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7nmプロセスで製造され、新ゲーミングアーキテクチャ「RDNA」を採用するAMDの次世代GPU”Navi”ことRadeon RX 5700シリーズ上位モデル「AMD Radeon RX 5700 XT」を搭載したAMD純正リファレンスグラフィックボードをレビューしていきます。「Radeon RX 5700 XT」が、競合モデルと位置付けるRTX 2070無印版やカウンターパンチとしてリリースされたRTX 2070 SUPERと比較して、どの程度の性能を発揮するのか実ゲームベンチマークでグラフィック性能を徹底比較します。
Radeon RX 5700 XT レビュー目次
1.Radeon RX 5700 XTの外観
2.Radeon RX 5700 XTの分解
3.Radeon RX 5700 XTの検証機材
4.Radeon RX 5700 XTのゲーム性能
5.Radeon RX 5700 XTの温度・消費電力・ファンノイズ
6.Radeon RX 5700 XTのレビューまとめ
Radeon RX 5700 XTの外観
早速、「Radeon RX 5700 XT」のリファレンスモデルを開封していきます。「Radeon RX 5700 XT」のリファレンスモデルはいくつかのベンダーからリリースされていていますが、基本的にAMD純正のリファレンスモデルを箱詰めしただけ、+αでブロアーファン中央に各社のロゴシールが貼られているくらいの違いなので、どのベンダーの製品を買っても大差ありません。SAPPHIRE、ASRock、Power Colorの3社の製品は他社の1年よりも長い2年保証になっているので、ここだけは気にしてもいいかもしれません。
今回、管理人はAMD純正の箱詰め品のパッケージがオシャレな化粧箱で気に入ったので、わざわざ海外から個人輸入しました。
「Radeon RX 5700 XT リファレンス」のグラフィックボード本体を見ていきます。
「Radeon RX 5700 XT リファレンス」の外見について、カラーリングはRadeon RX 480やRadeon RX Vegaシリーズに似ていますが、上端中央に凹みのある流線デザインが特徴的です。RX 5700シリーズのキャッチフレーズである”Bend the rules(日本公式訳:ルールを曲げろ)”がモチーフになっているようです。
「Radeon RX 5700 XT リファレンス」のグラフィックボード側面も正面と同じく流線形のラインが描かれ、赤色のRADEONロゴにはLEDイルミネーションが内蔵されており、赤色に発光します。
Radeon RX 5700 XTのGPUクーラーの仕様について細かく見ていくと、外装とバックプレートはいずれもアルミニウム製です。GPUクーラーヒートシンクの底面にはベイパーチャンバーが採用されており、GPUコアとヒートシンク間のTIMはシリコングリスではなく、Radeon VIIでも採用されて話題になった、高熱伝導効率のグラファイトシートが採用されているようです。7フェーズのVRM電源が実装されています。
「Radeon RX 5700 XT リファレンス」は全長267mmでRadeon RX 5700 XTグラフィックボードとしては標準的な長さです。
「Radeon RX 5700 XT リファレンス」は基板とGPUクーラーがPCIブラケットの高さとほぼ同じ背の低いデザインです。
Radeon RX 5700 XTのオリファンモデルの中には3スロット占有クーラーを採用しているモデルも少なくはありませんが、「Radeon RX 5700 XT」のリファレンスモデルは2スロット占有です。
「Radeon RX 5700 XT リファレンス」の補助電源数はリファレンス仕様の通りPCIE 8PIN+6PINとなっています。
「Radeon RX 5700 XT リファレンス」のビデオ出力はHDMI2.0×1、DisplayPort1.4×3の4基が実装されています。
「Radeon RX 5700 XT リファレンス」には基板の反りや背面素子の破損を防止し、GPUコアやVRM電源の冷却を補助するアルミニウム製バックプレートが搭載されています。下位モデルRX 5700のリファレンスモデルには非搭載なので1つ注意すべきポイントです。
グラフィックボードの重量はRadeon RX 5700 XT リファレンスが1022g、RTX 2070 SUPER Founders Editionが1268gに対して、「Radeon RX 5700 XT リファレンス」は1022gとなっています。
バックプレートでグラフィックボード基板の反りは防止されているものの、重量は1kgを超過しているのでPCI-Eスロットへの負荷を考えるとVGAサポートステイなどで垂れ下がりを防止したほうがいいかもしれません。
Radeon RX 5700 XTの分解
「Radeon RX 5700 XT」を分解してGPUクーラーやグラフィックボード基板についてチェックしていきます。なおGPUクーラーの取り外し(分解行為)はグラフィックボードの正規保証の対象外になる行為です。今回はレビューのために自己責任で分解しておりますが、繰り返しますが保証対象外になるので基本的には非推奨の行為なのでご注意下さい。
