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国内でも12月に発売されたSamsungの新型NVMe M.2 SSDの廉価モデル「Samsung 960 EVO 500GB」を日本サムスン社からお借りできたのでレビューします。個人的に米尼から個人輸入して先日レビューしたSamsung 960 PRO(レビュー記事)と比較しながらSamsung 960 EVOの性能をチェックしていきます。

Samsung 960 EVO スペック比較 | |||||
960 EVO 1TB |
960 EVO 500GB | 960 EVO 250GB | 950 PRO 512GB |
950 PRO 256GB |
|
Form Factor |
single-sided M.2 2280 | single-sided M.2 2280 | |||
メモコン | Samsung Polaris(5コア) | Samsung UBX(3コア) | |||
NAND | Samsung V-NAND 3bit MLC |
Samsung V-NAND 2bit MLC |
|||
キャッシュ | 1024 MB LPDDR3 |
512 MB LPDDR3 |
512 MB LPDDR3 |
512 MB LPDDR3 |
|
連続リード | 3200 MB/s | 3200 MB/s | 3200 MB/s | 2500MB/s | 2200MB/s |
連続ライト | 1900 MB/s | 1800 MB/s | 1500 MB/s | 1500MB/s | 900MB/s |
ランダムリード 4KB (QD32) |
380k IOPS | 330k IOPS | 330k IOPS | 300k IOPS | 270k IOPS |
ランダムライト 4KB (QD32) |
360k IOPS | 330k IOPS | 300k IOPS | 110k IOPS | 85k IOPS |
消費電力 (読込平均) |
5.7 W |
5.4 W | 5.3 W | 5.7 W |
5.1 W |
耐久性 | 400TB | 200TB | 100TB | 400TB | 200TB |
保証期間 | 3年 | 5年 |
|||
国内価格 | 6.0万円 | 3.0万円 | 1.6万円 | 3.5万円 | 2.2万円 |
Samsung 960 EVOの開封&外観チェック
まずは「Samsung 960 PRO 512GB」の外観からチェックしていきます。パッケージについては上位モデルの960 PROと同じデザインになっています。

パッケージを開封すると簡易マニュアルが上にあり、プラスチックのスペーサーの中央にSSDが置かれていました。

500GB版はメモリチップが片面実装になっており2枚搭載されていました。一番右端のチップは新型メモリコントローラー「Polaris」です。960 PROではメモリコントローラーPolarisにDRAMキャッシュを積層していますが、960 EVOではDRAMキャッシュは別のチップとしてメモリコントローラーの左に実装されています。



銅箔層を加えて放熱性能を上げたという「Heat Spreading Label」が公式発表会でもアピールされていましたが、製品裏側のラベルには肉眼でもわかる銅箔の層がありました。はたしてこの銅箔層にどれほどの意味があるのか気になりますね。


Samsung 960 EVOのテストセットアップ
外観のチェックはこの辺りにして早速、Samsung 960 EVO 500GBの性能をチェックしていきます。検証環境は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i7 6700K 4.2GHz、1.25V |
M/B | ASRock Z170M OC Formula |
メインメモリ | DDR4 8GB*2=16GB |
OS | Windows10 64bit Home |
電源ユニット | Corsair RM650i |
またM.2 SSDの性能測定には特に記載がない場合は「玄人志向 M.2スロット増設インターフェースボード」を使用しています。

Samsung 960 EVO 500GBの実際の空き容量は465GBとなっており、960 PRO 512GBとの差は11GBでした。


Windows10環境下であればOSに収録されている汎用ドライバが自動で適用されるので手動でドライバをインストールする必要はありません。ただSamsung公式サイトで純正のNVMe SSD用の最新ドライバ「Samsung NVMe Driver ver2.0」が公開されているので最大のパフォーマンスを発揮させるためこちらのドライバを適用して測定を行いました。
http://www.samsung.com/semiconductor/minisite/ssd/downloads/software/Samsung_NVMeDriver_2.zip
Samsung 960 EVOのベンチマーク比較
まずはSSDの性能測定ベンチマークテストとして定評のあるCrystalDiskMarkを行いました。左から順にSamsung 960 EVO 500GB、Samsung 960 PRO 512GB、Samsung 950 PRO 512GBです。


