Crucial P1 1TB


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Micron製QLC型64層3D NANDメモリチップの採用によって現行最新のSATA3.0 SSDに近い容量単価で3倍高速なアクセススピードを実現する新型NVMe M.2 SSD「Crucial P1」シリーズから、容量1TBモデル「Crucial P1 1TB(型番:CT1000P1SSD8JP)」のサンプル機をメーカーよりご提供いただけたのでレビューしていきます。
Crucial P1 1TB review_04150_DxO

製品公式ページ:http://www.crucial.jp/jpn/ja/storage-ssd-p1
データシート:https://content.crucial.com/content/dam/crucial/ssd-products/p1/flyer/crucial-p1-nvme-m2-ssd-productflyer_ja-jp.pdf

Crucial P1 (1)Crucial P1 (2)




Crucial P1 1TB レビュー目次


1.Crucial P1について
2.Crucial P1 1TBの外観
3.Crucial P1 1TBの検証機材と基本仕様
4.Crucial P1 1TBのベンチマーク比較
5.Crucial P1 1TBの連続書き込みについて
6.Crucial P1 1TBの温度とサーマルスロットリングについて
7.Crucial P1 1TBの実用性能比較
8.Crucial P1 1TBのレビューまとめ



Crucial P1について

「Crucial P1」シリーズはメモリチップにMicron製QLC型64層3D NAND、メモリコントローラーにSIlicon Motion製SMI 2263 controllerが採用された、M2 2280フォームファクタでNVMe(PCIE3.0x4)接続のM.2 SSDです。容量は500GB/1TB/2TBの3モデルがラインナップされています。500GBと1TBの2モデルは片面実装ですが、2TBは背面にも2枚のメモリチップが実装された両面実装です。

1つのメモリセルに4bit記録を行うQLC型NANDを採用した製品となっており、マルチビットセル化が進行するほど、書き換え可能回数や耐久性評価が下がりますが、1セル当たりのデータ格納が3bit(8値)から4bit(16値)に増えているので既存のTLC型NANDを採用したNVMe M.2 SSDと比較して半分近い容量単価を実現しています。

「Crucial P1」シリーズのアクセススピードは容量によって若干異なりますが、Crucial独自のSLCキャッシュ実装技術「Hybrid Dynamic Write Acceleration」によって、最大でシーケンシャル読出2000MB/s、シーケンシャル書込1750MB/s、ランダム読出250,000 IOPS、ランダム書込250,000 IOPSの高速アクセスを実現しています。
「Crucial P1」シリーズのMTBFは150万時間、書込耐性は500GBが100TBW、1TBが200TBW、2TBが200TBWとなっており、メーカーによる製品保証期間は5年間です。

Crucial P1 スペック一覧
容量 500GB
型番:CT500P1SSD8JP
1TB
型番:CT1000P1SSD8JP
2TB
型番:CT2000P1SSD8JP
メモリー Micron製 QLC型 64層3D NAND
メモリコントローラー Silicon Motion SM2263
DRAMキャッシュ 512MB DDR3 1GB DDR3 2GB DDR3
連続読出 1900MB/s 2000MB/s
連続書込 950MB/s 1700MB/s 1750MB/s
4Kランダム読出 90,000 IOPS 170,000 IOPS 250,000 IOPS
4Kランダム書込 220,000 IOPS 240,000 IOPS 250,000 IOPS
消費電力(max / idle) 8W / 2mW (PS4), 80mW (PS3)
動作温度範囲 0°C~70°C
MTBF 150万時間
耐久性評価 100TBW 200TBW 200TBW
保証期間 メーカー5年



Crucial P1 1TBの外観

まず最初にCrucial P1 1TBの外観や付属品について簡単にチェックしておきます。
Crucial P1シリーズのM.2 SSD本体のデザインについては普通にM.2 2280フォームファクタのM.2 SSDです。PCB基板は黒色になっています。Crucial P1シリーズの表面には右端にメモリコントローラー、その左下にDRAMキャッシュ、さらに左側には2枚のメモリチップが実装されています。
Crucial P1 1TB review_04154_DxO
メモリコントローラーには放熱補助のため薄い銅製プレートが貼られていました。
Crucial P1 1TB review_04156_DxO
「Crucial P1」シリーズの512GBモデルと1TBモデルは片面実装ですが、最大容量の2TBモデルは背面に1枚のDRAMキャッシュと2枚もメモリチップを搭載する両面実装になっています。
Crucial P1 1TB review_04153_DxO



