ASRock DeskMini X300


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Ryzen 7 PRO 4750GなどRadeonグラフィックスを内蔵するRyzen APU(Renoir)を搭載可能なMini-STXフォームファクタのベアボーンPC「ASRock DeskMini X300(型番:DeskMini X300/B/BB/BOX/JP)」をレビューします。
Ryzen 7 PRO 4750Gにおけるメモリ周波数3600MHzへのオーバークロックや、「Noctua NH-L9a-AM4」を使用した場合の冷却性能などASRock DeskMini X300の気になるポイントを徹底検証していきます。

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製品公式ページ:https://www.asrock.com/nettop/AMD/DeskMini%20X300%20Series/index.asp
マニュアル:https://download.asrock.com/Manual/X300M-STX.pdf
QIM:http://asrock.pc.cdn.bitgravity.com/Manual/QIG/DeskMini 300 Series_multiQIG.pdf






ASRock DeskMini X300 レビュー目次


1.ASRock DeskMini X300の概要
2.ASRock DeskMini X300の外観・内部構造
3.ASRock DeskMini X300の組み立て


4.ASRock DeskMini X300のBIOSについて
5.ASRock DeskMini X300のCPU動作設定やメモリOC設定


6.ASRock DeskMini X300の検証システムとメモリOC
7.ASRock DeskMini X300のCPU・GPU性能
8.ASRock DeskMini X300の温度・ファンノイズ
9.ASRock DeskMini X300のレビューまとめ




【機材協力:ASRock Japan】



ASRock DeskMini X300の概要

まずは「ASRock DeskMini X300」の概要について簡単に解説しておきます。
「ASRock DeskMini X300」はAMD X300チップセットを搭載したMini-STXフォームファクタのマザーボード「ASRock X300M-STX」を内蔵するベアボーンPCです。無線LAN非搭載の「DeskMini X300 Barebone」と、無線LAN標準搭載の「DeskMini X300W Barebone」の2モデルがラインナップされ、国内では無印版(CPUクーラー標準付属)のみが流通します。
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「ASRock DeskMini X300」は、Ryzen 5 3400GなどPicasso、Ryzen 5 2400GなどRaven RidgeといったDeskmini A300でも使用できたCPUに加えて、新たにRenoirことRyzen 4000Gシリーズをネイティブサポートし、最大で8コア16スレッドのRyzen 7 4700GやRyzen 7 PRO 4750Gを搭載できます。
「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」をレビュー。Core i7 10700と徹底比較
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「ASRock DeskMini X300」に搭載可能な互換CPUクーラーとして「AMD APU Cooler」が純正オプションパーツとして用意されています。国内版A300に同梱されたAMD APU Coolerは全高39mmでしたが、X300では全高45mmに大型化、ヒートシンクは25%拡大しています。 サードパーティ製CPUクーラーについてもAM4マウント対応で全高46mmまでのCPUクーラーに対応しています。
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TDP65WのCPU&iGPUの電力負荷に対応できるよう、5フェーズVRM電源回路を搭載し、CPUクーラーとのスペース干渉を最小限に収めながらVRM電源の放熱を補助できるヒートシンクも装着されています。
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「ASRock DeskMini X300」の大きな特徴としてCPU・iGPUのオーバークロックに対応し、各種電圧値の調整も可能となっています。
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Ryzen APUのインターコネクトInfinity Fabricの動作周波数はメモリ周波数と同期しており、加えて統合グラフィックスであるRadeonグラフィックスのビデオメモリはシステムメモリと共有されているので、メモリ周波数が総合的なパフォーマンス、特にグラフィック性能に大きく影響しますが、「ASRock DeskMini X300」はメモリ周波数3200MHz以上へのオーバークロックにも対応しています。
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「ASRock DeskMini X300」にはビデオ出力としてリアI/OにはDisplayPort1.2、HDMI2.0、D-Subの3基が実装されており、トリプルモニタ出力に対応しています。HDMIはver2.0なので4K/60FPS対応です。
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ストレージについてはMini-STXマザーボード「ASRock A300M-STX」の表面と裏面に実装された2基のNVMe対応M.2スロットと、通信・電源共用の専用ケーブルを使用する2基の2.5インチストレージに対応しており、最大で4基のストレージを接続可能です。M.2スロットはNVMe接続のみでSATA接続には非対応となります。
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「ASRock DeskMini X300」の純正オプションとして、上で紹介した互換CPUクーラーに加えて、リアI/O 3.5mmオーディオジャック増設ケーブル、100mm×100mm VESAマウンタ、フロントI/O USB2.0端子×2増設ケーブル、Intel製コントローラー採用WiFi増設キットなどが用意されています。
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「ASRock DeskMini X300」は気になるけど、「自作PCを組むのが心配……」という人には、サイコムやPCショップアークからリリースされているASRock DeskMini X300をベースにしたBTO PCがオススメです。

