推奨している方式を真似て、今回はグリスを塗りました。
サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
・「Thermal Grizzly Carbonaut」はRyzen TR 3970Xを冷やせるか!?
以上で検証機材のセットアップが完了となります。
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEのBIOSについて
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEを使用した検証機の構築も完了したので、動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。(OSから日付調整する前にスクショを取っている場合、日付がおかしいですが無視してください。また内容的に差異のないものは過去の同社製マザーボードのBIOSスクリーンショットを流用しています。)
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEのBIOSに最初にアクセスするとクラシックモードという従来通りの文字ベースBIOSメニューが表示されました。トップに表示されるシステムタブのシステム言語から日本語を選択可能です。
GIGABYTE製マザーボードのBIOSの翻訳は一部誤訳もあるものの比較的まともなので日本語UIとしては使いやすいのですが、フォントサイズの調整が微妙で見切れたりするところが玉に瑕です。トップメニューのタブは左右カーソルキーで簡単に移動できます。「左alt」キーを押すかマウスオーバーで右下にメニューとポップアップヒントが表示されています。
一応、流行に合わせてグラフィカルUIのイージーモードも用意されており、右下メニューや「F2」キーでイージーモードを表示できます。パッと見の見栄えは良いのですが詳細設定ができないのでクラシックモードの利用がおすすめです。
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEのBIOSにおいて設定の保存とBIOSからの退出はトップメニュータブ最右端の「保存して終了(save and exit)」から行えます。特定のブートデバイスを指定してBIOSから退出するBoot Override機能もあります。
「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」については4月末現在、最新BIOSとして正式版のF2とベータ版のF3dが配布されています。
BIOSのアップデート方法は、まず下から最新のBIOSファイルをダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
サポート:https://www.gigabyte.com/Motherboard/C621-AORUS-XTREME-rev-10/support#support-dl-bios
USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、「alt」キーかマウスオーバーでクラシックモード右下に表示される「Q-FLASH」を選択する、もしくは「F8」のショートカットキーでQ-FLASHを起動します。
Update BIOSを選択し、接続したUSBメモリからアップデートファイルを選択します。
ブートとOSインストール周りについて紹介します。
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEのブート回りは下画像のようにトップメニュータブの「BIOSの機能(BIOS)」の中で非常に簡潔にまとめられており初心者でも迷うことはないと思います。OSのインストールも「起動オプション #1」に「UEFI 〇〇」というOSインストールメディアを設定して保存&退出でOKです。
GIGABYTEのBIOSではブートデバイスの指定が可能なので起動オプションで設定せずに、「保存して終了(save and exit)」のタブメニューから「UEFI 〇〇」というOSインストールメディアを選択してもOKです。
ちなみにWindows10の製品パッケージに付属するUSBメモリではUEFIで認識できないトラブルが発生することがあるようなのでそういうときはこちらの記事に従ってMS公式ツールを使用して適当なUSBメモリでOSインストールメディアを作成すると上手くいきます。
BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、GIGABYTE C621 AORUS XTREMEのBIOS機能で管理人が気になったものをいくつかチェックしていきます。
「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」の各種I/Oの設定については「周辺機器(Peripherals)」のページにまとめられています。
「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」はCPU直結PCIEレーンとして48レーンを使用できるのが特徴の1つですが、PCIE3.0x16やPCIE3.0x8の帯域で接続できるPCIEスロットで総帯域を複数のPCIE3.0x4に分割する機能には対応していませんでした。
