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2020年最新のTLC型96層3D NANDメモリチップとSilicon Motion製SM2262ENコントローラーを採用し、従来モデルよりも書き込み速度の高速化を果たしたハイエンドNVMe M.2 SSDのアップグレードモデル「Kingston KC2500 1TB(型番:SKC2500M8/1000G)」をレビューします。
製品公式ページ:https://www.kingston.com/jp/ssd/kc2500-nvme-pcie-ssd
データシート:https://www.kingston.com/datasheets/kc2500_jp.pdf
Kingston KC2500 1TB レビュー目次
1.Kingston KC2500について
2.Kingston KC2500 1TBの外観
3.Kingston KC2500 1TBの検証機材と基本仕様
4.Kingston KC2500 1TBのベンチマーク比較
5.Kingston KC2500 1TBの連続書き込みについて
6.Kingston KC2500 1TBの温度とサーマルスロットリングについて
7.Kingston KC2500 1TBの実用性能比較
8.Kingston KC2500 1TBのデータコピー・ゲームロード比較
9.Kingston KC2500 1TBのレビューまとめ
【機材協力:Kingston】
Kingston KC2500について
「Kingston KC2500」はメモリチップにTLC型96層3D NAND、メモリコントローラーにSilicon Motion SM2262ENが採用された、NVMe(PCIE3.0x4)接続でM2280フォームファクタのM.2 SSDです。。「Kingston KC2500」にはSSD容量として250GB(型番:SKC2500M8/250G)、500GB(型番:SKC2500M8/500G)、1TB(型番:SKC2500M8/1000G)、2TB(型番:SKC2500M8/2000G)の4モデルがラインナップされています。
「Kingston KC2500」シリーズのアクセススピードは容量によって若干異なりますが、最大でシーケンシャル読出3500MB/s、シーケンシャル書込2900MB/s、ランダム読出375,000 IOPS、ランダム書込300,000 IOPSの高速アクセスを実現しています。
「Kingston KC2500」シリーズのMTBF(平均故障時間)は200万時間、書込耐性は250GBが150TBW、500GBが300TBW、1TBが600TBW、2TBが1200TBWとなっており、メーカーによる製品保証期間は5年間です。
Kingston KC2500 スペック一覧 |
||||
容量 | 250GB (SKC2500M8/250G) |
500GB (SKC2500M8/500G) |
1TB (SKC2500M8/1000G) |
2TB (SKC2500M8/2000G) |
コントローラー |
Silicon Motion SM2262ENG | |||
メモリー | TLC型96層3D NANDメモリチップ | |||
キャッシュ |
256MB |
512MB | 1024GB | 2048MB |
連続読出 | 3500MB/s | |||
連続書込 | 1200MB/s | 2500MB/s | 2900MB/s | |
4Kランダム読出 | 375,000 IOPS/s | |||
4Kランダム書込 | 300,000 IOPS/s | |||
消費電力 | 3mW(アイドル)、2.1W(読み出し最大)、7W(書き込み最大) | |||
動作温度範囲 | 0°C~70°C | |||
MTBF | 200万時間 | |||
耐久性評価 | 150TBW | 300TBW | 600TBW | 1200TBW |
保証期間 | メーカー5年 |
Kingston KC2500 1TBの外観
まず最初にKingston KC2500 1TBの外観や付属品について簡単にチェックしておきます。Kingston KC2500シリーズは製品情報が描かれた厚紙にプラスチック製スペーサーが埋め込まれた簡素なパッケージで梱包されています。
厚紙の封を開いてプラスチック製スペーサーを取り出すと、SSD本体に加えて、ストレージクローンアプリケーションのシリアルキーが記載されたシートも入っていました。
Kingston KC2500シリーズのSSD本体デザインについては普通にM.2 2280サイズ、M-Key型のM.2 SSDです。PCB基板は黒色になっています。
Kingston KC2500シリーズの表面にはM.2端子を右端として、右からメモリコントローラーと4枚のメモリチップが実装されています。
