スポンサードリンク
第3世代Ryzen CPUにネイティブ対応となるX570チップセット搭載AM4マザーボードとしてMSIからリリースされた、エンスージアストゲーマー向けハイエンドモデル「MSI MEG X570 UNIFY」をレビューします。
15フェーズVRM電源&EPS電源8PIN×2の安定した電力供給能力、オンラインゲームに最適なRealtek製2.5Gbイーサや次世代規格WiFi6に対応した無線LANを搭載、ESS製DACによるハイレゾ対応オンボードサウンドなど、黒一色のボディでRyzen 9 3900Xや3950Xをフル活用できる実用性をとことん追求したハイコストパフォーマンスモデルを徹底検証していきます。
製品公式ページ:https://jp.msi.com/Motherboard/MEG-X570-UNIFY
マニュアル:https://download.msi.com/archive/mnu_exe/mb/E7C35v2.0.pdf
MSI MEG X570 UNIFY レビュー目次
1.MSI MEG X570 UNIFYの外観・付属品
2.MSI MEG X570 UNIFYの基板上コンポーネント詳細
3.MSI MEG X570 UNIFYの検証機材
4.MSI MEG X570 UNIFYのBIOSについて
5.MSI MEG X570 UNIFYのOC設定について
6.MSI MEG X570 UNIFYの動作検証・OC耐性
7.MSI MEG X570 UNIFYのレビューまとめ
【機材協力:MSI】
【注意事項】
同検証は2020年2月中旬に行っておりMSI MEG X570 UNIFYのBIOSはA20(サポートページでは7C35vA2と表記)を使用しています。最新BIOSでは修正されている不具合や追加されている機能もあると思うので、最新BIOSのリリースについては公式ページを各自でチェックしてください。
サポート:https://jp.msi.com/Motherboard/support/MEG-X570-UNIFY#down-bios
【20年2月26日:初稿】
レビュー記事初稿を公開、BIOS:A20(サポートページでは7C35vA2と表記)で検証
MSI MEG X570 UNIFYの外観・付属品
まず最初にMSI MEG X570 UNIFYの外観と付属品をチェックしていきます。パッケージを開くと上段にはマザーボード本体が静電防止ビニールに入った状態で収められていました。マザーボードを取り出すと2重底になっており下段には各種付属品が入っています。
付属品一覧は次のようになっています。
マニュアルやドライバCDなど必要なものが一通り揃っています。ドライバ類についてはそろそろUSBメモリに移行して欲しいところ。
付属の多言語マニュアルには日本語のページもありますが50ページほどで内容は多くありません。詳細について知りたい場合は公式ページでPDFファイルとして公開されている英語のマニュアルを見てください。
マニュアル:https://download.msi.com/archive/mnu_exe/mb/E7C35v2.0.pdf
内容品はSATAケーブル4本、WiFiアンテナ、RGB対応4PIN LED機器接続用Y字分岐延長ケーブル、アドレッサブルRGB対応VG-D型3PIN LED機器接続ケーブル、Corsair製LED機器接続ケーブル、M.2 SSD用ネジです。
MSI MEG X570 UNIFYにはRGB対応汎用4PIN LEDヘッダーがマザーボード上に実装されており、付属の2分岐ケーブルによって1つのLEDヘッダーに2つのLEDイルミネーション機器を接続可能です。
MSI MEG X570 UNIFYにはアドレッサブルRGB対応VG-D型汎用3PIN LEDヘッダーがマザーボード上に実装されていますが、それをロック付き3PINコネクタに変換する延長ケーブルが付属します。
MSI MEG X570 UNIFYにはCorsair社からリリースされているLEDイルミネーション搭載ファン用コントロールボックスが接続できるLEDヘッダーが実装されており、それに対応した延長ケーブルも付属します。
マザーボード全体像は次のようになっています。
MSI MEG X570 UNIFYはATXフォームファクタのマザーボードです。上位モデルのACEやGODLIKEは黒を基調にしてプレミアム感あふれるゴールドやシルバーのアクセントカラーが差し込まれていましたが、MSI MEG X570 UNIFYはオールブラックのシックなデザインです。
マザーボード右下のチップセット用ヒートシンクとPCIEスロット間のM.2 SSDヒートシンクはドラゴンの手を模したような形状で、マットブラック塗装をベースにしてヘアライン処理がアクセントになっています。チップセットクーラーの上部にはMSIゲーミングブランドのロゴアイコンであるドラゴンマークが描かれています。
「MSI MEG X570 UNIFY」のチップセットクーラーでは、2スロット占有や3スロット占有のグラフィックボードを設置しても、グラフィックボードがPCH冷却ファンの吸気口に被らないレイアウトが採用されているところも魅力です。
多くのX570チップセット搭載AM4マザーボードと同様にチップセットクーラーにも冷却ファンが内蔵されていますが、「MSI MEG X570 UNIFY」では業界最大サイズの50mm径10mm厚、高耐久なダブルボールベアリング、特許取得済み「プロペラブレードテクノロジー」採用のファンが使用されています。
「MSI MEG X570 UNIFY」のチップセットクーラー冷却ファンには「ZERO FROZR TECHNOLOGY」と呼ばれるセミファンレス機能が採用されており、ファン動作モードとして「Balance Mode(標準設定)」や「Silence Mode」を選択すると、チップセット温度が閾値以下の場合に冷却ファンが停止します。
「MSI MEG X570 UNIFY」のリアI/Oカバーもオールブラックのシンプルなデザインが採用され、LEDイルミネーション等の装飾もありません。
CPUソケット上側のVRM電源クーラーもヘアライン仕上げのアルミニウム塊にフィンカットが施され、さらにヒートパイプによってリアI/Oカバー側に連結され、大型かつ高性能なヒートシンクが構成されています。リアI/Oカバーはプラスチック製ではなく、全体が金属製でVRM電源の放熱ヒートシンクの役割を果たします。
MSI MEG X570 UNIFYには、最大16コアに達する第3世代Ryzenのオーバークロックにも対応すべく、15(12+2+1)フェーズの超堅牢なVRM電源が実装されています。従来製品より電力効率を30%改善した「TITANIUM CHOKE II」、低発熱で定評のある「Dr. MOS」の60A対応版 IR3555、93%のエネルギー変換効率かつCPUクーラーと干渉し難い小型サイズキャパシタ「Hi-C CAP」、低ESRかつ10年以上の長寿命な日本製個体コンデンサなど高品質な素子によってVRM電源回路は構成されています。
「MSI MEG X570 UNIFY」ではEPS電源端子は最大16コアに達する第3世代Ryzenのオーバークロックにも対応すべく、8PIN*2が設置されています。700W以下のメインストリーム電源ユニットではEPS端子が1つしかないものもあるので組み合わせて使用する電源ユニットには注意が必要です。