【暇があれば更新予定】
Radeon RX 5700 XTの検証機材
外観やハードのチェックはこのあたりにして早速、「Radeon RX 5700 XT」を検証用の機材に組み込みました。テストベンチ機の構成は次のようになっています。テストベンチ機の構成 | ||
ベンチ機1 |
ベンチ機2 |
|
OS | Windows10 Home 64bit | |
CPU |
Intel Core i9 9900K(レビュー) Core/Cache:5.1/4.7GHz, 1.300V 殻割り&クマメタル化(レビュー) |
Intel Core i7 7700K (レビュー) |
CPUクーラー |
Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
ASUS ROG RYUO 120 (レビュー) |
M/B | ASUS WS Z390 PRO (レビュー) |
ASUS ROG MAXIMUS IX FORMULA (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) 4000MHz, CL17-17-17-37-CR2 |
G.Skill Trident Z F4-3600C15D-16GTZ DDR4 8GB*2=16B (レビュー) |
システム ストレージ |
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB (レビュー) |
Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
データストレージ |
Samsung SSD 860 QVO 4TB (レビュー) | |
電源ユニット |
Corsair HX1200i (レビュー) Corsair RM650i |
Thermaltake Toughpower iRGB PLUS 1250W Titanium (レビュー) |
PCケース/ ベンチ板 |
STREACOM BC1 (レビュー) |
Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t (レビュー) NZXT Aer F 140 3基(レビュー) |
ベンチ機のゲームデータストレージには、世界初のQLC NANDメモリ採用2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 QVO 4TB」を使用しています。「Samsung SSD 860 QVO 4TB」は現行最新かつ主流なTLC型NAND採用のSATA3.0 SSDと同等のアクセススピードを実現しながら、同社の定番モデルである860 EVOの4TBモデルよりも大幅に安価なので、PCゲーム100GB超時代でも容量不足の心配無用なゲームデータストレージとしてオススメのSSDです。
・「Samsung SSD 860 QVO 4TB」をレビュー
「Radeon RX 5700 XT リファレンス」のGPUクーラー側面のRADEONロゴにはLEDイルミネーションが内蔵されており、赤色に発光します。
「Radeon RX 5700 XT リファレンス」のスペックについて簡単に確認しておきます。
Radeon RX 5700シリーズの上位モデル「Radeon RX 5700 XT」のスペックは、40 Compute Unitsでシェーダー数がRX 590から1割増えて2560、コアクロックもベース1605MHz、ゲーミング1705MHz、最大1950MHzへと上昇しており、VRAMには速度14Gbpsで容量8GBのGDDR6メモリが採用され、消費電力の指標となるTBP(Typical Board Power)は225Wです。PCIE補助電源としてリファレンスモデルでは8PIN+6PINが要求されます。
AMD Radeon RX 5700シリーズ スペック一覧 | ||||||
RX 5700 XT (50TH AE) |
RX 5700 | RX 590 |
||||
GPUコア | Navi | Navi | Polaris 30 |
|||
製造プロセス | 7nm FinFET | 7nm FinFET | 12nm FinFET | |||
シェーダー数 | 2560 | 2304 |
2304 | |||
ベースクロック | 1605 MHz (1680 MHz) |
1465 MHz | 1469 MHz | |||
ゲームクロック | 1755 MHz (1830 MHz) |
1625 MHz | - | |||
ブーストクロック | 1905 MHz (1980 MHz) |
1725 MHz | 1545 MHz | |||
単精度性能 | 9.75 TFLOPs (10.14 TFLOPs) |
7.95 TFLOPs | 7.10 TFLOPs | |||
VRAM | 8 GB GDDR6 | 8 GB GDDR6 | 8GB GDDR5 | |||
バス幅 | 256-bit | 256-bit | 256-bit | |||
