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水冷ヘッド天面に2.36インチ大型高輝度LCDディスプレイを搭載する第3世代KRAKENの上位Z3シリーズから、360サイズの大型ラジエーターを採用する最上位モデル「NZXT KRAKEN Z73(型番:RL-KRZ73-01)」をレビューします。
KRAKEN Z3シリーズで初採用となるLCDディスプレイの機能性を紹介し、Asetek製第7世代水冷ヘッドと360サイズ大型ラジエーターを採用する「NZXT KRAKEN Z73」の冷却性能をAMD Ryzen 9 3950XやIntel Core i9 10980XEといったスーパーメニーコアCPUで徹底検証していきます。

製品公式ページ:https://www.nzxt.com/products/kraken-z73
マニュアル:https://sta3-nzxtcorporation.netdna-ssl.com/uploads/download/attachment/849/KRAKEN-Z_Manual.pdf

NZXT KRAKEN X3シリーズには今回レビューする360サイズラジエーターの「NZXT KRAKEN X73」に加えて、280サイズラジエーターの「NZXT KRAKEN Z63」を含めた計2モデルがラインナップされています。
NZXT KRAKEN Z63
NZXT KRAKEN Z73
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NZXT KRAKEN Z73
NZXT
Amazon.co.jp で詳細情報を見る<
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レビュー目次
1.NZXT KRAKEN Z73の外観・付属品
2.NZXT KRAKEN Z73の水冷ヘッドと水冷チューブ
3.NZXT KRAKEN Z73のラジエーターと冷却ファン
4.NZXT KRAKEN Z73の検証機材・セットアップ
5.NZXT KRAKEN Z73のメモリクリアランス
5.NZXT CAMのセットアップ方法と基本的な使い方
6.NZXT KRAKEN Z73のファン・ポンプコントロールについて
7.NZXT KRAKEN Z73のLCDディスプレイについて
8.NZXT KRAKEN Z73のファンノイズと冷却性能
9.NZXT KRAKEN Z73のレビューまとめ
補足.空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて
NZXT KRAKEN Z73の梱包・付属品
まずはNZXT KRAKEN Z73の外観や付属品をチェックしていきます。
製品パッケージを見ると外装の中にCPUクーラーや付属品に合わせた形のパルプモールドが入っていました。360サイズなど大型ラジエーターを搭載する簡易水冷クーラーのパッケージはかなり大きいものが多いですが、短辺方向に開く外装パッケージなので開封スペースも最小限です。NZXT KRAKEN Z73は中身のパルプモールドにぴっちりと内容品が収められており、必要最小限のパッケージサイズに押さえられています。

欲を言えば外装からパルプモールドを引き出すのではなく、外装パッケージを開いたらそのまま内容物を取り出せる(パルプモールドの上面が出る)構造だと良かったと思います。

なお「NZXT KRAKEN Z73」の保証期間について、前世代X2シリーズの国内保証期間は1年間でしたが、Z3シリーズとX3シリーズからは国内正規代理店の株式会社タイムリーを介してNZXTグローバル同様に6年間の長期保証を受けることができます。保証シールは製品パッケージのシュリンクに貼られているので開封後に紛失しないように注意してください。

パルプモールド内右側にある小分けのビニール袋にはマウントパーツなど付属品が入っていました。マウントパーツ関連とケーブル類で別の袋に入っています。

マウントパーツを詳しく見ていくと、AMDプラットフォーム用のリテンションブラケットとIntel LGA 115X用のバックプレートがあります。Intelプラットフォーム用のリテンションブラケットは水冷ヘッドに装着されています。

LGA115X用のバックプレートはネジ穴部分がスライドするようになっており、旧CPUソケットのLGA1366などを搭載するマザーボードにも対応しています。

水冷ヘッド固定用のネジ類については、ローレットナットの他にプラットフォーム別でスタンドオフが3種類付属します。左から順に、両端の長さとネジ山が同じものがIntel LGA115X用、両端の長さが異なるものがIntel LGA2011-3/2066用、ソケットが付いているものがAMD AM4用となっています。

「NZXT KRAKEN Z73」はAM4用マウントパーツも標準で付属します。マザーボード備え付けバックプレートと組み合わせて使用するソケット付きスタンドオフが付属しており、AMD用リテンションブラケットもネジ穴2つのひょうたん形でAM4対応となっています。

「NZXT KRAKEN Z73」には付属ケーブルとして、水冷ヘッドの電源取得を含めた各種接続用オールインワンケーブルと、NZXT CAMで操作するためにPCと接続する内部USBケーブルの2種類あります。

PC接続用内部USBケーブルの水冷ヘッド側はMicro-USB端子、PCと接続する側は内部USB2.0ヘッダーとなっています。

各種接続用オールインワンケーブルは左端の独自端子が水冷ヘッドと接続する端子になっており、そこから4つに分岐して、ラジエーター冷却ファン接続用に三分岐するPWM対応4PINファン端子、電源用のSATA電源端子、マザーボードにファン回転数を返すための3PINファン端子、NZXT Hue 2互換LED機器接続端子に分かれています。

パルプモールドからCPUクーラー本体を取り出すと、水冷ヘッドとチューブはビニールに包まれ、ラジエーターは厚紙のスリーブで保護されていました。

ラジエーターの放熱フィンは出荷前のメーカーによる梱包やユーザーが取り出し時に誤って握ってしまったりして潰してしまうことが多いので厚紙スリーブで保護されている配慮はありがたいです。

NZXT KRAKEN Z73の水冷ヘッドと水冷チューブ
続いて「NZXT KRAKEN Z73」の水冷ヘッド本体をチェックしていきます。NZXT製簡易水冷CPUクーラーKRAKENの第3世代上位モデルZシリーズの「NZXT KRAKEN Z73」では、水冷ヘッド天面にフルRGBカラーに対応した直径2.36インチ、320×320ピクセルの円形液晶ディスプレイを搭載しています。

