「AMD Ryzen 5 7600X」の実動コアクロックについて、同一型番の製品として販売するには個体差が大き過ぎる、というか同じ型番で販売されている製品としては性能差やコアクロックの違いが異常だと感じたので検証してみました。
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AMD Ryzen 7000シリーズCPUの6コア12スレッドモデル「AMD Ryzen 5 7600X」の実動コアクロックについて、同一型番の製品として販売するには個体差が大き過ぎる、というか同じ型番で販売されている製品としては性能差やコアクロックの違いが異常だと感じたので検証してみました。
そもそもCPUの詳細レビュー作成のためメーカーからお借りしたサンプル機のCPU個体(#1)で検証をしていました。
個体 #1の特長について簡単に抜粋すると、Cinebench R23のマルチスレッドテストにおいて、実動コアクロックは全コア5.4GHz程度、ベンチマークスコアは15700程度でした。
その後、諸事情でレビュー記事が完成せず、個体 #1はいったん返却となり、私費購入で新たにRyzen 5 7600Xを購入しました。
この個体 #2について最初に動作確認を行ったところ、Cinebench R23のマルチスレッドテストにおいて、実動コアクロックは全コア5.0GHz程度、ベンチマークスコアは14600程度となりました。
クリエイティブタスク系のマルチスレッド負荷に対して、実動コアクロックの差が5.4GHz前後と5.0GHz前後と大きく、Cinebench R23のスコアに差が出たので当然と言えば当然の結果ですが、実際にそういたったフル負荷がかかるシーンでは実性能にも5~8%程度の差が生じました。
同一型番のCPUとして個人的に許容できない差だと感じ、詳しく調べることにした次第です。
実動コアクロックに大きな差があるので、当然ですがCPU負荷の大きいタイトルであればゲーム性能にも影響があります。
結局、メーカーサンプルの個体 #1に加えて、国内正規品を4つで個体 #2~#5を購入しました。しかしながら2023年12月から1月の間に購入した4つはいずれも個体 #2と同じように、実動コアクロックが全コア5.0GHz程度、Cinebench R23のスコアが14600程度に収まる特性の個体でした。4つなのでサンプルは多くありませんが、管理人が私費購入を行った範囲内ではハズレ個体しか見つけることができませんでした。
さらにツイッター上で情報提供を求めたところ、個体 #1に近い動作をするとの情報を頂いたので、その方からお譲りいただいた個体 #6(国内正規品、12月頃に購入とのこと)を含めて全部で6個のRyzen 5 7600Xを使用して動作を確認してみました。
マザーボード、CPUクーラーなどCPU個体以外の検証環境を統一し、Handbrakeによる動画エンコード中のCPU温度やコアクロックを比較した結果が次のようになっています。
上で説明した通り、#1と#6の2個体だけはコアクロックが5.4GHz近くに達するのに対し、#2~#4は実動コアクロックが5GHz程度に留まっています。
同じCPUクーラーを使用しており、#6は例外ですが、#1~#5の5つは同じようなCPU Package PowerとEPS電力にも関わらず、CPU温度にもバラつきが大きくなりました。
当初はCPU温度差によってコアクロックの伸びに影響があるのかと思ったのですが、#1と#5はほとんど同じようなCPU温度となっており、それでもコアクロックに差があるので温度が原因でもないようです。
電圧特性による個体差、というと正規分布的なバラつきをイメージするところですが、Ryzen 5 7600Xについては明確にアタリ/ハズレが二分されるような傾向です。(サンプルが6個しかないので断言はできないものの)
「AMD Ryzen 5 7600X」を含めRyzen 7000シリーズCPUには管理人が確認した限りではマレーシアと中国で生産された個体がありますが、上記で良いコアクロック特性を示した#1と#6がそれぞれマレーシアと中国なので製造地域は関係がないようです。また悪いコアクロック特性を示す#2~#4もマレーシアと中国が混在していたので。
ちなみにSP値の評価に対応しているASUS製マザーボードの場合、SP値を見ることで上記のアタリ/ハズレを見分けることができました。
