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28コア56スレッドのサーバー・ワークステーション向けウルトラメニーコアCPUながら、倍率ロックフリーでユーザーによるオーバークロックにも対応する「Intel Xeon W-3175X(型番:BX80673W3175X)」をレビューしていきます。Xeon W-3175Xが、Intelの仕様値通りTDP255Wで運用できるのか、さらに同製品がエンスー向けCore-Xシリーズ最上で18コア36スレッドのCore i9 7980XE/9980XEや、競合製品で32コア64スレッドCPUのRyzen Threadripper 2990WXと比較してクリエイティブタスクやPCゲーミングにおいてどれくらい性能を発揮しているのか各種ベンチマーク比較によって徹底検証します。
製品公式ページ:https://www.intel.co.jp/content/www/jp/ja/products/processors/xeon/w-processors/w-3175x.html
Intel Xeon W-3175X レビュー目次
1.Intel Xeon W-3175Xの外観・付属品・概要
2.Intel Xeon W-3175Xの検証機材・動作設定
3.Intel Xeon W-3175Xの動作クロック・消費電力・温度
4.Intel Xeon W-3175Xの基礎ベンチマーク
5.Intel Xeon W-3175Xのクリエイティブ性能
6.Intel Xeon W-3175Xのゲーミング性能
7.CPUエンコーダとリアルタイム配信について
8.Intel Xeon W-3175Xのレビューまとめ
Intel Xeon W-3175Xの外観・付属品・概要
「Intel Xeon W-3175X」の外観や付属品について簡単にチェックしておきます。またこの章では「Intel Xeon W-3175X」の仕様等について簡単に触れておきたい概要もあれば紹介します。「Intel Xeon W-3175X」のパッケージは、第9世代Core-Xシリーズの最上位モデルCore i9 9980XEと似た質感の化粧箱になっていますが、内装は「Intel Xeon W-3175X」の方が簡素でした。
LGA3647ソケットに対応する「Intel Xeon W-3175X」は、競合製品Ryzen ThreadripperやEPYCと同様に縦長の形状です。ヒートスプレッダにはソルダリングを期待させる穴が開いていますが残念ながらTIMはシリコングリスです。
「Intel Xeon W-3175X」とAMD Ryzen Threadripper、Intel Core-XのCPUサイズを比較すると下のようになっています。「Intel Xeon W-3175X」などLGA3647系CPUとAMD Ryzen Threadripperはほぼ同サイズでした。
「Intel Xeon W-3175X」の動作倍率について、仕様値はベースクロック3.1GHz、TB2.0ブーストクロック4.3GHz(2コアまで)と表記されているだけでそれ以上の詳細値は公式には発表されていません。実際に組み込んで確認したところ、「Intel Xeon W-3175X」の1コアから全28コアまで負荷がかかった時のコア数に対する動作倍率は『最大動作コア数 / 最大動作倍率』を1セットとして、[2/43 4/41, 24/40, 28/38]となっていました。
Intel Core-XとLGA2066のプラットフォームと比較して、メモリチャンネルが6チャンネルで最大12枚刺しになっているところが最大の違いで、LGA2066のXeon Wシリーズ同様にECCメモリもサポートしています。一方でPCIEレーン数についてはCPU直結48レーンで、Core-XやXeon Wの44レーンから4レーン増えていますが、C621チップセット経由は20レーンでX299チップセットの24レーンよりも4レーン減っているので、合計のPCIEレーン数は計68レーンとなっており若干物足りなさを感じます。
対応マザーボードASUS ROG Dominus ExtremeのPCIEスロットやM.2スロット/U.2端子の構成を見ても「Intel Xeon W-3175X」のCPU直結PCIEレーン数は64レーン欲しかったというのが正直な感想です。
Xeon W-3175Xと、同社のエンスー向けCPU最上位モデルCore i9 9980XE/7980XE、競合AMDのエンスー向けCPUであるRyzen Threadripper 2990WXを比較すると次の簡易比較表のようになっています。
Xeon W-3175X スペック簡易比較 | |||
Xeon W-3175X | Core i9 9980XE Core i9 7980XE |
Ryzen TR 2990WX | |
コアスレッド | 28コア56スレッド | 18コア36スレッド | 32コア64スレッド |
ベースクロック | 3.1GHz | 3.0GHz 2.6GHz |
3.0GHz |
TB2.0 | 4.3GHz | 4.4GHz 4.2GHz |
- |
TB3.0(1/2コア最大) |
- | 4.5GHz 4.4GHz |
4.2GHz |
キャッシュ | 38.5MB | 24.75MB | 64MB |
TDP | 255W | 165W | 250W |
メモリチャンネル |
x6 | x4 | |
最大メモリ容量(16GB) |
196GB | 128GB | |
PCIE3.0(CPU) |
48 | 44 | 64 |
Xeon W-3175Xと同時期に発表されたIntel第9世代Core-Xと前世代の大きな違いとしては、Core i9 7980XEなど前世代のCore-XではCPUダイ-ヒートスプレッダ間のTIM(Thermal Interface Material)にはシリコングリスが使用されており冷え具合に難があると批判されていましたが、Core i9 9980XEなど第9世代Core-XのTIMは質の高いソルダリングに近い熱伝導効率を発揮できる「STIM」が採用されています。
しかしながら「Intel Xeon W-3175X」ではCPUダイとヒートスプレッダ間のTIMとして、ソルダリングでもSTIMでもなく、シリコングリスが採用されています。
余談で「Intel Xeon W-3175X」の対応マザーボードASUS ROG Dominus Extremeについて、ATX 24PINやEPS 8PINの電源端子が大量にあるものの、定格や300W前半の軽いOCで運用する分には1200Wクラスのハイエンド電源ユニット1台で運用できます。
また搭載するPCケースについて横幅だけでなく、55mmほど長い高さでPCケース天面との干渉にも注意が必要という難点はありますが、マザーボードの固定ネジ穴のうち左から中央やや右までの8個のネジ穴はATXマザーボードと互換であり、バックプレートでマザーボード基板も補強されているので、スペースさえ問題なければ一般のPCケースにも設置可能です。
Intel Xeon W-3175Xの検証機材・動作設定
以下、「Intel Xeon W-3175X」の各種検証を行うベンチ機、および比較対象となる各CPUのベンチ機の詳細となります。Intel Xeon W-3175X環境 テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Xeon W-3175X (レビュー) |
マザーボード | ASUS ROG Dominus Extreme (レビュー) |
CPUクーラー | Noctua NH-U14S DX-3647 (レビュー) |
メインメモリ | Corsair Dominator Platinum RGB DDR4 8GB*6=48GB (レビュー) 3600MHz, CL16-16-16-36-CR2 |
