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Radeon RX 5700グラフィックボードとして玄人志向からリリースされた、全長230mmのショートモデル「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」をレビューしていきます。
「Radeon RX 5700 XT」が、競合モデルと位置付けるRTX 2070無印版やカウンターパンチとしてリリースされたRTX 2070 SUPERと比較して、どの程度の性能を発揮するのか実ゲームベンチマークでグラフィック性能を徹底比較します。
代理店公式ページ:https://www.kuroutoshikou.com/product/graphics_bord/amd/rd-rx5700-e8gb_df/
玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF レビュー目次
1.玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DFの外観
2.玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DFの分解
3.玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DFの検証機材
4.玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DFのゲーム性能
5.玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DFの温度・消費電力・ファンノイズ
6.玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DFのレビューまとめ
玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DFの外観
早速、「Radeon RX 5700 XT」のリファレンスモデルを開封していきます。「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」は段ボール製スペーサーの中央に、静電防止ビニール袋で包装されるというシンプルな形で梱包されていました。
「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」のグラフィックボード本体を見ていきます。
「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」のGPUクーラー外装はブラックカラーでフラットな形状のプラスチック製となっており、非常にシンプルなデザインです。
「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」のグラフィックボード側面も基本的に装飾のないフラットな形状です。玄人志向ブランドの製品ですがOEM元のPower Colorのロゴが大きく刻印されています。
「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」は、リファレンスモデルの267mmよりも短い全長230mmです。メーカー製PCでは250mm以上のグラフィックボードだと干渉することも少なくありませんが、全長230mmでショートモデルの「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」ならクリアランス的に互換性が高く、メーカー製PCの内蔵グラボのアップグレードに最適なモデルです。
「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」のGPUクーラーには90mm径の冷却ファンが2基搭載されています。
「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」は基板とGPUクーラーがPCIブラケットの高さとほぼ同じ背の低いデザインです。
Radeon RX 5700のオリファンモデルの中には3スロット占有クーラーを採用しているモデルも少なくはありませんが、「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」は2スロット占有です。
「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」ではヒートシンク本体にサーマルパッド経由でPCB基板が直接接触しており、VRAMチップとVRM電源に関して理想的な冷却構造が採用されています。
「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」の補助電源数はリファレンス仕様と同じくPCIE 8PIN+6PINです。
「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」のビデオ出力はHDMI2.0×1、DisplayPort1.4×3の4基が実装されています。
「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」には基板の反りや背面素子の破損を防止する金属製バックプレートが搭載されています。サーマルパッドで基板とは接触しておらず放熱を補助する機能はありません。
グラフィックボードの重量はRadeon RX 5700 XT リファレンスモデルが1107g、Radeon RX 5700 リファレンスモデルが1022g、「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」は699gとなっています。「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」はコンパクトサイズの通り軽量です。
玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DFの分解
「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」を分解してGPUクーラーやグラフィックボード基板についてチェックしていきます。なおGPUクーラーの取り外し(分解行為)はグラフィックボードの正規保証の対象外になる行為です。今回はレビューのために自己責任で分解しておりますが、繰り返しますが保証対象外になるので基本的には非推奨の行為なのでご注意下さい。
玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DFの検証機材
外観やハードのチェックはこのあたりにして早速、「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」を検証用の機材に組み込みました。テストベンチ機の構成は次のようになっています。テストベンチ機の構成 | ||
ベンチ機1 |
ベンチ機2 |
|
OS | Windows10 Home 64bit | |
CPU |
Intel Core i9 9900K(レビュー) Core/Cache:5.1/4.7GHz, 1.300V 殻割り&クマメタル化(レビュー) |
Intel Core i7 7700K (レビュー) |
CPUクーラー |
Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
ASUS ROG RYUO 120 (レビュー) |
M/B | ASUS WS Z390 PRO (レビュー) |
ASUS ROG MAXIMUS IX FORMULA (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) 4000MHz, CL17-17-17-37-CR2 |
G.Skill Trident Z F4-3600C15D-16GTZ DDR4 8GB*2=16B (レビュー) |
システム ストレージ |
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB (レビュー) |
Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
データストレージ |
Samsung SSD 860 QVO 4TB (レビュー) | |
電源ユニット |
Corsair HX1200i (レビュー) Corsair RM650i |
Thermaltake Toughpower iRGB PLUS 1250W Titanium (レビュー) |
PCケース/ ベンチ板 |
STREACOM BC1 (レビュー) |
Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t (レビュー) NZXT Aer F 140 3基(レビュー) |
ベンチ機のゲームデータストレージには、世界初のQLC NANDメモリ採用2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 QVO 4TB」を使用しています。「Samsung SSD 860 QVO 4TB」は現行最新かつ主流なTLC型NAND採用のSATA3.0 SSDと同等のアクセススピードを実現しながら、同社の定番モデルである860 EVOの4TBモデルよりも大幅に安価なので、PCゲーム100GB超時代でも容量不足の心配無用なゲームデータストレージとしてオススメのSSDです。
・「Samsung SSD 860 QVO 4TB」をレビュー
「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」のスペックについて簡単に確認しておきます。
Radeon RX 5700シリーズの下位モデル「Radeon RX 5700」のスペックは、36 Compute Unitsでシェーダー数はRX 590と同じく2306ですが、コアクロックはベース1465MHz、ゲーミング1625MHz、最大1725MHzへと上昇しており、VRAMには上位モデルRX 5700 XTと同じく速度14Gbpsで容量8GBのGDDR6メモリが採用され、消費電力の指標となるTBP(Typical Board Power)は180Wです。PCIE補助電源としてリファレンスモデルでは8PIN+6PINが要求されます。
AMD Radeon RX 5700シリーズ スペック一覧 | ||||||
RX 5700 XT | RX 5700 | RX 590 |
||||
GPUコア | Navi | Navi | Polaris 30 |
|||
製造プロセス | 7nm FinFET | 7nm FinFET | 12nm FinFET | |||
シェーダー数 | 2560 | 2304 |
2304 | |||
ベースクロック | 1605 MHz | 1465 MHz | 1469 MHz | |||
ゲームクロック | 1755 MHz | 1625 MHz | - | |||
ブーストクロック | 1905 MHz |
1725 MHz | 1545 MHz | |||
単精度性能 | 9.75 TFLOPs |
7.95 TFLOPs | 7.10 TFLOPs | |||
VRAM | 8GB GDDR6 | 8GB GDDR6 | 8GB GDDR5 | |||
バス幅 | 256-bit | 256-bit | 256-bit | |||
メモリクロック | 14.0 GHz | 14.0 GHz | 8.0 GHz | |||
メモリ帯域 | 448 GB/s | 448 GB/s | 256 GB/s | |||
補助電源 | 8PIN+6PIN~ | 8PIN+6PIN~ | 8PIN*1~ | |||
TBP | 225 W | 180 W | 225W | |||
発売日 | 2019年7月7日 | 2019年7月7日 | 2017年6月 | |||
希望小売価格 | 399ドル~ |
349ドル~ |
279ドル~ |
発売直前だったので見落としている人もいるかもしれませんが、希望小売価格が改訂されており「Radeon RX 5700 XT」が399ドルから、「Radeon RX 5700」が349ドルからとなっています。「Radeon RX 5700 XT」の競合モデルRTX 2070 Superが499ドルから、「Radeon RX 5700」の競合モデルRTX 2060 Superが399ドルからなので価格面ではRadeon RX 5700シリーズにアドバンテージがあります。
Radeon RX 5700シリーズの特長などスペック関連についてはこちらの記事で紹介しています。
・強気な価格設定の「RX 5700 XT」と「RX 5700」は買いなのか?