「MSI MEG X570 UNIFY」にはマザーボード一体型リアI/Oバックパネルも採用されています。PCケースにパネルを装着する作業は固くて装着し難かったり、忘れてしまうこともあるのでマザーボードに統合されているのは嬉しい機能です。
リアI/Oには最新のUSB3.1 Gen2規格に対応したUSB端子としてLAN端子の下に3基のType-Aと1基のType-Cの計4端子が設置されています。そのほかのUSB端子については2基のUSB2.0端子と2基のUSB3.0端子が搭載されています。マウス・キーボードなどの周辺機器を多数繋いでいてもVR HMDに余裕で対応可能です。ただUSB3.Xは無線マウスと電波干渉を起こすことがあるので、USB2.0は少し離れた場所に配置して欲しかったです。加えてゲーマーには嬉しいPS/2端子も搭載されています。
有線LANには一般的な有線LANの2.5倍の速度を誇る2.5Gb/sに対応し、オンラインゲームに最適なRealtek製2.5Gbイーサが実装されています。「MSI MEG X570 UNIFY」の有線LANはRealtek製2.5Gb LANのみですが、一般的な1Gb LAN同様にWindows10の標準ドライバで動作しました。
さらに次世代規格WiFi6に対応した無線LANも搭載しています。接続規格としてはWi-Fi 802.11 a/b/g/n/ac/ax、2.4/5GHzデュアルバンド、最大通信速度2400Mbps、Bluetooth 5.0に対応しています。リアI/Oには無線モジュールのアンテナ端子が設置されているので付属のアンテナを接続できます。
またリアI/Oには「BIOS Flash」ボタンが設置されており所定のUSB端子にBIOSファイルの入ったUSBメモリを接続してボタンを押すと「BIOS Flash」機能によってCPUやメモリなしの状態でもBIOSの修復・アップデートが可能です。
MSI MEG X570 UNIFYの基板上コンポーネント詳細
続いて「MSI MEG X570 UNIFY」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。システムメモリ用のDDR4メモリスロットはCPUソケット右側に4基のスロットが設置されています。固定時のツメは両側ラッチとなっています。片側ラッチよりも固定が少し面倒ですが、しっかりとDDR4メモリを固定できるので信頼性は高い構造です。
グラフィックボードなどを設置するPCI-Eスロットは上から[N/A、x16、N/A、x1、x16、x1、x16]サイズのスロットが設置されています。上段のプライマリグラフィックボードを2段目のスロットに配置することで、大型ハイエンド空冷CPUクーラーとグラフィックボードの干渉を回避しています。
2段目と5段目のPCIEスロットはCPU直結PCIEレーンに接続されており、[x16, N/A] or [x8, x8]で使用できます。最下段のx16サイズスロットの帯域はチップセット経由でPCIE4.0x4です。2基のx1サイズスロット(PCIE4.0x1)は互いに排他利用となっており、一方を使用するともう一方は使用できなくなります。
別売りオプションパーツのNVLink SLI Bridgeが必要ですが、3スロット(1スロットスペース)のNVLink SLI BridgeがあればNVIDIAの最新GPUであるRTX 2080 TiやRTX 2080でもマルチGPU環境を構築可能です。
MSI MEG X570 UNIFYにも最近のトレンドとして全てのx16サイズスロットには1kgを超える重量級グラボの重さに耐えるように補強用メタルアーマー搭載スロット「MSI PCI Express Steel Armor slots」が採用されています。半田付けによってPCIEスロットの固定を強化したことで従来よりも4倍も頑丈になっており、PCI-Eスロットをシールドで覆うことによって外部ノイズEMIから保護する役割も果たします。
SATAストレージ用の端子はマザーボード右下に4基搭載されています。SATA_1~4はいずれもAMD X570チップセットのコントローラーによる接続で、RAID0/1/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。
高速NVMe接続規格に対応したM.2スロットは、CPUソケット下、PCIEスロット間、チップセット下に計3基が設置されています。M2_1はNVMe(PCIE4.0x4)接続のM.2 SSDのみをサポートしますが、M2_2とM2_3はNVMe(PCIE4.0x4)接続とSATA接続のM.2 SSD両方に対応しています。3つのM.2スロットにはいずれも排他利用はありません。
3基のM.2スロットにはMSI独自のSSDヒートシンク「M.2 Shield Frozr」が設置されており、同ヒートシンクを使用することで、グラフィックボードなど発熱から保護し、M.2 SSDがむき出しの状態よりもサーマルスロットリングの発生を遅くする効果が見込まれます。
マザーボード右下には最新接続規格USB3.1 Gen2に対応する内部USB3.1 Gen2ヘッダーと、内部USB3.0ヘッダーが設置され、加えてマザーボード右端中央にはマザーボード基板と平行にもう1基の内部USB3.0ヘッダーが設置されています。
マザーボード下側には2基の内部USB2.0ヘッダーが設置されています。Corsair iCUEやNZXT CAM対応製品などUSB2.0内部ヘッダーを使用する機器も増えていますが、「MSI MEG X570 UNIFY」であればそれらの機器も問題なく使用可能です。内部USB2.0が2基でも不足する場合はUSB2.0ヘッダー増設ハブの「NZXT INTERNAL USB HUB」や「Thermaltake H200 PLUS」がおすすめです。
「MSI MEG X570 UNIFY」はエンスージアストゲーマー向けマザーボードということで、MSI独自の高音質オンボードサウンド機能を、ハイエンドオーディオで採用されるESS製DAC搭載によって、従来機種よりもさらに強化した「AUDIO BOOST HD」が採用されています。日本ケミコン製のオーディオコンデンサを採用し、オーディオパートはマザーボードから物理的に分離され、左右のオーディオチャンネルがレイヤー分けされることでクリアな音質を実現します。FPSゲームなどで足音や銃声をゲーム内にOSD表示で可視化する「NAHIMIC Sound Technology」も使用できます。
ケーブルが長くならざるを得ないVR HMDの接続ケーブルではパフォーマンスに大きな影響を与える信号損失が発生しやすいため、MSIではUSBリピーターチップ「VR BOOST」によって信号強度を高めてVR機器に最適化したUSBポートが設置されています。
冷却ファンを接続するためのコネクタについてはPWM対応4PINファンコネクタとしてCPUファン端子、水冷ポンプ対応端子、ケースファン端子5基の計7基が搭載されています。これだけあれば360サイズなどの大型ラジエーターを複数基積んだハイエンド水冷構成を組んでもマザーボードのファン端子だけで余裕で運用可能です。水冷ポンプ対応の「PUMP_FAN1」端子は最大24W(12V、2A)の出力にも対応しているので本格水冷向けのD5やDDCポンプの電源としても変換ケーブルを噛ませることで使用できます。
