EKWB EK-AIO 360 D-RGB


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DIY水冷メーカーEKWBからリリースされた水冷ヘッドと冷却ファンにアドレッサブルLEDイルミネーションを搭載する360サイズ簡易水冷CPUクーラー「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」をレビューします。Intel Core i9 10900KやAMD Ryzen 9 3950Xの2020年最新メインストリーム向け最上位CPUのオーバークロックを御しきれるのか、冷却性能を徹底検証していきます。
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製品公式ページ:https://www.ekwb.com/shop/ek-aio-360-d-rgb





レビュー目次


1.EKWB EK-AIO 360 D-RGBの外観・付属品
2.EKWB EK-AIO 360 D-RGBの水冷ヘッドと水冷チューブ
3.EKWB EK-AIO 360 D-RGBのラジエーターと冷却ファン

  ・EKWB EK-AIO 360 D-RGBのLEDイルミネーション

4.EKWB EK-AIO 360 D-RGBの検証機材・セットアップ
5.EKWB EK-AIO 360 D-RGBのメモリクリアランス
6.EKWB EK-AIO 360 D-RGBのファンノイズと冷却性能
7.EKWB EK-AIO 360 D-RGBのレビューまとめ


補足.空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて


【機材協力:EKWB】



EKWB EK-AIO 360 D-RGBの梱包・付属品

まずは「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」の外観や付属品をチェックしていきます。
「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」の製品パッケージはスリーブ箱から中箱を取り出すタイプではなく、N式箱で蓋を開くタイプになっていました。簡易水冷クーラーのパッケージは大きいのでスリーブ箱の場合中身の取り出しが面倒だったりするためこの構造は好印象です。ただ開封時にスペースを取るので長辺ではなく短辺方向(写真で言うと横ではなく奥向き)に開く構造にして欲しかったです。
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製品パッケージを開くと内容品に合わせた形のパルプモールドをスペーサーとして、CPUクーラー本体や各種付属品が収められていました。
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パルプモールド内左側にある小分けのビニール袋にはマウントパーツなど付属品が入っています。
マウントパーツ関連を詳しく見ると、Intel用リテンションブラケット、AMD用リテンションブラケット、リテンションブラケット固定ネジ×4(+1スペア)、Intel LGA1200用バックプレート、Intel LGA1200/AMD AM4用スタンドオフスクリュー×4、Intel LGA2066用スタンドオフスクリュー×4、水冷ヘッド固定用ローレットナット&スプリング×4となっています。
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ラジエーター/ファン固定ネジ類については、ラジエーターにファンを固定するための30mm長ネジが4本×3セットで径12本、PCケースも含めて固定する34mm長ネジが4本×3セットで径12本、ラジエーターをPCケースに固定するための短ネジが4本×3セットで計12本ずつ付属します。
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「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」では水冷ヘッドのベースプレートに予め熱伝導グリスが均等に塗布されていますが、ユーザーが塗る熱伝導グリスも別途付属しています。
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360サイズラジエーター搭載モデルの「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」は120mmファン冷却ファンを3基使用するのでPWM対応4PINファン端子用の3分岐ケーブルが付属します。
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CPUクーラー本体を取り出すと、水冷ヘッドからラジエーターまで全体がビニールに包まれていました。
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今回の個体ではラジエーター放熱フィンに大きな凹みがありませんでしたが、ラジエーターの放熱フィンの一部に凹みがあると冷却性能に問題が出るほどではないものの几帳面な人にとっては気になる部分なので、他社製品の梱包ですが、こんな感じに厚紙などでラジエーターは個別に保護しておいて欲しいところ。