サイコム Radiant SPX2800X300Aの販売ページへ


PCショップアーク CROYDON DeskMini X300の販売ページへ




ASRock DeskMini X300の外観・内部構造

「ASRock DeskMini X300」の外観や内部構造についてチェックしていきます。
「ASRock DeskMini X300」のパッケージはプリントこそ変わっていますが、形状や内部の梱包形式などはA300と同じです。
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マニュアルは簡単な1枚紙で、ドライバ類はCDに収録されています。ドライバ類についてはそろそろUSBメモリに移行して欲しいところ。
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組み立て関連の付属品として、SATAケーブル2本、M.2 SSD固定ネジ*2個、ネジセット&ゴム足が付属します。
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SATAストレージ接続ケーブルはSATA3.0通信とSATA電源の両方を兼ねており、特殊なミニ端子でマザーボードと接続する専用ケーブルです。
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専用のACアダプタとACケーブルも付属します。ACケーブルはちゃんと国内対応の2PINコンセント端子で、ACアダプタ側は”ミッキー”型と呼ばれることもあるので3PIN端子です。
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付属のACアダプタは出力の電源容量が120W(19V、6.32A)のAcBel製「ADC027」、前モデルDeskmini A300に付属したものと同じです。
寸法は横145mm×縦62mm×高さ35mmとなっており、電源容量が120WなのでIntel CPU対応Deskminiシリーズに付属する90WのACアダプタよりは若干大きめです。
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国内版の「ASRock DeskMini X300」には標準で対応CPUクーラー「AMD APU Cooler」が付属します。
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「AMD APU Cooler」はフィンカットされただけのアルミニウム塊型ヒートシンクに70mm角の冷却ファンを搭載した全高45mmの簡素なCPUクーラーとなっています。
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標準で熱伝導グリスが塗られているので、特にこだわりがなければ初回はグリスを用意する必要はありません。
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A300に同梱されたAMD APU Coolerは全高39mmでしたが、X300では全高45mmに大型化、ヒートシンクは25%拡大しています。
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「AMD APU Cooler」はAM4ソケット標準搭載のCPUクーラー固定器具にフックを引っかけてロックするピンを引っ張るだけの簡単な固定方式が採用されています。
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続いて「ASRock DeskMini X300」の外観をチェックしていきます。
「ASRock DeskMini X300」は高さ(幅)155mm x 奥行155mm x 幅(高さ)80mmで容積1.92Lと非常にコンパクトです。
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下はA300の比較写真ですが「ASRock DeskMini X300」はRyzen APUパッケージを半分にしたくらいのサイズ感です。(Ryzen 4000Gシリーズはバルク品のみの販売ですが)
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「ASRock DeskMini X300」についてA300からの大きな変更点の1つはフロントパネルでした。サンプルイメージではヘアラインアルミニウムのフラットパネルに見えましたが、実物はヘアライン仕上げ風に表面処理されたプラスチックでした。
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よくよく見ると実際の質感はやや安っぽいですが、とはいえA300に比べると「ASRock DeskMini X300」はかなり洗練されたデザインへ生まれ変わったと思います。
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「ASRock DeskMini X300」(縦置き時)の上面と側面と背面の3面パネルはいずれも正方形エアスリットが通気口として広く設けられています。
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側面パネルや底面パネルの窪みにラバーフットを貼る構造で縦置きと横置きの両方に対応しています。横置き時の底面に当たる側にはオプションパーツのVESAマウンタを固定するネジ穴があります。
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フロントI/OとしてType-AおよびType-CのUSB3.0(USB3.1 Gen1)端子とヘッドホン・マイク用3.5mmジャックが設置されています。写真の向きで右上にはパワースイッチがあります。
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横置き時のサイドパネルで正面から見て右側前方にはUSB Type-Aのブランクポートが2基あって、オプションパーツを使用することで2基のUSB2.0端子を増設できます。
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リアI/Oには縦置き時の上側にあたる下写真の左から順に、DC端子、DisplayPortビデオ出力、HDMI2.0ビデオ出力、D-Subビデオ出力、有線LAN、USB2.0端子、USB3.0端子が設置されています。また左端には標準ではブランクですがWiFiアンテナを設置できるホールが3つ並んでいます。
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続いて「ASRock DeskMini X300」の内部構造の概要をチェックしていきます。(実のところA300とレイアウト的にはほぼ完全に一致しています)
「ASRock DeskMini X300」のPCケース内部へアクセスするには、リアI/Oのネジ4つを外し、PCケース外装からスロット状に挿入されているマザーボードトレイをリアI/Oのある背面パネルごと引き抜きます。
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マザーボードトレイを取り出すと、「ASRock DeskMini X300」に内蔵されたMini-STXマザーボード「ASRock X300M-STX」の主だったコンポーネントにアクセスできます。
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「ASRock DeskMini X300」の左から中央にはCPUソケット、右下にはSODIMMメモリスロット、右上にはSSD用とWiFi用のM.2スロットが配置されています。
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マザーボードトレイを裏返すとSATA接続2.5インチストレージマウンタにアクセスすることができます。マザーボード背面のM.2スロットにはマザーボードを装着したままではアクセスできません。
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Mini-STXマザーボード「ASRock A300M-STX」上の各種コンポーネントをもう少し細かくチェックしていきます。
まずマザーボード左から中央にかけてAM4規格のCPUソケットが配置されています。通常のAM4マザーボード同様にプラスチック製のCPUクーラー固定パーツがCPUソケットを挟むように装着されています。
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「ASRock DeskMini X300」で使用可能なサードパーティ製CPUクーラーの互換性について、内部レイアウトは前モデルA300と一致しているので、過去に作成した個別にとめ記事を公開しているのでこちらを参照してください。
ASRock DeskMini X300のCPUクーラー互換性について
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CPUソケットの上側には最大でTDP65WのCPU&iGPUの電力負荷に対応できるように、5フェーズのVRM電源回路が実装されています。CPUコア向け3フェーズとSOC向け2フェーズです。
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ASRock DeskMini X300のVRM電源回路では、PWMコントローラーには最大で4+2フェーズに対応するRichtek製「DS3667BQ」、MOSFETにはTexas Instruments製「CSD87350」、40A対応Dr. MOSが使用されています。
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A300と比較すると回路構成はパッと見で完全に一致しており、管理人にわかる違いはPWMコントローラーだけ(A300はDS3667BB)でした。データシートを見ても両者の違いはよく分からなかったのですが、実際の機能としてX300はSOC電圧を任意に変えることができるので、その辺りに合わせてVRM電源回路の構成素子に変更が加えられているのだと思います。
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CPUクーラーとのスペース干渉を最小限に収めながらVRM電源の放熱を補助できるヒートシンクも装着されています。ヒートシンクの高さはPCB基板から24mm程度です。ヒートシンクのサイズや形状についてもX300とA300は同じです。
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メモリスロットは一般的なDIMM DDR4スロットではなく、NUCやモバイルPCで使用されるコンパクトメモリのSODIMM DDR4メモリに対応しており、SODIMM DDR4メモリ用のメモリスロットが2基実装されています。メモリ容量は最大で32GB*2=64GBに対応しています。
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マザーボード左下にはPWM対応4PINファン端子が2基実装されています。
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フロントI/O側となるマザーボード右端には、NVMe(PCIE3.0x4)接続に対応したストレージ用M.2スロットと、WiFiカード増設用M.2スロットが並んで実装されており、M.2 SSD(上)とWiFiカード(下)は重ねて設置する構造です。M.2スロットのKeyが異なり物理的に装着できないので、M.2 SSDとWiFiカードを間違えて装着する心配はありません。
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またマザーボード背面にはNVMe(PCIE3.0x4)接続に対応したストレージ用M.2スロットが実装されています。マザーボード背面にはSATAストレージへの通信・電源を兼ねた独自ヘッダーが2基実装されています。
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メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありませんが、ASRock DeskMini X300でCMOSクリアによってBIOS設定を初期化するにはCMOSクリア用の2PINヘッダーを短絡する必要があります。PCケース開閉ヘッダーと並んでいますが、M.2スロットに対して垂直なほうがCMOSクリア用2PINヘッダーです。簡単にCMOSクリアできるように2PINスイッチを別途購入して、組み立て時にCMOSクリア2PINヘッダーに装着しておくのがおすすめです。
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その他にオプションパーツのフロントI/O USB2.0端子×2増設ケーブルを接続する内部USB2.0ヘッダーや、リアI/O 3.5mmオーディオジャック増設ケーブル(発売未定)を接続する4PINオーディオヘッダーがマザーボード上には実装されています。
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ASRock DeskMini X300の組み立て

「ASRock DeskMini X300」の外観や内部構造など基本的な仕様について解説が済んだので、早速各種パーツを組み込んで、ベアボーンPCを組み立てていきます。(手順が完全に同じなのでDeskmini A300の時の写真を流用しています)

