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第3世代Ryzenと同じZen2 CPUコアと、7nmプロセスで改良・製造されるRadeon Graphicsを組み合わせた、RenoirことAMD第4世代Ryzen APUのビジネスユーザー向けPROシリーズから、8コア16スレッドの最上位モデル「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」をレビューします。
8コア16スレッドAPUの「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」が、前世代最上位Ryzen 5 3400Gからどれほどの飛躍を果たしたのか、さらに競合Intelのメインストリーム向け8コア16スレッドCPUのCore i7 10700と比較して、クリエイティブタスクやPCゲーミングでどれくらいの性能を発揮するのか検証していきます。
製品公式ページ:https://www.amd.com/ja/products/apu/amd-ryzen-7-pro-4750g

AMD Ryzen 7 PRO 4750G レビュー目次
1.AMD Ryzen 7 PRO 4750Gの外観・付属品・概要
2.AMD Ryzen 7 PRO 4750Gの検証機材・動作設定
3.AMD Ryzen 7 PRO 4750Gの動作クロック・消費電力・温度
4.AMD Ryzen 7 PRO 4750Gのクリエイティブタスク性能
5.AMD Ryzen 7 PRO 4750Gのグラフィック性能とメモリOC
6.AMD Ryzen 7 PRO 4750Gのレビューまとめ
【機材協力:AMD Japan】
AMD Ryzen 7 PRO 4750Gの外観・付属品・概要
「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」の外観や付属品について簡単にチェックしておきます。またこの章では「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」の仕様等について簡単に触れておきたい概要もあれば紹介します。
「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」は2020年8月現在、『プラスチック製トレイパッケージに封入されたバルク品のみ、かつ多くの通販サイトではマザーボードとのセット購入が必須』という形式のみの販売となっており、第3世代Ryzen通常モデルのようなボックス版については未定です。

「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」を含めて第3世代Ryzenは第1/2世代Ryzenと同じAM4ソケットに対応するCPUなので、第1世代から第3世代までCPUの形状には変化はありません。裏面のCPUソケット側はLGAタイプのCPUソケットを採用するIntel製CPUと違って剣山状の金属端子が生えています。

AMD公式に発表されている基本スペックを確認すると、「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」のCPUに関する基本スペックは通常モデルRyzen 7 4700Gと共通で、メインストリーム向けCPUながら8コア16スレッドのメニーコア、ベースクロック3.6GHz、ブーストクロック4.4GHzで、TDPはiGPU非搭載のRyzen 7 3700Xと同じくTDP65Wに設定されています。

注意点としてRyzen PROシリーズに属する「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」はCPUおよびGPUの動作倍率(コアクロック)はロックされており、ユーザーによる手動オーバークロックは不可能です。Ryzen用の純正OCツールRyzen Masterにも対応していませんが、メモリについてはマザーボードBIOSから設定すれば定格の3200MHz以上にオーバークロックが可能です。

AMD Ryzen 7 PRO 4750Gに加えて、従来モデルAMD Ryzen 7 3700X、競合製品のIntel Core i7 10700やCore i7 10700Fのスペックを早見表にまとめて比較すると次のようになっています。
AMD Ryzen 7 PRO 4750G スペック簡易比較 | ||||
Ryzen 7 PRO 4750G |
Ryzen 7 3700X | Core i7 10700 |
Core i7 10700F | |
コアスレッド | 8コア16スレッド |
|||
ベースクロック | 3.6GHz | 2.9GHz | ||
全コア最大ブースト | ~4.3GHz | 4.6GHz | ||
単コア最大ブースト | 4.4GHz | 4.8GHz | ||
オーバークロック |
コア:X メモリ:O |
O | X (Z490環境ならメモリはOC可能) |
|
L3キャッシュ | 8MB | 32MB | 16MB | |
TDP | 65W | |||
CPUクーラー | X | 付属 (Wraith Prism) |
O | |
iGPU |
O | X | O | X |
メモリ ch / pcs |
2 / 4 | |||
CPU直結PCIEレーン |
PCIE3.0 16 + 4 |
PCIE4.0 16 + 4 |
PCIE3.0 16 |
|
おおよその国内価格 (北米希望小売価格) |
4.4万円 (308ドル) |
4.0万円 (329ドル) |
4.8万円 (323ドル) |
4.3万円 (298ドル) |
「Ryzen 7 PRO 4750G」に搭載されたiGPUのRadeon GraphicsはCompute Unit数8(ストリームプロセッサ数512)となっており、アーキテクチャは従来のVega Graphicsを踏襲していますが、7nmプロセスで改良されたことによって定格コアクロックは2100MHzと従来モデル比で50%も高速化しています。
第3世代Ryzen APUの最上位モデルであるRyzen 5 3400Gに搭載されていたVega11はCompute Unit数11、定格コアクロック1400MHzだったので、単純計算で10%程度の性能向上が期待できます。システムメモリ周波数や7nmプロセスによる改良によって実性能では20%程度の高速化を果たしているとのこと。

