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MSIから第3世代Ryzen Threadripper対応TRX40チップセット搭載Socket sTRX4マザーボードとしてリリースされた、19フェーズの超特盛りなVRM電源回路を実装したクリエイター向けウルトラハイエンドモデル「MSI Creator TRX40」をレビューしていきます。CPUソケット&左右メモリスロットの真上を完全に占有する圧巻の19フェーズVRM電源回路や、MSI珠玉のVRM電源冷却構造の実力を32コア64スレッドRyzen Threadripper 3970を使用して徹底検証していきます。
製品公式ページ:https://jp.msi.com/Motherboard/Creator-TRX40
マニュアル:http://download.msi.com/archive/mnu_exe/mb/E7C59v1.1.pdf
MSI Creator TRX40 レビュー目次
1.MSI Creator TRX40の外観・付属品
2.MSI Creator TRX40の基板上コンポーネント詳細
3.MSI M.2 XPANDER-AERO Gen4について
4.Threadripper専用空冷CPUクーラーとのクリアランスについて
5.MSI Creator TRX40の検証機材
6.MSI Creator TRX40のBIOSについて
7.イルミネーション操作機能「MSI Mystic Light」について
8.MSI Creator TRX40のOC設定について
9.MSI Creator TRX40の動作検証・OC耐性
10.MSI Creator TRX40のレビューまとめ
【注意事項】
同検証は19年12月上旬に行っておりMSI Creator TRX40のBIOSは110(サポートページでは7C59v11と表記)を使用しています。最新BIOSでは修正されている不具合や追加されている機能もあると思うので、最新BIOSのリリースについては公式ページを各自でチェックしてください。
サポート:https://jp.msi.com/Motherboard/support/Creator-TRX40#down-bios
【19年12月19日:初稿】
レビュー記事初稿を公開、BIOS:110(サポートページでは7C59v11と表記)で検証
【20年1月19日:初稿】
ストレステストに関する補足を追記しました。
MSI Creator TRX40の外観・付属品
まず最初にMSI Creator TRX40の外観と付属品をチェックしていきます。キャラメル箱と呼ばれる形状の厚手の外箱に2段重ねの内パッケージという構造で梱包されています。
上段の内箱にはマザーボード本体が入っており、下段の内箱には組み立て関連のパーツとマニュアル類にパーティション分けされて付属品が収められていました。
マニュアルなど冊子類で必要なものが一通り揃っています。
注目ポイントとして「MSI Creator TRX40」のドライバはCDではなく専用のUSBメモリに収録されていました。光学ドライブを搭載しない環境も増えているので嬉しい配慮です。その他のマザーボード製品でもドライバはUSBメモリに移行して欲しいところ。
不織布の袋の中には組み立てに関する主な付属品が収められています。
「MSI Creator TRX40」には組み立てに関連する付属品として、SATAケーブル4本、M.2 SSD固定ネジセット、WiFiアンテナ、RGB対応4PIN LED機器接続用Y字分岐延長ケーブル、アドレッサブルRGB対応VG-D型3PIN LED機器接続ケーブル、Corsair製アドレッサブルRGB LED機器接続ケーブル、サーモセンサー×3本があります。
「MSI Creator TRX40」にはマザーボード本体に接続可能な2PIN型サーモセンサーが3本付属します。
「MSI Creator TRX40」にはRGB対応汎用4PIN LEDヘッダーがマザーボード上に実装されており、付属の2分岐ケーブルによって1つのLEDヘッダーに2つのLEDイルミネーション機器を接続可能です。
「MSI Creator TRX40」にはアドレッサブルRGB対応VG-D型汎用3PIN LEDヘッダーがマザーボード上に実装されていますが、それをロック付き3PINコネクタに変換する延長ケーブルが付属します。
「MSI Creator TRX40」にはPCパーツメーカーCorsair社からリリースされているLEDイルミネーション搭載冷却ファンやLEDテープが接続できるCorsair機器用LEDヘッダーが実装されており、それに対応した延長ケーブルも付属します。
詳細については後ほど詳しく解説しますが、「MSI Creator TRX40」にはPCIE4.0対応NVMe M.2スロットを4基増設可能なPCIE拡張ボード「M.2 XPANDER-AERO」が標準で付属します。
マザーボード全体像は次のようになっています。
MSI Creator TRX40はE-ATXフォームファクタのマザーボードで一般的なATXフォームファクタよりも横幅が30mm程大きい272mmとなっています。
マザーボード右下のチップセット用ヒートシンクは装飾のないシンプルなブラックカラーのアルミニウム製ですが、デザインコンセプトであるクリスタルを模した表面加工になっています。
M.2 SSDヒートシンクと一体化して大きなL字を描き、マザーボード下端と右端を占有しています。一体型ヒートシンクは中央に設置されたアクティブ冷却ファンによって一括して冷やす構造です。
多くのTRX40マザーボードと同様にチップセットクーラーには冷却ファンが内蔵されていますが、「MSI Creator TRX40」では業界最大サイズの50mm径10mm厚、高耐久なダブルボールベアリング、特許取得済み「プロペラブレードテクノロジー」採用のファンが使用されています。
「MSI Creator TRX40」のチップセットクーラー冷却ファンには「ZERO FROZR Technology」と呼ばれるセミファンレス機能が採用されており、ファン動作モードとして「Balance Mode(標準設定)」や「Silence Mode」を選択すると、チップセット温度が閾値以下の場合に冷却ファンが停止します。
リアI/Oカバーもチップセットクーラーと同じくブラックカラーを基調にしたシンプルデザインですが、MSI Creatorシリーズを代表するクリスタルを模したプレートで装飾されています。このクリスタルプレートにはアドレッサブルLEDイルミネーションが内蔵されています。
MSI Creator TRX40にはCPUコア向け16フェーズとSOCコア向け3フェーズで計19フェーズとい第3世代Ryzen Threadripper対応TRX40マザーボードの中でもトップクラスの超特盛りなVRM電源が実装されています。
「MSI Creator TRX40」のVRM電源クーラーCPU向け16フェーズのVRM電源回路上にフィンアレイ型のアルミニウム製放熱ヒートシンクを搭載し、ヒートパイプによってリアI/Oカバー側のヒートシンクと連結されています。
実はこのリアI/Oカバーもプラスチック製ではなくほぼ全体がアルミニウムで一体成型されており放熱ヒートシンクの役割を果たします。加えてオンボードオーディオカバー部分もアルミニウム製です。
「MSI Creator TRX40」においてVRM電源からチップセットまでマザーボード上を縦断・横断するように配置されたヒートパイプは「拡張ヒートパイプ」と名付けられており、VRM電源、チップセット、M.2 SSDなどの局所的な発熱を全体に分散することで温度を下げ、またチップセットクーラーに内蔵された冷却ファンによって一括して冷却することを可能にする構造です。
チップセット冷却ファンと拡張ヒートパイプを組み合わせた「TOTAL THERMAL SOLUTION」によって、M.2 SSDやVRM電源を含めたマザーボード全体の温度が大幅に低下するとMSI公式からはアピールされています。
32コア64スレッドもラインナップされる第3世代Ryzen Threadripper CPUへ安定した大電力供給が行えるように「MSI Creator TRX40」のEPS端子は8PIN×2が実装され、70A/720Wの大電力供給に対応します。EPS電源端子については電源容量800W以下の電源ユニットでは1つしか端子がない場合があるので、EPS端子が足りているか事前に注意して確認してください。
「MSI Creator TRX40」はマザーボード一体型リアI/Oバックパネルも採用されています。PCケースにパネルを装着する作業は固くて装着し難かったり、忘れてしまうこともあるのでマザーボードに統合されているのは嬉しい機能です。
以下USB規格に関する説明がありますが『USB3.2 Gen2 = USB3.1 Gen2』、『USB3.2 Gen1 = USB3.1 Gen1 = USB3.0』と考えて基本的に問題ありません。
「MSI Creator TRX40」のリアI/Oには接続帯域20Gbpsに達する次世代規格USB3.2 Gen2x2に対応したUSB Type-C端子が1基実装されています。
USB3.2 Gen2x2の接続に対応した外付けストレージについてはWDから新製品「WD_BLACK P50 Game Drive(レビュー)」が20年1月に発売されており、USB3.2 Gen2x2に対応したUSB Type-Cで接続することによって連続アクセス2GB/sの超高速を実現できます。
