Samsung SSD 970 EVO 1TB


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Samsung製3bit MLC型64層V-NANDメモリチップとSamsung製メモリコントローラーSamsung Phoenix Controllerを採用するNVMe M.2 SSDのメインストリーム向けスタンダードモデル「Samsung SSD 970 EVO」シリーズから、容量1TBモデル「Samsung SSD 970 EVO 1TB (型番:MZ-V7E1T0BW)」のサンプル機をメーカーよりお借りできたのでレビューしていきます。前世代最上位のSamsung 960 PROや18年最新の競合製品であるIntel SSD 760pやWD Black 3D NVMe SSDと比較しながら、速くて丈夫で安い、3拍子揃った18年最新メインストリーム向けNVMe M.2 SSDを徹底検証します。
Samsung SSD 970 EVO 1TB review_05822

代理店公式ページ:https://www.itgm.co.jp/product/ssd970evo/
製品公式ページ:http://www.samsung.com/semiconductor/minisite/jp/ssd/consumer/970evo/
データシート:https://s3.ap-northeast-2.amazonaws.com/global.semi.static/Samsung_NVMe_SSD_970_EVO_Data_Sheet_Rev.1.0.pdf




Samsung SSD 970 EVO 1TB レビュー目次


1.Samsung SSD 970 EVOについて
2.Samsung SSD 970 EVO 1TBの外観
3.Samsung SSD 970 EVO 1TBの検証機材と基本仕様
4.Samsung SSD 970 EVO 1TBのベンチマーク比較
5.Samsung SSD 970 EVO 1TBの連続書き込みについて
6.Samsung SSD 970 EVO 1TBの温度とサーマルスロットリングについて
7.Samsung SSD 970 EVO 1TBの実用性能比較
8.Samsung SSD 970 EVO 1TBのレビューまとめ



Samsung SSD 970 EVOについて

「Samsung SSD 970 EVO」シリーズはSamsung製V-NAND 3bit MLCメモリチップとSamsungが独自開発したメモリコントローラー「Samsung Phoenix Controller」を採用することによって前モデル960 EVOよりもアクセススピードの高速化と、メインストリーム向け製品としては重要な低価格化を実現した最新NVMe M.2 SSDです。「Samsung SSD 970 EVO」は容量別で250GB/500GB/1TB/2TBの4モデルがラインナップされています。
Samsung SSD 970 EVO (3)Samsung SSD 970 EVO (1)

「Samsung SSD 970 EVO」シリーズはメモリチップにSamsung製V-NAND 3bit MLC(一般にいうところのTLC型64層3D NAND)、メモリコントローラーにSamsung Phoenix Controllerが採用された、M.2 2280フォームファクタのNVMe(PCI-E3.0x4)接続M.2 SSDです。
「Samsung SSD 970 EVO」シリーズのアクセススピードは容量によって若干異なりますが、最大でシーケンシャル読出3500MB/s、シーケンシャル書込2500MB/s、4KQD1ランダム読出15,000 IOPS、4KQD1ランダム書込50,000 IOPS、4KQD32ランダム読出500,000 IOPS、4KQD32ランダム書込480,000 IOPSの高速アクセスを実現しています。
「Samsung SSD 970 EVO」シリーズのMTBF(平均故障時間)は150万時間、書込耐性は250GBが150TBW、500GBが300TBW、1TBが600TBW、2TBが1200TBWとなっており、メーカーによる製品保証期間は5年間です。

「Samsung SSD 970 EVO」シリーズにはメモリチップとしてSamsung製64層V-NAND 3bit MLC、一般に言うところのTLCタイプ64層3D NANDが採用されています。TLC NANDは上位モデル970 PROに採用されているMLC NANDに比べて書き込み性能で劣るため、TLC SSDでは一般に搭載するNANDフラッシュメモリーの一部をSLCキャッシュとして使用して書き込み性能を底上げする機能が採用されていますが、「Samsung SSD 970 EVO」ではこのキャッシュ機能を強化し、必要に応じてSLCの領域を増減する「Intelligent TurboWrite」機能が採用されています。
Intelligent TurboWrite
「Intelligent TurboWrite」においてはキャッシュとなる疑似SLC領域は標準で数GBの容量が確保されますが、それを上回る大容量の書き込みアクセスが発生した場合にモデルによって定められた容量を追加でバッファ領域として利用できます。「Samsung SSD 970 EVO」シリーズ各モデルのSLC領域、可変領域、書込速度は次のテーブルのようになっています。
「Samsung SSD 970 EVO」シリーズ
Intelligent TurboWrite の仕様