「ASRock DeskMini X300」を組み立てる上で最初に手を付ける必要があるのは、マザーボードトレイ背面の2.5インチSATAストレージの設置、およびマザーボード背面のM.2スロットへのM.2 SSDの装着です。いずれもマザーボードトレイからマザーボードを取り外さないとアクセスできないので、使用するのであれば忘れないように一番最初に済ませたいポイントになっています。
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2.5インチSATAストレージはマザーボードのある側からネジ止めしてストレージをマザーボードトレイに固定します。2基のうち片方は側面のネジ穴でも固定できるのでマザーボードをトレイに設置したままで交換が可能です。
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上の写真を見てわかるようにマザーボード背面に実装されたM.2スロットへは、マザーボードをトレイに装着したままでアクセスすることができません。背面M.2スロットを使用する場合は最初に装着を済ませるのがオススメです。専用SATAケーブルはトレイに設置したままでも着脱できますが、トレイのホールが小さくて装着がやや難しいので、マザーボードを取り出す機会があればその際に装着してしまうのが楽です。
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今回は着脱手順が若干面倒なサードパーティ製CPUクーラーを使用するケースについて紹介します。一例として使用するCPUクーラーは組み込みを予定しているユーザーも多そうな「Noctua NH-L9a-AM4」です。なお国内版の「ASRock DeskMini X300」にはCPUクーラーが標準で付属しており、標準付属の「AMD APU Cooler」は組み立て手順をあまり気にせず着脱できます。
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「Noctua NH-L9a-AM4」などAM4マウント標準搭載のプラスチック製固定器具を使わないCPUクーラーでは、固定器具とバックプレートを取り外す必要があり、「ASRock DeskMini X300」のマザーボードトレイにはCPUクーラーメンテナンスホールのような便利なものはないので、マザーボードを取り外したタイミングで作業する必要があります。
AM4マウント標準搭載のプラスチック製固定器具をマザーボードから取り外して、CPUソケットにCPUを装着したら、「Noctua NH-L9a-AM4」を固定する下準備は完了です。
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熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
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グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
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熱伝導グリスを塗ったら、CPUクーラーをCPUの上に乗せ、グリスが広がるように力の入れすぎに注意して、若干グリグリと捻りながらCPUクーラーを押し付けます。
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CPUクーラー本体をマザーボードに乗せたら、マザーボードをひっくり返して裏面からネジ止めします。「Noctua NH-L9a-AM4」に付属するバックプレートをマザーボード背面に合わせて置き、付属のネジで固定します。
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以上で「Noctua NH-L9a-AM4」の固定は完了です。メモリについてはどのタイミングでも問題ありませんが、CPUクーラーの設置完了後に装着しておきましょう。
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また今回は「ASRock DeskMini X300」の組み立てに当たってオプションパーツのWiFiキットも使用します。WiFiキットの内容品はマニュアルシート、WiFi M.2カード、アンテナケーブル、スティック型アンテナです。
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ASRock DeskMini X300用WiFiキットに付属するWiFi M.2カードは「Intel 3160NGW」です。無線カードとしては過不足なく標準的なものになっていますが、M.2 E-KeyのWiFiカードについては最新規格WiFi6に対応したIntel AX200が、Intel正規品の「Intel AX200.NGWG.DTK」を含め、Amazon等で簡単に購入できます。より高速な無線環境が必要ならオススメです。


無線LANを増設する場合は、トレイからマザーボードを取り外したタイミングで無線アンテナをトレイと一体になっているリアパネルのアンテナ用ホールに装着しておくと楽です。
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以上、『トレイへの2.5インチSATAストレージの固定』、『マザーボード背面M.2スロットへのSSDの装着』、『専用SATAケーブルの装着』、『サードパーティ製CPUクーラーの設置』、『リアパネルへの無線アンテナの装着』が完了したらトレイにマザーボードを戻し、2.5インチSATAストレージを使用している場合はSATAケーブルを接続します。
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マザーボード表面に戻って無線LANキットを使用している場合は、M.2無線カードを2段並んだうち下側のM.2スロットに装着します。アンテナはコネクタが小さいのでM.2スロットにM.2無線カードを差す前にアンテナのコネクタをM.2無線カードに着けるのが楽です。
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M.2無線カードを装着したら上段にM.2 SSDを装着します。見ての通りM.2 SSDを装着したままではM.2無線カードの着脱ができないので、無線LANを使用する場合はお忘れなく。
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各種パーツの組み込みは以上なので、外装へマザーボードトレイを挿入して、背面をネジ止めしたら「ASRock DeskMini X300」の組み立て完了です。
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ASRock DeskMini X300のBIOSについて

ASRock DeskMini X300を使用した検証機の構築も完了したので、OSインストールやファン設定等でアクセスが必須になるBIOSについて紹介をします。

ASRock DeskMini X300のBIOSに最初にアクセスすると従来通りの文字ベースBIOSメニューが表示されました。画面上に表示されている「Main」「OC Tweaker」「Advanced」などメニュータブから左右カーソルキーで各設定ページが表示できます。画面右下の「English」と表記されたボタンから言語設定が可能です。
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ASRock DeskMini X300のBIOSは日本語UIにも対応しています。初心者ユーザーにも優しいBIOSだと思います。
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ASRock DeskMini X300のBIOSにおいて設定の保存とBIOSからの退出はトップメニュータブ最右端の「出口」から行えます。特定のブートデバイスを指定してBIOSから退出するBoot Override機能もあります。
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BIOSのアップデート方法は、まず下から最新のBIOSファイルを公式DLページからダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
サポート:https://www.asrock.com/nettop/AMD/DeskMini%20X300%20Series/index.asp#BIOS

USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、トップメニュータブ「ツール」の「Instant FLASH」を選択します。「Instant FLASH」を選択すると自動でUSBメモリ内から総当たりでアップデートファイルを探索してくれます。自動探索は便利なのですが、反面、探索方法は総当たりなのでファイルが多いと時間がかかるため、アップデート時はファイルの少ないUSBメモリを使用するのがおすすめです。
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USBメモリからアップデートファイルが見つかると更新するかどうか尋ねられるので、更新を選択すればあとは自動でBIOSがアップデートされます。(下はA300の例)
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ブートとOSインストール周りについて紹介します。とはいってもASRock DeskMini X300のブート回りは下画像のように、「起動」タブの中で非常に簡潔にまとめられており初心者でも迷うことはないと思います。
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OSのインストールも「起動順序 #1」に「UEFI 〇〇」というOSインストールメディアを設定して保存&退出でOKです。出口(Exit)のメニューから「UEFI 〇〇」をブートオーバーライドで指定して起動しても同様にOSのインストールデバイスから起動可能です。
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ちなみにWindows10の製品パッケージに付属するUSBメモリではUEFIで認識できないトラブルが発生することがあるようなので、そういうときはこちらの記事に従ってMS公式ツールを使用して適当なUSBメモリでOSインストールメディアを作成すると上手くいきます。

BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、ASRock DeskMini X300のBIOS機能で管理人が気になったものをいくつかチェックしていきます。
まずはファンコントロール機能について紹介します。
ASRock DeskMini X300のファンコン機能は「H/Wモニター」のタブの中に配置されており、マザーボード上に設置されている2つのファン端子を個別に設定可能です。
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ファン制御には「サイレント/標準/パフォーマンス/最大速度」の4種類のプリセット設定に加えて、個別に温度・ファン速度の比例カーブを指定できる「カスタマイズ」の5つのモードを使用できます。
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「カスタマイズ」モードでは比例カーブを決める温度とファン速度を4つ指定できます。
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CPUファン1のファン制御のソースはCPU温度で固定されていますが、CPUファン2はマザーボード上の温度センサーを制御ソースに指定できます。どうしても定速でCPUクーラー冷却ファンを運用したい場合は、CPUファン2端子に接続して制御ソースを「Monitor M/B」にするという手が使えます。
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ASRock DeskMini X300のCPU動作設定やメモリOC設定

ASRock DeskMini X300を使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。


「ASRock DeskMini X300」にはその名前のとおりAMD X300チップセットが搭載されており、同チップセットは『CPUコアクロック及びGPUコアクロックのOCに対応』しています。前モデルDeskmini A300においては、A300とX300は同世代ながら、OCに非対応なA300が採用されていたので、Ryzen 4000Gに対応しただけでなく各種OCチューニングにも対応した「ASRock DeskMini X300」は待望の存在です。
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ASRock DeskMini X300のオーバークロック設定はOCツールというトップメニューのタブページにCPUコアクロック、GPUコアクロック、メモリ、電圧など各種設定項目が集約されています。
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ASRock DeskMini X300では搭載したCPUの動作クロックを手動設定で変更(オーバークロック)することが可能です。
「CPU Frequency and Voltage Change」の項目を「手動」に変更すると「CPU Frequency」の項目が表示されます。例えば「4025」のように「Frequency」を設定すると4025MHzで動作するように設定されます。コアクロックは25MHz間隔で指定可能です。
CPUコアクロックのOCに関連する電圧設定としてはFrequencyのすぐ下にある「Voltage」の項目を変更します。マニュアルの設定値を指定して入力する固定モードのみが使用でき、0.00625V刻みでコア電圧の設定が可能です。
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「ASRock DeskMini X300」でRyzen 7 PRO 4750GやRyzen 5 PRO 4650Gを使用している場合、全コア共通の動作倍率設定だけでなく、CCX単位(4750Gの場合は4コア1セット、4650Gの場合は3コア1セット)で個別に動作倍率を設定するPer CCXにも対応しています。なおRyzen 4000GシリーズにはCCDは1つしかないのでCCD0のみ有効です。
設定は少し面倒になりますが、CCX別にOC耐性には違いがあるので、共通のコア電圧に対して、OC耐性の良いCCXでは44倍に、OC耐性の悪いCCXは42倍に、のように細かく設定できます。Intel製CPUのBy Specific Core設定のようにコア電圧もCCX単位で調整できるとさらにOC設定の幅が広がるのですが、電圧の個別設定については今のところ非対応です。
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「ASRock DeskMini X300」では、CPUコアクロックと同様にRadeonグラフィックス(GFX)の動作クロックのOCも可能です。設定方法は単純にGPUコアクロックを引き上げ、GPU電圧を昇圧します。またGPUコアクロックをOCするときはSOC電圧も調整します。
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なおASRock DeskMini X300のBIOS:P1.40では、「cTDP」や「System Configuration AM4」などと呼ばれる電力制限設定による省電力設定がまだ用意されていませんでした。参考までにA300の例を掲載しておきます。今後のBIOSアップデートによってX300でも電力制限設定は追加されると思うのですが。
ASRock DeskMini A300において、省電力機能は「System Configuration」という設定項目として用意されており、「アドバンスド - AMD CBS - NBIO Common Options」と順番に設定を下っていくことで表示されます。
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「System Configuration」の設定値は標準ではAuto(自動)ですが、CPUにRyzen 5 2400Gを使用している場合、35W制限、45W制限、65W制限(定格動作/標準動作)の3種類から電力制限を設定できます。
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メモリのオーバークロックについて紹介していきます。

「ASRock DeskMini X300」で使用可能なRyzen APUのCPUインターコネクトInfinity Fabricの動作周波数はメモリ周波数と同期しており、加えてRyzen 4000G APUに内蔵されている統合グラフィックスであるRadeonグラフィックスのグラフィックメモリはシステムメモリと共有されているので、メモリ周波数が総合的なパフォーマンス、とりわけグラフィック性能に大きく影響します。「ASRock DeskMini X300」はCPUコアクロックやGPUコアクロックだけでなく、メモリOCによっても大幅なパフォーマンス向上が狙えます。
ASRock DeskMini X300_memory

メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。

メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありませんが、ASRock DeskMini X300では正常にPOSTできないメモリOC設定でエラーが出た場合は数回再起動した後、自動で2133MHzや2400MHzなど定格となるSPDプロファイルの緩い設定で再起動してくれるのでメモリOCを安心して行えます。
ただし自動で再起動できないケースもあるので内部構造で解説したように、2PINスイッチを別途購入して、組み立て時にCMOSクリア2PINヘッダーに装着しておくのがオススメです。
ASRock DeskMini X300 review_06264_DxOASRock DeskMini X300 review_06265_DxO

メモリOC関連の各種設定項目は「OCツール(OC Tweaker)」ページに配置されています。
メモリOCで有名なXMPプロファイルはIntelの策定した規格なのでAMD CPU&マザーボードの環境では厳密にいうと非対応ですが、ASRock DeskMini X300ではXMPプロファイルの項目が表示されており、XMPプロファイルからRyzen環境で動作しそうな適当なOCプロファイルを自動生成して適用してくれます。
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「XMP設定の読み込み」の設定値が自動(Auto)になっている場合は、使用するメモリにSPD情報として収録されている動作クロック2133~2666MHzなどのメモリ周波数およびタイミングによる定格動作となります。
手動でメモリ周波数を設定する場合は「DRAM周波数(DRAM Frequency)」の項目でプルダウンメニューから動作クロック(倍率)設定が可能です。
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「ASRock DeskMini X300」ではメモリタイミングの個別打ち込み設定も可能です。メモリタイミングを手動で設定する場合は基本的には「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS Read (tRCDrd)」、「RAS to CAS Write (tRCDwr)」、「RAS Precharge (tRP)」、「RAS Active Time (tRAS)」の主要な5タイミングと、加えて下の方にスクロールしていくと表示される「Command Rate:1 or 2」の6つ以外はAutoのままでいいと思います。
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メモリ周波数を3200MHz以上にOCする場合は「GearDownMode」を有効に設定すると動作が安定するかもしれないので、Autoで上手くいかない場合は設定を変更してみてください。
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メモリタイミングの下の方にある「ProcODT」という設定値がAutoのままではPOSTがクリアできない場合があります。AutoでPOSTをクリアできない、もしくは起動後に安定しない場合は「ProcODT」を43.6~68.6の間で固定して安定するものを探してみてください
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DDR4メモリについてはメモリ周波数を3000MHz以上にOCする場合はDRAM電圧を1.300~1.350Vに上げる必要があります。「ASRock DeskMini X300」で選択できるメモリ電圧は1.200Vと1.350Vの2択なので、メモリをOCする場合は最初から1.350VにDRAM電圧を盛っておくのがおすすめです。
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AMD Ryzen CPUでメモリの動作クロックをOCする場合はDRAM電圧だけでなく「CPU SOC電圧」も1.100V~1.200V程度に盛ってやると動作が安定しやすいです。メモリ周波数をOCすると1.150V程度まで自動的に昇圧されるようですが、上手くいかない場合は手動設定も試してみてください。
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また第3世代Ryzen CPU環境ではメモリ周波数3600MHzまではInfinity Fabric周波数が1:1で同期しますが、3733MHz以上では2:1で同期し、Infinity Fabric周波数がメモリ周波数の半分になります。 「ASRock DeskMini X300」では「Infinity Fabric Frequency and Dividers」をメモリ周波数の半分に指定することで3733MHzや3800MHzのメモリ周波数においてもInfinity Fabric周波数の1:1同期が可能になります。(SODIMMで3600MHz以上を目指すことは極めて稀だと思いますが)
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ASRock DeskMini X300の検証システムとメモリOC