Crucial P1 1TBの検証機材と基本仕様

Crucial P1 1TBの各種検証を行う環境としては、ASRock Z270 SuperCarrierなどで構成されているベンチ機を使用しました。構成の詳細は下記テーブルの通りです。
テストベンチ機の構成
CPU Intel Core i7 7700K
殻割り&クマメタル化(レビュー
Core:5.0GHz, Cache:4.8GHz
CPUクーラー Intel TS15A
メインメモリ Corsair Dominator Platinum
Special Edition
DDR4 8GB*4=32GB (レビュー
3200MHz, 14-16-16-36-CR2
マザーボード
ASRock Z270 SuperCarrier
レビュー
ビデオカード 【基礎性能検証用】
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC
レビュー

【PCゲームロード時間検証用】
EVGA GTX 1080 Ti SC2 iCX
レビュー
システムストレージ
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB
MZ-N6E1T0B/IT (レビュー
OS Windows10 Home 64bit
電源ユニット Corsair HX1200i (レビュー
ベンチ板 STREACOM BC1 (レビュー

ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製3bit-MLC型64層V-NANDのメモリチップを採用するメインストリーム向け最新SATA接続M.2 SSD「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」を使用しています。「Samsung SSD 860 EVO M.2」は2.5インチSATA SSDと同等のパフォーマンスをケーブルレスで発揮できる手軽さが魅力です。Samsung SSD 860 EVOシリーズの容量1TB以上のモデルは大容量データの連続書き込みにおける書き込み速度の低下というTLC型SSDの欠点も解消されているので、大容量ファイルをまとめて入れても余裕のあるメインストレージとしてお勧めのSSDです。
「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」をレビュー
Samsung 860 EVO M.2 1TB

SSD Test bench

「Crucial P1 1TB」のボリュームをWindows10上で作成したところ空きスペースは931GBでした。
Crucial P1 1TB_CDI


Crucial P1 1TBのベンチマーク比較

「Crucial P1 1TB」の性能を測るためストレージに関する基本的なベンチマークソフトを使用して測定を行います。比較対象として同じくNVMe M.2 SSDの「Intel SSD 660p 1TB(レビュー)」と「Samsung 970 EVO 1TB(レビュー)」と「WD Black 3D NVMe SSD 1TB(レビュー)」と「Intel SSD 760p 512GB(レビュー)」、およびSATA SSDの「SanDisk SSD Ultra 3D 2TB(レビュー)」でも同様の測定を行いました。

まずはCrystalDiskMark6.0.0(QD32, 8GiB)のベンチマーク結果です。「Crucial P1 1TB」やその他の比較対象ストレージでは次のようになっています。
「Crucial P1 1TB」のシーケンシャル性能について読み出し速度と書き込み速度ともに仕様値通り1800MB/sから2000MB/s前後に達しています。18年最新の64層3D NANDを採用したNVMe M.2 SSDでは3GB/sに達する製品もあり、それらと比較すると若干低めではあるものの、SATA3.0 SSDの3倍以上のスピードなので十分に高速です。
Crucial P1 1TB_CDMCrucial P1 1TB_CDM
Samsung 970 EVO 1TB_CDMWD Black 3D NVMe SSD 1TB_CDM
Intel SSD 760p 512GB_CDMSanDisk 3D SSD 2TB_CDM


ATTO Disk Benchmark(512B-64MB, 256MB, QD4)のベンチマーク結果です。「Crucial P1 1TB」やその他の比較対象ストレージでは次のようになっています。
ATTO Disk Benchmarkはブロックサイズ別のシーケンシャル性能を主にチェックするベンチマークなので4KB~1MBを抜粋してリード/ライト性能をグラフにして比較しました。
Crucial P1 1TB_ATTO_read
Crucial P1 1TB_ATTO_write
Crucial P1 1TB_ATTOCrucial P1 1TB_ATTOSamsung 970 EVO 1TB_ATTOWD Black 3D NVMe SSD 1TB_ATTO