「NZXT KRAKEN Z73」の購入時点ではLCDディスプレイに保護フィルムが貼られています。

「NZXT KRAKEN Z73」の水冷ヘッドはシンプルな円柱形で余分なところのない洗練されたデザインです。最新下位モデルのX3シリーズや旧モデルのX2シリーズの水冷ヘッドはヘアラインアルミを模した表面加工のプラスチック製でしたが、「NZXT KRAKEN Z73」では同社製PCケースのようなマットで高品位なブラック塗装が施されたアルミニウム製外装が採用されていて非常に高級感があります。

上位モデルのZ3シリーズは水冷ヘッドの外装がアルミニウム製ですが、下位モデルのX3シリーズはプラスチック製となっていて、やはり見た目の重厚感はZ3シリーズの方が高いです。

「NZXT KRAKEN Z73」は水冷ヘッド内部の水冷ポンプに2020年最新のAsetek製の第7世代水冷ポンプを採用しています。Asetek製第7世代水冷ヘッドの特長として、Intel LGA115Xプラットフォームで最大の性能が発揮できるように最適化、最大ポンプ速度は2800RPMでTDPの高い最上位クラスCPUを強力に冷却可能、最小ポンプ速度800RPMによってポンプノイズを従来機種より30%低減しつつ十分な冷却性能を実現しています。

「NZXT KRAKEN Z73」の水冷ヘッドには水冷チューブの根元を3時の方向として、12時の方向に電源取得ケーブル用の専用コネクタ、11時の方向にPC接続用のMicro-USB端子が実装されています。

「NZXT KRAKEN Z73」などKRAKEN Z3シリーズの各種接続ケーブルは旧モデルとの大きな違いの1つとして、Aer RGB 2などNZXT Hue 2対応LEDアクセサリーに対応したLEDポートが1つ伸びています。1チャンネル上に、10球LEDテープを最大で4本、もしくはAer RGB 2を最大で5基まで接続可能であり、接続機器はNZXT CAMからライティング制御が可能です。

NZXT KRAKEN Z73のCPUと接触するベース部分は銅製ベースプレートが採用されています。ベースプレートはフィルムではなくプラスチックカバーで保護されていました。標準で熱伝導グリスが均等に塗られているので、こだわりがなければ初回使用時は熱伝導グリスを用意する必要はありません。

銅製ベースは鏡面磨き上げではなく、同心円状の磨き跡がありますが、指で触ってザラザラした感じはなく、綺麗に平滑化されています。

リテンションブラケットは歯車状のツメで固定されていて、半時計方向に回すことで水冷ヘッドから取り外し可能です。Intel製CPU用ブラケットがデフォルトで装着されていますが、AMD製CPU用ブラケットに換装することでAMD AM4プラットフォームでも使用できます。

リテンションブラケットの固定構造は従来機種と同じなので、「NZXT KRAKEN Z73」などKRAKEN Z3シリーズやKRAKEN X3シリーズもGPU用汎用ブラケットKRAKEN G12と組み合わせることでグラフィックボードの簡易水冷化に対応します。
・「NZXT KRAKEN G12」でRTX 2080を水冷化レビュー

「NZXT KRAKEN Z73」の水冷チューブは円柱形の水冷ヘッドの側面(標準では3時の方向)からL字エルボーを介して出る構造になっています。

L字エルボーの水冷ヘッド側根本はロータリー式になっているので両側ともにチューブ同士が干渉しない範囲で180度自由に動かすことができます。根本の距離は広めでチューブも細いので同じ方向でも180度近くまで回すことができます。

「NZXT KRAKEN Z73」水冷チューブには高耐久な耐熱性ゴムチューブを採用、上から柔軟性に優れ摩耗防止に適したナイロンスリーブが巻かれており取り回しにも優れています。

「NZXT KRAKEN Z73」の水冷チューブの長さは400mmほどです。十分な長さがあるのでミドルタワー程度のPCケースであればトップやリアだけでなく、フロントのファンマウントスペースにもラジエーターを設置できます。

水冷チューブの外径は10mm、内径は5mm程度で、ゴム製チューブにナイロンスリーブが巻かれています。細くて丈夫なチューブなので曲げやすく取り回しにも優れています。かなり強く曲げてもチューブが折れて潰れなかったので安心してPCへ組み込むことができます。

NZXT KRAKEN Z73のラジエーターと冷却ファン
続いてNZXT KRAKEN Z73のラジエーター部分をチェックしていきます。ラジエーターのデザインは一般的なもので、一部メーカーの製品に採用されているように独自デザインではなく汎用的なものが使用されていました。ラジエーターの側面に「NZXT」ロゴの刻印がある以外には特徴はありません。


「NZXT KRAKEN Z73」の放熱フィンのピッチについては水冷ユーザー視点で言うと少し密度が高いと感じました。密度が高い分、放熱フィンの放熱性能は高まりますが、静圧の低いケースファンや低回転数動作の場合、十分なパフォーマンスを発揮できない可能性もあるので注意が必要です。

管理人が本格水冷向けのラジエーターとして推奨している「Alphacool NexXxoS Full Copper ラジエーター」シリーズのフィンピッチと比較すると、「NZXT KRAKEN Z73」のフィンピッチのほうが細かいのがわかると思います。

ラジエーターの厚さは一般的な27mm厚です。25mm厚の冷却ファンと組みわせることになるので、ファン&ラジエーターマウントスペースのクリアランスは52mmほど必要になります。

「NZXT KRAKEN Z73」は360サイズラジエーターを搭載した簡易水冷CPUクーラーなので、同社製の「NZXT Aer P 120」という120mmサイズ冷却ファンが標準で3つ付属します。

「NZXT Aer P 120」は定格ファン回転数2000RPMでPWM速度調整に対応し、500~2000RPMでファン回転数が制御可能な120mm角の汎用サイズ冷却ファンです。

軸固定用の支柱はファンブレードに対して垂直になっており、ファンブレードの根元が支柱付近を通過するときに発生するノイズを抑制しています。

吸気面と排気面ともにファンフレームはすり鉢状に面取り拡張されて大風量を獲得できるように最適化されています。ネジ穴部分にはプラスチックフレームとは別でゴム製のパーツ「バイブレーションダンパー」が採用され防振性も確保されています。


