スポンサードリンク
第3世代Ryzen CPUにネイティブ対応となるB550チップセット搭載AM4マザーボードとしてGIGABYTEからリリースされた、13フェーズVRM電源を搭載したMicroATXのハイコストパフォーマンスなゲーミングモデル「GIGABYTE B550M AORUS PRO」をレビューします。
製品公式ページ:https://www.gigabyte.com/jp/Motherboard/B550M-AORUS-PRO-rev-10#kf
マニュアル:https://download.gigabyte.com/FileList/Manual/mb_manual_b550m-aorus-pro_e.pdf
GIGABYTE B550M AORUS PRO レビュー目次
1.GIGABYTE B550M AORUS PROの外観・付属品
2.GIGABYTE B550M AORUS PROの基板上コンポーネント詳細
3.GIGABYTE B550M AORUS PROの検証機材
4.GIGABYTE B550M AORUS PROのBIOSについて
5.イルミネーション操作機能「GIGABYTE_RGB_Fusion」について
6.GIGABYTE B550M AORUS PROのOC設定について
7.GIGABYTE B550M AORUS PROの動作検証・OC耐性
8.GIGABYTE B550M AORUS PROのレビューまとめ
【注意事項】
同検証は2020年7月中旬に行っておりGIGABYTE B550M AORUS PROのBIOSはverF2を使用しています。最新BIOSでは修正されている不具合や追加されている機能もあると思うので、最新BIOSのリリースについては公式ページを各自でチェックしてください。
サポート:https://www.gigabyte.com/jp/Motherboard/B550M-AORUS-PRO-rev-10/support#support-dl-bios
*B550ではRyzen 9(特に3950X)を組み合わせて使用した時に、Q-Codeエラーやランダムな電源落ちの症状(メーカー問わず、AGESAが原因っぽい?)を確認しているので、Ryzen 9と組み合わせて使用を検討している人はご注意ください。
【2020年7月28日:初稿】
レビュー記事初稿を公開、BIOS:F2で検証
GIGABYTE B550M AORUS PROの外観・付属品
まず最初にGIGABYTE B550M AORUS PROの外観と付属品をチェックしていきます。パッケージを開くと上段にはマザーボード本体が静電防止ビニールに入った状態でスポンジスペーサーの中央に収められていました。マザーボードを取り出すと2重底になっており下段には各種付属品が入っています。
マニュアル類は、日本語の簡易マニュアル、ドライバCDが付属します。ドライバ類についてはそろそろUSBメモリに移行して欲しいところ。組み立て関連の付属品はSATAケーブル2本です。
マザーボード全体像は次のようになっています。
GIGABYTE B550M AORUS PROはMicroATXフォームファクタのマザーボードです。
「GIGABYTE B550M AORUS PRO」はチップセット部分にコンパクトなアルミニウム製ヒートシンクを搭載しています。ヒートシンク中央には、同製品のブランドネーム「AORUS」を示す「Speed(素早さ)」「Power(力強さ)」「Accuracy(精密さ)」を表現したという”鷹(ファルコン)”をモチーフにしたロゴが描かれています。
VRM電源部分に覆いかぶさるようして伸びる大型のリアI/Oカバーはツートンカラーをなしており、黒色部分はプラスチック製ですが、紫がかったCPUソケット寄りはアルミニウム製の大型ヒートシンクになっています。CPUソケットの上側にも独立してアルミニウム塊型ヒートシンクが装着されています。
GIGABYTE B550M AORUS PROは、最大16コアに達する第3世代Ryzenに対応すべく、13(10+3)フェーズのVRM電源が実装されています。
「GIGABYTE B550M AORUS PRO」のVRM電源回路を詳しくチェックしてみると、CPU向け10フェーズ、SOC向け3フェーズで計13フェーズのVRM電源回路が実装されています。キャパシタがフェーズ数ないのが少し気になりますが。
PWMコントローラーとして「Renesas RAA 229004 」、ハイサイドMOS-FETにON Semiconductor製「4C10N」、ローサイドMOS-FETにON Semiconductor製「4C06N」が使用されています。またCPU向けフェーズはダブラー「ISL6617A」で2重化されています。
「GIGABYTE B550M AORUS PRO」はEPS電源端子として8PIN×1が設置されています。
「GIGABYTE B550M AORUS PRO」には一体型リアI/Oバックパネルも採用されています。PCケースにパネルを装着する作業は固くて装着し難かったり、忘れてしまうこともあるのでマザーボードに統合されているのは嬉しい機能です。
以下USB規格に関する説明がありますが『USB3.2 Gen2 = USB3.1 Gen2』、『USB3.2 Gen1 = USB3.1 Gen1 = USB3.0』と考えて基本的に問題ありません。
リアI/Oには最新のUSB3.2 Gen2規格に対応したType-A(赤色)とType-Cの2端子が設置されています。そのほかのUSB端子については4基のUSB2.0端子と4基のUSB3.0端子が搭載されています。マウス・キーボードなどの周辺機器を多数繋いでいてもVR HMDに余裕で対応可能です。USB3.Xは無線マウスと電波干渉を起こすことがあるので、USB3.X端子から少し離れた場所にUSB2.0が設置されているのは嬉しいポイントです。
RX Vega内蔵グラフィックス搭載Ryzen APU向けにHDMI2.1とDisplayPort1.4の2つのビデオ出力端子が搭載されています。DisplayPortはもちろんのこと、HDMIのバージョンもver2.1なので、2つのビデオ出力端子はいずれも4K解像度60FPSの出力に対応しています。
またリアI/Oには「Q-FLASH PLUS」ボタンが設置されており、BIOSファイル(サポートページからダウンロードして、”gigabyte.bin”に改名)の入ったUSBメモリを所定のUSB端子に接続してボタンを押すとQ-FLASH PLUS機能によってCPUやメモリなしの状態でもBIOSの修復・アップデートが可能です。
GIGABYTE B550M AORUS PROの基板上コンポーネント詳細
続いて「GIGABYTE B550M AORUS PRO」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。システムメモリ用のDDR4メモリスロットはCPUソケット右側に4基のスロットが設置されています。固定時のツメは両側ラッチとなっています。片側ラッチよりも固定が少し面倒ですが、しっかりとDDR4メモリを固定できるので信頼性は高い構造です。
グラフィックボードなどを設置するPCIEスロットは上から[N/A、x16、x1、x16]サイズのスロットが設置されています。上段のプライマリグラフィックボードを2段目のスロットに配置することで、大型ハイエンド空冷CPUクーラーとグラフィックボードの干渉を回避しています。
4段目のx16サイズスロットの帯域はPCIE3.0x4、3段目のx1サイズスロットの帯域はいずれもPCIE3.0x1となっており、排他利用はありません。