ビデオカード(共通) | ZOTAC RTX 2080Ti AMP Extreme Core (レビュー) |
システムストレージ(共通) | Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
OS(共通) | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット(共通) | ENERMAX MaxTytan 1250W (レビュー) Corsair RM650i |
ベンチ板 | DimasTech Easy XL |
「Intel Xeon W-3175X」については電力制限に関するIntel公式の仕様が公表されており、長期間電力制限(PL1)は255W、短期間電力制限(PL2)は510W、短期間電力制限時間(Tau)は32秒となっています。
しかしながらASUS ROG Dominus Extremeの標準設定では上記の電力制限が無効化されているようなので、下のようなBIOS設定によって明示的にIntelの仕様に合わせたPerCore最大動作倍率および電力制限を適用した状態で測定を行いました。理由は消費電力・温度等の章にて後述しますが、長期間電力制限/短期間電力制限については「255W/510W」と「200W/400W」の2種類について測定しています。
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する18年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、Intel Core-XやAMD Ryzen TRのようなハイエンドデスクトップ環境はもちろん、メインストリーム向けでもハイパフォーマンスな環境を目指すのであれば、システムストレージ用に一押しのSSDです。
・「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。Thermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスで適量が塗布されていれば、CPUクーラー固定時の圧着でヒートスプレッダ全体へ自然に伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
ただしIntel Xeon W-3175XなどLGA3647系CPUはCPUヒートスプレッダのサイズが大きいので、同じくCPUヒートスプレッダが大きいAMD Ryzen Threadripperのグリスの塗り方としてNoctuaが推奨している方式を真似て、今回はグリスを塗りました。
Intel Xeon W-3175Xの動作クロック・消費電力・温度
「Intel Xeon W-3175X」に関する検証のはじめに、「Intel Xeon W-3175X」の動作クロック、消費電力、温度など同CPUの基本的な動作についてチェックしていきます。簡単にメモリ関連について紹介しておくと、「Intel Xeon W-3175X」の検証機材には8GB×6=48GBのシステムメモリを搭載しています。検証機材メモリに使用しているのはXMPで3600MHz/CL18-19-19-39-CR2に対応する4枚組メモリキット「Corsair Dominator Platinum RGB CMT32GX4M4C3600C18」で、8枚中6枚を使用しました。
検証機材メモリのXMPプロファイルはメモリタイミングが検証機材の設定よりも緩めになっているのですが、Z390環境やX299環境と同じく、メモリ周波数3600MHz/メモリタイミングCL16-16-16-36-CR2で安定動作が確認できました。「Intel Xeon W-3175X」のシステムメモリはヘキサチャンネルで最大12枚対応となっていますが、クアッドチャンネル最大8枚対応のIntel Core-Xシリーズに近い感覚でメモリOCができると思います。
「Intel Xeon W-3175X」は28コア56スレッドのCPUであり、定格動作において1コアから全28コアまで負荷がかかった時のコア数に対する動作倍率は『最大動作コア数 / 最大動作倍率』を1セットとして、[2/43, 4/41, 24/40, 28/38]となっていました。
「Turbo Boost Power Max(長期間電力制限/Power Limit 1)」と「Turbo Boost Short Power Max(短期間電力制限/Power Limit 2)」については、「Intel Xeon W-3175X」では電力制限に関するIntel公式の仕様が公表されており、PL1=TDP=255W、PL2=510W、Tau=32が仕様値ですが、検証機材マザーボード「ASUS ROG Dominus Extreme」のBIOS標準設定ではいずれも無制限に変更されていました。
これまで検証してきたCore i9 9900KやCore i9 9980XEなどでも電力制限が標準で無効化されているという同様のケースはあり、通常であればBIOSからPL1=TDP=255W、PL2=510W、Tau=32をそのまま入力すればよかったのですが、Intel Xeon W-3175X&ASUS ROG Dominus Extremeの検証環境では少々問題があり、以下に注意しつつ、CPU消費電力や、その後のCPU性能検証における設定を考える必要がありました。
ASUS ROG Dominus ExtremeのBIOS上に「CPU Current Reporting」という設定項目があり、この項目の解説によると『CPUから参照される電流値の定義として、Intelの仕様では1.28倍のオフセットをかける』と記載されています。
逆説的な説明になりますが、つまり長期間電力制限の値を255Wに設定した場合、電力制限で参照される値のCPU Package Powerが240~255Wで変動するように制御されるため、実際の消費電力は1.28に乗算された320~330W前後になります。(正しくは320~330W程度の負荷がかかった時、CPUから見えるCPU Package Powerは1.28で除算した数値の240~255Wとなり、実際の消費電力は255Wを明らかに超過しているのに長期間電力制限が機能しない)
続いてCPU消費電力の検証結果をチェックしていきますが、管理人は”CPU温度への影響要因”という意味においてCPU消費電力を評価しているので、当サイトのCPUレビューでは動画のエンコードによって長期間電力制限が効いている状態の平均的な消費電力をCPU消費電力として比較します。
個人的な意見としては短期間電力制限は短期間かつCPU温度によっても制御されるのでCPU温度への影響要因として比重は小さく、また瞬間ピーク電力はせいぜいがTDP+100W程度なので、マザーボードVRM電源の破損を心配するほどではなく、その程度の電力超過は電源ユニットで十分吸収できるので、評価対象としてあまり意味がないと思っています。
またCPU製品仕様のTDPについては、定義がIntel/AMDで厳密には異なり、各社の具体的な測定・算出方法も不明なので、CPU動作クロックを含めて総合的に判断する必要があるものの、基本的には長期間電力制限時の消費電力がTDP仕様値とほぼ一致、もしくはTDP仕様値を下回れば正常であると評価します。
当レビュー記事では簡単のため割愛しますが、CPUの消費電力に関する評価基準の補足として下記の記事も参考にしてください。
・2019年最新CPUの消費電力・発熱・TDP・温度について - 爆熱評価のウソほんと
CPU消費電力の測定には電源ユニット「Corsair HX1200i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの出力ではなく変換ロスを差し引いた入力電力をチェックしています。