EKWB EK-AIO 360 D-RGBの水冷ヘッドと水冷チューブ

続いて「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」の水冷ヘッド本体をチェックしていきます。
「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」の水冷ヘッドは正方形に近い、小さく角の取れた八角形となっており、天面の大部分は白色半透明なプラスチック製となっています。チューブの根本がある右から中央にかけて黒色プレートがあり、また左下にはEKWBの銀色ロゴシールがありますが総じてシンプルなデザインです。
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「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」の水冷ヘッドは88mm×70mm×53mmと比較的にサイズが大きいので、側面から伸びるチューブのエルボーがメモリスロットと干渉しないかどうかは気になるところ。
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「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」の水冷ヘッドにはアドレッサブルLEDイルミネーション搭載されています。水冷ヘッドのLEDイルミネーションは4PINファン端子から電力供給を受けますが、LEDヘッダーもコントローラーに接続しないと点灯しないという若干複雑な構造になっているので注意してください。
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ポンプについてはポンプ速度が450~2600RPMとだけ公表されており、定格2600RPMというのは現在市販されている簡易水冷CPUクーラーと同程度の速度です。
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「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」の水冷ヘッドのロゴマークの正しい向きから9時の方向に水冷ポンプに電力供給を行うための4PINファン端子ケーブル(水冷ヘッドのLEDイルミネーションにも電力供給している)、およびARGB対応VD-G型汎用3PIN LEDケーブルが伸びています。
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「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」のCPUと接触するベース部分は銅製ベースプレートが採用されています。ベースプレートはフィルムではなくプラスチックカバーで保護されていました。標準で熱伝導グリスが均等に塗られているので、こだわりがなければ初回使用時は熱伝導グリスを用意する必要はありません。
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銅製ベースプレートは鏡面磨き上げではありませんが、滑らかな表面に研磨されています。
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「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」のリテンションブラケットはIntel LGA1200やLGA2066に対応するIntel用、AMD AM4に対応するAMD用の2種類が付属し、いずれも水冷ヘッド底面にネジで固定する構造になっています。
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「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」の水冷チューブは円柱形の水冷ヘッドの側面からL字エルボーを介して出る構造になっています。
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L字エルボーの水冷ヘッド側根本はロータリー式になっているので両側ともにチューブ同士が干渉しない範囲で動かすことができますが、2本のチューブの根本が縦に並んでいるためエルボーを下に向けることはできません。
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「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」水冷チューブには超低揮発なゴム製チューブを採用、上から柔軟性に優れ摩耗防止に適したナイロンスリーブが巻かれており取り回しにも優れています。
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「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」の水冷チューブの長さは400mmほどです。十分な長さがあるのでミドルタワー程度のPCケースであればトップやリアだけでなく、フロントのファンマウントスペースにもラジエーターを設置できます。
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水冷チューブの外径はナイロンスリーブを含めても11mm程度と非常に細いですが、十分に丈夫なので曲げやすく取り回しにも優れています。かなり強く曲げてもチューブが折れて潰れなかったので安心してPCへ組み込むことができます。
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EKWB EK-AIO 360 D-RGBのラジエーターと冷却ファン

続いてEKWB EK-AIO 360 D-RGBのラジエーター部分をチェックしていきます。
「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」のラジエーターのデザインは、一部メーカーの製品に採用されているように独自デザインではなく汎用的なものが使用されていました。
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「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」の放熱フィンのピッチについては水冷ユーザー視点で言うとかなり密度が高いと感じました。密度が高い分、放熱フィンの放熱性能は高まりますが、静圧の低いケースファンや低回転数動作の場合、十分なパフォーマンスを発揮できない可能性もあるので注意が必要です。
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管理人が本格水冷向けのラジエーターとして推奨している「Alphacool NexXxoS Full Copper ラジエーター」シリーズのフィンピッチと比較すると、「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」のフィンピッチのほうが非常に細かいのがわかると思います。
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ラジエーターの厚さは一般的な27mm厚です。25mm厚の冷却ファンと組みわせることになるので、ファン&ラジエーターマウントスペースのクリアランスは55mmほど必要になります。
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「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」には、低ノイズで水冷ラジエーターに対して十分な風量・静圧を発揮できるよう最適化された「EK-Vardar S 120ER D-RGB」という120mm角冷却ファンが3つ付属します。ファン単品では市販はされていないので、ファンが故障した場合は別の製品を用意する必要があります。
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「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」の付属ファンは550~2200RPMで速度調整可能なPWM対応4PIN型120mmファンです。半透明ブレードは軸受け部分に内蔵されたアドレッサブルLEDイルミネーションの光を拡散し、ブレード全体に鮮やかな色が行き渡ります。
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軸受けを固定する支柱はファンブレードに対して垂直になっており、ファンブレードが支柱付近を通過するときに発生するノイズを抑制しています。
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「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」の付属ファンからはPWM対応4PINファンケーブルに加えて、ファンに内蔵されたLEDイルミネーションに給電およびライティング制御するためのARGB対応VD-G型汎用3PIN LEDケーブルが伸びています。LEDケーブルの先端にはオス端子からメス端子ケーブルがY字に分岐しています。
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EKWB EK-AIO 360 D-RGBには、ラジエーターにファンを固定するための30mm長ネジが4本×3セットで径12本、PCケースも含めて固定する34mm長ネジが4本×3セットで径12本、ラジエーターをPCケースに固定するための短ネジが4本×3セットで計12本ずつ付属します。
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冷却ファンのラジエーターへの固定やラジエーターのPCケースへの固定に使用するネジの規格はUNC No.6-32でした。日本国内のユーザーとしてはホームセンターで簡単に入手可能なM3かM4ネジを採用して欲しいところです。


