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NVIDIAの次世代モバイル向けGPU上位モデルGeForce RTX 3070 Laptop GPUや8コア16スレッドCPUのCore i7 10870Hを搭載し、e-Sports大会クラスの超高速300Hzリフレッシュレートに対応した液晶ディスプレイを採用した高性能ゲーミングモバイルPC「MSI GS66 Stealth (型番:GS66-10UG-003JP)」をレビューします。
製品公式ページ:https://jp.msi.com/Laptop/GS66-Stealth-10UX
MSI GS66 Stealth レビュー目次
1.MSI GS66 Stealthの概要とスペック
2.MSI GS66 Stealthの外観・付属品
3.MSI GS66 StealthのキーボードとI/Oポート
4.MSI GS66 Stealthのディスプレイ
5.MSI GS66 StealthのCPU/GPU/ストレージのスペック
6.統合管理ソフトMSI Dragon Centerについて
・MSI GS66 StealthによるCPU/GPU性能制御について
・MSI GS66 Stealthのファン制御について
7.MSI GS66 Stealthの温度・消費電力・ファンノイズ
8.MSI GS66 StealthのCPU性能とGPU性能
・MSI GS66 StealthのCPU性能とGPU性能のまとめ
9.MSI GS66 Stealthのレビューまとめ
【機材協力:MSI】
MSI GS66 Stealthの概要とスペック
最初に今回レビューする「MSI GS66 Stealth(型番:GS66-10UG-003JP)」の概要と製品スペックについて簡単に紹介しておきます。MSI GS66 Stealth (GS66-10UG-003JP) 詳細スペック | |
OS | Windows 10 Home 64bit |
CPU | Intel Core i7-10870H 8コア16スレッド (2.2GHz / 5.0GHz / TDP45W) |
CPU内蔵グラフィックス | Intel UHD Graphics for 10th Gen Intel Processors |
グラフィックス | NVIDIA GeForce RTX 3070 Laptop GPU |
ディスプレイ | 15.6インチ 1920x1080 300Hz アンチグレア、液晶モニタ(IPSレベル) |
メモリ | DDR4-2933 SO-DIMM 8GB×2=16GB(2スロット、最大64GB) |
システムストレージ | 1TB NVMe M.2 SSD |
セカンドストレージ | - (空きスロット、NVMe M.2 SSDを増設可能) |
サウンド | 2 x 2Wスピーカー、アレイマイク、Nahimic 3 |
有線ネットワーク | Killer製2.5Gb LAN (Killer E3100X) |
無線ネットワーク | Intel AX210 (802.11ax, WiFi 6E対応) Bluetooth V5.2 |
USB | 3× USB3.1 Gen2 Type-A 1× USB3.1 Gen2 Type-C 1x Thunderbolt3 USB Type-C (DP Alt対応) |
ビデオ出力 | HDMI2.0 Thunderbolt3 USB Type-C (DP1.4) |
マイクヘッドホン | ヘッドホン&マイク用4極3.5mmジャック |
キーボード | SteelSeries テンキーレス日本語キーボード RGB 1670万色 個別キー制御 Nキーロールオーバー |
ウェブカメラ | HD Webカメラ (IR顔認証対応) |
内蔵バッテリー | 充電式リチウム電池 99Wh |
電源 | 230W ACアダプタ |
オフィスソフト | オフィスソフトなし |
光学ドライブ | なし |
寸法、重量 | 幅358×奥行248×厚さ19.8(mm)、2.1kg |
MSI GS66 Stealthの外観・付属品
早速、「MSI GS66 Stealth」を開封していきます。「MSI GS66 Stealth」は保護用の外箱としてMSIロゴが描かれた茶色段ボール箱で梱包されています。
茶色段ボール箱の中にはモバイルPC本体が収められた化粧箱と、各国使用に合わせたACアダプタ&ケーブルが収められた小分けパッケージの2つが入っています。
「MSI GS66 Stealth」のモバイルPC本体が収められた化粧箱はスポンジ製スペーサーでしっかりと衝撃から保護されています。
「MSI GS66 Stealth」のモバイルPC本体パッケージは15.6インチのモバイルPCにほぼピッタリなサイズ感です。
「MSI GS66 Stealth」のモバイルPC本体はビニール袋に加え、黒地にMSIロゴの描かれた不織布の袋に封入され、本体ピッタリサイズのプラスチック製スペーサーに収められています。液晶モニタとキーボードの間にはディスプレイクリーニングクロスとしても使用できる布が挟まれており、輸送中に液晶パネルに傷がつかないように保護しています。
「MSI GS66 Stealth」の付属品はマニュアル冊子、ACアダプタ&ACケーブルとなっています
「MSI GS66 Stealth」の付属ACアダプタはChicony製で、電源出力は230W(20.0V×11.5A)です。
ACケーブルを接続する端子はミッキー型と呼ばれることの多い3PIN型ではなく、自作PC電源ユニットに採用されることの多い多角形型3PIN端子です。
本体重量は製品スペックでは2100gと表記されていましたが、実際に計ってみたところ2117gでした。またACアダプタ&ケーブルは902g程度でした。両方合わせて3000gほどなので持ち運べなくはありませんが、外出時に気軽に、というのは難しい重さだと思います。自宅や職場で持ち運ぶ分には特に問題なさそうな重さです。
続いて「MSI GS66 Stealth」の外観を簡単にチェックしていきます。
「MSI GS66 Stealth」の天板は黒色アルミニウム製になっています。MSI GS66 StealthはゲーミングモバイルPCながら中央のMSIゲーミングロゴを除けば装飾もなく、シンプルかつスタイリッシュな装いです。
写真ではなかなか伝えるのが難しいのですが、「MSI GS66 Stealth」の天板は艶やかな質感高い黒色塗装が施されており、シンプルながら高級感を醸し出しています。
MSI GS66 Stealthは15.6インチモニタ搭載モバイルPCとなっており、仕様寸法は幅358mm×奥行248mm×厚さ19.8mmです。A4サイズの用紙と比較すると下のようになります。
MSI GS66 Stealthのスペック上の厚みは19.8mmとなっていますが、これはゴム足を含めない数値のようで、地面から高さを測った時の最厚部は25mmほどになります。ちなみに先端の最薄部は17.7mm程でした。
MSI GS66 Stealthは底板も金属製です。ヒンジ寄りで底面1/3をカバーする1mm程度の丸穴エアスリットが吸気口として設けられています。天板同様に底面も非常にシンプルな装いです。
「MSI GS66 Stealth」では左下の1つに封印シールがあり、剥がした段階で正規保証外になるので、ユーザーによるメモリやSSDの換装は非推奨となります。代わりに、SSDスペックの解説でも言及しますが、MSI公認サポート店に製品を持ち込めば内蔵SSDやメモリのアップグレードを有償で行ってもらえるサービスが提供されています。
上述の通り、「MSI GS66 Stealth」はユーザーが封印シールを剥がして底板を外すと正規保証対象外になりますが、今回は内部仕様やシステムクーラーの紹介のため、機材貸出元より特別に許可をいただいて分解してみました。
「MSI GS66 Stealth」の吸気口は底面の中央とキーボード上側、排気口は背面左右と側面左右後方の計4か所となっており、非常に広いエアフロー面を備えています。
内部構造としてもMSI独自のCooler Boost Trinity+冷却システムを採用し、進化を果たしています。0.1mm厚ながら剛性に優れたファンブレードを持つ3基の巨大ファンと7本のヒートパイプによって、冷却効果が従来製品比で15%向上し、負荷の重い作業を行う時も安定性が確保できます。
「MSI GS66 Stealth」のCPU&GPUの冷却機構としては、熱源から7本のヒートパイプによって銅製放熱フィンへ効率的な熱拡散を行い、0.1mm厚ながら剛性に優れたファンブレードを持つ、3基の60mm径冷却ファンによって排熱します。
GPUクーラーには2基のファンが割り当てられ放熱面も広いのに対して、ヒートパイプがもう一方の放熱ヒートシンクと接するようクロスしているとはいえ、ファン1基のCPUクーラーは小ぶりなサイズです。
MSI GS66 StealthのキーボードとI/Oポート
続いて「MSI GS66 Stealth」のキーボードやI/Oポートなどハードウェアを詳しく見ていきます。まずは本体右側のI/Oポートです。手前(左)から順にはヘッドホン&マイク用4極3.5mmジャック、USB3.2 Gen2対応USB Type-Cポート、USB3.2 Gen2対応USB Type-Aポート×2、Killer製2.5Gb LANポート(Killer E3100X)です。
最近では無線マウスはBluetoothが主流ですが、個人的な希望としては、USB3.XはLogicoolのUnifyingレシーバーなど一部のワイヤレスUSB機器と干渉するのでUSB3.Xから少し離れた場所に追加でUSB2.0端子があればさらに良かったと思います。
ヘッドホン出力端子はハイレゾオーディオに対応していますが、内蔵スピーカーにもデンマークの高級オーディオメーカーDYNAUDIOとの提携によって誕生した高音質スピーカー「DUO WAVE SPEAKER」が採用されています。パッシブラジエーターを内蔵したことによって、重低音が加わった迫力のあるサウンドでゲーム・音楽・映画を楽しめます。
FPSなどオンライン対戦PCゲームを主戦場とするガチゲーマーにとって遅延(レイテンシ)や通信安定性から有線LANは必須ですが、大容量データを取り扱うクリエイターにとっても嬉しい要素として、従来よりも2.5倍高速な2.5Gb対応の有線LANを薄型筐体でも妥協せずに搭載しているのは魅力です。