また電力測定の際は上記の主電源ユニットに加えて、CPUへの電力供給を行うEPS端子を除いた、各種電源端子へ接続するために別の副電源ユニットを使用しています。そのため測定値にはEPS電源端子を経由して供給されるCPU消費電力以外の消費電力は含まれません。なお電源ユニットに対する実際の最大瞬間負荷は測定値より50~100W上回る場合があるので電源ユニットの電源容量選択の参考にする場合は注意してください。
CPUの消費電力や温度の測定を行う負荷テストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、Aviutl&x264を使って動画のエンコードを行います。動画エンコードの同時実行数については4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列実行、16コア以上は3並列実行としています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTやPrimeなど専用負荷ソフトを使用しているレビューもありますが、管理人の私見としてはCPU負荷が非現実的なので、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースを想定した場合、ほぼ最大のCPU負荷となるx264による動画エンコードとストレステストに採用しています。
「Intel Xeon W-3175X」と比較対象の各CPUについて、上記負荷テスト中の”平均値を消費電力”、”最大値を瞬間的な最大電源負荷”と表記した場合、消費電力測定結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
まず「Intel Xeon W-3175X」をIntel仕様値であるTDP255Wにそろえて長期間電力制限を255Wとして測定を行ったのですが、EPS電源への入力電力を確認したところ実際の消費電力は326Wとなり255Wから70W程度も上回る結果となりました。Core i9 7980XEやCore i9 9900Kに仕様値TDPの電力制限を課した場合10~20W程度上回るのは確認していますが、程度の問題としてこの設定が「Intel Xeon W-3175X」の定格動作なのか疑問が残ります。
一方でBIOS設定のうち電力制限のみ長期間電力制限:200W/短期間電力制限:400Wに変更すると、「Intel Xeon W-3175X」の消費電力は263Wとなり、TDP255WのCPUとしては妥当な数値になりました。
上の消費電力の測定結果には少々疑問が残ったので、「Intel Xeon W-3175X」の『PL1:255W/PL2:510W』と『PL1:200W/PL2:400W』の2つの検証BIOS設定に関して、Blenderのベンチマーク、Aviutl&x264の動画エンコード、DxO PhotolabのRAW現像の3種類の負荷テストを実行し、CorsairLinkでモニタリングした消費電力、HWiNFOからモニタリングしたCPU Package PowerとCPUコアクロックの推移をグラフ化して確認しました。
『PL1:255W/PL2:510W』では3種類の負荷に対して電力制限の参照値となるCPU Package Powerは平均250W前後、実際の消費電力も320~330W前後となり、『PL1:200W/PL2:400W』でもCPU Package Powerは平均200W前後、実際の消費電力も250~260W前後でした。
いずれの電力設定でもコアクロックは全28コア負荷時の最大動作倍率である3.8GHzよりも低い値で変動しており、BIOSから任意に設定した長期間電力制限自体は正常に動作していると判断して良さそうな結果です。またBlenderの100~130秒の区間とDxO Photolabの30~70秒の区間では一時的にCPU Package Powerが短期間電力制限下で超過し、短期間電力制限時間の経過後、長期間電力制限によって制御されている様子も確認できます。
端的に言って『長期間電力制限および短期間電力制限は正常に動作』しています。CPU Package PowerとEPS電源経由の消費電力に比較的大きな乖離が見られる原因については『電力制限の参照値となるCPU Package Powerに対してオフセットがかかっている)』からです。
なお消費電力比較で参考値として使用しているAviutl&x264では短期間電力制限によるターボブーストが効かないor効きが弱いことが確認できました。(Xeon W-3175Xのみ、その他のIntel CPUでは検証設定でターボブーストは正常に動作しています) Aviutl&x264ではXTUのインジケーターによると、CPU Power LimitではなくCPU Current Limitが何故か機能していました。
上の消費電力比較で参考にしているAviutl&x264による動画エンコードではターボブーストが効かないので最大瞬間負荷が低く出ていますが、BlenderのベンチマークやDxO PhotolabのRAW現像ではそれよりも高い数値を示しており、ターボブーストによる実際の消費電力の最大値として『PL1:255W/PL2:510W』の設定では420W前後が確認できました。短期間なので温度要因としては影響は小さいですが、電源ユニットの選定で100W程度余分に電源容量を見込む必要があるのでその点は注意してください。
続いて「Intel Xeon W-3175X」がNoctuaからリリースされているIntel LGA3647専用サイドフロー型空冷CPUクーラーで運用できるかどうかを検証してみました。検証負荷には消費電力測定と同様に動画のエンコードを実行しています。
「Intel Xeon W-3175X」の発売に合わせてAsetekから極厚360サイズラジエーターと専用銅製ベースプレートを搭載した簡易水冷CPUクーラー「Asetek 690LX-PN」がリリースされましたが、Noctua製LGA3647専用サイドフロー型空冷CPUクーラーの上位モデル「Noctua NH-U14S DX-3647」の冷却性能が「Intel Xeon W-3175X」に通用するのかチェックしてみます。
「Intel Xeon W-3175X」を「Noctua NH-U14S DX-3647」で冷やしてみた場合、ファン回転数1200RPMに固定して、CPU温度は平均69.6度、最大72度でした。CPUの電力制限には『PL1:255W/PL2:510W』を適用しており実際のCPU消費電力は320~330W前後となっていますが、「Intel Xeon W-3175X」において温度依存で制限のかかる閾値85度よりも十分に低いCPU温度に収まっています。大型銅製ベースプレート採用でLGA3647系CPUに最適化されたNoctua製空冷CPUクーラーなら「Intel Xeon W-3175X」を問題なく運用できることがわかります。
「Xeon W-3175X」はCore i9 9980XEなど第9世代Core-Xよりも大幅に消費電力が高く、ヒートスプレッダ間のTIMも準ソルダリングな熱伝導効率なSTIMではなくシリコングリスですが、CPUダイとヒートスプレッダが十分に大きく、つまり接触面積の大きさ(熱交換効率の高さ)で有利なこともあって、300W超の非常に大きい消費電力(発熱)でも放熱容量さえ十分なら空冷CPUクーラーで問題なく運用できるようです。