「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」など第4世代Ryzen APUと前世代Ryzen APUに搭載されたiGPUのスペックを比較すると次のようになっています。
AMD第4世代Ryzen APU iGPUスペック一覧 | ||||||
APU | コア/ スレッド |
iGPU コア数 |
iGPU コアクロック |
定格メモリ周波数 (VRAM共有) |
||
Ryzen 7 4700G (PRO 4750G) |
8 / 16 | Radeon 8 (7nm) SP:512 | 2100MHz | 3200MHz | ||
Ryzen 5 4600G (PRO 4650G) |
6 / 12 | Radeon 7 (7nm) SP:448 |
1900MHz | 3200MHz | ||
Ryzen 5 3400G | 4 / 8 |
Vega 11 (12nm) SP:714 |
1400MHz | 2933MHz | ||
Ryzen 3 4300G (PRO 4350G) |
4 / 8 | Radeon 6 (7nm) SP:384 |
1700MHz | 3200MHz | ||
Ryzen 3 3200G | 4 / 4 |
Vega 8 (12nm) SP:512 |
1250MHz | 2933MHz |
今回レビューする「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」の基本スペックは第4世代Ryzen APUの通常モデルRyzen 7 4700Gと共通ですが、ビジネスユーザー向けRyzen PROシリーズに属する製品となっており、独自の特長としてセキュリティ機能「AMD PRO Technology」が利用できます。

AMD PRO Technologyは、一部のIntel製CPUがサポートするセキュリティ機能Intel vProに対する競合機能になっています。

ECCメモリやセキュリティ機能などビジネスユーザー向けのCPU機能についてAMD製CPUとIntel製CPUの対応状況を簡単にまとめると次のようになっています。()内にはRyzen 7 PRO 4750Gと同じく8コア16スレッドCPUの一部を例に挙げています。
ビジネスユーザー向け機能の対応比較 |
||||||
CPU | ECCメモリ対応 |
セキュリティ機能 |
||||
AMD | Ryzen PRO (Ryzen 7 PRO 4750G) |
O | AMD PRO Technology | |||
Ryzen 4000G, 3000 (Ryzen 7 4700G, 3700X) |
X |
|||||
Intel | Xeon-W 1200 (Xeon-W 1270/P) |
Intel vPro |
||||
Core 10th (Core i7 10700/K/F) |
X | Intel vPro (一部、非サポートのモデルも) |
「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」などAMD Ryzen 4000Gシリーズについては2020年6月に新たに発売されたB550チップセットを搭載したマザーボードがネイティブサポートするほか、昨年発売されたX570チップセットを搭載したマザーボードもBIOSアップデートで対応します。 B450やA300などの旧チップセットはAMDの公式サポートからは外れているので注意が必要です。

なおB550マザーボードに対してもAMD Ryzen 4000Gシリーズに最適化された新マイクロコードAMD AGESA ComboV2 1.0.0.2を含むBIOSアップデートがリリースされています。

300/400シリーズの旧チップセットについてはAMDの公式サポート外なので、AMD Ryzen 4000Gシリーズが完全に正常動作する保証はないのですが、マザーボードメーカーからは一部製品に対してベータBIOSという形で対応BIOSが提供される可能性があります。

・「ASRock DeskMini X300」をレビュー。Ryzen 4000Gに完全対応!