AS SSD Benchmark(5GB)のベンチマーク結果です。「Crucial P1 1TB」やその他の比較対象ストレージでは次のようになっています。
Crucial P1 1TB_AS
Crucial P1 1TB_AS
Samsung 970 EVO 1TB_ASWD Black 3D NVMe SSD 1TB_AS
Intel SSD 760p 512GB_ASSanDisk 3D SSD 2TB_AS

Adobe Photoshop、Office、PCゲームなど実際のアプリケーションによって各ストレージの動作速度を測定するベンチマーク PCMark8 ストレージテストのベンチマーク結果は次のようになっています。「Corsair Force MP510 960GB」やその他の比較対象ストレージについて総合スコアを一覧で比較しました。
Crucial P1 1TB_PCM8_c
Crucial P1 1TB_PCM8
Crucial P1 1TB_PCM8
Samsung 970 EVO 1TB_PCM8WD Black 3D NVMe SSD 1TB_PCM8
Intel SSD 760p 512GB_PCM8SanDisk 3D SSD 2TB_PCM8



Crucial P1 1TBの連続書き込みについて

「Crucial P1 1TB」に連続書き込みを行った場合の動作についてチェックします。
TLC NANDやQLC NANDと呼ばれる3bit以上のマルチセルを構築しているNANDを採用するSSDでは書き込み速度の底上げのため、NANDメモリの一部を高速なSLCキャッシュ化する機能を採用しているので、キャッシュ容量を超える大容量の書き込みが発生した場合、書き込み速度が階段的にガクッと下がる仕様になっています。例えば600MB/sが理論的な上限速度となるSATA SSDの場合は、動画ファイルなど数十GB以上の単一ファイルの連続書き込みが発生すると、CrystalDiskMarkなどベンチマークソフトで表示される500MB/s程度の連続書き込み速度を維持できず100~200MB/sまで書き込み速度が低下します。

2.5インチSATA SSDの「Samsung 860 PRO 2TB(レビュー)」やNVMe M.2 SSDの「Samsung 970 PRO 1TB(レビュー)」はMLC型なのでHD Tune Proを使用して100GB以上の大容量な連続書き込みを行っても書き込み速度が下がることはなく、いずれも理想的な書き込み速度を維持しています。
Samsung 970 PRO 1TB_HDT

一方でSATA SSDの「PNY CS1311 960GB」はSLCキャッシュによる書き込み速度の底上げを行っている典型的なTLC型SSDとなっており、書き込み開始直後は500MB/sの書き込み速度をマークしているものの、全容量960GBに対して1.5%程度の13~15GBを書き込んだ後は300~350MB/sまで書き込み速度が低下します。
PNY SSD 960GB_HDTP
なお「Samsung SSD 860 EVO(レビュー)」「WD Blue 3D NAND SATA SSD(レビュー)」「SanDisk SSD Ultra 3D(レビュー)」など、64層3D NANDを採用している18年最新のTLC型SATA SSDで、かつ容量が1TB以上の大容量モデルでは書き込み速度の低下は解消されています。(SATA3.0規格の速度上限が先にくるので)
SanDisk 3D SSD 2TB_HDTP
TLC型の書き込み速度の低下はNVMe SSDでも発生することがあり「Samsung 970 EVO 1TB(レビュー)」は3bit-MLC NAND(TLC NAND)の一部を高速なSLC NANDとして用いて書き込み時にそこを優先的に使用する高速化技術「Intelligent TurboWrite」が使用されているので、SLCキャッシュ容量を超える書き込みが発生すると書き込み速度が低下します。
Samsung 970 EVO 1TB_HDT