MSIのファンコントロール機能にはソース温度の乱高下を無視してスムーズなファン回転数変化を実現するヒステリシス機能も備わっています。
またマザーボード右下にはOCerのみならず一般自作erにとっても組み立て中の動作確認に便利なオンボードとスタートスイッチとリセットスイッチが実装されています。POSTエラーのチェックができるDebug Code LEDも設置されています。リアパネルにはCMOSクリアのハードウェアスイッチも設置されているのでオーバークロック設定を失敗しても簡単に初期化が可能です。
「MSI MEG X570 UNIFY」はマザーボード備え付けのLEDイルミネーションやRGB対応汎用4PIN/アドレッサブルRGB対応汎用3PINイルミネーション機器を操作可能なライティング制御機能「MSI Mystic Light」に対応しています。
MSIのライティング制御機能「MSI Mystic light」による操作に対応したRGB対応汎用4PIN LEDヘッダーがマザーボード右上に設置されています。当サイトでもレビュー記事を掲載しているLEDテープ「SilverStone SST-LS02」やLEDファングリル「Phanteks Halos Lux RGB Fan Frames」などが接続可能です。
またCorsair製のLEDイルミネーション機器が接続可能な独自規格の3PINヘッダーもすぐ傍に実装されており、「Corsair RGB Fan」や「Corsair Lighting PRO LEDストリップ」を接続して、MSI Mystic Lightでライティング制御が行えます。
さらにアドレッサブルLED機器に対応したARGB対応VD-G型3PIN LEDヘッダーがマザーボードの右下と左下の2か所に実装されています。
「MSI MEG X570 UNIFY」で使用可能なアドレッサブルLEDテープとしては国内で発売済みの「BitFenix Alchemy 3.0 Addressable RGB LED Strip」や「ASUS ROG ADDRESSABLE LED STRIP-60CM」や「AINEX アドレサブルLEDストリップライト」が動作することが確認できています。
MSI Mystic Lightに対応する機器についてはMSIの公式ページで一覧が公開されています。
MSI Mystic Light対応機器:https://jp.msi.com/Landing/mystic-light-motherboard#mystic
MSI MEG X570 UNIFYの検証機材
MSI MEG X570 UNIFYを使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。MSI MEG X570 UNIFY以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | AMD Ryzen 9 3950X (レビュー) |
CPUクーラー | Corsair H150i PRO RGB (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) G.Skill Trident Z RGB F4-3200C14Q-32GTZRX DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) |
CPUベンチ用 ビデオカード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
システムメモリの検証機材には、第3世代Ryzen&X570マザーボードのプラットフォームに最適化されたハイパフォーマンスOCメモリの最速モデル「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」を使用しています。3600MHz/CL14の最速モデル、3200MHz/CL14や3600MHz/CL16といった定番スペックがラインナップされ、高級感のあるヒートシンクや8分割ARGB LEDを搭載してデザイン面でも優れる「G.Skill Trident Z Neo」シリーズは、第3世代Ryzenの自作PCで性能を追求するなら間違いのないオススメなOCメモリです。
・「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」をレビュー
またRyzen環境におけるハイパフォーマンスなOCメモリとして昨年より定評のある「G.Skill Trident Z RGB F4-3200C14Q-32GTZRX」も3200MHz/CL14の高速・低遅延な動作がOCプロファイルを使用したオーバークロックで簡単に実現でき、第3世代Ryzen環境なら3600MHz/CL16に対応可能な伸びしろもあるので、第3世代Ryzen環境向けに引き続きオススメのDDR4メモリです。
・「G.Skill Trident Z RGB F4-3200C14Q-32GTZRX」をレビュー
レビュー後半の動作検証では12コア24スレッドモデルRyzen 9 3900Xを使用したOC検証も行いますが、CPUクーラーの検証機材には360サイズ大型ラジエーターを搭載するCorsair製AIO水冷CPUクーラー最上位モデル「Corsair H150i PRO RGB」を使用しています。
マザーボード備え付けの固定器具にCPUクーラーリテンションブラケットのフックをひっかけてハンドスクリューで締めるだけなので設置が非常にお手軽です。
360サイズラジエーター搭載の「Corsair H150i PRO RGB」と280サイズラジエーター搭載の「Corsair H115i PRO RGB」はいずれも冷却性能が高く、LEDイルミネーションやファン制御などの操作性・カスタマイズ性にも優れているので第3世代Ryzen CPUとの組み合わせにはおすすめなCPUクーラーです。
・「Corsair H150i PRO RGB」&「Corsair H150i PRO RGB」をレビュー
360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーターの簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。「Noctua NF-A12x25 PWM」は、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファンとなっており、1基あたり3500円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
・「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する18年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、メインストリーム向けでもハイパフォーマンスな環境を目指すのであれば、システムストレージ用に一押しのSSDです。
・「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
・「Thermal Grizzly Carbonaut」はRyzen 9 3900Xを冷やせるか!?