AMD Ryzen 7 PRO 4750Gの検証機材・動作設定
以下、「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」の各種検証を行うベンチ機、および比較対象となる各CPUのベンチ機の詳細となります。AMD AM4(X570/B550/X470)環境 テストベンチ機の構成 | |
CPU | 【第4世代Ryzen APU】 AMD Ryzen 7 PRO 4750G (レビュー) AMD Ryzen 5 PRO 4650G (レビュー) AMD Ryzen 3 PRO 4350G (レビュー) 【第3世代Ryzen】 AMD Ryzen 9 3900X (レビュー) AMD Ryzen 7 3700X (レビュー) AMD Ryzen 5 3400G (レビュー) |
マザーボード (4000G) |
MSI MPG B550I Gaming Edge WiFi (レビュー) |
マザーボード (3000) |
MSI MEG X570 ACE (レビュー) |
マザーボード (3000G) |
ASRock Fatal1ty X470 Gaming-ITX/ac (レビュー) |
CPUクーラー | Corsair H150i PRO RGB (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
メインメモリ (4000G/3000G) |
G.Skill Trident Z Black F4-3733C17D-32GTZKK DDR4 16GB*2=32GB (4000G) 3600MHz, CL16-16-16-36-CR1 (3000G) 3200MHz, CL16-16-16-36-CR1 |
メインメモリ (3000) |
G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) 3600MHz, CL16-16-16-36-CR1 |
ビデオカード(共通) | ZOTAC RTX 2080Ti AMP Extreme Core (レビュー) |
システムストレージ(共通) | Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
OS(共通) | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット(共通) | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |


AMD AM4(X570)環境では検証機材マザーボードとして「MSI MEG X570 ACE」を使用しています。「MSI MEG X570 ACE」でCPU動作設定を標準設定のAutoとした場合、各CPUは仕様通りの定格動作で問題なく動作するので、測定に当たってソフトウェア的には特に個別の設定は行っていません。
ただしAMD Ryzen CPUではCPUクーラーの冷却性能が十分であれば電力制限を解除して自動的に動作クロックを引き上げる機能「XFR (Extended Frequency Range)」が効くため、電力制限の閾値となるPPTが仕様値のTDPよりも高く設定されています。例えばRyzen 9 3900XではTDP105Wを上回って仕様上の上限値となるPPT 142W以下で動作します。

Ryzen CPUの仕様値TDPと標準PPT | ||
仕様値TDP | 標準PPT | |
Ryzen 9 3950X, Ryzen 9 3900XT, Ryzen 9 3900X, Ryzen 7 3800X, Ryzen 7 2700X |
105W | 142W |
Ryzen 5 3600X, Ryzen 5 2600X | 95W | 128W |
Ryzen 7 PRO 4750G, Ryzen 7 3700X, Ryzen 5 3600, Ryzen 5 3500X, Ryzen 3 3300X, Ryzen 7 2700 |
65W | 88W |
CPU Package Power(CPU消費電力)がTDPを上回るPPTの範囲内で制限されるという動作は、CPU Package PowerがそもそもTDPの範囲内に収まるPCゲーム性能には基本的に影響しないものの、クリエイティブタスク性能には大きく影響し、また消費電力の測定にも当然影響します。そこでPCゲーム性能の測定を除いて、第3世代Ryzenの中でTDPを超えるCPU消費電力になるものについては、参考値としてPPTを仕様値TDPに一致させたケースについても測定を行います。
・Ryzen CPUの検証でPPT=TDPを参考値として測定する理由

Intel LGA1200(Z490)環境 テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9-10900K(レビュー) Intel Core i9-10900(レビュー) Intel Core i7-10700K(レビュー) Intel Core i7-10700F(レビュー) |
マザーボード | MSI MEG Z490I UNIFY (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) 3600MHz, CL16-16-16-36-CR1 |
その他 |
レビュー対象CPUのベンチ機と共通 |
第3世代Ryzen検証環境のシステムメモリには、第3世代Ryzen&X570マザーボードのプラットフォームに最適化されたハイパフォーマンスOCメモリの最速モデル「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」を使用しています。3600MHz/CL14の最速モデル、3200MHz/CL14や3600MHz/CL16といった定番スペックがラインナップされ、高級感のあるヒートシンクや8分割ARGB LEDを搭載してデザイン面でも優れる「G.Skill Trident Z Neo」シリーズは、第3世代Ryzenの自作PCで性能を追求するなら間違いのないオススメなOCメモリです。
・「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」をレビュー

ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する2019年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、Intel Core-XやAMD Ryzen TRのようなハイエンドデスクトップ環境はもちろん、メインストリーム向けでもハイパフォーマンスな環境を目指すのであれば、システムストレージ用に一押しのSSDです。
・「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー

CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。Thermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスで適量が塗布されていれば、CPUクーラー固定時の圧着でヒートスプレッダ全体へ自然に伸びるので塗り方を気にする必要もありません。

サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
・「Thermal Grizzly Carbonaut」はRyzen 9 3900Xを冷やせるか!?