「ASRock DeskMini X300」の実際の動作について詳しくチェックする前に、検証システムとして使用するCPUやメモリ、そしてメモリOCがどれくらい行えるかについて紹介していきます。

ASRock DeskMini X300には統合グラフィックスとしてRadeonグラフィックスを内蔵したRenoirことRyzen 4000Gシリーズを使用できますが、今回は検証機材として、使用可能なCPUでは最上位となる8コア16スレッドAPU「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」を組み込みました。
ASRock DeskMini X300_CPU-Z_Ryzen 7 PRO 4750G

「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」をレビュー。Core i7 10700と徹底比較

AMD Ryzen 7 PRO 4750G

ちなみにRyzen 7 PRO 4750Gを搭載した「ASRock DeskMini X300」の起動時間は電源スイッチを押してから10秒程です。余分なものが一切ない、必要最小限なコンポーネントで構成されているので、起動が非常に高速なところはASRock Deskminiシリーズの魅力ですが、X300でもその部分はちゃんと継承されていました。



AMD Ryzen 7 PRO 4750Gを搭載した「ASRock DeskMini X300」の性能をチェックする前に、概要でも解説した通りRyzen APUはメモリ周波数が総合的なパフォーマンス、特にグラフィック性能へ大きな影響を与えます。
そこでXMPだけでなく定格SPDプロファイルでも対応の増えつつあるメモリ周波数3200MHzや、Ryzen 4000G APUを使用したハイパフォーマンス環境の指標の1つであるメモリ周波数3600MHzへのメモリOCについて検証した結果を紹介します。

検証機材メモリとして、XMP3000MHzに対応する8GB×2枚組メモリキット「Corsair Vengeance SODIMM CMSX16GX4M2A3000C16」、Micron純正メモリモジュールを採用し定格SPDプロファイルで3200MHzに対応する32GB×2枚組メモリキット「Crucial CT2K32G4SFD832A」、そしてOCプロファイルによって3200MHz/CL16の高速動作に対応する32GB×2枚組メモリキット「Crucial Ballistix SODIMM BL2K32G32C16S4B」の3種類を使用しました。

まずは高メモリ周波数で高性能なSODIMM DDR4メモリとして定番の「Corsair Vengeance SODIMM CMSX16GX4M2A3000C16」のメモリOCの検証結果について見ていきます。
同メモリの動作確認済み動作周波数は3000MHzですが、メモリモジュールには初期のころからRyzen CPU/APUと相性が良いことで知られるSamsung B-Dieが採用されており(製造ロットで変わる可能性あり)、BIOSからメモリ周波数と主要タイミング5つを設定するだけで、3600MHz/CL16-18-18-36-CR1で安定動作が確認できました。
メモリ容量が8GB×2=16GBでよければ、Ryzen APUのハイパフォーマンス環境として代表的な3600MHz/CL16で安定動作するので、やはり「Corsair Vengeance SODIMM CMSX16GX4M2A3000C16」は定番メモリだと思います。
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次に、Micron純正メモリモジュールを採用し定格SPDプロファイルで3200MHzに対応する32GB×2枚組メモリキット「Crucial CT2K32G4SFD832A」のメモリ検証結果について見ていきます。
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同メモリは設定を行わなくても自動的にロードされるSPDプロファイルとしてメモリ周波数3200MHz、メモリタイミングCL22-22-22-52-CR1の動作設定が収録されています。製品仕様の通り、BIOSから特に設定をする必要はなく、3200MHz/CL22で安定動作が確認できました。加えて、同メモリの動作電圧は1.200Vのままの定電圧動作なので、定格で確実に運用したい人にオススメです。
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最後に、OCプロファイルによって3200MHz/CL16の高速動作に対応する32GB×2枚組メモリキット「Crucial Ballistix SODIMM BL2K32G32C16S4B」のメモリOCの検証結果について見ていきます。
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同メモリの動作確認済みOCプロファイルは32GB×2=64GBの超大容量ながら3200MHz/CL16の高速動作になっていますが(こちらももちろん安定動作しました)、BIOSからメモリ周波数と主要タイミング5つを設定するだけで、3600MHz/CL18-18-18-38-CR1で安定動作が確認できました。32GB×2=64GBの超大容量で3600MHz/CL18が安定動作するとは非常に意外でした。
ASRock DeskMini X300において最速&大容量を目指すのであれば「Crucial Ballistix SODIMM BL2K32G32C16S4B」はイチオシです。
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ASRock DeskMini X300のCPU/GPU性能

さてここからは本題となるメモリ周波数や電力制限別のCPU/GPU性能をチェックしていきます。
ASRock DeskMini X300の性能検証ではCPUに8コア16スレッドAPUのAMD Ryzen 7 PRO 4750Gを組み合わせますが、その他の構成パーツとして、CPUクーラーには「Noctua NH-L9a-AM4 chromax.black」、DDR4メモリには「Crucial Ballistix SODIMM BL2K32G32C16S4B」を使用しています。
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「Noctua NH-L9a-AM4 chromax.black」をレビュー。Deskmini X300に最適!
Noctua NH-L9a-AM4 chromax.black

ASRock DeskMini X300」におけるRyzen 7 PRO 4750Gの動作設定について、Ryzen 7 PRO 4750GのCPU自体は、特に手動設定を行わない定格動作(ファン速度は2500RPMに固定)に加えて、省電力設定の一例として(BIOS1.40ではPPTによるマニュアル設定の電力制限に対応していないので)、CPUコアクロックを4.0GHz、CPUコア電圧を1.200Vに固定したケース(ファン速度は2000RPMに固定)についても検証しました。
ASRock DeskMini X300_CPU-Z_Ryzen 7 PRO 4750G-4GHz_BIOS
またシステムメモリは32GB×2=64GB容量の「Crucial Ballistix SODIMM BL2K32G32C16S4B」を、メモリ周波数3600MHz&メモリタイミング18-18-18-36-CR1にオーバークロックしています。これが安定動作するのは上の章で紹介した通りです。
ASRock DeskMini X300_BIOS_Ballistix BL2K32G32C16S4B (1)ASRock DeskMini X300_BIOS_Ballistix BL2K32G32C16S4B (2)

