QNAP TVS-472XTのCPUをCore i7 8700Tに換装する


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10Gb有線LANやThunderbolt3による超高速ネットワーク接続に対応し、4基の3.5インチストレージと2基のNVMe M.2 SSDを内蔵可能なハイエンドNAS「QNAP TVS-472XT」のCPUをTDP35Wの省電力で6コア12スレッドなCore i7 8700Tに換装してみたので、CPU換装の手順や、性能に変化があったのかについて簡単に紹介していきます。
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CPUをCore i7 8700Tに換装する手順について

まずは「QNAP TVS-472XT」のCPUを換装する手順について紹介していきます。
当たり前ですがCPUの換装はメモリの増設と異なり完全にメーカー保証対象外となります。NAS本体が破損しても自己責任なので基本的には真似しないことを推奨します。


まずは「QNAP TVS-472XT」の外装パネルを取り外します。これはM.2スロットやPCIE拡張スロットにアクセスする時にも行うので正規の作業です。
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「QNAP TVS-472XT」のCPUは正面向かって右側の側面にあり、2つのブロアーファンと大型アルミニウム製ヒートシンクが目印です。
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アルミニウム製ヒートシンクと2基のブロアーファンがCPUクーラーになっており、アルミニウム製ヒートシンク上にある4カ所のネジ止めを解除するとヒートシンクは簡単に取り外すことができます。
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「QNAP TVS-472XT」のマザーボード基板はこんな感じです。右下にCPUソケットがあり、その上の青い基板はQTSが収録されたフラッシュメモリです。CPUソケット左側のVRM電源回路は3フェーズですね。さらに左、ヒートスプレッダのある大きめのICはAquantia製10Gb LANコントローラーです。
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「QNAP TVS-472XT」のCPUソケットは固定金具も含めて自作PC用マザーボードでもよく見るIntel LGA1151ソケットと完全に一致しています。「QNAP TVS-472XT」の国内で市販されている型番TVS-472XT-PT-4Gには標準でデスクトップ向け高性能CPUのIntel Pentium G5400Tが搭載されています。
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Intel Pentium G5400Tは2コア4スレッド、ベースクロック3.1GHzというスペックで、エントリークラスかつ省電力モデルなのでデスクトップPCのCPUとしては決して高性能とは呼べませんが、TDP10Wクラスのモバイル向けや数世代前のCPU、聞き覚えのない低電力SoCが採用されることも珍しくないNASのCPUとしては間違いなく高性能なCPUです。
「QNAP TVS-472XT」の基本的な使い方や基本性能について解説したレビュー記事の通り、Intel Pentium G5400Tは10Gb LANのポテンシャルを最大限発揮することができます。
10Gb Lan&高性能CPUの爆速NAS「QNAP TVS-472XT」をレビュー
QNAP TVS-472XT

Intel Pentium G5400Tは名前からは分かり難いですが、メーカー仕様において『製品の開発コード名 Coffee Lake』と表記されているようにCore i7 8700KやCore i5 8400などIntel第8世代CPUに属する製品です。また、より多くのドライブベイを搭載したTVS-672XTはCore i3 8100T、TVS-872XTはCore i5 8400Tのように第8世代の上位CPUを搭載していたので、わざわざ特定CPU以外を弾くような設計はされていないだろう、と予測しました。
そこで、第8世代CPUかつTDP35Wの省電力モデルの中で最も高性能な6コア12スレッドモデルCore i7 8700Tを用意した次第です。
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なおCPUソケット的には互換性があるので、BIOSマイクロコード次第では第9世代CPUに対応している可能性も否定はできなかったものの、海外でも換装を試した例を見つけることができず、また8コア16スレッドのCore i9 9900Tは入手が難しかったというのもあって、安牌なCore i7 8700Tにしました。さすがに6コア12スレッドのCore i7 8700TでNASのCPUとしてボトルネックになることはないだろうとも思いましたし。