「GIGABYTE B550M AORUS PRO」のグラフィックボード用x16サイズスロットにはPCIEスロット補強用メタルアーマー「Ultra Durable PCIe Armor」とPCIEスロット左右端の固定を補強するGIGABYTE特許取得済「Double Locking Bracket」による2重の保護が施されています。1kgを超える重量級グラボの重さに耐えるためのこれらの対策により垂直方向に3.2倍、水平方向に1.7倍と両方向の負荷に対する強度は大幅に向上しています。
GIGABYTE B550M AORUS PROにはSATAストレージ用の端子は4基(SATA_1~4)搭載されています。SATA_1~4はいずれもAMD B550チップセットのコントローラーによる接続で、RAID0/1/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。
GIGABYTE B550M AORUS PRO」には高速NVMe接続規格に対応したM.2スロットが、CPUスロット下とチップセット下の2か所に設置されています。M.2_1はNVMe(PCIE4.0x4)接続とSATA接続の両方のM.2 SSDに対応し、排他利用はありません。M.2_2はNVMe(PCIE3.0x4)接続とSATA接続の両方のM.2 SSDに対応し、排他利用はありません。
PCIE4.0x4に対応する上段のM.2スロットにはM.2 SSDヒートシンクが搭載されており、サーマルパッドを介してSSDと接触することで放熱ヒートシンクとして利用でき、高速な反面発熱の大きいNVMe M.2 SSDのサーマルスロットリングの発生を抑制します。
マザーボードの右端には内部USB3.0ヘッダーが実装されています。
マザーボード下には内部USB2.0ヘッダーも2基設置されていました。CorsairLinkやNZXT CAM対応製品など内部USB2.0を使用する機器も増えていますが、GIGABYTE B550M AORUS PROであればそれらの機器も問題なく使用可能です。内部USB2.0が2基でも不足する場合はUSB2.0ヘッダー増設ハブの「NZXT INTERNAL USB HUB」や「Thermaltake H200 PLUS」がおすすめです。
「GIGABYTE B550M AORUS PRO」はオンボードサウンドに7.1チャンネルや24Bit/192kHzのハイレゾ音源に対応するRealtek ALC1200コーデックを使用した高音質ソリューションが採用されています。デジタル出力もオーディオ用の外部アンプ等との接続に最適な光デジタル端子が設置されています。
「GIGABYTE B550M AORUS PRO」にはCMOSクリアのためのオンボードボタンは実装されておらず、マザーボード右下のジャンパーピンを使用してCMOSクリアを行います。ケーブルの長い2PINスイッチをあらかじめ装着しておいた方がよさそうです。
冷却ファンや簡易水冷クーラーのポンプの接続用の端子はマザーボード上の各場所に計5か所設置されていましす。またファン制御に使用できる温度センサーも6個実装されています。
「GIGABYTE B550M AORUS PRO」のUSB3.1端子はThunderbolt3には非対応ですが、SATA端子の上にTHB-C端子があるので、同社のThunderbolt3拡張ボード「GIGABYTE GC-TITAN RIDGE R2.0」を使用することでThunderbolt3端子を増設可能です。
GIGABYTE B550M AORUS PROの検証機材
GIGABYTE B550M AORUS PROを使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。GIGABYTE B550M AORUS PRO以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | AMD Ryzen 9 3950X (レビュー) AMD Ryzen 7 3700X (レビュー) |
CPUクーラー | Corsair H150i PRO RGB (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) |
CPUベンチ用 ビデオカード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
システムメモリの検証機材には、第3世代Ryzen&X570マザーボードのプラットフォームに最適化されたハイパフォーマンスOCメモリの最速モデル「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」を使用しています。3600MHz/CL14の最速モデル、3200MHz/CL14や3600MHz/CL16といった定番スペックがラインナップされ、高級感のあるヒートシンクや8分割ARGB LEDを搭載してデザイン面でも優れる「G.Skill Trident Z Neo」シリーズは、第3世代Ryzenの自作PCで性能を追求するなら間違いのないオススメなOCメモリです。
・「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」をレビュー
レビュー後半の動作検証では12コア24スレッドモデルRyzen 9 3900Xを使用したOC検証も行いますが、CPUクーラーの検証機材には360サイズ大型ラジエーターを搭載するCorsair製AIO水冷CPUクーラー最上位モデル「Corsair H150i PRO RGB」を使用しています。
マザーボード備え付けの固定器具にCPUクーラーリテンションブラケットのフックをひっかけてハンドスクリューで締めるだけなので設置が非常にお手軽です。
360サイズラジエーター搭載の「Corsair H150i PRO RGB」と280サイズラジエーター搭載の「Corsair H115i PRO RGB」はいずれも冷却性能が高く、LEDイルミネーションやファン制御などの操作性・カスタマイズ性にも優れているので第3世代Ryzen CPUとの組み合わせにはおすすめなCPUクーラーです。
・「Corsair H150i PRO RGB」&「Corsair H150i PRO RGB」をレビュー
360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーターの簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。「Noctua NF-A12x25 PWM」は、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファンとなっており、1基あたり3500円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
・「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する18年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、メインストリーム向けでもハイパフォーマンスな環境を目指すのであれば、システムストレージ用に一押しのSSDです。
・「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
・「Thermal Grizzly Carbonaut」はRyzen 9 3900Xを冷やせるか!?
