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オーストリアのCPUクーラーメーカーNoctuaからリリースされた、Xeonスケーラブルプロセッサーの大型IHSと余すことなく接触する大型銅製ベースプレートを採用し、次世代高性能ファンNF-A12x25 PWMを2基搭載するLGA3647専用空冷CPUクーラー「Noctua NH-U12S DX-3647」のサンプル機を国内正規代理店TechAce様よりご提供いただけたのでレビューしていきます。
28コア56スレッド倍率アンロックかつXeonスケーラブルプロセッサーよりも高いTDP255WのIntel史上最速CPU「Intel Xeon W-3175X」を使用して「Noctua NH-U12S DX-3647」の冷却性能を徹底検証します。
国内正規代理店TechAce:https://techace.jp/product_info.php/products_id/3308
製品公式ページ:https://noctua.at/en/nh-u12s-dx-3647
マニュアル:https://noctua.at/media/blfa_files/manual/noctua_nh_u12s_dx-3647_manual_en_1.pdf
レビュー目次
1.Noctua NH-U12S DX-3647の梱包・付属品
2.Noctua NH-U12S DX-3647のヒートシンク
3.Noctua NH-U12S DX-3647の冷却ファン
4.Noctua NH-U12S DX-3647の外観
5.Noctua NH-U12S DX-3647の検証機材・セットアップ
6.Noctua NH-U12S DX-3647の各種クリアランス
7.Noctua NH-U12S DX-3647の冷却性能
8.Noctua NH-U12S DX-3647のレビューまとめ
補足.空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて
Noctua NH-U12S DX-3647の梱包・付属品
まずは「Noctua NH-U12S DX-3647」の外観や付属品をチェックしていきます。Noctua製のコンシューマープラットフォーム向けCPUクーラーはカラー刷りの製品パッケージですが、「Noctua NH-U12S DX-3647」は同社のサーバー・ワークステーション向けCPUクーラーということで茶箱にステッカーを貼っただけの簡素なパッケージです。
Noctua NH-U12S DX-3647の外パッケージを開くと、まず付属品が収められた小分けパッケージが現れ、その下にはCPUクーラー本体が収められています。
CPUクーラー本体は茶色段ボールのスペーサーに収められており、CPUクーラー本体を保護する段ボールは簡単な組み立て式です。各種付属品が収められた小分けのパッケージについて、コンシューマー向けCPUクーラーでは内容品一覧が天面にプリントされていますが、「Noctua NH-U12S DX-3647」はプリントなしの茶箱です。
「Noctua NH-U12S DX-3647」の付属品は、Square ILM用のマウントブラケット(NM-XFB6)とプラスチック製CPUクリップ、Narrow ILM用のマウントブラケット(NM-XFB7)とプラスチック製CPUクリップ、マウントブラケット固定ネジセット、PWM対応4PINファン端子2分岐Y字ケーブル「NA-YC1」、L字型ヘックスドライバー(ボールポイント)、マニュアル冊子となっています。
「Noctua NH-U12S DX-3647」が対応するIntel LGA3647ソケットにはCPUクーラーマウントとしてSquare ILMとNarrow ILMの2種類のレイアウトがありますが、それぞれに対応するマウントブラケットとCPUクリップが付属しています。Intel Xeon W-3175Xに対応するマザーボード「ASUS ROG Dominus Extreme」はNarrow ILMですが、「Noctua NH-U12S DX-3647」は使用できます。
詳しくは後ほど紹介しますが、CPUクーラー本体を簡単にチェックしておきます。
Noctua NH-U12S DX-3647は120mmサイズの冷却ファンをヒートシンクの前後に搭載していますが、基本的な見た目には標準的なサイドフロー型のCPUクーラーです。細かくチェックしていくとヒートシンクのアルミニウム放熱フィンがニッケルメッキで防錆処理されておりその独特の光沢も目を引きます。
ヒートシンクに冷却ファン等を装着した状態で重量を比較してみたところ、「Noctua NH-U12A」の重量は1144g、「Noctua NH-U14S DX-3647」は968gに対して、「Noctua NH-U12S DX-3647」は1037gでした。
Noctua NH-U12S DX-3647のヒートシンク
