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8コア16スレッドのCore i9 9900KなどIntel第9世代CoffeeLake Refresh-Sに対応するZ390チップセット搭載マザーボードとしてASUSのゲーマー&OCer向けブランド”ROG STRIX”からリリースされたMini-ITXマザーボード「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」をレビューします。VRM電源クーラーとして、Mini-ITXマザーボード史上最大級の、リアI/Oカバーと一体化した超大型アルミニウム製ヒートシンクを採用した同マザーボードが、Core i9 9900Kの5GHz OCにも対応できるか、徹底検証していきます。
製品公式ページ:https://www.asus.com/jp/Motherboards/ROG-STRIX-Z390-I-GAMING/
マニュアル:https://dlcdnets.asus.com/pub/ASUS/mb/LGA1151/ROG_STRIX_Z390-I_GAMING/J14477_ROG_STRIX_Z390-I_GAMING_UM_WEB.pdf
【注意事項】
同検証は19年1月下旬に行っており「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」のBIOS:1201を使用しています。最新BIOSでは修正されている不具合や追加されている機能もあると思うので、最新BIOSのリリースについては公式ページを各自でチェックしてください。
サポート:https://www.asus.com/jp/Motherboards/ROG-STRIX-Z390-I-GAMING/HelpDesk_BIOS/
【19年3月25日:初稿】
レビュー記事初稿を公開、BIOS:1201で検証
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING レビュー目次
1.ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGの外観・付属品
2.ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGの基板上コンポーネント詳細
3.ASUSマザボのCPUインストレーションツールが便利
4.ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGの検証機材セットアップ
5.ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGのBIOSについて
6.イルミネーション操作機能「ASUS AURA Sync」について
7.ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGのOC設定について
8.ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGの動作検証・OC耐性
9.ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGのレビューまとめ
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGの外観・付属品
まず最初にASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGの外観と付属品をチェックしていきます。外パッケージの蓋を開くと上段にはマザーボード本体が収められており、下段には各種付属品が入っていました。
マニュアルなど冊子類で必要なものが一通り揃っています。その他にもコースター、ステッカー、CableMod製のスリーブケーブル購入時の割引クーポンなどが付属します。ドライバ類についてはそろそろUSBメモリに移行して欲しいところ。ASUS製のマザーボードなので定評のある詳細日本語マニュアルも付属します
組み立てに関連する付属品としては、WiFiアンテナ、SATAケーブル4本、アドレッサブルRGB対応3PIN LEDテープ接続ケーブル、M.2 SSD固定用スペーサー&スクリュー*2セット、フロントI/Oケーブル、ケーブルタイとなっています。
ASUSマザーボードの一部に付属する「Q-Connector」はパワースイッチやパワーLEDなどフロントI/Oの細かい端子を丸ごとマザーボードに装着できるので組み立て時にあると便利な付属品ですが、「ASUS ROG Strix Z270I Gaming」にはフロントパネルケーブルという名前の機能的には同等品が付属します。
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGにはアドレス指定対応LEDテープ用のVD-G型3PINヘッダーがマザーボード上に実装されていますが、それをロック付き3PINコネクタに変換する延長ケーブルが付属します。
マザーボード全体像は次のようになっています。
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGはMini-ITXフォームファクタのマザーボードです。黒色のPCB基板にはサイバーテキストパターンと呼ばれる絵柄がプリントされています。
マザーボード右下のチップセット用ヒートシンクはM.2 SSD用ヒートシンクと重なって同じ場所に設置されていますが、ダブルデッカーデザイン(Double-decker Design)と呼ばれる二層構造型ヒートシンクにより、M.2スロットのヒートシンクはPCHヒートシンクから分離され、PCHとM.2の排熱が互いに影響を及ぼすことを防止しています。
Mini-ITXマザーボードは基板上スペースが限られているのでリアI/Oカバーを搭載しない製品が大半を占めますが、「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」にはROG STRIXシリーズらしいツメ跡のようなデザインのカバーが搭載されています。「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」のリアI/Oカバーは単なる装飾ではなく、アルミニウムでできており、VRM電源クーラーヒートシンクも兼ねています。
リアI/Oカバー下側の見る方向によって七色に光るホログラム処理や、PCB基板のシルクプリントには、日本語、英語、中国語など複数の言語のテキスト「サイバーテキストパターン」が描かれています。中国語でゲーマーを意味する「玩家」や、由来は不明ですが日本語のカタカナで「ハンギャク」(せめて反逆か叛逆なら……)など馴染み深いテキストも描かれており、メーカー曰く「現代的でユニークなアイデンティティを作り出している」とのことですが、かなり人を選びそうなデザインです。
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGには一見して10フェーズのVRM電源回路が実装されているように見えますが、実際の回路はMini-ITXサイズのZ390マザーボードとしては標準的な6フェーズとなっています。
8コア16スレッド倍率アンロックのCore i9 9900Kに対応とするZ390チップセット搭載の上位マザーボードではCPU電源としてEPS 8PIN+4PINや8PIN*2を要求するものも少なくありませんが、「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」はMini-ITXフォームファクタということもあり要求されるのはEPSコネクタは8PINが1つです。