「Intel Xeon W-3175X」に『PL1:200W/PL2:400W』の設定を適用して長時間の負荷をかけた時、CPU Package Powerが200W前後となり、EPS電源端子経由の消費電力は平均260W程度、コアクロックは平均3.0GHz前後でした。「Intel Xeon W-3175X」の仕様値はTDP255W/ベースクロック3.1GHzとなっており、この設定ではコアクロックの平均値はベースクロック仕様値を僅かに下回りますが、誤差の範囲内(設定や条件の問題)として許容できなくもないので、「Intel Xeon W-3175X」は"CPUの特性それ自体は"、Intelが公式に発表しているようにTDP255Wでベースクロック3.1GHzというスペックを満たしていると考えていいと思います。
一方でASUS ROG Dominus ExtremeのBIOS上に配置された「CPU Current Reporting」という設定項目および、『CPUから参照される電流値の定義として、Intelの仕様では1.28倍のオフセットをかける』という記載内容については問題視せざるを得ません。
CPU Current ReportingこれまでCore i9 9900KやCore i9 7900Xなど電力制限が無効化されたことによって、公称TDPを明らかに逸脱する動作をした状態でレビューされることがあり、一部ではスペック詐欺と呼ぶ声もありましたが、当サイトでは「IntelはリファレンスM/Bや設定を指定すべき」「MBベンダーは標準設定で電力制限を無効化すべきではない」と評価していました。
Defines the Current seen byCPU.
Use "divide by 4' to prevent throttling or Intel' specified 'divide by 1.28'
which may cause throttling during overclocking.
しかしながら、『CPU Current Reporting : Intel's Specified 'divide by 1.28'』はそれらとは明らかに毛色が違い、MBベンダーが勝手にやったのではなくIntel自らが公称TDPを逸脱する動作にするよう指示したと示唆している、少なくともこの文面からはそう読み取れます。これまでの電力制限無効化とは異なり、スペック詐欺を疑われても仕方のない案件だと感じました。
1.28倍オフセットによって実際の消費電力が330前後となる『PL1:255W/PL2:510W』設定が使用されていると思しき状態で検証されたレビューが国内外ですでに数多く公開されています。性能比較とともに消費電力比較も掲載されているので、よく読んでいれば消費電力とTDPとの乖離が激しいことがわかりますが、『Ryzen Threadripper 2990WXとほぼ同じTDPで、Ryzen Threadripper 2990WXよりも高速と評価されたい(読み手にそう思わせたい)』というIntelの思惑が透けて見えるようで、かなり悪質な気がします。
Intel Xeon W-3175Xの基礎ベンチマーク
Intel Xeon W-3175Xの基本的なCPU性能を専用ベンチマークソフトで検証しました。この章ではPCMark 8とPCMark 10という総合ベンチマークソフトを使用していますが、デスクトップ向けの高性能CPUの性能比較ベンチマークとしては頭打ちな傾向があり、シングルスレッド性能(動作クロックの高さ)が重要になるのでIntel Core CPUに比べてAMD Ryzen CPUでは低めのスコアになります。レビュー項目の1つとして参考までにスコア比較していますが、実用的なCPU性能については後半の個別性能比較を参考にしてください。
まずは「PCMark 8 Creative Test (Run Accelerated)」のベンチマーク結果をチェックしていきます。「PCMark 8」は動画再生能力、DirectX9のグラフィック性能、Webブラウジング、ビデオチャットなど一般ユースにおけるPCの総合的な性能を測定するためのベンチマークソフトです。
「Intel Xeon W-3175X」を含めた各CPU環境のPCMark 8ベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
「PCMark 10 Extended」のベンチマーク結果をチェックしていきます。「PCMark 10」はPCMark 8と同様にPCの総合的な性能を測定するためのベンチマークソフトですが、DirectX11に対応するなどPCMark 8よりも最近のPCの性能測定に最適化されています。
「Intel Xeon W-3175X」を含めた各CPU環境のPCMark 10ベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
「PCMark 10 Extended」にはPCの基本性能を測る「Essentials」、ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」、クリエイティブ性能を測る Digital Content Creation」、ゲーム性能を測る「Gaming」の大きく分けて4つのテストグループがあるので、個別にベンチマークスコアを比較してみました。
PCの基本性能を測る「Essentials」は、アプリケーションの起動に要する時間を測る「App Start-up」、 ウェブブラウジングの性能を測る「Web Browsing」、1対1または多対多のビデオ会議をシミュレートする「Video Conferencing」の3つのワークロードで構成されています。モバイル版Core i7を搭載するSurface Pro(2017)との比較でわかりますが、一般的なPC利用において大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Essentials」について「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」は、ワープロソフト(マイクロソフトWordなど)の処理性能をシミュレートする「Writing」、表計算ソフト(マイクロソフトExcelなど)の処理性能をシミュレートする「Spreadsheets」の2つのワークロードで構成されています。モバイル版Core i7を搭載するSurface Pro(2017)との比較でわかりますが、一般的なオフィスワークにおいて大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Productivity」について「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
クリエイティブ性能を測る「Digital Content Creation」は、写真に対するフィルタリング処理の性能をシミュレートする「Photo Editing」、動画編集の性能をシミュレートするワークロード「Video Editing」、レイトレーシングによる3Dグラフィクス制作(3Dレンダリング)をシミュレーションする「Rendering and Visualization」の3つのワークロードで構成されています。
「Digital Content Creation」について「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
ゲーム性能を測る「Gaming」は、グラフィックボードの性能測定で幅広く活用されているベンチマークソフト「3DMark」に収録された「Fire Strike」と同じベンチマークテストを実行するワークロードです。
「Gaming」について「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Intel Xeon W-3175Xのクリエイティブ性能