「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」のコアクロックはRX 5700のリファレンス仕様よりも若干高い値へとファクトリーOCが施されており、ベース1515MHz、ゲーミング1675MHz、最大1750MHzへと引き上げられています。
Radeon RX 5700などAMD製GPUではNVIDIA製GPUと違ってGPU-Zからは電力制限値が確認できませんが、「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」に関しては仕様値のTBP(Typical Board Power)である180Wと同じ値がそのまま設定されているようです。
Radeon設定のWattmanからは前世代同様にコアクロックやメモリクロックに関する設定が可能です。今回入手した「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」のコアクロック/コア電圧カーブの最大値は1850MHz/1087mVでした。個体差がある部分なので、低電圧耐性やOC耐性の参考になります。
「Radeon RX 5700」に搭載されたGDDR6メモリの定格動作クロックは14.0GHzですが、手動オーバークロックでは最大15.2GHzに設定が可能です。メモリ電圧の設定項目はありません。
ファン制御カーブの手動設定も可能です。「Radeon RX 5700」にはGPU温度とジャンクション温度の2種類の温度がありファン制御カーブはジャンクション温度を参照します。「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」では標準設定のTBPを基準にしてスライダーによって-50%~+50%の範囲内で電力制限を指定できます。
玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DFのゲーム性能
「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」の性能を測るべく各種ベンチマークを実行しました。性能比較には「GeForce RTX 2060 SUPER Founders Edition」、「GeForce RTX 2060 Founders Edition」、「EVGA GeForce GTX 1080 SC2」、「EVGA GeForce GTX 1070 SC ACX3.0」を使用しています。「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkで現在主流なDirectX11のベンチマーク「FireStrike」による比較になります。
FireStrike | Extreme | Ultra | |
Radeon RX 5700 玄人志向 |
23998 | 11388 | 5734 |
RTX 2060 SUPER FE | 22876 | 10868 | 5356 |
RTX 2060 FE | 19258 | 8990 | 4181 |
GTX 1080 | 22049 | 10602 | 5311 |
GTX 1070 | 17917 | 8477 | 4252 |
「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkのDirectX12ベンチマーク「TimeSpy」による性能比較となります。
TimeSpy | Async Off |
Extreme | |
Radeon RX 5700 玄人志向 |
7910 | 7219 | 3571 |
RTX 2060 SUPER FE |
8933 | 8270 | 4173 |
RTX 2060 FE |
7561 | 7071 | 3450 |
GTX 1080 |
7505 | 7151 | 3410 |
GTX 1070 | 5954 | 5711 | 2761 |
「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」を含めた各グラフィックボードについて、17年中頃から普及しつつあるHTC VIVEやOculus RiftなどVR HMDを使用したVRゲームに関する性能を測定する最新ベンチマーク「VRMark」による性能比較となります。
Orange Room |
Cyan Room |
Blue Room |
|
Radeon RX 5700 玄人志向 |
11891 | 7975 | 2195 |
RTX 2060 SUPER FE |
12142 | 8655 | 2784 |
RTX 2060 FE |
11452 | 7776 | 2379 |
GTX 1080 |
11630 | 6648 | 2285 |
GTX 1070 | 9852 | 5338 | 1791 |
続いて2019年最新の実PCゲームを用いたベンチマークになります。同一のグラフィック設定で同一のシーンについてフルHDとWQHDの2種類の解像度で平均FPSを比較しました。
ベンチマーク測定を行ったゲームタイトルは、Anthem(ウルトラ設定プリセット)、Assassin's Creed Odyssey(最高設定プリセット)、Battlefield V(最高設定プリセット, DirectX12)、CONTROL(最高設定プリセット, DirectX11)、Destiny 2(最高設定プリセット)、The Division 2(ウルトラ設定プリセット, DirectX11)、Far Cry 5(最高設定プリセット&TAA)、Final Fantasy XV(最高設定プリセット、NVIDIA GameWorks無効)、Gears 5(最高設定プリセット)、Ghost Recon Wildlands(ウルトラ設定から以下を変更、ターフエフェクト:オフ/ゴッドレイ:オン/ロングレンジシャドウ:オン)、Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット, DirectX11)、MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット)、Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット, DirectX12)、Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)、The Witcher 3(個別設定を全て最高設定)以上の15タイトルです。