AS SSD Benchmarkのスコアは次のようになっています。上から順にSamsung 960 EVO 500GB、Samsung 960 PRO 512GB、Samsung 950 PRO 512GBです。



ATTO Disk Benchmarkのスコアは次のようになっています。左から順にSamsung 960 EVO 500GB、Samsung 960 PRO 512GB、Samsung 950 PRO 512GBです。



PC Mark8のスコアは次のようになっています。左から順にSamsung 960 EVO 500GB、Samsung 960 PRO 512GB、Samsung 950 PRO 512GBです。PCMark8では僅差ですがSamsung 950 PROが最も良いスコアを出していました。



各種ベンチマーク比較では仕様値通りにSamsung 960 EVO 500GBはSamsung 960 PRO 512GBより若干低いスコアになっていますが、旧世代のSamsung 950 PRO 512GBを概ね上回る性能になっています。960 EVOは廉価モデルながらシーケンシャルリードとシーケンシャルライトでは旧型を大きく引き離し、リードでは最大3000MB/s越えを達成しています。
Samsung 960 EVOの実使用時の性能比較
Samsung 960 EVO 500GBを使用して各種実使用の環境で性能比較を行いました。Samsung 960 EVO 500GB、Samsung 960 PRO 512GBとSATA SSDにWindows10(anniversary update適用済み)をインストールしてOSの起動時間を比較しました。OS起動時間の測定ではM.2 SSDはマザーボードのM.2 SSDスロットに設置しています。

Windows7やWindows8の頃はNVMe SSDにOSをインストールするとBIOSのPOST検出やドライバーの読み込みの時間でSATA SSDよりも起動が遅くなることがありましたが、Windows10ではその傾向はみられません。OSのクリーンインストール状態での起動時間はSATA SSDとNVMe SSD間に差はありませんでした。
Samsung 950 PRO 512GBをソースにして、Rise of the Tomb RaiderとThe Witcher3のゲームファイルの入ったSteamライブラリフォルダ(サイズは約80GB)のコピーを行い、コピー時間やコピー中のライト速度の比較を行いました。比較にはSamsung 960 EVO 500GB、Samsung 960 PRO 512GB、PNY SATA SSD 960GBの3種類を使用しました。
3種類のSSDにおけるコピー時間比較の結果は次のようになりました。NVMe SSDである960 EVOや960 PROがSATA SSDよりも速いのは予想していましたが、960 PROと960 EVOの間でもコピー時間が倍近く異なるという意外な結果になりました。

こちらはコピー中の各SSDのライト速度の推移比較になっています。

各種ベンチマークではSamsung 960 EVO 500GBはSamsung 960 PRO 512GBと遜色のない性能を発揮していましたが、大サイズの実ファイルコピーのリード速度の推移では様子が異なっています。 960 PROは1200MB/sから1800MB/sで終始安定していますが、960 EVOでは書き込みサイズが20GBを超えたあたりで書き込み速度が600MB/s程度まで落ちました。この挙動はSATA SSDにおけるMLC型とTLC型に似ており、実際にTLC型のSATA SSDであるPNY SATA SSD 960GBも15GB程度の書き込み後にライト速度が遅くなります。
Samsung 960 EVOは3bit-MLC NANDの一部を高速なSLC NANDとして用いて書き込み時にそこを優先的に使用する高速化技術「Intelligent TurboWrite」が使用されているので、SLCキャッシュ容量を超える書き込みが発生するとライト速度が低下します。960 EVOのデータシートによるとSLCキャッシュ容量が埋まった後のライト速度は300MB/s(250GB)、600MB/s(500GB)、1,200MB/s(1TB)となるようです。
またThe Witcher3とRise of the Tomb Raiderのゲームファイルを各SSDに置いてロード時間の比較を行いました。Samsung 960 EVO 500GB、Samsung 960 PRO 512GB、Samsung 950 PRO 512GB、PNY SATA SSD 960 GBの4種類で比較しています。
Samsung 960 EVOなどのNVMe M.2 SSDの3種については、ほぼ同時にロードが終了しています。SATA SSDはNVMe SSDに比べて2~3秒ほど長くロードに時間がかかっていました。時間にすると差は小さいですがロード時間全体からの割合として見るとNVMe SSDとSATA SSDで1割程度ロード時間には差があるようです。
Samsung 960 EVO 500GBの温度
Samsung 960 EVO 500GBの負荷時のSSD温度を検証してみました。負荷にはCrystalDiskMarkを使用して5周ループさせています。室温は20度ほどです。
同じ環境で比較を行いましたが、Samsung 960 EVO 500GBは以前レビューした960 PRO同様にCrystalDiskMarkを連続で回してもサーマルリミットによるリード・ライト速度の低下(サーマルスロットリング)は確認できませんでした。HWInfoで見ることのできるSSD温度の数値は960 PROよりも3度高い最大68度となりました。