Intel Xeon W-3175Xの3Dレンダリング、動画エンコード、RAW現像などクリエイティブ作業に関する性能を各種ベンチマークソフトで検証しました。CPUのマルチスレッド性能を比較するベンチマークソフトとして国内外で最も知られている「Cinebench R15」をはじめとして、Cinebenchの2019年最新バージョン「Cinebench R20」、オープンソース3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト、3Dレンダラー「Corona Renderer」の公式ベンチマークソフト、3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトの4種類を使用して、CPUの3Dレンダリング性能についてベンチマーク測定を行いました。
Cinebench R15は3Dレンダリング性能を測定するベンチマークソフトになっており、マルチスレッド性能を測定するテストとシングルスレッド性能を測定するテストの2種類を実行しています。また2019年最新バージョンのCinebench R20についてはマルチスレッド性能を測定するテストのみを実行しました。
Cinebench R15 マルチスレッド性能テストについて「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Cinebench R15 シングルスレッド性能テストについて「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Cinebench R20 マルチスレッド性能テストについて「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフトについて「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
「Blender」の公式ベンチマークソフトのレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i9 9900Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。 【全CPU比較データ】
3Dレンダラー「Corona Renderer」の公式ベンチマークソフトについて「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
3Dレンダラー「Corona Renderer」の公式ベンチマークソフトのレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i9 9900Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。 【全CPU比較データ】
3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトについて「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトのレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i9 9900Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。 【全CPU比較データ】
続いて無料で利用できる動画編集ソフトとして国内外で多数のユーザーがいる「Aviutl」と、商用動画編集ソフト「TMPGEnc Video Mastering Works 7」を使用して、「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUの動画エンコード性能を比較していきます。
AviutlとTMPGEnc Video Mastering Works 7はいずれも、現在主流なH.264 (MPEG-4 AVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x264」エンコーダ、そしてH.264より高圧縮・高画質で次世代規格として期待されているH.265(HEVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x265」エンコーダが使用できるので、CPUをリソースとして各エンコーダで共通の動画ファイルのエンコードを行いました。
エンコードを行う動画ファイルについては、Tom Clancy's Ghost Recon Wildlandsのゲーム内ベンチマーク(60秒ほど)をNVIDIA ShadowPlayで録画したものを使用しています。1920×1080/60FPS/50Mbpsと3840×2160/60FPS/120Mbpsの2種類の動画ファイルを作成し、「1920×1080 to 1920×1080」、「3840×2160 to 1920×1080」、「3840×2160 to 3840×2160」の3種類のエンコードを行っています。
Aviutlのx264/x265のエンコード設定は次のスクリーンショットのようになっています。TMPGEnc Video Mastering Works 7については固定ビットレートで1920×1080へエンコードする場合は25Mbps、3840×2160へエンコードする場合は60Mbpsに設定しています。
なおエンコーダと解像度設定が同じであればaviutlとTMPGEncのCPU別エンコード速度の傾向はほぼ一致するので、aviutlのケースを抜粋してグラフを掲載します。aviutlとTMPGEncの全CPU比較データはリンクから各自で参照してください。x2/x3/x4のバーについては同じエンコードを添え字の数だけ並列実行した時の合計変換フレームレートを示しています。
x264エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】
x264エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】
x264エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】
x265エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.265(HEVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】
x265エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.265(HEVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】
x265エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.265(HEVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)】
加えてAdobe Premiere Pro(Media Encoder)による動画エンコードについても、「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUの動画エンコード性能を比較しました。
Adobe Premiere Proのエンコード設定はCPUリソースのx264エンコードで、1920×1080へエンコードする場合は25Mbps、3840×2160へエンコードする場合は60Mbpsの固定ビットレートです。Media Encoderでは1つのプロジェクトを複数の設定で同時にエンコードできますが、複数のプロジェクトを同時にエンコードすることができないので単一エンコードのみを比較しています。
Adobe Premiere Proによる動画エンコードについてはAMD Ryzen CPUは苦手である評価されていることが多いですが、2019年現在では最適化も進んでおり、コアスレッド数とコアクロックに比例した性能が発揮できるようになっています。
