Asetek AIO Water Cooler for Threadripper


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78mm×58mm大型ベースプレートを搭載し、AMD Ryzen Threadripper 3000XやPRO 5000WXといったTDP280WのCPUを冷却可能なsTRX4/sWRX8対応360サイズ簡易水冷CPUクーラー「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」をレビューします。
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レビュー目次


1.Asetek AIO Water Cooler for Threadripperの外観・付属品

2.Asetek AIO Water Cooler for Threadripperをセットアップ

3.Asetek AIO Water Cooler for Threadripperの冷却性能

4.Asetek AIO Water Cooler for Threadripperのレビューまとめ



Asetek AIO Water Cooler for Threadripperの梱包・付属品

まずは「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」のCPUクーラー本体や付属品をチェックしていきます。
「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」はBTO PCなど組み込み機器を前提にした製品が、今回、OCWorksで例外的に販売されたのか、市販のCPUクーラーとは異なり専用のパッケージ等はなく、エアパッキンで包装された状態で届きました。
Asetek AIO Water Cooler for Threadripper

ちなみにOCWorksではこんな感じの専用パッケージで、3個1セットで届いたようです。


簡易水冷CPUクーラー本体以外の付属品は、小分けのビニール袋に包装されたファン&ラジエーター固定ネジセット、水冷ヘッド固定用のローレットナット&スタンドオフ&スプリングです。
「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」は360サイズ簡易水冷CPUクーラーですが冷却ファンは付属していません。
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続いて「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」の水冷ヘッド本体をチェックしていきます。
「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」の水冷ヘッドはシンプルな黒色外装で、サーバー・ワークステーションの組み込み機器向けという感じの外観です。
サンプルイメージを見た時は水冷ヘッドのトップカバーはプラスチック製かと思ったのですが、リテンションブラケットも兼ねているので、ガッシリとした金属製でした。
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ラックマウントサーバーのようなロープロファイル環境も想定しているのか、水冷ヘッドは薄型です。
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「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」の水冷ヘッドからは、水冷ポンプへの給電および回転数取得用のPWM対応4PINファンケーブルが伸びています。
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「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」の水冷ポンプは上述の通りPWM対応4PINファン端子から電源供給を行うので速度調整にも対応しています。
定格(最大)ポンプ回転数は仕様通り3450RPM前後に対して、PWM速度調整によってポンプ回転数を2400RPM(デューティ比60%に設定時)まで下げることが可能です。
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「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」のCPUと接触するベース部分は銅製ベースプレートが採用されています。保護フィルムではなくプラスチックのカバーで保護されていました。
標準で熱伝導グリスが均等に塗られているので、こだわりがなければ初回使用時は個別にグリス購入の必要はありません。
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Asetek AIO Water Cooler for ThreadripperのCPUと接触するベース部分は銅製になっており、銅製ベースプレートは鏡面磨き上げではありませんが、滑らかな表面に研磨されています。
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「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」には78mm×58mmの大型銅製ベースプレートが採用されているので、既存のCPUと比較して超大型なRyzen ThreadripperのCPUヒートスプレッダ(68mm×51mm)を完全にカバーします。
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AMD Ryzen ThreadripperのCPU本体にはAsetek OEMの簡易水冷CPUクーラー用リテンションブラケットが付属しますが、Asetek OEMの簡易水冷CPUクーラーと銅製ベースプレートのサイズを比較すると、「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」のほうが巨大です。
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「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」の水冷チューブは水冷ヘッドの短辺、固定ネジ穴の間隔が狭い方の中間と左上から伸びています。
L字エルボーの水冷ヘッド側はロータリー式になっているのでチューブ同士やマウントブラケットが干渉しない範囲で180度自由に動かすことができます。
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水冷チューブには劣化に強く水漏れ、クーラントの揮発の心配がないゴムチューブを採用、上から柔軟性に優れ摩耗防止に適したナイロンスリーブが巻かれており取り回しにも優れています。
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水冷チューブの長さは約400mmです。十分な長さがあるのでミドルタワー程度のPCケースであればトップだけでなく、フロントのファンマウントスペースにもラジエーターを設置できます。
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水冷チューブは外径は10~12mmで、ゴム製チューブにナイロンスリーブが巻かれています。細くて丈夫なチューブなので曲げやすく取り回しにも優れています。かなり強く曲げてもチューブが折れて潰れなかったので安心してPCへ組み込むことができます。
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「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」のラジエーターのデザインは一般的なもので、簡易水冷クーラーの一部モデルに採用されているように独自デザインではなく汎用的なものが使用されていました。
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「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」の放熱フィンのピッチについては水冷ユーザー視点で言うと少し密度が高いと感じました。
密度が高い分、放熱フィンの放熱性能は高まりますが、静圧の低いケースファンや低回転数動作の場合、十分なパフォーマンスを発揮できない可能性もあるので注意が必要です。
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「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」には、冷却ファンを固定するための長ネジが4本×3セットで計12本、ラジエーターをPCケースに固定するための短ネジが4本×3セットで計12本、ワッシャーが4個×3セットで計12個が付属します。
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冷却ファンのラジエーターへの固定やラジエーターのPCケースへの固定に使用するネジの規格はUNC No.6-32でした。日本国内のユーザーとしてはホームセンターで簡単に入手可能なM3かM4ネジを採用して欲しいところです。



