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NVMe(PCI-E3.0x4帯域)接続のM.2 SSDを4枚刺し可能な拡張ボード「HighPoint SSD7101A-1」をレビューしていきます。x16サイズPCI-Eスロットに設置可能なフルハイトフルレンジのM.2 SSD拡張ボード「HighPoint SSD7101A-1」を使用する利便性や高速M.2 SSDを複数枚使用したRAIDストレージの構築やアクセス速度などを詳しく検証していきます。
「HighPoint SSD7101A-1」のレビューに当たって日本サムスン社より検証機材として最新NVMe M.2 SSDの「Samsung 960 PRO 512GB」と「Samsung 960 EVO 250GB」を各4枚ずつお借りしました。
製品公式ページ:http://www.samsung.com/semiconductor/minisite/jp/
製品公式ページ:http://highpoint-tech.com/USA_new/series-ssd7101a-1-overview.htm
互換性リスト(M/B・SSD):http://www.highpoint-tech.com/PDF/Compatibility_List/SSD7100_Compatibility_List_17_06_30.pdf
マニュアル:http://www.highpoint-tech.com/PDF/SSD7101A/SSD7101A-1_Manual_v1.00.pdf
国内代理店:http://www.dirac.co.jp/ssd7101a-1/
【追記・修正】
国内正規代理店ディラック様へ確認したところ、同製品のRAID構築機能はハードウェアRAIDではなくソフトウェアRAIDでした。初稿において誤って『ハードウェアRAID機能』等の表記となっておりましたので修正しました。
HighPoint SSD7101A-1 レビュー目次
1.HighPoint SSD7101A-1の外観・付属品
2.HighPoint SSD7101A-1の検証機材
3.HighPoint SSD7101A-1の基本的な使い方
4.HighPoint SSD7101A-1とPCI-Eスロットの接続帯域について
5.HighPoint SSD7101A-1とRyzen TRのNVMe RAID機能について
6.HighPoint SSD7101A-1の温度やファンノイズについて
7.HighPoint SSD7101A-1のシングルボリューム使用について
8.HighPoint SSD7101A-1のRAIDによる性能のスケーリングについて
9.HighPoint SSD7101A-1とTLC SSDのキャッシュ容量について
10.HighPoint SSD7101A-1によるRAIDストレージの実性能比較
11.HighPoint SSD7101A-1のレビューまとめ
HighPoint SSD7101A-1の外観・付属品
まず簡単に「HighPoint SSD7101A-1」の外観や付属品についてチェックしていきます。製品は茶色い段ボール箱に梱包されていました。
製品パッケージの正面右上には国内代理店Diracの正規取扱品証明シールが貼られています。国内の正規保証期間は購入後1年間となっています。製品保証にはこのシールも必要なので開封後も捨てずに保管しておいてください。
製品パッケージを開くと赤色のスポンジスペーサーで保護されて製品が収められていました。
HighPoint SSD7101A-1本体以外の付属品はスペアのネジ4本と簡単なマニュアルとなっています。HighPoint SSD7101A-1を使用する上で必要な、ドライバとRAIDアレイ構築ソフトウェアは製品公式サポートページからダウンロードする形です。
DLページ:http://highpoint-tech.com/USA_new/series-ssd7101a-1-download.htm
HighPoint SSD7101A-1本体をチェックしていきます。
HighPoint SSD7101A-1はPCI-Eスロットを1スロット占有するフルハイトフルレンジ(HHHLサイズ)のPCI-E拡張ボードとなっており、最大でPCI-E3.0x16帯域で接続可能です。
拡張ボード長はPCI-Eスロットより若干長い220mmほどとなっています。ATXやMicro-ATXマザーボードに対応したPCケースであれば拡張ボードとの干渉を心配する必要はない長さだと思います。
拡張ボードにはM.2 SSDヒートシンクを兼ねた金属製の外装が装着されています。外装の表面はマットなブラック塗装でシンプルな趣です。