【Adobe Premiere Pro 全CPU比較データ:1920to1920 / 3840to1920 / 3840to3840】
続いてDxO PhotoLabによるRAW現像を行って「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。「SONY DSC-RX100M5」で撮影した5472×3648解像度のRAW画像ファイル 100枚に対して、DxO PhotoLabの画質プリセット「DxO 標準」をベースにノイズ除去を「PRIME」に変更したプリセットを適用し、RAW現像を行いました。なおDxO PhotoLabによるRAW現像は並列処理数を設定できますが、CPUコア数の半分もしくはそれより一つ少ないくらいの並列処理で最速になるようです。
DxO PhotoLabによるRAW現像速度について「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
最後に「Unreal Engine 4」や「Unity」などフリーウェアながら高画質なPCゲームやスマホゲームを製作可能なゲームエンジンを使用したゲーム制作におけるCPU性能の検証として、「Unreal Engine 4」で「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。検証にはEpic Games Storeで無料配布されているデモプロジェクト「Infiltrator」を使用したビルド時間の比較を行います。検証設定としてリアルタイム表示はオフ、ライティングの品質をプロダクションとしています。
「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間について「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ】
「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i9 9900Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのビルド速度を性能比としてグラフ化しました。 【全CPU比較データ】
Intel Xeon W-3175Xのゲーミング性能
Intel Xeon W-3175XのPCゲームに関する性能を実ゲームを用いたベンチマーク測定で検証しました。なお章タイトルではゲーミング性能と表記してはいますが、Intel 7/8/9Gen Core-SやAMD Ryzen 3/5/7などここ1,2年で発売された4コア4スレッド以上のCPUであればフルHD~4K解像度の60FPSターゲットにおいてCPUボトルネックが発生するケースは少ないので、内容としては”高フレームレートにおけるCPUボトルネック比較”というのが実状に即しています。
ただし最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあるので、ゲーミングPCに搭載するCPUとして6コア6スレッド以上を個人的に推奨しています。
各CPUのゲーミング性能を測定するため統一検証機材として、2019年最新にして最速のGPUである「NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti」を搭載したグラフィックボード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Core」を使用しています。
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Coreは、RTX 2080 TiのAIBパートナーの中でも屈指のOCチューニング力を誇るZOTACによって良質なGPUコアが選別され、リファレンスよりも200MHz以上も高いブーストクロック、さらにGDDR6メモリのメモリクロックまで引き上げるという、RTX 2080 Tiグラフィックボードで最速を狙えるファクトリーOCが施されています。加えて、ZOTACを高品質メーカーとして一躍ブランド力を押し上げたAMP Extremeシリーズの代名詞とも言える3スロットを占有する超弩級な大型GPUクーラーが採用され、静音性も非常に優れたモデルです。
・「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme」をレビュー
CPU別ゲーミング性能の比較には2019年最新PCゲームから、Assassin's Creed Odyssey、Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands、Shadow of the Tomb Raider、Middle-Earth: Shadow of War、PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(PUBG)の5種類を使用しています。60FPSの標準フレームレートをターゲットとした4K(3840×2160)解像度/高画質設定と、100FPS以上のハイフレームレートをターゲットとしたフルHD(1920×1080)解像度/中画質設定の2種類について、各ゲームで平均フレームレートと最小フレームレートを測定しました。
なおCPUボトルネック比較の性質上、最小FPSをある程度の精度で測定する必要があるためPUBG以外の4種についてはほぼ同一シーンで測定が可能なゲーム内ベンチマークを使用しています。
PUBGについてはゲーム内ベンチマークがないのでトレーニングモードで可能な限り他プレイヤーの影響を受けないように注意して測定しています。そのためPUBGベンチマークのフレームレートはRTX 2080 Tiで通常プレイを行った場合より高めです。(RTX 2080 TiでPUBGのプレイした時のフレームレート)
またPUBGのフルHD/中-画質プリセットについては最小フレームレートも記載していますが、他プレイヤーの位置によって変動が大きいのであくまで参考値に留めてください。
まずは60FPSの標準フレームレートをターゲットとした4K(3840×2160)解像度/高画質設定のゲーミング性能について「Intel Xeon W-3175X」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。
Assassin's Creed Odyssey(4K解像度、超高-画質プリセット)に関する「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands(4K解像度、非常に高い-画質プリセット)に関する「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Shadow of the Tomb Raider(4K解像度、DirectX12、最高-画質プリセット)に関する「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Middle-Earth: Shadow of War(4K解像度、ウルトラ-画質プリセット)に関する「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(4K解像度、ウルトラ-画質プリセット)に関する「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
続いて100FPS以上のハイフレームレートをターゲットとしたフルHD(1920×1080)解像度/中画質設定のゲーミング性能について「Intel Xeon W-3175X」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。
