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【快適配信】シリーズは、Youtube LiveやTwitchなどリアルタイム配信(ライブストリーミング)サービスで、PS4/Xbox/Switch等のコンシューマーゲーム機やPCゲームのプレイ動画・ゲーム実況を快適に配信するのに役立つ予備知識を紹介していくコーナーです。
【快適配信】シリーズの第1弾と第2弾ではビデオキャプチャを使用した配信に必要なCPU性能について紹介しましたが、第3弾ではPCゲームのプレイとOBSのx264エンコーダによるフルHD解像度の高画質な配信を”PC1台で”同時に行うのに必要なCPU性能について紹介します。
国内サイトで唯一(たぶん)、録画動画のフレームレートを厳密に数値化して各種CPUのリアルタイム配信性能をベンチマーク測定することに成功、その結果を元に比較しています!
検証システムと設定について
PC1台でPCゲームをプレイしながらCPUリソースのx264エンコーダによってフルHDの高画質な配信をするのに必要なCPU性能を検証するシステムや設定について最初にまとめておきます。まず比較サンプルとしてIntel製CPUでコアクロックを3.8GHzに固定し、6コア6スレッド、6コア12スレッド、8コア8スレッド、8コア16スレッドの4種類を検証しました。
検証に用いるPCゲームとして、Middle-Earth: Shadow of War(フルHD解像度、ウルトラ-画質プリセット)、Shadow of the Tomb Raider(フルHD解像度、最高-画質プリセット、DirectX12)、Far Cry New Dawn(フルHD解像度、最高-画質プリセット)、The Division 2(フルHD解像度、ウルトラ-画質プリセット、DirectX12)の4種類でゲーム内ベンチマークを使用しています。
検証内容はシンプルに、フルHD/60FPSでPCゲームをプレイしながらフレーム落ちなくフルHD/60FPSで録画配信することができるCPU性能を調べます。PCゲームの録画配信はフルHD/60FPSで行うので、簡単のためPCゲームのプレイ解像度もフルHDとしています。またフレームレートについては60FPSを超過する状態でプレイするとPCゲームプレイ側にCPUリソースが余分に奪われるので、RivaTunerのFramerate Limitを使用して60FPSロックをかけています。
PUBGやフォートナイトなどバトルロイヤル系ゲームでは100FPS以上のハイリフレッシュレート(ハイフレームレート)でプレイしながら、フルHD/60FPSのゲーム実況が行われていますが、そのケースについては別記事で取り扱うことにします。
「OBS(Open Broadcaster Software)」を使用してプレイ動画の配信を行う場合、エンコーダとしてはCPUを使用するx264のソフトウェアエンコーダと、NVEncのようにNVIDIA/AMD製GPUを使用するハードウェアエンコーダがあります。フルHD解像度ならGeForce GTX 1660やRadeon RX 580のようなミドルクラスGPUで十分な画質とフレームレートが得られたコストパフォーマンス的にGPUエンコーダのほうがオススメという本音もあるのですが、今回は画質の高さで定評のあるx264エンコードについて紹介します。
NVIDIAによると、旧NVEnc(GTX 10XXシリーズ以前)、x264のFastプリセット、新NVEnc(RTX 20XX/GTX 16XXシリーズ)、x264のMediumプリセットの順番に高画質になるとのことなので、FastプリセットとMediumプリセットで快適に配信できるCPUを調べてみました。
エンコード設定としては上述の通りエンコーダはCPUを使用するソフトウェアエンコーダのx264、CPU使用のプリセット(画質に影響)はFastとMedium、ビットレート制御はCBRでビットレートはフルHD解像度の配信で主流な6Mbpsです。ちなみにYoutube LiveはフルHD解像度で12Mbpsに対応していますが、6Mbpsと12Mbpsを比べると12MbpsのほうがCPU性能を要求される傾向にあります。(ビットレートが高くするとCPU性能の要求が上がる)
プレイ動画の配信検証記事では実際に録画した動画の画面を見せてコマ落ちを読み手に確認させる形態が多いですが、当記事の特長として録画した動画のフレーム落ちを厳密に測定して、その推移や平均フレームレートから定量的に比較しています。おそらく国内でこの比較ができているのは当サイトだけ!