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGにはMini-ITXサイズマザーボードとしては初めて、マザーボード一体型リアI/Oバックパネル「プリマウントI/Oシールド」が採用されています。PCケースにパネルを装着する作業は固くて装着し難かったり、忘れてしまうこともあるのでマザーボードに統合されているのは嬉しい機能です。
リアI/Oには最新のUSB3.1 Gen2規格に対応したUSB端子として2基のType-Aと1基のType-Cの計3つの赤色端子が設置されています。そのほかのUSB端子については2基のUSB2.0端子と2基のUSB3.0端子が搭載されています。マウス・キーボードなど各種周辺機器でも使用することを考えるとHTC Viveは問題なさそうですが、USB3.0端子を多く要求するOculus Riftの利用にはUSBハブを利用するなど工夫が必要になりそうです。USB3.0/3.1は無線マウスと電波干渉を起こすことがあるので、USB2.0端子は少し離れた場所に設置して欲しかったところ。
ビデオ出力にはHDMI2.0とDisplayPort1.2が1基ずつ設置され、いずれも4K/60FPSのビデオ出力に対応しています。4Kテレビに4K/60FPS表示が可能なHDMI2.0を搭載したZ390マザーボードは数が少ないので、HDMI2.0搭載のMini-ITXサイズZ390マザーボードを探しているなら要チェックです。
ネットワーク関連では低CPU負荷、高スループットで定評のあるIntel純正のLANコントローラーが採用された有線LAN端子が設置されています。加えてIntel製無線LANモジュールを標準搭載しており、Wi-Fi 802.11 a/b/g/n/ac、2.4/5GHzデュアルバンド、Bluetooth 5.0にも対応しています。リアI/Oには無線モジュールのアンテナ端子が設置されているので付属のアンテナを接続できます。
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGの基板上コンポーネント詳細
続いて「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。システムメモリ用のDDR4メモリスロットはCPUソケット右側に2基のスロットが設置されています。固定時のツメはマザーボード上側の片側ラッチとなっています。グラフィックカードのあるPCI-Eスロット側はラッチがないので干渉の心配もありません。
PCI-Eスロットはグラフィックボードなどを設置するためのx16サイズスロットが1基のみ実装されています。帯域はCPU直結のPCIE3.0x16で排他利用はありません。
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGにも最近のトレンドとしてx16サイズスロットには1Kgを超える重量級グラボの重さに耐えるように、従来のプラスチックスロットよりも垂直方向の力に対して1.6倍、水平方向の力に対して1.8倍も強靭になった補強用メタルアーマー搭載スロット「SafeSlot」が採用されています。
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGにはSATAストレージ用の端子は4基搭載されています。SATA_1~4の4基はIntel Z390チップセットのコントローラーによる接続で、RAID0/1/5/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。ただし、マザーボード表面のM.2スロット(M.2_1)にSATA接続M.2 SSDを使用した場合、SATA_2端子は排他利用となり使用できません。
高速NVMe接続規格に対応したM.2スロットはマザーボード表面と背面の2か所に計2基が設置されています。M.2_1とM.2_2はいずれもNVMe接続とSATA接続のM.2 SSDに対応し、チップセット経由の接続です。M.2_1にSATA SSDを接続した場合、SATA_2端子は排他利用となります。
「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」の表面M.2スロットには外観でも紹介した一体型ヒートシンク「Double-decker ヒートシンク」が装着されており、M.2 SSDのサーマルスロットリング発生を抑制する効果が期待できます。
また「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」は同社製アクセサリパーツ「ASUS HYPER M.2 X16 CARD」に対応しており、4枚のNVMe M.2 SSDをCPU直結のPCI-Eレーンで接続することが可能です。x16帯域をx4/x4/x4/x4帯域に分割して使用するモードがBIOS設定として用意されています。
M.2 SSD4枚刺しに対応した拡張ボード「ASUS HYPER M.2 X16 CARD」については個別に詳細なレビュー記事を公開しているのでこちらを参考にしてください。
・「ASUS HYPER M.2 X16 CARD」をレビュー
CPUとチップセット間はIntel Z390シリーズチップセットではX99から更新されたDMI 3.0で接続されており、この帯域が非公式ながらNVMe M.2 SSDの接続規格であるPCI-E3.0x4とほぼ同じ帯域です。
Z390チップセット搭載マザーボードのM.2スロットのうちチップセットを経由して接続されているストレージへ個別にアクセスがある場合は最新の3.0GB/s越えの高速SSDでもフルスペック動作が可能になっていますが、この帯域がボトルネックになるため複数のM.2スロットで一度にアクセスが発生すると合計で4GB/s程度がボトルネックになります。現状ではランダム性能への影響は軽微で主にシーケンシャル性能に制限がかかります。
M.2スロットのPCI-Eレーンがどこに繋がっているかで簡単に次のようなメリットとデメリットがあります。
CPU直結の場合 | チップセット接続の場合 | |
長所 | 複数のM.2 SSD(PCH側*1含む)の 同時アクセスでもフルスペック動作 |
IRSTによるハードウェアRAIDで 性能を上げることができる |
短所 | IRSTによるハードウェアRAID が構築できない (Intel製SSDではVROCで ソフトウェアRAIDが構築可能) |
複数のM.2 SSDから同時にアクセス がある場合、ストライプRAIDの場合 4GB/s程度がボトルネックになる |
マザーボード右端には最新USB3.1 Gen2対応内部ヘッダーとUSB3.0端子が設置されています。
Mini-ITXマザーボードの多くに言える見落としの多いポイントですが、Cryorig C1などの大型トップフロークーラーと組み合わせる場合はメモリだけでなくUSB3.0ケーブルが干渉する場合もあるので注意が必要です。「ASUS ROG Strix Z270I Gaming」ではUSB3.0端子がマザーボード右下ギリギリに配置されているので干渉し難いレイアウトです。
マザーボード下側にはPCIEスロットとM.2ヒートシンクの間には内部USB2.0ヘッダーが1基だけ設置されています。CorsairLinkやNZXT CAM対応製品など使用する周辺機器も増えているので、内部USB2.0が不足する場合はUSB2.0ヘッダー増設ハブ「NZXT INTERNAL USB HUB」がおすすめです。