航空機などにも採用されている、ファンブレード端の盛り上がった構造、「ウイングレット」構造も確認できます。「ウイングレット」構造によって空気抵抗を小さくし風切り音を抑制することで最適な静音性と風量を実現しています。


軸受にはNZXTが特許を取得した銅製の流体動圧軸受(FDB)を使用し、寿命は公称6年以上となっています。自称軸ソムリエの管理人が軸音テイスティング(耳を近づけてファンを指で弾くだけ)をしてみましたが、低速回転時の軸音が聞こえない良いファンでした。低回転軸音に煩い管理人的も納得の良い冷却ファンなので低回転運用しても軸音が気になることはないと思います。

NZXT KRAKEN Z73には、冷却ファンを固定するための長ネジが4本×3セットで計12本、ラジエーターをPCケースに固定するための短ネジが4本×3セットで計12本、ワッシャーが4個×6セットで計24個が付属します。

冷却ファンのラジエーターへの固定やラジエーターのPCケースへの固定に使用するネジの規格はUNC No.6-32でした。日本国内のユーザーとしてはホームセンターで簡単に入手可能なM3かM4ネジを採用して欲しいところです。
冷却ファンをラジエーターに固定するとNZXT KRAKEN Z73は下のようになります。

NZXT KRAKEN Z73の検証機材・セットアップ
NZXT KRAKEN Z73を検証機材のベンチ機にセットアップします。各種CPUクーラーの検証を行うベンチ機のシステム構成は次のようになっています。テストベンチ機の構成 | ||
CPU |
AMD Ryzen 9 3950X (レビュー) | Intel Core i9 7980XE(レビュー) 殻割り&クマメタル化 (レビュー) |
M/B | MSI MEG X570 ACE (レビュー) |
ASRock X299 OC Formula (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN (レビュー) 3600MHz, CL16-16-16-36-CR1 |
G.Skill Trident Z Black F4-4200C19Q2-64GTZKK (レビュー) 3600MHz, CL16-16-16-36-CR2 |
グラフィックボード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
|
システム ストレージ |
Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
|
OS | Windows10 Home 64bit | |
電源ユニット |
Corsair HX1200i (レビュー) | |
PCケース/ ベンチ板 |
STREACOM BC1 (レビュー) |
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する18年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、エンスー環境はもちろん、Intel/AMDのメインストリーム向けCPU環境であってもシステムストレージ用に一押しのSSDです。
・「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー

CPUクーラーの設置方法について、当サイトの評価基準となるチェックポイントは次の3つです。
- LGA115Xの場合、CPU固定バックプレートが単独でマザーボードに固定できるか
- マウントパーツ設置状態でCPUを交換できるか
- 空冷の場合、ネジ止めの場合はマザーボード側から固定できるか
簡易水冷or水冷ブロックの場合、ハンドスクリューなどツールレス固定ができるか
上の3項目を全て満たす例として本格水冷用のCPU水冷ブロックですが「EK-Supremacy EVO」のマウンタ構造は「バックプレートをM/Bに固定可能」「完全ツールレス」「マウンタ設置状態でCPUの交換が可能」なので本格水冷・簡易水冷クーラーの水冷ブロック固定方式としてはベストだと思っています。水冷クーラーメーカーにはどんどん真似してもらいたい理想的な構造です。

前置きはこのあたりにしてベンチ機へNZXT KRAKEN Z73をセットアップします。
まずはマザーボードを裏返してバックプレートのネジ穴をマザーボードのCPUソケット四隅の穴に挿入します。最新のIntel第9世代CPUに対応するLGA1151ソケットでバックプレートを装着する場合はネジ穴スライド部分の位置は一番内側でした。

バックプレートが脱落しないように注意してマザーボードを表に向け、スタンドオフと呼ばれる水冷ヘッドを固定するためのスペーサーを使ってマザーボードをバックプレートと挟みます。Intel LGA1151(LGA115X)プラットフォームでは一番左にある両側のネジ山が同じ形状のスタンドオフを使用します。

下のようにスタンドオフとバックプレートでマザーボードを挟みます。4か所全てでスタンドオフを固定したらマウントパーツの設置が完了です。

マウントパーツは単独でもマザーボードに固定されているので、CPUクーラーの設置が完了していない状態でもバックプレートなどが脱落することはなく、PCケースに設置した状態でもCPUクーラーの設置が容易な構造です。

AMD Ryzen CPUに対応するAM4マウントで使用する場合は、マザーボード表面に標準で備え付けられたCPUクーラー固定器具を外して、背面のバックプレートはそのまま流用し、付属のソケット付きスタンドオフを装着するだけで準備完了です。


Intelのエンスー向けCPUである第9/10世代Core-Xに対応するX299チップセット搭載LGA2066プラットフォームではCPUソケットこそ前世代のLGA2011-3とは異なるもののCPUクーラーのネジ穴レイアウトは共通なので、LGA2066とLGA2011-3の共用スタンドオフをマザーボード備え付けのネジ穴に装着すればマウントパーツの設置完了です。

水冷ヘッドをマザーボードに固定する準備はこれで完了したので熱伝導グリスをCPUのヒートスプレッダに塗布します。熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。熱伝導効率も高く、柔らかいグリスで塗布しやすいのでおすすめです。

グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。

熱伝導グリスを塗ったらバックプレートから延びるネジに水冷ヘッドの足のネジ穴が合うようにしてCPUクーラーを装着します。CPUの上に乗せたらグリスが広がるように力の入れすぎに注意して水冷ヘッドをグリグリと捻りながら押し込んでください。
NZXT KRAKEN Z73の水冷ヘッドの固定ネジはツールレスな大型ローレットナットなので固定は容易です。プラスドライバーでも締められますが、そこまで強く締める必要はないので対角順に水冷ヘッドがグラグラ動かない程度に手でネジを締めてください。

簡易水冷CPUクーラーはラジエーター設置の手間やスペース確保の問題はありますが、マザーボード上のメモリなどのコンポーネントとの干渉は大型のハイエンド空冷CPUクーラーより発生し難く、水冷ヘッドの設置自体も基本的にツールレスで容易なのが長所だと思います。