EKWB EK-AIO 360 D-RGBのLEDイルミネーション

「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」の水冷ヘッドと冷却ファンに搭載されたLEDイルミネーションについて紹介していきます。
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「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」の水冷ヘッドと冷却ファンに搭載されたLEDイルミネーションは、ARGB対応VD-G型汎用3PIN LEDヘッダーがあるLEDコントローラーによるライティング制御に対応しています。
マザーボードについては同社のMSI Mystic Lightを始めとして、ASUS AURA Sync、ASRock Polychlome RGB Sync、GIGABYTE RGB Fusionなど国内主要4社マザーボードのライティング制御機能による操作が可能です。
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また「Fractal Design Adjust R1」のような市販のVD-G型3PIN LEDヘッダーのARGB対応LEDコントローラーでもライティング制御が可能です。今回は他社製の別売りパーツですが、Fractal Design Adjust R1を使用して「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」のLEDイルミネーションについて紹介していきます。
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「Fractal Design Adjust R1」はLEDコントローラー本体からSATA電源ケーブルが伸びており、接続されたLED機器にSATA電源で電力供給を行います。
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「Fractal Design Adjust R1」のLEDコントローラー本体にはマグネットが内蔵されており、スチール製PCケースの裏配線スペースのマザーボードトレイ等に貼り付けておくことが可能です。
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「Fractal Design Adjust R1」にはARGB対応VD-G型汎用3PIN LEDコネクタを2分岐するケーブルが付属します。「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」の場合は水冷ヘッドから伸びるケーブル1本に集約されているので不要ですが、分岐ケーブルを使用することでその他のLED機器を並列接続できます。
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「Fractal Design Adjust R1」には、波形が描かれたModeボタン、バケツとペンキの水滴が描かれたColorボタン、電球が描かれたBrightnessボタンの3つボタンがあります。
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Modeボタンで発光パターンを切り替え、発光カラーの変更や輝度調整に対応している発光パターンの時はColorボタンとBrightnessボタンでそれぞれ調整できるという具合です。「Fractal Design Adjust R1」で選択可能な発光パターンや発光カラーについては製品パッケージ裏側に記載されています。
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「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」のLEDイルミネーション制御にFractal Design Adjust R1を使用する場合、冷却ファンと水冷ヘッドから伸びるLEDケーブルをそれぞれの分岐で数珠繋ぎしていき、最後にコントローラーを接続します。
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Fractal Design Adjust R1を使用すると「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」の水冷ヘッドと冷却ファンに搭載されたアドレッサブルLEDイルミネーションは下の動画のように同期して制御できます。