以上で検証機材のセットアップが完了となります。
MSI MEG X570 UNIFYのBIOSについて
MSI MEG X570 UNIFYを使用した検証機の構築も完了したので動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。(OSから日付調整する前にスクショを取っている場合、日付がおかしいですが無視してください。また内容的に差異のないものは過去の同社製マザーボードのBIOSスクリーンショットを流用しています。)
BIOSに最初にアクセスするとイージーモードというグラフィカルな画面が表示されます。パッと見の見栄えは良いのですが詳細モードでないと詳細設定ができないので「F7」キーを押してサクッと詳細モード移るのがおすすめです。右上には表示言語変更のプルダウンメニューがあります。MSIマザーボードはASUSの次くらいにしっかりとローカライズされているので日本語UIも使いやすいと思います。
MSIのBIOS詳細モードでは「SETTING」「OC」「M-FLASH」「OC PROFILE」「HARDWARE」「BOARD EXPLORER」の6つのアイコンを選択することで中央のイラスト部分や画面全体に詳細設定項目が表示されるという構造になっています。キーボード操作も可能ですがマウス操作を重視したUIです。
MSI MEG X570 UNIFYのBIOSにおいて設定の保存とBIOSからの退出は「SETTING」アイコンの「保存して終了」の項目内に存在します。ASUS、ASRock、GIGABYTEなどと違ってカーソルキーのみの移動で設定保存と退出関連の項目にサクッと移動できないのが少し不便に感じます。起動デバイスを指定して再起動をかける「Boot Override」機能があるのは使い勝手が良くて好印象です。
19年7月現在、「MSI MEG X570 UNIFY」のサポートページでは最新BIOSとして「120(サポートページでは7C35v12と表記)」が公開されています。
BIOSのアップデート方法は、まず下から最新のBIOSファイルをダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
サポート:https://jp.msi.com/Motherboard/support/MEG-X570-UNIFY#down-bios
USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、詳細モード左下の「M-FLASH」を選択します。「M-FLASH」モードはBIOSとは完全に別で用意されており再起動するか尋ねられるので再起動します。ただし手動でOCを行っている場合は「M-FLASH」を選択しても一度設定をデフォルトに戻して再起動がかかるので、再度BIOSに入って「M-FLASH」を選択する必要があるようです。
再起動して「M-FLASH」に入ったら下のようにUSBメモリ内のBIOSファイルを選択してアップデートを実行すればBIOSのアップデートが完了します。なおBIOSアップデート後は自動でBIOSへ入らないので注意してください。アップデート後はOC設定なども初期化されてしまうので初回は自動でBIOSに入って欲しいです。
ブートとOSインストール周りについて紹介します。
MSI MEG X570 UNIFYのブートデバイス関連の設定は「SETTING」アイコンの「ブート」という項目にまとめられています。
「Boot mode select」はデフォルトでは「UEFI&Legacy」になっていますが、Windows10ユーザーは基本的にUEFIしか使用しないのでUEFIに固定してしまうのがおすすめです。
起動デバイスの優先順位は「FIXED BOOT ORDER Priorities」という項目で、ハードディスクやDVDドライブなど大別した優先順位が設定可能となっており、その下にある「〇〇 Drive BBS Priorities」で同じ種類のデバイスについて個別の起動優先順位の設定を行えます。
一般的にはWindows OSの入った「UEFI:HardDisk:Windows Boot Manager(〇〇)」を最上位に設定して、その他の起動デバイスは無効化しておけばOKです。
Windows 10 OSのインストール手順(BIOSにおける設定)についても簡単に紹介しておきます。
Windows 10のOSインストールメディア(USBメモリ)については「FIXED BPPT ORDER Priorities」では「UEFI USB Key:UEFI: 〇〇」という名前になります。「UEFI USB Key:UEFI: 〇〇」を起動優先順位の最上位に設定してください。
起動優先順位でインストールメディアを最上位に設定したら設定を変更してBIOSから退出します。ただMSI MEG X570 UNIFYはブートデバイスを指定できるBoot Overrideを使用できるので直接OSインストールメディアを起動デバイスとして指定して再起動してもOKです。
ちなみにWindows10の製品パッケージに付属するUSBメモリではUEFIで認識できないトラブルが発生することがあるようなのでそういうときはこちらの記事に従ってMS公式ツールを使用して適当なUSBメモリでOSインストールメディアを作成すると上手くいきます。
BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、MSI MEG X570 UNIFYのBIOS機能で管理人が気になったものをいくつかチェックしていきます。
「MSI MEG X570 UNIFY」の1段目のPCIEスロットについては、プライマリグラフィックボードで使用する標準的なPCIE4.0x16モードに加えて、PCIE帯域を「2つのPCIE4.0x8」もしくは「4つのPCIE4.0x4」に分割するモードが用意されています。また5段目のPCIEスロットについても同様にPCIE帯域を「2つのPCIE4.0x4」に分割が可能です。
MSI MEG X570 UNIFYのファンコントロールや各種コンポーネント温度のハードウェアモニタリングはトップメニューの「HARDWARE」アイコンからアクセスできます。
「MSI MEG X570 UNIFY」のファンコントロール機能は下のスクリーンショットのようにグラフィカルUIのみが用意されています。
ファンカーブの設定には画面中央のグラフから頂点座標をマウスで直接操作するか、少し分かり難いのですが、右にある温度とファン速度(デューティ比or電圧)を直接数値入力するかのどちらかで行います。
「MSI MEG X570 UNIFY」にはモニタリング可能な温度が7種類も用意されています。
「MSI MEG X570 UNIFY」に搭載された10基のファン端子については、いずれも個別にファン制御モードをPWM制御とDC制御から選択でき、ファンコントロールソース温度やヒステリシス(Step Up/Down Time)の設定もできます。
「MSI MEG X570 UNIFY」に搭載されたファン端子のうちCPUファン端子、PUMP端子、ケースファン端子_1~4の6つはファンコンソース温度として、CPU温度、MOS(VRM電源)温度、PCH(チップセット)温度などの7種類から選択できます。