PCゲーミングに最適化されたKiller E3100Xは専用アプリケーション「Killer Control Center」を使用することによって低レイテンシが求められるPCゲームの通信を優先させることが可能です。
従来の2.4GHz帯と5GHz帯に加えて、グローバルに免許不要で使用可能(になる予定)な6GHz帯もサポートするWiFi 6E&Bluetooth5.2に対応した無線LAN(Intel AX210)も搭載しています。接続規格としてはWi-Fi 802.11 a/b/g/n/ac/ax、2.4/5GHz/6GHzトライバンド、最大通信速度2400Mbps、Bluetooth 5.2に対応しています。
続いて本体左側のI/Oポートです。手前(右)から順に、USB3.2 Gen2対応USB Type-Aポート、HDMI2.0ビデオ出力、Thunderbolt3対応USB Type-Cポート、DC端子となっています。
「MSI GS66 Stealth」の本体右側に実装されたUSB Type-Cポートは最大40Gbpsの高速通信に対応したThunderbolt3に対応しています。DisplayPort Alternate ModeでRTX 30シリーズGPUに接続されたDisplayPort1.4対応ビデオ出力としても機能します。
Thunderbolt3対応USB Type-Cポートに加えて、HDMI2.0の計2基のビデオ出力を搭載しています。HDMIは次世代規格のバージョン2.1に対応していないので、4K/60FPSには対応しますが、8K/60FPSや4K120FPSの表示には非対応です。
「MSI GS66 Stealth」のディスプレイ上端の中央には92万画素のHD Webカメラが実装されています。HD Webカメラは顔認証機能対応し、ステレオマイクも内蔵されています。
「MSI GS66 Stealth」のキーボード周辺の全体像は次のようになっています。パームレストなどキーボード面は天板同様に質感の高い黒色アルミニウム製です。
「MSI GS66 Stealth」についてはエンターキーの形を見ると分かりやすいですが、国内モデルは日本語配列キーボードが採用されています。かな英字入力の切り替えを行う「半角/全角/漢字」キーも実装されており、日本語入力もスムーズに行うことができます。
「MSI GS66 Stealth」に搭載されたキーボードのキーサイズは16.6mm、キーピッチは約19.7mmでした。キーの厚みは2mm程度と薄いですがちゃんと押下した感触もあります。
「MSI GS66 Stealth」のキーボードのロールオーバー(複数キーの同時押し)について公式には特に明記されていませんが、実際に試してみたところ、押下する領域に応じて若干変わるものの、8~10キー程度であれば同時押下が認識されました。実用上は問題にならない数のロールオーバーに対応していると思います。
「MSI GS66 Stealth」のキーボードには、マウス&キーボードなどPCゲーミング機器大手SteelSeries製のPer-Key RGB LEDイルミネーション対応ゲーミングキーボードが採用されています。SteelSeriesとのコラボレーションで誕生した組み込み式キーボードは、耐久性・RGBイルミネーション機能・ゲーミング機能を備えています。
「MSI GS66 Stealth」のキーボードに搭載されたLEDイルミネーションは専用のプリインストールアプリケーションから、キー1つ1つへの個別制御で発光パターンや発光カラーの設定が可能です。ただ、「MSI GS66 Stealth」のキーボードに搭載されたLEDイルミネーションの輝度はそれほど高くないので、明るい部屋だと効果を実感し難いかもしれません。
「MSI GS66 Stealth」のキーボード制御にはSteelSeries Engine 3というアプリケーションを使用します。SteelSeries Engine 3は同PCの標準キーボードだけでなく、SteelSeries製のゲーミングマウス、ゲーミングキーボードにも対応したアプリです。
SteelSeries Engine 3からは、キーボードのLEDイルミネーション制御だけでなく、PCゲームなどアプリケーション別で自動的に切り替わるプロファイル作成や、SteelSeries製ゲーミングキーボードと同等のマクロプログラム機能も標準で実装されています。
「MSI GS66 Stealth」のキーボードの手前にはトラックパッドが設置されています。横141mm×縦66mmの幅広なトラックパッドなので16:9アスペクト比のワイド画面に対する操作性も良好です。トラックパッドは様々なジェスチャー操作にも対応しています。
パームレスト天面とは質感の異なる黒色塗装アルミニウム面を露出させたエッジ処理の光沢によって高級感があります。
右下にある「Fn」キーと最上段の「F10」キーを同時に押すとトラックパッドのON/OFFをワンタッチで切り替え可能です。PCゲームでキーボードを使うユーザーも多いと思うのでショートカットキーでサクッとトラックパッドの誤反応を防げる機能は便利だと思います。
ちなみにFnキーを押下するとその他のLEDイルミネーションが消灯して、ファンクション機能のあるキーだけが赤色に点灯するという親切設計です。
ちなみに「MSI GS66 Stealth」の電源スイッチはDeleteやBack Spaceなど頻繁に使用するキーと隣接してキーボード上に配置されていますが、単純な1回押下では無反応となっており、2秒長押しにシャットダウンが割り当てられています。
MSI GS66 Stealthのディスプレイ
「MSI GS66 Stealth」に搭載されたディスプレイについて詳しくチェックしていきます。「MSI GS66 Stealth GS66-10UG-003JP」のディスプレイには、サイズが15.6インチでネイティブリフレッシュレート300Hz、1920x1080解像度の液晶パネルが採用されています。
一応、ゲーミングモニタには360Hz対応モデルが発売済みですが、一般的な高速リフレッシュレートの240Hzを大きく上回る300Hzリフレッシュレートに対応しています。
「MSI GS66 Stealth」のディスプレイについて注意点として、公式仕様通りフルHD/300Hzには対応していますが、フルHD解像度におけるその他のリフレッシュレートは60Hzのみとなっており、120Hz、144Hz、240Hzには非対応です。
インテルグラフィックセンターのカスタム解像度の作成もラップトップの標準ディスプレイ(内部ディスプレイ)には非対応と表示され、その他のリフレッシュレートを割り当てることができません。
「MSI GS66 Stealth」は標準設定においてIntel iGPUとNVIDIA dGPUをシームレスに切り替えるNVIDIA Optimus テクノロジーに対応していますが、統合コントロールアプリDragon Centerの設定からdGPU単独動作モードにも切り替えが可能です。
dGPU単独動作モードに切り替えると、NVIDIAコントロールパネルの左側メニューにディスプレイ表示に関する設定が表示されます。
dGPU単独動作モードにするとNVIDIAコントロールパネルからラップトップディスプレイに対するカスタム解像度の作成も可能となります。
「MSI GS66 Stealth」のディスプレイパネルは映り込みが抑制されてPCゲーミングに最適なノングレアタイプになっています。
ちなみに「MSI GS66 Stealth」のディスプレイは180度まで展開が可能です。
「MSI GS66 Stealth」のディスプレイのベゼル幅は左右が約7.0mm、上が約11.6mmです。ベゼルと表示領域の間には1mm弱の非表示領域もあります。
「MSI GS66 Stealth」のディスプレイパネルはIPSレベルを謳うだけあって、300Hz対応の高速応答な液晶パネルながら、優れた視野角と発色を実現しています。
モバイルPC用ディスプレイなので搭載可能なバックライトに制約があり、視野角を広くしていくと輝度の低下は大きいですが、色の破綻は感じません。
「MSI GS66 Stealth」において、一般に見やすい明るさと言われる120cd/m^2は輝度55%前後、室内照明に依りますが個人的に見やすいと感じる明るさの180~200cd/m^2は輝度70%前後です。
比較対象としてグラフに併記しているSurface Pro 7+は最大輝度が高めなので伝わり難いかもしれませんが、「MSI GS66 Stealth」の最大輝度は340cd/m^2なので、ラップトップ標準搭載としてはそこそこ明るいディスプレイです。
全体白表示にして写真撮影で簡単にチェックしてみたところ輝度の均一性も良好でした。24インチオーバーサイズの高速リフレッシュレートなゲーミングモニタでよくある四隅&四辺の暗さもほぼありません。
「MSI GS66 Stealth」にはディスプレイ発色を調整する機能として「True Color」というアプリケーションがプリインストールされています。
ゲーマーモードではRGB強度・色温度のような一般的な発色だけでなく、暗部を浮かび上がらせて視認性を改善するようなコントラスト・ガンマ調整にも対応し、ゲーム別にプロファイルも作成可能です。
写真編集などに便利なsRGB発色モードもあります。
その他にもTrue Colorではソフトウェアオーバーレイによるクロスヘアの表示、キャリブレーターを使用したハードウェアキャリブレーション、アプリケーション別での設定自動切換など便利な機能がツールに収録されています。
「MSI GS66 Stealth」搭載ディスプレイの特徴の1つである”300Hzリフレッシュレート”について、その意味自体は特に説明せずとも読者はご存知だと思いますが、一般的な60Hzリフレッシュレートの液晶モニタが1秒間に60回の画面更新を行うのに対して、144Hzリフレッシュレートであれば1秒間に144回の画面更新、240Hzリフレッシュレートでは標準的な60Hzの4倍となる1秒間に240回の画面更新を行います。
「MSI GS66 Stealth」に搭載されたディスプレイのリフレッシュレートはNVIDIAコントロールパネルの「解像度の変更」から設定が行えます。フルHD解像度におけるリフレッシュレートとして60Hzと300Hzの2種類のみ用意されています。dGPU固定モードに切り替えれば、カスタム解像度の作成で240Hzや144Hzも設定が可能です。
ハイリフレッシュレートなディスプレイを選択するメリットについては連載企画「ゲーミングモニタの選び方」シリーズの第5弾で詳しく紹介しているのでこちらの記事を参照してください。