Asetek AIO Water Cooler for Threadripperの検証機材・セットアップ

「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」を検証機材のベンチ機にセットアップします。
「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」の検証機材として、AMD Ryzen Threadripper 3970Xなどで構成されているベンチ機を使用しました。構成の詳細は下記テーブルの通りです。
テストベンチ機の構成
CPU AMD Ryzen Threadripper 3970X
レビュー

マザーボード
ASRock TRX40 Taichi
レビュー

メインメモリ G.Skill Trident Z Neo
F4-3600C16Q-64GTZN
レビュー
3600MHz, CL16-16-16-36-CR1

ビデオカード MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC
ファンレス (レビュー
システム
ストレージ
Samsung SSD 980 PRO 500GB
レビュー
OS Windows11 Home 64bit
電源ユニット Corsair HX1200i (レビュー
ベンチ板 STREACOM BC1 (レビュー


360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーターの簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。
「Noctua NF-A12x25 PWM」は、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファンとなっており、1基あたり3500円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む
Noctua NF-A12x25 PWM x3

ベンチ機のシステムストレージには「Samsung SSD 980 PRO 500GB」を使用しています。
Samsung SSD 980 PROは、PCIE4.0対応によって連続アクセススピードを最大で2倍に飛躍させただけでなく、ランダム性能の向上によってSSD実用性能においても前世代970 PROから大幅な向上を果たし、PCIE4.0アーリーアダプターなPhison PS5016-E16採用リファレンスSSDよりも高速なので、これからPCIE4.0対応プラットフォームの自作PCを組むなら、システム/データ用ストレージとして非常にオススメな製品です。
「Samsung SSD 980 PRO 1TB」をレビュー。堂々の最速更新
Samsung SSD 980 PRO 1TB

Ryzen Threadripper 3000検証環境のシステムメモリには、高級感のあるヒートシンクや8分割ARGB LEDを搭載してデザイン面でも優れ、16GB×4枚組み64GBの大容量で3600MHz/CL16という高性能PCで定番スペックのメモリOCに対応した「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C16Q-64GTZN」を使用しています。
G.Skill Trident Z Neoシリーズは当初Ryzen向けにリリースされた製品ですが、2枚組み16GB容量から最大256GBまで、メモリOCについても3200MHz/CL14や3600MHz/CL16といった定番スペックがラインナップされていて、最新のAMD環境だけでなく、最新のIntel環境でも高いパフォーマンスを発揮できるので、選んで間違いのないオススメなOCメモリです。
「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C16Q-64GTZN」をレビュー
G.Skill Trident Z Neo F4-3600C16Q-64GTZN