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGは同社製ATXサイズゲーミングマザーボードでも採用されている高音質オンボードサウンド機能「SupremeFX」が搭載されています。光学デジタルによるデジタル音声出力もあるので高級なヘッドホンアンプユーザーにも満足のいく構成です。
有線LANには低CPU負荷、高スループットで定評のあるIntel純正のLANコントローラーが採用されており、加えて有線LANの信号特性を改善する独自機能「LANGuard」も搭載し、オンライン通信対戦ゲームユーザーの快適なプレイをバックアップします。
冷却ファンや簡易水冷クーラーのポンプの接続用の端子はマザーボード上端に計3基が設置されています。Mini-ITXマザーボードはファン端子が2基しかないものも多いので冷却を重視するユーザーには嬉しい数です。CPUファンとAIOファン端子は最大出力1.0A(12W)なので水冷ポンプにも対応した端子です。
チップセットヒートシンクのすぐ上には本格水冷PCユーザーには嬉しい外部温度センサーの接続端子が設置されています。MIni-ITXで外部温度センサーに対応したモデルは少ないのでこれは魅力です。ASUSのファンコントロール機能は外部センサーをソースにした水温依存のファンコントロールが可能なので管理人は以前から水冷ユーザーにお勧めしています。(関連記事)
「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」にはCMOSクリアのためのオンボードボタンは実装されておらず、マザーボード右下のジャンパーピンを使用してCMOSクリアを行います。短絡用ジャンパは付属しておらず、グラフィックボードやメモリを組み込んでしまうと、短絡するのがかなり難しい位置になっているので、ケーブルの長い2PINスイッチをあらかじめ装着しておいた方がよさそうです。同社の他製品のようにリアI/OにCMOSクリア用スイッチを設置して欲しかったです。
ASUSマザボのCPUインストレーションツールが便利
ASUS製マザーボードの一部で対応するCPUインストレーションツールが非常に便利なので紹介します。日本国内ではマニュアルやBIOSメニューのローカライズ品質やユーザー数の多さからASUS製マザーボードが初心者におすすめなマザーボードとしては鉄板として紹介されることが多いです。とはいえ最近のマザーボードは不具合や相性問題も少ないので、ASRock、GIGABYTE、MSIなどASUSを含めた主要4社のマザーボードであれば特に問題はなくなっています。
しかしながら管理人的にはASUSマザーボードの独自の機能であるCPUインストレーションツールの存在が理由で初心者にはこの機能に対応したマザーボードをお勧めしています。
ただし「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」にはCPUインストレーションツールが残念ながら付属しません。ただし「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」のCPUソケット自体はCPUインストレーションツールに対応しているのでebay等でCPU installation tool(型番:13010-01860100)を買えば使えます。
初心者、経験者ともに自作PCでパーツをダメにする可能性のトップに入るであろう項目にCPU着脱時のマザーボードのCPUソケットのピン折れがありますが、CPUインストレーションツールを使えばCPUの着脱が格段に簡単になるのでその心配はほぼなくなります。
CPUインストレーションツールは下の写真のようなプラスチックのパーツです。
CPUインストレーションツールはCPUの上から嵌める枠のような構造です。
CPUインストレーションツールに装着することによってCPUを指で持ち上げやすくなります。
CPU単体では指を引っかける部分に乏しいのでCPUソケットの直上でポロッと落としてしまわないか物凄く気を使いますが、CPUインストレーションツールを装着すると持ちやすさが格段に改善されます。
第9世代CoffeeLake Refresh-S CPUは第8世代よりもPCB基板が厚くなっているのでCPUインストレーションツールがCPUに装着できるかが若干不安でしたが、問題なく装着できました。
「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」のCPUソケット自体は、CPUインストレーションツールに対応した旧製品と同じものが実装されているので、CPUインストレーションツールを装着した第9世代CoffeeLake Refresh-S CPUを設置して、CPUソケットに問題なく固定できました。
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGの検証機材
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGを使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9 9900K 8コア16スレッド (レビュー) |
CPUクーラー | CRYORIG A40 V2(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) |
CPUベンチ用 ビデオカード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
レビュー後半のOC検証で使用するCPUにはZ390マザーボードで使用可能なIntel第9世代CoffeeLake Refresh-S CPUの最上位モデルとなる8コア16スレッドの「Intel Core i9 9900K」を使用しています。検証機材のCore i9 9900KはCPUダイとヒートスプレッダ間のグリスを液体金属グリスに塗り替え、ヒートスプレッダもRockit Cool製のオリジナル銅製IHSに交換しているので通常よりも低い温度で動作しています。
・Core i9 9900Kの殻割りクマメタル化&銅製IHSの冷却性能を検証
「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」が対応するCore i9 9900KやCore i7 9700Kは手動OCすると発熱がかなり大きくなるので大型簡易水冷CPUクーラーが推奨されますが、360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーターの簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。「Noctua NF-A12x25 PWM」は、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファンとなっており、1基あたり3500円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
・「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する18年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、メインストリーム向けでもハイパフォーマンスな環境を目指すのであれば、システムストレージ用に一押しのSSDです。
・「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
以上で検証機材のセットアップが完了となります。