メモリクロック | 14.0 GHz | 14.0 GHz | 8.0 GHz | |||
メモリ帯域 | 448 GB/s | 448 GB/s | 256 GB/s | |||
補助電源 | 8PIN+6PIN~ | 8PIN+6PIN~ | 8PIN*1~ | |||
TBP | 225 W | 180 W | 225W | |||
発売日 | 2019年7月7日 | 2019年7月7日 | 2017年6月 | |||
希望小売価格 | 399ドル~ (449ドル) |
349ドル~ |
279ドル~ |
発売直前だったので見落としている人もいるかもしれませんが、希望小売価格が改訂されており「Radeon RX 5700 XT」が399ドルから、「Radeon RX 5700」が349ドルからとなっています。「Radeon RX 5700 XT」の競合モデルRTX 2070 Superが499ドルから、「Radeon RX 5700」の競合モデルRTX 2060 Superが399ドルからなので価格面ではRadeon RX 5700シリーズにアドバンテージがあります。
Radeon RX 5700シリーズの特長などスペック関連についてはこちらの記事で紹介しています。
・強気な価格設定の「RX 5700 XT」と「RX 5700」は買いなのか?
「Radeon RX 5700 XT」はリファレンス仕様の通りにコアクロックはベース1605MHz、ゲーミング1705MHz、最大1950MHzです。NVIDIA製GPUと違ってGPU-Zからは電力制限値が確認できません。「Radeon RX 5700 XT」の仕様値TBP(Typical Board Power)は225Wなので、今回検証するリファレンスモデルはそのように設定されているはずですが、ファクトリーOCが施されたオリファンモデルでは引き上げられている可能性があります。
Radeon設定のWattmanからは前世代同様にコアクロックやメモリクロックに関する設定が可能です。今回入手した「Radeon RX 5700 XT」のコアクロック/コア電圧カーブの最大値は2034MHz/1198mVでした。Radeon VIIでは個体差があった部分なので、当たりハズレが気になるところですが手持ちのサンプルが1つだけなので、今回の個体がどうなのかは分かりません。
「Radeon RX 5700 XT」に搭載されたGDDR6メモリの定格動作クロックは14.0GHzですが、手動オーバークロックでは最大15.2GHzに設定が可能です。メモリ電圧の設定項目はありません。
ファン制御カーブの手動設定も可能です。「Radeon RX 5700 XT」にはGPU温度とジャンクション温度の2種類の温度がありファン制御カーブはジャンクション温度を参照するようです。電力制限のスライダーからはTBP225Wを基準にして、-50%~+50%の範囲内で指定できます。ちなみに下位モデルRX 5700はTBP180Wを基準にして+20%が設定上限となっています。
Radeon RX 5700 XTのゲーム性能
「Radeon RX 5700 XT」の性能を測るべく各種ベンチマークを実行しました。性能比較には「Radeon RX 5700」、「GeForce RTX 2070 SUPER Founders Edition」、「GeForce RTX 2060 SUPER Founders Edition」、「GeForce GTX 1080 Ti Founders Edition」、「EVGA GeForce GTX 1080 SC2」を使用しています。「Radeon RX 5700 XT」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkで現在主流なDirectX11のベンチマーク「FireStrike」による比較になります。
FireStrike | Extreme | Ultra | |
Radeon RX 5700 XT | 26648 | 12666 | 6399 |
Radeon RX 5700 |
23546 | 11213 | 5633 |
RTX 2070 SUPER FE | 25726 | 12467 | 6103 |
RTX 2060 SUPER FE | 22876 | 10868 | 5356 |
GTX 1080 Ti FE |
27344 | 13617 | 6781 |
GTX 1080 | 22049 | 10602 | 5311 |
「Radeon RX 5700 XT」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkのDirectX12ベンチマーク「TimeSpy」による性能比較となります。
TimeSpy | Async Off |
Extreme | |
Radeon RX 5700 XT |
8777 | 8006 | 3920 |
Radeon RX 5700 |
7739 | 7025 | 3490 |
RTX 2070 SUPER FE |
10315 | 9572 | 4751 |
RTX 2060 SUPER FE |