AMD Ryzen 7 PRO 4750Gの動作クロック・消費電力・温度
「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」に関する検証のはじめに、「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」の動作クロック、消費電力、温度など同CPUの基本的な動作についてチェックしていきます。「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」は8コア16スレッドのCPUで、AMD公式の仕様ではベースクロック3.6GHz、単コア最大ブーストクロック4.4GHzとなっています。

なお「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」のCPUスペックはRyzen 7 3700Xと同等ですが、L3キャッシュの容量が3700Xの32MBに対して、8MBしかありません。

HWiNFOから「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」のコアクロックの挙動を確認したところ、確かに負荷の軽い場面では最大4.4GHz程度で動作するコアがありました。

「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」のAMD公称仕様値としてはTDP65WのCPUですが、実際の内部設定としては定格電力制限『PPT:88W、TDC:65A、EDC:90A』が許容されています。「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」はCPUクーラーによるCPUの冷却が十分であれば(CPU温度が閾値95度以下であれば)、PPT88Wの制限下で動作しXFRによって仕様値ベースクロック3.6GHzよりも高い動作クロックへ引き上げられます。

「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」をB550マザーボード「MSI MPG B550I Gaming Edge WiFi(BIOS:112)」と組み合わせてCPU動作をBIOS標準設定とし、CinebenchやAviult&x264エンコードを実行したところ、いずれのケースにおいても全8コアへ同時に大きな負荷がかかった時の動作クロックは平均4.30GHz程度でした。この時のCPU Package Powerは82W前後で推移しています。

「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」は手動オーバークロックには対応していませんが、マザーボードBIOSから電力制限の変更は可能です。
MSI MPG B550I Gaming Edge WiFi(BIOS:112)においては「System Configuration AM4」の名前で設定値が用意されており、標準設定の”65W”に加えて、”45W”と”35W”の3種類から電力制限を選択できます。他社製マザーボードについては未確認ですが、MSI MPG B550I Gaming Edge WiFiでは今のところ任意のPPTを適用する設定項目は用意されていません。
45W設定における電力制限は『PPT:54W、TDC:45A、EDC:65A』、45W設定における電力制限は『PPT:42W、TDC:39A、EDC:55A』となっています。

MSI MPG B550I Gaming Edge WiFiのSystem Configuration AM4からTDP制御を行った時の「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」のCPU Package Powerやコアクロックの挙動について、動画エンコードを例にして簡単にチェックしてみました。
動画エンコードによってCPUにフル負荷をかけた時、TDP65Wの標準設定ではPPT:88Wが許容されているので、終始、85W以上のCPU Package Powerが生じています。
一方で省電力モードの45Wや35WではPPTとして54Wと42Wが許容されているので、テスト開始から5分程度はそれに応じたCPU Package Powerが生じていますが、5分を経過した辺りでCPU Package Powerが45Wと35Wに制限される様子が確認できます。PROは非対応ですがRyzen Masterで確認できるPPT(短期間PPT)とは別に、長期間PPTのようなパラメーターがあるようです。

各TDP設定においてテスト中のコアクロックは当然ながらCPU Package Powerに応じて変化します。「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」はTDP65W(PPT:88W)において全コア4.3GHz程度で動作しますが、TDP45W設定ではPPT:54Wが許容される開始直後は3.9GHz程度、PPT:45Wに下がる後半では3.7GHz程度となります。さらにTDP35W設定ではPPT:42Wが許容される開始直後は3.6GHz程度、PPT:35Wに下がる後半では3.3GHz程度となります。
コアクロックから概算すると、TDP45Wモードでは定格の90%前後、TDP35Wモードでは定格の80%程度の性能を発揮でき、PPT:65W程度の電力制限であれば、数%程度の性能低下に収まります。

続いてCPU消費電力の検証結果をチェックしていきますが、当サイトのCPUレビューでは主として”CPU温度への影響要因”という意味においてCPU消費電力を評価しているので、動画のエンコードによって長期間電力制限が効いている状態の平均的な消費電力をCPU消費電力として比較します。
個人的な意見としては短期間電力制限は短期間かつCPU温度によっても制御されるのでCPU温度への影響要因として比重は小さく、また瞬間ピーク電力はせいぜいがTDP+100W程度なので、マザーボードVRM電源の破損を心配するほどではなく、その程度の電力超過は電源ユニットで十分吸収できるので、評価対象としてあまり意味がないと思っています。
またCPU製品仕様のTDPについては、定義がIntel/AMDで厳密には異なり、各社の具体的な測定・算出方法も不明なので、CPU動作クロックを含めて総合的に判断する必要があるものの、基本的には長期間電力制限時の消費電力がTDP仕様値とほぼ一致、もしくはTDP仕様値を下回れば正常であると評価します。
当レビュー記事では簡単のため割愛しますが、CPUの消費電力に関する評価基準の補足として下記の記事も参考にしてください。
・2019年最新CPUの消費電力・発熱・TDP・温度について - 爆熱評価のウソほんと