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGのBIOSについて
「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」を使用した検証機の構築も完了したので動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。(OSから日付調整する前にスクショを取っている場合、日付が変になっているかもしれませんが無視してください。また内容的に差異のないものは過去のスクリーンショットを流用しています。)
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGのBIOSに最初にアクセスするとEZモードというグラフィカルな画面が表示されます。パッと見の見栄えは良いのですが詳細モードでないと詳細設定ができないので「F7」キーを押してサクッと「アドバンスドモード(Advanced Mode)」へ移るのがおすすめです。
「F7」キーを押すとアドバンスドモードという従来通りの文字ベースのBIOSメニューが表示されます。「Main」タブの「System language」-「English」と表記された項目のプルダウンメニューから言語設定が可能で日本語UIを選択できます。ASUSマザーボードは競合他社と比較してもBIOSメニューの日本語ローカライズの充実と正確さが魅力です。
次回起動時に初回から詳細モードを起動する場合は、「起動-ブート設定」にある「セットアップモード」の項目をアドバンスドモードに変更してください。
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGのBIOSにおいて設定の保存とBIOSからの退出はトップメニュータブ最右端の「終了」から行えます。その他の設定を行っていても左右カーソルキーですぐに退出可能です。
特定のブートデバイスを指定してBIOSから退出するBoot Override機能は「起動」タブメニューの最下段「起動デバイス選択」に配置されています。
1月16日現在、ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGのサポートページで公開されている最新版は「1201」だったのでBIOSの更新を行いました。
BIOSのアップデート方法は、まず下から最新のBIOSファイルをダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
サポート:https://www.asus.com/jp/Motherboards/ROG-STRIX-Z390-I-GAMING/HelpDesk_BIOS/
USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、アドバンスドモードの「ツール-ASUS EZ Flash 3 Utility」でストレージデバイスからのアップデートでBIOSファイルを選択します。あとはガイドに従ってクリックしていけばOKです。
ブートとOSインストール周りについて紹介します。とはいってもASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGのブート回りは下画像のように非常に簡潔にまとめられており初心者でも迷うことはないと思います。
OSのインストールも「Boot Option #1」に「UEFI:〇〇」というOSインストールメディアを設定して保存&退出でOKです。「Boot Option #1」の下にスクロールしていくとブートデバイスを個別に指定して再起動できる「Boot override」もあるのでこちらから、同様に「UEFI:〇〇」というOSインストールメディアを選択してもOKです。
ちなみにWindows10の製品パッケージに付属するUSBメモリではUEFIで認識できないトラブルが発生することがあるようなので、そういうときはこちらの記事に従ってMS公式ツールを使用して適当なUSBメモリでOSインストールメディアを作成すると上手くいきます。
BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGのBIOS機能で管理人が気になったものをいくつかチェックしていきます。
マザーボード上のコンポーネント詳細でも紹介した外部温度センサーについてはBIOS上からも温度をモニタリングできます。簡易水冷(AIO水冷)ポンプ専用の項目も用意されており、ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGであれば冷却機能周りは空冷・水冷ともにほぼ全てBIOS上でコントロール可能です。
BIOS上のファンコントロール機能についてですが、CPUファン端子とCPU OPT端子はCPU温度依存のファンコントロールしかできませんが、その他のケースファン端子については、外部温度センサーなどの各種温度ソースからファンコントロールが可能です。
ファン操作モードはPWM速度調整とDC(電圧)速度調整の2種類が用意されていますが、DC速度調整の場合は制御プロファイルを手動にすると、下限温度以下で冷却ファンを停止させる所謂セミファンレス機能を実現する「Allow Fan Stop」の設定が表示されます。
またASUSマザーボードにもグラフィカルUIによるファンコントールの設定機能として「Q-Fan Control」が用意されています。設定可能な内容はは上で紹介したコンソールのファンコンと同じですが、グラフィカルUIでわかりやすく設定できるよ、という機能です。直感的にわかりますし直打ちが苦手な人にはありがたい機能だと思います。
イルミネーション操作機能「ASUS AURA Sync」について
「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」はASUS純正のライティング操作機能「ASUS AURA Sync」に対応しています。「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」ではマザーボード右端背面に12分割のアドレッサブルLEDイルミネーションが実装されています。
ASUSのLEDイルミネーション同期調整機能「ASUS AURA Sync」による操作に対応したRGB対応汎用4PIN LEDヘッダーがマザーボードの上端に設置されています。当サイトでもレビュー記事を掲載しているLEDテープ「SilverStone SST-LS02」やLEDファングリル「Phanteks Halos Lux RGB Fan Frames」など汎用LED機器によるLEDイルミネーションの拡張が可能です。
またアドレッサブルLED機器を接続可能なARGB対応VD-G型3PIN LEDヘッダーも実装されています。使用可能なアドレッサブルLEDテープについては国内で発売済みの「BitFenix Alchemy 3.0 Addressable RGB LED Strip」やASUS ROG純正品の「ASUS ROG ADDRESSABLE LED STRIP-60CM」が動作することが確認できています。
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGに搭載されたLEDイルミネーションや汎用ヘッダーに接続されたイルミネーション機器は発光カラーや発光パターンを専用アプリのAURA Syncから同期操作可能になっています。AURA Syncは公式ホームページやマザーボードのサポートページから最新版をダウンロードできます。
AURA公式DL:https://www.asus.com/campaign/aura/jp/download.html