「HighPoint SSD7101A-1」の重量は346g程となっています。
「HighPoint SSD7101A-1」のヒートシンクは拡張ボード背面のプラスネジ6カ所で固定されており、ヒートシンクの着脱は容易です。ヒートシンクにはM.2 SSDとの接触のための大きいサーマルパッド1枚と拡張ボードに実装されたスイッチチップを冷却するためのサーマルパッド1枚が標準で貼りつけられています。
拡張ボードはM.2 SSDの規格として2280と22110の2種類に対応しています。自作PC向けのM.2 SSDは基本的に2280規格なのでハード的にはほぼ全てのM.2 SSDに対応している形です。なお公式の互換性リスト上でサポートされているM.2 SSDについては今回検証機材として使用する「Samsung 960 PRO」と「Samsung 960 EVO」の2種類のみとなっています。
ヒートシンク本体には拡張ボード右に設置されたブロアーファンから風を受けてM.2 SSDを冷却するための簡単なT字型の放熱フィンが備わっています。
4枚のNVMe M.2 SSDが装着可能です。
HighPoint SSD7101A-1の検証機材
HighPoint SSD7101A-1の検証機材として、公式の互換性リストに掲載されている「ASUS PRIME X299-DELUXE」や「Samsung 960 PRO 512GB」を使用したベンチ機を使用しました。詳細は下のテーブルのようになっています。またHighPoint公式からHighPoint SSD7101A-1と互換性のあるマザーボードやSSDのリストが公開されています。「HighPoint SSD7101A-1」の導入を検討しているユーザーは予めご確認ください。
互換性リスト(M/B・SSD):http://www.highpoint-tech.com/PDF/Compatibility_List/SSD7100_Compatibility_List_17_06_30.pdf
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9 7920X 12コア24スレッド (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z RGB F4-3866C18Q-32GTZR DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) |
マザーボード |
ASUS PRIME X299-DELUXE (レビュー) |
ビデオカード | EVGA GTX 1080 Ti SC2 iCX (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung 850 PRO 256GB (レビュー) |
検証用ストレージ1 |
Samsung 960 PRO 512GB *4 (レビュー) |
検証用ストレージ2 |
Samsung 960 EVO 250GB *4 (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
HighPoint SSD7101A-1の基本的な使い方
HighPoint SSD7101A-1のソフト面での使い方について簡単に紹介します。HighPoint SSD7101A-1を使用する上で単純にM.2 SSDの4枚刺し拡張ボードとして使用するだけであれば追加のソフトウェアは必要なくWindows10の標準ドライバのみで動作します。M.2 SSDを4枚装着したHighPoint SSD7101A-1をマザーボードに設置すれば普通にNVMe SSDとして認識してくれるので、あとはコントロールパネルからボリュームの作成を行えばOKなので導入は非常に簡単です。
なおIntel X299やAMD X399環境ではPCI-Eスロットの接続モードとしてx8やx16帯域のスロットで帯域をx4x4やx4x4x4x4などに分割する接続モードが用意されていますが、「HighPoint SSD7101A-1」を使用する場合は分割モードではなく通常モードに予め設定しておいてください。分割モードに設定したままでそのスロットに「HighPoint SSD7101A-1」を設置してるとPOSTで止まる場合があります。
HighPoint SSD7101A-1を使用する上で追加のソフトウェア(ドライバとRAIDマネージャー)が必要になるのはHighPoint SSD7101A-1専用ユーティリティーによるRAID構築を行う場合です。
HighPoint SSD7101A-1の専用ユーティリティーを使用してRAIDを構築したい場合は製品サポートページからドライバとRAIDマネージャーをダウンロードしてください。