Anthem(ウルトラ設定プリセット)に関する「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Assassin's Creed Odyssey(最高設定プリセット)に関する「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Battlefield V(最高設定プリセット, DirectX12)に関する「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
CONTROL(最高設定プリセット, DirectX11)に関する「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Destiny 2(最高設定プリセット)に関する「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
The Division 2(ウルトラ設定プリセット, DirectX11)に関する「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Far Cry 5(最高設定プリセット&TAA)に関する「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Final Fantasy XV(最高設定プリセット、NVIDIA GameWorks無効)に関する「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Gears 5(最高設定プリセット)に関する「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Ghost Recon Wildlands(ウルトラ設定から以下を変更、ターフエフェクト:オフ/ゴッドレイ:オン/ロングレンジシャドウ:オン)に関する「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット, DirectX11)に関する「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット)に関する「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット, DirectX12)に関する「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)に関する「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
The Witcher 3(個別設定を全て最高設定)に関する「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」など5種類のGPUについて実ゲーム性能の比率の平均を出してみたところ、Radeon RX 5700は現行最新の競合GPUであるRTX 2060を10%程度上回り、前世代ハイエンドGPUのRX Vega 64が競合製品と位置づけながらも苦戦したGTX 1080をも超える性能です。
一方でNVIDIAがカウンターパンチとしてリリースしてきたRTX 2060 SUPERと比較すると、上で個別タイトルについて確認したようにそれぞれのGPUでゲームによって得手不得手があります。今回の検証ではRX 5700やRTX 2060 SUPERがターゲットとするフルHDやWQHDの解像度においてRTX 2060 SUPERが数%程度上回りましたが、実用上はほぼ同性能と評価して問題ないと思います。
玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DFの温度・消費電力・ファンノイズ
「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」の負荷時のGPU温度やファンノイズや消費電力についてチェックしていきます。「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」のGPU温度とファンノイズの検証負荷としては20分間に渡たり連続してGPUに100%近い負荷をかける3DMark TimeSpy Stress Testを使用しています。
「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」のテスト終盤におけるGPU温度は最大73度でした。ファン回転数は一時的に1900RPM程度まで上昇していますが、最終的には1300RPM前後へ収束しています。外排気ブロアーファンGPUクーラーを採用するRX 5700のリファレンスモデルと比較するとGPU温度とファン回転数ともに低い数値を示しています。
GPUに搭載された複数の温度センサーのうち、最大温度を示すジャンクション温度の推移は下のようになりました。Radeon RX 5700シリーズはジャンクション温度をファン制御のソース温度とし、負荷がかかるといったん上限速度まで上昇し、徐々に収束していく方式が採用されています。
今回のテストにおいて「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」はジャンクション温度が上限温度手前の88度に収まるため、ファン回転数は最終的に1300RPM程度で安定しています。
「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」はセミファンレス機能に対応しており、ジャンクション温度60度前後が始動閾値、ジャンクション温度50度が停止閾値でヒステリシスも採用されています。閾値前後でファンの始動・停止がピタッと切り替わっており、セミファンレスの制御回りも良くできています。
ただしGPUクーラーヒートシンクが小さいので、軽い負荷でもジャンクション温度が閾値を上回ってファンの始動(一時的に1900RPMに達する)と停止を繰り返してしまう可能性があります。ファンカーブの手動設定によってセミファンレス機能はあえて無効化し、アイドル時にも1000RPM以下で常時動作という形する方が静音性の面ではオススメです。