以上で検証機材のセットアップが完了となります。
GIGABYTE B550M AORUS PROのBIOSについて
GIGABYTE B550M AORUS PROを使用した検証機の構築も完了したので動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。(OSから日付調整する前にスクショを取っている場合、日付が変になっている場合がありますが無視してください。また内容的に差異がなければ過去のスクリーンショットを流用しています。)
GIGABYTE B550M AORUS PROのBIOSに最初にアクセスするとイージーモードというグラフィカルな画面が表示されます。パッと見の見栄えは良いのですが詳細モードでないと詳細設定ができないので「F2」キーを押してサクッと「アドバンスドモード(Advanced Mode)」へ移るのがおすすめです。
アドバンスドモードという従来通りの文字ベースBIOSメニューが表示されました。トップに表示されるシステムタブのシステム言語から日本語を選択可能です。トップメニューのタブは左右カーソルキーで簡単に移動できます。
GIGABYTE製マザーボードのBIOSの翻訳は一部誤訳もあるものの比較的まともなので日本語UIとしては使いやすいと評価していいと思います。未だに一部の漢字に違和感のあるフォントですが、フォントサイズが調整されて見切れることがないように2019年7月以降の製品では修正が加えられています。
GIGABYTE B550M AORUS PROのBIOSにおいて設定の保存とBIOSからの退出はトップメニュータブ最右端の「保存して終了(save and exit)」から行えます。特定のブートデバイスを指定してBIOSから退出するBoot Override機能もあります。
BIOSのアップデート方法は、まず公式サポートページから最新のBIOSファイルをダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
サポート:https://www.gigabyte.com/jp/Motherboard/B550M-AORUS-PRO-rev-10/support#support-dl-bios
USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、BIOSメニューのSystem Infoタブの最下段に表示される「Q-FLASH」を選択するか、「F8」キーのショートカットキーでQ-FLASHを起動します。
Q-Flashの画面に移動したら、Update BIOSを選択し、USBメモリからアップデートファイルを選択します。
ブートとOSインストール周りについて紹介します。
GIGABYTE B550M AORUS PROのブート回りは下画像のようにトップメニュータブ「BIOS」の中で非常に簡潔にまとめられており初心者でも迷うことはないと思います。OSのインストールも「起動オプション #1」に「UEFI 〇〇」というOSインストールメディアを設定して保存&退出でOKです。
GIGABYTEのBIOSではブートデバイスの指定が可能なので起動オプションで設定せずに、「保存して終了(save and exit)」のタブメニューから「UEFI 〇〇」というOSインストールメディアを選択してもOKです。
ちなみにWindows10の製品パッケージに付属するUSBメモリではUEFIで認識できないトラブルが発生することがあるようなので、そういうときはこちらの記事に従ってMS公式ツールを使用して適当なUSBメモリでOSインストールメディアを作成すると上手くいきます。
BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、GIGABYTE B550M AORUS PROのBIOS機能で管理人が気になったものをいくつかチェックしていきます。
「GIGABYTE B550M AORUS PRO」の2段目のx16サイズPCIEスロットはPCIE帯域の分割(PCIE Bifurcation)に対応しています。
多機能かつ使いやすいファンコン機能「スマートFan 5」について
GIGABYTE B550M AORUS PROなどGIGABYTE製マザーボードに採用されるファンコントロール機能「スマートFan 5」が外部温度センサー対応など多機能かつ、ユーザービリティーにも優れたUIでかなり使いやすいので詳しくチェックしていきます。ちなみに「スマートFan 5」はWindows OS上の専用アプリからも設定が可能ですが、BIOSからも専用アプリと同様にフルコントロール可能なので、一度設定したら頻繁に弄るものでもありませんし、余計なものを入れるよりもBIOS上からの操作に慣れておく方がおすすめです。
「GIGABYTE B550M AORUS PRO」のファンコントロール機能「スマートFan 5」には、「F6」のショートカットキーか、「Settings」タブの「スマートFan 5」を選択することでアクセスできます。
「GIGABYTE B550M AORUS PRO」のファンコントロール機能は下のスクリーンショットのようにグラフィカルUIによる設定のみで一部他社製品のようなコンソールで値を打ち込むようなメニューは存在しません。グラフィカルUIでマウスを使って簡単にできる機能なのですが、マウスレスでも全て設定可能となっており、ASUSやASRockのBIOSのような直打ちUIが好きな管理人でも使いやすいと感じる良いファンコンでした。
同ファンコントロール機能でユーザーが主に触る部分は下のスクリーンショットで囲った、「設定を行うファン端子」「速度設定プリセットの選択」「手動設定時のファンカーブ」「ファンカーブの温度ソース」「設定の適用」の5つになると思います。
左上「Monitor」と表示されたすぐ横にあるプルダウンメニューからはファンコン設定を行うファン端子を選択可能で、選択したファン端子について、その下に位置する各設定項目を変更できます。選択したファン端子について「〇〇ファン速度制御」の項目から、「通常」「静音」「フルスピード((定格)」の3つのプリセットに加えて、ユーザーが各自でファンカーブをカスタマイズできる「手動」の4種類を選択できます。