続いてNoctua NH-U12S DX-3647のヒートシンクをチェックしていきます。Noctua NH-U12S DX-3647のヒートシンクの放熱フィンは一般的なアルミニウム製ですがニッケルメッキ表面処理がされており、見た目に美しいだけでなく、汚れにくく錆びにくいというメリットもあります。Noctuaらしい質実剛健な工業製品的な美しさを全面に押し出したデザインです。
PCケースのサイドパネル側から見える放熱フィン上部にはメーカーロゴのNoctuaが刻印されています。
「Noctua NH-U12S DX-3647」のヒートシンクの放熱フィンはベースコアを中心にして前後左右で対称な形状、ヒートパイプの配置も中心対称になっているので、天面ロゴの向きを除けば、ヒートシンク本体には前後の別はありません。
放熱フィンのフィンピッチは狭すぎず広すぎずなちょうどいい塩梅で低速から高速まで幅広い冷却ファン動作に対応可能なピッチが採用されていました。側面は放熱フィンの末端が折り曲げ加工によって平面化されており、フィンを手で持った時に指を切る心配もありません。
ニッケルメッキの施された銅製ベースコアからは同じくニッケルメッキ銅製のヒートパイプが左右へ6本ずつ計12本伸びています。
「Noctua NH-U12S DX-3647」ではCPUヒートスプレッダと接する銅製ベースプレートに同社製ハイパフォーマンス熱伝導グリス「NT-H1」がハチの巣状に塗られています。
Noctua NH-U12S DX-3647のベースコアプレートはニッケルメッキの銅製でCPUクーラーヒートスプレッダとの接触面積を最大化するために鏡面化(平滑化)されています。
「Noctua NH-U12S DX-3647」などDX-3647シリーズには、既存のCPUと比較して超大型なヒートスプレッダを搭載するIntel LGA3647ソケットのXeonスケーラブルプロセッサーシリーズやIntel Xeon W-3175Xとピッタリサイズで70mm×56mmの大型銅製ベースプレートが搭載されています。
右はNoctuaのメインストリーム向け空冷CPUクーラーNH-U12Sの銅製ベースですが、「Noctua NH-U12S DX-3647」などDX-3647シリーズのベースサイズと比較するとその大きさは一目瞭然です。
CPUクーラーをマザーボードに固定するためのリテンションにはIntel LGA3647ソケットのために新たに開発された「SecuFirm2」という構造が採用されています。専用のマウントブラケットはSquare ILM用とNarrow ILM用の2種類がありますが使用する環境に合わせて付属のネジで固定します。固定ネジは六角ネジですが、付属のL字型六角ドライバーを使用して簡単にCPUクーラーへ装着が可能です。
マウントブラケットのネジはヒートシンク放熱フィンと被っていないので、ネジ止めの際にドライバーやレンチが斜めにならず、ネジ締めが容易な構造です。
Noctua NH-U12S DX-3647の冷却ファン
Noctua NH-U12S DX-3647には冷却ファンとして、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファン「Noctua NF-A12x25 PWM」が2基付属します。NF-A12x25 PWMは単品でも販売されているので保守部品の入手性についても心配ありません。「Noctua NF-A12x25 PWM」は定格2000RPMのPWM速度調整対応4PIN冷却ファンです。PWM速度調整によって450~2000RPMの範囲内で速度調整が可能です。また付属の低ファンノイズ変換アダプタ(L.N.A.)を接続すると降圧調整によって定格回転数が1700RPMに下がります。
「Noctua NF-A12x25 PWM」はベージュのファンフレームとブラウンのファンブレードというNoctuaらしいカラーリングです。『これぞNoctua!』という肯定的な意見もあれば、『ダサい、きたない』といった否定的な意見もある賛否両論なデザインですが、少なくともパッと見でNoctuaの存在を頭に刻み込むというブランド認知には一役買っていることは間違いありません。
冷却ファンのサイズは汎用120mmファンと同じです。乱流の発生により静音化を向上させるファンブレードに刻み込まれた溝構造「Flow Acceleration Channels」も採用されています。
またファンフレーム内側を階段状のすり鉢形にする「Stepped Inlet Design」構造によって大風量の実現や、エア流れを最適化し静圧の改善やノイズの低減に寄与するそうです。ファンフレームの四隅には防振ラバーパッドが装着されており冷却ファンの振動による共振の発生を抑制します。