以上でNZXT KRAKEN Z73のベンチ機へのセットアップ完了です。

NZXT KRAKEN Z73のメモリクリアランス
「NZXT KRAKEN Z73」のメモリクリアランスについてチェックしていきます。「NZXT KRAKEN Z73」などKRAKEN Z3シリーズは、一般的な簡易水冷CPUクーラーと比較して水冷ヘッドの直径が大きく、かつ側面から90度エルボーを介して水冷チューブが伸びるという構造もあって(天面のLCDディスプレイの面積を大きく確保するため)、メモリスロットとの干渉が比較的起こりやすいという弱点があります。

「NZXT KRAKEN Z73」では、下の写真のように赤線のエルボー部分がメモリスロットと干渉しなくても、緑線のチューブを締めるリング部分がCPUソケットに最も近接するメモリスロットと干渉するケースが多いです。そのためNZXT公式でも「NZXT KRAKEN Z73」のメモリクリアランスとして”全高35mmまで”が仕様値になっています。

例えば下写真のように、赤線部分がメモリスロットに被さるとどうしようもないのですが(一般的なATXマザーボードならここが干渉することはめったにない、ITXマザーボードでは注意が必要)、緑線部分がメモリスロットに被さる場合はメモリの全高次第で干渉を回避できます。

ヒートシンクなしのメモリや、ヒートシンク付きでもCorsair VENGEANCE LPXやHyperX FURYのように全高が35mm未満のロープロファイルなメモリであれば、赤線部分がメモリスロットに被さらない限り、CPUクーラーと干渉せずに使用できます。
ただしチューブ締めリングとメモリの天面がぶつかってしまうためエルボーの180度自由度が犠牲になりケーブルの取り回しで不便が生じる可能性がある点には注意が必要です。

一方で、G.Skill Trident Zのようなヒートシンクに厚みがあり、全高が40mmを超えるメモリの場合は、チューブ締めリングとメモリが干渉してしまうため、CPUソケットに最も近接するメモリスロットへメモリが装着できません。

上のように水冷チューブがメモリスロットに被さってしまいメモリを装着できない場合は、水冷ヘッドを時計回りに90度回して(AMD AM4環境の場合はリテンションブラケットの向きを90度回す)、水冷チューブが6時の方向から出るように水冷ヘッドをマザーボードに固定することで、干渉を回避できます。

以上については旧モデルであるKRAKEN X2シリーズでも同様だったのですが、「NZXT KRAKEN Z73」などKRAKEN Z3シリーズの新たな要素として、水冷ヘッド天面のLCDディスプレイの表示方向を半時計周りに90度回転させることができます。

KRAKEN X2シリーズで水冷チューブのエルボーがメモリスロットと干渉するのを避けるため3時の方向から回転させると水冷ヘッド天面のNZXTロゴが正しい向きにならないといった問題がありましたが、KRAKEN Z3シリーズでは専用ソフトウェアNZXT CAMからディスプレイの表示方向を変更できるので、水冷ヘッドの固定方向に合わせたディスプレイ表示が可能です。
ただしver4.21ではチューブの出る方向が3時と6時の2種類にしか対応していませんでした。逆ATXやライザーケーブルを使用したコンパクトPCケースなどを想定すると、技術的には難しくないはずなので9時や12時の方向にも対応して欲しいところです。

水冷ヘッド天面の表示方向を調整できる「NZXT KRAKEN Z73」なら、メモリクリアランスが厳しいMini-ITXマザーボードにも水冷チューブを6時の方向にすることで綺麗に対応できます。なおかなりレアケースですが、「ASRock X570 Phantom Gaming-ITX/TB3」のようにCPUソケット下に全高30mm以上のヒートシンクがあるとチューブが干渉するので使用できません。

以下、各種プラットフォーム別で水冷チューブを標準の3時方向から出した時にメモリスロットと干渉が発生するかどうか指標となる寸法を紹介していきます。
Intel LGA115X環境について
Intel LGA1151環境ではCPUクーラーとメモリスロットの間隔の基準値として、右上CPUクーラーネジ穴の内周左端からメモリの左端までを測定して、「ASUS WS X390 PRO」では約17.1mmです。
「ASUS WS X390 PRO」においてCPUソケットに最も近いメモリスロットにG.Skill Trident Zのようなヒートシンクに厚みがあり、全高が40mmを超えるメモリを使用すると、チューブ締めリングが干渉しました。一方で全高35mm以下のロープロファイルメモリはチューブ締めリングを上に向けることで干渉を回避できます。
各自で使用するIntel LGA115X系マザーボードにおいて、上で測定したCPUクーラーとPCIEスロットの間隔が約19mm以上あれば、G.Skill Trident Zのようなヒートシンクの大きいメモリを設置してもCPUクーラーとメモリの干渉は発生しません。一方でレアケースだと思いますが、15mmを切るとロープロファイルメモリでもエルボーに接触する可能性があります。

AMD AM4環境について
AMD AM4環境ではCPUクーラーとメモリスロットの間隔の基準値として、右上CPUクーラーネジ穴(標準搭載バックプレートのネジ穴)外周の右端からPCIEスロットの右端までを測定して、「MSI MEG X570 ACE」では約23.1mmです。
「MSI MEG X570 ACE」においてCPUソケットに最も近いメモリスロットにG.Skill Trident Zのようなヒートシンクに厚みがあり、全高が40mmを超えるメモリを使用すると、チューブ締めリングが干渉しました。一方で全高35mm以下のロープロファイルメモリはチューブ締めリングを上に向けることで干渉を回避できます。
各自で使用するAMD AM4系マザーボードにおいて、上で測定したCPUクーラーとPCIEスロットの間隔が約25mm以上あれば、G.Skill Trident Zのようなヒートシンクの大きいメモリを設置してもCPUクーラーとメモリの干渉は発生しません。一方でレアケースだと思いますが、21mmを切るとロープロファイルメモリでもエルボーに接触する可能性があります。