Kingston KC2500シリーズの1TBモデルについては背面にメモリチップとキャッシュメモリが実装される両面実装でした。背面には2枚のキャッシュメモリが実装されているので、共通基板であると考えた場合、2TBモデルだけでなく、250GB/500GBの容量下位モデルも両面実装の可能性が高そうです。
大きい方のチップはメモリチップで表裏合わせて8枚、小さい方はDRAMキャッシュで裏面に2枚が実装されています。
発熱の大きいメモリコントローラーのチップ表面にはニッケルメッキの金属プレートを装着して放熱を補助・促進しています。
Kingston KC2500 1TBの検証機材と基本仕様
「Kingston KC2500 1TB」の各種検証を行う環境としては、Intel Core i9 9900K&ASUS WS Z390 PROなどで構成されているベンチ機を使用しました。構成の詳細は下記テーブルの通りです。テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9 9900K(レビュー) Core/Cache:5.1/4.7GHz, 1.300V 殻割り&クマメタル化(レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) 4000MHz, CL17-17-17-37-CR2 |
マザーボード |
ASUS WS Z390 PRO (レビュー) |
ビデオカード | 【基礎性能検証用】 MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC (レビュー) 【PCゲームロード時間検証用】 ZOTAC RTX 2080Ti AMP Extreme Core (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB MZ-N6E1T0B/IT (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製3bit-MLC型64層V-NANDのメモリチップを採用するメインストリーム向け最新SATA接続M.2 SSD「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」を使用しています。「Samsung SSD 860 EVO M.2」は2.5インチSATA SSDと同等のパフォーマンスをケーブルレスで発揮できる手軽さが魅力です。Samsung SSD 860 EVOの容量1TB以上のモデルは大容量データの連続書き込みにおける書き込み速度の低下というTLC型SSDの欠点も解消されているので、大容量ファイルをまとめて入れても余裕のあるメインストレージとしてお勧めのSSDです。
・「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」をレビュー
「Kingston KC2500 1TB」のボリュームをWindows10上で作成したところ、空きスペースは931GBでした。
Kingston KC2500 1TBのベンチマーク比較
「Kingston KC2500 1TB」の性能を測るためストレージに関する基本的なベンチマークソフトを使用して測定を行います。比較対象として同じくNVMe M.2 SSDの「Samsung SSD 970 PRO 1TB(レビュー)」、「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB(レビュー)」、「Crucial P5 1TB(レビュー)」、「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB(レビュー)」、およびSATA SSDの「Samsung SSD 860 PRO 1TB(レビュー)」、「Samsung SSD 860 EVO 1TB(レビュー)」等でも同様の測定を行いました。まずはCrystalDiskMark7.0.0f (8GiB)について、「Kingston KC2500 1TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
「Kingston KC2500 1TB」のベンチマークススコアは連続読み出し3500MB/s、連続書き込み3200MB/sとなりました。製品仕様の通りの超高速な連続アクセススピードです。
ATTO Disk Benchmark 4.00.0f2(512B-64MB, 8GB, QD1/QD4)について、「Kingston KC2500 1TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
ATTO Disk Benchmarkはブロックサイズ別のシーケンシャル性能を主にチェックするベンチマークなので4KB~1MBを抜粋してリード/ライト性能をグラフにして比較しました。