前置きはこのあたりにしてベンチ機へ「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」をセットアップします。
「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」をマザーボード装着する時に使用するマウントパーツは、スタンドオフ、リテンションスプリング、ローレットナットの3種類だけです。
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「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」で使用するスタンドオフは一見、両側のネジ山は同じに思えますが、下写真をよく見ると左側のネジ山部分が僅かに太いのが分かります。この太い方をCPUソケットのネジ穴に挿します。
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スタントオフをCPUソケット周辺のCPUクーラー固定用ネジ穴に装着するだけでCPUクーラー装着のための下準備は完了です。
Asetek OEMクーラー互換のリテンションブラケットはリテンションネジが装着済みなので1ステップで装着可能なのでひと手間少ないですが、「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」ではスタンドオフが水冷ヘッドの装着ガイドの役割を果たしており、ネジ穴(水冷ヘッド)の位置合わせが簡単というメリットがあります。
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熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。


グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
Thermal Grizzly Kryonaut_Threadripper
普段は熱伝導グリスを上のようにてきとうに塗っているのですが、Ryzen Threadripperはヒートスプレッダが大きいため、『最初に等間隔に9カ所小さめに熱伝導グリスを落として、さらにその間の4か所に少し大きめに熱伝導グリスを塗る』というNoctua式の塗り方が良い感じだったので今回はNoctua式を採用しました。
Noctua TR4_tp
この塗り方をするとRyzen Threadripperの大型ヒートスプレッダでもCPUクーラーの圧着でヒートスプレッダ全体へ熱伝導グリスが綺麗に伸びます。ただしグリスをかなり大量に使うので注意。
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サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。


熱伝導グリスを塗ったらスタンドオフに水冷ヘッドの足のネジ穴が合うようにしてCPUクーラーを装着します。CPUの上に乗せたらグリスが広がるように力の入れすぎに注意して水冷ヘッドをグリグリと捻りながら押し込んで、リテンションブラケットの穴にスプリングを乗せます。
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さらに上からローレットナットを締めたら「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」の設置完了です。
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AMD Ryzen Threadripper対応マザーボードはCPUソケットの両側にメモリスロットがあるため、空冷CPUクーラーではファンやヒートシンクがメモリスロットに被さってしまい、ヒートシンク付きメモリの選択肢が狭い傾向にありますが、「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」ならメモリ干渉フリーで心配はありません。
簡易水冷CPUクーラーはラジエーター設置の手間やスペース確保の問題はありますが、マザーボード上のメモリなどのコンポーネントとの干渉は大型のハイエンド空冷CPUクーラーより発生し難く、水冷ヘッドの設置自体も基本的にツールレスで容易なのが長所だと思います。
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以上でAsetek AIO Water Cooler for Threadripperのベンチ機へのセットアップ完了です。
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Asetek AIO Water Cooler for Threadripperの冷却性能

本題となる「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」の冷却性能や静穏性についてチェックしていきます。
検証システムをベンチ板に置いた状態で測定を行っているためCPUクーラーが水冷・空冷によらず基本的にCPUクーラーの理想的な性能をチェックすることになります。
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「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」の静音性については組み合わせる冷却ファン次第なので検証は割愛します。
当サイト的には「Noctua NF-A12x25 PWM」や「Thermaltake TOUGHFAN 12」のような静圧の高さも重視した設計の高性能冷却ファンがオススメです。
HP-Fan


2022年9月現在、「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」が対応するRyzen Threadripperの最新モデルはPRO 5000WXシリーズですが、残念ながら所有していないので、今回はRyzen Threadripper 3000シリーズの32コア64スレッドモデル「Ryzen Threadripper 3970X」を使用して冷却性能を比較してみました。