専用アプリである「AURA Sync」を使用することで、色を指定した固定色発光、カラーサイクル等の発光パターンプリセット、温度や音楽に合わせた発光変化など自由度の高いイルミネーション設定が可能です。
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGのマザーボード備え付けLEDイルミネーションはソフトウェア上から各エリアに対して個別に発光カラーを設定できます。
設定メニューでは汎用LEDヘッダーに関する設定が行えます。
マザーボード備え付けおよび汎用ヘッダーで増設したLEDイルミネーションについてはデフォルトではOSのシャットダウンやスリープ時もLEDが点灯しますが、「When system is in sleep, hibernate and soft off states」の項目をOFFにすることでスリープ時やシャットダウン時のみLEDイルミネーションをOFFにすることができます。
なおシャットダウン・スリープ時のLEDの点灯・消灯設定はWindows上の「AURA Sync」からも設定が可能になっており、BIOS設定よりもアプリからの操作が優先されます。ASUS Aura Syncソフトウェアの「Power Off」タブがスリープやシャットダウン時のLEDイルミネーションの設定になっています。ここから設定を行うことで、シャットダウン・スリープ時のLEDイルミネーションの消灯が可能です。
当サイトでレビュー記事を公開中のG.Skill製DDR4 OCメモリ「G.Skill Trident Z RGB」もASUS Aura Syncによるイルミネーション同期設定に対応しています。
・「G.Skill Trident Z RGB F4-3200C14Q-32GTZRX」をレビュー
下は「ASUS ROG ZENITH EXTREME」で「G.Skill Trident Z RGB」を使用した例ですが、ASUS AURA Syncのウィンドウ上側にDRAMの項目が表示されて「G.Skill Trident Z RGB」も同期操作が可能になります。ColorCycleのような全体同期型の発光パターン以外にも、「G.Skill Trident Z RGB」は各DRAM毎に4分割アドレッサブルLEDが実装されているので個別制御も可能です。
ASUSのLEDイルミネーション機能「AURA Sync」については汎用イルミネーション機器の使用方法や導入例などを下の記事でも紹介しているので、詳しくはこちらを参照してください。
・ASUS製のLEDイルミネーション操作機能「AURA Sync」の使い方
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGのOC設定について
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGを使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」のオーバークロック設定は「AI Tweaker」というトップメニューのタブページにCPUコアクロック、メモリ、電圧など各種設定項目が集約されています。「AI Tweaker」ページをスクロールしていくとCPUコアクロック、メモリ、電圧などの各種設定項目が表示されるので設定しやすいUIです。設定値を直接入力する項目でデフォルトの「Auto」に戻す場合は「a」キーを入力すればOKです。
「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」のオーバークロック設定項目の最初にある「AI Overclock Tweaker」ではプルダウンメニューから「Auto」「Manual」「XMP」の3つの設定モードが選択できます。Autoモードは基本的な設定項目に関する自動or手動設定が可能な一般ユーザー向けの設定モードとなっています。ManualモードはBCLK等の詳細なOC設定項目が解放される上級者向けの設定モードです。XMPモードはManualモードベースですが、OCメモリに収録されたXMPプロファイルを適用できる設定モードになっています。
OC初心者はXMPを使用しないならAutoモード、XMPを使用するならXPMモードを使用すればOKです。
CPUコアクロック(コア倍率)の変更について説明します。
コアクロックはコア数に対して各コアに最大動作クロック(BCLKに対する倍率)を指定できます。「コア0:コア1:コア2:コア3」を倍率として、例えば「45:43:43:42」のようにバラバラに指定した場合、4つのコアのうち1つに負荷が掛かる場合は4コアのうち1つが45倍動作、2つと3つの場合は43、4つの場合は42となります。
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGではCPU内部クロック倍率の設定モードとして、マザーボードのお任せとなる「Auto」、全コアの倍率を同じに設定する「Sync All Cores」、負荷のかかっているコア数によって最大動作倍率を設定する「Per Core」、自動的にOC設定を最適化してくれる「AI Optimized」の4つのモードが存在します。
「Per Core」モードでは負荷がかかっているコア数に対して最大動作倍率を設定可能です。
一般ユーザーがCPUのOCを行う場合は通常、全コアの最大倍率を一致させると思いますが、同マザーボードの場合は「Sync All Cores」モードを選択して「1コアの倍率制限値: 50」と設定することでデフォルトのBCLK(ベースクロック)が100MHzなのでその50倍の5.0GHzで全てのコアが動作します。
「AI Overclock Tweaker」から「Manual」モードもしくは「XMP」モードを選択するとベースクロック(BCLK)の設定項目が表示されます。デフォルトのAutoでは100MHzに固定されていますが、設定値の直打ち、もしくはプラスマイナスキーで操作することによって40~1000MHzの範囲内で設定できます。CPUコアクロックはBCLKに対する動作倍率で設定されるのでBCLK110MHz、動作倍率45倍の場合はコアクロック4.95GHz動作となります。ただしBCLKを使用したOCはかなり上級者向けなので通常はAutoか100MHzが推奨です。
キャッシュ(メッシュ)動作倍率は「CPUキャッシュ最大動作倍率(Max CPU Cache Ratio)」と「CPUキャッシュ最小動作倍率」から変更可能です。CPUコアクロック同様にベースクロックに対する動作倍率でメッシュの動作周波数を設定できます。
続いてコア電圧の調整を行います。
Intel第8/9世代CPUではCPUコアとキャッシュへの電圧は共通なので、CPUコアクロックやキャッシュクロックのOCに関連する電圧設定としては、ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGでは「CPUコア/キャッシュ電圧(CPU Core/Cache Voltage)」の項目を変更します。
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGではCPUコア電圧をマニュアルの設定値に固定する「Manual」モード、CPUに設定された比例値にオフセットかける「Offset」モード、ターボブースト時にのみ昇圧を行う「Adaptive」モードの3種類が使用できます。