市販されている「ASUS HYPER M.2 X16 CARD」や「ASRock Hyper Quad M.2 Card」など帯域分割で複数のM.2スロットを増設できる拡張ボードを使用したいユーザーも多いはずなので、可能であれば今後のBIOSアップデートで対応して欲しいところ。
多機能かつ使いやすいファンコン機能「スマートFan 5」について
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEなどGIGABYTE製マザーボードに採用されるファンコントロール機能「スマートFan 5」が外部温度センサー対応など多機能かつ、ユーザービリティーにも優れたUIでかなり使いやすいので詳しくチェックしていきます。ちなみに「スマートFan 5」はWindows OS上の専用アプリからも設定が可能ですが、BIOSからも専用アプリと同様にフルコントロール可能なので、一度設定したら頻繁に弄るものでもありませんし、余計なものを入れるよりもBIOS上からの操作に慣れておく方がおすすめです。
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEのファンコントロール機能「スマートFan 5」には、「alt」キーでクラシックモード右下に表示される「スマートFan 5」を選択するか、「M.I.T.」タブの「スマートFan 5」を選択することでアクセスできます。
「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」のファンコントロール機能は下のスクリーンショットのようにグラフィカルUIによる設定のみで一部他社製品のようなコンソールで値を打ち込むようなメニューは存在しません。グラフィカルUIでマウスを使って簡単にできる機能なのですが、マウスレスでも全て設定可能となっており、ASUSやASRockのBIOSのような直打ちUIが好きな管理人でも使いやすいと感じる良いファンコンでした。
同ファンコントロール機能でユーザーが主に触る部分は下のスクリーンショットで囲った、「設定を行うファン端子」「速度設定プリセットの選択」「手動設定時のファンカーブ」「ファンカーブの温度ソース」「設定の適用」の5つになると思います。
左上「Monitor」と表示されたすぐ横にあるプルダウンメニューからはファンコン設定を行うファン端子を選択可能で、選択したファン端子について、その下に位置する各設定項目を変更できます。選択したファン端子について「〇〇ファン速度制御」の項目から、「通常」「静音」「フルスピード((定格)」の3つのプリセットに加えて、ユーザーが各自でファンカーブをカスタマイズできる「手動」の4種類を選択できます。
また選択しているファン端子の操作を行う温度ソースは「Fan Control Use Temperature input」から選択可能になっており、マザーボード備え付けの7つの温度センサーに加えて、増設可能な2つの温度センサーで計9個の温度センサーを温度ソースに指定できます。ただしCPUファンについてはCPU温度ソース固定となります。水温センサーを外部温度センサー端子に接続すれば水温ソースにしたラジエーターファンのファンコンにも対応可能なので水冷PC用のマザーボードとしても最適なファンコン機能です。
「〇〇ファン速度制御」の項目で「手動:を選択した場合はファンカーブのグラフにおいて、ファンストップ温度と、フルスピード温度に加えて、グラフ内で任意の4点についてファンカーブを設定できます。「Monitor」と「〇〇ファン速度制御」の項目間で上下カーソルキーを使うことで各ファンカーブ頂点を指定することができます。注目ポイントとしては「Shift」キーとカーソルキーの同時押しによってマウスレスでファンカーブの頂点を格子上で移動可能となっており、直打ち派の管理人も唸る非常に設定しやすいグラフィカルUIでした。
また「0」と書かれたファンカーブの頂点はファンストップ温度となっており、指定した温度ソースがファンストップ温度以下の場合、設定を行ったファン端子に接続されたファンを停止させる、所謂セミファンレス機能が使用できます。試しに止めてみました。
「Monitor」からは特定のファン端子を選択するので選択したファン端子1つだけについて設定を適用することも可能なのですが、設定の適用を行う「Apply to」のボタンをクリックするとマザーボードに設置されたファン端子が全て列挙され、ファン端子名の左にあるチェックボックスのチェックを入れるもしくは外すことで、現在設定を行っているファン端子と同じ設定を他のファン端子にも一斉に適用することが可能です。ファン設定の同期適用機能があるというのはユーザービリティーに優れ非常に好印象です。
その他にも急激な温度変化へファンコンが過敏に反応しないようファン速度変化に1~3秒の猶予を設ける「Temperature Interval」、ファン操作モードを「DC/PWM/自動検出」から設定する「〇〇ファン Control Mode」などのファンコン設定項目があります。ソース温度が一定以下の時にファンを停止させる「〇〇ファン Stop」機能も用意されており、ファン操作モードがPWMの場合でも手動設定時のセミファンレス機能を問題なく使用できました。(ASUSマザボではDCモードのみだった気がします。)