CPU温度は環境温度にも影響されるため測定時は室温(ベンチ機付近の温度)が25度程度となるように注意しました。
比較対象のCPUクーラーには、Threadripper対応大型ベースプレートを搭載する簡易水冷CPUクーラーとして当サイトで推奨している「SilverStone IceGem 360」を使用し、ポンプ速度はいずれも最速、またラジエーターに搭載する冷却ファンは「Noctua NF-A12x25 PWM x3」に統一、ファン回転数は1500RPMに固定しています。
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CPUクーラーの冷却性能を検証するためのストレステストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、HandBrake(x264)を使って動画のエンコードを行います。
AMD Ryzen Threadripper 3970X_Stress-Test
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。

Ryzen Threadripper 3970XなどRyzen Threadripper 3000シリーズCPUを実際に運用する上では、コアクロックは基本的に弄らないほうがいいのですが、XFRが効くと厳密に比較するのが難しくなるので、Ryzen Threadripper 3970Xを全コア4.1GHz、コア電圧1.250Vに固定して検証を行いました。
メモリについては「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C16Q-64GTZN」のOCプロファイルを適用し、「メモリ周波数:3600MHz」「メモリタイミング:16-16-16-36-CR1」としました。
AMD Ryzen Threadripper 3970X_manual-OC-settings

Ryzen Threadripper 3970Xを全コア4.1GHzにOCすると、Cinebench R23のスコアは46500~47000ほどとなります。この動作設定において上で紹介したストレステストを実行すると、システムの消費電力(概ねマイナス80W程度でCPUの消費電力)は400W前後に達します。
AMD Ryzen Threadripper 3970X_OC_cinebench r23
AMD Ryzen Threadripper 3970X_OC_Power

Ryzen Threadripper 3970Xの全コア4.1GHzについて、「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」とSilverStone IceGem 360で負荷テスト中のCPU温度の推移を比較すると次のようになりました。
Ryzen Threadripperに対応する市販のAIO水冷クーラーについて、当サイト的にはこれまでSilverStone IceGem 360が最も冷えるという評価でした。(ENERMAX LIQTECH II 360もほぼ同等の冷却性能でしたが、製品品質の問題ですでに終売に)

そんなSilverStone IceGem 360と比較して、「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」はRyzen Threadripper 3970Xの全コア4.1GHz、CPU消費電力310W前後の負荷に対して、5~6度も冷えるという非常に優れた冷却性能を発揮しました。
Ryzen Threadripper対応かつ、完成品をポン付けできるAIO水冷CPUクーラーとして「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」は現状で最も冷える製品だと思います。

Asetek AIO Water Cooler for Threadripper_temp_vs-SS-IceGem360


Ryzen Threadripperはメインストリーム向けRyzen CPUと同様にCPUクーラーの冷却性能に応じたコアクロック制御機能 Precision Boost 2 & XFR 2 (Extended Frequency Range 2)によってクロックアップ&温度制御が行われます。
Ryzen Threadripper 3000シリーズCPUではその際に参照されるテーブルが限界近くまでチューニングされており、ユーザーが設定を変更したとしてもコアクロックを上昇させることが可能なマージン(ヘッドルームと呼ばれている)が非常に小さくなっています。

第3世代Ryzen Threadripperについてはコアクロック回りを下手に弄るよりも、定格のまま、もしくはPrecision Boost Overdriveで電力制限を解除する程度に留め(定格と比べて消費電力の増加に対する性能の伸びは小さいが)、360サイズ簡易水冷CPUクーラーのような高性能なCPUクーラーの冷却性能にまかせて自動OC機能によるクロックアップを狙うのがオススメです。

今回はPrecision Boost Overdriveによるクロックアップの一例として下記のような設定を試してみました。
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」のOC設定として、Precision Boost Overdriveを有効化して『PPT = 1000W、TDC = 490A、EDC = 630A』に設定しています。
メモリについては「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C16Q-64GTZN」のOCプロファイルを適用し、「メモリ周波数:3600MHz」「メモリタイミング:16-16-16-36-CR1」としました。
AMD Ryzen Threadripper 3970X_PBO-settings