その他にも3基のUSB3.2 Gen2と6基のUSB3.2 Gen1端子が搭載されています。マウス・キーボードなどの周辺機器を多数繋いでいても、VR HMDに余裕で対応可能です。ただUSB3.Xは無線マウスと電波干渉を起こすことがあるので、追加でUSB2.0端子も少し離れた場所に設置して欲しかったです。
ネットワーク関連では低CPU負荷、高スループットで定評のあるIntel純正のLANコントローラーが採用された有線LAN端子(赤色)に加えて、一般的なギガビットイーサの10倍の帯域幅を実現するAQUANTIA製10Gbイーサ(黒色の有線LAN端子)も搭載しています。
「MSI Creator TRX40」は次世代規格WiFi6に対応した無線LAN(Intel AX200)も搭載しています。接続規格としてはWi-Fi 802.11 a/b/g/n/ac/ax、2.4/5GHzデュアルバンド、最大通信速度2400Mbps、Bluetooth 5.0に対応しています。リアI/Oには無線モジュールのアンテナ端子が設置されているので付属のアンテナを接続できます。
またリアI/Oには「BIOS FLASHBACK+」ボタンが設置されており所定のUSB端子にBIOSファイルの入ったUSBメモリを接続してボタンを押すと「BIOS FLASHBACK+」機能によってCPUやメモリなしの状態でもBIOSの修復・アップデートが可能です。
MSI Creator TRX40の基板上コンポーネント詳細
続いて「MSI Creator TRX40」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。Ryzen Threadripper用TRX4(TR4)ソケットはLOTESとFOXCONNの2社が製造しており、各社マザーボードで採用されていますが、今回入手した「MSI Creator TRX40」にはLOTES製ソケットが搭載されていました。TRX4ソケットの一部にはかなり力を入れて押し付けないとソケットのネジが噛み合わないものがありますが、「MSI Creator TRX40」のソケットはネジの噛み合わせに十分な遊びがあって簡単にネジを締めることができました。
システムメモリ用のDDR4メモリスロットはCPUソケット両側に8基のスロットが設置されています。固定時のツメはマザーボード上側の片側ラッチとなっています。グラフィックカードのあるPCIEスロット側はラッチがないので干渉の心配もありません。
DDR4メモリスロットには外部ノイズEMIから保護するための金属シールド「DDR4 Steel Armor」が実装されており、DDR4 BOOSTというMSI独自の基板配線の最適化技術と組み合わせて、より安定したメモリのオーバークロック環境を実現しています。
グラフィックボードなどを設置するPCIEスロットは上から[N/A、x16、N/A、x16、x16、N/A、x16]サイズのスロットが設置されています。プライマリGPUは2段目のスロットなので大型のハイエンド空冷クーラーとの互換性も確保されています。
MSI Creator TRX40において各PCIEスロットのレーン配分は下の図の通りで固定されており、PCIEレーンの排他利用や共有などはありません。
別売りオプションパーツのNVLink SLI Bridgeが必要ですが、3スロット(1スロットスペース)のNVLink SLI BridgeがあればNVIDIAの最新GPUであるRTX 2080 TiやRTX 2080でもマルチGPU環境を構築可能です。
MSI Creator TRX40にも最近のトレンドとしてすべてのx16サイズスロット1Kgを超える重量級グラボの重さに耐えるように補強用メタルアーマー搭載スロット「MSI PCI Express Steel Armor slots」が採用されています。半田付けによる固定を強化したことで従来よりも4倍も頑丈になっており、PCIEスロットをシールドで覆うことによって外部ノイズEMIから保護する役割も果たします。
SATAストレージ用の端子はマザーボード右下に6基搭載されています。SATA3_1~6はいずれもAMD TRX40チップセットのコントローラーによる接続で、RAID0/1/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。
MSI Creator TRX40には高速NVMe接続規格に対応したM.2スロットがPCIEスロット間に3基設置されています。3基のM.2スロットはいずれもNVMe(PCIE4.0x4)とSATA接続の両方のM.2 SSDに対応しており排他利用はありません。3基のM.2スロットのうちM2_1とM2_2はCPU直結、M2_3はPCH経由で接続されています。
3基のM.2スロットにはMSI独自のSSDヒートシンク「M.2 Shield Frozer」が設置されています。PCHクーラーの冷却ファンによって一括で冷却する構造なので、発熱の大きいPCIE4.0x4対応NVMe M.2 SSDも安心して運用できます。
また「MSI Creator TRX40」など一部のMSI製上位モデル限定の独自構造としてM.2 SSDを表裏の両面から金属製ヒートシンクで挟みこむ「double side thermal design」が採用されているところも大きな特徴です。片面実装と両面実装の両方のM.2 SSDに対応できるように背面側のサーマルパッドは2重になっています。
加えて「MSI Creator TRX40」にはNVMe M.2 SSDを4枚装着可能なPCIE拡張ボード「M.2 XPANDER-AERO Gen4」が標準で付属しており、これを使用することでPCIE4.0x4に対応するM.2スロットをさらに4つ増設できます。
「M.2 XPANDER-AERO Gen4」はPCIE4.0x16を4つのPCIE4.0x4に分割することで4基のNVMe M.2 SSDを増設できる拡張ボードなので2段目もしくは5段目のPCIEスロットへの増設が推奨されています。
マザーボード右端には最新接続規格USB3.1 Gen2に対応する内部USB3.1 Gen2ヘッダーと、2基の内部USB3.0ヘッダーが設置されています。内部USB3.0ヘッダーはコネクタやケーブルがグラフィックボードなどのPCIE拡張ボードと干渉しないように、いずれもマザーボードと並行な向きに実装されています。
USB2.0の内部ヘッダーも2基ずつマザーボード下に設置されています。CorsairLinkやNZXT CAM対応製品など内部USB2.0を使用する機器も増えていますが、MSI Creator TRX40であればそれらの機器も問題なく使用可能です。内部USB2.0が2基でも不足する場合はUSB2.0ヘッダー増設ハブの「NZXT INTERNAL USB HUB」や「Thermaltake H200 PLUS」がおすすめです。
「MSI Creator TRX40」はクリエイティブユーザー向けマザーボードですが、同社のゲーミングマザーボードと同じく、MSI独自の高音質オンボードサウンド機能を従来機種よりもさらに強化した「AUDIO BOOST 4」も採用されています。日本ケミコン製のオーディオコンデンサを採用し、オーディオパートはマザーボードから物理的に分離され、左右のオーディオチャンネルがレイヤー分けされることでクリアな音質を実現します。インピーダンス最大600オームまで対応可能な高出力DACで高音質ヘッドホンも使用可能です。FPSゲームなどで足音や銃声をゲーム内にOSD表示で可視化する「NAHIMIC Sound Technology」も使用できます。
ケーブルが長くならざるを得ないVR HMDの接続ケーブルでは信号損失が発生しやすく、スタッターの発生や瞬間的な暗転などパフォーマンスに大きな影響を与える可能性があります。そこでMSIではUSBリピーターチップ「VR BOOST」によって信号強度を高めてVR機器に最適化したUSBポートが採用されています。MSI Creator TRX40ではプリントがある通りVR BOOST対応USB端子がリアI/Oに1基実装されています。
冷却ファンを接続するためのコネクタについてはPWM対応4PINファンコネクタとしてCPUファン端子、水冷ポンプ対応端子、ケースファン端子7基(SYS_FAN1~4, EXT_FAN1~3)の計9基が搭載されています。これだけあれば360サイズなどの大型ラジエーターを複数基積んだハイエンド水冷構成を組んでもマザーボードのファン端子だけで余裕で運用可能です。水冷ポンプ対応の「PUMP_FAN1」端子は最大24W(12V、2A)の出力にも対応しているので本格水冷向けのD5やDDCポンプの電源としても変換ケーブルを噛ませることで使用できます。
MSIのファンコントロール機能にはソース温度の乱高下を無視してスムーズなファン回転数変化を実現するヒステリシス機能も備わっています。
さらに「MSI Creator TRX40」には外部温度センサー用2PINヘッダーが3基も実装されました。MSIマザーボードとしては外部温度センサーの採用は少ないのですが、特に水温ソースでファン制御を行うDIY水冷ユーザーには嬉しい機能です。