またマザーボードにブザーユニットが接続されている場合は、特定温度ソースが一定温度を超えた場合にエラーを知らせる「Temperature Warning」や接続されているファンに不具合が発生した(回転数の検出ができない)場合に警告を行う「〇〇ファン異常警告」といった設定も可能です。
欲を言えば数値直打ちのコンソール型UIもあると嬉しいとか個人的な要望はあるものの、マザーボードのファンコントロール機能としては同じく外部温度センサーソースに対応したASUSの「Q-Fan control」以上に多機能です。
「Smartファン5」はWindows OS上のインフォメーションソフト「System Information Viewer」に統合されており同アプリ上から、BIOSと同じくファンコントロールが可能です。(System Information Viewerの利用にはAPP Centerのインストールも必要になります。)
上で紹介したBIOS上のファンコントロール同様に、個別のファンについてファンカーブの設定、セミファンレス機能のON/OFF、ヒステリシス間隔の変更など詳細なファンコントロール設定が可能です。
上のメニューで左にあるケースアイコンをクリックするとPCケース内におけるファンの設置位置やファンコンのソース温度を設定するメニューが表示されます。
その他にも温度やファン回転数などのハードウェアモニタリングやモニタリング値によるアラーム機能、モニタリング値のログ機能なども用意されていました。
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEなどGIGABYTE製マザーボードに採用されるファンコントロール機能「Smartファン5」はおそらく一般ユーザーにとっては最も使いやすく機能の優れたファンコントロールだと思います。
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEのOC設定について
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEを使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEではオーバークロック関連の設定項目はトップメニュータブ「M.I.T.」の「高度な周波数設定」「高度なメモリ設定」「高度な電圧設定」に各種設定がまとめられています。ちなみに設定値を直接入力する項目でデフォルトの「Auto」に戻す場合は「a」キーを入力すればOKです。
CPUコアクロック(コア倍率)の変更について説明します。
コアクロックはコア数に対して各コアに最大動作クロック(BCLKに対する倍率)を指定できます。「コア0:コア1:コア2:コア3」を倍率として、例えば「45:43:43:42」のようにバラバラに指定した場合、4つのコアのうち1つに負荷が掛かる場合は4コアのうち1つが45倍動作、2つと3つの場合は43、4つの場合は42となります。
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEのコアクロックのOC設定方法はベースクロック(BCLK):100MHzに対する倍率指定となっており1倍単位でCPUコアクロックの倍率を設定できます。「CPU クロック倍率:40」と設定することでデフォルトのベースクロック100MHzの40倍、4.0GHzで全コアが動作します。
負荷がかかっているコア数に対して最大動作倍率を設定する「By Core Usage」モードは、「高度なCPUコア設定」のサブページ内にある「ターボ倍率(〇コアアクティブ)」から設定できます。なお各コアに対して動作倍率とコア電圧を個別設定する「By Specific Core」モードはBIOS上に設定が用意されていませんでした。
なお「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」はAVXの拡張命令を実行する時にコアクロックの動作倍率を下げるAVX Offsetが自動設定の場合、OC設定に伴って同機能が勝手に有効化される可能性があります。動画のエンコード等でもAVXは実行されるので、OC設定を適用しても負荷時にコアクロックが下がる場合は明示的に「0」を入力してAVX Offsetを無効化してください。なお数値入力ではなく+/-キーで操作します。
「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」ではベースクロックの調整にも対応しており、CPUクロック倍率の上にある「CPUベースクロック」の項目で変更可能です。100~300MHzの範囲内で0.01MHz刻みで設定できます。
キャッシュ(メッシュ)動作倍率はCPUコア動作倍率とは別項目になっており、「CLR (MESH)の倍率」から最大動作倍率を変更可能です。CPUコアクロック同様にベースクロックに対する動作倍率でメッシュの動作周波数は決まります。
続いてコア電圧の調整を行います。