AS SSD Benchmark v2.0.6821.41776(5GB)について、「Kingston KC2500 1TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
PCMark8 ストレージテストについて、「Kingston KC2500 1TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
Kingston KC2500 1TBの連続書き込みについて
「Kingston KC2500 1TB」に連続書き込みを行った場合の動作についてチェックします。TLC型やQLC型と呼ばれる3bit以上のマルチレベルセルで動作するNANDが採用されているSSDでは、マルチレベルセル化によって遅くなる書き込み速度の底上げのため、NANDメモリの一部を高速キャッシュ領域とする機能が実装されています。
2020年現在、TLCやQLCの記憶領域を動的にSLC化する製品が多いので、この高速キャッシュ領域のことをSLCキャッシュと呼ぶことにします。(可能性としてTLC型SSDやQLC型SSDがMLCで高速キャッシュを構築することもありうる)
このようなSLCキャッシュを有するSSDにおいては、連続した大容量の書き込みによって書き込み総量がSLCキャッシュを超過した場合、書き込み速度がステップ状にガクッと下がります。
例えば600MB/sが理論的な上限速度となるSATA SSDの場合は、動画ファイルなど数十GB以上の単一ファイルの連続書き込みが発生すると、SLCキャッシュ超過後はCrystalDiskMarkなどベンチマークソフトで表示される500MB/s程度の連続書き込み速度を維持できず、100~200MB/sまで書き込み速度が低下する可能性があります。
TLC型96層3D NANDをメモリチップに採用する「Kingston KC2500 1TB」はどのような挙動を見せるのか確認してみたところ、ストレージが空の状態では100GBの連続書き込みでも3GB/s近い書き込み速度を安定して発揮しました。
「Kingston KC2500 1TB」のSLCキャッシュは10~20GB程度で可変する初期容量に加え、使用済み容量が一定値以下(300~400GBまで)であれば、100GB近い容量を使用できる構造になっています。
しかしながら「Kingston KC2500 1TB」で使用済み容量が400~500GBを超過すると、100GB程度の追加で確保されたSLCキャッシュの開放が始まり、以降はSLCキャッシュを10GB程度しか使えなくなります。SLCキャッシュ内であれば3GB/s近い書き込み速度をキープできますが、超過後は1TBモデルでは1250MB/s程度まで書き込み速度が低下します。
「Kingston KC2500 1TB」のSLCキャッシュについては実用上、書き込み速度3GB/s程度を維持できるのは容量10GB程度まで、超過後の書き込み速度は1250MB/s程度に下がるので注意してください。
前モデル「Kingston KC2000 1TB」では使用済み容量が全体容量の半分に当たる500GBでも90GB超のSLIキャッシュ容量が確保され、低下後も1300~1400MB/sという速さだったので、SLCキャッシュ容量と超過後の書き込み性能についてはダウングレードしてしまった感があります。
Kingston KC2500 1TBの温度とサーマルスロットリングについて
NVMe M.2 SSDでは重要になる項目として「Kingston KC2500 1TB」の温度とサーマルスロットリングについてチェックしていきます。アクセススピードが数GB/sに及ぶ非常に高速なNVMe接続に対応したM.2 SSDでは、そのコンパクトさゆえに放熱性能には表面積的な限界があり、連続したアクセスが発生するとメモリチップやメモリコントローラーが高温になって速度制限がかかるサーマルスロットリングが発生する可能性があることが知られています。
「Kingston KC2500 1TB」について、連続した高速アクセス発生時の温度やサーマルスロットリング発生の有無をソフトウェアモニタリングとサーモグラフィーカメラを使用して検証します。
Kingston KC2500 1TBのSSD温度の測定やサーマルスロットリング発生の有無の確認については、ヒートシンクがないPCIE-M.2アダプタ拡張ボードにSSDを装着して検証を行います、
測定時の検証負荷としては上で行ったベンチマーク測定同様にCrystalDiskMark6.0.0(QD32, 8GiB)を使用して間を置かず複数回ベンチマークをループさせ、その間のSSD温度や読み出し・書き込み速度のモニタリング値はHWiNFOを使用してログを取得します。
「Kingston KC2500 1TB」の検証結果を確認する前に比較参考のサンプルとして、2020年現在最速のNVMe M.2 SSDとして君臨している「Samsung SSD 970 PRO 1TB」において、上記の負荷テストを実行した結果を確認しておきます。