DLページ:http://highpoint-tech.com/USA_new/series-ssd7101a-1-download.htm
「RocketNVMe_Windows_StorPort_〇〇」と「NVMe_Manager_Win_〇〇」という2つのソフトをインストールすることになりますが、1.ドライバから2.RAIDマネージャーの順番でインストールしてください。インストール作業自体はインストーラーからポチポチクリックしていくだけなので難しいことはありません。
2つのソフトウェアをインストールするとデスクトップ「HighPoint NVMe RAID Manager」のショートカットアイコンができるのでそこからRAIDマネージャーを起動します。IEを使用したUIで次のような画面が起動します。初回起動時にIDとパスワードを尋ねられますが、空白のままOKを選択して進めても大丈夫です。
SettingのタブではHighPoint SSD7101A-1のPCI-E接続についてリンクスピードやリンク帯域を確認できます。
「HighPoint NVMe RAID Manager」からRAIDアレイを構築するには「Manage」タブ左にある「Create Array」を選択します。
すると下のような画面が表示されて、RAIDアレイのタイプ、アレイ名、初期化(フォーマット設定)、ブロックサイズ、使用するストレージ等を選択してRAIDアレイを構築できます。UIの言語は英語ですが簡単なことしか書かれていないので英語が苦手でも迷うことはないと思います。
RAIDの種類については、RAID0、RAID1、RAID5、RAID10から選択可能です。
RAIDアレイを構築すると「Logical Device Information」の部分が更新されてRAIDアレイが表示されます。
「HighPoint NVMe RAID Manager」で構築したRAIDアレイの解除については「Maintenance」を選択して「Array Information」のポップアップを開いて「Delete」をクリックすれば簡単に解除可能です。
HighPoint SSD7101A-1の専用ソフトウェアを使用したRAIDアレイの構築も上記のように非常に簡単な構造になっており導入のハードルは低いと思います。
ちなみにWindowsのストライプボリューム(RAID0)作成機能からソフトウェアRAIDの構築も可能です。
HighPoint SSD7101A-1を設置するPCI-Eスロットの接続帯域について
HighPoint SSD7101A-1を設置するPCI-Eスロットの接続帯域について解説します。HighPoint SSD7101A-1は仕様上は最大接続帯域としてPCI-E3.0x16に対応しています。17年後半に発売済みのNVMe M.2 SSDの中でも最速となる「Samsung 960 PRO 512GB」を4枚使用し、HighPoint SSD7101A-1の専用ユーティリティーで構築したRAID0ストレージでは仕様値通り14GB/s前後のシーケンシャルリード性能が発揮できています。
では「HighPoint SSD7101A-1」をリンク帯域の低いx4やx8のPCI-Eスロットに設置するとどうなるかというと、ストレージ自体は正常に認識され、RAIDアレイの構築など基本的な機能も問題なく使用できました。
リンク帯域を下げた場合のデメリットは下のように複数のストレージへ同時アクセスがあった場合にトータルアクセススピードがPCI-E3.0x8なら7.0GB/s程度、PCI-E3.0x4なら3.5GB/s程度へ制限されるだけとなっています。
PCI-E3.0x8/4の接続帯域の下ではトータルアクセススピードに制限がかかるので、例えばPCI-E3.0x4においてSamsung 960 PRO 512GB 4枚の個別ボリュームへ同時に読み込みアクセスが発生した場合は下のように各ストレージへのアクセス速度は900MB/s程度に制限されますが、個別にアクセスがある場合は通常のM.2スロットへ接続したNVMe M.2 SSDとして動作するのでSamsung 960 PRO 512GBの仕様値通りのパフォーマンスを発揮することが可能です。
「HighPoint SSD7101A-1」は内部帯域がPCI-E3.0x8やPCI-E3.0x4のx16サイズスロットや右端に切り込みのあるPCI-E3.0x4のx4サイズスロットに装着することで、トータルアクセススピードには実帯域依存で制限がかかるものの非同時の個別アクセスではNVMe M.2 SSDを仕様値通りに動作させることが可能な拡張ボードとして使用できるので、空きPCI-Eスロットを利用したストレージ増設ソリューションとしてはかなり有用な拡張ボードだと思います。