Assassin's Creed Odyssey(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Shadow of the Tomb Raider(フルHD解像度、DirectX12、中-画質プリセット)に関する「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
Middle-Earth: Shadow of War(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ】
PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「Intel Xeon W-3175X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。最小フレームレートは他プレイヤーの位置によって変動が大きいのであくまで参考値です。 【全CPU比較データ】
CPUエンコーダとリアルタイム配信について
CPUをエンコーダにしたPCゲームのリアルタイム配信について、現在ではNVIDIA GeForce GTX 1660やAMD Radeon RX 580などミドルクラスGPUをエンコーダとすることでフルHD解像度で必要十分な画質とフレームレートが得られるようになっており、GPUエンコーダは動作自体も軽いので、これらGPUエンコーダの登場によってリアルタイム配信やプレイ動画の録画におけるCPUエンコーダの役目は終わったというのが私見です。一部レビューサイトではCPUエンコーダを使ったリアルタイム配信動画の滑らかさやプレイングフレームレートの維持が性能比較の1つの項目になっていたり、またそういった配信性能をCPU別にまとめた記事も存在したりして、管理人も検証項目の1つとして検討してみたのですが、実用的な意義があまり見いだせないというのが正直なところで、長らくCPUレビューテンプレの中でも保留していました。
ビデオキャプチャ業界の進歩も目覚ましく、18年に発売された「AVerMedia Live Gamer Ultra」は4K/60FPS/HDRやフルHD/240FPSの映像ソースを無遅延なパススルー表示しつつ、フルHD/60FPSのプレイ動画として録画・配信できるUSB接続外付け機器型ビデオキャプチャとなっており、プレイ動画の録画・配信に関する多様なニーズを網羅し得る名機です。
・4K/HDRや240FPSのパススルー対応「AVerMedia Live Gamer Ultra」をレビュー
前述の通りフルHD/60FPSの録画・配信であればGTX 1060程度の性能のGPUをエンコーダとすることで必要十分な画質が得られて動作も軽いので、録画配信のために高性能な反面、非常に高額なCPUに投資するよりも、多少コストがかかっても「AVerMedia Live Gamer Ultra」などのビデオキャプチャと組み合わせて録画・配信用サブ機を構築するほうが、録画・配信の手法としてはわかりやすくてハードルが低いと思います。
・AVerMedia製ビデオキャプチャの最新おすすめ機種を機能比較
「AVerMedia Live Gamer Ultra」などUSB接続外付け機器型ビデオキャプチャと組み合わせて録画・配信用サブ機を構築するのであれば、ASRock Deskmini GTX 1060ベアボーン採用BTO PCの「G-GEAR alpha」や「GALLERIA Mini 1060」がおすすめです。
PCサイズはコンパクトなのでサブ機としてもあまり余分にスペースを占有せず、GPUにはGTX 1060を搭載しておりフルHD/60FPSのGPUエンコードにも余裕で対応できて、CPUには最大で「G-GEAR alpha」ならCore i7 8700、「GALLERIA Mini 1060」ならCore i7 7700を選択可能、2基の2.5インチSATA SSDと3基のM.2 SSDを搭載可能なのでストレージ拡張性も十分です。ASRock Deskmini GTXシリーズについてはレビューも公開しているので参考にしてみてください。
・GTX 1060搭載で容積2.7LのスーパーコンパクトPC「GALLERIA Mini 1060」をレビュー
・G-GEAR alphaシリーズの販売ページへ
Intel Xeon W-3175Xのレビューまとめ
「Intel Xeon W-3175X(型番:BX80673W3175X)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ or 概要
- Intelの28コア56スレッドCPU
- TDP255W制限下で全28コア同時3.1GHzの動作が可能
- 定格や300W前半に収まるOCならNoctua製LGA3647専用空冷CPUクーラーで運用が可能
- ウルトラメニーコアCPUながらハイフレームレートPCゲーミングにも強い
- 対応マザーボードがASUS ROG Dominus Extremeしかない
- 19年5月現在、税込み38万円と非常に高価、M/Bと合わせて56万円
- 謎の電力1.28倍オフセットという悪質なスペック詐欺?
【温度・消費電力について】
補足の章で解説した通りIntel Core i9 7900Xの登場以降、Intel CPUは検証機材に使用するマザーボードに依るとはいえ基本的にIntelの仕様を満たす電力制限が無効化されているので、「Intel Xeon W-3175X」も例にもれずCPU温度と消費電力が非常に高いと評価されることが多いですが、当然ながら、電力制限を適切に設定すれば問題なくTDP255WのCPUとして運用することができます。
TDP255Wに制限した場合の性能については各章で紹介した検証結果の通りで、「Intel Xeon W-3175X」は28コア56スレッドCPUらしい性能を発揮しています。
ヒートスプレッダは見ての通りですが「Intel Xeon W-3175X」はCPUダイ自体もCore-Xの上位モデルより大きいので、255~330WというCPU消費電力の大きさに反して意外と冷やすのは難しくありません。
500Wクラスのオーバークロックも視野に入れて「Asetek 690LX-PN」という非常にゴツい簡易水冷が準推奨CPUクーラーになっているので勘違いされるかもしれませんが、TDP255Wの定格や300W台前半のオーバークロックであれば「Noctua NH-U14S DX-3647」などLGA3647に最適化されたNoctua製空冷CPUクーラーでも十分に運用できます。
ただし2019年5月現在、「Intel Xeon W-3175X」に対応するマザーボード「ASUS ROG Dominus Extreme」だけですが、同マザーボードでは電力制限を無視した設定が標準設定に採用されているので、各自の冷却環境に応じて電力設定は適切に設定しなおすのをお勧めします。
あとIntel自らが公称TDPを逸脱する動作にするよう指示したと示唆している、少なくともこの文面からはそう読み取れる『CPU Current Reporting : Intel's Specified 'divided by 1.28'』は、スペック詐欺を疑われても仕方のない案件だと感じました。真剣にやめて欲しいです。
【クリエイティブ性能について】
2019年5月現在、Intelのメインストリーム向けCPUのコアスレッド数はCore i9 9900Kの8コア16スレッドが最大数で、エンスージアスト向けCPUであるCore-Xの最上位モデルCore i9 9980XEですが18コア36スレッドですが、今回レビューしている「Intel Xeon W-3175X」はCore i9 9900Kの3.5倍、Core i9 9980XEの1.55倍となる28コア56スレッドのCPUなので、コアスレッド数(とコアクロックの積)に比例して、現在市場に出回っているプロフェッショナルも含めた一般ユーザー向けCPUとしては最強クラスのマルチスレッド性能を実現しており、それはクリエイティブタスクにおける性能に反映されています。