また選択しているファン端子の操作を行う温度ソースは「Fan Control Use Temperature input」から選択可能になっており、マザーボード備え付けの7つの温度センサーに加えて、増設可能な2つの温度センサーで計9個の温度センサーを温度ソースに指定できます。ただしCPUファンについてはCPU温度ソース固定となります。対応マザーボードであれば水温センサーを外部温度センサー端子に接続すれば水温ソースにしたラジエーターファンのファンコンにも対応可能なので水冷PC用のマザーボードとしても最適なファンコン機能です。
「〇〇ファン速度制御」の項目で「手動:を選択した場合はファンカーブのグラフにおいて、ファンストップ温度と、フルスピード温度に加えて、グラフ内で任意の4点についてファンカーブを設定できます。「Monitor」と「〇〇ファン速度制御」の項目間で上下カーソルキーを使うことで各ファンカーブ頂点を指定することができます。注目ポイントとしては「Shift」キーとカーソルキーの同時押しによってマウスレスでファンカーブの頂点を格子上で移動可能となっており、直打ち派の管理人も唸る非常に設定しやすいグラフィカルUIでした。
「Monitor」からは特定のファン端子を選択するので選択したファン端子1つだけについて設定を適用することも可能なのですが、設定の適用を行う「Apply to」のボタンをクリックするとマザーボードに設置されたファン端子が全て列挙され、ファン端子名の左にあるチェックボックスのチェックを入れるもしくは外すことで、現在設定を行っているファン端子と同じ設定を他のファン端子にも一斉に適用することが可能です。ファン設定の同期適用機能があるというのはユーザービリティーに優れ非常に好印象です。
その他にも急激な温度変化へファンコンが過敏に反応しないようファン速度変化に1~3秒の猶予を設ける「Temperature Interval」、ファン操作モードを「DC/PWM/自動検出」から設定する「〇〇ファン Control Mode」などのファンコン設定項目があります。ソース温度が一定以下の時にファンを停止させる「〇〇ファン Stop」機能も用意されており、ファン操作モードがPWMの場合でも手動設定時のセミファンレス機能を問題なく使用できました。(ASUSマザボではDCモードのみだった気がします。)
またマザーボードにブザーユニットが接続されている場合は、特定温度ソースが一定温度を超えた場合にエラーを知らせる「Temperature Warning」や接続されているファンに不具合が発生した(回転数の検出ができない)場合に警告を行う「〇〇ファン異常警告」といった設定も可能です。
また「0」と書かれたファンカーブの頂点はファンストップ温度となっており、指定した温度ソースがファンストップ温度以下の場合、設定を行ったファン端子に接続されたファンを停止させる、所謂セミファンレス機能が使用できます。試しに止めてみました。
「Smartファン5」は欲を言えば数値直打ちのコンソール型UIもあると嬉しいとか個人的な要望はあるものの、マザーボードのファンコントロール機能としては、同じく外部温度センサーソースに対応したASUSの「Q-Fan control」以上に多機能です。
「Smartファン5」はWindows OS上のインフォメーションソフト「System Information Viewer」に統合されており同アプリ上から、BIOSと同じくファンコントロールが可能です。(System Information Viewerの利用にはAPP Centerのインストールも必要になります。)
上で紹介したBIOS上のファンコントロール同様に、個別のファンについてファンカーブの設定、セミファンレス機能のON/OFF、ヒステリシス間隔の変更など詳細なファンコントロール設定が可能です。
上のメニューで左にあるケースアイコンをクリックするとPCケース内におけるファンの設置位置やファンコンのソース温度を設定するメニューが表示されます。
GIGABYTE B550M AORUS PROなどGIGABYTE製マザーボードに採用されるファンコントロール機能「Smartファン5」はおそらく一般ユーザーにとっては最も使いやすく機能の優れたファンコントロールだと思います。
イルミネーション操作機能「GIGABYTE RGB Fusion」について
GIGABYTE B550M AORUS PROはマザーボード備え付けのLEDイルミネーションやRGB対応汎用4PIN/アドレッサブルRGB対応汎用3PINイルミネーション機器を操作可能なライティング制御機能「GIGABYTE RGB Fusion」に対応しています。マザーボード上にはRGB対応汎用4PIN LEDヘッダーが2基設置されています。出力は最大24W(12V, 2A)まで対応しています。当サイトでもレビュー記事を掲載しているLEDテープ「SilverStone SST-LS02」やLEDファングリル「Phanteks Halos Lux RGB Fan Frames」などが接続可能です。
またアドレッサブルLED機器を接続可能なARGB対応VD-G型3PIN LEDヘッダーも2基実装されています。「GIGABYTE B550M AORUS PRO」で使用可能なアドレッサブルLEDテープとしては国内で発売済みの「BitFenix Alchemy 3.0 Addressable RGB LED Strip」や「ASUS ROG ADDRESSABLE LED STRIP-60CM」や「AINEX アドレサブルLEDストリップライト」が動作することが確認できています。
GIGABYTEのライティング制御機能「RGB Fusion」はWindows OS上の同名アプリ「RGB Fusion」からライティングに関する各種設定が可能です。プリセットも豊富でイラストも交えたUIが使いやすいソフトウェアです。
「RGB Fusion」を起動すると、マザーボードやメモリなどRGB Fusion対応機器一覧アイコンとライティング同期設定が表示されたホームページが表示されます。ホームページ右側から発光パターンや発光カラー設定を行うと左側にアイコンの表示されている対応機器全てに同じライティング設定が適用されます。
右上にある歯車アイコンで表示される設定ウィンドウにはスマホアプリとのペアリング設定があり、また「LEDs in Sleep, Hibernation……」の項目ではスリープやシャットダウン中にLEDイルミネーションを点灯させるかどうかが設定できます。