・ゲーミングモニタの選び方[5] 144Hz/240Hzリフレッシュレートのメリット
次に「MSI GS66 Stealth」の応答速度や残像についてチェックしていきます。
応答速度の確認には「UFO Test: Ghosting」を使用します。同テストではUFOが移動する背景カラーを選択できますが、今回の検証ではブラック/グレー/ホワイトの3色を選択しています。
背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。
まずは簡単にシャッタースピードを十分に速くして「UFO Test: Ghosting」の様子を写真撮影してみました。
「MSI GS66 Stealth」を最大リフレッシュレートの300Hzで動作させた場合、ブラックやホワイトの背景では残像も少なめですが、一般的なPCゲーミングの指標になるグレーバックでは2,3フレーム前の残像が残る感じになりました。
各社からリリースされている24.5インチや27インチの240Hz対応ゲーミングモニタでオーバードライブ補正をオフにした状態に近い応答速度となっており、240Hz対応パネルを割と無理やり300HzにOCしたような印象です。
ちなみに360Hz対応ゲーミングモニタである「ASUS ROG Swift 360Hz PG259QN」や「Alienware AW2521H」を最適オーバードライブ設定にて300Hzで動作させると、ベストケースでは薄っすら1つ前のフレームが残る程度になります。
さらに「MSI GS66 Stealth」のリフレッシュレートを変えてみたり、他の液晶モニタを比較対象にしたりしながら、「UFO Test: Ghosting」の様子を「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影し、比較してみます。
まずは「MSI GS66 Stealth」の300Hzリフレッシュレートを、360Hz対応ゲーミングモニタAlienware AW2521Hの300Hzリフレッシュレートと比較してみました。やはり素の残像感にはかなり差があります。
「MSI GS66 Stealth」のリフレッシュレートを60Hz、144、240Hzに変えて「UFO Test: Ghosting」の様子を比較してみました。60Hzに下げてもオーバーシュートは一切確認できませんし、一般的なゲーミングモニタと違ってオーバードライブ補正も全く適用されていないようです。
ここからはSONY DSC-RX100M5の960FPS(16倍速)よりもさらに高速な5760FPS(96倍速)のスーパースローモーションカメラを使用して「MSI GS66 Stealth」の応答速度を比較検証していきます。
まずは360Hzリフレッシュレート対応する「Alienware AW2521H」、同じくIPS液晶パネルの240Hz対応ゲーミングモニタ「ASUS TUF Gaming VG279QM」、応答速度に優れるTN液晶パネルの240Hz対応ゲーミングモニタ「ZOWIE XL2746S」の3機種と、240Hzリフレッシュレートにおける応答速度を比較してみました。
5760FPSのスーパースローモーションで確認してみてもやはり、「MSI GS66 Stealth」は市販の240Hz対応ゲーミングモニタよりも残像感は強くなっています。
「MSI GS66 Stealth」とAlienware AW2521Hを300Hzと240Hzで比較した動画です。やはり300Hz動作では「MSI GS66 Stealth」は素の残像が強く出ています。
「UFO Test: Ghosting」において下の写真のようにUFOが微かに表示された瞬間を始点に、その地点のUFOが完全に消えた時点を終点にして、その間隔のフレーム数を応答速度として算出し比較してみました。なおオーバードライブ機能によって発生するオーバーシュート/アンダーシュートによる逆像が発生してから消えるまでの時間は別に計算しています。
測定には240Hz未満のモニタではSONY DSC-RX100M5の960FPSスーパースローモーションを使用していますが、240Hzを超えるモニタでは5760FPSのスーパースローモーションを使用しており、その場合は末尾に”*”マークを添えています。
評価の目安として、”1000msをリフレッシュレートで割って2倍した数値”よりも測定値が小さければ、画面更新に応答速度が追いついています。60Hzの場合は33.3ms、120Hzの場合は16.6ms、144Hzの場合は13.9ms、240Hzの場合は8.3ms、360Hzの場合は5.6msを下回っていればOKです。
まずは背景カラーがブラックの時の「MSI GS66 Stealth」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。
続いて背景カラーがホワイトの時の「MSI GS66 Stealth」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。
最後に背景カラーがグレーの時の「MSI GS66 Stealth」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。
後述するように300Hz動作によって144Hzや240Hzよりも表示遅延が小さくなるので、「MSI GS66 Stealth」に搭載された300HzリフレッシュレートのディスプレイにはPCゲーミング上のアドバンテージは確かにありますが、応答速度や残像感という意味においては市販のゲーミングモニタの性能には及ばないというのが正直なところです。
最後に「MSI GS66 Stealth」の表示遅延(内部遅延)について測定を行いました。
ディスプレイ表示には、『マウス・キーボードで操作を行い、GPUから出力された映像データが実際に画面へ表示されるまで』の一連の流れに遅延が存在します。このシステム表示遅延が大きいと、例えば、FPSゲームでゲームパッドのトリガーやマウスのクリックによる操作からワンテンポ遅れて、マズルフラッシュが表示される、といった現象が発生します。人間は当然目で見てから操作を行うので、格闘ゲームやFPSゲームなど1,2フレームを争うような競技性の高いゲームにおいて、システム表示遅延は可能な限り小さいことが望まれます。
システム表示遅延やディスプレイ表示遅延の測定には、フォトセンサーを使用した特殊な測定機器「PC Gaming Latency Tester」を使用しています。当サイトのレビュー用に特注した機器なので、詳細についてはこちらの記事を参照してください。
「MSI GS66 Stealth」やその他の比較モニタのシステム表示遅延の測定結果は次のようになりました。
グラフの通りリフレッシュレートを上げると応答速度だけでなく表示遅延も改善し、視認した情報に対してよりダイレクトな操作が可能になるので、ゲーマーにとってハイリフレッシュレートなモニタを選択するメリットは無視できません。
MSI GS66 StealthのCPU/GPU/ストレージのスペックについて
MSI GS66 Stealthの各種性能をチェックする前に、同PCに搭載されているCPUとGPUのスペックについて簡単に紹介します。MSI GS66 StealthのCPUスペック
MSI GS66 StealthにはCPUとしてデスクトップPC並みの性能を誇るIntel Core i7 10870Hが搭載されています。Core i7 10870HのIntel公式仕様はコアスレッド数:8コア16スレッド、ベースクロック:2.2GHz、全コア最大ブーストクロック:4.1GHz、単コア最大ブーストクロック:5.0GHz、L3キャッシュ容量:16 MB SmartCache、TDP:45W(コンフィグラブル TDP-down:35 W)です。Intel第10世代のデスクトップ向け8コア16スレッドCore i7 CPUとそん色ないスペックになっており、最上位のCore i7で2コア4スレッドだった4, 5年前のモバイル向けCPUからは考えられない進化です。
システムメモリには自作PC界隈でも性能の高さで定評のあるSamsung製DDR4メモリが採用されており(製品スペック的には3200MHz/CL22対応)、メモリ周波数は2933MHz、メモリタイミングは22-22-22-52-CR2です。
CPUスペックの話に戻りますが、「MSI GS66 Stealth」に搭載されるCore i7 10870Hは8コア16スレッドのCPUであり、1コア~8コアまで同時に負荷がかかった時の最大動作倍率はコア数1~6に対して順番に[50, 49, 47, 46, 45, 44, 43, 41]です。
デスクトップ向け8コア16スレッドCPUのCore i7 10700の動作倍率設定が[48, 48, 47, 47, 46, 46, 46, 46]であることと比較すれば、Core i7 10870Hのモバイル向けCPUらしからぬスペックの高さがわかると思います。
Core i7 10870HはCPUにフル負荷がかかった場合、長期間電力制限や短期でも排熱性能的にコアクロックが全コア4.1GHzに貼りついて動作するのは難しいですが、全コアが稼働するものの負荷的には低いワークロードであれば、多コア多スレッドなCore i7 10870Hでも全コアが4GHz超の高いコアクロックで動作することが可能です。(NVIDIA GeForce RTX 30シリーズをdGPUとして搭載している場合、CPU&GPUのトータル消費電力で調停するDynamic Boost 2.0が機能するので実際のコアクロック挙動は複雑になりますが。)
TDPに合わせて全コア最大ブーストクロックが低く設定されていた数年前のモバイル向けCPUと違って、
Core i7 10870Hは全コア最大ブーストクロックが高く設定されているので、TDPの低いモバイル向けCPUであってもPCゲームで高いパフォーマンスが発揮できます。
「MSI GS66 Stealth」に搭載されるCore i7 10870Hはバッテリー駆動時において、Intel公式仕様のうち、標準TDPの45Wではなく、省電力動作モードコンフィグラブル TDP-down:35Wに設定されており、Turbo Boost Power Max(長期間電力制限/Power Limit 1)」は35Wとなっています。