『60FPS>PCゲームプレイのフレームレート>録画動画のフレームレート』という関係は自明なので、録画動画のフレームレートの推移だけを確認しておけば、PCゲームのプレイと録画が60FPSで安定しているかどうかの両方を検証できます。
PCゲームをフルHDでプレイ&配信するのに必要なCPU性能 - x264 Fastプリセット
まずはPC1台でPCゲームをプレイしながら、x264エンコーダのFastプリセットによってフルHDの高画質な配信をするのに必要なCPU性能について紹介します。第1弾と第2弾の検証ではPS4/Xbox/Switch等のコンシューマーゲームもしくはPCゲームのプレイ画面をビデオキャプチャで取り込んでいたので、録画PCは録画・配信作業のみを行っていましたが、今回はPC1台だけでPCゲームのプレイと動画配信というマルチタスクを行うので、当然ながら単純な動画配信よりも高いCPU性能が要求されます。
Middle-Earth: Shadow of War(フルHD解像度、ウルトラ-画質プリセット)について、x264エンコーダのFastプリセット、CBR 6Mbpsで録画した時の各CPUのフレームレート推移は次のグラフのようになっています。
Shadow of the Tomb Raider(フルHD解像度、最高-画質プリセット、DirectX12)について、x264エンコーダのFastプリセット、CBR 6Mbpsで録画した時の各CPUのフレームレート推移は次のグラフのようになっています。
Far Cry New Dawn(フルHD解像度、最高-画質プリセット)について、x264エンコーダのFastプリセット、CBR 6Mbpsで録画した時の各CPUのフレームレート推移は次のグラフのようになっています。
The Division 2(フルHD解像度、ウルトラ-画質プリセット、DirectX12)について、x264エンコーダのFastプリセット、CBR 6Mbpsで録画した時の各CPUのフレームレート推移は次のグラフのようになっています。
一応確認のために6コア6スレッドCPUでも検証していますが、前回行ったビデオキャプチャを使用した単純な録画配信でも動画のフレームレートを維持できなかったので、さらに負荷が重くなる今回の検証では当然のようにCPU性能が足らず、紙芝居状態です。
8コア8スレッドは、TVゲームやPCゲームを映像ソースとしたビデオキャプチャ経由の単純な動画配信ならx264 Mediumプリセットでも問題なくこなせていましたが、PCゲームをプレイしながら同時に録画配信を行うケースではx264 Fastプリセットですら、フレーム落ちが大幅に発生しているのが一目でわかります。
6コア12スレッドについては、録画動画のフレームレート推移はPCゲームプレイ側のCPU使用率に大きく影響されるため、検証に使用しているPCゲームによってその傾向が大きく異なっています。Middle-Earth: Shadow of WarやFar Cry New Dawnは比較的CPU負荷が低いのでコアクロック次第では対応できそうですが、Shadow of the Tomb RaiderとThe Division 2になるとフレーム落ちが大きすぎて視聴には堪えない状態です。
x264エンコードにおいて高画質とされるFastプリセットとMediumプリセットの2種類のうち軽い方のFastプリセットですら、PCゲーム側CPU負荷を必要最小限にする60FPSロックをかけていても、フルHD/60FPSで快適に録画配信を行うには8コア16スレッド以上のCPUが要求されます。
PCゲームをフルHDでプレイ&配信するのに必要なCPU性能 - x264 Mediumプリセット
続いてPC1台でPCゲームをプレイしながら、x264エンコーダのMediumプリセットによってフルHDの高画質な配信をするのに必要なCPU性能について紹介します。Middle-Earth: Shadow of War(フルHD解像度、ウルトラ-画質プリセット)について、x264エンコーダのMediumプリセット、CBR 6Mbpsで録画した時の各CPUのフレームレート推移は次のグラフのようになっています。
Shadow of the Tomb Raider(フルHD解像度、最高-画質プリセット、DirectX12)について、x264エンコーダのMediumプリセット、CBR 6Mbpsで録画した時の各CPUのフレームレート推移は次のグラフのようになっています。
Far Cry New Dawn(フルHD解像度、最高-画質プリセット)について、x264エンコーダのMediumプリセット、CBR 6Mbpsで録画した時の各CPUのフレームレート推移は次のグラフのようになっています。
The Division 2(フルHD解像度、ウルトラ-画質プリセット、DirectX12)について、x264エンコーダのMediumプリセット、CBR 6Mbpsで録画した時の各CPUのフレームレート推移は次のグラフのようになっています。
MediumプリセットはFastプリセットよりも重いので当然の結果ですが、Fastプリセットでゲームによってはギリギリで対応できそうなフレームレート推移を見せた6コア12スレッドもMediumプリセットでは大幅にフレーム落ちが発生して、まともに対応できるのは8コア16スレッドのみという状況です。また8コア16スレッドについてもコアクロック3.8GHzではThe Division 2のようにCPU負荷の重いゲームでは多少のフレーム落ちが発生します。
x264 MediumプリセットでPCゲームのプレイ&配信をPC1台で実行しようと思うと、最低でも8コア16スレッドのCPUが要求されるのは当然として、Webカメラの映像の合成などさらにCPUリソースを使用することを考えると10コアや12コア以上のエンスー向けCPUが必要になることも想定されます。
コアクロックをOCしても8コア8スレッドや6コア12スレッドでは対応は難しいのか?