CPU消費電力の測定には電源ユニット「Corsair HX1200i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの出力ではなく変換ロスを差し引いたシステム全体への入力電力をチェックしています。なお電源ユニットに対する実際の最大瞬間負荷は測定値より50~100W上回る場合があるので電源ユニットの電源容量選択の参考にする場合は注意してください。

CPUの消費電力や温度の測定を行う負荷テストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、Aviutl&x264を使って動画のエンコードを行います。動画エンコードの同時実行数については4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列実行、16コア以上は3並列実行としています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTやPrimeなど専用負荷ソフトを使用しているレビューもありますが、管理人の私見としてはCPU負荷が非現実的なので、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースを想定した場合、ほぼ最大のCPU負荷となるx264による動画エンコードとストレステストに採用しています。

「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」と比較対象の各CPUについて、上記負荷テスト中の”平均値を消費電力”、”最大値を瞬間的な最大電源負荷”と表記した場合、システム消費電力の測定結果は次のようになっています。
「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」のCPUにフル負荷をかけた時の消費電力は118.6W、瞬間最大負荷は134Wでした。iGPUに対して3DMark Fire Strikeで負荷をかけると消費電力は62.4Wとなりアイドル比で+30W程度ですが、CPUとiGPUへ同時に負荷をかけても瞬間最大負荷は20W程度伸びるものの、消費電力はほぼ同じです。(CPUコアとSOCコアの合計値に電力制限があり、グラフィック負荷時にSOCコアの消費電力が上がるため)
またiGPUだけに3DMark Fire Strikeで負荷をかけた場合は興味深く、Ryzen 5 3400Gよりも20%程度の高速化を果たしている「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」のほうが低消費電力となっており、7nmプロセスで改良されたRadeonグラフィックスのワットパフォーマンスの向上をはっきりと確認できます。

続いてCPU温度について、上のグラフの通り最大負荷時の消費電力がRyzen 7 PRO 4750GとRyzen 5 3400Gではほぼ同等なので、簡単に360サイズ簡易水冷CPUクーラーで冷やして動画エンコード時のCPU温度を比較してみました。

CPU消費電力(発熱)が同じであっても、CPUダイサイズ、IHSの大きさ、TIMの種類などによってCPU温度は大きく変わるのですが、Ryzen 7 PRO 4750GとRyzen 5 3400Gについては、CPUコアクロックの制御ソースでもあるCPU温度(Tdie/Tctl)はほぼ同等でした。

以上の消費電力と温度のグラフの通り、「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」は最大負荷時において前世代最上位のRyzen 5 3400Gと比較して同等の消費電力かつCPU温度なので、Ryzen 5 3400Gと組み合わせてよく使用される、ASRock Deskmini A300(対応BIOS待ち)やIn Win B1など電源ユニットを含むPCケース、Noctua NH-L9aやCRYORIG C7などのロープロファイルCPUクーラーと、電力的・温度的に互換と考えていいと思います。

・「ASRock DeskMini X300」をレビュー。Ryzen 4000Gに完全対応!

AMD Ryzen 7 PRO 4750Gのクリエイティブタスク性能を比較
「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」のクリエイティブタスク性能をRyzen 7 3700XやCore i7 10700と比較してチェックしていきます。「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」は、8コア16スレッドのCPUであり、単コア最大動作クロックは4.4GHz、全コア最大動作クロックは4.3GHz程度です。PPT:88Wの電力制限が定格仕様通り適用されている場合、3Dレンダリングや動画のエンコードなど全コアに対して大きく負荷がかかる時の実動クロックは4.3GHz程度となります。
「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」は全コア4.30GHz程度で動作するので、CPUのマルチスレッド性能を測定するベンチマークで定番のCinebench R15のスコアは2100程度、Cinebench R20のスコアは4900程度でした。