LEDイルミネーション搭載メモリの「GIGABYTE AORUS RGB Memory」など、同社/他社のRGB Fusionと互換性のあるイルミネーション機器を一括して制御できます。
「GIGABYTE B550M AORUS PRO」ではBIOS:F2の時点では非対応ですが、「GIGABYTE RGB Fusion」はデスクトップアプリだけでなくBIOS上のグラフィカルUIでLEDイルミネーションの調整を行えます。いちいち専用アプリをインストールするのが面倒なのでBIOSから設定できるのは非常に便利で。ただし残念ながらBIOSからは設定可能な発光パターンが少なく、マザーボード上の個別箇所設定が不可能など、デスクトップアプリと比べて設定内容が限定されています。
「Settings - Miscellaneus」にある「LEDs in System Power On State」ではシステムがアクティブな状態、「LEDs in Sleep, Hibernation……」の項目ではスリープやシャットダウン中にLEDイルミネーションを点灯させるかどうかが設定できます。
GIGABYTE B550M AORUS PROのOC設定について
GIGABYTE B550M AORUS PROを使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
第3世代Ryzen CPUについてはX570チップセット搭載マザーボードと組み合わせた場合に使用できる純正のOCツール「AMD Ryzen Masterユーティリティ」が用意されていますが、こちらの使い方については下の記事を参考にしてください。
・AMD Ryzen専用純正OCツール「AMD Ryzen Masterユーティリティ」の使い方
「GIGABYTE B550M AORUS PRO」ではオーバークロック関連の設定項目はトップメニュータブ「Tweaker」に各種設定がまとめられています。下にスクロールしていくと概ね「コアクロック→メモリ→電圧」の順番で並んでいます。設定値を直接入力する項目でデフォルトの「Auto」に戻す場合は「a」キーを入力すればOKです。
GIGABYTE製マザーボードのOC設定については、設定項目も簡潔にまとまっていて使いやすいのですが、難点としては、テンキーの「+/-」キーで設定値の変更はできるものの、メモリ周波数やロードラインキャリブレーションの設定がプルダウンメニューでないところが非常に不便であると、ここ2,3年に渡って評価していたのですが、「GIGABYTE B550M AORUS PRO」など2019年7月以降の新製品ではこの部分が修正されました。
CPUコアクロック(コア倍率)の変更について説明します。
第3世代Ryzenは、CPU温度や電力に関して安定動作可能な相関関係を記したテーブルがCPU内部に用意されており、それに則した形で「Pure Power」や「Precision Boost(2)」といったRyzen CPUの独自機能により動作クロックや電力がリアルタイム制御されています。
例えばRyzen 9 3900XではCPUクーラー冷却性能の影響で若干前後しますが、単コア負荷の場合は最大で4.6GHz、全コア負荷の場合はTDPの範囲内で変動しますが、軽いワークロードであればコア毎に4.5~4.2GHzで動作し、動画のエンコードなどCPUがフルパワーを発揮する重いワークロードでは冷却性能が十分ならベースクロックを上回る平均4.0GHz程度で動作します。
第3世代Ryzenや第2世代Ryzen/Ryzen Threadripper CPUの動作クロックに関する予備知識については下の記事で概要を解説しているので参考にしてください。
・「Precision Boost Overdrive」を徹底解説
GIGABYTE B550M AORUS PROのコアクロックのOC設定方法はベースクロック(BCLK):100MHzに対する倍率指定となっており0.25倍単位でCPUコアクロックの倍率を設定できます。「CPU クロック倍率: 40.00」と設定することでデフォルトのベースクロック100MHzの40倍で4.0GHzで動作します。
「GIGABYTE B550M AORUS PRO」でRyzen 9 3900XやRyzen 9 3950Xを使用している場合、全コア共通の動作倍率設定だけでなく、CCX単位(3950Xの場合は4コア1セット、3900Xの場合は3コア1セット)で個別に動作倍率を設定するPer CCXにも対応しています。
「GIGABYTE B550M AORUS PRO」ではベースクロックの調整にも対応しており、CPUクロック倍率の上にある「CPUベースクロック」の項目で変更可能です。100~300MHzの範囲内で0.01MHz刻みで設定できます。
「GIGABYTE B550M AORUS PRO」では単コアブーストクロックを維持したまま、電力制限を解除することで全コア最大動作倍率を引き上げることができる「Precision Boost Overdrive」もBIOSから設定が可能です。ただし設定項目は若干分かり難い場所に配置されており、「Settings - AMD Overclocking - Precision Boost Overdrive」の順にアクセスしていく必要があります。Tweakersの上のほうにショートカットを配置しておいて欲しいところです。
Precision Boost Overdriveを「Manual」もしくは「Advanced」に設定にすると、第3世代Ryzenにおいても前世代と同様に、電力制限上限値を指定する「PPT Limit (W)」、最大動作クロックの制限値に影響する「TDC Limit / EDC Limit (A)」を設定できます。
さらにX570マザーボードでは第3世代Ryzenが新たにサポートする「Auto OverClocking Mode」に関する設定項目として、Precision Boost 2によるコアクロックの上昇幅を設定する「Max CPU Boost Clock Override」や、Precision Boost 2やXFRによる自動OC機能が効く温度閾値を引き上げる「Platform Thermal Throttle Limit」などのオプションが追加されています。
続いてコア電圧の調整を行います。
AMD Ryzen CPUのオーバークロックで変更する電圧設定については、CPUコアクロックに影響する「CPUコア電圧」と、メモリクロックやRyzen APUに搭載される統合GPUの動作周波数に影響すると「SOC電圧」の2種類のみと非常に簡単化されています。