Intel LGA2066環境について
Intel LGA2066環境ではCPUスロットの左右にメモリスロットがありますが、CPUクーラーと右側のメモリスロットの間隔の基準値として、右上CPUクーラーネジ穴(標準搭載バックプレートのネジ穴)外周の右端からPCIEスロットの右端までを測定して、「ASRock X299 Taichi CLX」では約11.1mmです。
「ASRock X299 Taichi CLX」においてCPUソケットに最も近いメモリスロットにG.Skill Trident Zのようなヒートシンクに厚みがあり、全高が40mmを超えるメモリを使用すると、チューブ締めリングが接触して若干メモリが斜めになっている感じはあるものの、メモリスロットに装着はできました。
各自で使用するIntel LGA2066系マザーボードにおいて、上で測定したCPUクーラーとPCIEスロットの間隔が約12mm以上あれば、G.Skill Trident Zのようなヒートシンクの大きいメモリを設置してもCPUクーラーとメモリの干渉は発生しません。一方でレアケースだと思いますが、8mmを切るとロープロファイルメモリでもエルボーに接触する可能性があります。

NZXT CAMのセットアップ方法と基本的な使い方
「NZXT KRAKEN Z73」はNZXT製品の統合ソフトウェア「CAM」から様々な操作を行えます。「CAM」は公式サポートページからダウンロードできます。CAMのリニューアルの関連で2019年9月現在はまだダウンロードページが日本語ローカライズされていませんが、下のリンク先から「Free Download」を選択すれば簡単にソフトウェアインストーラーのダウンロードが可能です
NZXT CAMダウンロード:https://camwebapp.com/download

上のページからダウンロードしたインストーラーを起動すれば後は自動で最新版の「NZXT CAM」をダウンロードし、PCへインストールしてくれます。

インストールが完了したら「CAM」を起動します。初回起動時はアカウントへのログインウィンドウが表示されますが、アカウントがない場合は小さく書かれているゲストアカウントでの使用を選択すればアカウント登録せずに使用することもできます。
「CAM」はゲストアカウントとしてアカウント登録なしでも使用できますが、NZXTのアカウントを作成する(メールアドレスとパスワードの登録のみ)か、Googleなどのアカウントで共有ログインすることで、「NZXT GRID+ V3」や「New Hシリーズ スマートデバイス」の目玉機能の1つである収音マイク等を使用した機械学習など一部の機能が解放されます。

2019年9月現在の「NZXT CAM」は、Kraken X2シリーズ登場時の第1世代、NZXT New HシリーズPCケース登場時の第2世代を経て、第3世代というべきリニューアルが施されており、UIがよりシンプルで使いやすく、動作も軽快になっています。基本的なデザインはパステルカラーなフラットデザインが踏襲されていますが、カラーリングがメーカーカラーのホワイト&パープルのツートンカラーになっています。

「NZXT CAM」は日本語UIに対応しています。もしも自動で日本語にならない場合は、右上の歯車アイコンから設定ページを開くと言語設定が可能です。

「CAM」のUIカラーについては標準のホワイト&パープルに加えて、設定画面からDark Modeを選択することによってブラック&パープルに切り替えることができます。

「CAM」はMSI AfterBurner&RivaTunerなどで有名なゲーム中のオーバーレイモニタリング機能にも対応しており、同じく設定ウィンドウの「FPS」タブで設定ができます。

NZXT KRAKEN Z73のファン・ポンプコントロールについて
NZXT CAMからは今回レビューしている「NZXT KRAKEN Z73」など簡易水冷CPUクーラーKRAKEN Z3シリーズ、「NZXT N7 Z390」、ファンコントローラーNZXT GRID+ V3といったシステムに接続されているNZXT CAM対応機器のファン/ポンプ速度を制御できます。NZXT KRAKEN Z73については付属の冷却ファンがNZXT Aer P 120なのでPWM速度調整によって500RPMから2000RPMで速度調整可能です。また水冷ポンプについては製品スペックでは800RPMから2800RPMで速度調整可能と表記されていますが、800RPMまでポンプ速度が下がるのは既定プリセットを適用した時だけです。手動設定の場合、ソフトウェア上からは60~100%の速度比で速度調整が可能で実際の速度は2000~2800RPMで制御できました。
「NZXT KRAKEN Z73」のNZXT CAMによるファン制御についてですが、PC起動直後はユーザーが任意に行った設定によらず、必ず後述の「静音モード」のプリセットによる動作となります。任意の設定をCPUクーラー側に記憶させておく機能はないようです。
「NZXT KRAKEN Z73」に対して任意のファン/ポンプ制御設定を反映させるためにはWindowsが起動した後に一度NZXT CAMを起動させて常駐させておく必要があります。Windows起動後に前回の設定を反映させるためにはNZXT CAMの起動(スタートアップ登録を推奨)が必要になるので注意してください。またNZXT CAMを終了すると後述の「静音モード」のプリセットによる動作に戻ります。
NZXT CAMでNZXT KRAKEN Z73のファン・ポンプを制御するには、トップメニューの「チューニング - 冷却」を選択して設定画面を開きます。

NZXT CAMのファン制御ページを開くと、トップにマスタープロファイル(各ファン端子の制御プロファイルの組み合わせ)を選択、保存するメニュー、システムに接続されたファンの速度やシステムの温度やノイズレベルを表示するタイル、個別のファン設定が順番に表示されます。

システムに接続されたファン制御を静音もしくはパフォーマンスのプリセットで統一したり、固定デューティ比を指定する既定のマスタープロファイル、各自で設定したカスタムのマスタープロファイルはプルダウンメニューから簡単に切り替えることができます。

ファン毎に任意のファン制御設定を適用した場合、「名前を付けて保存」からカスタムのマスタープロファイルを作成できます。

「NZXT KRAKEN Z73」ではファンとポンプの2種類が表示されます。NZXT KRAKEN Z73にファンが3基接続されていますが一括して制御することになります。

NZXT CAMに対応した各種ファン・ポンプ端子は、「静音」と「パフォーマンス」の2つの既定プリセット、ファン速度デューティ比を指定する「固定」、任意のファンカーブを設定する「カスタム」の4つのモードで制御できます。