Ryzen Threadripper 3970XをPBOによってクロックアップすると全コア4.1~4.2GHzで動作するので、Cinebench R23のスコアは47000~48000ほどとなります。マニュアルOCと違って単コア最大ブーストクロックは維持されるので、シングルスコアは定格動作と同等以上です。
この動作設定において上で紹介したストレステストを実行すると、システムの消費電力(概ねマイナス80W程度でCPUの消費電力)は500W前後に達します。
AMD Ryzen Threadripper 3970X_PBO_cinebench r23
AMD Ryzen Threadripper 3970X_PBO_Power

「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」によって冷やすことで、Ryzen Threadripper 3970XをPBOで全コア4.1GHzへのクロックアップし、安定動作を確認できました。
Ryzen ThreadripperのPBOによるクロックアップ(OC)では消費電力も400Wを超えてくるのでラジエーターやヒートシンクの放熱容量だけでなく、CPUヒートスプレッダと接するベースの熱交換性能のCPU温度に対する比重かなり大きくなってきます。
簡易水冷クーラーらしい放熱容量の高さや熱移動のスムーズさに、超大型ベースプレートによる優れた熱交換性能が組み合わさって、Ryzen Threadripper 39700XのPBOによる全コア4.1GHzに対しても「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」は十分な冷却性能を実現しています。
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Asetek AIO Water Cooler for Threadripperのレビューまとめ

最後にAMD Ryzen Threadripper専用の簡易水冷CPUクーラー「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ
  • ThreadripperのIHSにも余裕のある62x46mmの超大型ベースプレートを採用
  • 120mmファンを3基搭載可能な360サイズの大型ラジエーター
  • 32コアRyzen Threadripper 3970XのPBOによる全コア4.1GHzを運用可能な冷却性能
  • 水冷チューブはスリーブ付きで丈夫
  • 水冷ブロックの固定はローレットナットでツールレス固定可能
  • CPUソケット左右のメモリスロットと干渉しない
悪いところor注意点
  • マウント用のスプリングとローレットナットが別(一体型だとさらに便利だった)
  • ファン・ラジエーターの固定ネジの規格はUNC #6-32
  • 一般販売は基本的になし

冷却性能の検証結果からもわかるように、「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」は、最大で64コアがラインナップされ、全モデルがTDP280Wで実際にCPU消費電力として280Wの発熱が生じるRyzen Threadripper CPUを定格で問題なく運用でき、さらには単コアブーストクロックを活かしながら、全コア最大ブーストクロックを引き上げるPrecision Boost Overdriveによる400W超クラスの負荷も冷やしきる非常に優れた冷却性能を備えています。

Ryzen Threadripper対応CPUクーラーというと、CPU本体に専用リテンションブラケットが付属することからAsetek OEM製品の認知度が高いようですが、CPUヒートスプレッドを完全に覆う超大型ベースプレートを採用して、より優れた冷却性能を実現する「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」はRyzen Threadripperで作る自作PCのお供として特にオススメなCPUクーラーです。

惜しむらくは、「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」は一般販売されていないことでしょうか。(今回、特殊な条件で管理人は購入ができたものの)
2022年現在、Ryzen Threadripper自体がハイエンドデスクトップ向けモデルが展開されておらず、サーバー・ワークステーション向けのPRO 5000WXシリーズのみなので、需要はそれほどないといえばそうですが。

以上、「Asetek AIO Water Cooler for Threadripper」のレビューでした。
Asetek AIO Water Cooler for Threadripper


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補足:空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて

「空冷クーラー」と「水冷クーラー」の2種類ついて同じところと違うところ、また原理的に考えた冷却性能の比較を簡単に補足しておきます。




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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)



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