Micron製QLC型64層3D NANDをメモリチップに採用する「Crucial P1 1TB」はどのような挙動を見せるのか確認してみたところ、書き込み開始から書き込み総量が130GBを超えるあたりまでは仕様値通り1600MB/s程度の書き込みスピードを維持していますが、書き込み総量がSLCキャッシュを超過すると書き込み速度は100MB/s前後まで大幅に低下しました。
4bitのマルチビットセルであるQLC NANDを採用した一般向けSSDはCrucial P1やIntel SSD 660pなので、サンプルが少なく断言はできませんが、マルチビットセル化が進むほど書き込み速度の低下の度合いは大きくなるように思えます。
Crucial P1 1TB_HDT
QLC型SSDはTLC型SSDと比較してもキャッシュ外書き込み速度が大幅に遅いので、50GBから100GBという非常に大きいSLCキャッシュが確保されていますが、実際のSLCキャッシュ容量はSSDの使用済み容量に依存して動的に変動する形が採用されています。そこで使用済み容量に対する実効SLCキャッシュ容量(理想的な連続書き込みに対して速度低下が発生するまでの書き込み容量)を上と同様に測定し、グラフ化しました。
QLC型NANDを採用したSSDは18年11月現在、Crucial P1シリーズ以外にIntel SSD 660pシリーズが発売されていますが、それぞれの同容量モデルで使用容量に対する実効SLCキャッシュ容量を比較すると、「Crucial P1 1TB」のほうが全域に渡ってSLCキャッシュが多く確保されており使い勝手が良いことがわかりました。
Crucial P1 1TB_SLC cache
SLCキャッシュ超過後の書き込み速度は100MB/s程度とかなりエグい速度低下を起こしていますが、1TBモデルならストレージ使用容量600GBまでは実効100GB以上のSLCキャッシュが備わっているので、一般的な用途ではSLCキャッシュを超過するような場面に出くわすことはないと思います。ただし最も容量の小さい500GBはSLCキャッシュが実効60GB程度になると予想されるのでので一般ユースでも超過する可能性がありそうです。SLCキャッシュ容量から考えてCrucial P1シリーズを購入するのであれば1TBモデルか2TBモデルをおすすめします。



Crucial P1 1TBの温度とサーマルスロットリングについて

NVMe M.2 SSDでは重要になる項目として「Crucial P1 1TB」の温度とサーマルスロットリングについてチェックしていきます。
アクセススピードが数GB/sに及ぶ高速NVMe接続に対応したM.2 SSDでは、そのコンパクトさゆえに放熱性能には表面積的な限界があり、連続したアクセスが発生するとメモリチップやメモリコントローラーが高温になって速度制限がかかるサーマルスロットリングが発生する可能性があることが知られているので、「Crucial P1 1TB」について、連続した高速アクセス発生時の温度やサーマルスロットリング発生の有無をモニタリングソフトとサーモグラフィーを使用して検証します。

Crucial P1 1TBのSSD温度の測定やサーマルスロットリング発生の有無の確認については、ヒートシンクがないPCIE-M.2アダプタ拡張ボードにSSDを装着して検証を行います、
Crucial P1 1TB review_04251
測定時の検証負荷としては上で行ったベンチマーク測定同様にCrystalDiskMark6.0.0(QD32, 8GiB)を使用して間を置かず複数回ベンチマークをループさせ、その間のSSD温度や読み出し・書き込み速度のモニタリング値をHWinfoを使用してログを取得します。
Samsung 960 PRO 512GB_temp test

Crucial P1 1TBの検証結果を確認する前に、NVMe M.2 SSDとしてはおそらく18年現在でもいまだにNVMe M.2 SSDとしては最高クラスの性能を誇り、認知度が高く普及している「Samsung 960 PRO 1TB」を比較参考のサンプルとして上記の負荷テストを実行した結果を確認しておきます。
Samsung 960 PRO 1TBで負荷テストを実行した場合のSSD温度とアクセススピードの推移は下のようになっています。Samsung 960 PRO 1TBにはメモリチップとメモリコントローラーの2か所に温度センサーが実装されています。ベンチ2周目でメモコン温度は最大温度の98度、メモリ温度も最大温度に近い60度超をマークします。この状態で複数回ベンチマークを実行しても速度低下は発生せずサーマルスロットリングは発生しません。
Samsung 960 PRO_1TB_temp
サーモグラフィーによって負荷テスト終盤におけるSamsung 960 PRO 1TBのM.2 SSD上の温度を確認してみると、ソフトウェアモニタリング同様に右端に配置されたメモリコントローラーは91度、左半分に配置されたメモリチップは60~70度となっています。
Samsugn 960 PRO _1TB_FLIR