「NF-A12x25 PWM」と「NF-F12 PWM」を比較すると「NF-A12x25 PWM」ではモーターハブが若干大型化されています。また中心部の材質をスチール製に、金色のアクスルマウントは真鍮製になっており補強が施されています。軸受けは従来機種でも採用されているNoctua第2世代「SSO2ベアリング」が使用され、さらに真鍮製CNCベアリングシェルによって軸ブレをなくし、高い耐久性が実現されています。
NF-F12 PWMでは直進整流効果が期待できる11枚羽の軸フレーム構造「Focused Flow frame」が採用されていましたが、「Noctua NF-A12x25 PWM」ではファンブレード回転方向と直交する向きに4本の軸フレームが伸びているシンプルな構造が採用されています。
「Noctua NF-A12x25 PWM」の最大の特徴は何といっても、0.5mmという限界に挑んだフレーム-ブレード間の隙間の小ささです。この間隔が狭いほど漏れる空気は少なくなりエアの直進性も増すので、回転数に対する風量の効率が増し、静音性も向上するという、シンプルイズベストなアプローチになっています。
超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」をファンブレードの素材として採用することによって、ファンブレード回転時の振動が軽減され、中心軸からぶれず、遠心力による変形が発生しないので、フレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現しています。
冷却ファンのヒートシンクへの固定方法はサイドフローCPUクーラーとしては一般的な針金のファンクリップを使用する方式です。冷却ファンのネジ穴にファンクリップ左右端のU字部分を引っかけます。
あとはヒートシンクの溝にファンクリップ中央を引っかけるだけです。ファンクリップには中央に指をかけやすい凸形状があるので着脱も容易な構造になっています。
「Noctua NH-U12S DX-3647」にはPWM対応4PINファン2分岐ケーブルも標準で付属しているので、ヒートシンク前後に設置されるNF-A12x25 PWMのファン電源は1つの4PINファン端子から取得できます。
Noctua NH-U12S DX-3647の外観
ヒートシンクと冷却ファンの個別チェックも済んだところで、ヒートシンクへ冷却ファンを組み込んで「Noctua NH-U12S DX-3647」の完成状態の外観や寸法をチェックしていきます。Noctua NH-U12S DX-3647は120mmサイズの冷却ファンをヒートシンクの前後に搭載していますが、基本的な見た目には標準的なサイドフロー型のCPUクーラーです。細かくチェックしていくとヒートシンクのアルミニウム放熱フィンがシルバーアルマイトで防錆処理されておりその独特の光沢も目を引きます。
アルミフィン1枚1枚にファンクリップ用の溝があるので、ファンを固定する高さはユーザー側で自由に設定可能です。高い位置にファンを固定すれば、当然その分だけCPUクーラーの高さが高くなります。
「Noctua NH-U12S DX-3647」の全高は冷却ファン位置のオフセットにもよりますが、製品仕様ではヒートシンクの頂点が全高の仕様値になっており、実機も仕様値通り高さ158mmです。
Noctua NH-U12S DX-3647の検証機材・セットアップ
「Noctua NH-U12S DX-3647」を検証機材のベンチ機にセットアップします。Noctua NH-U12S DX-3647の検証機材として、Intel Core i9 9900KとIntel Core i9 7980XEなどで構成されているベンチ機を使用しました。構成の詳細は下記テーブルの通りです。テストベンチ機の構成 | |
OS | Windows10 Home 64bit |
CPU | Intel Xeon W-3175X (レビュー) |
マザーボード | ASUS ROG Dominus Extreme (レビュー) |
メインメモリ | Corsair Dominator Platinum RGB CMT32GX4M4C3200C14 DDR4 8GB*12=96GB (レビュー) |
ビデオカード | MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | DimasTech Bench Table EasyXL(レビュー) |
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する18年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、Intel 第9世代Core-Xのようなエンスー環境はもちろん、Intel/AMDのメインストリーム向けCPU環境であってもシステムストレージ用に一押しのSSDです。
・「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
CPUクーラーの設置方法について、当サイトの評価基準となるチェックポイントは次の3つです。