またマザーボード右下にはOCerのみならず一般自作erにとっても組み立て中の動作確認に便利なオンボードとスタートスイッチとリセットスイッチが実装されています。POSTエラーのチェックができるDebug Code LEDも設置されています。リアパネルにはCMOSクリアのハードウェアスイッチも設置されているのでオーバークロック設定を失敗しても簡単に初期化が可能です。
MSI M.2 XPANDER-AERO Gen4について
「MSI Creator TRX40」には1つにPCIEスロットにNVMe M.2 SSDに対応したM.2スロットを4基増設可能なPCIE拡張ボード「M.2 XPANDER-AERO Gen4」が標準で付属します。その名の通りPCIE4.0x4接続のNVMe M.2 SSDをサポートする拡張ボードです。「M.2 XPANDER-AERO Gen4」はMSI製ショート基盤グラフィックボードを彷彿とさせるデザインでGPUクラスの冷却性能もアピールされており、100mm径の冷却ファンによる2スロット占有GPUクーラーが搭載されています。
基板背面のプラスネジ4つを外すと基板からクーラーを取り外すことができます。
「M.2 XPANDER-AERO Gen4」ののGPUクーラーにはPCIEスロットを2スロット占有する大型のアルミニウム製ヒートシンクが採用されており、M.2 SSDをヒートシンクに接触させるためのサーマルパッドも標準で貼り付けられています。ヒートシンクは放熱フィン部分も大きいので冷却性能も高そうです。
「M.2 XPANDER-AERO Gen4」のM.2スロットはいずれもPCIEスロットと垂直な向きに4基が実装されています。M.2スロットは現在主流なM.2 2280フォームファクタだけでなく、全長120mmのM.2 22120フォームファクタにも対応しています。
M.2スロットの根本にはそれぞれ温度センサーが伸びており、黒色のスポンジスペーサーと挟み込まれる形でM.2 SSDとしっかり密着します。サーモセンサーの温度情報は「M.2 XPANDER-AERO Gen4」に搭載された冷却ファンのファン制御ソースとして使用されます。
「M.2 XPANDER-AERO Gen4」の基板の右端にはPCIE補助電源6PIN端子が実装されており、消費電力の大きいNVMe M.2 SSDを複数搭載しても安定した電力供給が可能です。なおこのPCIE補助電源はオプション扱いとなっておりPCIEスロットから供給可能な75Wで十分であれば接続しなくても使用できます。
PCIEブラケット寄りの上側にはLEDスイッチとファンスイッチが実装されています。いずれも左がON、右がOFFでレバーをスライドさせることでON/OFFを切り替えることができます。LEDスイッチはアクセスLEDとファン制御LEDのON/OFFを切り替えることができます。ファンスイッチをOFFにするとファンレス動作が可能になります。
補助電源端子のすぐ下にある「JCASE1」ヘッダーはPCケースのストレージLEDと接続し、「JMB1」ヘッダーはM/BのストレージLEDヘッダーと接続することで、「M.2 XPANDER-AERO」とマザーボードの両方に接続されたストレージへのアクセスに合わせてPCケースのストレージLEDを点灯させることができます。
「M.2 XPANDER-AERO Gen4」と、PCIE3.0対応の従来モデル「M.2 XPANDER-AERO」を比較すると外観ではロゴやラインが虹色ホログラムになり、アルミニウム製ヒートシンクに黒色塗装が施されています。基板レイアウトはほぼ同じですが、ICチップ(PCIEコントローラー?)がPCIE Gen3対応のICS 9DB433AGLFものから、PCIE Gen4に対応したICS L0651EILに変更されています。
「MSI Creator TRX40」で「M.2 XPANDER-AERO Gen4」を使用して複数のNVMe M.2 SSDを増設する場合は、「M.2 XPANDER-AERO」を設置するPCIEスロットに対してBIOSメニューでPCIE帯域の分割設定を適用する必要があります。(通常は自動検出で設定が変更されます)
「MSI Creator TRX40」の場合は2段目と5段目のPCIEスロットがPCIE4.0x16帯域を4つのPCIE4.0x4に分割できるので4基のNVMe M.2 SSDの増設に対応します。
今回、「M.2 XPANDER-AERO Gen4」の検証には、マザーボード備え付けヒートシンクとの組み合わせがメーカーから想定されてヒートシンクレスで販売されているPCIE4.0対応NVMe M.2 SSD「CFD PG3VNF 1TB」を4枚使用しました。
「M.2 XPANDER-AERO Gen4」でCFD PG3VNF 1TBのようなPCIE4.0対応NVMe M.2 SSDを4枚使用してNVMe RAIDを構成すると、連続読み出し17GB/s、連続書き込み16GB/sの超高速なストレージを構築できます。
「M.2 XPANDER-AERO Gen4」のPCIEブラケット側に実装された6つのファン制御LEDはメーターのようにファン回転数もしくは温度に対して点灯するLED数が変化するのではなく、基板上温度センサーの温度に依存して温度が上がる毎に、青→緑→赤へと発光カラーが変化します。(ステップ状ではなく水色や橙色などを挟んで変化していきます。)
4枚のCFD PG3VNF 1TBをアイドル状態のまま放置するとファン制御LEDは青色~水色に点灯し、「M.2 XPANDER-AERO Gen4」のファンノイズは43dB程度となりました。
iometarを使用して「M.2 XPANDER-AERO」に設置した4枚のCFD PG3VNF 1TBでシーケンシャルリードのアクセスを行ったところ、4基のNVMe(PCIE4.0x4)接続SSDとしては理想的なトータル20GB/sの読み出し速度となりました。SSDの温度については「M.2 XPANDER-AERO Gen4」のヒートシンクによる冷却なら、メモリチップの温度は40度未満に収まるようです。(CFD PG3VNFでは最も発熱の大きいメモリコントローラーの温度をモニタリングできない)
上の状態で20分ほど負荷をかけ続けたところ、ファン制御LEDが緑色になり、「M.2 XPANDER-AERO Gen4」のファンノイズは45dB程度となりました。2スロット占有の「M.2 XPANDER-AERO Gen4」にはファンノイズをアイドル40dB以下、ロード44dB以下に収めて欲しかったというのが正直なところです。
とはいえ「M.2 XPANDER-AERO Gen4」のヒートシンクはグラフィックボードクラスの大きさなので、PCケース内エアフローだけで十分冷やせる可能性もあり、環境によってはファンレススイッチをONにして運用しても良いと思います。
Threadripper専用空冷CPUクーラーとのクリアランスについて
「MSI Creator TRX40」とsTRX4ソケットに対応するThreadripper専用の空冷CPUクーラーとのPCIEスロットやメモリスロットのクリアランスについてチェックしていきます。TRX40マザーボードとのクリアランス検証に使用する空冷CPUクーラーのうち「be quiet! Dark Rock Pro TR4」「Noctua NH-U9 TR4-SP3」「Noctua NH-U12S TR4-SP3」の3機種については、国内正規代理店のTechace様より機材をお借りしました。
be quiet! Dark Rock Pro TR4
be quiet! Dark Rock Pro TR4については「MSI Creator TRX40」のVRM電源クーラーとの距離がギリギリですが、干渉することなく設置できます。「MSI Creator TRX40」にbe quiet! Dark Rock Pro TR4を設置した場合、最上段のPCIEスロットとCPUクーラーが干渉することはありません。be quiet! Dark Rock Pro TR4とのメモリのクリアランスについては、CPUソケットに近い内側2つのメモリスロットにヒートシンクが被さります。ヒートシンク本体のクリアランスは製品仕様では47mm程度が確保されていますが、前方の冷却ファンはそれよりも低いので全高44mm程度が限界になります。全高43mmのG.Skill Trident Zシリーズについては干渉せずに設置できます。
Noctua NH-U9 TR4-SP3
Noctua NH-U9 TR4-SP3については「MSI Creator TRX40」のVRM電源クーラーと干渉することなく設置できます。「MSI Creator TRX40」にNoctua NH-U9 TR4-SP3を設置した場合、最上段のPCIEスロットとCPUクーラーが干渉することはありません。Noctua NH-U9 TR4-SP3とのメモリのクリアランスについては、CPUソケットに近い内側2つのメモリスロットに冷却ファンが被さります。
冷却ファンの固定はファンクリップを使用しており高さ方向のオフセット幅にかなり余裕があるので、背の高いヒートシンクを備えたメモリであっても装着自体は可能です。全高39mmよりも高いメモリではメモリヒートシンクの差分だけCPUクーラーの全高が高くなります。