「MSI MEG X570 UNIFY」ではチップセットクーラーに搭載された冷却ファンについても、BIOS上で「Chipset」として表記されており、ファン制御が可能です。
「MSI MEG X570 UNIFY」のチップセットクーラー冷却ファンについては、他のファン端子と異なり、ファンカーブを自分で設定するのではなく「Silence Mode」「Balance Mode(標準設定)」「Boost Mode」の3つのプリセットと、ファン回転デューティ比を固定する「Manual Mode」の4つの動作モードを選択する形式になっています。
MSI製マザーボードのファンコントロール機能はグラフィカルUIでわかりやすく設定できるよ、という機能になっています。直感的にわかりますし直打ちが苦手な人にはありがたい機能だと思います。
ただ個人的にはテキストUIで数値直打ちが好きなので管理人がMSIマザボを敬遠してしまう理由の1つです。
あと細かいところですがBIOS内のスクリーンショットをF12キーで撮影できますがスクリーンショットファイルの名前がタイムスタンプではなく保存するUSBメモリのルートに存在するファイルで重複しない連番なのが少し使い難かったです。間違って上書き保存してしまうことがあるのでタイムスタンプにして欲しいです。
MSI MEG X570 UNIFYのOC設定について
MSI MEG X570 UNIFYを使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
第3世代Ryzen CPUについてはX570チップセット搭載マザーボードと組み合わせた場合に使用できる純正のOCツール「AMD Ryzen Masterユーティリティ」が用意されていますが、こちらの使い方については下の記事を参考にしてください。
・AMD Ryzen専用純正OCツール「AMD Ryzen Masterユーティリティ」の使い方
MSI MEG X570 UNIFYではオーバークロック関連の設定項目はトップメニューの「OC」アイコンに各種設定がまとめられています。下にスクロールしていくと概ね「コアクロック→メモリ→電圧」の順番で並んでいます。設定値を直接入力する項目でデフォルトの「Auto」に戻す場合は「a」キーを入力すればOKです。
OCメニューのトップには「OC Explore Mode」という項目があり一般的なOC設定の可能な「Normal」モードに加えて、一部の高度なOC設定項目を解除できる「Expert」モードがあります。基本的なOC設定は「Normal」モードでも十分行えるので初心者は無理せず「Normal」モード推奨です。
CPUコアクロック(コア倍率)の変更について説明します。
第3世代Ryzenは、CPU温度や電力に関して安定動作可能な相関関係を記したテーブルがCPU内部に用意されており、それに則した形で「Pure Power」や「Precision Boost(2)」といったRyzen CPUの独自機能により動作クロックや電力がリアルタイム制御されています。
例えばRyzen 9 3900XではCPUクーラー冷却性能の影響で若干前後しますが、単コア負荷の場合は最大で4.6GHz、全コア負荷の場合はTDPの範囲内で変動しますが、軽いワークロードであればコア毎に4.5~4.2GHzで動作し、動画のエンコードなどCPUがフルパワーを発揮する重いワークロードでは冷却性能が十分ならベースクロックを上回る平均4.0GHz程度で動作します。
第3世代Ryzenや第2世代Ryzen/Ryzen Threadripper CPUの動作クロックに関する予備知識については下の記事で概要を解説しているので参考にしてください。
・「Precision Boost Overdrive」を徹底解説
MSI MEG X570 UNIFYのコアクロックのOC設定方法はコアクロック(MHz)の動作倍率を指定する形になっていました。「CPU Ratio」の項目を「40.25」と設定するとベースクロック(BCLK):100MHzに対して4025MHzで動作するように設定されます。動作倍率は0.25刻みで指定可能です。
「MSI MEG X570 UNIFY」でRyzen 9 3900XやRyzen 9 3950Xを使用している場合、全コア共通の動作倍率設定だけでなく、CCX単位(3950Xの場合は4コア1セット、3900Xの場合は3コア1セット)で個別に動作倍率を設定するPer CCXにも対応しています。
設定は少し面倒になりますが、CCX別にOC耐性には違いがあるので、共通のコア電圧に対して、OC耐性の良いCCXでは44倍に、OC耐性の悪いCCXは42倍に、のように細かく設定できます。Intel製CPUのBy Specific Core設定のようにコア電圧もCCX単位で調整できるとさらにOC設定の幅が広がるのですが、電圧については今のところ非対応です。
「MSI MEG X570 UNIFY」はベースクロック(BCLK)の調整にも対応しています。デフォルトでは100MHzに固定されていますが、設定値を直打ちすることで0.05MHz刻みで設定できます。CPUコアクロックはBCLKに対する動作倍率で設定されるのでBCLK110MHz、動作倍率40倍の場合はコアクロック4.40GHz動作となります。ただしBCLKを使用したOCはかなり上級者向けなので通常は100MHz固定が推奨です。
「MSI MEG X570 UNIFY」では単コアブーストクロックを維持したまま、電力制限を解除することで全コア最大動作倍率を引き上げることができる「Precision Boost Overdrive」もBIOSから設定が可能で、CPUコアクロック手動設定のすぐ下にある「Advanced CPU Configuration」からアクセスできます。
Precision Boost Overdriveを手動設定にすると、第3世代Ryzenにおいても前世代と同様に、電力制限上限値を指定する「PPT Limit (W)」、最大動作クロックの制限値に影響する「TDC Limit / EDC Limit (A)」を設定できます。
さらにX570マザーボードでは第3世代Ryzenが新たにサポートする「Auto OverClocking Mode」に関する設定項目として、Precision Boost 2によるコアクロックの上昇幅を設定する「Max CPU Boost Clock Override」や、Precision Boost 2やXFRによる自動OC機能が効く温度閾値を引き上げる「Platform Thermal Throttle Limit」などのオプションが追加されています。
また「Advanced CPU Configuration」内にはTDP設定に近い設定項目である「Package Power Limit(PPT)」を指定する設定も用意されています。Ryzen 9 3900XやRyzen 9 3950XのようなTDP105Wの多コアCPUを80Wなど低い消費電力に制限して運用することができます。
続いてコア電圧の調整を行います。