旧世代の950 PRO(右画像)では長時間のSSDへの負荷で温度が上がってサーマルリミットでリード・ライト速度に制限がかかっているのが確認できます。950 PROと勝ったり負けたりで同程度の性能でありながら長時間の負荷でもサーマルリミットが発生しなくなる省電力性能の向上はSamsung 960 EVOや960 PROの魅力の1つです。


またスマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE」を使用して負荷時のSSD上の各所の温度をチェックしました。Samsung 960 EVO(左)とSamsung 960 PRO(右)のサーモグラフィは次のようになっています。


960 EVOと960 PROは同じ新型のPolarisメモリコントローラーを採用していますが、メモコン付近の負荷時の温度をみるとかなりの差があることがわかりました。960 PROとEVOの公式ページでも960 EVO 500GBの平均消費電力は5.3W、960 PRO 512GBの平均消費電力は5.1Wとなっていました。960 EVOと960 PROでは実装されているメモリチップが異なるのでそれがメモリコントローラーの負荷にも影響しているようです。
Samsung 960 EVO 500GBのレビューまとめ
最後に高速NVMe M.2 SSD「Samsung 960 EVO 500GB」の実機サンプルを検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 3000MB/s超という現行最高峰のシーケンシャルリード
- 廉価版でありながら概ね960 PROと遜色ない性能
- 旧型950 PRO比で省電力性能が改善されサーマルスロットリングが解消された
- システムストレージに最適な容量250GBのモデルがある。
- 250GBあたり1.5万円程度とNVMe M.2 SSDとしてはリーズナブルな価格帯に
- SLCキャッシュを利用するTLC的なSSDなので大サイズファイルの書き込みで速度低下が起こる
- 同容量の960 PROと比較して消費電力(発熱)が大きい
- 同容量のSATA SSDに比べるとGB単価は2倍以上
Samsung 960 EVOという新型NVMe M.2 SSDを評価するうえで一番の注目ポイントは「シーケンシャルリードでついに3000MB/sという大台を超えたこと」、「省電力性能の向上によりサーマルスロットリングが解消されたこと」の2点だと思います。
省電力化は進んでいるものの960 PROのレビュー記事でも書いたように最大の熱源であるメモリコントローラーの負荷時の温度は依然80度を超えているのでさらなる省電力化や放熱対策を期待したいところです。とはいえヒートシンク付きM.2 PCI-Eアダプタなども簡単に購入できるので、マザーボード備え付けのM.2スロットでの使用にこだわらなければ各自による発熱対策は難しくありません。
SATA SSDと比較してGB単価の差は依然として大きく2倍近い差があるため自作PCへの導入には悩ましいところですが、NUCやMini-STXなどのコンパクト自作PCや大サイズファイルを取り扱う用途では2.5インチSATA SSDよりもメリットがあるので導入する価値は十分あると思います。ただし960 EVOは一定容量以上の連続書き込みでTLC的な動作でライト速度が低下するのには注意する必要があります。書き込み速度の低下を気にせずに安定してパフォーマンスが発揮されることを期待するなら上位モデルの960 PROも選択肢として検討したほうがいいかもしれません。
Samsung 960 EVOはNVMe M.2 SSDとしては2016年前半以前に発売されたモデルと比較してGB単価が下がっており、長時間負荷におけるサーマルスロットリングも解消されています。大容量の500GBや1TBモデルだけでなく、250GBの安価でOSインストールに最適なモデルもラインナップされているのでSamsung 960 EVOは初めての高速NVMe M.2 SSDとしてもお勧めできる製品だと思います。
以上、「Samsung 960 EVO 500GB」のレビューでした。

(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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