8933 | 8270 | 4173 |
GTX 1080 Ti FE | 9542 |
8831 | 4425 |
GTX 1080 |
7505 | 7151 | 3410 |
「Radeon RX 5700 XT」を含めた各グラフィックボードについて、17年中頃から普及しつつあるHTC VIVEやOculus RiftなどVR HMDを使用したVRゲームに関する性能を測定する最新ベンチマーク「VRMark」による性能比較となります。
Orange Room |
Cyan Room |
Blue Room |
|
Radeon RX 5700 XT |
12027 | 8942 | 2460 |
Radeon RX 5700 |
11730 | 7804 | 2155 |
RTX 2070 SUPER FE |
12633 | 10123 | 3264 |
RTX 2060 SUPER FE |
12142 | 8655 | 2784 |
GTX 1080 Ti FE | 13084 | 8409 | 3028 |
GTX 1080 |
11630 | 6648 | 2285 |
続いて2019年最新の実PCゲームを用いたベンチマークになります。同一のグラフィック設定で同一のシーンについてフルHDとWQHDと4Kの3種類の解像度で平均FPSを比較しました。
ベンチマーク測定を行ったゲームタイトルは、Anthem(ウルトラ設定プリセット)、Assassin's Creed Odyssey(最高設定プリセット)、Battlefield V(最高設定プリセット, DirectX12)、CONTROL(最高設定プリセット, DirectX11)、Destiny 2(最高設定プリセット)、The Division 2(ウルトラ設定プリセット, DirectX11)、Far Cry 5(最高設定プリセット&TAA)、Final Fantasy XV(最高設定プリセット、NVIDIA GameWorks無効)、Gears 5(最高設定プリセット)、Ghost Recon Wildlands(ウルトラ設定から以下を変更、ターフエフェクト:オフ/ゴッドレイ:オン/ロングレンジシャドウ:オン)、Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット, DirectX11)、MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット)、Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット, DirectX12)、Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)、The Witcher 3(個別設定を全て最高設定)以上の15タイトルです。
Anthem(ウルトラ設定プリセット)に関する「Radeon RX 5700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Assassin's Creed Odyssey(最高設定プリセット)に関する「Radeon RX 5700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Battlefield V(最高設定プリセット, DirectX12)に関する「Radeon RX 5700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
CONTROL(最高設定プリセット, DirectX11)に関する「Radeon RX 5700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Destiny 2(最高設定プリセット)に関する「Radeon RX 5700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
The Division 2(ウルトラ設定プリセット, DirectX11)に関する「Radeon RX 5700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Far Cry 5(最高設定プリセット&TAA)に関する「Radeon RX 5700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Final Fantasy XV(最高設定プリセット、NVIDIA GameWorks無効)に関する「Radeon RX 5700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Gears 5(最高設定プリセット)に関する「Radeon RX 5700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Ghost Recon Wildlands(ウルトラ設定から以下を変更、ターフエフェクト:オフ/ゴッドレイ:オン/ロングレンジシャドウ:オン)に関する「Radeon RX 