EKWB EK-AIO 360 D-RGBの検証機材・セットアップ

EKWB EK-AIO 360 D-RGBを検証機材のベンチ機にセットアップします。各種CPUクーラーの検証を行うベンチ機のシステム構成は次のようになっています。
テストベンチ機の構成
CPU
Intel Core i9 10900K(レビュー AMD Ryzen 9 3950X (レビュー
M/B ASUS ROG MAXIMUS
XII EXTREME  (レビュー
MSI MEG X570 ACE
レビュー
メインメモリ G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK
レビュー
3600MHz, CL16-16-16-36-CR1
G.Skill Trident Z Neo
F4-3600C14Q-32GTZN
レビュー
3600MHz, CL16-16-16-36-CR1
グラフィックボード
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC
ファンレス (レビュー
システム
ストレージ
Samsung 860 PRO 256GB
レビュー
OS Windows10 Home 64bit
電源ユニット
Corsair HX1200i (レビュー
PCケース/
ベンチ板
STREACOM BC1 (レビュー

ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する18年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、エンスー環境はもちろん、Intel/AMDのメインストリーム向けCPU環境であってもシステムストレージ用に一押しのSSDです。
「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
Samsung SSD 860 PRO 256GB


CPUクーラーの設置方法について、当サイトの評価基準となるチェックポイントは次の3つです。
  • LGA115Xの場合、CPU固定バックプレートが単独でマザーボードに固定できるか
  • マウントパーツ設置状態でCPUを交換できるか
  • 空冷の場合、ネジ止めの場合はマザーボード側から固定できるか
    簡易水冷or水冷ブロックの場合、ハンドスクリューなどツールレス固定ができるか

上の3項目を全て満たす例として本格水冷用のCPU水冷ブロックですが「EK-Supremacy EVO」のマウンタ構造は「バックプレートをM/Bに固定可能」「完全ツールレス」「マウンタ設置状態でCPUの交換が可能」なので本格水冷・簡易水冷クーラーの水冷ブロック固定方式としてはベストだと思っています。水冷クーラーメーカーにはどんどん真似してもらいたい理想的な構造です。

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前置きはこのあたりにしてベンチ機へEKWB EK-AIO 360 D-RGBをセットアップします。


「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」のCPUクーラーマウントにおいてIntel LGA1200(LAG115X)環境では、Intel LGA115X/1200用バックプレート、Intel LGA1200/AMD AM4用スタンドオフスクリュー*4本を使用して最初に下準備を行います。
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スタンドオフスクリューは2種類ありますが、途中の太い部分が長い方のスタンドオフスクリューがIntel LGA1200/AMD AM4用です。短い方はIntel LGA2066用となります。
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マザーボードを裏返してCPUソケット周辺のネジ穴に合わせてバックプレートを装着し、バックプレートを落とさないように注意して表に戻したら、スタンドオフスクリューでバックプレートを固定します。
マウントパーツは単独でもマザーボードに固定されているので、CPUクーラーの設置が完了していない状態でもバックプレートなどが脱落することはなく、PCケースに設置した状態でもCPUクーラーの設置が容易になっています。
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AMD Ryzen CPUに対応するAM4マウントで使用する場合は、マザーボード表面に標準で備え付けられたCPUクーラー固定器具を外して、背面のバックプレートはそのまま流用し、上と同様にスタンドオフスクリューを装着します。
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水冷ヘッドをマザーボードに固定する準備はこれで完了したので熱伝導グリスをCPUのヒートスプレッダに塗布します。熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。熱伝導効率も高く、柔らかいグリスで塗布しやすいのでおすすめです。
Thermal Grizzly Kryonaut


グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
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熱伝導グリスを塗ったらバックプレートから延びるネジに水冷ヘッドの足のネジ穴が合うようにしてCPUクーラーを装着します。CPUの上に乗せたらグリスが広がるように力の入れすぎに注意して水冷ヘッドをグリグリと捻りながら押し込んでください。
EKWB EK-AIO 360 D-RGBの水冷ヘッドの固定ネジはツールレスな大型ローレットナットなので固定は容易です。
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簡易水冷CPUクーラーはラジエーター設置の手間やスペース確保の問題はありますが、マザーボード上のメモリなどのコンポーネントとの干渉は大型のハイエンド空冷CPUクーラーより発生し難く、水冷ヘッドの設置自体も基本的にツールレスで容易なのが長所だと思います。
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EKWB EK-AIO 360 D-RGBのメモリクリアランス