容量 250GB 500GB 1TB 2TB
キャッシュ
サイズ
標準 4GB 6GB
可変領域 9GB 18GB 36GB 72GB
最大 13GB 22GB 42GB 78GB
連続書込 キャッシュ内 1500MB/s 2300MB/s 2500MB/s
キャッシュ外 300MB/s 600MB/s 1200MB/s 1250MB/s


Samsung SSD 970 EVO スペック一覧
容量 250GB
(型番:MZ-V7E250BW)
500GB
(型番:MZ-V7E500BW)
1TB
(型番: MZ-V7E1T0BW)
2TB
(型番: MZ-V7E2T0BW)
コントローラー
Samsung Phoenix Controller
メモリー Samsung製V-NAND 3bit MLC (TLC型64層3D NAND)
キャッシュ
512MB LPDDR4 1GB  LPDDR4 2GB  LPDDR4
連続読出 3400MB/s 3500MB/s
連続書込 1500MB/s 2300MB/s 2500MB/s
4Kランダム読出
QD1T1 / QD32T4
15,000 IOPS /
200,000 IOPS
15,000 IOPS /
370,000 IOPS
15,000 IOPS /
500,000 IOPS
4Kランダム書込
QD1T1 / QD32T4
50,000 IOPS /
350,000 IOPS
50,000 IOPS /
450,000 IOPS
50,000 IOPS /
480,000 IOPS
消費電力 30mW(アイドル)
 5.4W(リード平均)
30mW(アイドル)
 5.7W(リード平均)
30mW(アイドル)
 6.0W(リード平均)
動作温度範囲 0°C~70°C
MTBF 150万時間
耐久性評価 150TBW 300TBW 600TBW 1200TBW
保証期間 メーカー5年



Samsung SSD 970 EVO 1TBの外観

まず最初にSamsung SSD 970 EVO 1TBの外観や付属品について簡単にチェックしておきます。
パッケージの外観についてSamsung SSD 970 EVOではSamsung製メインストリーム向けSSDではお馴染みのオレンジ色がアクセントカラーになっています。上位モデルの970PROもお馴染みの赤色がアクセントカラーです。
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紙製のパッケージを開くとSSD本体はプラスチックのスペーサーに収められていました。付属品は保証規定書およびインストールガイドとなっています。
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Samsung SSD 970 EVOシリーズのSSD本体デザインについては普通にM.2 2280サイズ、M-Key型のM.2 SSDです。PCB基板は黒色になっています。
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Samsung SSD 970 EVOシリーズの表面シールの下にはM.2端子に近いものから順にメモリコントローラー、その隣にDRAMキャッシュ、残り半分には2枚のメモリチップが実装されています。(注:表面、裏面ともシールやラベルを剥がすと保証対象外となります)
Samsung SSD 970 PRO (4)
最大容量の2TBモデルでもメモリコントローラーやメモリチップが表面のみに実装される片面実装です
Samsung SSD 970 EVO 1TB review_05830
前世代の960 PRO/EVOではPCB基板上の回路設計が異なっていましたが、Samsung SSD 970 EVOとSamsung SSD 970 PROではそれがほぼ統一されているのが見てわかります。64層3D NAND採用でメモリチップ単位での大容量化によるコストカットだけでなく、回路設計の共有なども低価格化に繋がっていそうです。
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サーマルスロットリングの抑制に対しては、発熱と性能のバランスを調整する独自のアルゴリズム「Dynamic Thermal Guard」を採用するプロセッサレベルの対策だけでなく、基板背面に貼られた銅製シール「Copper Seal(銅箔層ヒートスプレディングラベル)」や、発熱の大きいメモリコントローラーのチップ表面にもニッケルメッキの金属プレートを施すといった物理的アプローチで放熱を補助・促進しています。(注:表面、裏面ともシールやラベルを剥がすと保証対象外となります)
Samsung SSD 970 PRO (3)Samsung SSD 970 EVO 1TB review_05833_DxO