5700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット, DirectX11)に関する「Radeon RX 5700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット)に関する「Radeon RX 5700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット, DirectX12)に関する「Radeon RX 5700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)に関する「Radeon RX 5700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
The Witcher 3(個別設定を全て最高設定)に関する「Radeon RX 5700 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Radeon RX 5700 XT、Radeon RX 5700、GeForce RTX 2070 SUPER Founders Edition、GeForce RTX 2060 SUPER Founders Edition、GeForce GTX 1080 Ti Founders Edition、GeForce GTX 1080の6種類のGPUについて実ゲーム性能の比率の平均を出してみたところ、Radeon RX 5700 XTは現行最新の競合GPUであるRTX 2070を10%程度上回り、NVIDIAの前世代最上位GPUであるGTX 1080 Tiに迫る性能です。
一方でNVIDIAがカウンターパンチとしてリリースしてきたRTX 2070 SUPERと比較すると、上で個別タイトルについて確認したようにそれぞれのGPUでゲームによって得手不得手がありますが、「Radeon RX 5700 XT」はあと1歩及びませんでした。RTX 20XX SUPER自体がRX 5700の性能に合わせて繰り出された後だしジャンケン的製品なので仕方ないことですが。
今回の検証ではRX 5700 XTやRTX 2070 SUPERがターゲットとするフルHDやWQHDの解像度においてRTX 2070 SUPERが数%程度上回りましたが、競合製品として十分に通用する性能を発揮していると思います。
Radeon RX 5700 XTの温度・消費電力・ファンノイズ
「Radeon RX 5700 XT」の負荷時のGPU温度やファンノイズや消費電力についてチェックしていきます。「Radeon RX 5700 XT」のGPU温度とファンノイズの検証負荷としては20分間に渡たり連続してGPUに100%近い負荷をかける3DMark TimeSpy Stress Testを使用しています。
「Radeon RX 5700 XT」のテスト終盤におけるGPU温度は最大74度で、ファン回転数は最大で2100RPMまで上昇しました。ジャンクション温度と違ってGPU温度は定点の温度になっていますが、上位モデル「Radeon RX 5700 XT」よりも下位モデルRadeon RX 5700のほうが温度が高いという意外な結果でした。外排気ブロアーファンGPUクーラーなのでTBP225WのミドルハイクラスGPUを静かに冷やすのはやはり難しいという結果です。
GPUに搭載された複数の温度センサーのうち、最大温度を示すジャンクション温度の推移は下のようになりました。Radeon RX 5700シリーズはジャンクション温度をファン制御のソース温度とし、負荷がかかるといったん上限速度まで上昇し、徐々に収束していく方式が採用されています。
今回のテストにおいて「Radeon RX 5700 XT」はジャンクション温度が上限温度の90度をすぐに超過してしまうので上限値2100RPMで安定してしまいますが、90度以下もしくは90度を跨いで推移すると、RX 5700のようにファン回転数は1600~1700RPM前後で波打つように変化しています。
「Radeon RX 5700 XT」ではGDDR6メモリやVRM電源回路の温度もモニタリングが可能であり、ストレステスト中の推移は下のようになりました。
GPUコアクロックについては「Radeon RX 5700 XT」の仕様値ではゲームクロック1755MHzとなっていましたが、それを大きく上回って負荷テスト中の実動平均は1820MHzでした。
【暇を見て近日更新予定】--------------
またベンチ機2のPCケースに「Radeon RX 5700 XT」を組み込んでFire Strike Extreme グラフィックテスト1を1時間に渡ってループさせて実用の冷却性能を確認してみました。
検証機材のPCケースには「Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t」を使用しており、ケースファンにはNZXT製のエアフロー重視でPCケースの吸気・排気ファンに最適なケースファン「NZXT Aer F 140」をPCケースのフロントに吸気ファンとして2基、リアに排気ファンとして1基設置してファン回転数1000RPM固定で運用しています。