ファン制御が温度に依存するファンカーブの場合、ファン制御ソースとしてCPU温度とGPU温度の2種類を選ぶことできます。簡易水冷CPUクーラーNZXT KRAKEN Z3シリーズの場合は水温も加わります。

「静音」と「パフォーマンス」の2つの既定プリセットのファンカーブ設定は次のようになっています。

「固定」では温度に依らずファンを一定速度で回すことができます。

「カスタム」ではソース温度に対して20度から95度までを5度刻みにして、16頂点のファンカーブを任意に設定できます。

「NZXT KRAKEN Z73」など簡易水冷CPUクーラーKRAKEN Z3シリーズはFan 0dB Modeというセミファンレス機能に対応しています。「カスタム」においてファン速度を0%にすると、ソース温度がファン速度0%に指定されている最大温度よりも低い時にファンを完全に停止させるセミファンレス機能的な使い方もできます。その他にも「NZXT N7 Z390」やファンコントローラーNZXT GRID+ V3等の同社一部製品がセミファンレス機能に対応しています。

ただし、2020年2月現在配布されているNZXT CAMの最新バージョン4.2.1では「NZXT KRAKEN Z73」はFan 0dB Modeに対応しておらず、次回リリースの新バージョンで対応とのこと。
「NZXT KRAKEN Z73」のポンプについてもファンと同様に、4種類の制御モードと3種類の制御ソース温度を組み合わせて速度制御ができます。

NZXT KRAKEN Z73のLCDディスプレイについて
「NZXT KRAKEN Z73」の最大の特長と言っても過言ではない、NZXT製簡易水冷CPUクーラーKRAKENの第3世代Z3シリーズで初めて採用されたLCDディスプレイの機能やその設定方法について紹介します。

「NZXT KRAKEN Z73」の水冷ヘッド天面にはフルRGBカラーに対応した直径2.36インチ、320×320ピクセルの円形液晶ディスプレイが搭載されています。ディスプレイの輝度は650 cd/m^2(nit)と非常に明るく、NZXT CAMを介したCPU温度やファン速度など各種モニタリング表示に加えて、容量20MB以下のGIFアニメーション表示にも対応します。

最初に注意事項として、「NZXT KRAKEN Z73」に対して行った任意のLCDディスプレイ設定およびライティング設定はCPUクーラー側に記憶されないので、PCをシャットダウンすると、下のような水温を表示する標準画面が表示されます。この時、90度回転も適用されません。
PCのシャットダウン前に行った設定を反映させるためにはWindowsが起動した後に一度NZXT CAMを起動させて常駐させておく必要があります。またリアルタイムのCPU温度とGPU温度を正常に表示するにはNZXT CAMを常駐させ続ける必要があります。

NZXT CAMで「NZXT KRAKEN Z73」やHUE 2対応機器のライティング制御を行うには、トップメニューの「照明」を選択して設定画面を開きます。

画面右上の「テーマパックを選択する」を選ぶと、テーマパックと呼ばれる既定プリセットによって、システムに接続されたLEDチャンネルを同期設定させることができます。

テーマパックは既定の10種類に加えて、ユーザーが任意のカスタムテーマパックを作成することができます。LEDチャンネルに対して個別に設定を行い、「テーマパックを選択する」を選ぶとテーマパックの保存に関して表示されます。ユーザー作成したテーマパックは各LEDチャンネルに対して任意に設定した内容をまとめた発光パターンのカスタムプロファイル的なものになります。

現在選択中のテーマパックを表示するサンプルイメージの下には、システムに接続されたLEDチャンネルの一覧が表示されます。「NZXT KRAKEN Z73」では水冷ヘッド天面のLCDディスプレイの表示について設定が可能です。

また今回は上のスクリーンショットに表示されていませんが、水冷ヘッドにNZXT CAM互換LED機器が接続されている場合は、下のような形で接続機器に関するLEDイルミネーション設定が合わせて表示されます(下のスクリーンショットはNZXT N7 Z390の例)

「NZXT KRAKEN Z73」の項目(Kraken Z3)をクリックすると、LCDディスプレイの表示に関する詳細設定メニューが展開されます。
LCD Displayと表示されたトップ右側にあるプルダウンメニューから、LCDディスプレイに表示する内容を設定できます。水温やCPU温度など任意1項目のリアルタイムモニタリング表示、各種リアルタイムモニタリングを順番に切り替えていく「Carousel」、CPU温度とGPU温度を同時に表示する「Dual Infographic」、任意のGifアニメーションファイルを表示する「Gif」、ディスプレイ上でイルミネーション的なアニメを表示する「Taichi」や「Spectrum Wave」といった設定が用意されています。

「Liquid Temperature」や「CPU Load」といった項目はその名前が示す値のリアルタイムモニタリングをLCDディスプレイ上に表示し続けます。Redial Fillモードでは画面中央にモニタリング値とNZXTロゴが表示され、グラデーションカラーバー上の点は現在のモニタリング値の上下に合わせてカラーバー上を移動します。

詳細設定では、数値の上下を示すグラデーションカラーバーの2色、中央のモニタリング値やNZXTロゴの色、背景色の4項目について任意にカラー設定が可能です。

表示モードをRedial Fillモードから、Full Fillモードに切り替えると現在の数値を反映したカラーバーの表示はなくなり、背景全体が指定した2色で左右にグラデーション表示されます。

「Carousel」は設定画面を見ての通り、上で紹介した各種モニタリング表示を順番に切り替えていく機能です。「+」と書かれたアイコンを選択すると、表示内容を追加でき、最大で5個まで増やせます。

右側のDurationと書かれたプルダウンメニューから切り替えの時間間隔を5秒、10秒……、と任意に設定できます。

下に並んだアイコンを選択すると、選択したアイコンの表示内容を設定できます。

「Dual Infographic」ではCPU温度とGPU温度の2つについてリアルタイムモニタリングが同時に表示されます。それぞれの隣にあるカラーバーは現在のモニタリング値の上下に合わせて長さが伸び縮みします。

詳細設定では、数値の上下を示すグラデーションカラーバーの2色、中央のモニタリング値やNZXTロゴの色、背景色の4項目について任意にカラー設定が可能です。

「Gif」はその名の通り各自が用意したGifアニメーションファイルを表示する機能です。容量20MB未満のGifアニメーションファイルをLCDディスプレイ上に表示できます。