第10世代モバイルCPUの仕様において「Turbo Boost Short Power Max(短期間電力制限/Power Limit 2)」はPL1×1.25、短期間電力制限時間(Tau)は56秒ですが、「MSI GS66 Stealth」ではPL2もPL1と同じく35Wになっているようです。
「MSI GS66 Stealth」は標準動作モードにおいてバッテリー駆動時はPL1/PL2による電力制限は一律で35Wと考えればOKです。
当レビュー記事では簡単のため割愛しますが、CPUの電力制限やTDP関連について気になる人はこちらの記事を参考にしてください。
・2019年最新CPUの消費電力・発熱・TDP・温度について - 爆熱評価のウソほんと
「MSI GS66 Stealth」のACアダプタ駆動時のPL1/PL2については少々独自な制御が施されており、CPU/GPUパフォーマンス制御も行う統合管理アプリMSI Dragon Centerについての説明も必要になるので、MSI Dragon Centerの章で詳しく説明します。
MSI GS66 StealthのGPUスペック
「MSI GS66 Stealth」はゲーマー向け高性能モバイルPCということで、NVIDIAの次世代GPUであるAmpere世代GeForce RTX 30シリーズにおいてモバイル版のアッパーミドルに位置する「GeForce RTX 3070 Laptop GPU」がディスクリートGPU(dGPU)として搭載されています。NVIDIA製GPUを搭載するゲーミングPCではIntel製CPUの統合グラフィックス(iGPU)とシームレス切り替えを行う「NVIDIA Optimus テクノロジー」が採用された製品が多いですが、「MSI GS66 Stealth」もNVIDIA Optimus テクノロジーに対応していて、アクティブなアプリケーションに応じてシームレスにGPUが切り替わります。
アプリケーションに対して優先して使用されるGPUはNVIDIAコントロールパネルの「3D設定の管理 - プログラム設定」から、個別のアプリケーションに対して設定できます。
「MSI GS66 Stealth」では統合コントロールアプリDragon Centerの設定からdGPU単独動作モードにも切り替えが可能です。(一般的にはNVIDIA Optimus テクノロジーに対応するモバイルPCで同様の機能は利用できません)
NVIDIA製モバイル向けGPUについてはGTX10シリーズおよびRTX20/GTX16シリーズの2世代に渡って、デスクトップ向けGPUとシェーダー数(CUDAコア数)やVRAM容量などハードウェア仕様は完全に同じものがモバイル向けGPUとして採用されていました。そのためモバイル版でも型番を替えずにGTX 1070やRTX 2080と表記されていました。
最新のGeForce RX 30シリーズではデスクトップ版とモバイル版の物理スペックが大幅に異なるため名前は異なるものの、”RTX 30X0 Laptop GPU”という紛らわしい型番が割り当てられているので注意が必要です。省略されることも多く紛らわしいので、GTX9XXシリーズ以前のように末尾にMを付けて”RTX 3070M”にするなど、より分かりやすくモバイル版であることを明示して欲しかったところ。
「MSI GS66 Stealth」に搭載されている「GeForce RTX 3070 Laptop GPU」はCUDAコア数:5120と少なく、VRAM容量は共通ですがメモリ速度は12000MHzになっており、デスクトップ版のRTX 3070とは物理スペックも大きく異なります。
「MSI GS66 Stealth」に搭載されているRTX 3070 Laptop GPUとデスクトップ版RTX 3070はCUDAコア数やVRAM容量などハードウェアスペックが異なるだけでなく、実際の動作に関わるベース/ブーストクロックとTDP(パワーリミット)の設定値もまた大きく異なります。
下の表の通り、RTX 3070モバイル版のハードウェアスペックはRTX 3060 Tiデスクトップ版に近いですが、RTX 3060 Tiデスクトップ版のリファレンス仕様値がTGP200Wに対して、「MSI GS66 Stealth」に搭載されているRTX 3070モバイル版のパワーリミットは95Wに設定されていました。
GeForce RTX 3070 Laptop GPU スペック比較 | |||
RTX 3070 Laptop GPU MSI GS66 Stealth |
RTX 3070 デスクトップ版 |
RTX 3060 Ti デスクトップ版 |
|
CUDAコア | 5120 | 5888 | 4864 |
ベースクロック | 780 MHz | 1500 MHz | 1410 MHz |
ブーストクロック | 1290 MHz | 1725 MHz | 1665 MHz |
VRAM | 8GB GDDR6 |
8GB GDDR6 | 8GB GDDR6 |
メモリクロック | 12000 MHz | 14000 MHz | 14000 MHz |
パワーリミット | 95W(最大) |
220W | 200W |
実際のGPU動作(性能)に大きく影響するパワーリミット(最大グラフィックパワー)にもRTX 30シリーズGPUでは注意が必要です。
デスクトップ版では要求される性能が大きければシンプルにパワーリミットの上限に張り付く形でGPUの最大性能が常に発揮されますが、モバイル版は少し事情が違います。
ちなみに「MSI GS66 Stealth」が非対応のAdvanced Optimusはラップトップディスプレイで可変リフレッシュレート同期機能G-Syncに対応するかどうかというのが主な機能です。
RTX 30モバイル版においてもNVIDIAコントロールパネルから確認できる最大グラフィックパワーはGPUコアが使用できる最大電力であることには変わりないのですが、RTX 30モバイル版はGPUとCPU(あとVRAMも)の消費電力のトータルで発熱を調停する「Dynamic Boost 2.0」という機能に対応しています。CPU負荷が大きい時はGPUの発熱を抑制する動きが生じるため、実際には最大グラフィックパワーよりも低い電力で動作します。
静音性の観点からすると悪くない機能ではあるのですが、CPU負荷に依存してGPUパフォーマンスが変動してしまうため、RTX 30モバイル版は性能評価がかなり難しいGPUと言えます。なおDynamic Boost 2.0はユーザーが任意に無効化することはできません。
「MSI GS66 Stealth」に搭載されたモバイル版RTX 3070はバッテリー動作中、GPU電力の上限が60Wになり、標準では3Dアプリケーションのフレームレートが30FPSに制限されます。
GPU電力の上限は変更できませんが、上限フレームレートについてはGeForce ExperienceのBattery Boostの設定値を変更することで30FPS~60FPSで調整でき、同機能を無効化すれば、100FPSオーバーでも動作させることが可能です。
MSI GS66 Stealthのストレージスペック
「MSI GS66 Stealth (型番:GS66-10UG-003JP)」には標準搭載のストレージとして、「WDC PC SN730 (SDBPNTY-1T00-1032)」という型番のNVMe M.2 SSDが1台内蔵されています。ストレージ性能の測定で定番ベンチマークのCrystalDiskMark8.0を実行した結果が次のようになっています。
連続読み出しが3400MB/s、連続書き込みが3000MB/sに達しており、最新のNVMe(PCIE3.0x4) M.2 SSDとしては理想的な速度です。ストレージの実用性能を測定するPCMark10 Storage Testでもスコアは1800を超えており、やはりNVMe M.2 SSDらしい性能を発揮しています。
今回レビューしている「MSI GS66 Stealth (型番:GS66-10UG-003JP)」は標準で1TB容量のNVMe M.2 SSDを1台搭載しているのであまり必要はないかもしれませんが、MSI製モバイルPCを取り扱っているPCショップアークではシステムメモリやSSDの増設・アップグレードに対応しています。
システムメモリやSSDの容量が小さい下位モデルで安全に容量を有償アップグレードしたり、追加ストレージを増設したい人にオススメなショップです。
今回はサンプル機貸し出し元の許可のもと内部写真を撮影しましたが、MSI製モバイルPCでは『底板を外してSSDやメモリの換装・増設を行うと正規保証対象外になってしまいます』。
上の分解写真の通り、「MSI GS66 Stealth」には2基のNVMe SSD対応M.2スロットがあり、ハードウェア的には最大2基のNVMe M.2 SSDを装着することができます。
ユーザーが各自でSSDやメモリを増設することはできませんが、MSI製モバイルPCには「MSI”公認”サポート店」というSSD・メモリ増設サービスを提供する店舗が全国のPCパーツショップで展開されています。
MSI公認サポート店では正規保証対象のMSI製モバイルPCであれば他店やネット通販で購入した製品でも一定の増設手数料およびSSD・メモリの実費を支払うことによって、正規保証を維持しつつSSDやメモリを増設できます。
ちなみに名前が似ているので少々紛らわしいですが、「MSI”公式”サポート店」では増設サービスは提供されず、破損したMSI製モバイルPCの修理受付だけが提供されています。
公認/公式サポート店一覧:https://jp.msi.com/page/msi_support
下の記事では、MLC/TLC/QLCのマルチビットセルやNVMe/SATA3.0など2021年最新のSSD事情について徹底解説しています。ストレージについて詳しく知りたい方は参考にしてください。
・おすすめSSDまとめ。QLC/TLC/MLCやNVMe/SATA3.0など最新SSD事情を解説
・【SATA SSD vs NVMe SSD vs HDD】 ゲームロード時間を比較
統合管理ソフトMSI Dragon Centerについて
「MSI GS66 Stealth」には、CPU/GPUパフォーマンス、ディスプレイカラー設定、ドライバ・ユーティリティのアップデートなどモバイルPCの各種機能を統合管理できる専用アプリケーション「MSI Dragon Center」がプリインストールされています。MSI Dragon Centerではウィンドウ左側のホームボタンを選択すると、各種設定メニューが表示されます。システム起動後、Dragon Centerで最初に表示されるのはMonitorページで、システム情報が表示されます。