トップメニュータブ「M.I.T.」の「高度な電圧設定(Advanced Voltage Settings)」を開くと「高度な電力設定(Advanced Power Settings)」「CPUコア電圧設定(CPU Core Voltage Control)」「チップセット電圧設定(Chipset Voltage Control)」「メモリ電圧設定(DRAM Voltage Control)」の4つの項目が表示されます。
電圧設定の予備知識としてIntel 第9世代Core-X CPUと同様に、Intel Xeon W-3175XやIntel Xeonスケーラブルプロセッサーでは統合電圧レギュレータ(FIVR)がCPU上に実装されており、マザーボードのVRMから供給されるCPU全体への電圧を源泉にして、CPU各コアやメッシュなど個別のユニットに対して異なる電圧レールで電力が供給されます。
CPUコア/キャッシュクロックに関連する電圧設定は主に「CPUコア電圧設定(CPU Core Voltage Control)」から行います。
CPU全体への電圧「CPU VRIN External Override」(1.800~1.900V程度)とCPUコアへの電圧「CPU Vコア」(1.000~1.300V程度)は似た名前で別の設定項目として用意されているので電圧設定を行う際は間違えないように注意して下さい
CPUコアクロックのOCに関連する電圧のOC設定として、GIGABYTE C621 AORUS XTREMEではCPUコア電圧(BIOS上ではCPU Core voltageもしくはCPU Vコアと表記されています)の項目を変更します。GIGABYTE C621 AORUS XTREMEではマニュアルの設定値を指定して入力する固定モードが使用でき、CPUコア電圧は0.001V刻みでコア電圧の設定が可能です。
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEでコア電圧のオフセット設定を行う方法は少し分かり難いのですが、CPU Vコアの項目をNormalにすると、ダイナミックVコア(Dynamic Voltage)の項目のグレーアウトが解除されて、オフセット値を指定できるようになります。
CPUコア電圧モードについて簡単に説明すると、オフセットモードやアダプティブモードはCPU負荷に比例して電圧が設定されており、低負荷時は電圧が下がるので省電力に優れるのですが、OCをする場合はマザーボードによって挙動に差があり安定する設定を見極めるのが難しいので、個人的にはオフセットやアダプティブは定格向け、OCには固定値適用の固定モードを推奨しています。
仮にOCでオフセットやアダプティブを使う場合も最初はコアクロックに対して安定する電圧を見極める必要があるので、まずは固定モードを使用します。
ちなみにマザーボードにより対応しているモードは異なりますが、CPUのオーバークロックに付随するコア電圧のモードの概略図は次のようになっています。
CPUのキャッシュクロックをOCする場合は、CPUコア電圧とは別に「CPU RING 電圧(CPU RING Voltage)」の項目を設定します。CPUキャッシュ電圧を盛るとCPUコア電圧とは独立に発熱が増える(CPU温度が上がる)ので注意してください。CPUキャッシュ電圧もCPUコア電圧同様にマニュアルとオフセットで設定が可能です。
CPUキャッシュ電圧の目安としては定格メッシュ周波数の2400MHzでは0.900V程度、3200MHzまでOCすると1.200V程度が要求されます。
またコアクロックを高く設定する時に追加で変更するといい電圧設定項目として「高度な電圧設定(Advanced Voltage Settings)」にある「CPU Vcoreロードラインキャリブレーション」が挙げられます。この設定を変更することでCPU負荷時の電圧降下を補正してOCを安定させることが可能です。補正を強くするほどOCの安定性は増しますがCPUやVRM電源部分の発熱も大きくなるので真ん中あたりを最初に使っておいて、ストレステストのCPU温度をチェックしながらモードを上げていくのがおすすめです。
「CPU VRINロードラインキャリブレーション」の設定方法については、キーボードにテンキーがある場合は「+/-」キーで設定内容を「Standard」~「Ultra Extreme」で変更できます。また数字キーの1~7が「Standard」「Low」「Medium」「High」「Turbo」「Extreme」「Ultra Extreme」に割り当てられており、その他の入力を行うと「Auto」に戻ります。
「Normal」や「Standard」の動作がよくわかりませんが、「Low」~「Ultra Extreme」は補正の強さをそのまま示しているので、High辺りから使っていけばいいと思います。
また「高度なCPUコア設定」のサブページ内には「瞬間許容電力制限値(Short Duration Power Limit / パワーリミット2)」「許容電力上限値(Long Duration Power Limit / パワーリミット1)」という2つの電力制限機能があり、電力制限がかかる閾値(単位はW)と電力制限がかかるまでの時間を設定できます。
電力制限がかかるとその指定電力内に収まるようにコアクロックに制限がかかります。デフォルトの状態では「Auto」になっていますが、GIGABYTE C621 AORUS XTREMEでは手動でコアクロックのOCを行った場合はパワーリミットが掛からないように勝手に設定してくれるので放置でも問題ありません。基本的に一定消費電力以内に収めるための省電力機能(+若干のシステム保護機能)と考えてください。