「Radeon RX 5700」ではGDDR6メモリやVRM電源回路の温度もモニタリングが可能であり、ストレステスト中の推移は下のようになりました。
GPUコアクロックについては「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」の仕様値ではゲームクロック1675MHzとなっていましたが、負荷テスト中の実動平均は1695MHzでした。リファレンスモデルと比較するとゲームクロックの差の通り「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」のほうが50MHz程度高いコアクロックです。
【暇を見て近日更新予定】--------------
またベンチ機2のPCケースに「Radeon RX 5700」を組み込んでFire Strike Extreme グラフィックテスト1を1時間に渡ってループさせて実用の冷却性能を確認してみました。
検証機材のPCケースには「Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t」を使用しており、ケースファンにはNZXT製のエアフロー重視でPCケースの吸気・排気ファンに最適なケースファン「NZXT Aer F 140」をPCケースのフロントに吸気ファンとして2基、リアに排気ファンとして1基設置してファン回転数1000RPM固定で運用しています。
「Radeon RX 5700」をPCケースに入れて長時間負荷をかけたところ、最大温度は-度で、コアロックの平均値は-MHzでした。
1時間のストレステスト終盤にスマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE Pro」(レビュー)を使用してゲーム負荷時のグラフィックボード上の各所の温度をチェックしました。
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「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」を含めていくつかのグラフィックボードについてサウンドレベルメーターを利用してゲーム負荷時のノイズレベルを測定・比較しました。ノイズレベルの測定には「サンワダイレクト 400-TST901A」を使用しています。
電源OFF時の騒音値は33~35dBです。目安として40dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになり、45dB前後で煩く感じます。50dBを超えてくるとヘッドホンをしていても煩く感じます。同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質(細かい乱高下の有無や軸ブレ)にもよるので注意してください。
ノイズレベルの測定結果は次のようになっています。
「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」のファンノイズは1300RPMという標準的なファン回転数に対してノイズレベル36.7dBと非常に良好な値でした。リファレンスモデルは外排気ブロアーファンGPUクーラーで静音性があまり良くなかったのですが、「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」はRX 5700の省電力性能が遺憾なく発揮されており、全長230mmのコンパクトモデルながら非常に優れた静音性です。
【注意】 ファンノイズの比較グラフではレビュー製品と同等のGPUを搭載したグラフィックボードと各GPUのリファレンスモデルを抜粋して掲載しています。AMDが従来通り外排気GPUクーラーであるのに対し、NVIDIAのリファレンスモデルであるFounders Editionが内排気GPUクーラーを採用したため、NVIDIA<AMDという傾向になっていますが、あくまで静音性はGPUの消費電力とGPUクーラーの性能によります。同グラフからAMD製GPUを搭載したグラフィックボードが一般的にNVIDIA製GPUを搭載したグラフィックボードより煩いと考えるのは誤った評価なので注意してください。
「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」の消費電力と瞬間的な最大電源負荷を測定しました。
測定負荷には上で行った温度検証と同様に3DMark TimeSpy ストレステストを使用しています。テスト全体から1秒間隔でモニタリングを行い、平均値を”消費電力”、最大値を”瞬間的な最大電源負荷”とします。なお電源ユニットに対する実際の最大瞬間負荷は測定値より50~100W上回る場合があるので、電源ユニットの電源容量選択の参考にする場合は注意してください。
消費電力の測定は電源ユニット「Corsair HX1200i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの入力ではなく変換ロスを差し引いたシステムへの出力電力をチェックしています。また電力測定の際は上記の主電源ユニットに加えて、CPUへの電力供給を行うEPS端子へ接続するために別の副電源ユニットを使用しています。
この方法であれば、CPU(後述のiGPUも)に負荷をかけても、CPUによる消費電力の変動はメイン電源ユニットCorsair HX 1200iの測定値には影響しません。しかしながら、測定値にはまだATX24PIN経由で供給されるマザーボードやDDR4メモリの電力が含まれるので、iGPUを使用した時の3DMark TimeSpy ストレステスト中の消費電力と最大電源負荷を同様に測定し、各種グラフィックボード使用時と差分を取る形でグラフィックボード単体の消費電力と最大電源負荷を算出します。
「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」の消費電力は170W、最大瞬間負荷は201Wでした。Radeon RX 5700のTBP(Typical Board Power)は180Wと公称されていますが、軽いファクトリーOCが施されたモデルながら「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」は仕様値通りの消費電力になっています。