「Radeon RX 5700 XT」をPCケースに入れて長時間負荷をかけたところ、最大温度は-度で、コアロックの平均値は-MHzでした。
1時間のストレステスト終盤にスマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE Pro」(レビュー)を使用してゲーム負荷時のグラフィックボード上の各所の温度をチェックしました。
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Radeon RX 5700 XTを含めていくつかのグラフィックボードについてサウンドレベルメーターを利用してゲーム負荷時のノイズレベルを測定・比較しました。ノイズレベルの測定には「サンワダイレクト 400-TST901A」を使用しています。
電源OFF時の騒音値は33~35dBです。目安として40dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになり、45dB前後で煩く感じます。50dBを超えてくるとヘッドホンをしていても煩く感じます。同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質(細かい乱高下の有無や軸ブレ)にもよるので注意してください。
ノイズレベルの測定結果は次のようになっています。
Radeon RX 5700 XTのファンノイズは2100RPMという高めなファン回転数の通りノイズレベルも53.4dBと高い数値を示しました。リファレンスモデルは外排気ブロアーファンGPUクーラーで静音性があまり良くないのは仕方ないことなので、外排気にこだわらないのであれば、2019年9月現在、すでに普及しているオリファンモデルを選ぶのが正解だと思います。
【注意】 ファンノイズの比較グラフではレビュー製品と同等のGPUを搭載したグラフィックボードと各GPUのリファレンスモデルを抜粋して掲載しています。AMDが従来通り外排気GPUクーラーであるのに対し、NVIDIAのリファレンスモデルであるFounders Editionが内排気GPUクーラーを採用したため、NVIDIA<AMDという傾向になっていますが、あくまで静音性はGPUの消費電力とGPUクーラーの性能によります。同グラフからAMD製GPUを搭載したグラフィックボードが一般的にNVIDIA製GPUを搭載したグラフィックボードより煩いと考えるのは誤った評価なので注意してください。
Radeon RX 5700 XTの消費電力と瞬間的な最大電源負荷を測定しました。
測定負荷には上で行った温度検証と同様に3DMark TimeSpy ストレステストを使用しています。テスト全体から1秒間隔でモニタリングを行い、平均値を”消費電力”、最大値を”瞬間的な最大電源負荷”とします。なお電源ユニットに対する実際の最大瞬間負荷は測定値より50~100W上回る場合があるので、電源ユニットの電源容量選択の参考にする場合は注意してください。
消費電力の測定は電源ユニット「Corsair HX1200i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの入力ではなく変換ロスを差し引いたシステムへの出力電力をチェックしています。また電力測定の際は上記の主電源ユニットに加えて、CPUへの電力供給を行うEPS端子へ接続するために別の副電源ユニットを使用しています。
この方法であれば、CPU(後述のiGPUも)に負荷をかけても、CPUによる消費電力の変動はメイン電源ユニットCorsair HX 1200iの測定値には影響しません。しかしながら、測定値にはまだATX24PIN経由で供給されるマザーボードやDDR4メモリの電力が含まれるので、iGPUを使用した時の3DMark TimeSpy ストレステスト中の消費電力と最大電源負荷を同様に測定し、各種グラフィックボード使用時と差分を取る形でグラフィックボード単体の消費電力と最大電源負荷を算出します。
Radeon RX 5700 XTの消費電力は205W、最大瞬間負荷は269Wでした。Radeon RX 5700 XTのTBP(Typical Board Power)は225Wと公称されていますが、仕様値通りの消費電力になっていると思います。
「Radeon RX 5700 XT」は補助電源に8PIN+6PINを搭載していることもあって、従来のAMD製GPUの傾向からすると仕様値を大きく上回る消費電力を示すかと予想していたのですが、しっかりと仕様値を守り、性能の近いRTX 2070 SUPERと同等の消費電力なので、ワットパフォーマンス的にもNVIDIAの最新GPUと競合できています。RTX 2070無印版と比較してみると電圧を盛って性能面で若干無理をしてきた感がありますが、ここは逆にNVIDIAのカウンターパンチでマイナス面が相殺されました。
競合RTX 2070 SUPERよりも100ドル安価でコスパに優れる「Radeon RX 5700 XT」を、ワッパ的にも美味しく使えるようにする”低電圧化”については別記事で詳細に解説しています。
・2ステップ低電圧化でRX 5700 XTのワッパを大幅改善!