ただし、全高35mmくらいのロープロファイルなヒートシンク付きメモリであれば問題ありませんが、全高39mmのG.Skill Flare Xや全高43mmのG.Skill Trident Zなどを超えてくるとヒートシンクの放熱フィンとファンの気流面が大きくズレ始めるので非推奨です。
Noctua NH-U12S TR4-SP3
Noctua NH-U12S TR4-SP3については「MSI Creator TRX40」のVRM電源クーラーと干渉することなく設置できます。「MSI Creator TRX40」にNoctua NH-U12S TR4-SP3を設置した場合、最上段のPCIEスロットとCPUクーラーが干渉することはありません。Noctua NH-U12S TR4-SP3とのメモリのクリアランスについては、CPUソケットに近い内側1つのメモリスロットに冷却ファンが被さります。後方にファンを増設する時にファンノイズを低減させる厚手のラバーパッドを使用してもギリギリで2つ目のスロットには被さりません。
冷却ファンの固定はファンクリップを使用しており高さ方向のオフセット幅にかなり余裕があるので、背の高いヒートシンクを備えたメモリであっても装着自体は可能です。全高39mmよりも高いメモリではメモリヒートシンクの差分だけCPUクーラーの全高が高くなります。
ただし、全高35mmくらいのロープロファイルなヒートシンク付きメモリや全高39mmのG.Skill Flare Xであれば問題ありませんが、全高45mmを超えるCorsair Dominator Platinumなどを使用すると、ヒートシンクの放熱フィンとファンの気流面が大きくズレ始めるので非推奨です。
Noctua NH-U14S TR4-SP3
Noctua NH-U14S TR4-SP3については「MSI Creator TRX40」のVRM電源クーラーと干渉することなく設置できます。「MSI Creator TRX40」にNoctua NH-U14S TR4-SP3を設置した場合、最上段のPCIEスロットとCPUクーラーが干渉することはありません。Noctua NH-U14S TR4-SP3とのメモリのクリアランスについては、CPUソケットに近い内側1つのメモリスロットに冷却ファンが被さります。後方にファンを増設する時にファンノイズを低減させる厚手のラバーパッドを使用するとギリギリで2つ目のスロットにも被さります。
冷却ファンの固定はファンクリップを使用しており高さ方向のオフセット幅にかなり余裕があるので、背の高いヒートシンクを備えたメモリであっても装着自体は可能です。ヒートシンクなしメモリの全高31mmよりも高いメモリではメモリヒートシンクの差分だけCPUクーラーの全高が高くなります。
ただし、全高35mmくらいのロープロファイルなヒートシンク付きメモリであれば問題ありませんが、全高39mmのG.Skill Flare Xや全高43mmのG.Skill Trident Zなどを超えてくるとヒートシンクの放熱フィンとファンの気流面が大きくズレ始めるので非推奨です。
Thermalright Silver Arrow TR4
Thermalright Silver Arrow TR4については「MSI Creator TRX40」のVRM電源クーラーと干渉することなく設置できます。「MSI Creator TRX40」にThermalright Silver Arrow TR4を設置した場合、最上段のPCIEスロットとCPUクーラーが干渉することはありません。Thermalright Silver Arrow TR4とのメモリのクリアランスについては、CPUソケットに近い内側1つのメモリスロットにヒートシンクが被さります。前方もしくは後方にファンを増設する場合はCPUソケットに近い内側2つ目のメモリスロットにもファンが被さります。
Thermalright Silver Arrow TR4のヒートシンクについては、全高45mmまでのクリアランスがあるので全高43mmのG.Skill Trident Zは問題なく設置できますが、全高49mmのCorsair Vengeance RGB Proや全高53mmCorsair Dominator Platinum RGBは干渉していしまいます。
ヒートシンクの前後に冷却ファンを増設する場合、冷却ファンの固定はファンクリップを使用しており高さ方向のオフセット幅にかなり余裕があるので、背の高いヒートシンクを備えたメモリであっても装着自体は可能です。ヒートシンクなしメモリの全高31mmよりも高いメモリではメモリヒートシンクの差分だけCPUクーラーの全高が高くなります。
ただし、全高35mmくらいのロープロファイルなヒートシンク付きメモリであれば問題ありませんが、全高39mmのG.Skill Flare Xや全高43mmのG.Skill Trident Zなどを超えてくるとヒートシンクの放熱フィンとファンの気流面が大きくズレ始めるので非推奨です。
MSI Creator TRX40の検証機材
MSI Creator TRX40を使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。MSI Creator TRX40以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | AMD Ryzen Threadripper 3970X 32コア64スレッド (レビュー) |
CPUクーラー | ENERMAX LIQTECH TR4 II 360 ELC-LTTRO360-TBP (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN (+F4-3600C14D-16GTZN×2セット) DDR4 8GB*8=32GB (レビュー) |
CPUベンチ用 ビデオカード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
第3世代Ryzen Threadripper検証環境のシステムメモリには、第3世代Ryzenプラットフォームに最適化されたハイパフォーマンスOCメモリの最速モデル「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」を使用しています。3600MHz/CL14の最速モデル、3200MHz/CL14や3600MHz/CL16といった定番スペックがラインナップされ、高級感のあるヒートシンクや8分割ARGB LEDを搭載してデザイン面でも優れる「G.Skill Trident Z Neo」シリーズは、第3世代Ryzenや第3世代Ryzen Threadripperの自作PCで性能を追求するなら間違いのないオススメなOCメモリです。
・「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」をレビュー
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する18年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、Ryzen Threadripper&TRX40のようなエンスー環境のシステムストレージ用に一押しのSSDです。
・「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
レビュー記事後半ではRyzen Threadripper 3970Xを使用したオーバークロックも実践するので検証機材CPUクーラーにはAMD Ryzen ThreadripperのTR4 Socketに完全対応となる大型ベースプレートと360サイズラジエーター採用で最高クラスの冷却性能を誇る簡易水冷CPUクーラー「ENERMAX LIQTECH TR4 II 360」を検証機材として使用しています。
・「ENERMAX LIQTECH TR4 II 360」をレビュー
360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーター採用の簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファン「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。1基あたり4000円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
・「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
普段は熱伝導グリスを上のようにてきとうに塗っているのですが、Ryzen Threadripperはヒートスプレッダが大きいため、『最初に等間隔に9カ所小さめに熱伝導グリスを落として、さらにその間の4か所に少し大きめに熱伝導グリスを塗る』というNoctua式の塗り方が良い感じだったので今回はNoctua式を採用しました。
この塗り方をするとRyzen Threadripperの大型ヒートスプレッダでもCPUクーラーの圧着でヒートスプレッダ全体へ熱伝導グリスが綺麗に伸びます。ただしグリスをかなり大量に使うので注意。
サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
・「Thermal Grizzly Carbonaut」はRyzen TR 3970Xを冷やせるか!?