メモリのオーバークロックについても簡単に紹介しておきます。
メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。
メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありませんが、「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」では正常にPOSTできないメモリOC設定でエラーが出た場合は数回再起動した後、自動で2133MHzのような緩い設定で起動してくれるのでメモリOCを安心して行えます。
「M.I.T.」の「高度なメモリ設定」を開くとメモリOCに関する各種設定項目が表示されます。
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEではXMPの項目から「無効(自動/手動設定)」と「XMP」の2種類のモードが選択できます。
「エクストリーム・メモリ・プロファイル(XMP)」を選択して表示されるポップアップからプロファイルを選択すればOCプロファイルによるメモリのオーバークロックが可能です。XMPによるメモリOCではメーカーが動作確認を行ったOCプロファイルを適用するだけなので、簡単にメモリをオーバークロックができます。
「XMP設定」の設定値が無効になっている場合は、使用するメモリにSPD情報として収録されている動作クロック2133~2666MHzなどのメモリ周波数およびタイミングによる定格動作となります。
手動でメモリ周波数を設定する場合、GIGABYTE C621 AORUS XTREMEではメモリクロックの設定方法も少々独特で、1333MHz(13.33倍)から4200MHz(42.00倍)まで選択可能ですが、プルダウンメニューによる選択ではなく、メモリ周波数の直打ち(補正あり)か、テンキーの「+/-」キーによる設定値変更で選択する形式になっています。
メモリ周波数もBCLKに対する倍率で動作周波数が決まっているので、BCLKを標準値の100MHzから120MHzに上げると、40倍設定時の動作周波数は4000MHzから5040MHzに上がります。
メモリのタイミング設定についてはチャンネルごとに分けられていますが、一番上の「チャンネルAサブタイミング」を開いて、「DRAMタイミングモード」を「手動」に設定することでメモリタイミングの個別打ち込み設定も可能であり、残りのチャンネルも同じ設定で同期されます。
メモリタイミングを手動で設定する場合は基本的には「CAS Latency」、「RAS to CAS (tRCD)」、「RAS Precharge (tRP)」、「RAS Active Time (tRAS)」の主要な4タイミングと、加えて「tRFC」と「Command Rate:1 or 2」の6つ以外はAutoのままでいいと思います。
DDR4メモリについてメモリ周波数を3000MHz以上にOCする場合はDRAM電圧を1.300~1.350V、3800MHz以上にOCする場合はDRAM電圧を1.370~1.400Vに上げる必要があります。メモリをOCする場合は最初から1.350V以上にDRAM電圧を盛っておくのがおすすめです。
今のところGIGABYTE C621 AORUS XTREME環境では不具合を確認できていませんでしたが、メモリのオーバークロックでPCIE拡張カードの検出不可やオンボードUSB端子の干渉などが発生する場合は「電圧設定」にある「VCCSA(CPU SA Voltage)」や「VCCIO(CPU IO Voltage)」や「チップセット電圧(PCH Voltage)」を盛ると安定するかもしれません。
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEのOC設定についてはベースクロックBCLKの変更もできるので高度なオーバークロックも可能なマザーボードです。設定項目も簡潔にまとまっていて使いやすいのですが、難点としては、テンキーの「+/-」キーで設定値の変更はできるものの、メモリ周波数やロードラインキャリブレーションの設定がプルダウンメニューでないところが非常に不便なのでこの点についてはアップデートで修正して欲しいです。
ちなみにAMD X570やAMD TRX40など2019年以降に発売されたGIGABYTE製の最新マザーボードではBIOSメニューが大幅に改修されており、上で言及した不便な部分はほぼ全て改善されています。
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEの動作検証・OC耐性
BIOS周りの管理人的に気になるところの紹介はこのあたりにしてGIGABYTE C621 AORUS XTREMEを使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」にIntel Xeon W-3175Xを組み込んだ場合のBIOS標準設定における動作についてですが、Intel Extreme Tuning Utilityから確認したところ、1コアから全28コアまで負荷がかかった時のコア数に対する動作倍率は『最大動作コア数 / 最大動作倍率』を1セットとして、[2/43, 4/41, 24/40, 28/38]となっており、CPUコア動作倍率は仕様値通りです。一方、XTUから確認できる電力制限については長期間電力制限と短期間電力制限の両方が標準では無効化されていました。