Samsung SSD 970 EVO 1TBの検証機材と基本仕様

Samsung SSD 970 EVO 1TBの各種検証を行う環境としては、ASRock Z270 SuperCarrierなどで構成されているベンチ機を使用しました。構成の詳細は下記テーブルの通りです。
テストベンチ機の構成
CPU Intel Core i7 7700K
殻割り&クマメタル化(レビュー
Core:5.0GHz, Cache:4.8GHz
CPUクーラー Intel TS15A
メインメモリ Corsair Dominator Platinum
Special Edition
DDR4 8GB*4=32GB (レビュー
3200MHz, 14-16-16-36-CR2
マザーボード
ASRock Z270 SuperCarrier
レビュー
ビデオカード 【基礎性能検証用】
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC
レビュー

【PCゲームロード時間検証用】
EVGA GTX 1080 Ti SC2 iCX
レビュー
システムストレージ
Crucial MX300 SATA M.2 SSD 1TBCT1050MX300SSD4
OS Windows10 Home 64bit
電源ユニット Corsair HX1200i (レビュー
ベンチ板 STREACOM BC1 (レビュー

SSD Test bench


「Samsung SSD 970 EVO 1TB」のボリュームをWindows10上で作成したところ空きスペースは931GBでした。
Samsung 970 EVO 1TB_CDI



Samsung SSD 970 EVO 1TBのベンチマーク比較

「Samsung SSD 970 EVO 1TB」の性能を測るためストレージに関する基本的なベンチマークソフトを使用して測定を行います。比較対象として同じくNVMe M.2 SSDの「Samsung 960 PRO 1TB(レビュー)」と「WD Black 3D NVMe SSD 1TB(レビュー)」と「Intel SSD 760p 512GB(レビュー)」、およびSATA SSDの「Samsung SSD 860 PRO 2TB(レビュー)」でも同様の測定を行いました。

まずはCrystalDiskMark6.0.0(QD32, 8GiB)のベンチマーク結果です。「Samsung SSD 970 EVO 1TB」やその他の比較対象ストレージでは次のようになっています。
「Samsung SSD 970 EVO 1TB」のベンチマークススコアは連続読み出し3500MB/s、連続書き込み2500MB/sとなりました。連続読み出し3000MB/s越えの製品はそれなりに出てきていますが、2500MB/sという連続書き込み速度は18年現在文句なしに最速クラスの製品です。
Samsung 970 EVO 1TB_CDM
Samsung 960 PRO 1TB_CDMWD Black 3D NVMe SSD 1TB_CDM
Intel SSD 760p 512GB_CDMSamsung 860 PRO 2TB_CDM


ATTO Disk Benchmark(512B-64MB, 256MB, QD4)の結果は次のようになっています。「Samsung SSD 970 EVO 1TB」やその他の比較対象ストレージでは次のようになっています。
ATTO Disk Benchmarkはブロックサイズ別のシーケンシャル性能を主にチェックするベンチマークなので4KB~1MBを抜粋してリード/ライト性能をグラフにして比較しました。
「Samsung SSD 970 EVO 1TB」は同じくTLC型3D NANDを採用する競合NVMe M.2 SSDの「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」や「Intel SSD 760p 512GB」と比較してみると、4KB~32KBの小ブロックサイズで読み出し・書き込みともに優秀なアクセススピードを発揮しています。
Samsung SSD 970 EVO 1TB_ATTO_read
Samsung SSD 970 EVO 1TB_ATTO_write
Samsung 970 EVO 1TB_ATTOSamsung 960 PRO 1TB_ATTOWD Black 3D NVMe SSD 1TB_ATTOIntel SSD 760p 512GB_ATTO


AS SSD Benchmark(5GB)の結果は次のようになっています。「Samsung SSD 970 EVO 1TB」やその他の比較対象ストレージでは次のようになっています。
Samsung 970 EVO 1TB_AS
Samsung 960 PRO 1TB_ASWD Black 3D NVMe SSD 1TB_AS
Intel SSD 760p 512GB_AS
Samsung 860 PRO 2TB_AS