AMD Ryzen CPUのオーバークロックで変更する電圧設定については、CPUコアクロックに影響する「CPUコア電圧」と、メモリクロックやRyzen APUに搭載される統合GPUの動作周波数に影響すると「SOC電圧」の2種類のみと非常に簡単化されています。
MSI MEG X570 UNIFYではOCの項目で下にスクロールしていくと、各種電圧設定項目が表示されますが、AMD Ryzen CPUの手動OCに関連する電圧設定については基本的に「CPU Core電圧」「CPU SOC電圧」「DRAM電圧」の3項目のみに注目すればOKです。
CPUコアクロックのOCに関連する電圧設定としては、MSI MEG X570 UNIFYではCPUコア電圧(BIOS上ではCPU Core voltageと表記されています)の項目を変更します。
CPUコア電圧ではマニュアルの設定値を固定する「Override Mode」、CPUに設定された比例値にオフセットかける「Offset Mode」、加えてどのような動作なのかわかりませんが「AMD Overclocking」の3種類が使用できます。
MSI MEG X570 UNIFYでCPUコアクロックのOCを行う場合、コア電圧設定モードとして通常はマニュアルモードを推奨します。マニュアルモードの場合は0.0125V刻みでコア電圧の設定が可能です。
CPUコア電圧モードについて簡単に説明すると、オフセットモードやアダプティブモードはCPU負荷に比例して電圧が設定されており、低負荷時は電圧が下がるので省電力に優れるのですが、OCをする場合はマザーボードによって挙動に差があり安定する設定を見極めるのが難しいので、個人的にはオフセットやアダプティブは定格向け、OCには固定値適用の固定モードを推奨しています。
仮にOCでオフセットやアダプティブを使う場合も最初はコアクロックに対して安定する電圧を見極める必要があるので、まずは固定モードを使用します。
ちなみにマザーボードにより対応しているモードは異なりますが、CPUのオーバークロックに付随するコア電圧のモードの概略図は次のようになっています。
またコアクロックを高く設定する時に追加で変更するといい電圧設定項目として「DigitALL power」がCPUコア電圧の設定欄のすぐ上に配置されています。
「DigitALL power」内で特に調整した方がよい項目として「CPUロードラインキャリブレーション」があります。CPUロードラインキャリブレーションはCPU負荷時の電圧降下を補正してOCを安定させる機能です。補正の強度としてMode1~Mode8まで設定可能となっており、Mode1を補正最大として、添え字の数字が小さくなるほど補正が強くなります。補正を強くするほどOCの安定性は増しますがCPUの発熱も大きくなるので、Mode3あたりを最初に使っておいて、ストレステストのCPU温度をチェックしながら補正を調整するのがおすすめです。
メモリのオーバークロックについても簡単に紹介しておきます。
メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。
一方でXMPによるメモリOCは上の手順によるOCをメーカー側がすでに行い動作確認をしているので、メーカーが動作確認を行ったOCプロファイルを適用するだけで簡単にメモリをオーバークロックできます。
メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありませんが、MSI MEG X570 UNIFYでは正常にPOSTできないメモリOC設定でエラーが出た場合は数回再起動した後、自動で2133MHzや2400MHzなど定格となるSPDプロファイルの緩い設定で再起動してくれるのでメモリOCを安心して行えます。
メモリOCで有名なXMPプロファイルはIntelの策定した規格なのでAMD CPU&マザーボードの環境では厳密にいうと非対応ですが、MSI MEG X570 UNIFYなどの一部のMSIマザーボードでは、メモリに収録されたXMPプロファイルからRyzen環境でも使用可能なメモリOCプロファイルを自動生成する「A-XMP」という独自機能があります。
A-XMPを使用せず、「DRAM Frequency」の設定値が自動(Auto)になっている場合は、使用するメモリにSPD情報として収録されている動作クロック2133~2666MHzなどのメモリ周波数およびタイミングによる定格動作となります。
手動でメモリ周波数を設定する場合は「DRAM周波数(DRAM Frequency)」の項目でプルダウンメニューから最大6000MHzまでの動作クロック(倍率)設定が可能です。メモリ周波数もBCLKに対する倍率で動作周波数が決まっているので、BCLKを標準値の100MHzから120MHzに上げると、44倍設定時の動作周波数は4000MHzから5280MHzに上がります。
「詳細DRAM構成」の設定項目からメモリタイミングの個別打ち込み設定も可能です。メモリタイミングを手動で設定する場合は基本的には「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS Read (tRCDrd)」、「RAS to CAS Write (tRCDwr)」、「RAS Precharge (tRP)」、「RAS Active Time (tRAS)」の主要な5タイミングと、加えて「Command Rate:1 or 2」の6つ以外はAutoのままでいいと思います。
「MSI MEG X570 UNIFY」では「Command Rate」の項目に「GearDownMode」が統合されています。メモリ周波数を3200MHz以上にOCする場合は「GearDownMode」を選択しておくのがオススメです。
メモリタイミングの下の方にある小項目「On-Die Termination Configuration」内の「ProcODT」という設定値がAutoのままではPOSTがクリアできない場合があります。AutoでPOSTをクリアできない、もしくは起動後に安定しない場合は「ProcODT」を43.6~68.6の間で固定して安定するものを探してみてください
DDR4メモリの周波数OCを行う際はDRAM電圧(DRAM Voltage)を、メモリ周波数3000MHz以上の場合は1.300V~1.350V、メモリ周波数3800MHz以上の場合は1.370V~1.400Vに上げる必要があります。メモリをOCする場合は最初から1.350V以上にDRAM電圧を盛っておくのがおすすめです。
AMD Ryzen CPUでメモリの動作クロックをOCする場合はDRAM電圧だけでなく「CPU SOC電圧(CPU NB/SOC Voltage)」も1.100V~1.200V程度に盛ってやると動作が安定しやすいようです。MSI MEG X570 UNIFYではCPUコア電圧同様に0.0125V刻みで値を設定できます。
また第3世代Ryzen CPU環境ではメモリ周波数3600MHzまではInfinity Fabric周波数が1:1で同期しますが、3733MHz以上では2:1で同期し、Infinity Fabric周波数がメモリ周波数の半分になります。