全コア5.4GHz前後で動作するアタリ個体はSP値が120、全コア5.0GHz前後で動作するハズレ個体はSP値が110でした。コア毎のSP値にはアタリ/ハズレそれぞれでさらに個体差がありますが、今回入手した6個についてはSP値は120か110のいずれかでした。
Intel製CPUの場合、型番毎にCPUコア動作倍率はBy Core Usage倍率として明確に設定されているので、電力制限を無効化してしまえば、個体差による性能の違いは基本的に出ません。PL1など電力制限の範囲内だとCPU電圧特性の個体差(VFカーブ)が影響しますが。
今回検証した「AMD Ryzen 5 7600X」に関しては、電力制限を解除しようが全コア5.0GHz前後でしか動作しない個体は、決して全コア5.4GHz前後では動作しません。
Ryzen CPUのコアクロック制御的に言えば個体差で100MHz以内の差が出ることは仕方ないと思うのですが、300~400MHzも差が出るというのは異常だと感じました。
Intel製CPUで言うとCore i9 13900KとCore i9 13900のBy Core Usage倍率の製品が同一型番(倍率ロック)で混在した状態で販売されているような感じです。
また今回検証したRyzen 5 7600XはCinebench R23のマルチスレッドスコアが15700程度と14600程度の2つに分かれましたが、Ryzen 7000シリーズCPUの先行レビュー(国内ではPC WatchやASCIIなど)に使用された個体(多くは2226PGY、SNの頭文字が9KN)について調査したところ15200~15300程度のスコアでした。
動作クロックはマザーボードBIOS(AGESA)等も影響するので先行レビュー当時はその程度のスコアになるコアクロックだったのか、それとも先行レビューに使用された個体と市販製品とでは特性が異なるのか、分かりませんが。
冒頭でも示した通り、特性の良い個体と悪い個体の性能差はマルチスレッドが重要になるクリエイティブタスクにおいて5~8%です。ただ同社で言えば7700Xと7700の末尾Xの有無くらいの差があるのでやはり同一型番のCPUとして販売するには異常だと感じます。
また同じ条件で測定してもCPU温度の開きも大きいので、推奨CPUクーラーについての評価にも影響します。
CPU温度については正規分布的にバラけもありますが、やはりアタリ/ハズレの個体で言うと、ハズレ個体はCPU温度が高い傾向です。
どの特性の個体で検証しているかも分からないので、Ryzen 5 7600Xを使用したCPU温度やCPUクーラー性能の評価(法人サイトでも一般ユーザーでもレビューの評価)はぶっちゃけ当てにならない、という状況です。
個人的に危惧するところは、Ryzen 7000シリーズ一般にアタリ/ハズレ的な個体差がある可能性です。
Ryzen 7 7700XやRyzen 9 7900X/7950Xなど上位モデルについても、明らかにアタリ/ハズレと言えるような個体差があるとすれば、かなりネガティブなポイントだと思います。正直、AMDに対してかなり不信感を持っています。
今回は3.5万円程度で購入でき複数個体を用意しやすかったので「AMD Ryzen 5 7600X」の個体差がかなり大きいことが判明しましたが、7~10万円の上位CPUでもこのようなアタリ/ハズレ的な個体差があると考えると……。
Ryzen 5 7600Xについて言えば、Cinebench R23のスコアが15200~15300程度の個体で大手法人サイトの先行レビューが掲載されているのに対して、ハズレ個体は”絶対に”スコアが15000を超えることはありません。
正規分布的に個体差があるのではなく、アタリ/ハズレ的に綺麗に二分する形で個体差が確認されているので、悪い見方をすれば『優良な特性のものをあえてレビュー用に選別している』、『初期の出荷分にしかアタリ個体はない』と言われても仕方がない状態だと思います。
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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AMD Ryzen 7000シリーズCPUの6コア12スレッドモデル「AMD Ryzen 5 7600X」の実動コアクロックについて、同一型番の製品として販売するには個体差が大き過ぎる、というか同じ型番で販売されている製品としては性能差やコアクロックの違いが異常だと感じたので検証してみました。