「ASRock DeskMini X300」において、Ryzen 7 PRO 4750Gを定格設定かつメモリ周波数を3600MHzにOCすると、Cinebench R20のスコアは4900程度となり、B550マザーボードなどRyzen 4000Gシリーズに対応するマザーボードで運用するのと同等のスコアが得られました。
ASRock DeskMini X300_Ryzen 7 PRO 4750G_def_Cinebench R20
一方で省電力設定の全コア4.0GHz固定では、Cinebench R20のスコアは4600程度となりました。定格と比較して、消費電力でいうと130Wから100Wへ30Wくらいの省電力化となっていますが、Cinebench R20で確認できる性能低下は1割未満となっています。BIOSアップデートでPPT制御が解禁されたら全コア4GHzくらい(おそらくPPT:50W~60W程度)を狙いたいところです。
ASRock DeskMini X300_Ryzen 7 PRO 4750G_4GHz_Cinebench R20

クリエイティブタスクにおけるCPU性能について、CPU使用率がフルロードになる3Dレンダリング、動画エンコード、RAW現像の3種類でさらに詳しくチェックしてみました。
具体的な測定内容は、3Dレンダリングはオープンソース3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト、動画のエンコードは無料で利用できる動画編集ソフトとして国内外で多数のユーザーがいる「Aviutl」のx264エンコーダによるフルHD動画のエンコード、RAW現像はDxO PhotoLab(PRIMEあり、5472×3648解像度のRAW画像ファイル 100枚)です。

Ryzen 7 PRO 4750Gを搭載した「ASRock DeskMini X300」のクリエイティブタスク性能を簡単にまとめると下のグラフのようになっています。()内にはクリエイティブタスクでCPUに100%負荷がかかった時の典型的なシステム消費電力を記載しています。
実際のクリエイティブ系アプリケーションにおいても、「ASRock DeskMini X300」はRyzen 7 PRO 4750Gの性能を一般的なデスクトップPCと同程度に引き出しています。また全コア4GHzの省電力設定についてもCinebench R20による簡易比較と同様に定格動作と比較して1割未満の性能低下に収まりました。
またIntel第10世代CPUの8コア16スレッドモデルCore i7 10700と比較すると、TDP65Wという電力制限の縛りの元では、省電力性能の差が効いてきます。Ryzen 7 PRO 4750Gを搭載した「ASRock DeskMini X300」は、Core i7 10700を搭載したASRock DeskMini H470よりも20%程度高いマルチスレッド性能を発揮できる、と考えていいと思います。
ASRock DeskMini X300_4750G_perfsum
ASRockからは今回レビューしているASRock DeskMini X300と合わせて、Intel第10世代CPUに対応するASRock DeskMini H470が発売されます。ASRock DeskMini H470に搭載可能な最上位CPUは10コア20スレッドのCore i9 10900なので、一見、ASRock DeskMini X300に搭載可能な「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」よりも高性能に思えますが、ワットパフォーマンスの問題でコアスレッド数の差に応じた性能差になるとは限りません。
「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」がPPT:65W程度で8コア16スレッドCPUとして十分に性能を発揮できるのに対して、Core i9 10900が10コア20スレッドCPUとして相応の性能を発揮するにはPL1:125W程度、同コアスレッド数のCore i7 10700でもPL1:95W程度が必要になります。
ASRock DeskMini H470ではPL1:90Wまでの電力制限解除に対応していますが、当然、消費電力は増加するので静音性とトレードオフになります。6コア以下であればあまり問題になりませんが、8コア以上ではCPU省電力性能の差が、静音性や実際の性能に影響してくるので、ASRock DeskMini X300とASRock DeskMini H470で迷っている人はこの辺りにも注意してください。
ASRock DeskMini X300_H470_top


続いて本題となる「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」のグラフィック性能をチェックしていきます。
グラフィック性能比較で最もメジャーな3DMarkで現在主流なDirectX11のベンチマーク「FireStrike」のグラフィックスコア、およびCPU統合グラフィックス向けDirectX12ベンチマーク「NightRaid」のグラフィックスコアについて、Ryzen 7 PRO 4750Gを搭載する「ASRock DeskMini X300」を含め、各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。
「ASRock DeskMini X300」ではRyzen 4000Gシリーズの大きな特徴の1つであるRadeonグラフィックスによるすぐれたグラフィック性能においても、一般的なデスクトップPCと遜色なく、Ryzen 7 PRO 4750Gのポテンシャルを引き出すことができています。
ASRock DeskMini X300_4750G_Gaming_3DMark_1_FS
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国内最大手かつ大人気のMMO RPG「ファイナルファンタジーXIV」の2019年最新大型アップデート「FFXIV: 漆黒のヴィランズ」の公式ベンチマークソフトで、Ryzen 7 PRO 4750Gを搭載した「ASRock DeskMini X300」のPCゲーミング性能を測定してみました。FFXIV: 漆黒のヴィランズの公式ベンチマークソフトでは総合スコアを1.5×100で割った値がちょうど平均FPSになっています。
Ryzen 7 PRO 4750Gを搭載した「ASRock DeskMini X300」は、グラフィック品質をデスクトップ向け標準にすると、1280×720のHD解像度まで下げてやっと平均60FPSの快適水準を上回ります。1600×900なら8000近くはマークできるのでグラフィック設定を多少下げれば平均60FPSを狙えそうです。1920×1080のフルHD解像度となると公式ベンチの評価は快適となっていますが、平均40FPSくらいなのでちょっと厳しいというのが正直な感想です。
ASRock DeskMini X300_Ryzen 7 PRO 4750G_FF14_1280
ASRock DeskMini X300_Ryzen 7 PRO 4750G_FF14_1600
ASRock DeskMini X300_Ryzen 7 PRO 4750G_FF14_1920
また2020年最新PCゲームと比較しても高画質でグラフィック負荷が重いPCゲームに分類されるシングルプレイ用ロールプレイングゲーム「ファイナルファンタジーXV」の公式ベンチマークソフトで、Ryzen 7 PRO 4750Gを搭載した「ASRock DeskMini X300」のPCゲーミング性能を測定してみました。
「AMD Ryzen 7 PRO 4750G」は、1280×720のHD解像度、グラフィック設定:軽量品質においてベンチマークスコアは4600程度、快適度評価は「やや快適」でした
ASRock DeskMini X300_Ryzen 7 PRO 4750G_FF15


最後にPCの総合的な性能を測定するためのベンチマークソフトPCMark10のクリエイティブ性能を測るテストグループ「Digital Content Creation」を使用して、iGPUのグラフィック性能がクリエイティブタスクへ与える影響をチェックしていきます。
クリエイティブ性能を測る「Digital Content Creation」は、写真に対するフィルタリング処理の性能をシミュレートする「Photo Editing」、レイトレーシングによる3Dグラフィクス制作(3Dレンダリング)をシミュレーションする「Rendering and Visualization」、動画編集の性能をシミュレートするワークロード「Video Editing」の3つのワークロードで構成されています。
ASRock DeskMini X300_Ryzen 7 PRO 4750G_PCM10