HighPoint SSD7101A-1とRyzen ThreadripperのNVMe RAID機能について
またIntel Skylake-X環境においてはNVMe SSDを使用した仮想RAID機能VROCはIntel純正のSSDしかサポートされていませんが、AMD Ryzen Threadripper環境においては今回検証機材として使用している「Samsung 960 PRO」や「Samsung 960 EVO」でもBIOS上からRAIDアレイの構築が可能となっています。AMD Ryzen Threadripperに対応するX399マザーボードは10月26日現在「HighPoint SSD7101A-1」の正式サポート外となっていますが、ASUS ROG ZENITH EXTREMEの環境で「HighPoint SSD7101A-1」にSamsung 960 PRO 512GBを4枚装着して試してみたところ、「HighPoint SSD7101A-1」に装着したM.2 SSDからでもAMD Ryzen Threadripperの機能を使用したNVMe RAIDアレイの構築は可能でした。
もちろん上で紹介したように単純なM.2 SSDの4枚刺し拡張ボードとしての使用や「HighPoint NVMe RAID Manager」を利用したRAIDアレイの構築も可能です。
ただしASUS ROG ZENITH EXTREMEの環境で「HighPoint SSD7101A-1」を使用したところ、接続帯域PCI-E3.0x16においてトータルアクセススピードが6800MB/s程度に制限される症状が発生しました。x8帯域化でもトータルアクセススピードが若干低くなっています。正式サポート外なので原因は不明です。実用上は問題ありませんが製品の故障等ではないようなので注意してください。
HighPoint SSD7101A-1の温度やファンノイズについて
HighPoint SSD7101A-1は発熱が大きいNVMe M.2 SSDを4枚装着可能な拡張ボードなので、HighPoint SSD7101A-1に設置したSSDに負荷がかかった時の温度、HighPoint SSD7101A-1に実装された冷却ファンのファンノイズについてチェックしてみました。まずM.2 SSDの温度についてですが、HighPoint SSD7101A-1にSamsung 960 PRO 512GBを4枚装着、シングルボリュームを4つ作成し、iometerで各ボリュームへ1MBのシーケンシャルリード負荷を一定時間かけ続けることでHWInfoからM.2 SSDの温度とアクセススピードをチェックしました。
今回は上記の条件で30分ほど負荷をかけ続けましたが、4つのM.2 SSDでメモリコントローラーの温度が70度弱、メモリチップ温度が40度半ばとなりました。30分間後のアクセススピードについても各SSDのシーケンシャルリード速度は3500MB/s程度でサーマルスロットリングが発生することもなく安定していました。
HighPoint SSD7101A-1についてはNVMe M.2 SSDを4枚装着してに長時間負荷がかかったとしてもSSD温度やサーマルスロットリング発生に対する心配はないと思います。
なおサウンドレベルメーターを使用した「HighPoint SSD7101A-1」のファンノイズ測定では55dB程度となりました。ブロアーファンを搭載したハイエンドグラフィックボードに高負荷をかけた時と同等のファンノイズが恒常的に発生するのでPCケースに入れていてもファンノイズについては気になるレベルだと思います。
「HighPoint SSD7101A-1」のM.2 SSDの冷却性能については問題ないことが確認できたものの、ファンノイズが大きいのは若干残念ではあります。「HighPoint SSD7101A-1」は一般的な自作er向け製品というよりは業務で使用するようなワークステーション向け製品なのでファンノイズの大きさについては仕方ないのかもしれません。ワンスロット占有のGTX 750 TiやGTX 1050 Tiのような径の大きいファンを採用するなど冷却とファンノイズについてはもう少し改善できたのではないかなというのが正直なところです。
HighPoint SSD7101A-1のシングルボリューム使用について
「HighPoint SSD7101A-1」にはPCI-EとM.2 SSDの間にスイッチチップが挟んであるので、「HighPoint SSD7101A-1」でSamsung 960 PRO 512GBを普通にシングルボリュームとして使用した場合と、通常のM.2-PCIE変換アダプタ「Aquacomputer kryoM.2」を使用した場合とで性能に差が出るのかをチェックしてみました。まずはCrystalDiskMark(QD32, 4GiB)のベンチマーク結果です。
