IPS/VA/TN液晶パネルを比較解説


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ゲーミングモニタを選ぶうえで重要な予備知識を紹介する、その名の通り『ゲーミングモニタの選び方』シリーズ第4弾では、大別してTN、VA、IPSの3種類が存在する液晶パネルの違いや性能をおおまかに比較解説していきます。


IPS/VA/TN液晶パネルの違いの概要

液晶パネルには大きく分けてIPS液晶パネルとVA液晶パネルとTN液晶パネルの3種類があり、各社個別の製品によって個体差はあるものの、この3つの液晶パネルの特性を簡単にまとめると次のテーブルのようになります。
液晶パネルの違いで大きく差が出る、注目すべき2つのポイントは「視野角」と「応答速度」です。
価格については各自で比べればいいので言わずもがなですし、色再現性やコントラストについて、これらが要求されるプロのイラストレーター等は自然とIPSやVAを選ぶはずで、正面から見る限りにおいて最近の液晶モニタはどれもそれなりに綺麗なので一般ユーザーはあまり気にする必要はないと思います。
液晶パネルの簡易比較表

IPS VA TN
色再現性 〇〇
コントラスト 〇〇
視野角 〇〇 ×~△
応答速度 △~〇 ×~△ 〇〇
価格 (高RR)
△ (×)


IPS液晶パネルはTN液晶パネルやVA液晶パネルと比べると色再現性や視野角など一般に画質に直結する性能が優れている反面、価格が高価になりがちな液晶パネルです。TN液晶パネルに比べて応答速度が遅めなので、60Hzオーバーのリフレッシュレートを実現しているIPS液晶パネル採用ゲーミングモニタは少ないため、そういった製品は輪をかけて高価です。とはいえ画質とリフレッシュレートを両立できるので、予算に糸目をつかないエンスーゲーマー勢に好まれています。管理人も個人的にこのタイプを好んで購入しています。

ちなみにIPS/VA/TNは液晶の構造的な分類となっており、同じ構造でもメーカーによって呼称が異なる場合があります。特にIPS液晶パネルは各社の呼称が多く、ADS、AH-IPS、AH-VA(これもVAではなくIPS)、Nano IPSなどいろいろとあって微妙に違いはありますが、大まかな特性はIPS液晶としてひとくくりにできます。

VA液晶パネルはIPS液晶パネルほどではないものの、TN液晶パネルよりも色再現性や視野角が良好です。またVA液晶パネルはIPS液晶パネルよりもコントラストが高いためメリハリの利いた鮮やかな絵になりやすく、パッと見でわかりやすい綺麗な映像になります。最近では価格面でもTN液晶パネルと大きな差はなく、IPS液晶パネルよりも安価で、VA液晶パネルは単純な画質面でコストパフォーマンスに優れます。唯一の欠点としてVA液晶パネルは応答速度が若干遅く、物理的な残像が出やすい特性があります。

TN液晶パネルはIPS液晶パネルやVA液晶パネルと比べると色再現性、コントラスト比、視野角など一般に言われる画質に直結する性能は劣っている傾向があります。代わりに価格面では他2つよりも安価であることに加え、応答速度が高速であるというメリットがあります。とりわけ応答速度についてはIPS液晶パネルやVA液晶パネルを大きく上回るので、高リフレッシュレートなモニタの多くでTN液晶パネルは採用されており、『競技ゲーマー向けの液晶モニタといえば、TN液晶モニタ』と言っても過言ではありません。そのためTN液晶パネルを採用した製品は、解像度やモニタサイズの割りに安価な液晶モニタ製品、高速リフレッシュレートで比較的高価なゲーマー向け液晶モニタ製品に二分化しています。


液晶パネルによる視野角の違い

液晶パネルの違いで大きく差が出る2つのポイントのうち1つは「視野角」です。
液晶パネルの中では画質で劣ると言われがちなTN液晶パネルですが、最近ではIPSレベルを謳う製品も増えつつあり、正面から見る限りにおいて画質が悪いと感じるケースは減ってきています。もちろん並べて見比べれば一目瞭然なケースの方が多いのですが。
IPS (1)

ただし構造上の問題として視野角は3種類の液晶パネルで大きく異なります。
まずIPS液晶パネルの場合は上下左右のどこから見ても、暗く感じることを除けば色の破綻もありませんし、正面から見た時と比較して変化はほとんどありません。3種類の中では視野角で最も優れています。
IPS (2)
VAパネルも角度が浅ければ若干白みがかるもののIPSに近い正常な色味を得られますが、角度が深くなるにつれてどんどん白くなっていき色が破綻し始めます。
VA (2)
最後にTN液晶パネルですが、最近では左右の視野角は若干黄ばむものの大きな色の破綻はありませんが、上下については多少の角度でも色が破綻します。
TN (2)


液晶パネルによる応答速度の違い

液晶パネルの違いで大きく差が出る2つのポイントのうち、もう1つは「応答速度」です。
『液晶モニタの応答速度とオーバードライブ機能』について基本知識は、ゲーミングモニタの選び方の第1弾で紹介しているので、よくわからないという人は先に確認してみてください。
ゲーミングモニタの選び方[1] 応答速度とオーバードライブについて
ゲーミングモニタの選び方[1] 応答速度とオーバードライブについて

当サイトのモニタレビューにおいて、応答速度の確認には「UFO Test: Ghosting」を使用します。同テストではUFOが移動する背景カラーを選択できますが、今回の検証ではブラック/グレー/ホワイトの3色を選択しています。
背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイや動画視聴における物理的な残像の少なさの指標として参考になります。
Acer Nitro XV273K review_07322_DxO

「UFO Test: Ghosting」の様子を「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影し、液晶パネル別で比較してみたものが次の動画です。
TN液晶パネルは3種の背景全てで最も高速な応答速度を見せており(グレー背景では製品チューニングの都合でオーバードライブの逆像がかなり強く出ているので少しわかりにくいですが)、VA液晶パネルはグレー/ホワイトの背景で応答が遅く、IPS液晶パネルはそれらの中間的な性能です。またIPS液晶パネルの中でも高級(高価)なものはTN液晶に近い高速な応答速度を実現しています。
動画で実際の動作を確認してみても、TN/VA/IPSの液晶パネルタイプ別に一般的に語られる性質に則した結果になっていることが確認できました。





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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)



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