Radeon RX 5700 XT レビューまとめ
最後に「Radeon RX 5700 XT」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- WQHD/144HzのIPS液晶ゲーミングモニタと組み合わせた高画質/高FPSゲーミングの入門に最適
- RTX 2070を10%程度上回り、RTX 2070 SUPERに迫るグラフィック性能
- RTX 2070 SUPERと遜色ないワットパフォーマンスで省電力性能も優秀
- ほぼ同性能なRTX 2070 SUPERより100ドルも安価な希望小売価格399ドル
- リファレンスモデルは一部で需要のある外排気ブロアーファンGPUクーラー
- リファレンスGPUクーラーは静音性があまり良くないのでオリファンモデルを推奨
- 動画倍速補完機能Fluid Motionはサポートされない
「Radeon RX 5700 XT」は競合NVIDIAのRTX 20XX SUPERシリーズと比較して、グラフィック性能・省電力性能・価格の3点全てにおいて総合的に張り合える製品に仕上がっています。AMDの新製品では第3世代Ryzenが脚光を浴び過ぎていて相対的に新GPUは目立っておらず、管理人自身もその口でしたが、実際に検証してみると「Radeon RX 5700 XT」は非常に高評価なGPUでした。
省電力性能的には下位モデルRadeon RX 5700がNAVI GPUのスイートスポットのようですが、Radeon RX 5700に+50ドルで10%以上高いグラフィック性能が得られ、競合RTX 2070 SUPERとほぼ同等の性能で100ドルも安価な「Radeon RX 5700 XT」はコストパフォーマンスにおいて非常に強いミドルハイクラスGPUだと思います。
「Radeon RX 5700 XT」は、競合製品であるRTX 2070を10%程度上回り、カウンターパンチとしてリリースされたRTX 2070 SUPERに迫るグラフィック性能を実現しており、2019年現在、手ごろな価格で普及しつつあるWQHD/144HzのIPS液晶ゲーミングモニタと組み合わせて高画質・ハイフレームレートなPCゲーミング入門に最適なモデルです。
WQHD/144HzのIPS液晶ゲーミングモニタは色々と販売されていますが、リモコン操作&USB Type-C対応でマルチメディアに最適な「BenQ EX2780Q」、OSDクロスヘアやMBRなどゲーミング機能が豊富な「AORUS AD27QD」、同スペック製品の中でも特に高発色・高応答速度な「LG 27GL850-B」は当サイトでもレビューを公開していてオススメなモデルです。
また「Radeon RX 5700 XT」はRTX 2070 SUPERと競合できるワットパフォーマンスを実現しているところも注目ポイントです。前世代最上位Radeon RX Vega 64はGTX 1080 Ti以上の消費電力でもっても競合と位置付けるGTX 1080に対してグラフィック性能で苦戦を強いられ、近年のAMD製GPUはNVIDIA製GPUに比べてワットパフォーマンスに劣るというのが定説でした。しかしながら「Radeon RX 5700 XT」はGTX 1080 Tiを大きく下回る消費電力でGTX 1080 Tiに迫るグラフィック性能を発揮しており、7nmプロセスによって製造された次世代GPU”NAVI”は省電力性能においても優秀です。
RTX 2070 SUPERシリーズはRadeon RX 5700 XTに対するカウンターパンチとしてリリースされましたが、性能を引き上げる反面、消費電力も引き上げてしまったので、逆にRadeon RX 5700 XTの省電力性能の見栄えが良くなり、塩を送った形になっています。
Radeon RX 5700 XT発表当初の管理人の感想は、『シェーダー数やダイサイズといったハードウェアスペック的に考えると、RX 590クラスの価格帯が妥当ではないか、Radeon RX 5700シリーズはそれぞれ100ドルくらい安価にリリースされるものと予想していたので、その点は少し残念だったというのが正直なところです』というもので、端的に”強気な価格”とまとめていました。
しかしながら発売直前で50ドル程度の値下げが発表されたので、「RX 5700 vs RTX 2060 SUPER」と「RX 5700 XT vs RTX 2070 SUPER」という競合製品対決において、価格面ではRadeon RX 5700シリーズにアドバンテージがあります。最初からオリファンモデルが投入されたRTX 2070 SUPERに対して、RX 5700 XTのオリファンモデルは2019年9月から順次発売されたばかりなので、まだオリファンモデルは高止まりしていますが、次第に希望小売価格通りの価格差になっていくのではないかと思います。
「Radeon RX 5700 XT」のリファレンスモデルについて、外排気ブロアーファンGPUクーラー自体は一定の需要があるものの、やはり静音性や冷却性能には難があります。外排気ブロアーファンGPUクーラーにこだわりがなければ、AIBパートナー各社から発売済みのオリファンを選択するのがオススメです。
以上、「Radeon RX 5700 XT」のレビューでした。
・Radeon RX 5700 XT 販売ページ:
<Amazon><PCショップアーク><パソコン工房>
<TSUKUMO><ドスパラ><PCワンズ><ソフマップ>
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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RTX 2070 SUPERかと思われます