「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」のメモリクリアランスについてチェックしていきます。
「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」などEK-AIOシリーズは、一般的な簡易水冷CPUクーラーと比較して水冷ヘッドの直径が大きく、かつ側面から90度エルボーを介して水冷チューブが伸びるという構造もあって、メモリスロットとの干渉が比較的起こりやすいという弱点があります。
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以下、各種プラットフォーム別で水冷チューブを標準の3時方向から出した時にメモリスロットと干渉が発生するかどうか指標となる寸法を紹介していきます。

Intel LGA1200/LGA115X環境について

Intel LGA1200/LGA1151環境ではCPUクーラーとメモリスロットの間隔の基準値として、右上CPUクーラーネジ穴の内周左端からメモリの左端までを測定して、「ASUS WS X390 PRO」では約17.1mmです。
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「ASUS WS X390 PRO」においてCPUソケットに最も近いメモリスロットにG.Skill Trident Zのようなヒートシンクに厚みがあるメモリを使用すると、チューブ締めリングが干渉しました。一方でヒートシンクが比較的薄めなCorsair VENGEANCE LPXは問題なく設置できました。
各自で使用するIntel LGA115X系マザーボードにおいて、上で測定したCPUクーラーとPCIEスロットの間隔が約19mm以上あれば、G.Skill Trident Zのようなヒートシンクの大きいメモリを設置してもCPUクーラーとメモリの干渉は発生しません。
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AMD AM4環境について

AMD AM4環境ではCPUクーラーとメモリスロットの間隔の基準値として、右上CPUクーラーネジ穴(標準搭載バックプレートのネジ穴)外周の右端からPCIEスロットの右端までを測定して、「MSI MEG X570 ACE」では約23.1mmです。
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「MSI MEG X570 ACE」においてCPUソケットに最も近いメモリスロットにG.Skill Trident Zのようなヒートシンクに厚みがあるメモリを使用してもギリギリで干渉しませんでした。
各自で使用するAMD AM4系マザーボードにおいて、上で測定したCPUクーラーとPCIEスロットの間隔が約24mm以上あれば、G.Skill Trident Zのようなヒートシンクの大きいメモリを設置してもCPUクーラーとメモリの干渉は発生しません。
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Intel LGA2066環境について

Intel LGA2066環境ではCPUスロットの左右にメモリスロットがありますが、CPUクーラーと右側のメモリスロットの間隔の基準値として、右上CPUクーラーネジ穴(標準搭載バックプレートのネジ穴)外周の右端からPCIEスロットの右端までを測定して、「ASRock X299 Taichi CLX」では約11.1mmです。
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「ASRock X299 Taichi CLX」においてCPUソケットに最も近いメモリスロットにG.Skill Trident Zのようなヒートシンクに厚みがあるメモリを使用してもギリギリで干渉しませんでした。
各自で使用するIntel LGA2066系マザーボードにおいて、上で測定したCPUクーラーとPCIEスロットの間隔が約12mm以上あれば、G.Skill Trident Zのようなヒートシンクの大きいメモリを設置してもCPUクーラーとメモリの干渉は発生しません。
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EKWB EK-AIO 360 D-RGBのファンノイズと冷却性能

本題となるEKWB EK-AIO 360 D-RGBの冷却性能と静音性についてチェックしていきます。
検証システムをベンチ板に置いた状態で測定を行っているためCPUクーラーが水冷・空冷によらず基本的にCPUクーラーの理想的な性能をチェックすることになります。
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まずはサウンドレベルメーター(騒音計)を使用してファンノイズをCPUクーラー別で比較しました。騒音計の収音部分とノイズ発生部分との距離が15cm程度になる位置で測定を行っています。簡易水冷の場合はラジエーターとポンプ両方からの距離が15cm程度になるように設置しています。
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電源OFF時の騒音値は33~35dBです。目安として40dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになり、45dB前後で煩く感じます。50dBを超えてくるとヘッドホンをしていても煩く感じます。同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質にもよるので注意してください。