ゲームモードではPCアプリケーション別に動作設定やLEDイルミネーション設定などプロファイルを作成することができます。
User Scenarioでは電力制限やファン制御、さらに一部動作プロファイルでは追加のOC設定などモバイルPCの性能に大きく影響する各種設定が可能です。MSI Dragon Centerの中でも特に重要な機能です。
General SettingではWindowsキーのON/OFF、WebカメラのON/OFFなど便利なシステム設定があります。
General SettingのCrosshair DisplayをONにすると、画面上にソフトウェアオーバーレイ機能によってクロスヘア(照準)が表示されます。
なおCrosshair Displayはディスプレイ発色を調整するソフトウェアTrue Colorの一機能として実装されており、クロスヘアのサイズ、形状、色、場所など細かく調整が可能です。なおゲーミングモニタの機能と違って、ソフトウェアオーバーレイなのでPCゲームによってはチート機能と判定されることもあるため注意してください。
True Colorではディスプレイ発色を、ゲーム、ブルーライトカット、sRGB、オフィス、動画の5種類の設定を切り替えることができます。
ディスプレイの章でも紹介したように「MSI GS66 Stealth」のディスプレイ発色を調整するTrue Colorは個別アプリケーションとして用意されており、こちらではプロファイルの切り替えだけでなく、RGB強度や色温度など詳細設定が可能です。
その他にも、プレイ動画の録画機能「Game Highlight」、MSI Mystic Light互換機器とのライティング同期機能「Ambient Link」、マイク・スピーカーのAIノイズキャンセル機能「Noise Cancelation」、マルチディスプレイやミラーリング管理機能「Duet Display」など便利機能が実装されています。
また「MSI GS66 Stealth」のドライバやソフトウェアは、いちいちメーカーサポートページを確認しなくても、MSI Dragon CenterのLive Updateから一括でチェック、アップデートが可能です。
MSI GS66 StealthによるCPU/GPU性能制御について
MSI Dragon Centerを介した「MSI GS66 Stealth」のCPU/GPU性能制御に関してもう少し踏み込んで解説していきます。「MSI GS66 Stealth」のCPUやGPUの性能制御(電力制御)はUser Scenarioの動作プロファイル切り替えという形で行います。標準設定では性能と静音性をバランス良く調整したBalancedが割り当てられています。
既定動作プロファイルは、標準設定のBalancedに加えて、Extreme Performance、Silent、Super Batteryの4種類が用意されています。
Extreme Performanceを選択した時にプロファイル名の右側に表示される歯車アイコンを選択すると、GPUコアクロックとVRAMクロックのOC設定が表示され、それぞれ最大で+200MHzのOCが可能になります。またCooler BoostをONにするとファン速度が最大速度で固定になります。
なおコアクロックについては最大値の200MHzにOCすると一部のアプリケーションがクラッシュすることがあります。OC耐性は各個体のGPU電圧特性次第なので注意してください。
UserモードはCPU・GPU性能制御(パフォーマンスレベル)を4つのプロファイルから選択し、さらにファン速度を任意に設定できるモードです。
パフォーマンスレベルは低、中、高、ターボの4段階で選択でき、ターボは上述のExtreme Performanceモード同様にGPUのオーバークロックに対応します。
これらの動作プロファイルを切り替えた場合、まずはCPU電力制御について、「MSI GS66 Stealth」の仕様はかなり複雑なのでテーブルにまとめました。
「MSI GS66 Stealth」ではバックグラウンドアプリか何かによってPL1/PL2が制御されているようで、Intel XTUやHWiNFOから正確な値がチェックできないのですが概ね下のような電力制限になっています。
既定プロファイルのBalancedモードはUserモードの中、Extreme PerformanceモードはUserモードの高/ターボとCPU電力制限は同じです。
MSI GS66 Stealth - Core i7 10870Hの電力制御 | |||||
ACアダプタ | PL1 | PL2 | Tau | ||
Balanced | 45W | 52W | 56s | ||
Extreme Performance | 可変 | 135W | |||
Silent | 30W | 45W | |||
Super Battery | 15W | 15W | |||
User | 低 | 15W | 15W | ||
中 | 45W | 52W | |||
高 | 可変 | 135W | |||
ターボ | |||||
バッテリー | Super Battery, User-低 |
15W | 15W | ||
その他 | 32W | 32W |
「MSI GS66 Stealth」の動作プロファイルをExtreme PerformanceやUser-ターボなどにした時の『PL1:可変』についてざっくりと説明すると、『PL1:65Wを上限としてCPU温度が90度を超えない範囲内でリアルタイムに動的に制御されます』
下のグラフは動作プロファイルをExtreme Performanceにして、冷却ファンが最大速度に固定されるCooler BoostをONにした状態で、CinebenchR23の実行・停止を繰り返した時のグラフです。
まず、PL1が時間経過で徐々に上昇している様子が分かると思います。CPU使用率が高い区間のうち、CPU Package PowerがPL1を大幅に超過している時は短期間電力制限PL2によって電力が制御されていますが(135Wが許容されるPL2でもCPU温度が95度に達するとそれを大きく超過しないように電力制限がかかる)、それ以外はPL1によって制御されるので両者が一致しているのがグラフで分かると思います。
グラフの横軸3分から8分まで、CPU温度は90度よりも低いので、PL1が徐々に上昇し(最大で65Wまで)、それに伴ってCPU Package Powerも増加します。CPU温度が90度に達すると90度前後に収まるようにPL1が0.250W単位で微調整されます。
10分の当たりで一度Cinebenchを停止させた後、再度実行しています。PL1はCPU温度が90度に達していなければ一定間隔で0.250Wずつ上昇していくのですが、大きな負荷がかかると、50Wにリセットされてまた上昇していきます。
なおWindows10 OSから設定可能な電源プランについてはPL1/PL2等の電力制限には影響せず、ACアダプタ接続時の違いは最大パフォーマンスを選択した場合にSpeed Shiftが無効になってコアクロックが上限値張り付きになる程度です。
次に、GPUの電力制御についてチェックしていきます。
GPUの電力制御は『Balanced、User-中』、『Extreme Performance、User-高/Turbo』、『Silent』で動作がやや異なるので、3DMark TimeSpy Stress Test中の各種モニタリング値のグラフを見ながら説明していきます。
まずBalancedやUser-中では、GPU消費電力80W、CPUを含めたトータル電力が105~110W(瞬間ピークでは120W)になるように制御されます。
一方、動作プロファイルを性能重視なExtreme Performanceに切り替えると、GPU+CPUのトータル電力は105~110W(瞬間ピークでは120W)で変わりありませんが、GPUとCPUの電力配分が調整されるようで、GPU電力が95W程度に引き上げられ、フレームレートを見ての通り、グラフィック性能が10%以上も強化されます。
ちなみにExtreme PerformanceやUser-ターボで可能な手動OCによってコアクロックとメモリクロックをそれぞれ200MHzずつOCすると(ファン速度が最大になるCooler Boostも有効)、GPU単独やトータルの電力は変化ありませんが、動作クロックが200MHzずつ引き上げられるので、さらに10%程度も性能が強化されます。標準設定のBalancedと比べて20%以上の性能向上なので、1ランク上のGPUに変わったくらいの差があります。
SilentモードのGPU電力制御は少々厄介です。基本的には(下グラフの最初の方のように)Balancedと同じようなトータル電力かつ電力配分になり、グラフィック性能も同じなので、PCゲーム負荷には影響の少ないCPUの最大電力制限とファン制御プロファイルの違いです。
しかしながら、SilentモードではGPU温度85度を閾値としてGPU Temp Limitが機能するとステップ状にGPU電力が55~60W以下に制限される点が大きく異なります。GPU Temp Limitが一度有効になると、GPU負荷をかけない状態でトリガーが解除されるまで(1分弱?)の間は放置する必要があります。
なおGPU温度85度を閾値してTemp Limitが起動するのは共通ですが、Balanced、Extreme Performance、UserなどのモードではTemp Limitが起動してもステップ状に電力が下がることはなく、GPU温度が85度を大きく超過することがないように、なだらかに電力制御が行われます。
MSI GS66 Stealthのファン制御について
MSI Dragon CenterからのCPU/GPUプロファイルについて触れたので、ここで合わせてMSI Dragon Centerから設定が可能なファン制御についても紹介しておきます。「MSI GS66 Stealth」のファン制御一般の話を先にしておくと、ソース温度の変化に対して1,2秒の応答遅延があり、一定時間(秒単位の)に上昇もしくは下降することが可能なファン速度にも制限があるので、瞬間的な負荷でソース温度が上昇したとしてもファン速度が500RPMを超えて大きく変動することがありません。
時間的に見て速度変化が滑らかなので(乱高下しない)、音の性質として煩く感じにくいよう配慮されています。