ATTO Disk Benchmark(512B-64MB, 256MB, QD4)の結果は次のようになっています。
AS SSD Benchmark(5GB)の結果は次のようになっています
PCMark8 ストレージテストのベンチマーク結果は次のようになっています
以上のように使用するM.2 SSDをSamsung 960 PRO 512GBに揃え、「HighPoint SSD7101A-1」と「Aquacomputer kryoM.2」でストレージの性能を基本的なベンチマークソフトで比較してみましたが有意な差は確認できませんでした。「HighPoint SSD7101A-1」の接続はスイッチチップを挟む形になっていますが、このハード的な構造による性能の低下については基本的に気にする必要はなさそうです。
HighPoint SSD7101A-1のRAIDによる性能のスケーリングについて
続いてHighPoint SSD7101A-1の専用ユーティリティーから作成したRAID0アレイの性能のスケーリング具合についてSamsung 960 PRO 512GBを4枚使用して各種ベンチマークソフトでチェックしていきます。Samsung 960 PRO 512GBを4枚使用して「HighPoint SSD7101A-1」でRAID0のストレージを作成するとシーケンシャルリード14GB/sを達成することも可能です。
まずはCrystalDiskMark(QD32, 4GiB)のベンチマーク結果です。CrystalDiskMarkではなぜか4枚でRAID0を組むとシーケンシャルリード性能が下がってしまいました。他ソフトでは正常にスケーリングできているのでソフトウェアとの相性問題のように感じます。
ATTO Disk Benchmark(512B-64MB, 256MB, QD4)の結果は次のようになっています。ブロックサイズ別のランダム性能を主にチェックするベンチマークなので4KB~1024KBを抜粋してリード/ライト性能をグラフにして比較しました。
AS SSD Benchmark(5GB)の結果は次のようになっています
PCMark8 ストレージテストのベンチマーク結果は次のようになっています。1回の測定で1時間ほどかかってしまうので、シングルボリュームとx4 RAID0の2つのみで測定を行いました。
「HighPoint SSD7101A-1」を使用したSamsung 960 PRO 512GB 2~4枚によるRAID0ストレージはSamsung 960 PRO 512GB単独と比較すると、RAID0に使用する枚数に比例してシーケンシャルのリード・ライト性能はスケーリングされるものの、ベンチマーク上はランダム性能が若干下がることが確認できました。ただ実アプリに関するストレージベンチマークであるPCMark Strage TestではRAID構築によって性能は改善されないものの性能低下自体も軽微なので実用上の目に見えて性能低下につながるかというとそこは微妙なところです。
HighPoint SSD7101A-1とTLC SSDのキャッシュ容量について
17年で主流となっている安価なTLC NANDでは一部に高速なSLCキャッシュを使用することで書き込み性能を改善する機能が採用されており、そういった所謂TLC型SSDでHighPoint SSD7101A-1を用いた場合のRAIDアレイの動作についても簡単にチェックしてみました。検証機材として使用するSamsung 960 EVOは3bit-MLC NANDの一部を高速なSLC NANDとして用いて書き込み時にそこを優先的に使用する高速化技術「Intelligent TurboWrite」が使用されているので、SLCキャッシュ容量を超える書き込みが発生するとライト速度が低下します。960 EVOのデータシートによるとSLCキャッシュ容量が埋まった後のライト速度は300MB/s(250GB)、600MB/s(500GB)、1,200MB/s(1TB)となっています。
この検証ではHD Tune Proというベンチマークソフトを使用して、数十GBの大型連続書き込みによる書き込み速度の低下をチェックしていきます。
Samsung 960 EVO 250GBへ20GBサイズの連続書き込みを行った結果が次のようになっています。書き込みサイズが13GBに達すると書き込み速度が1500MB/sから300MB/sへと階段的に下がっているのが確認できます。