PCMark10 Digital Content Creationの個別ワークロードについて、Ryzen 7 PRO 4750Gを搭載した「ASRock DeskMini X300」を含め、各種CPUのベンチマークスコアを比較すると次のようになっています。
まず前提として3つのワークロードはいずれも、RTX2080TiとiGPUのCore i7 10700のスコアからGPUバウンドであり、また8コアでiGPUの弱いCore i7 10700と4コアでiGPUの強いCore i7 1065G7のスコアがほぼ並ぶことから、GPUだけでなくCPU性能も影響することがわかります。
つまりPCMark10 Digital Content Creationの3つの個別ワークロードは、前の章で検証した4つのクリエイティブタスク性能と違って単純にCPUマルチスレッド性能にスケーリングするのではなく、CPUとGPU(iGPU)の総合力・バランスが重要になってきます。
ASRock DeskMini X300_4750G_PCMark10_Creation_1_Photo
AMD Ryzen APUとIntel Core CPUを比較すると、単純なCPUマルチスレッド性能ではRyzen 7 PRO 4750Gと同等のCore i7 10700はiGPU性能の低さが足を引っ張るので、Photo EditingとRendering and Visualizationの2つのテストではRyzen 4000Gで最下位となるRyzen 3 PRO 4350Gが上回る性能を発揮し、上位2モデルはCPUとiGPUの性能にスケーリングして性能をさらに伸ばします。
ASRock DeskMini X300_4750G_PCMark10_Creation_2_Render
Video Editingは前2つに比べてスコア変化が小さいのですが、Ryzen 3 PRO 4350GはCore i3 10100を、Ryzen 5 PRO 4650GがCore i7 10700を上回っています。
グラフィックボードを用意せずCPUの内蔵グラフィックスによって簡単な写真編集や動画編集を行うなら、Ryzen 4000Gシリーズを搭載できる「ASRock DeskMini X300」のほうが、Intel第10世代Coreに対応するDeskMini H470よりも向いていそうです。
ASRock DeskMini X300_4750G_PCMark10_Creation_3_Video



ASRock DeskMini X300の消費電力・ファンノイズ・温度

「ASRock DeskMini X300」にRyzen 7 PRO 4750Gを組み込んだ時の消費電力や、使用するCPUクーラー別でRyzen 7 PRO 4750GのCPU温度やファンノイズを比較検証してみました。

まずは「ASRock DeskMini X300」にRyzen 7 PRO 4750Gを組み込んだ時の消費電力(以下、ACアダプタの変換損込み)についてですが、アイドル時の消費電力は12W前後でした。CPU負荷のあまり大きくないゲーミングシーンとしてFireStrikeグラフィックテスト1の時の消費電力は66W程度でした。
ASRock DeskMini X300_Power_idleASRock DeskMini X300_Power_GPU
TDP65Wの標準設定でメモリ周波数を3600MHzにOCして動画のエンコードを実行すると、消費電力は130W前後で推移しました。一方、性能の章において省電力設定の一例として紹介した全コア4GHz(コア電圧1.200V)で同様に負荷をかけた時の消費電力は95W前後でした。
ASRock DeskMini X300_Power_4750G_def_NoctuaASRock DeskMini X300_Power_4750G_40_1200
なお動画のエンコードと3Dグラフィックスの両方でフルに負荷をかけると消費電力は140W前後になりました。4750GでCPUだけにフル負荷をかけた時の消費電力が130Wですが、CPUとiGPUへ同時に負荷をかけても瞬間最大負荷は10~20W程度伸びるものの、消費電力はほぼ同じです。(CPUコアとSOCコアの合計値に電力制限があり、グラフィック負荷時にSOCコアの消費電力が上がるため)
消費電力の大きさそのものはRyzen 7 PRO 4750Gでも前世代最上位Ryzen 5 3400Gと大差はないので、Deskmini X300の付属ACアダプタはA300と同じですが電力供給能力的には特に問題ありません。
ASRock DeskMini X300_Power_4750G_CPU&GPU


続いて「ASRock DeskMini X300」に純正CPUクーラーや「Noctua NH-L9a-AM4 chromax.black」などを搭載し、サウンドレベルメーター(騒音計)を使用してファンノイズをCPUクーラー別で比較しました。
「Noctua NH-L9a-AM4 chromax.black」などのCPUクーラーを搭載したASRock Deskmini X300を横置きの状態で設置し、サウンドレベルメーターをスタンドで垂直上方向に50cm程度離して騒音値を測定しています。
ASRock DeskMini X300 review_04075_DxO
この測定方法において電源OFF時の騒音値は30dB未満です。目安として騒音値が35dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになりますが、35~38dB以下であればPCケースに入れてしまえばファンノイズが気になることはそうそうないと思います。40dB前後になると煩く感じ始め、45dBを超えるとヘッドホンをしていてもはっきり聞き取れるくらいになります。
A特性で測定しているのである程度は騒音値にも反映されていますが、同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質(細かい乱高下の有無や軸ブレ)にもよるので注意してください。

「ASRock DeskMini X300」に各種CPUクーラーを組み込んでファン回転数別にノイズレベルを比較すると次のようになります。
DeskMini X300と前モデルDeskmini A300に付属する「AMD APU Cooler」はヒートシンクの全高は変わっているものの、基本的な構造や冷却ファンは共通なので、同程度のノイズレベルになるかと思ったのですが、DeskMini X300の方がファンノイズが大きいという結果でした。ケースから出してしまうと似たような数値になるのですが、X300ではPCケースエアベントと冷却ファンの距離が近くなるので、PCケースエアベントの風切り音が強くなる傾向があるようです。
ASRock DeskMini X300_noise
また、純正CPUクーラーの「AMD APU Cooler」は冷却ファンの径が小さいのでノイズレベル上は騒音値が低めに出ていますが、実際はファン回転数(ノイズの周波数)が高いので数値上は同じノイズレベルでも、「Noctua NH-L9a-AM4(NH-L9i)」よりもうるさく感じます。加えて、付属クーラーは最低回転数が高めなので、アイドル時でもシューとかシャーといった高周波ノイズがあり、静音性や後述の冷却性能を考えるとASRock DeskMini X300で組むならやはり「Noctua NH-L9a-AM4(NH-L9i)」に換装するのがオススメです。
Noctua NH-L9a-AM4 chromax.black


最後にRyzen 7 PRO 4750Gを搭載した「ASRock DeskMini X300」において各種CPUクーラーの冷却を比較してみました。
CPUクーラーの冷却性能を検証するためのストレステストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、Aviutl&x264を使って動画のエンコードを行います。今回は8コア16スレッドCPUのRyzen 7 PRO 4750Gを使用しているので、動画エンコードの同時実行数については2並列実行とし、30分程度に渡って負荷をかけ続けました。テスト中のファン回転数については一定値に固定します。
ASRock DeskMini X300_CPU-Z_Ryzen 7 PRO 4750G_temp-stress