Samsung SSD 970 PRO 1TBのSSD温度とアクセススピードの推移は下のようになっています。Samsung SSD 970 PRO 1TBではメモリコントローラーとメモリチップの2種類の温度についてソフトウェアモニタリングが可能になっているようです。ベンチマークを複数回繰り返してもサーマルスロットリングによる大幅な速度低下は発生していませんが、2周目以降に連続書き込み速度の計測で若干速度低下が確認できます。1周目ですでにメモリコントローラーの温度は100度に達し、メモリチップも70度を超えておりかなり高温です。
負荷テスト終盤におけるSamsung SSD 970 PRO 1TBのサーモグラフィーは下のようになっています。サーモグラフィーでもソフトウェアモニタリング同様に、「Samsung SSD 970 PRO 1TB」の右端にあるメモリコントローラー温度は100度を上回り、左半分に実装されたメモリチップは70度半ばになっています。
さて本題のKingston KC2500 1TBの温度やサーマルスロットリングの有無についてチェックしていきます。
まずソフトウェアモニタリングによるKingston KC2500 1TBのSSD温度とアクセススピードの推移は下のようになっています。Kingston KC2500 1TBに関してはソフトウェアモニタリングが可能な温度はメモリチップ付近の温度になっているようです。
ベンチマークを複数回繰り返してもサーマルスロットリングによる速度低下は確認できず、メモリチップ付近の温度は60度半ばに収まっています。
負荷テスト終盤におけるKingston KC2500 1TBのサーモグラフィーは下のようになっています。サーモグラフィーでは、「Kingston KC2500 1TB」の右端にあるメモリコントローラー温度は80度半ば、表面に実装された4枚のメモリチップは60~70度です。読み書き3GB/sのハイエンドNVMe M.2 SSDとしては比較的に低温な分布だと思います。
今回の負荷テストでは「Kingston KC2500 1TB」でサーマルスロットリングによる極端な速度低下こそ確認できなかったものの、メモリコントローラーが80度以上、メモリチップも70度近くと高温になるので、長期運用における温度原因の故障リスクを最小限にするため、可能であれば、M.2 SSDヒートシンクやヒートシンク付きPCIE拡張ボードの利用をオススメします。
最近のマザーボードはM.2 SSDヒートシンクを標準で搭載しているものも多いですが、個別に購入する場合、PCIE拡張ボードタイプなら「AquaComputer kryoM.2 無印/evo」、マザーボードM.2スロットで使用するコンパクトタイプなら「「SilverStone SST-TP02-M2」などがオススメです。
・M.2 SSDヒートシンクのレビュー記事一覧へ
SilverStone M.2 SSD専用放熱ヒートシンク/パッドセット SST-TP02-M2
SilverStone
Kingston KC2500 1TBの実用性能比較
「Kingston KC2500 1TB」の実用性能をPCMark10 Storage Testを使用してチェックしていきます。PCMark10 Storage TestはWindows10 OSの起動速度、PhotoshopやPremiere ProといったAdobeアプリの起動速度、PCゲームの起動速度、AdobeアプリやMicrosoft Officeの素材領域としての読み出し・書き込み速度など、SSDの実用性能について測定できるベンチマークソフトです。PCMark10 Storage Testは、NVMe SSDなど最新の高速ストレージについて、Windows10 OSの起動、OfficeやAdobe系ソフトなどアプリケーションの起動、PCゲームの起動、OfficeやAdobe系ソフトで使用する素材データ領域としての読み出し・書き込み性能といった、実用的なストレージ性能を測定するベンチマークソフトとなっており、”Trace”と呼ばれる23種類のテストで構成されています。
当サイトでは同ベンチマークを使用した評価に当たって、ストレージの用途を、Windowsや各種アプリケーションをインストールする『システムストレージ』、PCゲームをインストールする『ゲームストレージ』、各種アプリケーションで使用する素材を保存しておく『データストレージ』の3種類に大別し、23種類のうち17種類のテストを下記のように振り分けました。
ベンチマーク測定に使用するPCMark10 Storage Testには上の概要で紹介したように23種類のテストがあるので、その中からシステム/ゲーム/データの3種類に大別された17種類のテストの結果を抜粋し、各テストにおいてSamsung SSD 970 PRO 1TBを基準として性能比率を算出、それらの平均値を取って、総合的なSSD実用性能としてパフォーマンスサマリーの比較グラフを作成しました。