「GIGABYTE B550M AORUS PRO」ではTweakerの項目で下にスクロールしていくと、各種電圧設定項目が表示されますが、AMD Ryzen CPUの手動OCに関連する電圧設定については「CPU Core電圧」、「VCORE SOC(CPU SOC電圧)」、そして「DRAM電圧」の3項目のみに注目すればOKです。
CPUコアクロックのOCに関連する電圧のOC設定としては、GIGABYTE B550M AORUS PROCPUコア電圧(BIOS上ではCPU Core voltageもしくはCPU Vコアと表記されています)の項目を変更します。マニュアルの設定値を指定して入力する固定モードでは、コア電圧を0.00625V刻みで設定が可能です。
「GIGABYTE B550M AORUS PRO」でコア電圧のオフセット設定を行う方法は少し分かり難いのですが、CPU Vコアの項目をNormalにすると、Dynamix Voltageの項目のグレーアウトが解除されて、オフセット値を指定できるようになります。
CPUコア電圧モードについて簡単に説明すると、オフセットモードやアダプティブモードはCPU負荷に比例して電圧が設定されており、低負荷時は電圧が下がるので省電力に優れるのですが、OCをする場合はマザーボードによって挙動に差があり安定する設定を見極めるのが難しいので、個人的にはオフセットやアダプティブは定格向け、OCには固定値適用の固定モードを推奨しています。
仮にOCでオフセットやアダプティブを使う場合も最初はコアクロックに対して安定する電圧を見極める必要があるので、まずは固定モードを使用します。
ちなみにマザーボードにより対応しているモードは異なりますが、CPUのオーバークロックに付随するコア電圧のモードの概略図は次のようになっています。
またコアクロックを高く設定する時に追加で変更するといい電圧設定項目として、Tweakersの下の方に配置された「CPU/VRM Settings」からアクセスできる「CPU VRINロードラインキャリブレーション」が挙げられます。
「CPU VRINロードラインキャリブレーション」はCPU負荷時の電圧降下を補正してOCを安定させる機能です。補正を強くするほどOCの安定性は増しますがCPUやVRM電源部分の発熱も大きくなるので、基本的にはMediumあたりから最初に使っておいて、ストレステストのCPU温度をチェックしながらモードを上げていくのがおすすめです。
メモリのオーバークロックについても簡単に紹介しておきます。
メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。
メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありませんが、「GIGABYTE B550M AORUS PRO」では正常にPOSTできないメモリOC設定でエラーが出た場合は数回再起動した後、自動で2133MHzのような緩い設定で起動してくれるのでメモリOCを安心して行えます。
メモリOCで有名なXMPプロファイルはIntelの策定した規格なのでAMD CPU&マザーボードの環境では厳密にいうと非対応ですが、GIGABYTE B550M AORUS PROではXMPプロファイルの項目が表示されており、XMPプロファイルからRyzen環境で動作しそうな適当なOCプロファイルを自動生成して適用してくれます。「エクストリーム・メモリ・プロファイル(XMP)」を選択して表示されるポップアップからプロファイルを選択すればOCプロファイルによるメモリのオーバークロックが可能です。
「XMP設定の読み込み」の設定値が無効になっている場合は、使用するメモリにSPD情報として収録されている動作クロック2133~2666MHzなどのメモリ周波数およびタイミングによる定格動作となります。
手動でメモリ周波数を設定する場合は「DRAM周波数(DRAM Frequency)」の項目でプルダウンメニューから最大6000MHzまでの動作クロック(倍率)設定が可能です。「GIGABYTE B550M AORUS PRO」ではメモリ周波数もBCLKに対する倍率で表示されます。
メモリ周波数もBCLKに対する倍率で動作周波数が決まっているので、BCLKを標準値の100MHzから120MHzに上げると、44倍設定時の動作周波数は4000MHzから5280MHzに上がります。
「高度なメモリ設定 - MemorySubtimings」を選択するとメモリタイミングの個別打ち込み設定が表示されます。メモリタイミングを手動で設定する場合は基本的には「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS Read (tRCDrd)」、「RAS to CAS Write (tRCDwr)」、「RAS Precharge (tRP)」、「RAS Active Time (tRAS)」の主要な5タイミングと、加えて各種タイミングの下の方に配置されている「Command Rate:1 or 2」の6つ以外はAutoのままでいいと思います。
メモリ周波数を3200MHz以上にOCして動作が安定しない場合は、「GearDownMode」をEnabled(有効)に設定すると動作が安定するかもしれないので、Auto(自動)で上手くいかない場合は設定を変更してみてください。
メモリタイミングの下の方にある「ProcODT」という設定値がAutoのままではPOSTがクリアできなかったり、OS起動後に安定しない場合があります。そういった場合は「ProcODT」を43.6~68.6の間で固定して安定するものを探してみてください
DDR4メモリの周波数OCを行う際はDRAM電圧(DRAM Voltage)を、メモリ周波数3000MHz以上の場合は1.300V~1.350V、メモリ周波数3800MHz以上の場合は1.370V~1.400Vに上げる必要があります。メモリをOCする場合は最初から1.350V以上にDRAM電圧を盛っておくのがおすすめです。
AMD Ryzen CPUでメモリの動作クロックをOCする場合はDRAM電圧だけでなく「CPU SOC電圧(VCORE SOC)」も1.100V程度に盛ってやると動作が安定しやすいようです。GIGABYTE B550M AORUS PROではCPUコア電圧同様に0.00625V刻みで値を設定できます。