「MSI MEG X570 UNIFY」では「FCLK Frequency」をメモリ周波数の半分に指定し、かつ「UCLK DIV1 MODE」を「UCLK == MEMCLK」に設定することで3733MHzや3800MHzのメモリ周波数で、Infinity Fabric周波数の1:1同期が可能になります。
MSI MEG X570 UNIFYの動作検証・OC耐性
BIOS周りの管理人的に気になるところやOC設定の基本についての紹介はこのあたりにしてMSI MEG X570 UNIFYを使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。まずはBIOS上の起動設定をフルスクリーンロゴとファストブートを無効にしてOSの起動時間を測定しました。MSI MEG X570 UNIFYの起動時間は20秒ほどとなりました。POSTも短く、高速な起動です。
続いてMSI MEG X570 UNIFYを使用した場合のCPUおよびメモリのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
Ryzen 9 3950Xなど第3世代Ryzenの上位モデルは、従来のRyzen CPUと同様にCPUクーラーの冷却性能に応じた自動OC機能「Precision Boost 2 & XFR 2 (Extended Frequency Range 2)」が機能し、第3世代Ryzenはその際に参照されるテーブルが限界近くまでチューニングされており、ユーザーが設定を変更したとしてもコアクロックを上昇させることが可能なマージン(ヘッドルームと呼ばれている)が非常に小さくなっています。
Ryzen 9 3950X、Ryzen 9 3900X、Ryzen 7 3800Xの上位3モデルについてはコアクロック回りを下手に弄るよりも、360サイズ簡易水冷CPUクーラーのような高性能なCPUクーラーの冷却性能にまかせて自動OC機能によるクロックアップを狙うのがオススメです。
ただし「MSI MEG X570 UNIFY」についてはCPU Package Powerに対してマザーボード独自設定のオフセットや倍率がかけられておらず(CPUの実際の消費電力がCPU Package Powerとして正確に参照される)、定格設定のままではPPT142Wの制限がかかります。Precision Boost OverdriveでPPTを200W以上に設定して電力制限を解除することで、CPUクーラーの冷却性能が十分であれば、CPU Package Powerを180W前後まで上げて多少ながらクロックアップが狙えます。
Ryzen 9 3950XのOC設定については、Precision Boost Overdriveを有効化して『PPT = 300W、TDC = 300A、EDC = 300A』、「コア電圧: -100mV オフセット」に設定しています。「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」のOCプロファイルを適用し、「メモリ周波数:3600MHz」「メモリタイミング:14-15-15-35-CR1」「メモリ電圧:1.400V」としました。ただしこれだけではCommand Rateが2Tになるので「Command Rate:GearDownMode」に変えています。
上の設定を適用したところ問題なくOSを起動させることができました。
「MSI MEG X570 UNIFY」のOC検証では検証機材メモリとして8GB4枚組み32GBメモリキット「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」を使用しています。同メモリに収録されたOCプロファイルによってメモリ周波数を3600MHz、メモリタイミングを14-15-15-35-CR1という非常にシビアなOC設定を適用していますが、安定動作が確認できました。
また「G.Skill Trident Z RGB F4-3200C14Q-32GTZRX」は第1/2世代Ryzen向けでは定番の3200MHz/CL14に対応したOCメモリですが、同メモリにおいてもメモリ周波数と主要タイミングのみのカジュアル設定で、メモリ周波数3600MHz、メモリタイミングを16-16-16-36-CR1に手動OCできました。
Ryzen 9 3950XのPB2&XFR2による全コア4.0~4.1GHzへのクロックアップに加えて、メモリ周波数を3600MHzにオーバークロックして、Cinebench R10も問題なくクリアできました。
続いてスマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE Pro」(レビュー)を使用してMSI MEG X570 UNIFYのVRM電源温度をチェックしていきます。
CPUへ電力供給を行うVRM電源に負荷をかけるためCPUに対してストレステストを実行しますが、その検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間7分、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)でAviutl+x264を使って3並列のエンコードを行い、30分以上に渡って負荷をかけ続けました。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
検証機材の360サイズ簡易水冷CPUクーラー「Corsair H150i PRO RGB」によって十分な冷却を行った場合、16コア32スレッドのRyzen 9 3950Xは全コア平均4.0~4.1GHzで動作しますが、ここにメモリ周波数3600MHzのメモリオーバークロックを組み合わせてストレステストを実行すると、MSI MEG X570 UNIFY環境ではシステム消費電力(ほぼCPU消費電力)が250W~260Wに達します。
メモリ周波数を3600MHzにOCした上でRyzen 9 3950Xを常用限界近い全コア4.0~4.1GHzにクロックアップさせ、30分以上負荷をかけ続けましたが、簡易水冷CPUクーラーによるCPU冷却で、かつスポットクーラーよって風も当てないパッシブ冷却の状態でも、VRM電源温度は最大で70度前後に収まりました。
MSI MEG X570 UNIFYであれば200WクラスのCPU消費電力でVRM電源に長時間負荷がかかり続けても、Ryzen 9 3900XやRyzen 9 3950Xをパッシブ空冷のまま、余裕で運用できます。
Ryzen 9 3950XをXFRで限界までクロックアップさせた時と同程度のCPU消費電力が発生するRyzen 7 2700Xの全コア4.2GHzを使用して、前世代X470チップセットを搭載したミドルハイクラス製品MSI X470 GAMING PRO CARBONを検証した際には、VRM電源温度が100度を軽く超過していました。
Ryzen 9シリーズに対応すべく設計され、かつ同社ハイエンドブランド”MEG”に属する「MSI MEG X570 UNIFY」のVRM電源回路の品質の高さとVRM電源クーラーの冷却性能の高さがハッキリと確認できます。