PCMark8 ストレージテストのベンチマーク結果は次のようになっています。「Samsung SSD 970 EVO 1TB」やその他の比較対象ストレージでは次のようになっています。
Samsung 970 EVO 1TB_PCM8
Samsung 960 PRO 1TB_PCM8WD Black 3D NVMe SSD 1TB_PCM8
Intel SSD 760p 512GB_PCM8
Samsung 860 PRO 2TB_PCM8



Samsung SSD 970 EVO 1TBの連続書き込みについて

「Samsung SSD 970 EVO 1TB」に連続書き込みを行った場合の動作についてチェックします。
TLC型SSDの多くは書き込み速度の底上げのためSLCキャッシュを使用しているので、キャッシュ容量を超える大容量の書き込みが発生した場合、書き込み速度が階段的にガクッと下がる仕様になっています。例えば600MB/sが理論的な上限速度となるSATA SSDの場合は、動画ファイルなど数十GB以上の単一ファイルの連続書き込みが発生すると、CrystalDiskMarkなどで表示される400~500MB/sの連続書き込み速度を維持できず100~200MB/sまで書き込み速度が下がります。

2.5インチSATA SSDの「Samsung 850 PRO 2TB」やNVMe M.2 SSDの「Samsung 960 PRO 512GB」はMLC型なのでHD Tune Proを使用して100GB以上の大容量な連続書き込みを行っても書き込み速度が下がることはなく、いずれも理想的な書き込み速度を維持しています。
Samsung 850 PRO 2TB_HDT
Samsung 960 PRO 512GB_HDT

一方でSATA SSDの「PNY CS1311 960GB」はSLCキャッシュによる書き込み速度の底上げを行っている典型的なTLC型SSDとなっており、書き込み開始直後は500MB/sの書き込み速度をマークしているものの、全容量960GBに対して1.5%程度の13~15GBを書き込んだ後は300~350MB/sまで書き込み速度が低下します。
PNY SSD 960GB_HDTP
またTLC型の書き込み速度の低下はNVMe SSDでも発生することがあり「Samsung 960 EVO」は3bit-MLC NANDの一部を高速なSLC NANDとして用いて書き込み時にそこを優先的に使用する高速化技術「Intelligent TurboWrite」が使用されているので、SLCキャッシュ容量を超える書き込みが発生するとライト速度が低下します。
Samsung 960 EVO 250GB_HDT

Samsung製TLC型64層3D NANDをメモリチップに採用する「Samsung SSD 970 EVO 1TB」はどのような挙動を見せるのか確認してみたところ、製品仕様でも紹介されているように書き込み開始直後は2500MB/s程度の書き込みスピードを維持していますが、書き込み総量が42GB程度を超えると可変容量な最大SLCキャッシュを上回るため書き込み速度は1200MB/s前後まで減少しました。書き込み速度はキャッシュを超過すると低下するとはいえ、低下後ですら1200MB/sという十分な速さを実現しており、SATA3.0規格の理想的な書き込み速度を2倍以上も上回る高速アクセスを実現しています。競合製品の「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」がキャッシュ超過後1400MB/sなので、これよりは若干遅くなっていますが、「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」のSLCキャッシュ容量は12GBしかないので、4倍近く大容量なSLCキャッシュがある「Samsung SSD 970 EVO 1TB」のほうが実用的な快適さは上回ると思います。
Samsung 970 EVO 1TB_HDT

なおSamsung SSD 970 EVOシリーズのSLCキャッシュ機能「Intelligent TurboWrite」について、容量下位モデルの250GB/500GBでは最大キャッシュ容量12GB/22GBを超過すると書き込み速度が300MBps/600MBps程度まで低下します。大容量書き込み時の書き込み速度を重視するのであれば容量1TB以上のモデルを選択するのがおすすめです。
「Samsung SSD 970 EVO」シリーズ
Intelligent TurboWrite の仕様