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGでCPUコア/キャッシュクロックのOCを行う場合、CPUコア電圧の設定については設定が簡単で安定しやすいので固定値を指定するManualモードがおすすめです。8コア16スレッドCore i9 9900KをOCする場合、CPUコア電圧の目安としては最大で1.300~1.350V程度が上限になると思います。
CPUコア電圧モードについて簡単に説明すると、オフセットモードやアダプティブモードはCPU負荷に比例して電圧が設定されており、低負荷時は電圧が下がるので省電力に優れるのですが、OCをする場合はマザーボードによって挙動に差があり安定する設定を見極めるのが難しいので、個人的にはオフセットやアダプティブは定格向け、OCには固定値適用の固定モードを推奨しています。
仮にOCでオフセットやアダプティブを使う場合も最初はコアクロックに対して安定する電圧を見極める必要があるので、まずは固定モードを使用します。
ちなみにマザーボードにより対応しているモードは異なりますが、CPUのオーバークロックに付随するコア電圧のモードの概略図は次のようになっています。
またCPUのOC/DCに関連する電力設定としてASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGではコアクロックと電圧の設定項目の中間あたりに「DIGI+ VRM」と「CPU電力詳細設定」の2つがあります。
コアクロックを高く設定する時に追加で変更するといい項目として「DIGI+ VRM」の「ロードラインキャリブレーション」があります。ロードラインキャリブレーションはCPU負荷時の電圧降下を補正してOCを安定させる機能となっており、補正の強度としてLevel 1~Level 7の7段階になっており、Levelが大きくなるほど電圧降下の補正は強くなりOCは安定しやすくなりますが発熱も大きくなります。レベル5かレベル6あたりから最初に使っておいて、ストレステストのCPU温度をチェックしながら補正を調整していくのがおすすめです。
「DIGI+ VRM」ではその他にも「CPU VRM スイッチング周波数」「CPU VRM スペクトラム拡散」「CPU VRM 可動フェーズ設定」などCPUのオーバークロック時にマザーボードVRMからの電力供給を安定させる設定項目が用意されています。
その他にもCPUコアクロックをOCする場合は「CPU SVID)」や「C State」を無効化すると、OC時の動作が安定しやすくなるようです。
また「CPU電力詳細設定」には「瞬間許容電力制限値(Short Duration Power Limit)」「許容電力上限値(Long Duration Power Limit)」という2つの電力制限機能があり、電力制限がかかる閾値(単位はW)と電力制限がかかるまでの時間を設定できます。
電力制限がかかるとその指定電力内に収まるようにコアクロックに制限がかかります。デフォルトの状態では「Auto」になっていますが、ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGでは手動でコアクロックのOCを行った場合はパワーリミットが掛からないように勝手に設定してくれるので放置でも問題ありません。基本的に一定消費電力以内に収めるための省電力機能(+若干のシステム保護機能)と考えてください。
メモリのオーバークロックについても簡単に紹介しておきます。
メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。
一方でXMPによるメモリOCは上の手順によるOCをメーカー側がすでに行い動作確認をしているので、メーカーが動作確認を行ったOCプロファイルを適用するだけで簡単にメモリをオーバークロックできます。
メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありませんが、「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」では正常にPOSTできないメモリOC設定でエラーが出た場合は数回再起動した後、自動で2133MHzのような緩い設定で起動してくれるのでメモリOCを安心して行えます。
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGでは「AI Overclock Tweaker」からXMPモードを選択するとに設定することでOCメモリに収録されたXMPプロファイルによるメモリのオーバークロックが可能です。
「AI Overclock Tweaker」のAutoモードやManualモードにおいて「DRAM Frequency」の設定値がAutoになっている場合は、使用するメモリにSPD情報として収録されている動作クロック2133~2666MHzなど周波数およびタイミングによる定格動作となります。
手動でメモリ周波数を設定する場合は「DRAM Frequency」の項目でプルダウンメニューから最大8533MHzまでの動作クロック(倍率)設定が可能です。G.SkillやCorsairのOCメモリでも18年後半現在XMP4600MHzが最高なのでまだまだ道のりは長いですが。
メモリ周波数もBCLKに対する倍率で動作周波数が決まっているので、BCLKを標準値の100MHzから120MHzに上げると、44倍設定時の動作周波数は4000MHzから5280MHzに上がります。
メモリタイミングの個別打ち込み設定も可能です。メモリタイミングを手動で設定する場合は基本的には「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS (tRCD)」、「RAS Active Time (tRAS)」の主要な3タイミングと、加えて「Refresh Cycle Time (tRFC)」と「Command Rate:1 or 2」の6つ以外はAutoのままでいいと思います。
主要なタイミング設定値から「RAS Precharge (tRP)」の項目がなくなっているのがメモリOC耐性的にどのような影響があるのか気になるところです。
DDR4メモリの周波数OCを行う際は「DRAM Voltage(DRAM電圧)」の項目を、3000MHz以上にOCする場合は1.300~1.350V、3800MHz以上にOCする場合は1.370~1.400Vに上げる必要があります。メモリをOCする場合は最初から1.350V以上にDRAM電圧を盛っておくのがおすすめです。
1,2世代前の過去のIntel CPUではメモリ周波数を3200MHz以上にOCする場合は「VCCSA(CPU SA Voltage)」を盛ると動作がメモリOCが安定したのですが、Intel第8/9世代CPU環境における「VCCSA」の影響は今のところよくわかりません。Auto設定で安定しない場合は昇圧を試してみても良いかもしれません。
また今のところZ390環境では不具合を確認できていませんでしたが、メモリのオーバークロックでPCI-E拡張カードの検出不可やオンボードUSB端子の干渉などが発生する場合は「電圧設定」にある「VCCIO(CPU VCCIO Voltage)」や「チップセット電圧(PCH Core Voltage)」を盛ると安定するかもしれません。
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGの動作検証・OC耐性