さて本題のCrucial P1 1TBの温度やサーマルスロットリングの有無についてチェックしていきます。
まずソフトウェアモニタリングによるCrucial P1 1TBのSSD温度とアクセススピードの推移は下のようになっています。Crucial P1 1TBに関してはソフトウェアモニタリングが可能な温度は3種類あり(うち2つはほぼ同じ温度)、それぞれメモリコントローラーとメモリチップ/DRAMキャッシュの温度を指しているようです。ソフトウェアモニタリング上の温度ではメモリコントローラは最大で94度、メモリチップは最大で63度を示していますが、ベンチマークを複数回繰り返してもサーマルスロットリングによる速度低下は全く確認できません。
Crucial P1 1TB_temp
負荷テスト終盤におけるCrucial P1 1TBのサーモグラフィーは下のようになっています。「Crucial P1 1TB」の右端にあるメモリコントローラー温度は80度前後で(サーモグラフィの撮影タイミングが悪く若干低めの温度が出ている)、左下のDRAMキャッシュが60~70度、メモリチップも50~60度前後でした。メモリコントローラーやそれに近いDRAMキャッシュは高温ですが、メモリチップは18年最新のNVMe M.2 SSDの温度としてはやや低温な部類です。
Crucial P1 1TB_FLIR (1)
ちなみに同じくQLC型SSDのIntel SSD 660p 1TBもほとんど似たような温度分布でした。
Crucial P1 1TB_FLIR

今回の負荷テストではサーマルスロットリングによる速度低下は確認できず、3GB/sを超えるようなNVMe M.2 SSDと比較すると全体的に低温でしたが、それでもCrucial P1 1TBのメモリコントローラーは80~90度に達しているので、長期運用における温度原因の故障リスクを最小限にするため、可能であれば、M.2 SSDヒートシンクやヒートシンク付きPCIE拡張ボードの利用をおすすめします。
「AquaComputer kryoM.2 evo/micro」をレビュー
「SilverStone SST-TP02-M2」をレビュー

「kryoM.2 evo」と「kryoM.2 micro」をレビュー SilverStone SST-TP02-M2



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Crucial P1 1TBの実用性能比較

続いて「Crucial P1 1TB」で大容量・多数データのコピーやPCゲームのロード時間など実際の使用について性能比較をしてみました。比較対象として同じくNVMe M.2 SSDの「Samsung 960 EVO 1TB(レビュー)」と「WD Black 3D NVMe SSD 1TB(レビュー)」と「Intel SSD 760p 512GB(レビュー)」、およびSATA SSDの「SanDisk SSD Ultra 3D 2TB(レビュー)」と「PNY CS1311 960GB」でも同様の測定を行いました。

まずはファイルのコピーに関する実性能比較となります。検証に使用するデータとしては次のような80GBで多数のファイルが入ったゲームのフォルダ(The Witcher 3とRise of the tomb Raiderなどのゲームフォルダ)と50GBの動画ファイルの2種類を使用しています。
Copy File
データのコピーにおいては当然ですが、元データのあるストレージの読み出し性能とコピー先の書き込み性能の両方が重要になります。測定においては書き込み先/読み出し元の対象となるストレージが必要になるため、各ストレージのコピー相手にはM.2-PCIE変換アダプタ「Aquacomputer kryoM.2」に設置したSamsung SSD 970 PRO 1TBを使用しています。
Copy_movieCopy_game

「Samsung SSD 970 PRO 1TB」をレビュー
Samsung SSD 970 PRO 1TB

なお下で掲載している検証結果の比較グラフにおいて*の添え字が付いているものは、コピー相手にSamsung 960 PRO 512GBを使用しています。SATA3.0 SSDが検証ストレージの場合は、コピー相手がSamsung 960 PRO 512GBとSamsung SSD 970 PRO 1TBのどちらであっても動画ファイルおよびゲームフォルダのコピー速度に大きな差はありません。