PPT:52W以下に制限される45W設定においても、Cinebench R20のスコアは4500程度と性能低下は10%ほどに抑えられています。

CPU性能の詳細な検証に用いるクリエイティブタスクについてはCPU使用率がフルロードになる3Dレンダリング、動画エンコード、RAW現像、ゲームビルドの4種類となっています。
具体的な測定内容は、3Dレンダリングはオープンソース3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト、動画のエンコードは無料で利用できる動画編集ソフトとして国内外で多数のユーザーがいる「Aviutl」のx264エンコーダによるフルHD動画のエンコード、RAW現像はDxO PhotoLab(PRIMEあり、5472×3648解像度のRAW画像ファイル 100枚)、デモプロジェクト「Infiltrator」を使用したUnreal Engine 4によるゲームビルドです。
3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフトで測定する3Dレンダリング性能についてはレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、比較対象の中で最も遅いものを基準にして、「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。

x264エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。

DxO PhotoLabによるRAW現像速度について「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。

「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド性能については、ビルド時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、比較対象の中で最も遅いものを基準にして、「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」を含めた各種CPUのビルド速度を性能比としてグラフ化しました。

8コア16スレッドCPU「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」のクリエイティブタスク性能を簡単にまとめると下のグラフのようになっています。()内にはクリエイティブタスクでCPUに100%負荷がかかった時の典型的なシステム消費電力を記載しています。いずれもiGPU使用時ですが、3700XだけはGPUにGeForce GT 1030を搭載した時の消費電力です。
Ryzen 7 PRO 4750Gは全コア4.3GHz程度で動作する定格設定の場合、同じく8コア16スレッドCPUのRyzen 7 3700XやCore i7 10700と概ね同等の性能を発揮します。
ただしUnreal Engine 4だけは大きくスコアを落としました。Intel製CPUのほうが若干優位になりやすいタスクではあるのですが、Ryzen 7 3700Xと比較しても差が大きいので、3700Xの32MBに対して8MBと少ないキャッシュが影響しているのではないかと思います。

また「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」にTDP45W(PPT:45W~54W)やTDP35W(PPT:35W~42W)の電力制限を適用した時のクリエイティブタスク性能をまとめると次のようになっています。
Intel第10世代Core i7が8コア16スレッドCPUとして相応の性能を発揮しようとするとPL1:95W相当が要求されるのに対して、「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」はPPT:65Wもあれば8コア16スレッドCPUとして十分な性能が発揮でき、第3世代RyzenやRyzen 4000Gシリーズに採用される7nmプロセス Zen2アーキテクチャのワットパフォーマンスの高さを再認識できる結果です。

ちょうど同レビューの公開前日にASRockから「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」などRyzen 4000Gに対応するASRock DeskMini X300と、Intel第10世代CPUに対応するASRock DeskMini H470が発表されました。
ASRock DeskMini H470に搭載可能な最上位CPUは10コア20スレッドのCore i9 10900なので、一見、ASRock DeskMini X300に搭載可能な「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」よりも高性能に思えますが、ワットパフォーマンスの問題でコアスレッド数の差に応じた性能差になるとは限りません。

「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」がPPT:65W程度で8コア16スレッドCPUとして十分に性能を発揮できるのに対して、Core i9 10900が10コア20スレッドCPUとして相応の性能を発揮するにはPL1:125W程度が必要になります。
ASRock DeskMini H470ではPL1:90Wまでの電力制限解除に対応していますが、当然、消費電力は増加するので静音性とトレードオフになります。
120サイズ空冷CPUクーラーが搭載できる一般的なデスクトップPCでは大した影響はありませんが、ASRock DeskMiniのようなコンパクトPCでは搭載できるCPUクーラーのサイズ(性能)にも制限があるので、「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」などRyzen 4000Gシリーズのワットパフォーマンスの高さが活きてきます。

AMD Ryzen 7 PRO 4750Gのグラフィック性能とメモリOCについて
「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」のグラフィック性能やメモリOCについてチェックしていきます。「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」などRyzen 4000Gシリーズも第3世代Ryzenと同様にインターコネクトInfinity Fabricの動作周波数はメモリ周波数と同期しており、加えてRyzen APUでは統合グラフィックスであるRadeonグラフィックスのビデオメモリはシステムメモリと共有されているので、メモリ周波数が総合的なパフォーマンス、特にグラフィック性能へ大きく影響します。
「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」などRyzen PROシリーズはCPUコアクロックやGPUコアクロックのOCには非対応ですが、メモリはOCできるのでメモリOCによって大幅なパフォーマンス向上が狙えます。