「MSI GS66 Stealth」のファン制御は、上の章で紹介したCPU・GPU電力制御と同じくUser Scenarioから行います。4種類の既定プロファイルでは各プロファイル毎に設定されたファンカーブで冷却ファンが制御されますが、Userモードでは、「自動」「Cooler Boost」に加えて、任意にファンカーブを設定できる「詳細」を選択できます。
「MSI GS66 Stealth」には3基の冷却ファンが搭載されていますが、1基はCPUファン、残り2基はGPUファンとして制御されます。
CPUファンは下限温度の1つ隣から順に、55度/60度/65度/70度/95度、の6頂点に対して任意にファン速度デューティ比を指定できます。
0%に設定するとその温度以下でファンが完全に停止するセミファンレス動作とすることができます。下限ファン速度は2700RPM程度となっており1~40%以下に設定してもそれを下回ることはありません。
なお上限温度の95度を超過するとファン速度は最大へと徐々に引き上げられていきますが、「MSI GS66 Stealth」の場合、PL2の区間でも上限温度95度、PL1の区間では上限温度90度で電力が制御されるのであまり気にする必要はありません。
GPUファンは下限温度の1つ隣から順に、55度/60度/70度/85度/95度、の6頂点に対して任意にファン速度デューティ比を指定できます。
0%に設定するとその温度以下でファンが完全に停止するセミファンレス動作とすることができます。なお下限ファン速度は2700RPM程度となっており1~40%以下に設定してもそれを下回ることはありません。
なお上限温度の95度を超過するとファン速度は最大へと徐々に引き上げられていきますが、「MSI GS66 Stealth」の場合は、GPU温度85度を上限として電力制御されるので、あまり気にする必要はありません。
RTX 30シリーズを搭載する「MSI GS66 Stealth」では、手動設定可能なUserモードであれば、CPU温度やGPU温度に依存しないファン制御ができるようになったのが大きなポイントだと思います。(ファン制御では95度が上限閾値であり、同じく温度をソースに起動する電力制御は90度以下が閾値のため。Extreme PerformanceやUser-ターボのPL2は例外ですが、1分弱の短期間なので大きく影響はないはず)
従来のモバイルPCの多くはファン速度3000RPMでTGP100WのGPUを冷やせない場合、まずはファン速度を上限までひたすら上昇させましたが、「MSI GS66 Stealth」の場合、手動設定可能なUserモードなら、Balanced=中、Extreme Performance=高/ターボのパフォーマンスレベルに対して、任意の速度でファン速度の上限を指定できます。
放熱性能の上限はファン速度で決まりますが、負荷がかかってCPU温度やGPU温度が上限値に達した後はその放熱性能に収まるようにCPUやGPUの消費電力に対して自動的に制限がかかるので、静音性を優先した疑似的な電力制御が可能です。
簡単に言うとファン速度3000RPMを上限とした時に放熱性能が最大60Wなら、「MSI GS66 Stealth」に搭載されたRTX 3070をTGP60WのGPUとして運用できます。
MSI GS66 Stealthの温度・消費電力・ファンノイズ
MSI GS66 StealthのCPU・GPUスペックや具体的な動作設定等について紹介したので、性能をチェックする前に、MSI GS66 Stealthの消費電力・温度・ファンノイズを見ていきます。CPU負荷時のCPU温度とCPUコアクロックについて
まずはMSI GS66 Stealthに搭載されたCPUの「Core i7 10870H」にフル負荷をかけた時のCPU温度やコアクロックを確認します。ファン速度はCPU温度を制御ソースとして変動しますが、「MSI GS66 Stealth」の標準ファン制御プロファイルではファン速度が3800RPM以上になることはありません。HWiNFO等のモニタリングソフトでファン速度のログを取得できないので、この検証では簡単化してファン速度はFixed Modeで固定しました。
「Core i7 10870H」をMSI GS66 StealthのACアダプタ駆動における標準動作プロファイルのBalanced(PL1:45W、PL2:52W)で動作させて、動画エンコードによって30分ほどフル負荷をかけ続けると、CPU温度とCPUコアクロックは次のようになります。
短期間電力制限PL2:52によってブーストの効く最初の数十秒間は消費電力が大きいのでCPU温度は90度に達しますが、それ以降、長期間電力制限PL1:45Wによって制御される区間では85度前後に収まり、全コア3.0GHz程度を実動値として安定動作します。
上のグラフの通り、Balancedの標準ファン制御にまかせると、1基のCPUファンが4800RPMで動作し、残り2基のGPU冷却ファンが2600RPMで動作するというアンバランスな冷却になっており、前者のファンノイズが騒音上のボトルネックになります。
一方でUserモードの手動設定によって、ファン速度を3300RPMに揃えてもCPU温度が数度高くなる程度で、PL1:45W動作のCore i7 10870Hを問題なく冷やすことができます。
CPU電力制限についてはBalanced=User-中なので、標準動作でファンノイズが煩く感じる場合は、Dragon CenterのUser Scenarioから上手い具合にファン速度を手動設定してみてください。
ゲーム負荷時のGPU温度とCPU温度について
続いてMSI GS66 Stealthに搭載されたGPUの「GeForce RTX 3070」とCPUの「Core i7 10870H」にPCゲームプレイ時に相当する負荷として、Final Fantasy XVベンチマークを30分程度ループ再生させたときのGPU温度とCPU温度をチェックしていきます。「MSI GS66 Stealth」の標準動作プロファイルでFinal Fantasy XVベンチマークを30分程度ループ再生させてGPU&CPUにトータルでフル負荷をかけ続けた時、GPU温度とGPUコアクロックとCPU温度は次のようになります。
PCゲームを想定してGPU&CPUにトータルでフル負荷をかけると、CPU温度95度前後に対してCPUファン速度は4800RPM程度、GPU温度75度前後に対してGPUファン速度は4200RPM程度となりました。CPUの冷却がボトルネックになっており、性能を維持したままこれ以上の静音化は難しそうです。
MSI GS66 Stealthのキーボード表面温度について
「MSI GS66 Stealth」においてCPUやGPUに対して長時間負荷をかけ続けた時のキーボード等の表面温度とチェックしていきます。表面温度の測定にはサーモグラフィカメラ搭載スマートフォン「CAT S62 PRO」を使用しています。
まずはアイドル状態のまま長時間放置した時の「MSI GS66 Stealth」の表面温度です。キーボード全体の温度分布は概ね均一で、平均温度は35度程度なので、特に問題ありません。
続いて動画のエンコードによってCPUに30分以上フル負荷をかけ続けた時の「MSI GS66 Stealth」の表面温度です。キーボード全体が40度前後なので、長く指を置いていると少し熱く感じます。
タイピング中に指先でキートップに触れる程度であれば特に熱いと感じるほどではありません。手のひらを押し付けるような状態でもなければキーボードの熱さについては問題にならない気がします。
最後にPCゲーミング中を想定してFinal Fantasy XVベンチマークを30分以上ループさせてGPUとCPUにフル負荷をかけ続けた時の「MSI GS66 Stealth」の表面温度です。キーボードの大部分が50度を大幅に超過しており、
キーボード&マウス操作で使用するWASDなど主要な左側キーも例外ではないので、PCゲーミングで備え付けキーボードを使用するのは厳しいと思います。
MSI GS66 Stealthの消費電力とバッテリー持ちについて
「MSI GS66 Stealth」の消費電力についてチェックしていきます。消費電力の測定にはBluetooth接続でスマホから消費電力をリアルタイムモニタリング可能なワットチェッカー「ラトックシステム REX-BTWATTCH1」を使用して、電源ユニット(ACアダプタ)の変換損を含めた「MSI GS66 Stealth」のシステム全体の消費電力をチェックしています。
・ラトックシステムのスマホ対応ワットチェッカー第2世代を試す
「MSI GS66 Stealth」はバックグラウンドタスクによって変動もありますが、アイドル状態におけるシステム消費電力は概ね20W前後で推移します。ちなみにNVIDIA Optimus テクノロジーを無効化するとアイドル時の消費電力は30W程度に上昇します。
CinebenchR23や動画のエンコードなどCPUに対してフル負荷のかかるシーンでは、「MSI GS66 Stealth」に搭載されたCore i7 10870Hは標準動作のBalancedなら、PL1/PL2で80~70W程度の消費電力に収まります。
一方Extreme Performanceでは、負荷がかかった直後の数十秒は短期間電力制限PL2:135Wで動作するため、瞬間的には消費電力は160Wにも達します。その後、Core i7 10870Hは長期間電力制限PL1:65Wで動作して(65Wは最大値、冷却条件で可変)、システム消費電力は100W前後で推移します。
GPUだけに負荷をかけやすい3DMark TimeSpyストレステストと、実際のPCゲーミングを想定してCPUとGPUの両方に負荷がかかるFinal Fantasy XVベンチマークにおいて、「MSI GS66 Stealth」のシステム消費電力はそれぞれ、130~140W程度、150~160W前後となりました。
「MSI GS66 Stealth」の付属ACアダプタは電力出力230W対応(変換損除く)なので、CPUの最大負荷、およびCPU&GPUのトータル最大負荷のどちらでも電力供給には問題なさそうです。
動作プロファイルによって性能を引き上げる機能を備えたモバイルPCでは高性能なプロファイルを選択すると消費電力が増える傾向がありますが、「MSI GS66 Stealth」ではBalancedでもExtreme Performanceでもシステム電力に大きな差は出ません。Extreme Performanceは低電圧化によるコアクロックの上昇や、GPU・CPU電力配分の比率変更などによってシステム電力を据え置いたまま性能を最大20%以上も引き上げていたようです。