TDP65Wの一般的なCPUやAMD Ryzen CPUとの比較も想定して、以上の検証においてはコアクロックを3.8GHzに固定していましたが、6コア12スレッドのCore i7 8700Kや8コア8スレッドのCore i7 9700KなどK付きの倍率アンロックなIntel製CPUは、定格(TDP95W)でも4.3~4.5GHzで動作しますし、4GHz後半への手動オーバークロックで安定動作させることも難しくないので、コアクロックを約20%引き上げた全コア4.6GHzにおいて同様の検証を行ってみました。x264エンコーダのFastプリセット、CBR 6Mbpsで録画した時の各CPUのフレームレート推移は次のグラフのようになっています。
x264エンコーダのMediumプリセット、CBR 6Mbpsで録画した時の各CPUのフレームレート推移は次のグラフのようになっています。
Core i7 9700のような8コア8スレッドのCPUについて、コアクロック4GHz後半で動作させた場合ゲームのCPU使用率にもよりますが、今回検証した4種のゲームのうち比較的動作の軽いMiddle-Earth: Shadow of WarやFar Cry New DawnならFastプリセットで動画のフレームレートはそこそこ安定します。おそらくPUBGやフォートナイトなどバトルロイヤル系PCゲームもこのタイプだと思うので、フルHD/60FPSのプレイ&配信なら対応できそうです。
しかしながら、Shadow of the Tomb RaiderやThe Division 2などCPU負荷の大きいPCゲームについては、Fastプリセットですら動画フレームレートを安定させるのは難しく、Mediumプリセットは到底無理という状況です。
Core i7 8700Kのような6コア12スレッドのCPUについて、コアクロック4GHz後半で動作させれば、CPU負荷が重めのゲームでは若干のフレーム落ちは発生するもののFastプリセットは概ね視聴に耐える録画配信が可能になります。
6コア12スレッドと8コア8スレッドは、動画編集における動画のエンコード性能では同等のパフォーマンスと評価されることが多いですが、エンコードが間に合わないと次々にフレーム落ちしていくリアルタイム配信においてはマルチスレッディングに対応しているかどうかが動画フレームレートに大きく影響します。
このように8コア8スレッドよりはリアルタイム配信性能の高い6コア12スレッドですが、Mediumプリセットでの配信となるとやはり完全に対応するのが難しくなり、今回検証した4種のゲームのうち比較的動作の軽いMiddle-Earth: Shadow of WarやFar Cry New Dawnならフレーム落ちこそあれなんとか視聴には耐えますが、Shadow of the Tomb RaiderやThe Division 2などCPU負荷の大きいPCゲームでは、動画がガクガクになって快適な視聴は望めません。
最後に上のMediumプリセットに関するグラフでは8コア16スレッドでコアクロックを4.6GHzにしたものも掲載していますが、コアクロック3.8GHzでフレーム落ちの発生したThe Division 2でも安定した配信が可能になっています。
まとめ:OBSでPCゲームのプレイ&配信に必要なCPU性能は?
以上、PC1台でPCゲームをプレイしながらOBSでx264エンコーダによってフルHD解像度の高画質動画を配信するのに必要なCPU性能について検証結果を確認しましたが、高画質の基準となるx264のFastプリセットもしくはMediumプリセットで配信するには、基本的に8コア16スレッドが要求されるということがわかりました。2019年現在において8コア16スレッドのCPUとは、CPU単価6万円以上のメインストリーム向け最上位CPUであるCore i9 9900Kのことを指しており、CPUエンコーダによってPC1台でフルHD/60FPSのゲームプレイ&高画質配信を行うハードルはかなり高いことがわかると思います。6コア12スレッドや8コア8スレッドではコアクロックを4GHz後半にしてもPCゲームのプレイ&配信は対応が難しく、8コア16スレッドのCore i9 9900KですらCPU負荷が重めのPCゲームではコアクロックを4GHz後半にしてやっと対応できるような状況なので、配信動画の品質を向上のためビットレートを上げたり、ウェブカメラの映像を合成したりすれば、さらにCPU性能が要求され、10コア以上のエンスー向けCPUが必要になることも予想されます。
もちろんプリセットをFasterやVeryFastに下げれば6コア12スレッドや8コア8スレッドなど8コア16スレッドよりコアスレッド数の少ないCPUでも60FPSをキープしてPCゲームのプレイ&配信ができるようになると思いますが、それならNVEnc等のGPUハードウェアエンコーダを使ったほうが高画質とコストパフォーマンスを両立できると思います。
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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