- LGA115Xの場合、CPU固定バックプレートが単独でマザーボードに固定できるか
- マウントパーツ設置状態でCPUを交換できるか
- 空冷の場合、ネジ止めの場合はマザーボード側から固定できるか
簡易水冷or水冷ブロックの場合、ハンドスクリューなどツールレス固定ができるか
上の3項目を全て満たす例として本格水冷用のCPU水冷ブロックですが「EK-Supremacy EVO」のマウンタ構造は「バックプレートをM/Bに固定可能」「完全ツールレス」「マウンタ設置状態でCPUの交換が可能」なので本格水冷・簡易水冷クーラーの水冷ブロック固定方式としてはベストだと思っています。水冷クーラーメーカーにはどんどん真似してもらいたい理想的な構造です。
今回は「Noctua NH-U12S DX-3647」の対応環境の1つであるIntel Xeon W-3175Xに対応するIntel LGA3647マザーボード「ASUS ROG Dominus Extreme」を例にして設置手順を簡単に紹介します。
Intel LGA3647ソケットは既存のCPUソケット大きく異なるポイントとしてCPUソケット自体にはCPUを上から押さえつけて固定するフレームがありません。
「Noctua NH-U12S DX-3647」がサポートするLGA3647マザーボードでは単純にCPUクーラーで押さえつけて固定する形式のものが多くCPUやCPUクーラーの着脱に不安があります。(「ASUS ROG Dominus Extreme」にはCPUクーラーにCPUを固定するプラスチック製ツールが付属するのですが、)
しかしながら「Noctua NH-U12S DX-3647」にはCPUをCPUクーラー本体に固定できる「CPUクリップ」という黒色プラスチック製パーツが付属します。
CPUはCPUクリップに固定されて脱落せず、CPUクリップはCPUクーラーに固定されるので、CPUクーラーの着脱時にCPUクーラーからCPUが落下してマザーボードがピン折れするのを防止できます。
CPUクーラーをマザーボードに固定する準備はこれで完了したので熱伝導グリスをCPUのヒートスプレッダに塗布します。熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
Thermal Grizzly Kryonaut TG-K-001-RS(少量、1g)
Thermal Grizzly Kryonaut TG-K-015-RS(1.5ml)
Thermal Grizzly Kryonaut TG-K-030-RS(3.0ml)
親和産業
通常グリスを塗る量はてきとうでOKで、管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
ただしIntel Xeon W-3175XなどLGA3647系CPUはCPUヒートスプレッダのサイズが大きいので、同じくCPUヒートスプレッダが大きいAMD Ryzen Threadripperのグリスの塗り方としてNoctuaが推奨している方式を真似て、今回はグリスを塗りました。
CPUヒートスプレッダにグリスを塗ったら、CPUクリップの爪がCPUクーラーのマウントブラケットに引っかかるように上からCPUクーラーヒートシンクを被せ、裏返してからCPUクリップをしっかりとマウントブラケットに固定します。
マザーボードのCPUソケットにある▲マークと、CPUクリップの▲の切り抜きの位置が一致するように注意してCPUクーラーをマザーボードに置きます。
CPUクーラーヒートシンクを乗せたら、1.左右の対角ネジ、2.左右の中央ネジの順番に、付属のL字型ドライバーでネジ止めしします。
ファンクリップでヒートシンクに冷却ファンを装着したらNoctua NH-U12S DX-3647の設置完了です。
Noctua NH-U12S DX-3647の各種クリアランス
CPUクーラーの性能検証に入る前に、空冷CPUクーラーにはつきものである最上段PCI-Eスロットのグラフィックボードやヒートシンク搭載システムメモリとのクリアランス問題について「Noctua NH-U12S DX-3647」の事情をチェックしていきます。まずは「Noctua NH-U12S DX-3647」とマザーボードのプライマリグラフィックボード用PCI-Eスロットとのクリアランスについてチェックします。
「ASUS ROG Dominus Extreme」ではCPUクーラーとPCIEスロットの間隔の基準値として、CPUソケットのプラスチックフレーム外周下端からPCIEスロットの上端までを測定して、約31.0mmです。
「ASUS ROG Dominus Extreme」において最上段のPCIEスロットにプライマリグラフィックボードを設置しても、「Noctua NH-U12S DX-3647」とグラフィックボードが干渉することはありませんでした。