「MSI GS66 Stealth」をバッテリー駆動において、電源プラン:より良いバッテリー、モニタ輝度を56%(約120cd/m^2)に設定し、PCMark 10 バッテリーテスト Modern Officeを使用してバッテリー持続時間を測定しました。フル充電(99~100%)の状態からWindows 10で省電力モードに切り替わる標準設定の10%まで電力が下がる時間を検証しています。
「MSI GS66 Stealth」はNVIDIA Optimus テクノロジーによってiGPUを活用して省電力性能を高めているとはいえ、やはりdGPUを搭載する高性能モバイルPCなので、iGPUのみのモバイルPCと比較するとバッテリー持ちは短めです。dGPU固定モードに切り替えるとさらにバッテリー持ちは悪くなります。
MSI GS66 Stealthのファンノイズについて
この章の最後に「MSI GS66 Stealth」のファンノイズをチェックしていきます。ゲーミングモバイルPCは画面サイズや製品によって冷却ファンの形状やファン径に違いはありますが、ファン回転数で分類してざっくりと以下のように大別できます。
1000~2000RPM : 静かな部屋でファンの動作がわかる(騒音値:30dB前後)
2000~3000RPM : ファンノイズがはっきりと聞こえる(騒音値:40dB以下)
3000~4000RPM : ファンノイズは耳障りでスピーカーによるゲームプレイは難しい(騒音値:50dB以下)
4000~5000RPM : ファンノイズはヘッドホンをしていてもはっきりと聞こえる(騒音値:50dB以上)
5000RPM以上 : かなり煩く、ハンディ掃除機くらい(騒音値:60dB以上)
管理人的に、ゲーミングモバイルPCはゲーム負荷時にファン回転数3000~4000RPM以下に収まるかどうかが快適にプレイできる1つの水準となっています。
主観的な感想を補足しておくと、「MSI GS66 Stealth」についてはファン回転数に対してファンノイズが低めなのか、音の性質として煩く感じにくいのか、4000RPM未満であれば、割と我慢できる程度のファンノイズでした。
4800RPMくらいでも体感的には一般的なゲーミングモバイルPCの4000RPMくらいの煩さです。
ファン速度の乱高下が生じないファン制御構造も煩く感じにくい性質に一役買っていると思います。
ファン制御の章で紹介したように「MSI GS66 Stealth」に搭載された3基の冷却ファンのファン回転数は統合管理アプリケーションMSI Dragon CenterのMonitorから確認でき(HWiNFOなどサードパーティ製モニタリングソフトからもチェックが可能)、User Scenarioという項目からファン制御も行うことができます。
まずアイドル時のファン回転数については、CPUファンはバックグラウンドタスクの状態にもよるのですが、2700RPM程度で動作し、GPUファンは基本的にセミファンレス動作で停止しています。
1500RPMくらいだとかき消えるのですが、2000RPMを超えていると風切り音がしっかり耳に届きます。アイドル状態に関しては、dGPU搭載高性能モバイルPCとはいえファンノイズは若干大きい部類だと思います。
またバックグラウンドタスク次第ではCPUファンのファン速度が4800RPMに達する時もあるので、標準設定の静音性はあまり良くないと感じました。
CPUにフル負荷のかかる動画エンコードや、PCゲーミング相当の負荷であるFinal Fantasy XVベンチマークによる温度検証でも触れたように、「MSI GS66 Stealth」は標準動作においてファン速度は1基のCPUファンが4800RPM、2基のGPUファンが4200RPM程度まで上昇します。
スピーカーで映像・音楽の鑑賞やゲームプレイをするにはファンノイズが気になると思いますが(それでも決して無理ではないレベル)、ヘッドホンをすれば十分にシャットアウトできる程度です。
ファン速度の割にはファンノイズを煩く感じにくく、1,2世代前のゲーミングモバイルPCと比べればかなり静音性は改善していると思います。
「MSI GS66 Stealth」のファン速度はUserモードなら任意に最大速度(実用上、超過することはめったにない)を設定できるので静音性主導で電力制限を課すような運用が可能です。性能は多少トレードオフになりますが、ファンノイズの煩さで購入を躊躇うことの多かったdGPU搭載高性能モバイルPCとしては画期的だと思います。
MSI GS66 StealthのCPU性能とGPU性能
最後に「MSI GS66 Stealth」のCPU性能とGPU性能をチェックしていきます。MSI GS66 Stealthの基本性能
まずはPCMark 10 Extendedを使用して「MSI GS66 Stealth」の基本的な性能をチェックします。PCMark 10は動画再生能力DirectX11のグラフィック性能、Webブラウジング、ビデオチャットなど一般ユースにおけるPCの総合的な性能を測定するためのベンチマークソフトです。
「MSI GS66 Stealth」はCommand Centerから選択できるCPU/GPUプロファイルによって性能が変わりますが、基本性能の検証では簡単にACアダプタ駆動時の標準設定についてチェックしていきます。
アカデミック・オフィスワークに使用するPCとしては十分に高性能な「Microsoft Surface Pro 7+(Core i7-1165G7)」と比較すると、CPUに8コア16スレッドのCore i7 10870HそしてdGPUにGeForce RTX 3070 モバイル版を搭載する「MSI GS66 Stealth」は余裕で上回るパフォーマンスを発揮しています。
「PCMark 10 Extended」にはPCの基本性能を測る「Essentials」、ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」、クリエイティブ性能を測る Digital Content Creation」、ゲーム性能を測る「Gaming」の大きく分けて4つのテストグループがあるので、このうち「Essentials」と「Productivity」の2つについて個別にベンチマークスコアを比較してみました。
PCの基本性能を測る「Essentials」は、アプリケーションの起動に要する時間を測る「App Start-up」、 ウェブブラウジングの性能を測る「Web Browsing」、1対1または多対多のビデオ会議をシミュレートする「Video Conferencing」の3つのワークロードで構成されています。
モバイル版Core i7を搭載するSurface Pro 7+やSurface旧モデルとの比較でわかりますが、一般的なPC利用において大半のデスクトップ向けCPUと同じく、「MSI GS66 Stealth」は十分な性能を備えています。
ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」は、ワープロソフト(マイクロソフトWordなど)の処理性能をシミュレートする「Writing」、表計算ソフト(マイクロソフトExcelなど)の処理性能をシミュレートする「Spreadsheets」の2つのワークロードで構成されています。モバイル版Core i7を搭載するSurface Pro 7+やSurface旧モデルとの比較でわかりますが、一般的なオフィスワークにおいて大半のデスクトップ向けCPUと同じく、「MSI GS66 Stealth」は十分な性能を備えています。
MSI GS66 StealthのCPU性能(クリエイティブタスク)
続いて「MSI GS66 Stealth」に搭載されたCore i7 10870HのCPU性能に大きく依存する、クリエイティブタスクにおけるパフォーマンスをチェックしていきます。「MSI GS66 Stealth」に搭載されたCore i7 10870Hは、8コア16スレッドのCPUであり、同PCの標準動作設定では[PL1:45W, PL2:52W, Tau:56s]の電力制限で動作するので、短期的には全コア3.6~3.8GHz、以降は全コア3.0GHz程度となります。
CPUのマルチスレッド性能を測定するベンチマークで定番のCinebench R23のスコアは7600程度でした。
また専用アプリから変更可能な最速動作プロファイル(ファン速度最大)では、[PL1:65W(max), PL2:135W, Tau:56s]の電力制限で動作するので、短期的には全コア4.0GHz、以降は全コア3.4~3.5GHz程度となります。
CPUのマルチスレッド性能を測定するベンチマークで定番のCinebench R23のスコアは8600程度でした。
なお最速動作プロファイルでファン速度を自動とした場合は、可変PL1が50W前後で推移するため、もう少し性能が下がります。
CPU性能の詳細な検証に用いるクリエイティブタスクについてはCPU使用率がフルロードになる3Dレンダリング、動画エンコード、RAW現像の3種類となっています。
具体的な測定内容は、3Dレンダリングはオープンソース3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト、動画のエンコードは無料で利用できる動画編集ソフトとして国内外で多数のユーザーがいる「Aviutl」のx264エンコーダによる4K動画のエンコード、RAW現像はDxO PhotoLab(PRIMEあり、5472×3648解像度のRAW画像ファイル 100枚)です。
3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフトで測定する3Dレンダリング性能についてはレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、比較対象の中で最も遅いものを基準にして、「MSI GS66 Stealth」に搭載されたCore i7 10870Hを含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。
x264エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について「MSI GS66 Stealth」に搭載されたCore i7 10870Hを含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。