28コア56スレッドの「Intel Xeon W-3175X」なら、”予算に糸目をつけないなら”との注釈は尽きますが、18コア36スレッドのCore i9 9980XEと比較してもコアスレッド数(とコアクロックの積)に比例したパフォーマンス向上が期待できます。
なお「Intel Xeon W-3175X」はユーザーによるオーバークロックに対応した倍率アンロックCPUなので定格よりもOCすると演算性能も当然伸びるのですが、この話については後日、別の記事を公開予定です。EKWB製水冷ブロックの「EK-Velocity WS - Narrow ILM」と「EK-VRM ASUS ROG Dominus Extreme」も購入したので水冷化でOCレビューしようかと検討しています。
Intel Xeon W-3175XとAMD製パーソナルワークステーション向けCPUで32コア64スレッドのAMD Ryzen Threadripper 2990WXと比較してみると、Xeon W-3175XがCore i9 9980XEの延長上にあるCPUであるのに対して、Ryzen Threadripper 2990WXはRyzen Threadripper 2950Xの延長上から脇にそれているという点で大きな違いがあります。
どういうことかというと、Xeon W-3175Xはある1つのクリエイティブタスクに28コア全てのパワーを集約してパフォーマンスを向上させることができるのに対して、Ryzen Threadripper 2990WXは3Dレンダリングなど一部の分野を除くとそういったマルチスレッド性能の集約ができません。4K動画エンコードの性能比較がこの意味を如実に表していると思います。
Ryzen Threadripper 2990WXは16コアを3Dレンダリングに、残り16コアを動画エンコードにというようなマルチタスキングには対応できても、32コアを1つのタスクに集約できるかどうかはそのタスクに依存するという意味で使用する人を選びますが(次世代Zen2ではCPUダイとI/Oダイが分けられて、この原因であるComputeダイのスループットというボトルネックが解消されると言われています)、Xeon W-3175Xはその両者をそつなくこなせます。
汎用性ではXeon W-3175Xに軍配が上がりますが、3DレンダリングやRAW現像のようタスクではXeon W-3175XとRyzen Threadripper 2990WXは互いに圧倒的なマルチスレッド性能を遺憾なく発揮しつつほぼ同性能なので、裏返せば4K動画編集やゲーム制作といったRyzen Threadripper 2990WXが苦手な分野に手を出さないユーザーにとっては、CPU&M/Bのプラットフォーム単位で半額以下となるRyzen Threadripper 2990WXのコストパフォーマンスが光ります。あとATXより少し横幅が長いE-ATXマザーボードの「MSI MEG X399 CREATION」や「ASUS ROG ZENITH EXTREME Alpha」で問題なく運用できるというハードルの低さもあります。
【ゲーム性能について】
「Intel Xeon W-3175X」はPCゲームのように全コアが稼働するものの負荷的には余裕でTDP255Wに収まるワークロードでは全コアが最大3.8GHzで動作することができるようになっており、ハイフレームレート環境においても同社のメインストリーム向けCPUに近いパフォーマンスが発揮できます。
第6世代以前のIntelエンスー向けCPUでは全コア負荷時の最大動作倍率がTDPに合わせて引き下げられていたため、手動OCをしないとメインストリーム向けCPUよりもゲーム性能で大きく劣るというのが通説でしたが、第9世代Core-Xシリーズと同様にXeon W-3175Xには当てはまりません。
GeForce RTX 2080 Tiを使用したハイフレームレート環境において、最もCPUボトルネックの緩和が期待できるCPUはIntelのメインストリーム向けCPU最上位モデルのCore i9 9900KやCore i7 9700Kであることは間違いありませんが、長らくPCゲーミング界で鉄板モデルだった4コア8スレッドCPUの最後を飾ったCore i7 7700Kと比較してもXeon W-3175Xのほうが上回っており、「Intel Xeon W-3175X」がPCゲーミングにも余裕で通用することがわかると思います。
「Intel Xeon W-3175X」を競合製品のAMD Ryzen Threadripper 2990WXと比較すると、「Intel Xeon W-3175X」はハイフレームレート環境においてこれを大幅に上回るゲーム性能を発揮しています。2990WXは新たに実装されたDynamic Local ModeによってPCゲーミングに関する性能が多少改善されましたが、それでもプレイしていてスタッターが発生する頻度が高く、PCゲーミングにおける実用性は微妙です。
コストパフォーマンスの高いハイエンドデスクトップ向けCPUとして評価されるRyzen Threadripper 2950Xと比較してもXeon W-3175XのほうがPCゲーミングに関しては高性能です。
ソフト面ではPS4/Xboxの高画質ゲームはPCとのマルチプラットフォームが増えつつあり、ハード面では安価なハイリフレッシュレートゲーミングモニタも増えてきてハイフレームレートなPCゲーミングも浸透しつつあるので、この分野に優れていることはXeon W-3175Xを含めてIntel製CPUの強みになりそうです。
なおゲーム性能検証の冒頭でも述べたようにフルHD~4K解像度の60FPSターゲットであれば4コア4スレッド以上の最新CPUであればどれを使用しても大差はありません。ただし最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあるので、ゲーミングPCに搭載するCPUとしては6コア6スレッド以上を個人的に推奨しています。
【総括-Xeon W-3175XをRyzen TR 2990WXやCore i9 9980XEと比較すると】
先日Core i9 9980XEをレビューした時に、『240Hzゲーミングモニタなどでオンライン対戦をガチで勝ちに行くならCore i9 9900K、クリエイティブタスクメインでコスパを考えるならAMD Ryzen Threadripper 2950X、予算度外視でPCゲーミングもクリエイティブタスクもと多方面に高パフォーマンスを発揮できるCPUが欲しいということであれば第9世代Core-Xシリーズ』と評価しましたが、「Intel Xeon W-3175X」も第9世代Core-Xシリーズの基準がほぼ当てはまると思います。
性能に関しては一切の隙が無く、1万円前後で買えるNoctua製空冷CPUクーラーで運用できるので若干ハードルが下がるとはいえ(依然としてマザーボードを内蔵できるPCケース探しに苦労しますが)、CPU&MBで55~60万円という莫大な予算を許容できるかどうか、「Intel Xeon W-3175X」はそれが全てかなと。
以上、「Intel Xeon W-3175X」のレビューでした。
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検証機材として使用している以下のパーツもおすすめです。
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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