CPUクーラーとグラフィックボードの間には約10mmほどまだ余裕があるので、各自で使用するマザーボードにおいて、上で測定したCPUクーラーとPCIEスロットの間隔が約20.5mm以上あれば「Noctua NH-U12S DX-3647」を設置してもCPUクーラーとグラフィックボードの干渉は発生しません。
比較的大型な空冷CPUクーラーの多くに言えることですが、干渉しないとしてもCPUクーラーとグラフィックボードの隙間は狭いので、CPUクーラーの設置自体は問題ないのですが取り外しの際には少し困るかもしれません。取り付けよりも取り外しで困るというのは大型空冷CPUクーラーのあるあるネタなので注意してください。取り外しの際はグラフィックボード固定爪の解除のためにプラスチックの定規など細くて固いものを事前に用意しておくことをお勧めします。
続いて空冷CPUクーラーではヒートシンク付きDDR4メモリとの干渉が起きやすいのでリファレンス機材としてKingstonから提供いただいた「Kingston HyperX Fury」などを使用してCPUクーラーとメモリの干渉の有無をチェックしていきます。
その他のメモリのクリアランス検証の機材として「Samsung B-Die バルクメモリ(レビュー)」「Kingston HyperX Savage(レビュー)」「Kingston HyperX Predator RGB(レビュー)」「Corsair VENGEANCE LPX(レビュー)」「G.Skill Flare X(レビュー)」「G.Skill Trident Z Red/Black/RGB/Royal(レビュー)」「Corsair VENGEANCE RGB PRO(レビュー)」「Corsair Dominator Platinum RGB(レビュー)」も使用します。
まずはCPUクーラーとメモリの高さ方向のクリアランスをチェックしていきます。
「Noctua NH-U12S DX-3647」ではヒートシンクなしのDDR4メモリよりも全高が11mm高い「Kingston HyperX Predator RGB」を使用すると、冷却ファンの下端とヒートシンクの上端が一致し、製品仕様の通り全高158mmで運用することができます。「Kingston HyperX Fury」「Kingston HyperX Savage」「Corsair VENGEANCE LPX」などロープロファイルなメモリは余裕ですし、OCメモリとして定番の「G.Skill Trident Z Red/Black/RGB/Royal」でも干渉しません。
「Noctua NH-U12S DX-3647」ではファンを固定する高さをファンクリップの装着位置でオフセットして調節できますが、「Corsair Dominator Platinum RGB」など全高が42mmよりも背の高いヒートシンク付きメモリでは、42mmよりも高い分だけ冷却ファンの気流面とヒートシンク放熱フィンとがズレてしまいます。こういった使い方は避けた方が無難なので、後述の左右方向クリアランスでファンとメモリスロットが被る場合は、使用するメモリの高さに制限がかかると考えてください。
続いてCPUクーラーとメモリの左右方向のクリアランスをチェックします。
「ASUS ROG Dominus Extreme」にはCPUスロットの左右にメモリスロットがありますが、CPUクーラーと右側のメモリスロットの間隔の基準値として、CPUソケットのプラスチックフレーム外周右端からメモリスロットの右端までを測定して約16.1mmです。また左側は前述の右と対象に測定して16.8mmです。
「ASUS ROG Dominus Extreme」においては「Noctua NH-U12S DX-3647」の冷却ファンがCPUソケットに最も近い左右のメモリスロットに僅かに被さりました。
被り具合は僅かなので一般的なIntel LGA3647系マザーボードで考えた場合、上で測定したCPUソケットとメモリスロットの間隔が18mm程度あればCPUソケットに一番近いメモリスロットを使用するメモリ12枚刺しでもメモリと干渉フリーになると思います。
今回検証で使用した各種DDR4メモリと「Noctua NH-U12S DX-3647」のクリアランスに関する互換性を簡単にまとめると次の表のようになります。
Noctua NH-U12S DX-3647のメモリ互換性 | ||||
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高さ 全高 |
HS 厚み |
6枚刺し |
12枚刺し |
ヒートシンクなし | 31mm | - | 〇 | 〇 |
HyperX Fury | 34mm |
2.9mm | 〇 | 〇 |
HyperX Savage | 34mm | 3.1mm | 〇 | 〇 |
Corsair VENGEANCE LPX | 34mm | 3.0mm | 〇 | 〇 |
G.Skill Flare X |
39mm | 3.1mm | 〇 | 〇 |
HyperX Predator RGB | 42mm | 3.4mm | 〇 | 〇 |