そもそもCPUの詳細レビュー作成のためメーカーからお借りしたサンプル機のCPU個体(#1)で検証をしていました。
個体 #1の特長について簡単に抜粋すると、Cinebench R23のマルチスレッドテストにおいて、実動コアクロックは全コア5.4GHz程度、ベンチマークスコアは15700程度でした。
その後、諸事情でレビュー記事が完成せず、個体 #1はいったん返却となり、私費購入で新たにRyzen 5 7600Xを購入しました。
この個体 #2について最初に動作確認を行ったところ、Cinebench R23のマルチスレッドテストにおいて、実動コアクロックは全コア5.0GHz程度、ベンチマークスコアは14600程度となりました。
クリエイティブタスク系のマルチスレッド負荷に対して、実動コアクロックの差が5.4GHz前後と5.0GHz前後と大きく、Cinebench R23のスコアに差が出たので当然と言えば当然の結果ですが、実際にそういたったフル負荷がかかるシーンでは実性能にも5~8%程度の差が生じました。
同一型番のCPUとして個人的に許容できない差だと感じ、詳しく調べることにした次第です。
実動コアクロックに大きな差があるので、当然ですがCPU負荷の大きいタイトルであればゲーム性能にも影響があります。
結局、メーカーサンプルの個体 #1に加えて、国内正規品を4つで個体 #2~#5を購入しました。しかしながら2023年12月から1月の間に購入した4つはいずれも個体 #2と同じように、実動コアクロックが全コア5.0GHz程度、Cinebench R23のスコアが14600程度に収まる特性の個体でした。4つなのでサンプルは多くありませんが、管理人が私費購入を行った範囲内ではハズレ個体しか見つけることができませんでした。
さらにツイッター上で情報提供を求めたところ、個体 #1に近い動作をするとの情報を頂いたので、その方からお譲りいただいた個体 #6(国内正規品、12月頃に購入とのこと)を含めて全部で6個のRyzen 5 7600Xを使用して動作を確認してみました。
マザーボード、CPUクーラーなどCPU個体以外の検証環境を統一し、Handbrakeによる動画エンコード中のCPU温度やコアクロックを比較した結果が次のようになっています。
上で説明した通り、#1と#6の2個体だけはコアクロックが5.4GHz近くに達するのに対し、#2~#4は実動コアクロックが5GHz程度に留まっています。
同じCPUクーラーを使用しており、#6は例外ですが、#1~#5の5つは同じようなCPU Package PowerとEPS電力にも関わらず、CPU温度にもバラつきが大きくなりました。
当初はCPU温度差によってコアクロックの伸びに影響があるのかと思ったのですが、#1と#5はほとんど同じようなCPU温度となっており、それでもコアクロックに差があるので温度が原因でもないようです。
電圧特性による個体差、というと正規分布的なバラつきをイメージするところですが、Ryzen 5 7600Xについては明確にアタリ/ハズレが二分されるような傾向です。(サンプルが6個しかないので断言はできないものの)
「AMD Ryzen 5 7600X」を含めRyzen 7000シリーズCPUには管理人が確認した限りではマレーシアと中国で生産された個体がありますが、上記で良いコアクロック特性を示した#1と#6がそれぞれマレーシアと中国なので製造地域は関係がないようです。また悪いコアクロック特性を示す#2~#4もマレーシアと中国が混在していたので。
ちなみにSP値の評価に対応しているASUS製マザーボードの場合、SP値を見ることで上記のアタリ/ハズレを見分けることができました。
全コア5.4GHz前後で動作するアタリ個体はSP値が120、全コア5.0GHz前後で動作するハズレ個体はSP値が110でした。コア毎のSP値にはアタリ/ハズレそれぞれでさらに個体差がありますが、今回入手した6個についてはSP値は120か110のいずれかでした。
Intel製CPUの場合、型番毎にCPUコア動作倍率はBy Core Usage倍率として明確に設定されているので、電力制限を無効化してしまえば、個体差による性能の違いは基本的に出ません。PL1など電力制限の範囲内だとCPU電圧特性の個体差(VFカーブ)が影響しますが。
今回検証した「AMD Ryzen 5 7600X」に関しては、電力制限を解除しようが全コア5.0GHz前後でしか動作しない個体は、決して全コア5.4GHz前後では動作しません。