「Radeon RX 5700」は補助電源を8PIN+6PINとTBPに対して多めに搭載しており、従来のAMD製GPUの傾向からすると仕様値を大きく上回る消費電力を示すかと予想していたのですが、しっかりと仕様値を守り、競合製品であるRTX 2060とRTX 2060 SUPERの中間に位置する消費電力なので、ワットパフォーマンス的にもNVIDIAの最新GPUと競合できています。先んじて検証した第3世代Ryzen CPUでも実感がありましたが7nmプロセスの省電力性能は偉大だとGPUでも再認識しました。
玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF レビューまとめ
最後に「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 最新PCゲームをフルHD/最高画質設定でプレイ可能なグラフィック性能
- RTX 2060を10%程度上回り、RTX 2060 SUPERと競合するグラフィック性能
- RTX 2060/SUPERと遜色ないワットパフォーマンスで省電力性能も優秀
- ほぼ同性能なRTX 2060 SUPERよりも安価な希望小売価格349ドル
- 全長230mmのショートサイズでクリアランスに厳しいメーカー製PCの換装にも最適
- RX 5700の省電力性能を活かして、ショートモデルながら静音性も抜群
- 製品パッケージで損をしている気が……
- セミファンレス対応だがアイドルでファンの始動と停止を繰り返す可能性が高い
- 動画倍速補完機能Fluid Motionはサポートされない
「Radeon RX 5700」は競合NVIDIAのRTX 20XX SUPERシリーズと比較して、グラフィック性能・省電力性能・価格の3点全てにおいて総合的に張り合える製品に仕上がっています。AMDの新製品では第3世代Ryzenが脚光を浴び過ぎていて相対的に新GPUは目立っておらず、管理人自身もその口でしたが、実際に検証してみると「Radeon RX 5700」は非常に高評価なGPUでした。
「Radeon RX 5700」は、競合製品であるRTX 2060を10%程度上回り、カウンターパンチとしてリリースされたRTX 2060 SUPERとほぼ同等グラフィック性能を実現しており、2019年最新の高画質PCゲームをフルHD・最高画質でプレイするのに最適なGPUです。フルHD/144FPSのハイフレームレートゲーミングやWQHD解像度における高画質なPCゲーミングにも対応できます。
また「Radeon RX 5700」はRTX 2060やRTX 2060 SUPERと競合できるワットパフォーマンスを実現しているところも注目ポイントです。前世代最上位Radeon RX Vega 64はGTX 1080 Ti以上の消費電力でもっても競合と位置付けるGTX 1080に対してグラフィック性能で苦戦を強いられ、近年のAMD製GPUはNVIDIA製GPUに比べてワットパフォーマンスに劣るというのが定説でした。しかしながら「Radeon RX 5700」はGTX 1080と同等の消費電力でGTX 1080を上回るグラフィック性能を発揮しており、7nmプロセスによって製造された次世代GPU”NAVI”は省電力性能においても優秀です。
RTX 20XX SUPERシリーズはRadeon RX 5700シリーズに対するカウンターパンチとしてリリースされましたが、性能を引き上げる反面、消費電力も引き上げてしまったので、逆にRadeon RX 5700シリーズの省電力性能を際立たせる結果になった気もします。
Radeon RX 5700発表当初の管理人の感想は、『シェーダー数やダイサイズといったハードウェアスペック的に考えると、RX 590クラスの価格帯が妥当ではないか、Radeon RX 5700シリーズはそれぞれ100ドルくらい安価にリリースされるものと予想していたので、その点は少し残念だったというのが正直なところです』というもので、端的に”強気な価格”とまとめていました。
しかしながら発売直前で50ドル程度の値下げが発表されたので、「RX 5700 vs RTX 2060 SUPER」と「RX 5700 XT vs RTX 2070 SUPER」という競合製品対決において、価格面ではRadeon RX 5700シリーズにアドバンテージがあります。最初からオリファンモデルが投入されたRTX 2060 SUPERに対して、RX 5700のオリファンモデルは2019年9月から順次発売されたばかりなので、まだオリファンモデルは高止まりしていますが、次第に希望小売価格通りの価格差になっていくのではないかと思います。
「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」については、全長230mmとRadeon RX 5700搭載グラフィックボードの中で最小サイズとなるショート基板が採用されているところが最大の魅力です。メーカー製PCではPCケース内クリアランスの関係で全長250mm以上のグラフィックボードを搭載できない場合も少なくありませんが、そういった環境でグラフィックボードをアップグレードしたいユーザーに最適な製品です。また奥行きの小さいMini-ITX対応コンパクトPCケースで自作PCを組むユーザーなどにももちろんオススメです。
静音性は一般にコンパクトサイズとトレードオフになってしまう要素ですが、「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」はRX 5700の省電力性能を最大限生かして、コンパクトGPUクーラーながら抜群の静音性を発揮しています。またセミファンレス機能に対応しているものの、PCケース内のエアフローの状態にもよりますが、同製品のGPUクーラーヒートシンクの規模だとアイドル時でもファンの始動と停止を繰り返す可能性が高いので、ファンノイズが十分に小さい1000RPM以下で常時回転のほうが良かった気がします。その場合は各自でアイドル時に1000RPM以下で常時動作するように任意のファンカーブを設定するのがオススメです。
小さくて、冷えて、静かと3拍子揃った「玄人志向 RD-RX5700-E8GB/DF」はRX 5700のオリファンモデルとして非常に完成度が高く、外見にこだわらないのであれば、一押しのRX 5700グラフィックボードです。
以上、「Radeon RX 5700」のレビューでした。
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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