G.Skill Trident Z RGB/Royal |
43mm +1mm |
3.6mm | 〇 | 〇 |
Corsair Vengeance RGB PRO |
49mm +7mm |
2.9mm | 〇 | △: 非推奨 |
Corsair Dominator Platinum RGB |
54mm +12mm |
3.4mm | 〇 | △: 非推奨 |
Noctua NH-U12S DX-3647のファンノイズと冷却性能
続いて本題となる「Noctua NH-U12S DX-3647」の冷却性能と静音性を詳細に検証していきます。検証システムをベンチ板に置いた状態で測定を行っているためCPUクーラーが水冷・空冷によらず基本的にCPUクーラーの理想的な性能をチェックすることになります。
比較対象として「Noctua NH-U12S DX-3647」の標準シングルファン構成に加えて、増設デュアルファン構成についても検証を行いました。
まずはサウンドレベルメーター(騒音計)を使用してファンノイズをCPUクーラー別で比較しました。騒音計の収音部分とノイズ発生部分との距離が15cm程度になる位置で測定を行っています。簡易水冷の場合はラジエーターとポンプ両方からの距離が15cm程度になるように設置しています。
電源OFF時の騒音値は33~35dBです。目安として40dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになり、45dB前後で煩く感じます。50dBを超えてくるとヘッドホンをしていても煩く感じます。同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質にもよるので注意してください。
「Noctua NH-U12S DX-3647」と比較対象の各種CPUクーラーについてファン回転数に対するファンノイズをまとめると次のようになりました。
「Noctua NH-U12S DX-3647」はファン回転数1300RPM以下であれば騒音値も36.0dB程度となり電源OFF時と大差ない騒音値でほぼ無音で動作させることができます。1600RPM以上に回転数を上げると40dBを超えてくるのでファンノイズがはっきりと聞こえるようになります。
続いて「Noctua NH-U12S DX-3647」など各種CPUクーラーの冷却性能をチェックしていきます。
ストレステストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間7分、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はXeon W-3175X 定格の場合は8分ほどなので同じ動画のエンコードを3つ並列して実行しています。テスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
「Noctua NH-U12S DX-3647」はIntel Xeonスケーラブルプロセッサーを主な対象にしたCPUクーラーですが、今回の検証では28コア56スレッドで倍率アンロックなIntel史上最強最速CPUと言っても過言ではない「Intel Xeon W-3175X」を使用して冷却性能を検証していきます。
「Intel Xeon W-3175X」の非OC時の定格動作でもTDP255Wとなっており、LGA3647プラットフォームで提供されるIntel Xeonスケーラブルプロセッサー最上位モデルのXeon Platinum 8280でもTDP205Wなので、「Intel Xeon W-3175X」が問題なく冷やせれば「Noctua NH-U12S DX-3647」は基本的に全てのIntel Xeonスケーラブルプロセッサーに対応できると考えて大丈夫です。
Intel Xeon W-3175Xの動作設定は、CPU本体については「長期間電力制限:255W」「短期間電力制限時間:32秒」「短期間電力制限時間:510W」でIntel仕様値のままですが、メモリは「メモリ周波数3600MHz」「メモリタイミング16-16-16-36-CR2」「メモリ電圧:1.350V」にOCしています。この設定でIntel Xeon W-3175Xを動かした時、Cinebench R15のスコアは5530ほどとなります。
またこの動作設定において上で紹介したストレステストを実行すると、Xeon W-3175XのEPS電源経由の消費電力は330W前後に達します。
ファンノイズが40dB前後になるように統一して、「Noctua NH-U12S DX-3647」のファン回転数を1600RPMに、比較対象である「Noctua NH-U14S DX-3647」の標準シングルファン構成と増設デュアルファン構成のファン回転数を1200RPMに固定してストレステストを実行した時のCPU温度は次のようになりました。