EKWB EK-AIO 360 D-RGBのラジエーター冷却ファンのファンノイズを測定したところ次のようになりました。EKWB EK-AIO 360 D-RGBはラジエーター冷却ファンを1000~1200RPM前後に収まるようにするとノイズレベル40dB以下となり、静音動作で運用できると思います。
「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」の付属ファンはNoctua NF-A12x25 PWMと比較して同ノイズレベル時の回転数は+200~300RPM程度に収まっていて比較的良好に見えるのですが、一部のデューティ比において”フィーン”という高周波ノイズが発生したのが残念でした。
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上のグラフでは冷却ファンを付属品から「Noctua NF-A12x25 PWM」に換装したケースについてもファンノイズとファン回転数の関係を掲載していますが、「Noctua NF-A12x25 PWM」に交換すれば標準ファンと同じノイズレベルにおいて300PRM~400RPM程度高いファン回転数で運用でき、より高い冷却性能と静音性を実現できます。「Noctua NF-A12x25 PWM」は1台あたり3500円ほどと高価ですが、CPUクーラーのパフォーマンスを追及するのであれば、一押しの冷却ファンです。
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続いて「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」の冷却性能をチェックしていきます。
CPUクーラーの冷却性能を検証するためのストレステストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、Aviutl&x264を使って動画のエンコードを行います。動画エンコードの同時実行数については4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列実行、16コア以上は3並列実行としています。テスト中のファン回転数については一定値に固定します。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
CPU Cooler_Stress Test

2020年5月に発売されたばかりのIntel第10世代Comet Lake-S最上位モデル、10コア20スレッドCPUの「Intel Core i9 10900K」を使用して、Intel第10世代Core-S環境における「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」の冷却性能を検証していきます。

Core i9 10900KのOC設定は「CPUクロック倍率:51」「キャッシュ倍率:47」「CPUコア電圧:1.250V(固定モード)」「CPU SVIDサポート: Disabled」「ロードラインキャリブレーション: Level7」、メモリのOC設定は「メモリ周波数:3600MHz」「メモリ電圧:1.350V」「メモリタイミング:16-16-16-36-CR2」としています。
Core i9 10900K OC_BIOS (1)Core i9 10900K OC_BIOS (2)
Core i9 10900K OC_BIOS (3)Core i9 10900K OC_BIOS (4)
Core i9 10900Kを全コア5.1GHzにOCすると、Cinebench R20のスコアは6700ほどとなります。またこの動作設定において上で紹介したストレステストを実行すると、システムの消費電力(マイナス30~40WでCore i9 10900Kの消費電力)は280W前後に達します。
Core i9 10900K OC_cinebenchR20
Core i9 10900K OC_power

「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」のファン回転数を1200RPMに固定してストレステストを実行したところ、「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」はCore i9 10900Kを全コア5.1GHzにOCしてもCPU温度を最大72度、平均66.8度に収めることができました。「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」の付属ファンの定格回転数は2200RPMなのでまだまだの余力を残しています。
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続いてラジエーター冷却ファンを「Noctua NF-A12x25 PWM」に統一してファン回転数も1200RPMに固定し、「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」の冷却性能を同じく360サイズの簡易水冷CPUクーラーFractal Design Celsius S36と比較してみました。
EKWB EK-AIO 360 D-RGB review_00981
まず予備知識として、多数の簡易水冷CPUクーラーを検証してきた経験から言うと、冷却性能的にはAsetek社のOEM品が優秀で、その他は製品にもよりますがハイエンド空冷よりも冷えないものもチラホラと言う感じです。
簡易水冷CPUクーラーのOEM元の中でもAsetek製は基本的に他社OEM製と比較して頭一つ飛びぬけているというのが当サイトの評価です。さらに言えば、Asetek OEMの中でも今回比較対象に選んだ「Fractal Design Celsius S36」は発売から3年近く経った今でも、1,2を争うくらい水冷ヘッドの性能が高いと管理人は高く評価しており、当サイトの各種レビューで統一検証機材として採用しているくらい高い実績を誇る製品です。