容量
250GB 500GB 1TB 2TB
キャッシュ
サイズ
標準 4GB 6GB
可変領域 9GB 18GB 36GB 72GB
最大 12GB 22GB 42GB 78GB
連続書込 キャッシュ内 1500MB/s 2300MB/s 2500MB/s
キャッシュ外 300MB/s 600MB/s 1200MB/s 1250MB/s



Samsung SSD 970 EVO 1TBの温度とサーマルスロットリングについて

NVMe M.2 SSDでは重要になる項目として「Samsung SSD 970 EVO 1TB」の温度とサーマルスロットリングについてチェックしていきます。
アクセススピードが数GB/sに及ぶ高速NVMe接続に対応したM.2 SSDでは、そのコンパクトさゆえに放熱性能には表面積的な限界があり、連続したアクセスが発生するとメモリチップやメモリコントローラーが高温になって速度制限がかかるサーマルスロットリングが発生する可能性があることが知られているので、「Samsung SSD 970 EVO 1TB」について、連続した高速アクセス発生時の温度やサーマルスロットリング発生の有無をモニタリングソフトとサーモグラフィーを使用して検証します。

Samsung SSD 970 EVO 1TBのSSD温度の測定やサーマルスロットリング発生の有無の確認については、ヒートシンクがないPCIE-M.2アダプタ拡張ボードにSSDを装着して検証を行います、
Samsung SSD 970 EVO 1TB review_05842
測定時の検証負荷としては上で行ったベンチマーク測定同様にCrystalDiskMark6.0.0(QD32, 8GiB)を使用して間を置かず複数回ベンチマークをループさせ、その間のSSD温度や読み出し・書き込み速度のモニタリング値をHWinfoを使用してログを取得します。
Samsung 960 PRO 512GB_temp test

Samsung SSD 970 EVO 1TBの検証結果を確認する前に、NVMe M.2 SSDとしてはおそらく18年現在でもいまだにNVMe M.2 SSDとしては最高クラスの性能を誇り、認知度が高く普及している「Samsung 960 PRO 1TB」を比較参考のサンプルとして上記の負荷テストを実行した結果を確認しておきます。
Samsung 960 PRO 1TBで負荷テストを実行した場合のSSD温度とアクセススピードの推移は下のようになっています。Samsung 960 PRO 1TBにはメモリチップとメモリコントローラーの2か所に温度センサーが実装されています。ベンチ2周目でメモコン温度は最大温度の98度、メモリ温度も最大温度に近い60度超をマークします。この状態で複数回ベンチマークを実行しても速度低下は発生せずサーマルスロットリングは発生しません。
Samsung 960 PRO_1TB_temp
サーモグラフィーによって負荷テスト終盤におけるSamsung 960 PRO 512GBのM.2 SSD上の温度を確認してみると、ソフトウェアモニタリング同様に右端に配置されたメモリコントローラーは91度、左半分に配置されたメモリチップは60~70度となっています。
Samsugn 960 PRO _1TB_FLIR


さて本題のSamsung SSD 970 EVO 1TBの温度やサーマルスロットリングの有無についてチェックしていきます。
まずソフトウェアモニタリングによるSamsung SSD 970 EVO 1TBのSSD温度とアクセススピードの推移は下のようになっています。Samsung SSD 970 EVO 1TBに関してはSamsung 960 PRO同様にソフトウェアモニタリングが可能な温度はメモリコントローラーとメモリチップの2種類の温度になっているようです。ベンチマークを複数回繰り返してもサーマルスロットリングによる大幅な速度低下は確認できませんが、2周目ですでにメモリコントローラーの温度は110度に達し、メモリチップも70度を超えておりかなり高温です。Samsung SSD 970 EVO 1TB_temp
負荷テスト終盤におけるSamsung SSD 970 EVO 1TBのサーモグラフィーは下のようになっています。サーモグラフィーでもソフトウェアモニタリング同様に、「Samsung SSD 970 EVO 1TB」の右端にあるメモリコントローラー温度は100度を上回り、左半分に実装されたメモリチップは80度前後になっています。Samsung SSD 970 EVOは前世代の960 PRO/EVOよりもアクセススピードの高速化が実現されていますが、反面、温度という観点から見ると発熱も上昇しているようです。
Samsung SSD 970 EVO 1TB_FLIR