下はデータ使用量が0%の時と50%の時で各製品の実用性能を比較した結果になっています。PCMark10 Storage Testでは主にSilicon Motion製メモリコントローラーを採用する製品において使用済み容量が大きくなると0%使用時に比べて性能が低下するという傾向があります。
同じくSilicon Motion製SM2262ENGを採用する「Kingston KC2500 1TB」でも使用済み容量が増えると性能が低下しているので、PCMark10 Storage Testによる性能比較では50%使用時のデータを使い「*」マークを併記しています。
Kingston KC2500 1TBと前モデルKingston KC2000 1TBをPCMark10 Storage Testの個別Traceについて比較すると、ほぼ全てにおいて高速化を果たしているのがわかります。
システムストレージとしての性能に大別された7種類のテスト結果を使用して、各テストにおいてSamsung SSD 970 PRO 1TBを基準として性能比率を算出、それらの平均値を取って、システムストレージとしてのSSD実用性能としてパフォーマンスサマリーの比較グラフを作成しました。
ゲームストレージとしての性能に大別された3種類のテスト結果を使用して、各テストにおいてSamsung SSD 970 PRO 1TBを基準として性能比率を算出、それらの平均値を取って、ゲームストレージとしてのSSD実用性能としてパフォーマンスサマリーの比較グラフを作成しました。
データストレージとしての性能に大別された7種類のテスト結果を使用して、各テストにおいてSamsung SSD 970 PRO 1TBを基準として性能比率を算出、それらの平均値を取って、データストレージとしてのSSD実用性能としてパフォーマンスサマリーの比較グラフを作成しました。
当レビュー記事中では簡単に、総合、システム、ゲーム、データの4種類のサマリーのみを取り挙げていますが、PCMark10 Storage Testの測定データの取り扱いに関する注意、リアルタイムでの最新データ(当レビュー記事のデータは執筆当時のものなので、新製品の比較データは掲載されていない)、個別のTraceの比較データについては下の記事で解説しているので、詳細についてはこちらを参照してください。
・本当に速いSSDはどれか?SSDの実用性能を比較
Kingston KC2500 1TBのデータコピー・ゲームロード性能比較
続いて「Kingston KC2500 1TB」で大容量・多数データのコピーやPCゲームのロード時間など実際の使用について性能比較をしてみました。比較対象として同じくNVMe M.2 SSDの「Samsung SSD 970 PRO 1TB(レビュー)」、「Samsung 970 EVO Plus 1TB(レビュー)」、「Kingston KC2000 1TB(レビュー)」、「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB(レビュー)」、およびSATA SSDの「Samsung SSD 860 EVO 1TB(レビュー)」等でも同様の測定を行いました。
まずはファイルのコピーに関する実性能比較となります。検証に使用するデータとしては総容量が約80GBで多数のファイルが入ったPCゲームフォルダ(The Witcher 3とRise of the tomb Raiderなど)、および容量50GBの単一動画ファイルの2種類を使用しています。
データのコピーにおいては当然ですが、元データのあるストレージの読み出し性能とコピー先の書き込み性能の両方が重要になります。測定においては書き込み先/読み出し元の対象となるストレージが必要になるため、各ストレージのコピー相手にはM.2-PCIE変換アダプタ「Aquacomputer kryoM.2」に設置したSamsung SSD 970 PRO 1TBを使用しています。
コピーテストにおいて検証ストレージがコピー相手の「Samsung SSD 970 PRO 1TB」と同じくNVMe SSDの場合は、ASUS WS Z390 PROの1段目PCIEスロットにグラフィックボード、3段目PCIEスロットにコピー相手ストレージの「Samsung SSD 970 PRO 1TB」、5段目PCIEスロットに検証ストレージを設置しています。
Z390プラットフォームでは通常、複数のNVMe SSDへ同時にアクセスが発生すると、CPU-チップセット間のDMI 3.0の帯域がボトルネックになってトータルのアクセススピードが4GB/s程度に制限されますが、ASUS WS Z390 PROではPLXスイッチチップを介するものの、コピーテストで使用する2つのNVMe SSDはそれぞれCPU直結PCIEレーンに接続されているので、この問題は発生しません。
「Kingston KC2500 1TB」など各種検証ストレージとSamsung SSD 970 PRO 1TBとの間で50GBの動画ファイルおよび80GBのゲームフォルダをコピーした時間の比較結果は次のようになりました。