コピーテストにおいて検証ストレージがコピー相手の「Samsung SSD 970 PRO 1TB」と同じくNVMe SSDの場合は、ASRock Z270 SuperCarrierの1段目PCI-Eスロットにグラフィックボード、3段目PCI-Eスロットにコピー相手「Samsung SSD 970 PRO 1TB」、5段目PCI-Eスロットに検証ストレージを装着しています。
Copy_NVMe-NVMe
Z270プラットフォームではCPU-チップセット間のDIMM3.0の帯域がボトルネックになって複数のNVMe SSDへ同時にアクセスが発生するとトータルのアクセススピードが4GB/s程度に制限される場合がありますが、ASRock Z270 SuperCarrierではPLXスイッチチップを介するものの、各NVMeストレージはCPU直結PCI-Eレーンに接続されているので、この問題は発生しません。
Copy_NVMe-NVMe


「Crucial P1 1TB」など各種検証ストレージとSamsung SSD 970 PRO 1TBとの間で50GBの動画ファイルおよび80GBのゲームフォルダをコピーした時間の比較結果は次のようになりました。
まずは50GBの動画ファイルのコピーについてですが、動画ファイルは単一の大容量ファイルなので実際のコピーではベンチマークのシーケンシャルリード・ライト性能が重要になってきます。
Crucial P1 1TBは動画ファイルのコピー読み出しにおいては、同じく18年最新のTLC型NVMe M.2 SSDである「Samsung SSD 970 EVO」「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」「Intel SSD 760p 512GB」などと比較すると、ベンチマークのシーケンシャル性能同様に1.5倍程度の所要時間となっています。とはいえSATA3.0接続のSSDと比較すると2倍以上高速な読み出し速度を実現しており、読み出し速度は1200MB/s程度となっています。
Crucial P1 1TB_copy_movie_read
動画ファイルのコピー書き込みについてチェックしてみると、「Crucial P1 1TB」のコピー書き込み時間は35秒ほどとなりました。「Crucial P1 1TB」はSLCキャッシュが十分に大きいので、Intel SSD 760p 512GBのようにSLCキャッシュが小さくて超過後の書き込み速度が遅いTLC型SSDと比較すると、2倍以上高速なコピー時間になっています。
Crucial P1 1TB_copy_movie_write

続いてゲームフォルダのコピーについてですが、ゲームフォルダは大小様々なファイルを含むので、実際のコピーではベンチマークの連続性能だけでなく、ランダム性能も重要になってきます。
Crucial P1 1TBはゲームフォルダのコピー読み出しにおいて、若干ランダム性能が効いてくるワークロードではありますが、動画ファイルのコピー読み出しに比べると、TLC型NVMe M.2 SSDとの差はかなり小さくなっています。やはりSATA3.0 SSDよりも2倍以上の高速な読み出し速度です。
Crucial P1 1TB_copy_game_read
Crucial P1 1TBのゲームフォルダのコピー書き込み速度についてみてみると、100GBの大容量なSLCキャッシュによる高速書き込みが効いてくるので、「Intel SSD 760p 512GB」よりも2倍近く高速かつ、「Samsung SSD 970 EVO」や「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」並みのコピー書き込み速度を実現しています。
Crucial P1 1TB_copy_game_write


続いて実際にPCゲームのロード時間も比較してみました。
The Witcher 3ではグラフィック設定をフルHD解像度・最高設定としてノヴィグラドの広場からトゥサンのコルヴォ・ビアンコブドウ園までのファストトラベル時のロード時間を比較しています。


Rise of the Tomb RaiderではフルHD解像度においてグラフィック設定をDirectX12で個別に最高設定として製鋼所の空き地までのファストトラベル時のロード時間を比較しています。


Final Fantasy XV PC版では4K以上の超高解像度向けに無料配布されている「FFXV WINDOWS EDITION 4K Resolution Pack」を使用して4K解像度・最高グラフィック設定で、『スタートメニューのロード画面からハンマーヘッドまで(FF15_1)』についてロード時間を比較しています。