今回の負荷テストではサーマルスロットリングによる大幅な速度低下こそ確認できなかったものの、メモリコントローラーが100度、メモリチップも80度とかなり高温になるので、長期運用における温度原因の故障リスクを最小限にするため、可能であれば、M.2 SSDヒートシンクやヒートシンク付きPCIE拡張ボードの利用をおすすめします。
「AquaComputer kryoM.2 evo/micro」をレビュー
「SilverStone SST-TP02-M2」をレビュー
「kryoM.2 evo」と「kryoM.2 micro」をレビュー SilverStone SST-TP02-M2


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Samsung SSD 970 EVO 1TBの実用性能比較

続いて「Samsung SSD 970 EVO 1TB」で大容量・多数データのコピーやPCゲームのロード時間など実際の使用について性能比較をしてみました。比較対象として同じくNVMe M.2 SSDの「Samsung 960 PRO 1TB(レビュー)」と「WD Black 3D NVMe SSD 1TB(レビュー)」と「Intel SSD 760p 512GB(レビュー)」、およびSATA SSDの「Samsung SSD 860 PRO 2TB(レビュー)」と「Samsung SSD 860 EVO 2TB(レビュー)」でも同様の測定を行いました。

まずはファイルのコピーに関する実性能比較となります。検証に使用するデータとしては次のような80GBで多数のファイルが入ったゲームのフォルダ(The Witcher 3とRise of the tomb Raiderなどのゲームフォルダ)と50GBの動画ファイルの2種類を使用しています。
Copy File
データのコピーにおいては当然ですが、元データのあるストレージの読み出し性能とコピー先の書き込み性能の両方が重要になります。測定においては書き込み先/読み出し元の対象となるストレージが必要になるため、各ストレージのコピー相手にはM.2-PCIE変換アダプタ「Aquacomputer kryoM.2」に設置したSamsung SSD 970 PRO 1TBを使用しています。
Copy_movieCopy_game
なお下で掲載している検証結果の比較グラフにおいて*の添え字が付いているものは、コピー相手にSamsung 960 PRO 512GBを使用しています。SATA3.0 SSDが検証ストレージの場合は、コピー相手がSamsung 960 PRO 512GBとSamsung SSD 970 PRO 1TBのどちらであっても動画ファイルおよびゲームフォルダのコピー速度に大きな差はありません。

コピーテストにおいて検証ストレージがコピー相手の「Samsung SSD 970 PRO 1TB」と同じくNVMe SSDの場合は、ASRock Z270 SuperCarrierの1段目PCI-Eスロットにグラフィックボード、3段目PCI-Eスロットにコピー相手「Samsung SSD 970 PRO 1TB」、5段目PCI-Eスロットに検証ストレージを装着しています。
Copy_NVMe-NVMe
Z270プラットフォームではCPU-チップセット間のDIMM3.0の帯域がボトルネックになって複数のNVMe SSDへ同時にアクセスが発生するとトータルのアクセススピードが4GB/s程度に制限される場合がありますが、ASRock Z270 SuperCarrierではPLXスイッチチップを介するもののCPU直結PCI-Eレーンに接続されているので、この問題は発生しません。
Copy_NVMe-NVMe


「Samsung SSD 970 EVO 1TB」など各種検証ストレージとSamsung SSD 970 PRO 1TBとの間で50GBの動画ファイルおよび80GBのゲームフォルダをコピーした時間の比較結果は次のようになりました。
まずは50GBの動画ファイルのコピーについてですが、動画ファイルは単一の大容量ファイルなので実際のコピーではベンチマークのシーケンシャルリード・ライト性能が重要になってきます。