KRAKEN Z3シリーズのディスプレイ解像度は320×320ピクセルですが、Gifアニメーションファイルの解像度については320×320ピクセル以上にも対応しており、ディスプレイサイズに合わせてスケーリングされます。また320×320ピクセルより大きいGifアニメーションファイルの場合は一部をクリッピングして、クリッピング部分をディスプレイに合わせてスケーリングすることも可能です。

「Taichi」は中央NZXTロゴと回転する2色グラデーションカラーリングというアニメを表示するイルミネーション的な機能です。数値の上下を示すグラデーションカラーバーの2色、中央のモニタリング値やNZXTロゴの色、背景色の4項目について任意にカラー設定が可能です。

「Spectrum Wave」は右から左へと七色に変化していくカラーリングのというアニメを表示するイルミネーション的な機能です。

NZXT KRAKEN Z73のファンノイズと冷却性能
本題となるNZXT KRAKEN Z73の冷却性能と静音性についてチェックしていきます。検証システムをベンチ板に置いた状態で測定を行っているためCPUクーラーが水冷・空冷によらず基本的にCPUクーラーの理想的な性能をチェックすることになります。

まずはサウンドレベルメーター(騒音計)を使用してファンノイズをCPUクーラー別で比較しました。騒音計の収音部分とノイズ発生部分との距離が15cm程度になる位置で測定を行っています。簡易水冷の場合はラジエーターとポンプ両方からの距離が15cm程度になるように設置しています。

電源OFF時の騒音値は33~35dBです。目安として40dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになり、45dB前後で煩く感じます。50dBを超えてくるとヘッドホンをしていても煩く感じます。同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質にもよるので注意してください。
NZXT KRAKEN Z73のラジエーター冷却ファンのファンノイズを測定したところ次のようになりました。NZXT KRAKEN Z73はラジエーター冷却ファンを1000~1200RPM前後に収まるようにすると静音動作で運用できると思います。

上のグラフでは冷却ファンを付属品から「Noctua NF-A12x25 PWM」に換装したケースについてもファンノイズとファン回転数の関係を掲載していますが、「Noctua NF-A12x25 PWM」に交換すれば標準ファンと同じノイズレベルにおいて300PRM~500RPM程度高いファン回転数で運用でき、より高い冷却性能と静音性を実現できます。「Noctua NF-A12x25 PWM」は1台あたり3500円ほどと高価ですが、CPUクーラーのパフォーマンスを追及するのであれば、一押しの冷却ファンです。

続いて「NZXT KRAKEN Z73」の冷却性能をチェックしていきます。
CPUクーラーの冷却性能を検証するためのストレステストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、Aviutl&x264を使って動画のエンコードを行います。動画エンコードの同時実行数については4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列実行、16コア以上は3並列実行としています。テスト中のファン回転数については一定値に固定します。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。

まずは2019年末に発売されたばかりのAMD第3世代Ryzen最上位モデル、16コア32スレッドCPUの「AMD Ryzen 9 3950X」を使用して、AMD第3世代Ryzen環境における「NZXT KRAKEN Z73」の冷却性能を検証していきます。
Ryzen 9 3950XのOC設定については、Precision Boost Overdriveを有効化して『PPT = 300W、TDC = 300A、EDC = 300A』、「コア電圧:-100mV(オフセット)」に設定しています。メモリのOC設定は「メモリ周波数:3600MHz」「メモリタイミング:16-16-16-36」「Command Rate:GearDownMode」「メモリ電圧:1.350V」としました。


この設定でRyzen 9 3950XをOCするとCinebench R20のスコアは9500ほどとなります。またこの動作設定において上で紹介したストレステストを実行すると、システムの消費電力(マイナス50~60WでRyzen 9 3950Xの消費電力)は250W前後に達します。


「NZXT KRAKEN Z73」のファン回転数を1000RPMに固定してストレステストを実行したところ、「NZXT KRAKEN Z73」はRyzen 9 3950XをPBOによって全コア4.0~4.1GHzにクロックアップしてもCPU温度を最大72.5度、平均69.3度に収めることができました。「NZXT KRAKEN Z73」の付属ファンの定格回転数は2000RPMなのでまだまだの余力を残しています。

続いてIntelのエンスー向けCPUであるCore-Xの最上位モデル、18コア36スレッドCPUの「Intel Core i9 7980XE」を使用して「NZXT KRAKEN Z73」の冷却性能を検証していきます。

検証機材のCore i9 7980XEはCPUダイとヒートスプレッダ間のTIMを液体金属グリスに塗り替えているので通常よりも低い温度で動作していますが、TIMがシリコングリスからSTIMに変更された第9世代Core-XのCore i9 9980XEとの温度差は4~5度程度なので、Core i9 9980XEの運用に関する指標としては問題なく使えるデータになっています。
・Intel Core i9 9980XEを4.4GHz OCで7980XEと比較レビュー
・「ROCKIT COOL Copper IHS」の冷却性能をCore i9 7980XEで試す

Core i9 7980XEの動作設定は「全コア4.2GHz」「コア電圧1.050V」、メモリも「メモリ周波数3600MHz」「メモリタイミング16-16-16-36-CR2」「メモリ電圧:1.350V」にOCしています。




この設定でCore i9 7980XEをOCするとCinebench R20のスコアは9700ほどとなります。またこの動作設定において上で紹介したストレステストを実行すると、システムの消費電力(マイナス50~60WでCore i9 7980XEの消費電力)は380~400W前後に達します。


「NZXT KRAKEN Z73」のファン回転数を1400RPMに固定してストレステストを実行したところ、「NZXT KRAKEN Z73」はCore i9 7980XEを全コア4.2GHzにOCしてもCPU温度を最大73度、平均69.4度に収めることができました。「NZXT KRAKEN Z73」の付属ファンの定格回転数は2000RPMなのでまだまだの余力を残しています。