以上の条件で「Crucial P1 1TB」など各ストレージについてゲームのロード時間比較を行った結果は次のようになりました。
ロード時間を測定して比較してみたところThe Witcher 3とRise of the Tomb Raiderではコンマ秒で差がある可能性はあるものの「Crucial P1 1TB」含めて各SSDでは大きな差は確認できませんでした。
一方、Final Fantasy XV PC版ではNVMe(PCIE3.0x4)SSDの「Crucial P1 1TB」とSATA3.0 SSDとの間に若干ではありますが、ロード時間に差が確認できました。今後PCゲームが高解像度・高画質化してテクスチャなどのゲームデータが大きくなっていけば、NVMe SSDがSATA SSDよりもゲームのロード時間で明確に優位に立つかもしれません
Crucial P1 1TB_game



Crucial P1 1TBのレビューまとめ

最後にMicron製QLC型64層3D NANDメモリチップを採用するNVMe M.2 SSD「Crucial P1 1TB(CT1000P1SSD8JP)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ
  • SATA3.0を3倍以上も上回る連続リード・ライト1800MB/s
  • QLC型NAND採用によって、現在普及しているTLC型NVMe M.2 SSDの半分の容量単価
  • SATA SSDに近い容量単価でSATA SSDより3倍高速
  • NVMe M.2 SSDとしては連続性能が低めなので温度も比較的低め
  • メーカー正規保証期間が5年間
悪いところor注意点
  • QLC型なので大容量の連続書き込みでは速度低下が発生する
    1TBモデルのキャッシュ外書き込み速度は100MB/s
  • SLCキャッシュは総容量の10%前後なので1TBモデルか2TBモデルを推奨
  • QLC型なので書き込み耐性(TBW)はTLC型の半分以下 (MTBFは同程度)

「Crucial P1 1TB」を検証してみたところ、同製品はQLC型NANDを採用するNVMe M.2 SSDとなっており、仕様値通りシーケンシャル性能は18年最新のTLC型NVMe M.2 SSDに劣りますが、実アプリケーション性能を測定するベンチマークのPCMark 8 ストレージテストでは18年最新のTLC型NVMe M.2 SSDのSamsung SSD 970 EVOやWD Black 3D NVMe SSDと同等のパフォーマンスを発揮しました。
実際のファイルコピーテストにおいては、ここ数か月での値下がりが大きく同等とまではいかなくなりましたが、それでも容量単価の近い最新のSATA3.0 SSDを2倍以上も上回るコピー速度を実現しており、コストパフォーマンスの高い高速NVMe M.2 SSDとしてCrucial P1シリーズは非常に魅力的な製品です。

Crucial P1 1TBには4bitマルチセルのQLCタイプのMicron製64層3D NANDが採用されていますが、3bitマルチセルのTLC型SSDと同様の特徴が大容量書き込み時にでており、今回検証した1TBモデルでは実効130GB程度のSLCキャッシュを超える書き込みアクセスでは理想値1800MB/sから100MB/sまで書き込み速度が大幅に急落しました。
Crucial P1のSLCキャッシュ容量はストレージ使用済み容量に依存して動的に変化しますが1TBモデルであれば600GBまで使用しても100GB以上のSLCキャッシュが使用できるので、一般ユースで超過することがないであろうSLCキャッシュを備えた1TBモデルか2TBモデルが管理人的にはおすすめです。

QLC NANDの弱点として仕様上の書き込み耐性の低さが気になるところですが、実際にTLC型に比べて書き込み不可の故障発生が早いのかどうかは経過観察を要すると思います。Crucial P1の1TB/2TBモデルは100GBを超える大容量なSLCキャッシュを搭載しているので大容量データの書き込みが現行のTLC型SSDと比較して地味に強いので、実際の書き込み耐性がどの程度確保されているのかは気になるところです。

「Crucial P1」は一般向けSSDとしては世界初のQLC NANDメモリを採用した製品の1つで、現行最新のSATA3.0 SSD並みの容量単価で3倍高速なアクセススピードを実現しており、マルチビットセルゆえの書き込み耐性の低さやSLCキャッシュ超過時の書き込み速度の急落は少々気になるものの、後者は1TBや2TBの大容量モデルならほぼ無視できるので、低容量単価かつ高アクセススピードを活かせるPCゲームのインストール用ストレージとして非常に魅力的なSSDだと思います。

以上、「Crucial P1 1TB」のレビューでした。
Crucial P1 1TB




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