Samsung SSD 970 EVO 1TBは動画ファイルのコピー読み出しにおいてSamsung 960 PRO 1TBよりも若干遅れて所要時間で25秒となっています。「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」や「Intel SSD 760p 512GB」など18年最新NVMe M.2 SSDについてはほぼ横並びの結果です。Samsung SSD 970 EVO 1TBはPCI-E3.0x4帯域のNVMe接続に対応した高速SSDなので、SATA3.0接続のSSDと比較すると3倍以上高速な読み出し速度を実現しており、読み出し速度は2000MB/s程度となっています。Samsung SSD 970 EVO 1TB_copy_movie_read
動画ファイルのコピー書き込みについてチェックしてみると、前世代最上位のSamsung 960 PRO 1TBよりも少し高速で、「Samsung SSD 970 EVO 1TB」のコピー書き込み時間は25秒ほどとなり今回の検証ストレージ中では最速の結果となっています。Samsung SSD 970 EVO 1TB_copy_movie_write
ただし、Samsung SSD 970 EVOは前章でも解説したようにTLC型SSDなので、1TBモデルの場合は最大42GB程度のSLCキャッシュを超過した後は書き込み速度が1200MB/sまで低下します。今回は検証に使用したコピーデータのサイズが50GBだったので、ほぼ全てのデータがキャッシュ内2500MB/sで転送されたためこのような結果になりましたが、データサイズが大きくなるにつれて、2100MB/sのSamsung 960 PRO 1TBやキャッシュ外1400MB/sのWD Black 3D NVMe SSD 1TBとの差は埋まり、最終的には追い抜かれるので注意してください。
Copy_movieSamsung 970 EVO 1TB_Copy (2)

続いてゲームフォルダのコピーについてですが、ゲームフォルダは大小様々なファイルを含むので、実際のコピーではベンチマークの連続性能だけでなく、ランダム性能も重要になってきます。
Samsung SSD 970 EVO 1TBはゲームフォルダのコピー読み出しにおいてSamsung 960 PRO 1TBよりも2秒ほどですが高速な結果になりました。若干ランダム性能が効いてくるワークロードなのでATTOベンチマークに出ていた小ブロックサイズ時の転送の速さが効いてSamsung 960 PRO 1TBよりも若干短いコピー時間になったのだと思います。やはり動画ファイルのコピー読み出し同様にSATA3.0 SSDよりも3倍も高速な読み出し速度です。Samsung SSD 970 EVO 1TB_copy_game_read
Samsung SSD 970 EVO 1TBのゲームフォルダのコピー書き込み速度についてみてみると、今回はSamsung SSD 970 EVO 1TBの最大キャッシュ容量42GBの倍近い計80GBのデータコピーのため、コピー書き込み速度はSamsung 960 PRO 1TB、WD Black 3D NVMe SSD 1TB、Samsung SSD 970 EVO 1TBの順番でキャッシュ外における書き込み速度が反映された結果になっています。Samsung SSD 970 EVO 1TB_copy_game_write


続いて実際にPCゲームのロード時間も比較してみました。
The Witcher 3ではグラフィック設定をフルHD解像度・最高設定としてノヴィグラドの広場からトゥサンのコルヴォ・ビアンコブドウ園までのファストトラベル時のロード時間を比較しています。


Rise of the Tomb RaiderではフルHD解像度においてグラフィック設定をDirectX12で個別に最高設定として製鋼所の空き地までのファストトラベル時のロード時間を比較しています。


以上の条件で「Samsung SSD 970 EVO 1TB」など各ストレージについてゲームのロード時間比較を行った結果は次のようになりました。
ロード時間を測定して比較してみたところコンマ秒で差がある可能性はあるものの「Samsung SSD 970 EVO 1TB」含めて各SSDでは大きな差は確認できませんでした。
Samsung SSD 970 EVO 1TB_game_1
しかしながらFinal Fantasy XV PC版で4K以上の超高解像度向けに無料配布されている「FFXV WINDOWS EDITION 4K Resolution Pack」を使用して4K解像度・最高グラフィック設定で、『スタートメニューのロード画面からハンマーヘッドまで(FF15_1)』および『ハンマーヘッドからレスタルムまでファストトラベル(FF15_2)』の2つについてロード時間を確認してみたところ、NVMe(PCIE3.0x4)SSDの「Samsung SSD 970 EVO 1TB」とSATA3.0 SSDとの間でロード時間に差が確認できました。今後PCゲームが高解像度・高画質化してテクスチャなどのゲームデータが大きくなっていけば、NVMe SSDがSATA SSDよりもゲームのロード時間で明確に優位に立つかもしれません。
Samsung SSD 970 EVO 1TB_game_2