BIOS周りの管理人的に気になるところの紹介はこのあたりにしてASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGを使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。まずはFast Bootを無効にしてOSの起動時間を測定したところ、「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」の起動時間は17秒ほどした。POSTも非常に高速で良好な結果です。
「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」にCore i9 9900Kを組み込んだ場合のBIOS標準設定における動作についてですが、CPU動作倍率は1~8コア負荷順で[50, 50, 49, 48 , 48, 47, 47, 47]でIntel公式の定格動作倍率設定よりも若干引き上げられています。電力制限については短期間電力制限が緩めに設定されていますが、長期間電力制限は仕様値通り95Wに設定されています。
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGにCore i9 9900Kを組み込むと、Intel公式の仕様値であるTDP95Wの制限下で動作します。
「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」のBIOS標準設定はTDP95W通りの動作になりますが、BIOSバージョンの更新によって設定が変わる可能性もあります。下のようなBIOS設定によってPerCore最大動作倍率および電力制限を適切に設定すれば、Intelの仕様に通りの定格動作で運用することが可能です。
続いてASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGを使用した場合のCPUとメモリのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
Core i9 9900KのOC設定は「CPUクロック倍率:51」「CPUキャッシュ倍率:47」「CPUコア/キャッシュ電圧:1.300V(固定モード)」「ロードラインキャリブレーション: Level 7」「SVIDサポート: Disabled」「C State: Disabled」「メモリ周波数:4000MHz」「メモリ電圧:1.400V」「メモリタイミング:17-17-17-37-CR2」としています。
上の設定を適用したところ問題なくOSを起動させることができました。
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGの環境(BIOS:1201)において、検証機材メモリのG.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKKを使用して、メモリ周波数4000MHz メモリタイミング:17-17-17-37-CR2で安定動作が確認できました。
ちなみに検証機材メモリG.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKKに収録されたXMP4400MHzプロファイルはZ370/Z390マザーボードでも一部のOC特化マザーボードでしか動作しないのですが、第9世代CPU&Z390マザーボード「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」環境ではPOSTは正常にクリアし、OSでもRumtestこそクリアできなかったものの、BSODで即落ちにならない程度には安定して動作しました。メモリスロットが4基の一般的なATXマザーボードよりもMini-ITXでメモリスロットが2基のみの「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」のほうがメモリOC的にはアドバンテージがあるようです。
8コア16スレッド「Intel Core i9 9900K」のコア5.0GHz/キャッシュ4.7GHz、メモリ周波数4000MHz、メモリタイミング17-17-17-37-CR2でCinebenchも問題なくクリアできました。
続いてこのOC設定を使用してストレステストを実行しました。
検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間8分、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はCore i9 9900K 定格の場合20分ほどなので同じ動画のエンコードを2つ並列して実行しています。テスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
ストレステスト中のCPU温度とCPU使用率のログは次のようになりました。マザーボードにASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGを使用して「Intel Core i9 9900K」をコア/キャッシュクロック5.0/4.7GHz、メモリ周波数4000MHzにOCしてストレステストをクリアできました。CPUクーラーのファン回転数は1600RPMで固定しています。
スマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE Pro」(レビュー)を使用してASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGのVRM電源温度をチェックしてみました。
まずはASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGにCore i9 9900Kを組み込んだ場合をデフォルト設定で負荷をかけてからVRM電源温度を測定してみました。今回はCPUクーラーにCRYORIG A40を使用していますが、デフォルト設定における検証では水冷トップのエアフローファンを取り外しています。
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGのデフォルト設定ではCore i9 9900KにTDP95Wの電力制限がかかるので、VRM電源周りに風が直接当たらない簡易水冷CPUクーラーの環境であっても、VRM電源温度は60度未満に収まりました。
続いてCore i9 9900Kを上記のBIOS設定でOCした時の負荷テスト中のVRM電源温度をチェックしていきます。ちなみに「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」環境でCore i9 9900Kを全コア5.0GHzまでOC、かつメモリも4000MHzにOCするとシステム全体(マイナス20~30WでほぼCPU)の消費電力が250Wに達します。
上記OCについてはパッシブ空冷のままではシンドイ負荷なのはわかっていたので、最初からCRYORIG A40の水冷ヘッドに搭載されたスポットクーラーでVRM電源に風を当てたケースについてチェックしていきます。スポットクーラーのファン回転数は2400RPMで固定しています。
「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」ではCRYORIG A40のエアフローファンをスポットクーラーとして使用して適切に冷やしてやれば、Core i9 9900Kを大幅にオーバークロックしても、サーモグラフィで見る限りはVRM電源温度を70度未満に収めることができました。これだけ冷えていれば安心して運用できます。
ただしソフトウェアモニタリングではVRM電源温度の値が90度以上を示していました。ヒートシンクや水冷ヘッドがカバーしている場所が大きいとはいえ、サーモグラフィでは70度未満なので、熱分布的に本当に90度台に達している箇所があるのかは少し疑問です。