「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」は第3世代Ryzenと同じくZen2アーキテクチャが採用されているので、メモリ周波数は、シングル/デュアルランクのメモリ2枚組み構成において対応する定格最大が3200MHz、Infinity Fabricが1:1同期可能な一般的な常用OC限界が3600MHzとなっています。
なお前世代Ryzen 3000Gシリーズは3000番台ながらCPUアーキテクチャはRyzen 7 2700Xなど第2世代のZen+だったのでメモリ周波数は定格最大が2933MHz、一般的な常用OC限界が3200MHzでした。単純なiGPUスペックだけでなく、このメモリ周波数の違いもグラフィック性能の差に影響します。

実際に「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」の環境でメモリOCを試してみた結果を紹介すると、
メモリ周波数3600MHzかつメモリタイミング14-15-15-35-CR1で実用最速クラスのOCプロファイルを収録する「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14D-16GTZN」や「Team T-FORCE Xtreem ARGB DDR4 TF10D416G3600HC14CDC01」は8GB×2=16GBで安定動作を確認できました。

他には大容量な16GB×2=32GBの「G.Skill Trident Z Black F4-3733C17D-32GTZKK」を使用したところ、メモリモジュールはデュアルランクですが、第3世代Ryzenにおいてスイートスポットと公式スライドでも紹介されている、メモリ周波数3600MHzかつメモリタイミング16-16-16-36-CR1が安定動作しました。

なおRyzen 7 PRO 4750GなどRyzen 4000Gではシステムメモリの一部がiGPUのビデオメモリとして共有されているため、メモリ周波数を3600MHz以上にOCすると上のRAM Testのようなメモリ安定性テストをクリアできても、PCゲームなどでiGPUに負荷がかかるとクラッシュする場合があります。
Ryzen 4000GなどAMD Ryzen APUでメモリOCを行う場合は、Night Raid Stress Testなどを使用してメモリOC時のiGPUの安定性もチェックしてください。
RAM Testなどメモリ安定性テストをクリアできるのに、iGPU負荷でクラッシュする場合は、SOC電圧を固定電圧で1.100~1.200V、もしくはオフセットで+0.050~0.100Vに昇圧するだけでiGPU負荷でも安定することが多いです。

iGPUとしてRadeon Graphicsを搭載しているとはいえ、CPUアーキテクチャは第3世代Ryzenと同じくZen2が採用されているので、3600MHz以上のプロファイルを収録したメーカー動作確認済みOCメモリであれば、「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」でも3600MHzのメモリOCはInfinity Fabricが1:1同期を含めて比較的簡単に安定動作を期待できると思います。
メモリOCに関するさらに詳しい情報やオススメOCメモリについてはこちらの記事を参照してください。
・【できる!メモリOC】 OCメモリの選び方から設定まで完全解説

グラフィック性能への影響が大きいメモリOCについて簡単に解説が済んだので、続いて本題となる「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」のグラフィック性能をチェックしていきます。
グラフィック性能比較で最もメジャーな3DMarkで現在主流なDirectX11のベンチマーク「FireStrike」のグラフィックスコアについて、「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。

3DMarkのCPU統合グラフィックス向けDirectX12ベンチマーク「NightRaid」のグラフィックスコアについて、「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。

国内最大手かつ大人気のMMO RPG「ファイナルファンタジーXIV」の2019年最新大型アップデート「FFXIV: 漆黒のヴィランズ」の公式ベンチマークソフトで、「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」のPCゲーミング性能を測定してみました。FFXIV: 漆黒のヴィランズの公式ベンチマークソフトでは総合スコアを1.5×100で割った値がちょうど平均FPSになっています。
「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」は、グラフィック品質をデスクトップ向け標準にすると、1280×720のHD解像度まで下げてやっと平均60FPSの快適水準を上回ります。1600×900なら8000近くはマークできるのでグラフィック設定を多少下げれば平均60FPSを狙えそうです。1920×1080のフルHD解像度となると公式ベンチの評価は快適となっていますが、平均40FPSくらいなのでちょっと厳しいというのが正直な感想です。



また2020年最新PCゲームと比較しても高画質でグラフィック負荷が重いPCゲームに分類されるシングルプレイ用ロールプレイングゲーム「ファイナルファンタジーXV」の公式ベンチマークソフトで、「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」のPCゲーミング性能を測定してみました。
「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」は、1280×720のHD解像度、グラフィック設定:軽量品質においてベンチマークスコアは4600程度、快適度評価は「やや快適」でした