以上で検証機材のセットアップが完了となります。
MSI Creator TRX40のBIOSについて
MSI Creator TRX40を使用した検証機の構築も完了したので動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。(OSから日付調整する前にスクショを取っている場合、日付がおかしいですが無視してください。また内容的に差異のないものは過去の同社製マザーボードのBIOSスクリーンショットを流用しています。)
BIOSに最初にアクセスするとイージーモードというグラフィカルな画面が表示されます。パッと見の見栄えは良いのですが詳細モードでないと詳細設定ができないので「F7」キーを押してサクッと詳細モード移るのがおすすめです。右上には表示言語変更のプルダウンメニューがあります。MSIマザーボードはASUSの次くらいにしっかりとローカライズされているので日本語UIも使いやすいと思います。
MSIのBIOS詳細モードでは「SETTING」「OC」「M-FLASH」「OC PROFILE」「HARDWARE」「BOARD EXPLORER」の6つのアイコンを選択することで中央のイラスト部分や画面全体に詳細設定項目が表示されるという構造になっています。キーボード操作も可能ですがマウス操作を重視したUIです。
MSI Creator TRX40のBIOSにおいて設定の保存とBIOSからの退出は「SETTING」アイコンの「保存して終了」の項目内に存在します。ASUS、ASRock、GIGABYTEなどと違ってカーソルキーのみの移動で設定保存と退出関連の項目にサクッと移動できないのが少し不便に感じます。起動デバイスを指定して再起動をかける「Boot Override」機能があるのは使い勝手が良くて好印象です。
2019年12月現在、「MSI Creator TRX40」のサポートページでは最新BIOSとして「110(サポートページでは7C59v11と表記)」が公開されています。BIOSのアップデート方法は、まず下から最新のBIOSファイルをダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
サポート:https://jp.msi.com/Motherboard/support/Creator-TRX40#down-bios
USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、詳細モード左下の「M-FLASH」を選択します。「M-FLASH」モードはBIOSとは完全に別で用意されており再起動するか尋ねられるので再起動します。ただし手動でOCを行っている場合は「M-FLASH」を選択しても一度設定をデフォルトに戻して再起動がかかるので、再度BIOSに入って「M-FLASH」を選択する必要があるようです。
再起動して「M-FLASH」に入ったら下のようにUSBメモリ内のBIOSファイルを選択してアップデートを実行すればBIOSのアップデートが完了します。なおBIOSアップデート後は自動でBIOSへ入らないので注意してください。アップデート後はOC設定なども初期化されてしまうので初回は自動でBIOSに入って欲しいです。
ブートとOSインストール周りについて紹介します。
MSI Creator TRX40のブートデバイス関連の設定は「SETTING」アイコンの「ブート」という項目にまとめられています。
起動デバイスの優先順位は「FIXED BOOT ORDER Priorities」という項目で、ハードディスクやDVDドライブなど大別した優先順位が設定可能となっており、その下にある「〇〇 Drive BBS Priorities」で同じ種類のデバイスについて個別の起動優先順位の設定を行えます。
一般的にはWindows OSの入った「UEFI:HardDisk:Windows Boot Manager(〇〇)」を最上位に設定して、その他の起動デバイスは無効化しておけばOKです。
Windows 10 OSのインストール手順(BIOSにおける設定)についても簡単に紹介しておきます。
Windows 10のOSインストールメディア(USBメモリ)については「FIXED BPPT ORDER Priorities」では「UEFI USB Key:UEFI: 〇〇」という名前になります。「UEFI USB Key:UEFI: 〇〇」を起動優先順位の最上位に設定してください。
起動優先順位でインストールメディアを最上位に設定したら設定を変更してBIOSから退出します。ただMSI Creator TRX40はブートデバイスを指定できるBoot Overrideを使用できるので直接OSインストールメディアを起動デバイスとして指定して再起動してもOKです。
ちなみにWindows10の製品パッケージに付属するUSBメモリではUEFIで認識できないトラブルが発生することがあるようなのでそういうときはこちらの記事に従ってMS公式ツールを使用して適当なUSBメモリでOSインストールメディアを作成すると上手くいきます。
BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、MSI Creator TRX40のBIOS機能で管理人が気になったものをいくつかチェックしていきます。
「MSI Creator TRX40」はNVMe SSDによるRAIDストレージの構築に対応していますが、「MSI Creator TRX40」に標準で付属する「M.2 XPANDER-AERO Gen4」や、一般販売されている「ASRock Ultra Quad M.2 Card」や「ASUS HYPER M.2 X16 CARD V2」のような複数のNVMe M.2 SSDを設置可能なPCIE拡張ボード用にPCIEレーンを分割するBIOS設定が用意されています。
BIOS設定を変更することで、「MSI Creator TRX40」の2段目と5段目に実装されたPCIE4.0x16レーンのPCIEスロットは4つのPCIE4.0x4レーンに分割することができます。
NVMe RAIDモードで使用するブータブルディスクの作成方法(Windows OSのインストール方法)について詳しくは下の記事でまとめているのでこちらを参照してください。X399マザーボードを使用していますが、設定やインストールの基本的な手順は共通です。
記事中ではRAID0ストレージにインストールする例を紹介していますが、アレイ構築でシングルボリュームを選べば、SATA SSDのシングルボリュームへのOSインストールも同様の手順で行えます。
・Threadripper環境でNVMe RAIDにOSをインストールする方法
MSI Creator TRX40のファンコントロールや各種コンポーネント温度のハードウェアモニタリングはトップメニューの「HARDWARE」アイコンからアクセスできます。
「MSI Creator TRX40」のファンコントロール機能は下のスクリーンショットのようにグラフィカルUIのみが用意されています。
ファンカーブの設定には画面中央のグラフから頂点座標をマウスで直接操作するか、少し分かり難いのですが、右にある温度とファン速度(デューティ比or電圧)を直接数値入力するかのどちらかで行います。
「MSI Creator TRX40」にはモニタリング可能な温度が12種類もあり、T_SEN 1~3は付属の温度センサーや、市販の2PIN温度センサーによって外部温度センサーを増設できます。
「MSI Creator TRX40」に搭載された10基のファン端子については、いずれも個別にファン制御モードをPWM制御とDC制御から選択でき、ファンコントロールソース温度やヒステリシス(Step Up/Down Time)の設定もできます。
「MSI Creator TRX40」に搭載されたファン端子のうちCPUファン端子、PUMP端子、ケースファン端子_1~4の6つはファンコンソース温度として、CPU温度、System温度、MOS(VRM電源)温度、PCH(チップセット)温度の4種類から選択できます。
「MSI Creator TRX40」に搭載されたファン端子のうちEXT_FAN_1~3(BIOS上ではSystem 6~8)の3基については、外部温度センサーをファンコントロールソースとして選択できます。水冷ラジエーターに設置した冷却ファンを水温ソースで制御する場合はEXT_FAN_1~3に接続するとよさそうです。
「MSI Creator TRX40」のチップセットクーラー冷却ファンについては、他のファン端子と異なり、ファンカーブを自分で設定するのではなく「Silence Mode」「Balance Mode(標準設定)」「Boost Mode」の3つのプリセットと、ユーザーが任意に設定する「Manual Mode」の4つの動作モードを選択する形式になっています。
ユーザーが任意に設定する「Manual Mode」では4頂点のファンカーブを自由に設定できます。最左端の頂点でデューティ比を0に設定すると設定した温度以下でファンを停止させるセミファンレス動作も可能です。
MSI製マザーボードのファンコントロール機能はグラフィカルUIでわかりやすく設定できるよ、という機能になっています。直感的にわかりますし直打ちが苦手な人にはありがたい機能だと思います。
ただ個人的にはテキストUIで数値直打ちが好きなので管理人がMSIマザボを敬遠してしまう理由の1つです。
あと細かいところですがBIOS内のスクリーンショットをF12キーで撮影できますがスクリーンショットファイルの名前がタイムスタンプではなく保存するUSBメモリのルートに存在するファイルで重複しない連番なのが少し使い難かったです。間違って上書き保存してしまうことがあるのでタイムスタンプにして欲しいです。
イルミネーション操作機能「MSI Mystic Light」について
「MSI Creator TRX40」はマザーボード備え付けのLEDイルミネーションやRGB対応汎用4PIN/アドレッサブルRGB対応汎用3PINイルミネーション機器を操作可能なライティング制御機能「MSI Mystic Light」に対応しています。「MSI Creator TRX40」にはマザーボード備えつけのLEDイルミネーションとして、リアI/OカバーのクリスタルプレートにアドレッサブルLEDイルミネーションが内蔵されています。
MSIのライティング制御機能「MSI Mystic light」による操作に対応したRGB対応汎用4PIN LEDヘッダーがマザーボード右上に設置されています。当サイトでもレビュー記事を掲載しているLEDテープ「SilverStone SST-LS02」やLEDファングリル「Phanteks Halos Lux RGB Fan Frames」などが接続可能です。
またアドレッサブルLED機器を接続可能なARGB対応VD-G型3PIN LEDヘッダーも2基実装されています。使用可能なアドレッサブルLEDテープについては国内で発売済みの「BitFenix Alchemy 3.0 Addressable RGB LED Strip」や「ASUS ROG ADDRESSABLE LED STRIP-60CM」や「AINEX アドレサブルLEDストリップライト」が動作することが確認できています。