「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」環境においてCore i9 9900Kで全コア5.0GHzオーバーの大幅なオーバークロックをする場合、スポットクーラーにはマザーボードスペーサーのネジ穴を利用して固定できるフレキシブルファンアーム「サイズ 弥七」がおすすめです。
・スポットクーラー用ファンアーム「サイズ 弥七」をレビュー
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGのレビューまとめ
最後に「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- ROG STRIXシリーズらしいブラック一色のクールなデザイン
- マザーボードに標準搭載されたLEDイルミネーションが綺麗
- Core i9 9900Kを使用可能なMini-ITXマザーボード
- Core i9 9900K 5.0GHz、メモリクロック4000MHz OCで安定動作
- Mini-ITX史上最大級の、非常に巨大なVRM電源クーラー
- マザーボード一体型リアI/Oパネル「プリマウントI/Oシールド」搭載
- 重量級グラボにも耐えるメタルアーマー採用PCI-Eスロット「SafeSlot」
- 外部温度センサー対応で水温ソースのファンコンも可能なので水冷PCにも最適
- 高速NVMe接続のM.2スロットが2基設置
- M.2スロットのうち1つはM.2 SSDヒートシンクを装備
- 4K/60FPSに対応したHDMI2.0&DisplayPort1.2のデュアルビデオ出力
- フロントI/Oの細かい端子を丸ごと装着できるフロントパネルケーブルが付属
- Core i9 9900Kを5.0GHz以上にOC時はスポットクーラーの併用を推奨
- 多言語テキストパターン「サイバーアウトルック」は日本ユーザーには人を選びそう
- CPUインストレーションツールが付属しない(CPUソケット自体は対応)
- CMOSクリアのハードウェアスイッチがなく、オンボードヘッダーの短絡がスペース的に難しい
「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」はMini-ITXのコンパクトサイズながら、VRM電源クーラーとしてリアI/Oカバーと一体化した超大型アルミニウム製ヒートシンクを採用することによって、8コア16スレッドCPUであるCore i9 9900Kの大幅なOCにも対応したマザーボードです。
4K/60FPSに対応したHDMI2.0&DisplayPort1.2のデュアルビデオ出力、最大1.73Gbpsに対応したIntel製の無線LAN、M.2 SSDの4枚刺しが可能な拡張ボード「ASUS HYPER M.2 X16 CARD」に対応など、ゲーマーからクリエイターまでオールラウンドに活躍できるコンパクトマザーボードとして非常に高い完成度に仕上がっています。
Intel LGA115X系CPUについてはCPUをCPUソケットから着脱する際にピン折れ事故が起こりやすいので、安全かつ簡単にCPUが着脱できる独自機能「CPUインストレーションツール」が採用されているASUS製マザーボードを以前からお勧めしていたのですが、「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」には同ツールが付属しないところは残念でした。Z370版には付属しており、第9世代CPUでも問題なく使え、Z390でもソケット自体は対応ソケットなのになぜ付属しないのか……。
ASUS製マザーボードではお馴染みですがBIOSやマニュアルの日本語ローカライズ品質は主要4社の中でも随一となっており、BIOSのテキストベースUIの使い勝手も良好です。ROGシリーズと言うと高価で上級者向け製品のイメージが強いかもしれませんが、「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」は初心者にも優しいマザーボードだと思います。
「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」にCore i9 9900Kを組み合わせて使用した場合、デフォルト設定による運用では定格であるTDP95Wの電力制限が正常に働くため(ターボブーストが若干強めに設定されていますが)、VRM電源への負荷もさほど大きくはなく、VRM電源温度はサーモグラフィーでせいぜい60度未満なので、同マザーボードの標準設定で運用するのであれば、Intel第9世代CoffeeLake Refresh-S CPUの各種においてVRM電源はパッシブ空冷の冷却でも問題ないと思います。
ASUS ROG STRIX Z390-I GAMINGを使用した検証機では8コア16スレッドのCore i9 9900Kを全コア5.0GHz、キャッシュ4.7GHzに、メモリ周波数も4000MHzにオーバークロックして負荷テストをクリアすることができました。
また8コア16スレッドの最上位モデルCore i9 9900Kを5.0GHzにOCして長時間の負荷をかけた場合、CPU消費電力は200Wを超過しVRM電源への負荷も大きいですが、VRM電源クーラーが前世代よりも大型化されていることもあって、検証機材CPUクーラーCRYORIG A40の水冷トップに設置されたエアフローファンをスポットクーラーとして適切に使用すれば、サーモグラフィで確認した限りではVRM電源を60度台に収めることができました。PCケースに組み込む実用環境においてCore i9 9900Kを5.0GHz以上にOCする場合はVRM電源の冷却用にスポットクーラーの使用が推奨なのは間違いありませんが、スポットクーラーさえ使用すればATXサイズのハイエンドマザーボード並みにCore i9 9900Kの大幅なOCが可能です。
メモリOCについては周波数と主要タイミングのみの簡単なOC設定で、メモリ周波数4000MHzにおいてメモリタイミング17-17-17-37-CR2まで詰めることができたのでメモリOC耐性(BIOS自動設定)も余裕で及第点をクリアしていると思います。
以上、「ASUS ROG STRIX Z390-I GAMING」のレビューでした。
Z390シリーズのマザーボード販売ページ
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検証機材として使用している以下のパーツもおすすめです。
CRYORIG A40 V2 240サイズ 日本正規代理店品
CRYORIG A40 Ultimate V2 240サイズ 日本正規代理店品
CRYORIG A80 V2 280サイズ 日本正規代理店品
CRYORIG
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<PCワンズ><パソコン工房>
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<TSUKUMO:PWM/ULN><PCショップアーク>
G.Skill Trident Z RGB DDR4メモリ
G.Skill Trident Z Black DDR4メモリ
G.Skill
<ドスパラ><PCワンズ:RGB / Black>
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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