「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」は1~2度以下の僅かな差で後塵を拝したものの、市販の簡易水冷CPUクーラーではトップクラスの冷却性能と当サイトで評価するFractal Design Celsius S36に迫る性能を発揮しました。
「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」は常用限界なOCでCPU消費電力が300Wに達するCore i9 10900Kを安定して運用可能な冷却性能を備え、非Asetek製ながら簡易水冷CPUクーラーで定評のあるAsetek製と遜色ない性能です。
EKWB EK-AIO 360 D-RGB_temp_Core i9 10900K_VS

なおIntel Core-Xのようなエンスー向けCPUはもとより、Intel Core i9 10900KやAMD Ryzen 9 3950XなどTDP100Wクラスのメインストリーム向け最上位CPUの冷却に「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」を使用する場合、CPU自体の冷却は上述の通り十分なのですが、これらのCPUはVRM電源への負荷も大きく、マザーボードによってはVRM電源周りが高温になることが予想されます。
マザーボードスペーサーのネジ穴を利用して固定できるフレキシブルファンアーム「サイズ 弥七」や、可変アルミニウム製ファンフレームでVRM電源を狙って設置が容易な「IN WIN MARS」をスポットクーラーに使用することによって、VRM電源が弱めな比較的安価なマザーボードでもCore i9 10900KやRyzen 9 3900Xのような最上位CPUを運用できるようになるので、「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」と一緒に使用するのがおすすめです。
VRM_Cooler_FLIR

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EKWB EK-AIO 360 D-RGBのレビューまとめ

最後に簡易水冷CPUクーラー「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ
  • 水冷ヘッドと冷却ファンにアドレッサブルLEDイルミネーションを搭載
  • 水冷チューブはスリーブ付きで丈夫。曲げやすく潰れにくい
  • PBOによって4.0~4.1GHzにクロックアップしたRyzen 9 3950Xを運用可能な冷却性能
  • 全コア5.1GHzに手動OCしたCore i9 10900Kを運用可能な冷却性能
  • バックプレートを単独でマザーボードに固定可能
  • 水冷ブロックの固定はスプリング付きローレットナットでツールレス固定可能
悪いところor注意点
  • ファン・ラジエーターの固定ネジが国内で入手の容易なM3やM4ではなくUNC No.6-32
  • Intel LGA1200(特に)やAMD AM4のメモリ4枚刺しで水冷ヘッドとメモリが干渉しやすい
  • 付属ファンは一定デューティ比で共振?orコイル鳴き?のようなフィーンというノイズが出る

冷却性能の検証結果からもわかるように「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」は、OCによって最大300Wクラスの電力負荷になるメインストリーム向け最上位CPUのCore i9 10900KやRyzen 9 3950Xに余裕で対応可能な優れた冷却性能を実現しています。
またDIY水冷メーカー最大手のEKWB製ということで期待の大きい製品ですが、AIO水冷で鉄板のAsete OEM製に完全勝利とはならなかったものの、同等クラスの性能には達していました。ハイエンドなCPUクーラーとして検討する価値は十分にあると思います。

水冷ヘッドの固定方式として、マウントパーツが個別にマザーボードに固定可能、マウントパーツを設置したままでもCPUを交換可能なところは管理人的にポイントが高いです。前者は特にマザーボードをPCケースに組み込み後のCPUクーラー設置で、バックプレートを裏から支える必要がないので全ての簡易水冷CPUクーラーで採用して欲しい構造です。

なお「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」を始めとしてEKWB EK-AIOシリーズは水冷ヘッドのサイズが大きく、メインストリーム向けプラットフォームにおけるメモリ4枚刺しでCPUソケットに最も近いメモリが干渉して使用できない可能性があります。マザーボード(CPUソケットとメモリスロットの間隔)やメモリヒートシンクの厚みには注意が必要です。

「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」は水冷ヘッドと冷却ファンにアドレッサブルLEDイルミネーションを搭載しており、PCケース内を豪華にライトアップできるところも魅力です。

以上、「EKWB EK-AIO 360 D-RGB」のレビューでした。
EKWB EK-AIO 360 D-RGB


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補足:空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて

「空冷クーラー」と「水冷クーラー」の2種類ついて同じところと違うところ、また原理的に考えた冷却性能の比較を簡単に補足しておきます。




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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)



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