スポットクーラーを使用するのであれば、フレキシブルファンアーム「サイズ 弥七」や、可変アルミニウム製ファンフレームでVRM電源を狙って設置が容易な「IN WIN MARS」がオススメです。
・マザーボードVRM電源クーラーのレビュー記事一覧へ
MSI MEG X570 UNIFYのレビューまとめ
最後に「MSI MEG X570 UNIFY」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- LED装飾なし、黒一色のシックなカラーリング
- Ryzen 9シリーズの常用限界に余裕で対応可能な15フェーズVRM電源
- Ryzen 9 3950Xの全コア4.0~4.1GHzクロックアップ、メモリOC 3600MHzで安定動作
- 200Wクラスの負荷に対してパッシブ空冷のままVRM電源温度は70度半ば
- チップセットクーラー冷却ファンがセミファンレス機能に対応
- PCHファンの位置をマザーボード下端寄りにオフセットしたレイアウト
- 重量級グラボにも耐えるメタルアーマー採用PCI-Eスロット「MSI PCI Express Steel Armor slots」
- PCIE4.0対応NVMe接続のM.2スロットを3基設置
- 全てのM.2スロットにPCIE4.0対応NVMe M.2 SSDを十分に冷やせるSSDヒートシンクを装備
- WiFi6、最大通信速度2400Mbps、Bluetooth5.0に対応した無線LAN搭載
- リアI/Oにはオンラインゲームに最適な2.5Gbイーサを標準搭載
- SATA端子は4基のみ
第3世代Ryzen CPUにネイティブ対応となるX570チップセット搭載AM4マザーボードとしてMSIからリリースされた「MSI MEG X570 UNIFY」は、高耐久・低発熱な15フェーズVRM電源回路&超大型ヒートシンクを搭載することに始まり、オンラインゲームに最適なRealtek製2.5Gbイーサや次世代規格WiFi6に対応した無線LAN、ESS製DACによるハイレゾ対応オンボードサウンドなど、Ryzen 9 3900Xや3950Xをフル活用できる実用性をとことん追求したハイコストパフォーマンスモデルに仕上がっています。
機能や実用性を重視したスタンスは外観からも見て取れ、同社のハイエンドやミドルハイクラスの製品に良く採用されるLEDイルミネーションやアクセントカラーは省略され、「MSI MEG X570 UNIFY」はシックな黒一色のカラーリングが採用されています。
「MSI MEG X570 UNIFY」のBIOSデザインについては好みの問題かと思いますが、マウス&キーボード環境を想定したグラフィカルなUIが採用されており管理人的には少し使いづらいと感じてしまいました。個人的にMSIマザボを敬遠してしまう理由の1つではあるのですが、グラフィカルUIが好きなユーザーにとっては嬉しい仕様だとも思うので個々人の好みで評価は分かれるところです。
Ryzen 9 3950Xなど第3世代Ryzen上位モデルの特性上、今回はCPUコアクロックのオーバークロックは行いませんでしたが、MSI MEG X570 UNIFYを使用した検証機では16コア32スレッドRyzen 9 3950Xを自動OC機能によって全コア4.0~4.1GHzにクロックアップし、メモリも3600MHz/CL14にオーバークロックして安定動作させることができました。
手動OCを行わずとも高性能なCPUクーラーを組み合わせた時に自動的にクロックアップする第3世代Ryzen CPUと組み合わせるX570マザーボードの評価において、CPUへ電力供給を行うVRM電源回路の品質やVRM電源クーラーの冷却性能が重要なファクターになるのは言うまでありません。
「MSI MEG X570 UNIFY」では、長期的に200Wクラスの負荷が発生するRyzen 9 3950Xの全コア4GHz超クロックアップに対して、14フェーズの超堅牢なVRM電源によって安定した電力供給を行うことができました。
VRM電源の冷却面においては、フィンカット加工アルミニウム塊型ヒートシンクをヒートパイプで連結させ、リアI/O側に至ってはリアI/Oカバー全体が金属製という構造の超大型VRM電源クーラーが採用されています。またVRM電源関連ではありませんが、PCH冷却ファンの位置をマザーボード下端寄りにオフセットしたMSI独自採用のレイアウトも秀逸です
これらの優れたサーマルソリューションと堅牢なVRM電源回路によって、「MSI MEG X570 UNIFY」では200Wクラスの長期的な負荷に対してVRM電源温度は70度半ばに収まりました。「MSI MEG X570 UNIFY」であれば、VRM電源付近に直接風の当たらない簡易水冷CPUクーラー環境であっても16コアや12コアのRyzen 9シリーズをパッシブ空冷のまま余裕で運用できます。
メモリOCについては、メモリ周波数に同期するIF周波数も含めて考えれば第3世代Ryzen環境用メモリとしては最速と言えるメモリ周波数3600MHz/メモリタイミング14-15-15-35-CR1が、検証機材メモリ「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」に収録されたOCプロファイルを適用することで簡単に実現できました。
また3200MHz/CL14のOCに対応し第1/2世代Ryzen向けハイパフォーマンスOCメモリとしては鉄板だった「G.Skill Trident Z RGB F4-3200C14Q-32GTZRX」を使用した場合は、メモリ周波数3600MHz/メモリタイミング16-16-16-36-CR1で安定動作させることができました。
AMD公式から第3世代Ryzen環境のメモリ速度としてはスイートスポットと評価される3600MHz/CL16に、周波数と主要タイミングのみの簡単なOC設定で詰めることができたので、「MSI MEG X570 UNIFY」」はメモリOC耐性(BIOS自動設定の精度)も余裕で及第点をクリアしていると思います。
以上、「MSI MEG X570 UNIFY」のレビューでした。
検証機材として使用している以下のパーツもおすすめです。
Noctua NF-A12x25 PWM 120mmファン 定格2000RPM PWM対応
Noctua NF-A12x25 ULN 120mmファン 定格1200RPM PWM対応
Noctua
国内正規代理店Techaceの公式通販 で詳細情報を見る
<TSUKUMO:PWM/ULN><PCショップアーク>
関連記事
・AMD第3世代Ryzen CPUのレビュー記事一覧へ・主要4社B450マザーボードを徹底比較!第3世代Ryzenにイチオシはどれか?
・第3世代Ryzen対応X570チップセット搭載AM4マザーボードのレビュー記事一覧
・X470チップセット搭載AM4マザーボードのレビュー記事一覧
・第3世代Ryzen自作PCにオススメなDDR4メモリの容量や速度を解説
・第3世代Ryzen搭載のオススメなBTO PCを解説
(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
スポンサードリンク