なおIntel Core-Xのようなエンスー向けCPUはもとより、Intel Core i9 9900KやAMD Ryzen 9 3950XなどTDP100Wクラスのメインストリーム向け最上位CPUの冷却に「NZXT KRAKEN Z73」を使用する場合、CPU自体の冷却は上述の通り十分なのですが、これらのCPUはVRM電源への負荷も大きく、マザーボードによってはVRM電源周りが高温になることが予想されます。
マザーボードスペーサーのネジ穴を利用して固定できるフレキシブルファンアーム「サイズ 弥七」や、可変アルミニウム製ファンフレームでVRM電源を狙って設置が容易な「IN WIN MARS」をスポットクーラーに使用することによって、VRM電源が弱めな比較的安価なマザーボードでもCore i9 9900KやRyzen 9 3900Xのような最上位CPUを運用できるようになるので、「NZXT KRAKEN Z73」と一緒に使用するのがおすすめです。

・マザーボードVRM電源クーラーのレビュー記事一覧へ

NZXT KRAKEN Z73のレビューまとめ
最後にLCDディスプレイ搭載簡易水冷CPUクーラー「NZXT KRAKEN Z73(型番:RL-KRZ73-01)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 各種モニタリング表示やGifアニメーションに対応したLCDディスプレイ
- 水冷ヘッドに高級かつ重厚感のあるアルミニウム製外装を採用
- 表示ローテーション機能により、水冷ヘッドの向きを自由に選択できる
- 水冷チューブはスリーブ付きで丈夫。曲げやすく潰れにくい。細いので取り回しに優れている
- PBOによって4.0~4.1GHzにクロックアップしたRyzen 9 3950Xを運用可能な冷却性能
- 全コア4.2GHzに手動OCしたCore i9 7980XEを運用可能な冷却性能
- バックプレートを単独でマザーボードに固定可能
- 水冷ブロックの固定はローレットナットでツールレス固定可能
- 専用アプリ「NZXT CAM」から水温のモニタリングやファン・ポンプ制御が可能
- 水温ソースのファン・ポンプ制御に対応
- NZXT Hue 2互換LED機器を1チャンネル接続可能
- 国内正規代理店タイムリーを介した6年間の長期保証
- ファン・ポンプ制御やLCDディスプレイ設定を反映させるにはNZXT CAMの常駐が必要
- ファン・ラジエーターの固定ネジが国内で入手の容易なM3やM4ではなくUNC No.6-32
冷却性能の検証結果からもわかるように「NZXT KRAKEN Z73」は、OCによって最大200Wクラスの電力負荷になるメインストリーム向け最上位CPUのCore i9 9900KやRyzen 9 3950Xに余裕で対応可能、さらにはIntelのエンスー向けCPUで18コア36スレッドの最上位モデル「Intel Core i9 7980XE」を全コア4.2GHzにOCした400Wクラスの発熱も冷やしきる優れた冷却性能を実現しています。
ベースプレートサイズの関係で当サイトとしては専用モデルを推奨していますが、「NZXT KRAKEN Z73」はCPU付属互換ブラケットによってRyzen Threadripper環境にも対応でき、360サイズ大型ラジエーターを採用する同製品ならTDP280Wの32コアや64コアCPUにも対応できると思います。
「NZXT KRAKEN Z73」の最大の特長は、水冷ヘッド天面2.36インチ大型高輝度LCDディスプレイを搭載し、第3世代KRAKENの上位Zシリーズでは水冷ヘッドの外装にアルミニウム製の金属外装が採用され、高い機能性と重厚な高級感を実現しているところです。
インフィニティミラーLEDリングを搭載する前X2シリーズや下位X3シリーズの幻想的な美しさを実現しているところも捨てがたいですが、1つの挑戦としてデジタルな機能性に舵を切ってみたところは評価しても良いと思います。モニタリング表示や既定アニメーション以外に、各自で用意したGifアニメーションにも対応しており、個性溢れる自作PCを作る時に幅を広げるアイテムとしての魅力もあります。
「NZXT KRAKEN Z73」は水冷ヘッド内部に水温センサーを内蔵しており、水温ソースのファン・ポンプコントロールが可能なところも競合する簡易水冷製品と比較した時の「NZXT KRAKEN Z73」のアピールポイントです。CPU温度ソースにするとファンが乱高下する可能性がありますが、水温はゆっくりと変動するので、耳障りなノイズ変化が起こらないというメリットがあります。
分かりやすいUIの専用アプリNZXT CAMによって各種制御が可能なところは評価に値するのですが、ファン・ポンプ制御やLCDディスプレイ設定を適用するためには同アプリの常駐が必須になるところは玉に瑕だと感じました。水冷ヘッド側に設定を記憶させておく機能を次世代では期待したいところです。
水冷ヘッドの固定方式として、マウントパーツが個別にマザーボードに固定可能、マウントパーツを設置したままでもCPUを交換可能なところは管理人的にポイントが高いです。前者は特にマザーボードをPCケースに組み込み後のCPUクーラー設置で、バックプレートを裏から支える必要がないので全ての簡易水冷CPUクーラーで採用して欲しい構造です。
以上、「NZXT KRAKEN Z73」のレビューでした。

前世代X2シリーズと同じく水冷ヘッド天面にインフィニティミラーLEDリングを搭載し、大型化やローテーション機能で改良されたX3シリーズの280サイズモデル「NZXT KRAKEN X63」についても詳細レビューを公開中です。
・最も美しい簡易水冷がさらに美しく「NZXT KRAKEN X63」をレビュー

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「NZXT KRAKEN Z73」をレビュー
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) February 6, 2020
良い
✅モニタリングやGifアニメに対応したLCDディスプレイ
✅水冷ヘッドにアルミニウム製外装を採用
✅Asetek製 第7世代ポンプを採用
✅NZXT CAMで水温ソースのファン・ポンプ制御
悪いor注意
⛔ユーザー設定の反映にはNZXT CAMの常駐が必要https://t.co/Kb60mAnlqz
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補足:空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて
「空冷クーラー」と「水冷クーラー」の2種類ついて同じところと違うところ、また原理的に考えた冷却性能の比較を簡単に補足しておきます。関連記事
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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