まずは50GBの動画ファイルのコピーについてですが、動画ファイルは単一の大容量ファイルなので実際のコピーではベンチマークのシーケンシャルリード・ライト性能が重要になってきます。
Kingston KC2500 1TBは動画ファイルのコピー読み出しにおいて、Samsung 970 PRO 1TBやSamsung 970 EVO Plus 1TBには僅かに及ばないものの、前モデルKingston KC2000 1TBよりも高速化を果たしており、ハイエンドTLC型NVMe M.2 SSDとしては十分な性能です。
Kingston KC2500 1TBはPCIE3.0x4帯域のNVMe接続に対応した高速SSDなので、SATA3.0接続のSSDと比較すると4倍近い高速な読み出し速度を実現しており、読み出し速度は2000MB/s程度となっています。
Kingston KC2500 1TBは動画ファイルのコピー書き込みにおいて、所要時間25秒程度で、Samsung 970 PRO 1TBやSamsung 970 EVO Plus 1TBには僅かに及ばないものの、Crucial P5 1TBと同等、SLCキャッシュの小さいWD Black SN750 NVMe SSD 1TBよりも高速でした。
しかしながらSLCキャッシュに関する連続書き込み性能の章で解説したように、「Kingston KC2500 1TB」は使用済み容量が一定値を超えるとSLCキャッシュを10GBしか使えなくなるので、実用上はもっと遅くなってしまいます。
続いてゲームフォルダのコピーについてですが、ゲームフォルダは大小様々なファイルを含むので、実際のコピーではベンチマークの連続性能だけでなく、ランダム性能も重要になってきます。
Kingston KC2500 1TBはゲームフォルダのコピー読み出しにおいて、大きな差ではありませんが、Samsung 970 PRO 1TBやSamsung 970 EVO Plus 1TBに迫る速度を発揮し、WD Black SN750 NVMe SSD 1TBやCrucial P5 1TBなど競合機種を多少上回っています。
やはり動画ファイルのコピー読み出し同様にSATA3.0 SSDよりも3倍も高速な読み出し速度です。
Kingston KC2500 1TBBはゲームフォルダのコピー書き込みにおいて、使用済み容量が0%の状態ではトップクラスの性能を見せるのですが、動画ファイルのコピー書き込みと同様に、使用済み容量が一定値を超えてSLCキャッシュが10GBを下回ると書き込みパフォーマンスが低下します。
続いて実際にPCゲームのロード時間も比較してみました。
PCゲームのロード時間比較に関してはゲームインストールデータへのアクセスが最も大きくなる4K解像度/最高グラフィック設定を対象とするため、統一検証機材として、2019年最新にして最速のGPUである「NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti」を搭載したグラフィックボード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Core」を使用しています。
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Coreは、RTX 2080 TiのAIBパートナーの中でも屈指のOCチューニング力を誇るZOTACによって良質なGPUコアが選別され、リファレンスよりも200MHz以上も高いブーストクロック、さらにGDDR6メモリのメモリクロックまで引き上げるという、RTX 2080 Tiグラフィックボードで最速を狙えるファクトリーOCが施されています。加えて、ZOTACを高品質メーカーとして一躍ブランド力を押し上げたAMP Extremeの代名詞とも言える3スロットを占有する超弩級な大型GPUクーラーが採用され、静音性も非常に優れたモデルです。
・「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme」をレビュー
The Witcher 3ではグラフィック設定をフル解像度/最高グラフィック設定として、『スタートメニューのロード画面からノヴィグラドの広場まで』のロード時間を比較しています。
Rise of the Tomb RaiderではフルHD解像度においてグラフィック設定をDirectX12で個別に最高グラフィック設定として、『スタートメニューのロード画面からシベリアの荒野まで』のロード時間を比較しています。
Final Fantasy XV PC版では4K以上の超高解像度向けに無料配布されている「FFXV WINDOWS EDITION 4K Resolution Pack」を使用して4K解像度/最高グラフィック設定で、『スタートメニューのロード画面からレスタルムまで』についてロード時間を比較しています。