Xeon W-3175XをIntel公式の仕様値であるTDP255Wの定格動作の通りに電力制限を課していますが、「Noctua NH-U12S DX-3647」による冷却でストレステスト中のCPU温度は、温度依存で制限のかかる閾値85度よりも十分に低い、75度前後に収まりました。
LGA3647系CPUに最適化された大型銅製ベースプレートは300Wクラスの熱源に対して十分な熱交換効率を実現しており、120サイズファンを2基搭載したヒートシンクの放熱容量も300Wクラスの放熱に対応できています。Noctua製空冷CPUクーラー「Noctua NH-U12S DX-3647」ならXeon W-3175Xの定格動作をサーマルスロットリングさせることなく運用できることがわかります。
ファン径が大きく、ヒートパイプの本数も多い「Noctua NH-U14S DX-3647」と比較すると、「Noctua NH-U12S DX-3647」の冷却性能は若干劣りますが、PCIEスロットとのクリアランスにおいて干渉が発生し難いコンパクトさと冷却性能のバランスを考えると「Noctua NH-U12S DX-3647」はちょうどいいモデルだと思います。
Noctua NH-U12S DX-3647のレビューまとめ
最後に「Noctua NH-U12S DX-3647」(国内正規代理店TechAce提供)を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- Noctua空冷らしい無骨なデザインでニッケルメッキのヒートシンクが美しい
- 一般的な120mmサイズ冷却ファンよりも静音性が高いNF-A12x25 PWMを2基標準搭載
- LGA3647系CPUを安全に着脱できるCPUクリップが付属
- ファン固定位置はクリップで上下に動かせるのでヒートシンク付きメモリも使用可能
(43mm以上のヒートシンク付きメモリではヒートシンクの高さ分だけ全高が増える) - 28コア56スレッドXeon W-3175XをTDP255Wの定格で運用できる冷却性能
- PCIEスロットと干渉が発生し難いスタンダードサイズ
- 良くも悪くもNoctuaらしいベージュ&ブラウンの冷却ファンのカラーリング
- ASUS ROG Dominus Extremeではメモリ12枚刺しでメモリスロットにファンが被さる
- 大型グラフィックボードと組み合わせた場合に取り付けは問題ないが取り外しがやや難しい
冷却性能の検証結果からもわかるように「Noctua NH-U12S DX-3647」は、最大で300W超クラスの電力負荷になる28コア56スレッド「Intel Xeon W-3175X」をサーマルスロットリングさせることなく安定して運用することができる冷却性能を発揮しました。「Intel Xeon W-3175X」はTDP255WとなっておりLGA3647プラットフォームで提供されるIntel Xeonスケーラブルプロセッサー最上位モデルのXeon Platinum 8280でさえもTDP205Wなので、「Noctua NH-U12S DX-3647」は基本的に全てのIntel Xeonスケーラブルプロセッサーに対応できます。
先日レビューした「Noctua NH-U14S DX-3647」は150mmラウンドフレーム型ファン搭載かつ大型ヒートシンクによる高い冷却性能の反面、横幅が大きいためPCIEスロットと干渉しやすいという欠点がありましたが、「Noctua NH-U12S DX-3647」は標準的な120mmサイズ冷却ファン搭載モデルなので、PCIEスロットと干渉が発生し難く、また全高42mmまでのヒートシンク付きメモリならファンのオフセットなしで使用できる互換性の高さが魅力です。
「Noctua NH-U14S DX-3647」に比べると冷却性能では多少劣りますが、それでも300Wクラスの発熱を十分に御しきれるCPUクーラーなので、PCIEスロットやメモリと干渉が発生し難いところと相まって、扱いやすさが光るスタンダードモデルです。
ニッケルメッキで表面処理された大型のアルミ放熱フィンを搭載するヒートシンクは工業製品的な美しさがあるものの、Noctuaを代表するベージュ&ブラウンのカラーリングの冷却ファンはかなりユニークなのでNoctua NH-U12S DX-3647は総じて人を選ぶデザインだと思います。
以上、「Noctua NH-U12S DX-3647」のレビューでした。
補足:空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて
「空冷クーラー」と「水冷クーラー」の2種類ついて同じところと違うところ、また原理的に考えた冷却性能の比較を簡単に補足しておきます。関連記事
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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