DxO PhotoLabによるRAW現像速度について「MSI GS66 Stealth」に搭載されたCore i7 10870Hを含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。
なお、動画エンコードにおいて「MSI GS66 Stealth」に搭載されたCore i7 10870Hの性能が同PL1のCore i9 11980HKよりも10%以上低いのは、x2でもテスト時間2分程度に対して、比較対象のCore i9 11980HKは1分弱もPL2:135Wで動作していることが理由です。
エンコード時間が10~20分を超えて十分に長くなれば、3DレンダリングやRAW現像のテストに近い性能比率になるものと思います。
MSI GS66 StealthのGPU性能(PCゲーミング)
続いて「MSI GS66 Stealth」に搭載されたディスクリートGPUであるGeForce RTX 3070 モバイル版のPCゲーミング性能についてチェックしていきます。国内最大手かつ大人気のMMO RPG「ファイナルファンタジーXIV」の2019年最新大型アップデート「FFXIV: 漆黒のヴィランズ」の公式ベンチマークソフトで「MSI GS66 Stealth」のPCゲーミング性能を測定してみました。
「MSI GS66 Stealth」はフルHD解像度のグラフィック設定:最高品質においてベンチマークスコアは8800オーバーとなっており、快適度評価も「非常に快適」をマークしています。FFXIV: 漆黒のヴィランズの公式ベンチマークソフトでは総合スコアを1.5×100で割った値がちょうど平均FPSくらいなので100FPSを超えています。
RTX 3070 モバイル版を搭載した「MSI GS66 Stealth」ならFFXIV: 漆黒のヴィランズをフル解像度のハイフレームレートで滑らかにプレイできます。
「MSI GS66 Stealth」と各種デスクトップ向けGPUについて3DMark TimeSpyのベンチマークスコアを比較してみました。
グラフィックスコアを参照しているので基本的にCPU性能に依存せずGPU性能にのみ比例します。
なお「MSI GS66 Stealth」についてはGPU動作プロファイルの標準設定Balancedに加えて、CPU&GPUのトータル許容電力をそのままに電力配分の変更や動作クロックOCで性能を引き上げるExtreme Performanceプロファイル(GPUとメモリを+200MHzにOC、かつファン速度最大のCooler Boostをオン)についても測定しています。
動作プロファイルをExtreme PerformanceにするとGPU・CPU電力配分が調整されてGPU消費電力が80Wから95Wへ引き上げられるのですが、さらにコアクロックとメモリクロックを+200MHzにOCすると、95W程度で同消費電力のRTX 3080 モバイル版との性能差5%、TGP200WのRTX 3060 Tiデスクトップ版に性能差20%まで迫るというのはかなり意外でした。
15インチ薄型ゲーミングモバイルで冷やしやすい90~100WのGPU消費電力的にはRTX 3070のハードウェアスペック(CUDAコア数)がスイートスポットのようです。
またモバイル版とデスクトップ版では電力表示にGPUコア単体とグラフィックボード全体という違いはあるものの、2倍近い電力差に対して、性能差が20%しかないところを見ると、モバイル版には電力特性が相当良い個体が割り当てられているように感じます。
詳しくは微妙に長くなるので下の記事でまとめましたが、「MSI GS66 Stealth」に搭載されたRTX 3070 モバイル版を含めRTX30モバイルGPUはDynamic Boost 2.0の影響で大きくGPU性能を損なうことはめったになく、実際のPCゲーム性能は概ね3DMark TimeSpyのベンチマークスコアの傾向と一致します。
MSI GS66 StealthのCPUとGPU性能のまとめ
CPUに8コア16スレッドのCore i7 10870H、GPUにRTX30モバイル最速GPUのGeForce RTX 3070 モバイル版を搭載する「MSI GS66 Stealth」の性能についてチェックしてきましたが、簡単に箇条書きでまとめると次のようになります。- MSI GS66 Stealthの標準動作をデスクトップ向けCPUで比較すると、
6コア12スレッドCPUのCore i5 10400よりもやや低速な性能
- MSI GS66 Stealthを最速CPU動作プロファイルに切り替えると
6コア12スレッドCPUのCore i5 10400よりも高速になる
- MSI GS66 StealthのRTX 3070モバイル版は最大グラフィックパワー95W
- MSI GS66 Stealthの標準動作はデスクトップ向けGPUで比較すると、
RTX 2060よりも高速だが、RTX 3060よりも性能が低い
- MSI GS66 Stealthの最速動作はデスクトップ向けGPUで比較すると、
RTX 3060やRTX 2060 SUPERよりも高速
動作クロック+200MHzの最大OCならRTX 2070 SUPERと同等の性能
- RTX 30モバイル版は、Dynamic Boost 2.0の影響でCPU負荷が高いシーンでは
GPU性能が10%程度下がる可能性もある
MSI GS66 Stealthのレビューまとめ
最後にRTX 3070 Laptop GPUや300Hz対応高速ディスプレイを搭載した高性能ゲーミングモバイルPC「MSI GS66 Stealth (型番:GS66-10UG-003JP)」の実機サンプルを検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 8コア16スレッドCore i7 10870Hを搭載し、PL1:65Wにも対応
デスクトップ向けではCore i5 10400前後の性能 - RTX 3070 Laptop GPUを搭載し、最大グラフィックパワーは95W
デスクトップ版ではRTX 2060よりも若干高速 - Optimusを無効化して、dGPUの単独動作も可能
- 300Hzリフレッシュレートの液晶ディスプレイを搭載
- 最大ファン速度を任意に設定できる(実用上、めったに上限閾値をこえることはないので)
- 筐体は厚さ25mm程度で薄い。重量も2.1kgで持ち運びも可能
- システムストレージはNVMe M.2 SSDで高速
- ラップトップディスプレイは144Hzや240Hzに非対応
- HDMIビデオ出力はver2.0なので4K/120FPSや8K/60FPSには非対応
- セミファンレスに対応しているものの、最小ファン速度が2700RPMと高め
「MSI GS66 Stealth」はRTX30シリーズモバイル版のGeForce RTX 3070 Laptop GPU(最大グラフィックパワー:95W)を搭載しており、デスクトップ版GPUと比較するとGeForce RTX 2060よりも若干高速なグラフィック性能を発揮します。
専用アプリケーションから動作設定を最速動作となるExtreme Performanceに切り替えるとグラフィック性能はRTX 2070相当に強化され、さらに動作クロックを+200MHzオーバークロックすればRTX 2070 SUPERに迫る高性能を発揮することも可能です。
CPUのCore i7 10870Hは物理的には確かに8コア16スレッドCPUですが、Core i7 10700KやRyzen 7 3700Xなどデスクトップ向け8コア16スレッドCPUと比較するとマルチスレッド性能には大きな差があります。11世代になると多少改善の兆しもあるのですが、第9/10世代のIntel製CPUが8コア16スレッド相応の性能を発揮するにはPL1:95W以上が必要なので。
デスクトップ向けCPUを基準に考えた場合、Core i9 10980HKは6コア12スレッドのCore i5 10400と同程度という感じです。
「MSI GS66 Stealth」はGPU&CPUのスペックも強烈ですが、ラップトップディスプレイとして搭載されている300Hzの超高速リフレッシュレートな液晶ディスプレイも大きな特徴の1つです。
240Hz+な市販のゲーミングモニタと比較すると、オーバードライブ補正等が加えられていないので応答速度がやや遅い、G-Sync Compatibleなど可変リフレッシュレート同期機能に対応しないという弱点も見受けられるものの、表示遅延に関しては、一般的な60Hzはもちろん、前世代ゲーミングモバイルで普及し始めていた120~144Hzよりも小さくなるので、オンライン対戦PCゲームでアドバンテージがあることは間違いありません。
RTX 3070モバイル版やCore i7 10870Hといった高性能システムをしっかりと運用できる冷却性能は備えているものの、標準設定Balancedでも最大ファン速度は4800RPMに達するので、やはりゲーミングモバイルらしいファンノイズが生じます。
ファン設計が良いからか4800RPMで動作していても体感的には4000RPMくらいの印象で、ヘッドホンならシャットアウトできる程度なので及第点ではありますが、それでもやはりスピーカーでPCゲームをプレイするとファンノイズは気になると思います。
以上、「MSI GS66 Stealth GS66-10UG-003JP」のレビューでした。
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GeForce RTX 3070 Laptop GPUやCore i7 10870Hを搭載した高性能ゲーミングモバイルPC「MSI GS66 Stealth (型番:GS66-10UG-003JP)」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) April 11, 2021
e-Sports大会クラスの超高速300Hzリフレッシュレート対応ディスプレイの性能も徹底検証https://t.co/2Vzfp0R0VD pic.twitter.com/K8xeyMZb2N
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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