以上の条件で「Kingston KC2500 1TB」など各ストレージについてゲームのロード時間比較を行った結果は次のようになりました。
ゲームロード時間を測定して比較してみたところ、SSD対HDDで2~3倍の時間差が生まれるのに対して、SSDの中では、QLCよりもMLC、SATAよりもNVMe、NANDよりもOptaneのようにして高速になる傾向は見受けられますが、それでもせいぜい1,2割程度と、実用的にはランダム要因な誤差に吸収されるくらいの時間差です。
今後PCゲームがさらに高解像度・高画質化してテクスチャなどのゲームデータが大きくなっていけば、NVMe SSDがSATA SSDよりもゲームのロード時間で明確に優位に立つかもしれません。
なおゲームストレージとしての性能についてはPCMark10 Storage Testを使用した実用性能比較の章でも比較していますが、今回の検証結果とはストレージ種類別の性能差の傾向が異なります。理由については、PCMark10 Storage Testは『ゲームクライアントの起動からスタートメニューまで』のロード時間に対して、今回の比較では『スタートメニューから任意のセーブ状況まで』のロード時間となっているからではないかと思います。
Kingston KC2500 1TBのレビューまとめ
最後にNVMe M.2 SSD「Kingston KC2500 1TB(型番:SKC2500M8/1000G)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- NVMe(PCIE3.0x4)規格として理想的な読み出し3.5GB/sと書き込み2.9GB/s(最大)
- ランダム読み出し/書き込みがMLC型NVMe SSD並みに高速
- ハイエンドNVMe M.2 SSDとしては比較的に低温
- TLC型SSDなのでNVMe M.2 SSDとして安価な価格帯
- メーカー正規保証期間が5年間
- TLC型なのでSLCキャッシュ超過後に速度低下が発生する
1TBモデルの場合は超過後の書き込み速度は1250MB/s程度 - 使用済み容量が一定値を超えるとSLCキャッシュ容量は10GB程度になる
「Kingston KC2500 1TB」を検証してみたところ、基礎的な各種ベンチマークや実際の性能検証の多くにおいて、競合製品でありハイエンドTLC型NVMe M.2 SSDとしては定番のSamsung SSD 970 EVO PlusやWD Black SN750 NVMe SSDやCrucial P5 SSDと同等のパフォーマンスを発揮しました。
SSD実用性能を測定するPCMark10ストレージテストでもSamsung SSD 970 PROの105%という好成績を叩き出し、前モデルKC2000 1TBを順調に上回っています。
「Kingston KC2500 1TB」にはTLCタイプの96層3D NANDメモリが採用されているので、多くのTLC型SSDと同様に大容量書き込み時にSLCキャッシュを超過すると書き込み速度が低下します。
「Kingston KC2500 1TB」のSLCキャッシュはその挙動が少々特殊で、使用済み容量が一定以下であれば100GB近いSLCキャッシュを使用できるのですが、使用済み容量が約半分を超えると10GBのSLCキャッシュしか使用できなくなります。
SLCキャッシュ超過後の書き込み速度については「Kingston KC2500 1TB」の場合、1250MB/s程度でSATA3.0規格の理想的な書き込み速度である500MB/sの2.5倍の速度をマークしており、不便を感じるほどの速度低下ではないのですが、前モデルKC2000は半分以上が使用済みでも100GB近いSLCキャッシュを使用でき(残容量に応じた可変容量)、実用上はSLCキャッシュ内の2000MB/sの書き込み速度で運用できたのを考えると、SLCキャッシュ周りについてはダウングレード感も否めません。
以上、「Kingston KC2500 1TB」のレビューでした。
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Kingston KC2500 1TB レビュー
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) September 28, 2020
✅NVMe(PCIE3.0x4)で理想的な読3.5GB/sと書き2.9GB/s
✅ハイエンドNVMe M.2 SSDとしては比較的に低温
✅SLCキャッシュ超過後でも書き込み速度は1250MB/s
⛔使用済み容量が一定値を超えるとSLCキャッシュ容量は10GB程度https://t.co/xZbQfjtCjR
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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