GIGABYTE B550M AORUS PROの動作検証・OC耐性
BIOS周りの管理人的に気になるところやOC設定の基本についての紹介はこのあたりにしてGIGABYTE B550M AORUS PROを使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。まずはBIOS上の起動設定をファストブートを無効にしてOSの起動時間を測定しました。GIGABYTE B550M AORUS PROの起動時間は15秒ほどとなりました。POST時間も短く、起動は高速です。
続いてGIGABYTE B550M AORUS PROを使用した場合のCPUおよびメモリのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
Ryzen 9 3950Xなど第3世代Ryzenの上位モデルは、従来のRyzen CPUと同様にCPUクーラーの冷却性能に応じた自動OC機能「Precision Boost 2 & XFR 2 (Extended Frequency Range 2)」が機能し、第3世代Ryzenはその際に参照されるテーブルが限界近くまでチューニングされており、ユーザーが設定を変更したとしてもコアクロックを上昇させることが可能なマージン(ヘッドルームと呼ばれている)が非常に小さくなっています。
Ryzen 9 3950X、Ryzen 9 3900X、Ryzen 7 3800Xの上位3モデルについてはコアクロック回りを下手に弄るよりも、360サイズ簡易水冷CPUクーラーのような高性能なCPUクーラーの冷却性能にまかせて自動OC機能によるクロックアップを狙うのがオススメです。
「GIGABYTE B550M AORUS PRO」についてはCPU Package Powerに対してマザーボード独自設定のオフセットや倍率がかけられておらず(CPUの実際の消費電力がCPU Package Powerとして正確に参照される)、定格設定のままではPPT142Wの制限がかかります。Precision Boost OverdriveでPPTを200W以上に設定して電力制限を解除することで、CPUクーラーの冷却性能が十分であれば、CPU Package Powerを180W前後まで上げて多少ながらクロックアップが狙えます。
2020年7月現在、B550マザーボードでRyzen 9 3950Xを使用するとメモリ回りが不安定になる現象を確認しているので、Ryzen 7 3700Xを使用してメモリOC耐性をチェックしました。
「GIGABYTE B550M AORUS PRO」のOC検証では検証機材メモリとして8GB4枚組み32GBメモリキット「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」を使用しています。同メモリに収録されたOCプロファイルによってメモリ周波数を3600MHz、メモリタイミングを14-15-15-35-CR1という非常にシビアなOC設定を適用していますが、安定動作が確認できました。
また「G.Skill Trident Z RGB F4-3200C14Q-32GTZRX」は第1/2世代Ryzen向けでは定番の3200MHz/CL14に対応したOCメモリですが、同メモリにおいてもメモリ周波数と主要タイミングのみのカジュアル設定で、メモリ周波数3600MHz、メモリタイミングを16-16-16-36-CR1に手動OCできました。
続いてスマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE Pro」(レビュー)を使用してGIGABYTE B550M AORUS PROのVRM電源温度をチェックしていきます。
CPUへ電力供給を行うVRM電源に負荷をかけるためCPUに対してストレステストを実行しますが、その検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間7分、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)でAviutl+x264を使って3並列のエンコードを行い、30分以上に渡って負荷をかけ続けました。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
検証機材の360サイズ簡易水冷CPUクーラー「Corsair H150i PRO RGB」で十分な冷却を行った場合、16コア32スレッドのRyzen 9 3950Xは定格動作のクロックアップ(XFR)によって全コア平均4.0GHzで動作しますが、ストレステストにおいてGIGABYTE B550M AORUS PRO環境ではシステム全体の消費電力(50~60W差分くらいでCPU消費電力)が200W前後に達します。
まずソフトウェアモニタリング上では「GIGABYTE B550M AORUS PRO」のVRM電源温度は最大で80度後半に達しています。
Ryzen 9 3950Xを定格で限界近い全コア4.0GHzにクロックアップさせ、30分以上負荷をかけ続けたところ、簡易水冷CPUクーラーによるCPU冷却でVRM電源周りに直接風の当たらないパッシブ冷却の状態では、VRM電源周りのホットスポットは90度半ばに達しました。GIGABYTE B550M AORUS PROでRyzen 9を使用すると、VRM電源のオーバーヒートによるコアクロックの強制低下こそ発生しないもののVRM電源温度は非常に高温です。
CPU Package Powerが100W未満に収まるRyzen 7 3700XやRyzen 5 3600であれば問題ありませんが、「GIGABYTE B550M AORUS PRO」でRyzen 9 3900XやRyzen 9 3950Xを運用するのであれば、VRM電源周りに風の当たるトップフロー型空冷CPUクーラーを使用するか、簡易水冷CPUクーラーの場合はスポットクーラーの増設など放熱を補助したいところです。
VRM電源の冷却を強化するためにスポットクーラーを使用するのであれば、フレキシブルファンアーム「サイズ 弥七」や、可変アルミニウム製ファンフレームでVRM電源を狙って設置が容易な「IN WIN MARS」がオススメです。
・マザーボードVRM電源クーラーのレビュー記事一覧へ