ちなみにSamsung 960 PRO 512GBでは50GBサイズの連続書き込みを行っても2GB/s程度のライト速度を安定して発揮することが可能です。
本題となるSamsung 960 EVO 250GBを4枚使用したRAID構築でこのキャッシュ機能がどうなるかについてですが、100GBサイズの連続書き込みを行ったところ書き込み性能は1枚の時と比較して約4倍にスケーリングされているのに加えて、SLCキャッシュの容量も4倍の50GB超に増加しているような動作になっていることがわかります。
Samsung 960 EVO 250GBを4枚使用したRAID0ストレージの各種ベンチマーク結果は次のようになっています。960 PROの4枚RAID0と比較しても遜色のないスコアになっており、安価なTLC型の弱点であるキャッシュによる連続書き込み性能の底上げが改善されるので大容量で安価なNVMeストレージの構築としては「HighPoint SSD7101A-1」によるTLC型SSDのRAIDアレイ構築は意外とありな手ではないかと思います。
HighPoint SSD7101A-1によるRAIDストレージの実性能比較
HighPoint SSD7101A-1の専用ユーティリティーによってSamsung 960 PRO 512GB 4枚やSamsung 960 EVO 250GB 4枚を使用したRAIDストレージを構築し、大容量・多数データのコピーやPCゲームのロード時間など実際の使用について性能比較をしてみました。まずはファイルのコピーに関する実性能比較となります。検証に使用するデータとしては次のような80GBで多数のファイルが入ったゲームのフォルダ(The Witcher 3とRise of the tomb Raider)と50GBの動画ファイルの2種類を使用しています。
またファイルのコピーなので書き込み先/読み込み元の対象となるストレージが必要になるため、そちらにはM.2-PCIE変換アダプタ「Aquacomputer kryoM.2」に設置したSamsung 960 PRO 512GBを使用しました。
上記のような条件で「Samsung 960 PRO 512GB x1 @HighPoint SSD7101A-1(960 PRO x1)」、「Samsung 960 PRO 512GB x4 RAID0 @HighPoint SSD7101A-1(960 PRO x4 HP)」「Samsung 960 PRO 512GB x4 RAID0 @ソフトウェアRAID(960 PRO x4 SW)」「Samsung 960 EVO 250GB x4 RAID0 @HighPoint SSD7101A-1(960 EVO x4 HP)」の4種類について比較を行いました。
各種検証ストレージとSamsung 960 PRO 512GB間の50GB動画ファイルおよび80GBのゲームフォルダのコピー時間の比較結果は次のようになりました。各種検証ストレージとのコピー相手となるストレージもRAIDストレージにするとまた違った結果になるのかもしれませんが、Samsung 960 PRO 512GBを相手にする場合、動画ファイルのコピーが10~20%程度早くなるものの、ランダム性能が効いてくるゲームフォルダのコピーではあまり大きな差は出ないようです。(960 PRO 512GB x4 RAID0を2組使用したコピー速度検証については後日公開の別記事に掲載予定です)
続いて実際にPCゲームのロード時間も比較してみました。
The Witcher 3ではグラフィック設定をフルHD解像度・最高設定としてノヴィグラドの広場からトゥサンのコルヴォ・ビアンコブドウ園までのファストトラベル時のロード時間を比較しています。
Rise of the Tomb RaiderではフルHD解像度においてグラフィック設定をDirectX12で個別に最高設定として製鋼所の空き地までのファストトラベル時のロード時間を比較しています。
以上の条件で「Samsung 960 PRO 512GB x1 @HighPoint SSD7101A-1(960 PRO x1)」、「Samsung 960 PRO 512GB x4 RAID0 @HighPoint SSD7101A-1(960 PRO x4 HP)」「Samsung 960 PRO 512GB x4 RAID0 @ソフトウェアRAID(960 PRO x4 SW)」「Samsung 960 EVO 250GB x4 RAID0 @HighPoint SSD7101A-1(960 EVO x4 HP)」の4種類についてゲームのロード時間比較を行いました。
ロード時間を測定して比較してみたところコンマ秒で差がある可能性はあるものの各ストレージで大きな差は確認できませんでした。やはりゲームのロード時間についてはランダム性能の大幅な向上(レイテンシの低下)が必要になるようです。