Samsung SSD 970 EVO 1TBのレビューまとめ

最後にSamsung製3bit MLC型64層V-NANDメモリチップを採用するNVMe M.2 SSD「Samsung SSD 970 EVO 1TB(型番:MZ-V7E1T0BW)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ
  • NVMe規格として理想的な連続読み出し3500MB/sと連続書き込み2500MB/s(最大)
  • 1TB/2TBモデルは大容量書き込みで速度低下しても書き込み速度1200MB/sで高速
  • ランダム読み出しとランダム書き込みも高速
  • TLC型なので高速NVMe M.2 SSDとしては安価な価格帯
  • 前世代860 EVOよりも1.5倍の書き込み耐性(TBW)
  • メーカー正規保証期間が5年間
悪いところor注意点
  • TLC型なので大容量の連続書き込みではSLCキャッシュ超過後に速度低下が発生する
    250GBは300MB/s、500GBは600MB/s、1TBは1200MB/s、2TBは1250MB/s
  • 連続して負荷がかかった時のメモコンやメモリチップの温度は高め


「Samsung SSD 970 EVO 1TB」を検証してみたところ、基礎的な各種ベンチマークの多くではNVMe M.2 SSDとしては発売から2年たっても余裕で現役かつ最速クラスなSamsung 960 PROに迫る性能です。「Samsung SSD 970 EVO 1TB」はTLC型なので大容量データの書き込みでこそ遅れを取るものの、ランダム性のある読み出しではSamsung 960 PROを上回るという非常に優れたアクセススピードを発揮し、さらに書き込み耐性も前世代のSamsung 960 EVOより1.5倍に増えて耐久性が向上し、メインストリーム向け高速NVMe M.2 SSDとしては安価で手を伸ばしやすい定番モデルの1つとして非常に高い完成度に仕上がっています。

Samsung SSD 970 EVO 1TBにはTLCタイプのSamsung製64層3D NANDメモリが採用されているので、多くのTLC型SSDと同様の特徴が大容量書き込み時にでており、今回検証した1TBモデルでは容量可変で最大42GB程度のSLCキャッシュを超える書き込みアクセスでは理想値2500MB/sから1200MB/sまで書き込み速度が低下します。とはいえSATA3.0規格の理想的な書き込み速度の2倍なので十分高速です。また単純にキャッシュ外の書き込み速度を見ると競合他社よりも遅い場合はありますが、キャッシュ容量が42GBと競合製品よりも大きいので、実用上の快適性ではSamsung SSD 970 EVOの方が上回る場面が多いのではないかと思います。

ただし容量下位モデルの250GBと500GBではキャッシュ外の書き込み速度が300MB/sと600MB/sになっており、1TB/2TBモデルのスペックと比較すると見劣りします。NVMe SSDである以上、SATA3.0 SSDよりは高速な動作を期待したいところなので、キャッシュ内速度のスペックにも差があることを踏まえて、最低でも500GBモデルを選択するのが管理人的にはおすすめです。

前世代よりも高速・高耐久・安価と隙のなさそうなSamsung SSD 970 EVOシリーズですが、唯一、高速化の代償として負荷時の温度を見ると前世代960 PRO/EVOよりも高温になっています。今回の検証において連続して高負荷がかかった場合にはメモリコントローラーが100度、メモリチップが80度に達するケースも確認できたので、M.2 SSDヒートシンク等を使用して放熱の強化は図りたいところです。

前世代から順当にブラッシュアップを果たし、速くて丈夫で安いと3拍子揃ったSamsung SSD 970 EVOシリーズは、250/500GBモデルをシステムストレージにするもよし、1TBモデルをメインストレージにするもよし、2TBモデルを奮発してゲーム用大容量ストレージにするもよし、と容量バリエーションにも富んだ自作erの強い味方なので、18年最新メインストリーム向けNVMe M.2 SSDとしてはおすすめ製品の1つです。

以上、「Samsung SSD 970 EVO 1TB」のレビューでした。
Samsung SSD 970 EVO 1TB




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