まずは「ASRock DeskMini X300」においてRyzen 7 PRO 4750Gを定格動作にして、各種CPUクーラーで冷やした時のCPU温度を比較しました。
Ryzen 7 PRO 4750Gを定格動作で運用すると、同CPUはTDP65Wですが内部設定としてはPPT:88Wが許容されているため実際にはTDP80~90W相当の発熱が生じるため、DeskMini X300に標準で付属するAMD APU Coolerではファン回転数を最大速度の3500RPMで固定していても、臨界温度の95度へ5分弱で達してしまいます。
DeskMini X300付属のAMD APU CoolerはRyzen 7 PRO 4750Gを運用するには心もとない(下位モデルRyzen 5 PRO 4650Gでも怪しそうな)冷却性能ですが、前モデルDeskmini A300に付属していたものよりはヒートシンクが大型化しているので、その影響で臨界温度に達するまでの猶予や、その後のCPU温度推移にも影響が出ており、多少ながら冷却性能の向上が確認できます。
ASRock DeskMini X300_temp_4750G_def
一方で「Noctua NH-L9a-AM4」の場合はファン回転数を最大速度の2500RPMに固定しているのでギリギリな感じはありますが、とはいえRyzen 7 PRO 4750Gを定格で運用できました。性能についても上の章でチェックした通り、一般的なデスクトップPCに搭載した時と同様のパフォーマンスを発揮しています。
ちなみにRyzen 7 PRO 4750Gの定格動作に対して、AMD APU Coolerの場合はCPUが臨界温度95度に達し、CPU Package Powerに制限がかかり消費電力が10W程度落ちているので、AMD APU CoolerとNoctua NH-L9a-AM4の間にはCPU温度の差以上に、冷却性能の差があります。
ASRock DeskMini X300_Power_4750G_def_NoctuaASRock DeskMini X300_Power_4750G_def_APU-Cooler
上のストレステスト中のRyzen 7 PRO 4750Gのコアクロックの推移は次のようになっています。CPU温度に比例して電力制限やXFRでコアクロックが上下するので、臨界温度95度の手前で踏みとどまった「Noctua NH-L9a-AM4」が4.17GHz程度で安定しているのに対して、AMD APU CoolerはCPUコアクロックが大きく変動しています。
ASRock DeskMini X300_clock_4750G_def
なおこの負荷テスト中の「ASRock DeskMini X300」のVRM電源温度をサーモグラフィカメラFLIR ONE PROでチェックしてみたところ、ホットスポットは100度に達していました。Noctua NH-L9a-AM4でファン速度を2000RPMに下げたまま負荷をかけると、画面がブラックアウトして再起動する現象も確認されたので、VRM電源温度的にもかなりギリギリな感じです。
ASRock DeskMini X300_4750G_def_Noctua-2500RPM

次に「ASRock DeskMini X300」においてRyzen 7 PRO 4750Gを全コア4.0GHz(コア電圧1.200V)の省電力設定にして、各種CPUクーラーで冷やした時のCPU温度を比較しました。
CPU動作設定を定格よりも省電力な設定に変えたので、いずれのCPUクーラーでもCPU温度が下がっているのが分かります。Ryzen 7 PRO 4750Gで限界近い負荷を長期的にかけ続けたとしても、DeskMini X300付属のAMD APU Cooler(2600RPM)でも85度以下、Noctua NH-L9a-AM4(2000RPM)なら75度前後に収まっており、これくらいであれば安心して運用できます。
Ryzen 7 PRO 4750Gの全コア4.0GHz(PPT:50W~60W)は当サイト的に実用的だと思うDeskMini X300における運用設定ですが、この設定において、Noctua NH-L9a-AM4は付属のAMD APU Coolerよりも10度近くさらに冷えて、ノイズレベルも40dB前後に対して35dBと非常に静かです。
ASRock DeskMini X300_temp_4750G_4GHz
また同様に「ASRock DeskMini X300」のVRM電源温度をサーモグラフィカメラFLIR ONE PROでチェックしてみたところ、ホットスポットは80度前後に収まりました。このくらいだと気持ち的にもやはり安心して運用できます。
ASRock DeskMini X300_4750G_4GHz_Noctua-2000RPM



ASRock DeskMini X300 レビューまとめ

最後に「ASRock DeskMini X300」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ
  • 高さ(幅)155mm×奥行155mm×幅(高さ)80mmで容積1.92Lのコンパクトサイズ
  • Ryzen 4000Gシリーズに対応し、最大で8コア16スレッドRyzen 7 PRO 4750Gを搭載可能
  • CPUとGPUのオーバークロックにも対応
  • システムメモリは最大64GB、メモリ周波数3600MHz/CL18のOCも安定動作
  • HD~フルHD解像度で軽めのPCゲームプレイ可能なグラフィック性能
  • ストレージは最大でNVMe M.2 SSDを2枚、2.5インチを2基で計4基まで搭載可能
  • BIOSメニューは日本語対応で使いやすい
  • ケース/MB/電源含めて税込2.2万円と高コスパ(10月9日発売時点で)
悪いところor注意点
  • BIOS:P1.40ではPPTやcTDPといった電力制限に非対応
  • Deskmini H470に比べてUSBポートなどI/O周りが乏しい

「ASRock DeskMini X300」は、Intel製CPUよりも3倍も高いグラフィックス性能を誇るRenoirことAMD Ryzen 4000GシリーズAPUを搭載可能なMini-STXベアボーンとして、長らくその登場を待望していた諸兄の期待に応える仕上がりです。HDMI2.0ビデオ出力が実装されて4Kテレビに接続可能、最大4基のストレージを搭載可能、VESAマウントにも対応など、リビングに置くコンパクトなHTPCに最適な1台だと思います。


AMD Ryzen 7 PRO 4750Gは競合Intelの8コア16スレッドCPUであるCore i7 10700と比較してCPUマルチスレッド性能は同等ですが、Intel第10世代Core i7がコアスレッド数相応の性能を発揮するのにPL1:95W程度を要求するのに対して、Ryzen 7 3700Xと同様にPPT:65Wで十分な性能を発揮できる優れた電力効率を実現しており、
魅力でしたが、コンパクトベアボーンPCの「ASRock DeskMini X300」であれば、そんなAMD Ryzen 7 PRO 4750Gの魅力を最大限に引き出すことができます。

「ASRock DeskMini X300」はシステムメモリのOCに加えて、前モデルA300では封印されていたCPUとGPUのオーバークロックにも対応しています。SOC電圧の手動設定に対応したおかげでシステムメモリのOC耐性も伸びており、今回の検証ではDeskMini X300に搭載可能な最大容量、32GB×2=64GBにおいて、3600MHz/CL18の高速OC設定も安定動作が確認できました。

以上、「ASRock DeskMini X300」のレビューでした。
ASRock DeskMini X300













「ASRock DeskMini X300」は気になるけど、「自作PCを組むのが心配……」という人には、サイコムやPCショップアークからリリースされているASRock DeskMini X300をベースにしたBTO PCがオススメです。

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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)



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