GIGABYTE B550M AORUS PROのレビューまとめ
最後に「GIGABYTE B550M AORUS PRO」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- AORUSデザインのクールな外観
- 13(10+3)フェーズVRM電源
- Ryzen 9 3950Xの全コア4.0GHzクロックアップで安定動作
- メモリ周波数3600MHz/CL14のOCが安定動作
- 重量級グラボにも耐える2大独自機能「Ultra Durable PCIe Armor」
- NVMe対応M.2スロットを2基設置(PCIE4.0x4対応とPCIE3.0x4対応)
- PCIE4.0x4対応M.2スロットはヒートシンク搭載
- 安価モデルながらBIOS修復機能Q-FLASH PLUSに対応
- Ryzen 9シリーズを運用するのであればVRM電源温度に注意
(150W級の負荷に対してVRM電源温度は90度以上) - 2PINヘッダーを短絡するタイプでCMOSクリアスイッチがない
- 無線LAN&Bluetoothは非搭載
「GIGABYTE B550M AORUS PRO」は、B450の後継としてややや割高感のあるB550マザーボードの中でもコストパフォーマンスに優れたモデルとなっており、MircoATXの同クラス製品と比較しても30ドル程度安価であり、国内価格でも3000円程度安く購入できるところが魅力です。
「GIGABYTE B550M AORUS PRO」ではカーソルキー操作を基本としたクラシカルなUIが採用されており管理人的に好みでした。ただグラフィカルUI好きにとっては物足りないかもしれません。日本語ローカライズの精度とフォントに若干の難は残るものの、メモリ周波数やLLCのメニューが選択式に改善されたことやフォントサイズが調整されたことで使いやすさも向上しています。
手動OCを行わずとも高性能なCPUクーラーを組み合わせた時に自動的にクロックアップする第3世代Ryzen CPUと組み合わせるAMD B550マザーボードの評価において、CPUへ電力供給を行うVRM電源回路の品質やVRM電源クーラーの冷却性能が重要なファクターになるのは言うまでありません。
「GIGABYTE B550M AORUS PRO」では、長期的に150Wクラスの負荷が発生するRyzen 9 3950Xの全コア4.0GHzクロックアップに対して、13フェーズのVRM電源によって安定した電力供給を行うことができましたが、VRM電源温度は90度半ばに達しました。
リアI/Oカバーに覆いかぶさる大型ヒートシンクが搭載されているとはいえ、VRM電源回路は低発熱ゆえに近年主流なDr. MOSではなくハイ/ローサイドMOS FETが個別に搭載される構造なので、Ryzen 9シリーズをVRM電源付近に直接風の当たらない簡易水冷CPUクーラー環境で運用するには若干の力不足を感じます。
Ryzen 7 3700XなどCPU Package Powerが100W未満のモデルであれば問題ないと思いますが、Ryzen 9シリーズを運用するのであれば、トップフロー型の空冷CPUクーラーを使用するか、簡易水冷CPUクーラーであればスポットクーラーの増設などでVRM電源周りの放熱を補助したいところです。
メモリOCについては、メモリ周波数に同期するIF周波数も含めて考えれば第3世代Ryzen環境用メモリとしては最速と言えるメモリ周波数3600MHz/メモリタイミング14-15-15-35-CR1が、検証機材メモリ「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」に収録されたOCプロファイルを適用することで簡単に実現できました。
また3200MHz/CL14のOCに対応し第1/2世代Ryzen向けハイパフォーマンスOCメモリとしては鉄板だった「G.Skill Trident Z RGB F4-3200C14Q-32GTZRX」を使用した場合は、メモリ周波数3600MHz/メモリタイミング16-16-16-36-CR1で安定動作させることができました。
AMD公式から第3世代Ryzen環境のメモリ速度としてはスイートスポットと評価される3600MHz/CL16に、周波数と主要タイミングのみの簡単なOC設定で詰めることができたので、「GIGABYTE B550M AORUS PRO」はメモリOC耐性(BIOS自動設定の精度)も余裕で及第点をクリアしていると思います。
以上、「GIGABYTE B550M AORUS PRO」のレビューでした。
記事が参考になったと思ったら、ツイートの共有(リツイートやいいね)をお願いします。
13フェーズVRM電源を搭載したMicroATXのハイコストパフォーマンスなゲーミングモデル「GIGABYTE B550M AORUS PRO」をレビューhttps://t.co/nflIw11g8U
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) July 28, 2020
検証機材として使用している以下のパーツもおすすめです。
Noctua NF-A12x25 PWM 120mmファン 定格2000RPM PWM対応
Noctua NF-A12x25 ULN 120mmファン 定格1200RPM PWM対応
Noctua
国内正規代理店Techaceの公式通販 で詳細情報を見る
<TSUKUMO:PWM/ULN><PCショップアーク>
関連記事
・AMD第3世代Ryzen CPUのレビュー記事一覧へ・【できる!メモリOC】 OCメモリの選び方から設定まで完全解説
・主要4社B450マザーボードを徹底比較!第3世代Ryzenにイチオシはどれか?
・第3世代Ryzen対応X570チップセット搭載AM4マザーボードのレビュー記事一覧
・第3世代Ryzen自作PCにオススメなDDR4メモリの容量や速度を解説
・第3世代Ryzen搭載のオススメなBTO PCを解説
(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
スポンサードリンク
→MicroATXでは
PCIEスロットはx16サイズスロットが1基しか実装されていませんが
→2基では
このスロットはPCIE帯域の分割(PCIE Bifurcation)に対応しています。
→上段(PCI-E x16_1)は帯域の分割に対応では