以上のように実際の用途においては「HighPoint SSD7101A-1」でNVMe SSDを複数枚使用してRAID0を構築しても、ファイルのコピー時間については多少の削減が見込めるものの、基本的にシーケンシャル性能のスケーリングなのでその性能差をベンチマークソフトの結果同様に実用途で体感することは難しいようです。
HighPoint SSD7101A-1のレビューまとめ
最後にNVMe(PCI-E3.0x4帯域)接続のM.2 SSDを4枚刺し可能な拡張ボード「HighPoint SSD7101A-1」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- NVMe M.2 SSDが4枚刺し可能なPCI-E拡張カード
- 単純な複数枚刺し拡張カード使用であればドライバレスで使用できる
- 4枚のRAID構築でシーケンシャル性能では最高14GB/sを達成可能
- トータルアクセススピードの制限はあるがx4やx8帯域でも使用可能
- 通常のM.2スロットと比較してシングルボリューム使用時の性能低下はない
- 960 PROや960 EVO 4枚へのフル負荷でもサーマルスロットリングが発生しない冷却性能
- SLCキャッシュで書き込み高速化をしているTLC SSDではRAID構築でキャッシュ合計が可能
- 5万円以上と非常に高価
- ファンノイズが大きく、静音環境には向かない
- ランダムアクセスは伸びないので実用上は速度向上が体感しにくい
M.2 SSDの複数枚刺しが可能なPCI-E拡張ボード「HighPoint SSD7101A-1」については概ね予想通りの検証結果が得られたと思います。RAID0の構築によってシーケンシャル性能は帯域の増加に伴って綺麗にスケーリングされ、単独で3500MB/sを実現するSamsung 960 PROや960EVOを使用すれば4枚で14GB/sに到達するものの、RAID0の特性としては既知な事実ですがランダム性能は改善しない(若干低下する)ので実用上はベンチスコア程の速度向上を体感することはできません。もっともベンチマーク自体が楽しいことも否定できない。
個人的にはSATA SSDよりも単独で十分に高速かつコンパクトなNVMe M.2 SSDをPCI-Eスロット1つという限られたスペースに4つも増設できるというそれ自体に価値を見出していたので、RAID0はベンチ専用的な事実はあまりマイナスポイントには感じていません。SATAのようにマザボと接続する通信ケーブルと電源ケーブルを個別に必要とするという配線上の手間も排除できるので、NVMe M.2 SSDの鉄板モデルともいえるSamsung 950 PROの登場から2年が経ち、待望されつつもなかなか発売されることがなかったM.2 SSD複数枚刺し可能な拡張ボードはもっと普及していって欲しいと思っているので、「HighPoint SSD7101A-1」の登場自体が喜ばしいというのも正直なところです。
拡張ボードにスイッチチップが実装されているためトータルアクセススピードがPCI-Eの実際の接続帯域を上限として制限がかかるということに目をつぶれば、PCI-E3.0x4帯域のスロットに設置してもNVMe M.2 SSDの4枚刺しが可能であり、アクセスが集中しなければSSDの仕様値どおりのパフォーマンスが発揮できるので、正式サポートはIntel X99やX299プラットフォームですが、IntelやAMDのメインストリームプラットフォームでも活用可能な汎用性もまた魅力だと思います。
連続書き込みでSLCキャッシュが埋まると書き込み速度が大幅に低下するTLC SSDではRAID0の構築によってキャッシュ容量の合算が可能であることも確認できたので安価で大容量なストレージを構築することも可能です。
「HighPoint SSD7101A-1」の購入をためらわせるのは5万円という非常に高価な価格(500GB以上のNVMe M.2 SSDが購入できてしまう)とワークステーション向け製品ゆえの冷却ファンの煩さだと思います。前者については他に選択肢がなく製品自体がニッチな部類なので、まあ仕方ないかなあと思うものの、後者のファンノイズについてはSSDの発熱がせいぜい40W以下に収まるはずなのでエントリーグラフィックボード程度のファンノイズには収めて欲しかったです。
以上、HighPoint SSD7101A-1のレビューでした。
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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