以上前置きが長くなりましたが、「QNAP TVS-472XT」のCPUソケットにアクセスするのは上のように非常に簡単なので、後は自作PC同様にCPUを取り換えるだけです。ちなみにIHSから漏れているシール材で気付く目ざとい方もいるかと思いますが、念のためCPUが冷えやすいように殻割りクマメタル化も施しています。
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あとは熱伝導グリスを塗ってヒートシンクを装着し直したらCPUの交換は完了です。
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「QNAP TVS-472XT」に電源を入れると特に問題も発生せず、Core i7 8700Tを認識してくれました。
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Core i7 8700Tに換装した後の性能について

CPUをCore i7 8700Tに換装した「QNAP TVS-472XT」の性能について簡単にチェックしてみました。

まず1つ分かりやすいところでNASの起動速度の比較です。
当サイトでは「QNAP TVS-472XT」と「QNAP TBS-453DX」の2種類のNASを検証しているのですが、同じQTS搭載NASなのにTBS-453DXの起動はTVS-472XTに比べて大分遅かったのでひょっとしてQNAP製NASの起動速度はCPU性能に依存しているのでは?と思った次第です。
結果は下の動画の通りで、Pentium G5400TからCore i7 8700Tに換装しても起動速度は変わりませんでした。1分くらい早くなると予想(期待)していたので意外でした。Pentium G5400Tより遅いCPUで起動が遅くなるかを試していないのでCPU性能と起動時間について断言できませんが、少なくともPentium G5400Tが起動時間においてボトルネックになることはないようです。



続いて「QNAP TVS-472XT」のようなNASの性能評価で最重要項目となるファイルコピーにおける読み出し・書き込みについて性能比較をしてみました。
検証内容についてはQNAP TVS-472XTの基本レビューの時と同じなので、以下ざっくりと紹介するだけで割愛します。
検証に使用するデータとしては、50GBの動画ファイル、80GBで多数のファイルが入ったゲームのフォルダ(The Witcher 3とRise of the tomb Raiderなどのゲームフォルダ)、1KB~1MBの画像ファイル10,000枚が入った3GBの画像フォルダ、5MB~8MBの画像ファイル1,000枚が入った7GBの画像フォルダの4種類を使用しています。
データのコピーにおいては当然ですが、元データのあるストレージの読み出し性能とコピー先の書き込み性能の両方が重要になります。測定においては書き込み先/読み出し元の対象となるストレージが必要になるため、各ストレージのコピー相手にはM.2-PCIE変換アダプタ「Aquacomputer kryoM.2」に設置したSamsung SSD 970 PRO 1TBを使用しています。
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「QNAP TVS-472XT」のCPUをPentium G5400TからCore i7 8700Tに換装してもコピー速度に大きな変化はありませんでした。唯一、誤差以上の差が出たのが、1KB~1MBの画像ファイル10,000枚が入った3GBのフォルダを使用した小容量画像ファイルを多数含むコピー書き込みですが、それでも性能差は10%強程度です。
小容量画像ファイルを多数含むコピーの読み出しと書き込みについてはPC内蔵ストレージとの性能差が特に大きかったので、CPU性能がボトルネックになっていることも可能性の1つとして考慮していたのですが、書き込みで若干の性能向上はあったものの、CPU性能は特に大きく影響しているわけではないようです。
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Core i7 8700Tに換装してもNASの起動速度やファイルコピーといった基本的な利用において性能向上は得られませんでしたが、逆に言えば、データの共有やバックアップといった単純な使用方法においては「QNAP TVS-472XT」は標準搭載のCPUであるIntel Pentium G5400Tで十分な性能を発揮できるとがわかりました。
NASの性能にCPUがどの程度影響しているのかは未知数だったので今回の検証では今後の検証に役立つ良い知見が得られたと思います。

以上、『QNAP TVS-472XTのCPUをCore i7 8700Tに換装する』でした。
QNAP TVS-472XTのCPUをCore i7 8700Tに換装する




「QNAP TVS-472XT」などマルチギガビットに対応したハイエンドNASで高速なネットワークストレージを構築するのであれば、2020年最速クラスのNVMe M.2 SSD「Samsung SSD 970 EVO Plus」や、主要メーカー製TLC型SATA SSDの中でも優れた書き込み耐性が保証されている「Samsung SSD 860 EVO」がオススメです。
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)



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