上記のように電力制限が無効化されているので、Cinebench等の一部アプリケーションでは電力制限無効で動作しますが、x264によるエンコード等では電力制限によってCPU Package Powerが255W以内に収まるようコアクロックに制限がかかる場合があります。
「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」において電力制限を完全に無効化させたい場合は、
・コア倍率を全コア固定モードで設定し、AVXオフセットを0にする
・By Core Usageで使用したい場合は、コア電圧をオフセットモードにして、AVXオフセットを0、CPU Package/Core Current Limitを無効にする
のように設定を変更してください。
続いてGIGABYTE C621 AORUS XTREMEを使用した場合のCPUとメモリのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
Xeon W-3175XのOC設定は「CPUクロック倍率:40」「AVXオフセット:0」「CPUコア電圧:1.050V(固定モード)」「ロードラインキャリブレーション:Turbo」、メモリのOC設定は「メモリ周波数:3600MHz(XMP有効)」「メモリ電圧:1.350V」「メモリタイミング:16-16-16-36-CR2」としています。
上の設定を適用したところ問題なくOSを起動させることができました。
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEの環境(BIOS:F3d)でメモリ周波数を3600MHzにOCしてメモリタイミング:16-16-16-36-CR2に詰めることができました。
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEでのメモリOCについて、単純にメモリ周波数3600MHz、メモリタイミング16-16-16-36、メモリ電圧1.350Vを適用するとPOSTエラーになりました。一方、同設定でメモリ周波数を3200MHzに設定すると正常に起動し、また上のメモリテストについてはXMPプロファイルの読み込みを有効化した上でメモリタイミングを手動設定とすることでクリアできました。
読み込んだメモリOCプロファイルは「Corsair Dominator Platinum RGB CMT32GX4M4C3600C18」に収録されている3600MHz/CL18-19-19-39-CR2の設定です。
単純にメモリ周波数と主要タイミングを入力すると3600MHzが正常に起動できなかったので、セカンド・サードタイミングの自動設定に問題があるようです。3600MHz/CL16はそれほどタイトな設定でもないので、自動設定だけでサクッと動作して欲しいところ。今後のBIOSアップデートに期待したいです。
28コア56スレッド「Intel Xeon W-3175X」の全コア4.0、メモリ周波数3600MHz、メモリタイミング16-16-16-36-CR2でCinebenchも問題なくクリアできました。
続いてこのOC設定を使用してストレステストを実行しました。
検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間7分、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はXeon W-3175Xの場合10分ほどなので同じ動画のエンコードを3つ並列して2周実行しています。テスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
ストレステスト中のCPU温度とCPU使用率のログは次のようになりました。マザーボードにGIGABYTE C621 AORUS XTREMEを使用することでXeon W-3175Xを全コア同時4.0GHz、メモリ3600MHzにOCしてストレステストをクリアできました。CPUクーラーのファン回転数は1500RPMで固定しています。
スマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE Pro」(レビュー)を使用してGIGABYTE C621 AORUS XTREMEのVRM電源温度をチェックしてみました。
最初からXeon W-3175Xを上記のBIOS設定でOCした時の負荷テスト中の温度をチェックしていきます。GIGABYTE C621 AORUS XTREME環境において上で紹介した設定によってXeon W-3175Xを全コア4.0GHzにOC、かつメモリも3600MHzにOCするとEPS電源端子から供給されるCPU消費電力は500Wに達します。