またCorsair製のLEDイルミネーション機器が接続可能な独自規格の3PINヘッダーもマザーボード右上には実装されており、「Corsair RGB Fan」や「Corsair Lighting PRO LEDストリップ」を接続して、MSI Mystic Lightでライティング制御が行えます。
MSI Mystic Lightに対応する機器についてはMSIの公式ページで一覧が公開されています。
MSI Mystic Light対応機器:https://jp.msi.com/Landing/mystic-light-motherboard#mystic
LEDイルミネーション搭載メモリについては当サイトでもレビュー記事を公開している「HyperX Predator RGB」や「Corsair VENGEANCE RGB PRO」が「MSI Mystic Light」に対応しています。
「MSI Creator TRX40」に搭載されたLEDイルミネーションや汎用ヘッダーに接続されたイルミネーション機器は発光カラーや発光パターンを専用アプリ「Creator Center」から同期操作可能です。「Creator Center」はマザーボードのサポートページから最新版をダウンロードできます。
「Creator Center」の左側メニューに表示されている「Mystic Light」を選択するとライティング制御の設定ページが表示されます。「Creator Center」による発光パターン・発光カラーの設定を行うUIは次のようになっています。
静的発光など全体の発光カラーが一致する発光パターンについては右側のカラーパレットから発光カラーが設定でき、アドレッサブルな発光パターンでも変化スピードや明るさが設定できます。画面右のマザーボード写真がそのままライティングのプレビューになっているので設定がさらに容易になっています。
「Creator Center」ではマザーボードプレビューの左上に、Mystic Light Sync対応機器の同期設定アイコンや、マザーボードの個別部位の選択プルダウンメニューが配置されています。
「Creator Center」のライティング制御で選択可能な発光パターンは30種近くと非常に豊富です。
「MSI Creator TRX40」ではBIOSメニューからはLEDイルミネーションの詳細な設定は行えませんが、BIOSメニューのEZ Modeの右下にある「RGB Light Control」のボタンからLEDイルミネーションの点灯と消灯を切り替えることができます。
MSI Creator TRX40のOC設定について
MSI Creator TRX40を使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
AMD Ryzen Threadripper CPUについては純正のOCツール「AMD Ryzen Master」が用意されていますが、同ユーティリティの使い方については下の記事を参考にしてください。
・AMD Ryzen専用純正OCツール「AMD Ryzen Masterユーティリティ」の使い方
MSI Creator TRX40ではオーバークロック関連の設定項目はトップメニューの「OC」アイコンに各種設定がまとめられています。下にスクロールしていくと概ね「コアクロック→メモリ→電圧」の順番で並んでいます。設定値を直接入力する項目でデフォルトの「Auto」に戻す場合は「a」キーを入力すればOKです。
OCメニューのトップには「OC Explore Mode」という項目があり一般的なOC設定の可能な「Normal」に加えて、一部の高度なOC設定項目を解除できる「Expert」モードがあります。基本的なOC設定は「Normal」モードでも十分行えるので初心者は無理せず「Normal」モード推奨です。
CPUコアクロック(コア倍率)の変更について説明します。
第3世代Ryzen Threadripperは、CPU温度や電力に関して安定動作可能な相関関係を記したテーブルがCPU内部に用意されており、それに則した形で「Pure Power」や「Precision Boost(2)」といったRyzen CPUの独自機能により動作クロックや電力がリアルタイム制御されています。
例えばRyzen Threadripper 3970XではCPUクーラー冷却性能の影響で若干前後しますが、単コア負荷の場合は最大で4.5GHz、全コア負荷の場合はTDPの範囲内で変動しますが軽いワークロードであれば全コア4.2~4.3GHzで動作し、動画のエンコードなど重いワークロードでは冷却性能が十分ならベースクロックを上回る平均3.8~4.0GHz程度で動作します。
第3世代Ryzenや第3世代Ryzen/Ryzen Threadripper CPUの動作クロックに関する予備知識については下の記事で概要を解説しているので参考にしてください。
・「Precision Boost Overdrive」を徹底解説
MSI Creator TRX40のコアクロックのOC設定方法はコアクロック(MHz)の動作倍率を指定する形になっていました。「CPU Ratio」の項目を「40.25」と設定するとベースクロック(BCLK):100MHzに対して4025MHzで動作するように設定されます。動作倍率は0.25刻みで指定可能です。
「MSI Creator TRX40」では全コア共通の動作倍率設定だけでなく、CCX単位(3970Xの場合は4コア1セット、3960Xの場合は3コア1セット)で個別に動作倍率を設定するPer CCXにも対応しています。設定は少し面倒になりますが、CCX別にOC耐性には違いがあるので、共通のコア電圧に対して、OC耐性の良いCCXでは44倍に、OC耐性の悪いCCXは42倍に、のように細かく設定できます。Intel製CPUのBy Specific Core設定のようにコア電圧もCCX単位で調整できるとさらにOC設定の幅が広がるのですが、電圧については今のところ非対応です。
MSI Creator TRX40はベースクロック(BCLK)の調整にも対応しています。デフォルトでは100MHzに固定されていますが、設定値を直打ちすることで1MHz刻みで設定できます。CPUコアクロックはBCLKに対する動作倍率で設定されるのでBCLK110MHz、動作倍率40倍の場合はコアクロック4.40GHz動作となります。ただしBCLKを使用したOCはかなり上級者向けなので通常は100MHz固定が推奨です。
「MSI Creator TRX40」では単コアブーストクロックを維持したまま、電力制限を解除することで全コア最大動作倍率を引き上げることができる「Precision Boost Overdrive」もBIOSから設定が可能で、CPUコアクロック手動設定のすぐ下にある「Advanced CPU Configuration」からアクセスできます。
Precision Boost Overdriveを手動設定にすると、第3世代Ryzenにおいても前世代と同様に、電力制限上限値を指定する「PPT Limit (W)」、最大動作クロックの制限値に影響する「TDC Limit / EDC Limit (A)」を設定できます。
さらにTRX40マザーボードでは第3世代Ryzen Threadripperが新たにサポートする「Auto OverClocking Mode」に関する設定項目として、Precision Boost 2によるコアクロックの上昇幅を設定する「Max CPU Boost Clock Override」や、Precision Boost 2やXFRによる自動OC機能が効く温度閾値を引き上げる「Platform Thermal Throttle Limit」などのオプションが追加されています。
また「Advanced CPU Configuration」内にはTDP設定に近い設定項目である「Package Power Limit(PPT)」を指定する設定も用意されています。標準TDP280WのウルトラメニーコアCPUを150Wなど低い消費電力に制限して運用することができます。
続いてコア電圧の調整を行います。
AMD Ryzen Threadripper CPUのオーバークロックで変更する電圧設定についてはRyzen CPUと同様に、CPUコアクロックに影響する「CPUコア電圧」と、メモリの動作周波数に影響する「SOC電圧」の2種類のみと非常に簡単化されています。
MSI Creator TRX40ではOCの項目で下にスクロールしていくと、各種電圧設定項目が表示されますが、AMD Ryzen Threadripper CPUの手動OCに関連する電圧設定については基本的に「CPU Core電圧」「CPU SOC電圧」「DRAM電圧」の3項目のみに注目すればOKです。
CPUコアクロックのOCに関連する電圧設定としては、MSI Creator TRX40ではCPUコア電圧(BIOS上ではCPU Core voltageと表記されています)の項目を変更します。
CPUコア電圧ではマニュアルの設定値を固定する「Override Mode」、CPUに設定された比例値にオフセットかける「Offset Mode」、加えてどのような動作なのかわかりませんが「AMD Overclocking」の3種類が使用できます。
「MSI Creator TRX40」でCPUコアクロックのOCを行う場合、コア電圧設定モードとして通常はマニュアルモードを推奨します。マニュアルモードの場合は0.0125V刻みでコア電圧の設定が可能です。
CPUコア電圧モードについて簡単に説明すると、オフセットモードやアダプティブモードはCPU負荷に比例して電圧が設定されており、低負荷時は電圧が下がるので省電力に優れるのですが、OCをする場合はマザーボードによって挙動に差があり安定する設定を見極めるのが難しいので、個人的にはオフセットやアダプティブは定格向け、OCには固定値適用の固定モードを推奨しています。
仮にOCでオフセットやアダプティブを使う場合も最初はコアクロックに対して安定する電圧を見極める必要があるので、まずは固定モードを使用します。
ちなみにマザーボードにより対応しているモードは異なりますが、CPUのオーバークロックに付随するコア電圧のモードの概略図は次のようになっています。
またコアクロックを高く設定する時に追加で変更するといい電圧設定項目として「DigitALL power」がCPUコア電圧の設定欄の直上にあります。
「DigitALL power」内で特に調整した方がよい項目として「CPUロードラインキャリブレーション」があります。CPUロードラインキャリブレーションはCPU負荷時の電圧降下を補正してOCを安定させる機能です。補正の強度としてMode1~Mode8まで設定可能となっており、Mode1を補正最大として、添え字の数字が小さくなるほど補正が強くなります。補正を強くするほどOCの安定性は増しますがCPUの発熱も大きくなるので、Mode3あたりを最初に使っておいて、ストレステストのCPU温度をチェックしながら補正を調整するのがおすすめです。