Ryzen CPUのコアクロック制御的に言えば個体差で100MHz以内の差が出ることは仕方ないと思うのですが、300~400MHzも差が出るというのは異常だと感じました。
Intel製CPUで言うとCore i9 13900KとCore i9 13900のBy Core Usage倍率の製品が同一型番(倍率ロック)で混在した状態で販売されているような感じです。
また今回検証したRyzen 5 7600XはCinebench R23のマルチスレッドスコアが15700程度と14600程度の2つに分かれましたが、Ryzen 7000シリーズCPUの先行レビュー(国内ではPC WatchやASCIIなど)に使用された個体(多くは2226PGY、SNの頭文字が9KN)について調査したところ15200~15300程度のスコアでした。
動作クロックはマザーボードBIOS(AGESA)等も影響するので先行レビュー当時はその程度のスコアになるコアクロックだったのか、それとも先行レビューに使用された個体と市販製品とでは特性が異なるのか、分かりませんが。
冒頭でも示した通り、特性の良い個体と悪い個体の性能差はマルチスレッドが重要になるクリエイティブタスクにおいて5~8%です。ただ同社で言えば7700Xと7700の末尾Xの有無くらいの差があるのでやはり同一型番のCPUとして販売するには異常だと感じます。
また同じ条件で測定してもCPU温度の開きも大きいので、推奨CPUクーラーについての評価にも影響します。
CPU温度については正規分布的にバラけもありますが、やはりアタリ/ハズレの個体で言うと、ハズレ個体はCPU温度が高い傾向です。
どの特性の個体で検証しているかも分からないので、Ryzen 5 7600Xを使用したCPU温度やCPUクーラー性能の評価(法人サイトでも一般ユーザーでもレビューの評価)はぶっちゃけ当てにならない、という状況です。
個人的に危惧するところは、Ryzen 7000シリーズ一般にアタリ/ハズレ的な個体差がある可能性です。
Ryzen 7 7700XやRyzen 9 7900X/7950Xなど上位モデルについても、明らかにアタリ/ハズレと言えるような個体差があるとすれば、かなりネガティブなポイントだと思います。正直、AMDに対してかなり不信感を持っています。
今回は3.5万円程度で購入でき複数個体を用意しやすかったので「AMD Ryzen 5 7600X」の個体差がかなり大きいことが判明しましたが、7~10万円の上位CPUでもこのようなアタリ/ハズレ的な個体差があると考えると……。
Ryzen 5 7600Xについて言えば、Cinebench R23のスコアが15200~15300程度の個体で大手法人サイトの先行レビューが掲載されているのに対して、ハズレ個体は”絶対に”スコアが15000を超えることはありません。
正規分布的に個体差があるのではなく、アタリ/ハズレ的に綺麗に二分する形で個体差が確認されているので、悪い見方をすれば『優良な特性のものをあえてレビュー用に選別している』、『初期の出荷分にしかアタリ個体はない』と言われても仕方がない状態だと思います。
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Ryzen 5 7600Xのレビューの補足、記事公開が遅れた理由。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) March 28, 2023
個体差?、というか実動コアクロックに異常に大きい違い(レビュー用サンプルが胡散臭く感じるレベル)があって、それの検証と確認に手間取りました。
同一型番で1割弱も性能差が出るのはイミフ。
詳しくは記事で。https://t.co/g51CNcXUXg pic.twitter.com/0cVHrn2Jfp
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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CPU 7600X
クーラー アセテックOEM AIO-360
MB B650 ライブミキサー
デフォルト(PBO有効)でR23を実行
all,5115hz temp,90 score,14700 pw,107w
curve optimizer-40mvでR23を実行
all,5415hz temp,75 score,15400 pw,88w
となりました。シングル性能に差は有りませんでした。
参考になれば幸いです。