CPU消費電力500W級のVRM電源負荷に対して、「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」はマザーボード上端を占有する32フェーズVRM電源回路と超巨大なVRM電源ヒートシンクの標準装備で、VRM電源温度は70度未満に抑えることができました。
今回はサイドフロー型空冷CPUクーラーを使用したので、VRM電源ヒートシンク付近にエアフローが生まれるため簡易水冷CPUクーラー環境に比べるとVRM電源温度的に優しい設定ですが、とはいえ、空冷CPUクーラー環境でこれだけ冷えていれば、簡易水冷CPUクーラー環境でもVRM電源周りはスポットクーラーの増設は必要なさそうです。
「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」はCPU消費電力が500~600Wに達する一般的な(高性能な簡易水冷やDIY水冷による)常用限界のOCであれば標準装備だけでもVRM電源を十分低温に収めることができますが、VRM電源の冷却を増強すべくスポットクーラーを使用するのであれば、フレキシブルファンアーム「サイズ 弥七」や、可変アルミニウム製ファンフレームでVRM電源を狙って設置が容易な「IN WIN MARS」がオススメです。
・マザーボードVRM電源クーラーのレビュー記事一覧へ
GIGABYTE C621 AORUS XTREMEのレビューまとめ
最後に「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- ”DOMINANT IN DARKNESS”と表現されるAORUS XTREMEの黒一色のクールなデザイン
- 32フェーズの超堅牢なVRM電源回路、超大型VRM電源クーラーを搭載
- 28コアXeon W-3175X 4.0GHz、メモリクロック3600MHz OCで安定動作
- W-3175Xの4.0GHz OCによる500Wクラス負荷でもVRM電源温度は70度未満
- 7基のx16サイズPCIEスロットを搭載
- 重量級グラボにも耐える2大独自機能「Ultra Durable PCIe Armor」と「Double Locking Bracket」
- 外部ノイズから保護することで安定したメモリOCを実現する「Ultra Durable Memory Armor」
- NVMe SSDを接続可能なU.2端子を標準搭載
- 外部温度センサーに対応したファンコン「Smartfan 5」は多機能で使いやすい
- スタート・リセットスイッチなど動作検証に便利なオンボードスイッチ
- HPTXフォームファクタなので搭載可能なPCケースが非常に少ない
- メモリOCの自動設定回りが微妙なので、3200MHz以上はXMP対応メモリキットを推奨
- M.2スロットを非搭載
- 複数M.2スロット増設拡張ボード用のPCIE帯域分割には非対応
- マザーボード単体で20万円と非常に高価
「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」は28コア56スレッドながら倍率アンロックなIntel Xeon W-3175Xのオーバークロックに対応するため開発されたマザーボードです。HPTXサイズ上端を占有する32フェーズの超弩級VRM電源回路を搭載し、その上を覆いつくす漆黒の超巨大アルミニウム製ヒートシンクで冷やすという圧巻の構成によって、Xeon W-3175Xの全コア4.0GHz OCという500W超の負荷も難なく扱うことができました。
メモリOCについてもヘキサチャンネルの6枚組48GBで3600MHz/CL16が安定動作しているので回路品質は余裕で及第点に達しています。ただメモリ周波数とメモリタイミングだけのカジュアル設定だと3600MHz以上が正常に起動できず、XMP3600MHzのOCプロファイルを併用する必要があったので、サブタイミングの自動設定回りについてはBIOSアップデートで改善を期待したいところです。
28コアCPUによる類稀なマルチスレッド性能に加えて、7基のx16サイズPCIEスロットやNVMe SSDに対応したU.2端子を備えて拡張性も高いので、GIGABYTE C621 AORUS XTREMEとIntel Xeon W-3175Xの組み合わせはIntel製CPUによって作成できるパーソナルワークステーション・サーバーとして(予算に糸目を付けないのであれば)現状で最高の選択肢だと思います。
以上、「GIGABYTE C621 AORUS XTREME」のレビューでした。
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GIGABYTE C621 AORUS XTREMEをレビュー
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) January 16, 2020
良い
✅28コアXeon W-3175XのOCに対応
✅32フェーズの超堅牢なVRM電源回路
✅7基のx16サイズPCIEスロットを搭載
TRX40では最安値クラスの449ドル
悪いor注意
⛔HPTXフォームファクタ
⛔20万円と非常に高価https://t.co/lEXYZAz7Jn
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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