メモリのオーバークロックについても簡単に紹介しておきます。
メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。
一方でXMPによるメモリOCは上の手順によるOCをメーカー側がすでに行い動作確認をしているので、メーカーが動作確認を行ったOCプロファイルを適用するだけで簡単にメモリをオーバークロックできます。
なおAMD Ryzen Threadripper環境ではメモリのオーバークロックに伴って、コアクロックOC時のコア電圧の要求値が上がるので注意してください。
メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありませんが、「MSI Creator TRX40」では正常にPOSTできないメモリOC設定でエラーが出た場合は数回再起動した後、自動で2133MHzのような緩い設定で起動してくれるのでメモリOCを安心して行えます。
メモリOCで有名なXMPプロファイルはIntelの策定した規格なのでAMD CPU&マザーボードの環境では厳密にいうと非対応ですが、MSI Creator TRX40などの一部のMSIマザーボードには、メモリに収録されたXMPプロファイルからRyzen環境でも使用可能なメモリOCプロファイルを自動生成する「A-XMP」という独自機能があります。
A-XMPを使用せず、「DRAM Frequency」の設定値が自動(Auto)になっている場合は、使用するメモリにSPD情報として収録されている動作クロック2133~2666MHzなどのメモリ周波数およびタイミングによる定格動作となります。
手動でメモリ周波数を設定する場合は「DRAM周波数(DRAM Frequency)」の項目でプルダウンメニューから最大6000MHzまでの動作クロック(倍率)設定が可能です。メモリ周波数もBCLKに対する倍率で動作周波数が決まっているので、BCLKを標準値の100MHzから120MHzに上げると、40倍設定時の動作周波数は4000MHzから4800MHzに上がります。
メモリタイミングの個別打ち込み設定も可能です。メモリタイミングを手動で設定する場合は基本的には「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS Read (tRCDrd)」、「RAS to CAS Write (tRCDwr)」、「RAS Precharge (tRP)」、「RAS Active Time (tRAS)」の主要な5タイミングと、加えて「Command Rate:1 or 2」の6つ以外はAutoのままでいいと思います。
「MSI Creator TRX40」では「Command Rate」の項目に「GearDownMode」が統合されています。メモリ周波数を3200MHz以上にOCする場合は「GearDownMode」を選択しておくのがオススメです。
メモリタイミングの下の方にある小項目「On-Die Termination Configuration」内の「ProcODT」という設定値がAutoのままではPOSTがクリアできない場合があります。AutoでPOSTをクリアできない、もしくは起動後に安定しない場合は「ProcODT」を43.6~68.6の間で固定して安定するものを探してみてください。
DDR4メモリの周波数OCを行う際は「DRAM CH AB/CD Voltage」の項目を、3000MHz以上にOCする場合は1.300~1.350V、3800MHz以上にOCする場合は1.370~1.400Vに上げる必要があります。メモリをOCする場合は最初から1.350V以上にDRAM電圧を盛っておくのがおすすめです。
加えてAMD Ryzen Threadripper CPUでメモリの動作クロックをOCする場合はDRAM電圧だけでなく「CPU SOC電圧(VDD SOC電圧)」も1.100V程度に盛ってやると動作が安定しやすいようです。
また第3世代Ryzen Threadripper CPU環境ではメモリ周波数3600MHzまではInfinity Fabric周波数が1:1で同期しますが、3733MHz以上では2:1で同期し、Infinity Fabric周波数がメモリ周波数の半分になります。
「MSI Creator TRX40」では「FCLK Frequency」をメモリ周波数の半分に指定し、かつ「UCLK DIV1 MODE」を「UCLK == MEMCLK」に設定することで3733MHzや3800MHzのメモリ周波数で、Infinity Fabric周波数の1:1同期が可能になります。
MSI Creator TRX40の動作検証・OC耐性
BIOS周りの管理人的に気になるところの紹介はこのあたりにして、MSI Creator TRX40を使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。まずはFast Bootとフルスクリーンロゴを無効にしてOSの起動時間を測定したところ、MSI Creator TRX40の起動時間は33秒ほどした。多機能なエンスー向けマザーボードの起動時間としてはPOST時間も標準的で良い結果ではないかと思います。
続いてMSI Creator TRX40を使用した場合のCPUとメモリのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
第3世代Ryzen Threadripperは、従来のRyzen CPUと同様にCPUクーラーの冷却性能に応じた自動OC機能「Precision Boost 2 & XFR 2 (Extended Frequency Range 2)」が機能しますが、第3世代Ryzen Threadripperではその際に参照されるテーブルが限界近くまでチューニングされており、ユーザーが設定を変更したとしてもコアクロックを上昇させることが可能なマージン(ヘッドルームと呼ばれている)が非常に小さくなっています。
第3世代Ryzen Threadripperについてはコアクロック回りを下手に弄るよりも、定格のまま、もしくはPrecision Boost Overdriveで電力制限を解除する程度に留め(定格と比べて消費電力の増加に対する性能の伸びは小さいが)、360サイズ簡易水冷CPUクーラーのような高性能なCPUクーラーの冷却性能にまかせて自動OC機能によるクロックアップを狙うのがオススメです。
Ryzen Threadripper 3970XのOC設定については、Precision Boost Overdriveを有効化して『PPT = 1000W、TDC = 490A、EDC = 630A』、また「CPUコア電圧:-0.100V(オフセット)」に設定しています。メモリのOC設定は「メモリ周波数:3600MHz」「メモリタイミング:14-15-15-35」「Command Rate:GearDownMode」「メモリ電圧:1.450V」としました。
上の設定を適用したところ問題なくOSを起動させることができました。
MSI Creator TRX40の環境(BIOS:110)では8GB×8枚=64GBの構成で、メモリ周波数を3600MHzにOCしてメモリタイミング:14-15-15-35-CR1に詰めることができました。
3600MHz/CL14のOCプロファイルが収録されたOCメモリ「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」が2セット用意できなかったので、同じOC設定のF4-3600C14D-16GTZNを2セット組み合わせて、8GB×8枚=64GBのシステムメモリを構築しましたが、3600MHz/CL14で問題なく動作しました。
なお今回の検証ではメモリ電圧をOCプロファイルの1.400Vから1.450Vに昇圧していますが、1.400Vに設定してRAM Testを実行すると、スポットクーラーでメモリを冷やす場合はテストをクリアできたのですが、スポットクーラーで冷やさない場合は20~30分程度経過してメモリ温度が上がるとエラーが出ました。
G.Skillから発表されている第3世代Ryzen Threadripper向けメモリキットで3600MHz/CL14のモデルが1.450Vに設定されていたのは、温度の問題で昇圧する必要があったのではないかと思います。
32コア64スレッド「AMD Ryzen Threadripper 3970X」のPB2&XFR2による全コア4.0GHzへのクロックアップに加えて、メモリ周波数を3600MHzにオーバークロックして、Cinebench R20も問題なくクリアできました。
続いてスマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE Pro」(レビュー)を使用して「MSI Creator TRX40」のVRM電源温度をチェックしていきます。
CPUへ電力供給を行うVRM電源に負荷をかけるためCPUに対してストレステストを実行しますが、その検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間8分、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)でAviutl+x264を使って4並列のエンコードを行い、30分以上に渡って負荷をかけ続けました。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
【2020年1月19日追記】-------------
検証当時に使用したCPUクーラーに動作不良があったため、以下の検証において、AMD Ryzen Threadripper 3970XのCPU温度が本来よりもかなり高く、またCPUコアクロックが低くなっています。
CPUクーラーに「ENERMAX LIQTECH TR4 II 360」&「Noctua NF-A12x25 PWM x3」を使用し、ファン回転数を1600RPMに固定した時の、正しいCPU温度やCPUコアクロックは下のグラフのようになります。
上のグラフのようになるはずのCPU温度がより高い温度になるため、CPUの熱がVRM電源に伝搬し、さらにCPU温度が高いほどCPU消費電力は上がってしまう傾向にあるので、下記の検証ではVRM電源に対して本来よりも厳しいストレステストを実行したことになります。
CPUクーラーに「ENERMAX LIQTECH TR4 II 360」&「Noctua NF-A12x25 PWM x3」を使用した結果としては正しくないのですが、それよりも性能の低いCPUクーラーを使用したと考えれば評価は可能な結果となっています。「ENERMAX LIQTECH TR4 II 360」&「Noctua NF-A12x25 PWM x3」で適切に冷やせた場合は、下記の結果よりもVRM電源温度は10度前後下がる可能性があります。