AMD Ryzen 7 PRO 4750Gのレビューまとめ
「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ or 概要
- AMD初の8コア16スレッドAPU
- 定格でメモリ周波数3200MHzに対応
- 定格のPPT88W制限下において全コアが実動平均で4.3GHz程度
- TDP45W(3.7~3.9GHz)、TDP35W(3.3~3.6GHz)の省電力モード
- 前世代最上位3400Gを2倍以上も上回るクリエイティブタスク性能
- 前世代最上位3400Gよりも20%程度高いiGPUのグラフィック性能
- Core i7 10700よりもCPUの電力効率に優れ、iGPUの性能は2倍以上
- 8コア16スレッドAPUながら税込み4.4万円程度(2020年8月現在)
- Ryzen PROシリーズなのでCPU・GPUのコアクロックは倍率ロックでOC非対応
- Unreal Engine 4によるゲームビルドなど3700Xや10700と比較して性能の低いタスクもある
- AMD正式サポートのマザーボードはX570とB550のみ
- マザーボードのセット購入必須なバルク版のみの取り扱い(2020年8月現在)
待望の8コアAPU「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」は、前世代最上位Ryzen 5 3400Gと同等の消費電力で2倍以上も上回るクリエイティブタスク性能(CPUマルチスレッド性能)を発揮し、iGPUについても7nmプロセスで改良されたRadeonグラフィックスによって20%高い性能をより低い消費電力で実現し、”飛躍”という表現がピタリとはまる進化を遂げています。
8コアになったことで”供給電力は足りるのか”、”小型クーラーで冷やせるのか”は気になるところでしたが、消費電力やCPU温度については前世代最上位Ryzen 5 3400Gと同等なので、Ryzen 5 3400Gが運用できるシステム(CPUクーラーや電源)であれば、CPU(と必要に応じてマザーボード)を移植するだけでそのまま運用できます。
競合Intelの8コア16スレッドCPUであるCore i7 10700と比較しても、CPUマルチスレッド性能は同等ですが、Intel第10世代Core i7がコアスレッド数相応の性能を発揮するのにPL1:95W程度を要求するのに対して、「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」はRyzen 7 3700Xと同様にPPT:65Wで十分な性能を発揮できる電力効率の高さは魅力で、ASRock Deskmini A300やIn Win B1のような大型CPUクーラーと搭載できないコンパクトPCにおいて静音性を損なうことなく性能を追求できるというメリットがあります。
iGPUに目を向けても、Intelのデスクトップ向けCPUで一般に搭載されているUHD Graphics 630の2倍以上、Intel製iGPUでは現状最速のIris Plus Graphics(64EU)よりも70%も高い性能を「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」は発揮します。
流石に最新高画質ゲームは難しいですが、オーバーウォッチやフォートナイトのような軽量なe-Sports系PCゲームなら十分対応が可能ですし、2Dイラストや動画編集などのクリエイティブタスクでCPUの足を引っ張らず作業をサクサク行えるだけのグラフィック性能は備えています。
「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」などRyzen 4000Gシリーズは2020年8月現在、『プラスチック製トレイパッケージに封入されたバルク品のみ、かつ多くの通販サイトではマザーボードとのセット購入が必須』となっており、対応マザーボードを購入済みのユーザーにとっては残念な形態です。せめて従来のバルク品CPUのようにCPUクーラーやメモリとのセット購入も可能にして欲しいところ。
8コアCPUでビデオカードを必要としない容積5L前後のコンパクトPCを組むのであれば、高電力効率かつ高グラフィック性能な「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」がマストバイと言い切って間違いない、オススメの製品です。
以上、「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」のレビューでした。

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AMD Ryzen 7 PRO 4750G レビュー
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) August 7, 2020
✅8コア16スレッドのAPU
✅3400Gと同電力で2倍以上も上回るクリエイティブタスク性能
✅Core i7 10700よりもCPUの電力効率に優れ、iGPU性能は2倍以上
⛔UE4など3700Xや10700と比較して性能の低いタスクも
⛔X570とB550のみ正式対応https://t.co/iZSvUXQvjz
「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」は気になるけど、「自作PCを組むのが心配……」という人には、サイコムやPCショップアークからリリースされているASRock DeskMini X300をベースにしたBTO PCがオススメです。
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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