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ストレステスト中のCPU温度とCPU使用率のログは次のようになりました。
まずはCPU定格動作について、マザーボードにMSI Creator TRX40を使用してRyzen Threadripper 3970Xにストレステストを実行すると、CPU温度は平均78.0度、最大80.4度、コアクロックは平均3787MHzとなります。
次にPrecision Boost Overdrive適用時について、マザーボードにMSI Creator TRX40を使用してRyzen Threadripper 3970Xにストレステストを実行すると、CPU温度は平均87.3度、最大90.3度、コアクロックは平均3993MHzとなります。
検証機材の360サイズ簡易水冷CPUクーラー「ENERMAX LIQTECH TR4 II 360」によって十分な冷却を行った場合、Precision Boost Overdriveで電力制限の解除された、32コア64スレッドのRyzen Threadripper 3970Xは全コア平均4.0GHz程度で動作しますが、ここにメモリ周波数3600MHzのメモリオーバークロックを組み合わせてストレステストを実行すると、MSI Creator TRX40環境ではシステム消費電力(ほぼCPU消費電力)が400~500Wに達します。
AMD Ryzen Threadripper 3970Xを使用すると定格動作でもシステム消費電力は350W前後に達しますが、「MSI Creator TRX40」はパッシブ空冷のままでもVRM電源周りが70度半ばに収まるという非常に優れた結果を出しています。
続いてRyzen Threadripper 3970XをPBOによって全コア4.0GHzにクロックアップしており、システム消費電力は450~500Wに達していますが、これだけの負荷がかかっても、VRM電源温度はソフトウェアモニタリングで最大77度、サーモグラフィーで確認できる最大温度でも85度以下に収まりました。これだけ冷えていれば簡易水冷CPUクーラーでVRM電源周りがパッシブ空冷な環境であっても、マザーボードの標準装備だけで問題なく運用できます。
「MSI Creator TRX40」は360サイズ簡易水冷CPUクーラーで冷却可能なOC・電力制限解除であれば標準装備だけでもVRM電源を十分低温に収めることができますが、製品寿命を延ばすためさらに低温に保ちたい時、もしくはDIY水冷などでさらに上のOCを目指す時に、VRM電源の冷却を増強すべくスポットクーラーを使用するのであれば、フレキシブルファンアーム「サイズ 弥七」や、可変アルミニウム製ファンフレームでVRM電源を狙って設置が容易な「IN WIN MARS」がオススメです。
・マザーボードVRM電源クーラーのレビュー記事一覧へ
MSI Creator TRX40のレビューまとめ
最後に「MSI Creator TRX40」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- クリスタルがアクセントになったブラック一色のクールなデザイン
- CPU用16フェーズ&SOC用3フェーズで計19フェーズの特盛りなVRM電源回路
- 400WオーバーのCPU消費電力にも対応可能なVRM電源
- チップセットクーラー冷却ファンがセミファンレス機能に対応
- チップセットクーラー冷却ファンで全体を冷やす拡張ヒートパイプ構造
- 外部ノイズEMIから保護するための金属シールド「DDR4 Steel Armor」
- 重量級グラボにも耐えるメタルアーマー採用PCIEスロット「MSI PCI Express Steel Armor slots」
- 32コアRyzen TR 3970X 4.0GHz(PBO)、メモリクロック3600MHz OCで安定動作
- PCIE4.0対応NVMe接続のM.2スロットを3基設置
- 全てのM.2スロットにPCIE4.0対応NVMe M.2 SSDを十分に冷やせるSSDヒートシンクを装備
- 2スロット占有大型クーラー搭載のPCIE4.0対応M.2スロット4基増設拡張ボードが付属
- WiFi6、最大通信速度2400Mbps、Bluetooth5.0に対応したIntel製の無線LAN搭載
- リアI/OにはAquantia製10Gb LANを標準搭載
- スタート・リセットスイッチなど動作検証に便利なオンボードスイッチ
- ATXよりも横幅が20mm程大きいE-ATXサイズなのでPCケースとの干渉に注意
TDP280Wの第3世代Ryzen Threadripperに対応すべく開発された「MSI Creator TRX40」は、マザーボード上端を左から右まで占有する圧倒的な19フェーズVRM電源を搭載し、冷却機構にはフィンアレイ型ヒートシンクや拡張ヒートパイプ構造が採用されています。前世代では2990WXに完全対応となるMEG X399 CREATIONを主要4社の中でいち早く送り出したMSIだけあって、TRX40でも隙のない完成度です。
「MSI Creator TRX40」は拡張性においても、PCIE4.0対応M.2スロット4基増設拡張ボードM.2 XPANDER-Z AERO Gen4が付属、Aquantia製10Gb LANをリアI/Oに標準搭載など申し分なく、24コアや32コアの圧倒的マルチスレッド性能を活用したいクリエイターにとって最適な1枚だと思います。
BIOSデザインについては好みの問題かと思いますが、MSI Creator TRX40ではマウス&キーボード環境を想定したグラフィカルなUIが採用されており管理人的には少し使いづらいと感じてしまいました。個人的にMSIマザボを敬遠してしまう理由の1つではあるのですが、グラフィカルUIが好きなユーザーにとっては嬉しい仕様だとも思うので個々人の好みで評価は分かれるところです。
Ryzen Threadripper 3970Xなど第3世代Ryzen Threadripperの特性上、PBOで電力制限を解除するだけに留まって、今回はCPUコアクロックのオーバークロックは行いませんでしたが、「MSI Creator TRX40」を使用した検証機では32コア64スレッドRyzen Threadripper 3970Xを自動OC機能によって全コア4.0GHzにクロックアップし、メモリも3600MHz/CL14にオーバークロックして安定動作させることができました。
手動OCを行わずとも高性能なCPUクーラーを組み合わせた時に自動的にクロックアップする第3世代Ryzen Threadripper CPUと組み合わせるTRX40マザーボードの評価において、CPUへ電力供給を行うVRM電源回路の品質やVRM電源クーラーの冷却性能が重要なファクターになるのは言うまでありません。
「MSI Creator TRX40」ではPBOによる電力制限解除によって400W超クラスの負荷が発生するRyzen Threadripper 3970Xの全コア4GHzクロックアップに対して、19フェーズの超堅牢なVRM電源によって安定した電力供給を行うことができました。
VRM電源の冷却面においては、マザーボード上端を占有するフィンアレイ型ヒートシンクと金属製リアI/Oカバーをヒートパイプで連結させるという構造の超大型VRM電源クーラーを搭載し、加えてチップセットクーラー冷却ファンによるアクティブ冷却も寄与する拡張ヒートパイプ構造が採用されています。これらの優れたサーマルソリューションと堅牢なVRM電源回路によって、「MSI Creator TRX40」では400Wクラスの長期的な負荷に対してVRM電源温度は80度半ばに収まりました。「MSI Creator TRX40」であれば、VRM電源付近に直接風の当たらない簡易水冷CPUクーラー環境であっても第3世代Ryzen Threadripperをパッシブ空冷のまま余裕で運用できます。
メモリOCについては8GB×8=64GB構成において、メモリ周波数に同期するIF周波数も含めて考えれば第3世代Ryzen Threadripper環境では最速クラスとなるメモリ周波数3600MHz/メモリタイミング14-15-15-35-CR1が、検証機材メモリ「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」に収録されたOCプロファイルを適用することで簡単に実現できました。
またOCプロファイルを使用しない手動OCにおいても、メモリ周波数と主要タイミングのみを設定するカジュアルOC設定でメモリ周波数3600MHz/メモリタイミング16-16-16-36-CR1で安定動作させることができました。AMD公式から第3世代Ryzen Threadripper環境のメモリ速度としてはスイートスポットと評価される3600MHz/CL16に、周波数と主要タイミングのみの簡単なOC設定で詰めることができたので、「MSI Creator TRX40」は回路品質だけでなくBIOS自動設定の精度という意味においてもメモリOC耐性は余裕で及第点をクリアしていると思います。
以上、「MSI Creator TRX40」のレビューでした。
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「MSI Creator TRX40」をレビュー
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) December 18, 2019
良い
✅3970XのPBOによる4GHzクロックアップに対応可能
✅PCH冷却ファンで全体を冷やす拡張ヒートパイプ構造
✅PCIE4.0対応M.2スロット4基増設ボードが付属
✅Aquantia製10Gb LANを標準搭載
悪いor注意
⛔ATXよりも20mm大きいE-ATXサイズhttps://t.co/CRbyh05QzM
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Ryzen Threadripperは従来のCPUに比べて非常に大きいヒートスプレッダが採用されているので、大型ベースコアを採用するThreadripper専用CPUクーラーがおすすめです。
Noctua NF-A12x25 PWM 120mmファン 定格2000RPM PWM対応
Noctua NF-A12x25 ULN 120mmファン 定格1200RPM PWM対応
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Noctua NH-U14S TRX4-SP3 - 140mm [Noctua正規代理店]
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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